説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】小規模な回路で高画像化処理を行うことが可能な画像処理装置および画像処理方法を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、色相算出回路1と、彩度算出回路2と、加算回路3,4と、補正量演算回路5とを備える。補正量演算回路5は、補正特性設定回路6と、彩度補正量算出回路7と、色信号補正量算出回路8とを備える。色相Hを算出する際、色差信号Ab,Arの絶対値をビットシフトして除算を行うため、ビットシフトを行わない場合と比べ、逆数テーブル37の回路規模を1/2〜1/4に削減できる。また、0〜45度のみに対応するatanテーブル39を用いるため、0〜360度に対応するテーブルを用いる場合に比べ、atanテーブル39の回路規模を1/8にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に対して高画質化処理を行う画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車に車載モニタが取り付けられている。これにより例えば、運転者は車の後部に取り付けられたバックカメラで撮影される映像を車載モニタで見ながら駐車を行うことができる。この車載モニタでは、助手席等に乗車する人がテレビやDVDソフトを鑑賞することもできる。
【0003】
車載モニタの高付加価値化のためには、表示される映像を高画質化するのが望ましい。例えば、バックカメラの映像を表示する場合、カラーコーン等の保安器具を強調して表示できれば、より安全に駐車をすることができる。また、テレビやDVDソフトを観賞する場合も、好ましい肌色を表示できたり、ユーザの好みに合わせて映像を調整できたりするとよい。
【0004】
このような画像処理では、映像信号を、色の濃さを表す彩度および色味を表す色相に変換して処理を行うのが一般的である(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1の手法では、彩度を算出するための平方根回路や、色相を算出するための大きなルックアップテーブルが必要であり、回路規模を小さくできない、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−125557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小規模な回路で高画質化処理を行うことが可能な画像処理装置および画像処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、第1および第2の色信号を色相に変換する色相算出回路と、前記色相に基づいて、前記第1および第2の色信号を彩度に変換する彩度算出回路と、補正を行う色相を示す色相補正軸に対応する角度を含む所定の角度範囲内に前記色相が存在する場合に前記色相に応じて前記彩度を補正するための補正ゲインを設定する補正特性設定回路と、前記彩度と前記補正ゲインとを用いて彩度補正量を算出する彩度補正量算出回路と、前記色相補正軸に対応する角度の正弦値および余弦値の一方と前記彩度補正量とを乗じて第1の補正量を生成する第1の乗算回路と、前記正弦値および余弦値の他方と前記彩度補正量とを乗じて第2の補正量を生成する第2の乗算回路と、前記第1の色信号と前記第1の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第1の色信号に対応する第1の出力信号を生成する第1の加算回路と、前記第2の色信号と前記第2の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第2の色信号に対応する第2の出力信号を生成する第2の加算回路と、を備えることを特徴とする画像処理装置が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、第1および第2の色信号を色相に変換するステップと、前記色相に基づいて、前記第1および第2の色信号を彩度に変換するステップと、補正を行う色相を示す色相補正軸に対応する角度を含む所定の角度範囲内に前記色相が存在する場合に前記色相に応じて前記彩度を補正するための補正ゲインを設定するステップと、前記彩度と前記補正ゲインとを用いて彩度補正量を算出するステップと、前記色相補正軸に対応する角度の正弦値および余弦値の一方と前記彩度補正量とを乗じて第1の補正量を生成するステップと、前記正弦値および余弦値の他方と前記彩度補正量とを乗じて第2の補正量を生成するステップと、前記第1の色信号と前記第1の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第1の色信号に対応する第1の出力信号を生成するステップと、前記第2の色信号と前記第2の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第2の色信号に対応する第2の出力信号を生成するステップと、を備えることを特徴とする画像処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小規模な回路で高画質化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】色差信号Ab,Arと、色相H、彩度Sとの関係を示す図。
【図3】色相算出回路1の内部構成の一例を示すブロック図。
【図4】色相Hを算出する手順を示すフローチャート。
【図5】逆数テーブル37の一例を示す図。
【図6】色差信号Ab,Arおよびこれらの絶対値の差|Ar|−|Ab|のそれぞれの符号と、角度Htmpおよび色相Hとの関係を示す図。
【図7】補正テーブル10の設定例を示す図。
【図8】彩度算出回路2の内部構成の一例を示すブロック図。
【図9】彩度Sの算出手順を示すフローチャート。
【図10】色相Hと、色相Hを表す信号の各ビットとの関係を示す図。
【図11】図1の画像処理装置の入力信号である色差信号Ab,Arと、出力信号である色差信号Ab_out,Ar_outとの関係を示す図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図13】第2の実施形態における補正テーブル10の設定例を示す図。
【図14】図12の画像処理装置の入力信号である色差信号Ab,Arと、出力信号である色差信号Ab_out,Ar_outとの関係を示す図。
【図15】図13の設定をした場合の、補正前の色相Hと補正後の色相との関係を示す図。
【図16】リミッタ回路16の入出力関係の一例を示す図。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像処理装置および画像処理方法の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図1の画像処理装置には色差信号B−Y,R−Y(以下、Ab(第1の色信号),Ar(第2の色信号)とする)が入力される。図1の画像処理装置には、色差信号Ab,Arが直接入力されてもよいし、コンポジットビデオ信号に対して、輝度信号と色信号とを分離するY/C分離回路(不図示)および色信号を色差信号Ab,Arに分離するカラーデコーダ(不図示)を設けてもよい。
【0013】
本実施形態では、色差信号Ab,Arは2の補数で表された10ビットのデジタル信号とする。すなわち、色差信号Ab,Arは、−512〜511の範囲の値を取り得るものとする。
【0014】
図1の画像処理装置は、色相算出回路1と、彩度算出回路2と、加算回路(第1および第2の加算回路)3,4と、補正量演算回路5とを備える。補正量演算回路5は、補正特性設定回路6と、彩度補正量算出回路7と、色信号補正量算出回路8とを備える。
【0015】
色相算出回路1は色差信号Ab,Arを色相Hに変換する。彩度算出回路2は、色相Hに基づいて、色差信号Ab,Arを彩度Sに変換する。図2は、色差信号Ab,Arと、色相H、彩度Sとの関係を示す図である。図示のように、色相Hおよび彩度Sは、色差信号Ab,Arを用いて、以下の(1),(2)式で表される。
H = atan(Ar / Ab) ・・・(1)
【数1】

【0016】
また、彩度Sは色相Hを用いて以下の(3),(4)式で表すこともできる。
S = |Ab| / |cosH| ・・・(3)
S = |Ar| / |sinH| ・・・(4)
【0017】
上記(1)式のatanはtanの逆関数である。本実施形態は色相Hと彩度Sとを小規模の回路で算出することを特徴とする。色相算出回路1と彩度算出回路2の具体的な内部構成については後述する。
【0018】
補正特性設定回路6は、色相補正軸θを中心とする所定の範囲に色相Hが属する場合、色相Hに応じた補正ゲインg1を算出する。彩度補正量算出回路7は、彩度Sと、ユーザが設定するユーザ設定ゲインg0と、補正ゲインg1とを乗じて、彩度補正量dSを算出する。色信号補正量算出回路8は、彩度補正量dSにcosθを乗じて、ds*cosθを色差信号Abの補正量(第1の補正量)とし、彩度補正量dSにsinθを乗じて、ds*sinθを色差信号Arの補正量(第2の補正量)とする。
【0019】
加算回路3は、色差信号Abにds*cosθを加算して、色差信号Ab_out(第1の出力信号)を出力する。加算回路4は、色差信号Arにds*sinθを加算して、色差信号Ar_out(第2の出力信号)を出力する。
【0020】
図1の画像処理回路から出力された色差信号Ab_out,Ar_outは、必要に応じて不図示の回路でガンマ補正やコントラスト調整等が行われた後、マトリクス変換により色信号G,B,Rに変換される。
【0021】
図1の画像処理回路の少なくとも一部を同一の半導体チップに内蔵してもよいし、このチップに上述したY/C分離回路等を内蔵してもよい。
【0022】
以下、図1の画像処理装置の処理動作を詳細に説明する。
【0023】
まず、色相算出回路1は色相Hを算出する。図3は、色相算出回路1の内部構成の一例を示すブロック図であり、図4は、色相Hを算出する手順を示すフローチャートである。色相算出回路1は、絶対値回路31,32と、大小比較回路33と、大小選択回路34と、ビットシフト回路(第1および第2のビットシフト回路)35,36と、逆数テーブル37と、乗算回路(第3の乗算回路)38と、atanテーブル39と、色相決定回路40とを有する。
【0024】
まず、絶対値回路31,32は色差信号Ab,Arの絶対値を算出する(ステップS11)。より具体的には、色差信号Abの最上位ビットが0値の場合、色差信号Abは正または0であるから、絶対値回路32は色差信号Abの下位9ビットを絶対値|Ab|とする。また、色差信号Abの最上位ビットが1値の場合、色差信号Abは負であるから、絶対値回路32は色差信号Abの下位9ビットをビット反転して1を加えた値を絶対値|Ab|とする。色差信号Arについても同様である。
【0025】
次に、大小比較回路33は色差信号Ab,Arの絶対値|Ab|,|Ar|のいずれが大きいかを比較する(ステップS12)。比較結果に基づき、大小選択回路34は、大きい方を信号Big,小さい方を信号Smlとして出力する。そして、逆数テーブル37は1/Bigを算出し、乗算回路38はこの値にSmlを乗じてSml/Bigを算出する。
【0026】
つまり、逆数テーブル37は、|Ar|>|Ab|の場合は1/|Ar|を算出し(ステップS13a)、|Ab|>|Ar|の場合は、1/|Ab|を算出する(ステップS13b)。そして、乗算回路38は、|Ar|>|Ab|の場合は|Ab|/|Ar|を算出し(ステップS14a)、|Ab|>|Ar|の場合は、|Ar|/|Ab|を算出する(ステップS14b)。
【0027】
ここで、除算回路を用いて除算1/Bigを行うと回路規模が大きくなるので、ハードウェアで除算を行う場合は、ルックアップテーブル(以下、テーブル)を用いるのが望ましい。しかし、信号Bigは9ビットであるから、1/Bigを算出するには、入力が9ビットの大きなテーブルが必要となる。そこで、本実施形態では、以下のようにして逆数テーブル37の回路規模を削減する。
【0028】
ビットシフト回路35は信号Bigの最上位ビットが1値になるまでビットシフトを行い、その結果を信号Sft_Bit(第1のビットシフト値)として出力する。そして、ビットシフト回路35でのビットシフト数と同ビット数だけ、ビットシフト回路36は信号Smlのビットシフトを行い、その結果をSft_Sml(第2のビットシフト値)として出力する。信号Big,Smlを同じだけビットシフトさせてもSml/Bigの値は変わらないためである。
【0029】
例えば、Big=9’b001001000,Sml=9’b000001100(9’bは9ビットの2進数であることを示す)の場合、Bigの上位2ビットが0値であるから、ビットシフト回路35は信号Bigを2ビットシフトしてSft_Big=9’b100100000とする。ビットシフト回路36は信号Smlを同じく2ビットシフトしてSft_Sml=9’b000110000とする。
【0030】
図5は、逆数テーブル37の一例を示す図である。信号Sft_Bigの最上位ビットは1であるから、信号Sft_Bigの値は256〜511の256値である。よって、逆数テーブル37は信号Sft_Bigの下位8ビットのみを入力とすることができ、逆数テーブル37の回路規模を削減できる。図5(a)に示すように、逆数テーブル37には信号Sft_Bigの下位8ビットであるSft_Big[7:0]([p:q]は、信号のq+1ビット目〜p+1ビット目を示す。以下同じ)が入力される。この逆数である1/Sft_Bigの実際の値は小数となるので、逆数テーブル37は、例えばこの値を215倍し、小数点以下を切り捨てた値を出力信号1/Sft_Bigとして出力する。
【0031】
さらに、図5(a)に注目すると、信号Sft_Bigが256であっても257であっても、1/Sft_Bigは128である。また、信号Sft_Bigが258であっても259であっても、1/Sft_Bigは127である。このように、信号Sft_Bigの最下位ビットは1/Sft_Bigにほとんど影響しない。
【0032】
そこで、図5(b)に示すように、信号sft_Big[7:1]を逆数テーブル37に入力としてもよい。図5(a)と図5(b)では、若干1/Sft_Bigの値が異なるが、実用上問題はない。この場合、逆数テーブル37の入力を128〜255に対応する7ビットにすることができる。このようにして、逆数テーブル37の入力ビット数を信号Bigそのものの9ビットではなく、7ビットへと1/4に削減することができ、逆数テーブル37の回路規模を大幅に削減できる。
【0033】
また、図5(b)の出力1/Sft_Bigの最大値は128であり、本来8ビットの信号が必要であるが、128のかわりに127としておくと、出力信号を1ビット減らして7ビットにすることができる。128が現れるのは信号Sft_Bigが256,257のときのみであるので、このようにしても実用上問題はない。
【0034】
以下では、逆数テーブル37として図5(b)のテーブルを用い、その出力信号を7ビットとする例を示す。
【0035】
以上のようにして、|Ar|>|Ab|の場合は1/|Ar|を(ステップS13a)、|Ab|>|Ar|の場合は、1/|Ab|を算出できる(ステップS13b)。
【0036】
このようにして得られた信号1/Sft_Bigと、信号Sft_Smlとを乗じて、乗算回路38はSft_Sml/Sft_Bigを信号Xとして出力する。信号Xは、|Ar|>|Ab|の場合は|Ab|/|Ar|に相当し(ステップS14a)、|Ab|>|Ar|の場合は、|Ar|/|Ab|に相当する(ステップS14b)。
【0037】
信号1/Sft_Bigは7ビットで、信号Sft_Smlは9ビットなので、これらを乗じて得られる信号Xは最大16ビットになり得る。しかし、実用上16ビット精度は不要なので、信号Xを1/256倍(下位8ビットを切り捨て)した8ビット精度でも十分である。また、ステップS12で大小比較をしているため、Big>Smlであり(Big=Smlの場合は後述)、信号Xが最大となるのは、Big=511,Sml=510の場合であるが、このとき信号Xを1/256倍した値は、図5(b)より、64*510/256=127(小数以下切捨て)である。すなわち、信号Xを1/256倍した値の最上位ビットは必ず0値である。
【0038】
結局、信号Xの最上位ビットおよび下位8ビットを無視した信号X[14:8]のみを用いて後の処理を行うことができ、信号Xを16ビット全て用いる場合に比べ、回路規模を削減できる。
【0039】
次に、atanテーブル39はatanX(atanはtanの逆関数)を算出し、その結果を角度Htmpとして出力する(ステップS15)。ここで、atanテーブル39に入力される信号X(=Sft_Sml/Sft_Big)は、Sft_Big>Sft_Smlなので、必ず0〜1の範囲内となる。よって、atanテーブル39の出力は0〜45度に対応する値となる。仮に、atanテーブル39の入力が任意の値であると、atanテーブル39は0〜360度に対応する値を出力する必要があるが、本実施例の場合は0〜45度にでき、atanテーブル39の回路規模を1/8に削減できる。
【0040】
本実施形態では、0〜360度を10ビット精度で表すこととし、360度/1024=0.35度の分解能で色相Hを表す。この場合、atanテーブル39の出力は、0〜45度に対応する7ビットとなる。
【0041】
さらに、色相決定回路40は、色差信号Ab,Arおよびこれらの絶対値の差|Ar|−|Ab|のそれぞれの符号を検出し(ステップS16)、角度Htmpを色相Hに変換する(ステップS17)。色相決定回路40は、色差信号Abの最上位ビットが0値であればAb≧0、1値であればAr<0と判定できる。色差信号Arについても同様である。また、色差信号Ab,Arの絶対値の差|Ar|−|Ab|の符号は大小比較回路33での比較結果を用いることができる。
【0042】
図6は、色差信号Ab,Arおよびこれらの絶対値の差|Ar|−|Ab|のそれぞれの符号と、角度Htmpおよび色相Hとの関係を示す図である。図6(a)では、色差信号Ab等が正または0の場合は0を、負の場合は1を記している。
【0043】
Ab≧0,Ar≧0,|Ar|−|Ab|<0の場合、色相Hは0〜45度(図6(b)の領域(1))に存在する。よって、信号X=|Ar|/|Ab|はtanHに等しい。すなわち、ステップS15で算出した角度Htmpは色相Hと等しく、図6(a)に示すように、H=Htmpである。
【0044】
また、Ab≧0,Ar≧0,|Ar|−|Ab|>0の場合、色相Hは45〜90度(図6(b)の領域(2))に存在する。よって、信号X=|Ab|/|Ar|はtan(90−H)に等しい。すなわち、ステップS15で算出した角度Htmpは90−Hと等しく、図6(a)に示すように、H=90−Htmpである。
【0045】
以下同様に、色差信号Ab,Arおよびこれらの絶対値の差|Ar|−|Ab|のそれぞれの符号に応じて、色相決定回路40は角度Htmpから色相Hを算出できる。
【0046】
なお、Ab=Ar=0の場合は、色差信号Ab,Arの補正を行う必要がないが、後の処理で補正量が0と算出されるため、ビットシフト回路35,36や逆数テーブル37の出力は任意でよい。また、|Ab|=|Ar|(≠0)の場合、色相決定回路40は、角度Htmpに関わらず、色差信号Ar,Abの符号に応じて、色相Hを45,135,225,315度のいずれかに設定する。より具体的には、色相決定回路は、Ab≧0かつAr≧0であればH=45度、Ab<0かつAr≧0であればH=135度、Ab<0かつAr<0であればH=225度、Ab≧0かつAr<0であればH=315度に設定する。
【0047】
以上のようにして図1の色相算出回路で算出された色相Hに基づいて、補正特性設定回路6は補正ゲインg1を算出する。
【0048】
補正特性設定回路6は、補正範囲検出回路9と、補正テーブル10とを有する。まず、補正範囲検出回路9は、外部から入力される色相補正軸θを含む範囲θmin〜θmaxに、色相Hが属するか否かを検出する。属する場合、補正テーブル10は、予め設定された特性に従って、補正ゲインg1を算出する。属さない場合、補正ゲインg1は0に設定され、補正は行われない。つまり、色相Hが色相補正軸θ付近である色差信号Ab,Arに対して補正が行われることになる。
【0049】
図7は、補正テーブル10の設定例を示す図である。図7(a1),(a2)は、マゼンタ付近の色を強調する例である。すなわち、θmin〜θmaxの範囲で補正ゲインg1が正であり、色相補正軸θのとき補正ゲインg1が最大で、色相補正軸θから離れるにつれて、左右対称に補正ゲインg1が0に近づくよう設定する例である。この場合、色相Hがθmin〜θmaxの範囲内であれば、彩度Sが大きくなるように補正される。特に、色相Hが色相補正軸θと等しい場合に、彩度Sの補正量は最大になる。また、色相Hは色相補正軸θに近づくように補正される。
【0050】
図7(b1),(b2)は、シアン付近の色を減衰させる例である。すなわち、θmin〜θmaxの範囲で補正ゲインg1が負であり、色相補正軸θのとき補正ゲインg1が最小で、色相補正軸θから離れるにつれて、左右対称で補正ゲインg1が0に近づくよう設定する例である。この場合、色相Hがθmin〜θmaxであれば、彩度Sが小さくなるように補正される。特に、色相Hが色相補正軸θと等しい場合に、彩度Sの補正量は最大になる。また、色相Hは色相補正軸θから離れるように補正される。
【0051】
図7(a),(b)では、色相補正軸θを中心に左右対称に補正ゲインg1が設定される例を示しているが、左右非対称でもよい。
【0052】
このように、補正テーブル10の設定によって、任意の色相補正軸θ付近の入力信号の彩度Sを大きくして強調することや、彩度Sを小さくして減衰させることができる。
【0053】
また、図1の色相算出回路1で算出された色相Hに基づいて、彩度算出回路2は、上記(3)または(4)式に基づいて、彩度Sを算出する。上記(2)式を用いないのは、平方根を計算するためには極めて大きな回路を必要とするためである。
【0054】
図8は、彩度算出回路2の内部構成の一例を示すブロック図であり、図9は、彩度Sの算出手順を示すフローチャートである。彩度算出回路2は、絶対値回路61,62と、大小比較回路63と、大小選択回路64と、ビット反転回路65と、色相選択回路66と、cos逆数テーブル67と、乗算回路(第4の乗算回路)68と、を有する。
【0055】
絶対値回路61,62は色差信号Ab,Arの絶対値を算出する(ステップS21)。次に、大小比較回路63は色差信号Ab,Arの絶対値|Ab|,|Ar|のいずれが大きいかを比較する(ステップS22)。比較結果に基づき、大小選択回路は大きい方を信号Bigとして出力し(ステップS23a,S23b)、信号Bigを乗算回路68に入力する。なお、絶対値回路61,62、大小比較回路63および大小選択回路64は、図3に示す色相算出回路1内の同回路を用いてもよい。すなわち、色相算出回路1の大小選択回路34で算出される信号Bigを彩度算出回路2内の乗算回路68に入力してもよい。これにより、彩度算出回路2の回路規模を削減できる。
【0056】
本実施形態では、|Ab|>|Ar|の場合はS=|Ab|/|cosH|(上記(3)式)に基づき、|Ar|>|Ab|の場合はS=|Ar|/|sinH|(上記(4)式)に基づき、彩度Sを算出する。cos逆数テーブル67の回路規模を削減するためである。
【0057】
図10は、色相Hと、色相Hを表す信号の各ビットとの関係を示す図である。本実施形態では、360度を10ビット精度で表しているため、例えば、H[7]は45度毎に0値と1値が入れ替わる。
【0058】
1/cosHまたは1/sinHを算出するために、0〜360度(つまりH[9:0])を入力とするテーブルを用いると、cos逆数テーブル67の回路規模が増大する。そこで、本実施形態では、sinH=cos(90−H),|cosH|=|cos(180−H)|等の三角関数の性質を利用して、0〜45度のみを入力とするcos逆数テーブル67を用いる。
【0059】
まず、|Ab|>|Ar|であり、(3)式により彩度Sを算出する場合、つまり色相Hが図6(b)の領域(1),(4),(5),(8)に属する場合を考える。
【0060】
領域(1)つまり0≦H<45度の場合、図10に示すように、H[9:7]=3’b000である。よって、|cosH|=|cos(H[6:0])|である。
【0061】
領域(4)つまり135≦H<180度の場合、図10に示すように、H[9:7]=3’b011である。よって、|cosH|=|cos(135+H[6:0])|=|cos(45−H[6:0])|=|cos(/H[6:0])|である(/はビット反転を示す。H[6:0]は0〜45度を表すので、H[6:0]をビット反転すると、45−H[6:0]になる)。
【0062】
以下同様に、領域(5)つまり180≦H<225度の場合、|cosH|=|cos(H[6:0])|であり、領域(8)つまり315≦H<360度の場合、|cosH|=|cos(/H[6:0])|である。
【0063】
このように、(3)式における|cosH|のかわりに、|cos(H[6:0])|または|cos(/H[6:0])|を用いることができる。
【0064】
次に、|Ar|>|Ab|であり、(4)式により彩度Sを算出する場合、つまり図6(b)の領域(2),(3),(6),(7)の場合を考える。
【0065】
領域(2)つまり45≦H<90度の場合、図10に示すように、H[9:7]=3’b001である。よって、|sinH|=|sin(45+H[6:0])|=|cos(45−H[6:0])|=|cos(/H[6:0])|である。
【0066】
領域(3)つまり90≦H<135度の場合、図10に示すように、H[9:7]=3’b010である。よって、|sinH|=|sin(90+H[6:0])|=|cos(H[6:0])|である。
【0067】
以下同様に、領域(6)つまり225≦H<270度の場合、|sinH|=|cos(/H[6:0])|であり、領域(7)つまり270≦H<315度の場合、|sinH|=|cos(H[6:0])|である。
【0068】
このように、(4)式における|sinH|のかわりに、|cos(H[6:0])|または|cos(/H[6:0])|を用いることができる。
【0069】
以上によると、H[7]=が0値の場合(領域(1),(3),(5),(7))は|cos(H[6:0])|を、H[7]が1値の場合(領域(2),(4),(6),(8))は|cos(/H[6:0])|を用いて彩度Sを算出することになる。
【0070】
そこで、ビット反転回路65はH[6:0]のビット反転信号/H[6:0]を生成し、色相選択回路66は、H[7]が0値であればH[6:0]を選択し(ステップS24,S25a)、H[7]が1値であれば/H[6:0]を選択して(ステップS24,S25b)、cos逆数テーブル67に入力する。H[6:0],/H[6:0]は0〜45度に対応する信号であるから、0〜360度に対応する信号を入力する場合に比べ、cos逆数テーブル67の回路規模を1/8に削減できる。
【0071】
cos(H[6:0])およびcos(/H[6:0])は1/√2〜1なので、cos逆数テーブル67は、その逆数である1〜√2を例えば2倍した値を信号DIVとして、8ビット精度で出力する(ステップS26a,S26b)。
【0072】
乗算回路68は、信号Bigと信号DIVとを乗じ、例えば下位8ビットを切り捨てて彩度Sを算出する(ステップS27)。
【0073】
以上のようにして図1の彩度算出回路2で算出された彩度Sに基づいて、彩度補正量算出回路7は彩度補正量dSを算出する。
【0074】
彩度補正量算出回路7は、彩度Sにユーザ設定ゲインg0を乗じる乗算回路11と、この乗算結果に上述した補正ゲインg1とを乗じて彩度補正量dSを算出する乗算回路12とを有する。彩度Sには2つのゲインg0,g1が乗じられるが、例えば、補正ゲインg1は画像処理装置の出荷時に予め設定しておき、ユーザ設定ゲインg0はユーザの好みに合わせてユーザが設定する。ユーザは、補正を強めに行いたい場合は、ユーザ設定ゲインg0を大きな値に設定し、補正を全く行いたくない場合、設定ゲインg0を0に設定する。
【0075】
彩度補正量dSは正であれば彩度Sが大きくなるように補正され、負であれば彩度が小さくなるように補正される。
【0076】
彩度Sに比例した彩度補正量dSを算出する理由は、補正前の彩度Sが大きい信号ほど補正量を大きくしないと補正の効果が表れにくいためである。
【0077】
彩度補正量dSを算出した後、色信号補正量算出回路8は色差信号Ab,Arの補正量を算出する。
【0078】
色信号補正量算出回路8は、三角関数テーブル13と、乗算回路(第1および第2の乗算回路)14,15とを有する。色信号補正量算出回路8内の三角関数テーブル13は、色相補正軸θに対してcosθ,sinθを算出する。三角関数テーブル13は、例えば色相補正軸θに対応する角度に対する正弦値および余弦値が格納されたルックアップテーブルである。そして、乗算回路14はcosθと彩度補正量dSとを乗じて、dS*cosθを色差信号Abの補正量とする。同様に、乗算回路15はsinθと彩度補正量dSとを乗じて、dS*sinθを色差信号Arの補正量とする。
【0079】
さらに、加算回路3は、色差信号Abと補正量dS*cosθとを加算して、出力色差信号Ab_outを生成する。同様に、加算回路4は、色差信号Arと補正量dS*sinθとを加算して、出力色差信号Ar_outを生成する。なお、加算回路3,4の後段には不図示のリミッタ回路が設けられており、加算結果が512以上となる場合は加算結果を511に、−513以下となる場合は加算結果を−512にそれぞれリミットする。
【0080】
図11は、図1の画像処理装置の入力信号である色差信号Ab,Arと、出力信号である色差信号Ab_out,Ar_outとの関係を示す図である。
【0081】
図11(a)は、補正テーブル10に図7(a)の特性が設定され、彩度の補正量dS1は正である例を示している。色差信号Ab1,Ar1の色相H1が図7(a)の色相補正軸θと等しい場合、図11(a)に示すように、色相H1は変化せず、彩度S1は大きくなるよう補正された色差信号Ab_out1,Ar_out1が出力される。また、色差信号Ab2,Ar2の色相H2が色相補正軸θより小さい場合、色差信号Ab2,Ar2は色相補正軸θの方向に補正される。その結果、図11(a)に示すように、色相H2は色相補正軸θに近づくように補正され、彩度S2は大きくなるように補正された色差信号Ab_out2,Ar_out2が出力される。
【0082】
図11(b)は、補正テーブル10に図7(b)の特性が設定され、彩度の補正量dS2は負である例を示している。色差信号Ab1,Ar1の色相H1が図7(b)の色相補正軸θと等しい場合、図11(b)に示すように、色相H1は変化せず、彩度S1は小さくなるよう補正された色差信号Ab_out1,Ar_out1が出力される。また、色差信号Ab2,Ar2の色相H2が色相補正軸θより大きい場合、dS2が負のため、色差信号Ab2,Ar2は色相補正軸θとは反対方向に補正される。その結果、図11(b)に示すように、色相H2は色相補正軸θから遠ざかるように補正され、彩度S2は小さくなるように補正された色差信号Ab_out2,Ar_out2が出力される。
【0083】
なお、上述した図1の補正テーブル10や図3の逆数テーブル等の各テーブルは、組み合わせ回路で構成してもよいし、例えばSRAMを用いて構成してもよい。
【0084】
このように、第1の実施形態では、色相Hを算出する際、色差信号Ab,Arの絶対値をビットシフトして除算を行うため、ビットシフトを行わない場合と比べ、逆数テーブル37の回路規模を1/2〜1/4に削減できる。また、0〜45度のみに対応するatanテーブル39を用いて色相Hを算出するため、0〜360度に対応するテーブルを用いる場合に比べ、atanテーブル39の回路規模を1/8にできる。
【0085】
また、予め算出した色相Hを用いて彩度Sを算出するため、平方根を計算する回路が不要となる。さらに、0〜45度のみに対応するcos逆数テーブル37を用いて彩度Sを算出するため、0〜360度に対応するテーブルを用いる場合に比べ、cos逆数テーブル37の回路規模を1/8に削減できる。
【0086】
さらに、色相Hに応じて彩度Sの補正量を算出するため、特定の色相付近の色相Hを有する色差信号に対して、彩度Sを大きくしたり小さくしたりする高画質化処理を行うことができる。
【0087】
(第2の実施形態)
以下にする第2の実施形態は、彩度Sの補正はあまり行わず、主に色相Hの補正を行うものである。
【0088】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図12では、図1と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0089】
図12の画像処理装置は、補正量演算回路5aの内部構成が図1と異なっている。すなわち、三角関数テーブル13は−cosθおよびsinθを出力する。色信号補正量算出回路8a内の乗算回路14は、−cosθと彩度補正量dSとを乗じて−dS*cosθを色差信号Arの補正量とし、乗算回路15はsinθと彩度補正量dSとを乗じてdS*sinθを色差信号Abの補正量とする。また、図12の画像処理装置はリミッタ回路16をさらに備える。
【0090】
図13は、本実施形態における補正テーブル10の設定例を示す図であり、図14は、図12の画像処理装置の入力信号である色差信号Ab,Arと、出力信号である色差信号Ab_out,Ar_outとの関係を示す図である。
【0091】
図13は、色相補正軸θを123度とする例である。この軸はいわゆるI軸と呼ばれる色相であり、肌色である。また、色相補正軸θより大きい色相Hに対してはゲインg1を負に、小さい色相Hに対してはゲインg1を正に設定する例である。このように設定することで、肌色補正ができることを示す。
【0092】
図14の色差信号Ab1,Ar1の色相H1は123度より小さく、やや赤みがかった肌色である。この場合、図14に示すように、I軸と垂直な方向に補正され、色相はI軸に近くなる。一方、彩度Sはあまり補正されない。また、色差信号Ab2,Ar2の色相H2は123度より大きく、やや緑みがかった肌色である。この場合、図14に示すように、I軸とは垂直な方向に補正され、色相はI軸に近くなる。一方、彩度Sはあまり補正されない。
【0093】
図15は、図13の設定をした場合の、補正前の色相Hと補正後の色相との関係を示す図である。図示のように、I軸の付近の色相はI軸に近づくよう補正され、色相Hが平坦化される。以上のようにI軸付近の色をI軸に近づくように補正することで、肌色の斑を軽減し、肌色の赤みや緑みを抑制することができ、好ましい肌色に補正できる。
【0094】
ここで、人間の肌の肌色は彩度Sがそれほど大きくないことが多い。そのため、肌色補正用に設定されたゲインg1が、彩度Sが大きい色差信号Ab,Arに適用されるのは望ましくない。そこで、リミッタ回路16は補正前の彩度Sが所定の値より大きい色差信号Ab,Arに対して補正を抑制する。図16は、リミッタ回路16の入出力関係の一例を示す図である。リミッタ回路16は、彩度Sとユーザ設定ゲインg0の積S*g0が所定の閾値Sthより小さい場合は、S*g0をそのまま出力し、閾値Sthを超えるに連れて、出力を小さくする。これにより、人間の肌の肌色に対しては適切に肌色補正ができ、彩度Sが大きい信号に対しては補正を抑制できる。
【0095】
このように、第2の実施形態では、−dS*cosθを色差信号Arの補正量とし、dS*sinθを色差信号Abの補正量とするため、色相補正軸θに対して垂直な方向に補正が行われる。従って、肌色補正のように、彩度Sをあまり補正せずに色相Hを補正する高画質化処理ができる。また、リミッタ回路16を設けるため、彩度Sがそれほど大きくない色差信号Ab,Arに対してのみ、適切に補正できる。
【0096】
(第3の実施形態)
以下に説明する第3の実施形態は、上述した第1および第2の実施形態を組み合わせたものである。
【0097】
図17は、本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図17では、図1と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0098】
図17の画像処理装置は、補正量演算回路5bの内部構成が図1および図12と異なっている。色信号補正量算出回路8bは選択回路17をさらに有する。三角関数テーブル13はcosθまたは−cosθと、sinθとを出力する。選択回路17は、外部から入力される不図示の制御信号に応じて、sinθおよびcosθ(または−cosθ)の一方を乗算回路14に、他方を乗算回路15に入力する。また、図17の画像処理装置内の補正特性設定回路6aは、2つの補正テーブル101,102と、選択回路18とをさらに有する。補正テーブル101には、例えば図7に示すような、第1の実施形態に示す補正を行うための特性が設定され、補正テーブル102には、例えば図13に示すような、第2の実施形態に示す補正を行うための特性が設定される。
【0099】
これにより、第1および第2の実施形態に示した高画質化処理のうち、どちらの処理を行うかを選択できる。すなわち、第1の実施形態に示す補正を行う場合、色信号補正量算出回路8b内の選択回路17は、sinθを乗算回路14に入力し、cosθを乗算回路15に入力する。また、補正特性設定回路6a内の選択回路は、補正テーブル101の出力を選択する。一方、第2の実施形態に示す補正を行う場合、色信号補正量算出回路8b内の選択回路17は、sinθを乗算回路15に入力し、−cosθを乗算回路14に入力する。また、補正特性設定回路6a内の選択回路18は、補正テーブル102の出力を選択する。
【0100】
なお、三角関数テーブル13がcosθ、−cosθ、sinθを出力し、第1の実施形態に示す補正を行う場合、選択回路17はcosθを乗算回路15に入力し、第2の実施形態に示す補正を行う場合、選択回路17は−cosθを乗算回路14に入力してもよい。
【0101】
このように、第3の実施形態では、画像処理装置内に選択回路17,18を設けるため、第1および第2の実施形態に示した高画質化処理のうち、どちらの処理を行うかを選択できる。
【0102】
(第4の実施形態)
上述した各実施形態では、単一の色相補正軸θを設定して、色差信号Ab,Arの補正を行うものであった。これに対して、以下に説明する第4の実施形態は、複数の色相補正軸θを設定するものである。
【0103】
図18は、本発明の第4の実施形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図18の画像処理装置は、複数の補正量演算回路51〜53と、加算回路19〜22とを有する。補正量演算回路51〜53の内部構成は、図1、図12、図17のいずれに示す補正量演算回路5,5a,5bであってもよい。また、図18では3つの補正量演算回路51〜53が設けられる例を示しているが、補正量演算回路の数に特に制限はない。
【0104】
各補正量演算回路51〜53は、色差信号Abの補正量dAb1〜dAb3および色差信号Arの補正量dAr1〜dAr3を出力する。加算回路21,22は補正量dAb1〜dAb3を加算し、加算回路3はその加算結果と色差信号Abとを加算して、出力信号Ab_outを出力する。また、加算回路19,20は補正量dAr1〜dAr3を加算し、加算回路4はその加算結果と色差信号Arとを加算して、出力信号Ar_outを出力する。
【0105】
例えば、補正量演算回路51には図7(a)に示すように補正ゲインg1を設定し、補正量演算回路52は図7(b)に示すように補正ゲインg1を設定し、補正量演算回路53には図13に示すように補正ゲインg1を設定すると、色相Hがマゼンタ付近であれば強調し、シアン付近であれば減衰させ、肌色であれば肌色補正を行うことができる。
【0106】
このように、第4の実施形態では、複数の補正量演算回路51〜53を設けるため、複数の色相補正軸θに対して、高画質化処理を行うことができる。
【0107】
上述した各実施形態では、色相Hを10ビット精度とする例を示したが、必ずしも10ビット精度でなくてもよい。例えば、色相Hを8ビット精度とする場合、図8の色相選択回路66は、色相Hの最上位ビットから3ビット目であるH[5]が0値であれば色相Hの最上位ビットから4ビット目〜最下位ビットであるH[4:0]を選択し、H[5]が1値であればH[4:0]の反転信号を選択すればよい。
【0108】
また、図12のリミッタ回路16を図1に設けてもよい。この場合、彩度Sが大きい色差信号Ab,Arに対する補正が抑制されるため、特定の色を強調する場合に、補正によって彩度が飽和することを防止できる。
【0109】
さらに、画像処理装置への入力信号は色差信号に限られず、他の方式で表現される色信号であってもよい。
【0110】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 色相算出回路
2 彩度算出回路
3,4 加算回路
6,6a 補正特性設定回路
7,7a 彩度補正量算出回路
8,8a,8b 色信号補正量算出回路
14,15,38,68 乗算回路
16 リミッタ回路
17 選択回路
35,36 ビットシフト回路
37 逆数テーブル
39 atanテーブル
40 色相決定回路
65 反転回路
66 色相選択回路
67 cos逆数テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の色信号を色相に変換する色相算出回路と、
前記色相に基づいて、前記第1および第2の色信号を彩度に変換する彩度算出回路と、
補正を行う色相を示す色相補正軸に対応する角度を含む所定の角度範囲内に前記色相が存在する場合に前記色相に応じて前記彩度を補正するための補正ゲインを設定する補正特性設定回路と、
前記彩度と前記補正ゲインとを用いて彩度補正量を算出する彩度補正量算出回路と、
前記色相補正軸に対応する角度の正弦値および余弦値の一方と前記彩度補正量とを乗じて第1の補正量を生成する第1の乗算回路と、
前記正弦値および余弦値の他方と前記彩度補正量とを乗じて第2の補正量を生成する第2の乗算回路と、
前記第1の色信号と前記第1の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第1の色信号に対応する第1の出力信号を生成する第1の加算回路と、
前記第2の色信号と前記第2の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第2の色信号に対応する第2の出力信号を生成する第2の加算回路と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1および第2の色信号は、それぞれ複数ビットからなるデジタル値で表される第1および第2の色差信号であり、
前記色相算出回路は、
前記第1および第2の色差信号の絶対値のうちの大きい値の最上位ビットが1になるまでビットシフトを行ったビット列からなる第1のビットシフト値を出力する第1のビットシフト回路と、
前記第1および第2の色信号の絶対値のうちの小さい値を、前記第1のビットシフト回路でのビットシフト量と同じだけビットシフトを行ったビット列からなる第2のビットシフト値を出力する第2のビットシフト回路と、
前記第1のビットシフト値の逆数を出力する逆数テーブルと、
前記第1のビットシフト値の逆数と前記第2のビットシフト値を乗じる第3の乗算回路と、
前記第3の乗算回路の出力信号の逆正接値を出力する逆正接テーブルと、
前記第1および第2の色差信号の符号と、前記第1および第2の色差信号の絶対値の差の符号と、に基づいて、前記逆正接値を前記色相に変換する色相決定回路と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記彩度算出回路は、
前記色相が0乃至45度の場合は、前記色相を出力し、
前記色相が45乃至90度の場合は、前記色相から90度を引いた値を出力し、
前記色相が135乃至180度の場合は、180度から前記色相を引いた値を出力し、
前記色相が180乃至225度の場合は、前記色相から180度を引いた値を出力し、
前記色相が225乃至270度の場合は、270度から前記色相を引いた値を出力し、
前記色相が270乃至315度の場合は、前記色相から270度を引いた値を出力し、
前記色相が315乃至360度の場合は、360度から前記色相を引いた値を出力する色相選択回路と、
前記色相選択回路の出力信号の余弦値の逆数を出力する余弦逆数テーブルと、
前記余弦逆数テーブルの出力信号と、前記第1および第2の色信号の絶対値のうちの大きい値とを乗じることにより、前記彩度を生成する第4の乗算回路と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色相選択回路は、
前記色相を表す信号の最上位から3ビット目が0値の場合は、前記色相を表す信号の最上位から4ビット目乃至最下位ビットを出力し、
前記色相を表す信号の最上位から3ビット目が1値の場合は、前記色相を表す信号の最上位から4ビット目乃至最下位ビットを反転した信号を出力することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記彩度補正量算出回路は、前記彩度が所定値よりも大きい場合に、前記彩度補正量を抑制するリミッタ回路を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記正弦値および余弦値の一方を前記第1の乗算回路に出力し、前記正弦値および余弦値の他方を前記第2の乗算回路に出力する選択を行う選択回路を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
第1および第2の色信号を色相に変換するステップと、
前記色相に基づいて、前記第1および第2の色信号を彩度に変換するステップと、
補正を行う色相を示す色相補正軸に対応する角度を含む所定の角度範囲内に前記色相が存在する場合に前記色相に応じて前記彩度を補正するための補正ゲインを設定するステップと、
前記彩度と前記補正ゲインとを用いて彩度補正量を算出するステップと、
前記色相補正軸に対応する角度の正弦値および余弦値の一方と前記彩度補正量とを乗じて第1の補正量を生成するステップと、
前記正弦値および余弦値の他方と前記彩度補正量とを乗じて第2の補正量を生成するステップと、
前記第1の色信号と前記第1の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第1の色信号に対応する第1の出力信号を生成するステップと、
前記第2の色信号と前記第2の補正量とを加算することにより、特定の色相に応じて彩度を補正した、前記第2の色信号に対応する第2の出力信号を生成するステップと、を備えることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−35596(P2011−35596A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178955(P2009−178955)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.カラーコーン
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】