説明

画像処理装置および撮像装置

【課題】 画像のデータの圧縮処理をより迅速に実行できる手段を提供する。
【解決手段】 画像処理装置は、第1圧縮処理部と、第2圧縮処理部と、制御部とを備える。第1圧縮処理部は、入力された画像のデータを圧縮して第1圧縮データを生成する。第2圧縮処理部は、入力された画像のデータを圧縮して第2圧縮データを生成する。制御部は、1フレームの画像を2つの領域に分割するとともに、該分割された画像のデータをそれぞれ第1圧縮処理部および第2圧縮処理部に並列処理させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像のデータの圧縮処理を行う画像処理装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラなどをはじめとする画像処理装置では、記録の効率を高めるために画像のデータに圧縮処理を施すことが一般的である。ここで、画像処理装置における圧縮処理では、残フレーム数を把握し易くする観点から、スケールファクタの調整によって1フレーム分の圧縮データ量をほぼ一定にする固定長圧縮が多く採用される。なお、特許文献1には、固定長圧縮処理を行う電子カメラの構成の一例が開示されている。
【特許文献1】特開平9−219807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、撮像装置の連写速度向上や画像処理の高速化の観点から、画像のデータに対する圧縮処理については一層の高速化がなお要請されている。
本発明は上記従来技術の課題を解決するものである。本発明の目的は、画像のデータの圧縮処理をより迅速に実行できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明に係る画像処理装置は、第1圧縮処理部と、第2圧縮処理部と、制御部とを備える。第1圧縮処理部は、入力された画像のデータを圧縮して第1圧縮データを生成する。第2圧縮処理部は、入力された画像のデータを圧縮して第2圧縮データを生成する。制御部は、1フレームの画像を2つの領域に分割するとともに、該分割された画像のデータをそれぞれ第1圧縮処理部および第2圧縮処理部に並列処理させる。
【0005】
第2の発明は、第1の発明において、データを一時的に記録するメモリと、データ転送部とを画像処理装置がさらに備える。データ転送部は、第1圧縮データおよび第2圧縮データを、メモリ上で1フレーム分に割り当てられた共通の記録領域に記録する。
第3の発明は、第2の発明において、データ転送部は、第1圧縮データを記録領域の先頭アドレスから正方向に記録するとともに、第2圧縮データを記録領域の最後尾アドレスから逆方向に記録する。
【0006】
第4の発明は、第3の発明において、データ転送部は、第2圧縮データの並び順を反転させて記録領域に記録する。
第5の発明は、第1の発明において、制御部は、第1圧縮処理部および第2圧縮処理部の圧縮結果に基づいて、再圧縮時のパラメータを演算する。
ここで、上記の発明に、被写体像を撮像して画像のデータを生成する撮像部を加えて撮像装置を構成してもよい。また、上記の各発明の内容を画像処理方法やコンピュータプログラムなどに変換して表現したものも本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の画像処理装置では、第1圧縮処理部および第2圧縮処理部によって1フレーム分の画像のデータを並列処理し、より迅速に圧縮処理を実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本実施形態の電子カメラの構成を示すブロック図である。電子カメラは、撮像光学系11と、撮像素子12と、アナログ信号処理部13と、A/D変換部14と、バッファメモリ15と、画像処理部16と、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18と、DMA(Direct Memory Access)制御部19と、記録I/F20と、操作部材21およびレリーズ釦22と、ROM23と、CPU24およびシステムバス25とを有している。
【0009】
ここで、バッファメモリ15、画像処理部16、第1圧縮処理部17、第2圧縮処理部18、DMA制御部19、記録I/F20およびCPU24は、それぞれシステムバス25を介して接続されている。このシステムバス25は複数のデータバスを有している(図1では個々のデータバスの図示を省略する)。なお、撮像素子12、アナログ信号処理部13、A/D変換部14、操作部材21、レリーズ釦22およびROM23は、それぞれCPU24と接続されている。
【0010】
撮像光学系11は、ズームレンズやフォーカシングレンズを含む複数のレンズ群で構成されている。なお、簡単のため、図1では撮像光学系11を1枚のレンズとして図示する。
撮像素子12は撮像光学系11の像空間側に配置されている。この撮像素子12はレリーズ時に記録用画像(本画像)を撮像し、撮像光学系11を通過した光束を光電変換してアナログの画像信号を生成する。この撮像素子12の出力はアナログ信号処理部13に接続されている。
【0011】
アナログ信号処理部13は、撮像素子12の出力に対してアナログ信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。アナログ信号処理部13は、相関二重サンプリングや画像信号のゲインの調整などを行う。このアナログ信号処理部13の出力はA/D変換部14に接続されている。
A/D変換部14は、アナログ信号処理部13から出力される画像信号をA/D変換する。このA/D変換部14の出力は、バッファメモリ15と接続されている。
【0012】
バッファメモリ15は、A/D変換部14から出力される本画像のデータをバッファリングする。また、バッファメモリ15は、圧縮処理の前後で本画像のデータを一時的に記録する。
画像処理部16は、1フレーム分の画像のデータに対して、各種の画像処理(色補間処理、階調変換処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス調整など)を施す。
【0013】
第1圧縮処理部17は、画像処理後の本画像のデータをJPEG(Joint Photographic Experts Group)形式で圧縮するプロセッサである。この第1圧縮処理部17は、圧縮データのデータ量を計測する符号量計測部17aを内部に有している。
ここで、第1圧縮処理部17は、以下に示す一連の圧縮処理を実行する。第1に、第1圧縮処理部17は、処理対象の画像に対してDCT(離散コサイン変換)処理を実行してDCT係数を求める。なお、このDCT変換は、8×8画素のブロック単位で実行される。第2に、第1圧縮処理部17は、後述の量子化テーブルに基づいて、DCT係数の量子化処理を実行する。第3に、第1圧縮処理部17は、量子化された値に対してハフマン符号化処理を実行し、本画像の圧縮データを生成する。
【0014】
第2圧縮処理部18は、上記の第1圧縮処理部17と同じ構成のプロセッサであって、符号量計測部18aを内部に有している。この第2圧縮処理部18については、第1圧縮処理部17との重複説明を省略する。なお、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18は、1フレームの本画像のデータを並列処理で固定長圧縮することができる。
DMA制御部19は、CPU24の指示に基づいて、各モジュール間における画像のデータのDMA転送を各データバス毎に制御する。すなわち、DMA制御部19は、データバス毎に別々のモジュールへのデータ転送を同時に行うことができる。なお、DMA制御部19は、モジュール間でデータを転送するときにデータの並び順を反転させて逆順にすることも可能である。
【0015】
記録I/F20には、記録媒体26を接続するためのコネクタが形成されている。そして、記録I/F20は、コネクタに接続された記録媒体26に対してデータの書き込み/読み込みを実行する。上記の記録媒体26は、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードなどで構成される。なお、図1では記録媒体26の一例としてメモリカードを図示する。
【0016】
操作部材21は、例えばコマンドダイヤル、十字状のカーソルキー、決定釦などで構成される。そして、操作部材21は電子カメラの各種設定入力をユーザーから受け付ける。例えば、ユーザーは、(a)本画像の圧縮率に関する圧縮モード(例えば、「FINE」、「NORMAL」、「BASIC」など)の選択や、(b)記録モードの切替などを操作部材21で行うことができる。なお、上記の記録モードの切替では、通常の画像処理を行う第1記録モードと、RAWデータ(未加工の画像データ)を記録する第2記録モードとをユーザーが選択できる。
【0017】
レリーズ釦22は、レリーズタイミング(本画像の露光開始)の指示入力をユーザーから受け付ける。
ROM23には、電子カメラを制御するためのシーケンスプログラムや、標準量子化テーブルおよびスケールファクタテーブルなどが記録されている。ここで、標準量子化テーブルには、各DCT係数に対して量子化の刻みを定義する数値が格納されている。この標準量子化テーブルの数値は、人間の視覚特性上失われても目立たない高周波成分のデータ量を多く削減するように設定されている。
【0018】
一方、上記のスケールファクタテーブルには、複数の標本画像データについて圧縮処理時のスケールファクタ(圧縮率に関する係数)の値と圧縮データ量との対応関係がそれぞれ記録されている。ここで、スケールファクタテーブルの値は、DCT処理後の各標本画像データについてスケールファクタの値を除々に変えながら圧縮処理を繰り返すことで求められる。なお、同一の画像のデータに対してはスケールファクタが大きいほど、データの圧縮率は大きくなる傾向がある。
【0019】
CPU24は、電子カメラの統括的な制御を行うプロセッサである。CPU24は、上記のシーケンスプログラムに従って電子カメラの各部動作を制御する。
また、本実施形態でのCPU24は、1フレームの本画像を2つの領域に分割するとともに、分割された本画像のデータをそれぞれ第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18に並列処理で圧縮させる。さらに、CPU24は、本画像のデータの圧縮処理に関し、スケールファクタの決定や量子化テーブルの値の演算などを実行する。
【0020】
以下、本実施形態における電子カメラの撮像動作を説明する。なお、以下の例では、ユーザーの操作によって、電子カメラが第1記録モードに設定されている状態を前提として説明を行う。
ユーザーによってレリーズ釦22が全押しされると、CPU24は撮像素子12を駆動させて本画像の撮像を実行する。撮像素子12から読み出された本画像の画像信号は、アナログ信号処理部13およびA/D変換部14をパイプライン式に通過してバッファメモリ15にバッファリングされる。そして、本画像のデータは、画像処理部16によって各種の画像処理が施された後にバッファメモリ15に再び記録される。
【0021】
そして、CPU24は、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18に圧縮処理を実行させて、本画像のデータを固定長で圧縮する。以下、図2の流れ図を参照しつつ、本実施形態での電子カメラにおける圧縮処理を詳細に説明する。
ステップ101:CPU24は圧縮対象の本画像のデータを2つに分割し、分割したデータの圧縮処理を第1圧縮処理部17と第2圧縮処理部18とにそれぞれ割り当てる。本実施形態では、CPU24は本画像を上下に中央から2分割する。そして、CPU24は、本画像の上半分の圧縮処理を第1圧縮処理部17に割り当てるとともに、本画像の下半分の圧縮処理を第2圧縮処理部18に割り当てる。
【0022】
ステップ102:CPU24は、現在の圧縮モードの設定に基づいて圧縮目標のデータ量を決定する。そして、CPU24は、圧縮目標のデータ量に対応する1フレーム分の記録領域をバッファメモリ15上に確保する。なお、このS102で確保された記録領域には、後述の第1圧縮データおよび第2圧縮データが書き込まれることとなる。
ステップ103:CPU24は、ROM23のスケールファクタテーブルを参照し、圧縮目標のデータ量(S102)に基づいてスケールファクタを設定する。
【0023】
ステップ104:CPU24は、標準量子化テーブルの値にスケールファクタを乗じて、圧縮処理に用いる量子化テーブルの値を求める。そして、CPU24は、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18に量子化テーブルの値のデータをそれぞれ出力する。したがって、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18は、それぞれ同じ量子化テーブルの値に基づいて本画像の圧縮処理を行うこととなる。
【0024】
ステップ105:CPU24は、第1圧縮処理部17、第2圧縮処理部18、DMA制御部19を動作させて本画像のデータの圧縮処理を実行する。このS105での圧縮処理は、第1圧縮処理部17と第2圧縮処理部18との並列処理によって行われる。
まず、第1圧縮処理部17による本画像のデータの圧縮処理について説明する。
第1に、DMA制御部19は、バッファメモリ15に記録されている本画像のデータのうちで画像の上半分に対応するデータを第1圧縮処理部17にDMA転送する。DMA制御部19は、上半分の画像における左上側を起点として、8×8画素のブロックごとに画像のデータを順次読み出す。なお、DMA制御部19は画像の左端のブロックから右端のブロックの順に読み出しを行う。そして、右端のブロックの読み出しが終了すると、DMA制御部19はその一段下で水平に並ぶブロックについて上記と同様の読み出しを行う。なお、図3に画像のデータの読出方法を模式的に示す。
【0025】
第2に、第1圧縮処理部17は、上半分の画像のデータをブロック単位で圧縮処理して第1圧縮データを生成する。また、第1圧縮処理部17の符号量計測部17aは、第1圧縮データのデータ量をCPU24に逐次出力する。
第3に、DMA制御部19は、所定長の第1圧縮データを出力順のままでバッファメモリ15の記録領域(S102)にDMA転送する。
【0026】
ここで、DMA制御部19は、記録領域の先頭アドレスから第1圧縮データの記録を開始する。そして、DMA制御部19は、第1圧縮データのDMA転送時には先頭データの記録アドレス値を順次加算していく。これにより、第1圧縮データは、記録領域の先頭アドレスから順方向に所定長ずつ順次記録されることとなる。なお、図4に圧縮データの記録方法を模式的に示す。
【0027】
次に、第2圧縮処理部18による本画像のデータの圧縮処理について説明する。なお、第2圧縮処理部18の圧縮処理は、上記の第1圧縮処理部17の圧縮処理と並行してほぼ同時に行われる。
第1に、DMA制御部19は、バッファメモリ15に記録されている本画像のデータのうちで画像の下半分に対応するデータを第2圧縮処理部18にDMA転送する。DMA制御部19は、下半分の画像における左上側を起点として、8×8画素のブロックごとに画像のデータを順次読み出す(図3参照)。なお、各ブロックの読み出し方は、上記した第1圧縮処理部17の場合と同様であるので重複説明は省略する。
【0028】
第2に、第2圧縮処理部18は、下半分の画像のデータをブロック単位で圧縮処理して第2圧縮データを生成する。また、第2圧縮処理部18の符号量計測部18aは、第2圧縮データのデータ量をCPU24に逐次出力する。
第3に、DMA制御部19は、所定長の第2圧縮データをバッファメモリ15の記録領域(S102)にDMA転送する。
【0029】
ここで、DMA制御部19は、記録領域の最後尾アドレス側から第2圧縮データの記録を開始する。このとき、DMA制御部19は、DMA転送のときに第2圧縮データの並び順を反転させるとともに、反転前の最上位ビットが最後尾のアドレスに位置するように記録する。そして、DMA制御部19は、第2圧縮データのDMA転送時には先頭データの記録アドレス値を順次減算していく。これにより、第2圧縮データは、最後尾アドレスから逆方向に所定長ずつ順次記録されることとなる(図4参照)。なお、第1圧縮データと第2圧縮データとの合計データ量が記録領域の容量(バッファサイズ)よりも少ない場合には、記録領域の中間部分に空き領域が生じる。
【0030】
一例として、第2圧縮処理部18から第2圧縮データとして「01011101」のデータ列が出力された場合を考える。DMA制御部19は、第2圧縮データの並び順を反転させて「10111010」としてバッファメモリ15に転送する。上記の「10111010」のデータ列は、最下位ビットが記録領域の最後尾のアドレスに位置するように記録される。したがって、記録領域の最後尾アドレスからデータを逆方向に読み出したときには、本来の第2圧縮データのデータ列(「01011101」)が正しく出力されることとなる。
【0031】
ステップ106:CPU24は、符号量計測部17a,18aの出力に基づいて、S105の圧縮処理時に総圧縮データ量(第1圧縮データおよび第2圧縮データの合計)が記録領域(S102)の容量をオーバーしたか(バッファオーバーか)否かを判定する。
総圧縮データ量が記録領域の容量をオーバーした場合(YES側)には、CPU24は再び圧縮処理を行うためにS107に移行する。一方、総圧縮データ量が記録領域の容量に収まる場合(NO側)には、CPU24はS108に移行する。
【0032】
ステップ107:CPU24は、以下の(1)から(3)のいずれかの手段によって、圧縮率が高くなるようにスケールファクタを修正する。その後、CPU24はS104に戻って上記の動作を繰り返す。
(1)CPU24は、総圧縮データ量が記録領域の容量をオーバーした段階で、DMA制御部19に圧縮データの転送を停止させる。その一方で、CPU24は、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18に本画像のデータを最後まで圧縮させて、符号量計測部17a,18aの出力から最終的な総圧縮データ量を求める。この場合には、バッファオーバー後の圧縮データは符号量の計測のみに使用され、圧縮データが記録されることはない。そして、CPU24は、最終的な総圧縮データ量に基づいて、本画像のデータが圧縮目標のデータ量に収まるようにスケールファクタを求める。
【0033】
例えば、CPU24は、今回のスケールファクタと最終的な総圧縮データ量との組み合わせから、圧縮対象の本画像に近似する標本画像データを推定する。そして、CPU24は、推定した標本画像データに対応するスケールファクタテーブルを用いてスケールファクタを再び演算する。この場合には、今回の圧縮結果に基づいて、CPU24は次回の圧縮に用いるスケールファクタの推定を高い精度で行うことができる。
【0034】
(2)CPU24は、総圧縮データ量が記録領域の容量をオーバーした段階で、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18による圧縮処理を全て停止させる。そして、CPU24は、符号量計測部17a,18aの出力と、本画像のデータのうちで未圧縮の残データの量とに基づいて、以下の手順でスケールファクタを求める。
第1に、CPU24は、上記の残データのデータ量を求める。
【0035】
第2に、CPU24は、符号量計測部17a,18aの出力に基づいて、記録領域に記録された第1圧縮データと第2圧縮データとのそれぞれのデータ量を求める。
第3に、CPU24は、第1圧縮データおよび第2圧縮データの場合と同様に残データが圧縮されるものとみなして、残データ分の圧縮データ量を推定する。
具体的には、CPU24は、本画像の上半分に対応する残データについて、圧縮済みの上半分の画像のデータ量と第1圧縮データのデータ量とから、第1圧縮処理部17での実際の圧縮率を求める。そして、CPU24は、残データのデータ量に上記の圧縮率を乗じて圧縮データ量の推定値を求める。なお、CPU24は、本画像の下半分に対応する残データについても、上記と同様の工程で圧縮データ量の推定値を求める。
【0036】
第4に、CPU24は、上記した圧縮データ量の推定値の合計と、記録領域の容量との和から、最終的な総圧縮データ量の推定値を求める。そして、CPU24は、最終的な総圧縮データ量の推定値に基づいて、本画像のデータが圧縮目標のデータ量に収まるようにスケールファクタを再設定する。なお、この場合のスケールファクタの演算は、上記(1)の場合と同様であるので重複説明を省略する。
【0037】
この(2)の場合にも、今回の圧縮結果に基づいて、CPU24は次回の圧縮に用いるスケールファクタの推定を高い精度で行うことができる。なお、(2)の場合には、圧縮処理を最後まで行う必要がないので、CPU24は上記(1)の場合よりも処理時間を短縮することが可能となる。
(3)CPU24は、総圧縮データ量が記録領域の容量をオーバーした段階で、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18による圧縮処理を全て停止させる。そして、CPU24は、未圧縮の残データも圧縮できるようにスケールファクタを求める。一例として、本画像のデータ全体に対する未圧縮の残データの比が4:1となる場合を考えると、CPU24はS105での圧縮条件と比べて圧縮率が125%((4+1)/4)に高まるようにスケールファクタを再設定する。なお、この(3)の場合にも圧縮処理を最後まで行う必要がないので、CPU24は上記(1)の場合よりも処理時間を短縮することが可能となる。
【0038】
ステップ108:CPU24は、圧縮処理(S105)の実行回数が閾値を超えるか否かを判定する。圧縮処理の実行回数が閾値を超える場合(YES側)には、CPU24はS111に移行して本画像のデータに対する圧縮処理を打ち切る。一方、圧縮処理の実行回数が閾値以下の場合(NO側)には、CPU24はS109に移行する。
ステップ109:CPU24は、総圧縮データ量(S106)が、圧縮目標のデータ量を上限とする許容範囲に収まるか否かを判定する。総圧縮データ量が許容範囲に収まる場合(YES側)には、CPU24はS111に移行する。一方、総圧縮データ量が許容範囲を下回る場合(NO側)には、CPU24は再び圧縮処理を行うためにS110に移行する。
【0039】
ステップ110:CPU24は、圧縮率が低くなるようにスケールファクタを修正する。この場合、CPU24は、第1圧縮データおよび第2圧縮データのデータ量に基づいて、記録領域のうちの空き領域の容量を求める。そして、CPU24は、上記の空き領域の容量に応じて総圧縮データ量が増加するようにスケールファクタを再設定する。その後、CPU24はS104に戻って上記の動作を繰り返す。
【0040】
ステップ111:CPU24は、バッファメモリ15の記録領域に記録されている第1圧縮データおよび第2圧縮データを記録媒体26に記録する。このとき、DMA制御部19は、CPU24の指示に応じて、以下のように各圧縮データを転送する。
まず、DMA制御部19は、記録領域の先頭アドレスから第1圧縮データを順方向に読み出して記録媒体26に転送する。ここで、第1圧縮データは第1圧縮処理部17からの出力順のままで記録媒体26に記録されることとなる。
【0041】
次に、第1圧縮データの読み出しが終了した時点で、DMA制御部19は記録領域の最後尾アドレスから第2圧縮データを逆方向に読み出して記録媒体26に転送する。この転送後の第2圧縮データの並び順は、上述したように第2圧縮処理部18からの出力順の状態となる。そして、第1圧縮データと第2圧縮データとは、1つのデータ列として記録媒体26に連続的に記録される。これにより、1フレーム分の本画像の圧縮データは、1つの圧縮処理プロセッサで圧縮した場合と同様の状態で記録媒体26に記録されることとなる。以上で、本実施形態における電子カメラの撮像動作の説明を終了する。
【0042】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の電子カメラでは、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18が1フレームの本画像を並列処理で圧縮する。そのため、画像のデータを1つの圧縮処理プロセッサで圧縮する場合と比べて、本実施形態では圧縮処理の高速化を図ることができる。
また、本実施形態の電子カメラでは、第1圧縮処理部17の第1圧縮データと第2圧縮処理部18の第2圧縮データとがバッファメモリ15の共通の記録領域に一時的に記録される。したがって、本実施形態では、バッファメモリ15への圧縮データの記録効率を高めることができる。一例として、一方の圧縮処理部の圧縮符号量が少なく、他方の圧縮処理部の圧縮符号量が多くなる場合を考える。ここで、第1圧縮処理部17と第2圧縮処理部18とにバッファメモリ15の記録領域を別々に割り当てると、ワーストケースを考慮して個々の記録領域のバッファサイズを符号量の多い場合に合わせる必要が生じる。すなわち、各々の圧縮処理部ごとに記録領域を用意すると、圧縮目標のデータ量よりも多いバッファサイズが必要となる。
【0043】
その一方で、本実施形態のように各々の圧縮処理部で記録領域を共用する構成では、一方の圧縮処理部の圧縮符号量が少なければ、その分だけ他方の圧縮処理部の圧縮符号量を多く記録できる。したがって、本実施形態の構成では、圧縮目標のデータ量に相当するサイズの記録領域をバッファメモリ15に確保すれば足りる。
特に、本実施形態の電子カメラでは、記録領域の先頭アドレスから第1圧縮データが順方向に記録される一方で、記録領域の最後尾アドレスから第2圧縮データが逆方向に記録される。そのため、記録領域において第1圧縮データと第2圧縮データとに挟まれた中間部分に空き領域がまとまるので、バッファメモリ15への圧縮データの記録効率をより高めることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の電子カメラは、第2圧縮データの並び順を反転させて記録領域に記録する。そのため、第2圧縮データを最後尾アドレスから逆方向に読み出せば、CPU24はバッファメモリ15から第2圧縮データを正しい並び順で読み出すことができる。
(実施形態の補足事項)
(1)本発明における圧縮処理は上記実施形態のように撮像時に限定されることはない。例えば、上記実施形態において、第2記録モードで撮像されたRAWデータをデジタル的に現像するときに、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18が並列的に圧縮処理を実行してもよい。さらに、本発明の圧縮処理は、複数のプロセッサコアを有するコンピュータにおいて、別々のプロセッサコアを2つの圧縮処理部として機能させることでソフトウエア的に実現してもよい。
【0045】
(2)本発明での画像圧縮方法は、JPEG規格に準拠したDCT変換に限定されるものではなく、他の公知の画像圧縮方法によるものでもよい。例えば、上記実施形態の第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18は、JPEG2000の規格に準拠して、タイル単位で分割された本画像にウェーブレット変換処理を並列的に施すようにしてもよい。
(3)本発明での本画像の分割方法は、画像を水平方向に上下に2分割する場合のみに限定されずに自由に変更することができる。例えば、画像を垂直方向に左右に2分割するようにしてもよい。また、第1圧縮処理部17および第2圧縮処理部18がJPEG2000の規格に準拠して圧縮処理を行う場合には、第1圧縮処理部17にROI(Region Of Interest)領域の圧縮処理を割り当て、第2圧縮処理部18にその他の領域の圧縮処理を割り当てるようにしてもよい。
【0046】
なお、本発明は、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の電子カメラの構成を示すブロック図
【図2】本実施形態での電子カメラにおける圧縮処理を説明する流れ図
【図3】画像のデータの読出方法を模式的に示す図
【図4】圧縮データの記録方法を模式的に示す図
【符号の説明】
【0048】
11…撮像光学系、12…撮像素子、13…アナログ信号処理部、14…A/D変換部、15…バッファメモリ、16…画像処理部、17…第1圧縮処理部、18…第2圧縮処理部、19…DMA制御部、24…CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像のデータを圧縮して第1圧縮データを生成する第1圧縮処理部と、
入力された画像のデータを圧縮して第2圧縮データを生成する第2圧縮処理部と、
1フレームの前記画像を2つの領域に分割するとともに、該分割された前記画像のデータをそれぞれ前記第1圧縮処理部および前記第2圧縮処理部に並列処理させる制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
データを一時的に記録するメモリと、
前記第1圧縮データおよび前記第2圧縮データを、前記メモリ上で1フレーム分に割り当てられた共通の記録領域に記録するデータ転送部と、
をさらに備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記データ転送部は、前記第1圧縮データを前記記録領域の先頭アドレスから正方向に記録するとともに、前記第2圧縮データを前記記録領域の最後尾アドレスから逆方向に記録することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記データ転送部は、前記第2圧縮データの並び順を反転させて前記記録領域に記録することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記制御部は、前記第1圧縮処理部および前記第2圧縮処理部の圧縮結果に基づいて、再圧縮時のパラメータを演算することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
被写体像を撮像して画像のデータを生成する撮像部と、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
を備えることを特徴とする撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193464(P2008−193464A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26574(P2007−26574)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】