説明

画像処理装置および画像読取装置

【課題】簡素な構成で、第1部材と前記第2部材との間に跨がる電線が前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込まれることを防止できる、画像処理装置および画像読取装置を提供する。
【解決手段】外側部材72が内側部材71内を開放する開状態では、挟み込み防止片92は、ミシン目91から外側部材72側に延びる領域に配置される。外側部材72が開状態から内側部材71に重なる閉状態に変位されると、挟み込み防止片92は、ミシン目91を中心に回動し、ミシン目91を含む内側部材71側の領域に配置される。内側部材71と外側部材72との間に跨がる電線113は、挟み込み防止片92の電線挿通孔99Aを通されることにより、挟み込み防止片92に対して位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の挟み込み防止構造を備える画像処理装置および画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、イメージスキャナなどの画像処理装置において、第1部材と第2部材とが重ねられることにより、1つの部材が構成されるものがある。
【0003】
このような構成において、第1部材と第2部材との間に電線が架設される場合、その電線に対して注意を払いつつ、第2部材を第1部材に組み付けなければならない。すなわち、第2部材が第1部材から離間された状態では、第1部材と第2部材との間で電線がほぼ延び切った状態で架設される。そして、第2部材が第1部材に近づくにつれて、電線が弛むので、第1部材への第2部材の組付けに集中していると、その弛んだ電線が第1部材と第2部材との間に挟み込まれるおそれがある。したがって、弛んだ電線が第1部材と第2部材との間に挟み込まれないように注意しつつ、第2部材を第1部材に重ねる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−216828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電線に注意が取られていると、第1部材への第2部材の組付け作業性が低下する。
【0006】
本発明の目的は、簡素な構成で、第1部材と前記第2部材との間に跨がる電線が第1部材と第2部材との間に挟み込まれることを防止できる、電線の挟み込み防止構造を備える画像処理装置および画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置は、第1部材と、前記第1部材に重なる閉状態と前記第1部材内を開放する開状態とに変位する第2部材とを備える筐体と、前記第2部材が前記第1部材に重ねられるときに、前記第1部材と前記第2部材との間に跨がって設けられる電線が前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込まれることを防止するための防止構造とを備えている。前記防止構造は、前記挟み込み防止構造は、前記第1部材内を前記第1部材の一端縁と平行に延びる揺動軸線を中心に、前記揺動軸線を含む前記第1部材側の領域と前記揺動軸線から前記開状態の前記第2部材側に延びる領域との間で揺動可能に設けられる挟み込み防止片を備えている。そして、前記電線が前記挟み込み防止片に対して位置決めされている。
【0008】
挟み込み防止片は、第1部材内を第1部材の一端縁と平行に延びる揺動軸線を中心に揺動可能に設けられている。第2部材が第1部材内を開放する開状態では、挟み込み防止片は、揺動軸線から第2部材側に延びる領域に配置される。そして、第2部材が開状態から第1部材に重なる閉状態に変位されると、挟み込み防止片は、揺動軸線を中心に回動し、揺動軸線を含む第1部材側の領域に配置される。
【0009】
第1部材と第2部材との間に跨がる電線は、挟み込み防止片に対して位置決めされている。そのため、第2部材が第1部材に重ねられるときに、電線の位置が挟み込み防止片に対してずれることなく、電線の一部が挟み込み防止片と第1部材との間に挟み込まれる。よって、挟み込み防止片を設けるという簡素な構成で、電線が第1部材と第2部材との間に挟み込まれることを防止できる。
【0010】
防止構造は、電線を第1部材に対して位置決めするための位置決め片を備えていることが好ましい。
【0011】
電線が第1部材に対して位置決めされるので、挟み込み防止片と第1部材との間で電線の位置がずれることを防止できる。その結果、電線が第1部材と第2部材との間に挟み込まれることをさらに防止できる。
【0012】
挟み込み防止片および位置決め片は、それぞれ可撓性を有する1枚のシート状部材を2つ折りにして形成される一方片および他方片であることが好ましい。
【0013】
1枚のシート状部材を用いた簡素な構成で、挟み込み防止片および位置決め片を形成することができる。
【0014】
シート状部材には、一方片と他方片との境界にミシン目が形成されていることが好ましい。
【0015】
ミシン目が形成されていれば、シート状部材を一方片と他方片との境界で折り曲げやすい。よって、1枚のシート状部材から挟み込み防止片および位置決め片を容易に形成することができる。
【0016】
位置決め片および挟み込み防止片に、それぞれ第1孔および第2孔が形成されていてもよい。この場合、次のようにして、電線が第1部材と第2部材との間に延びていてもよい。電線は、第1部材と位置決め片との間から第1孔に挿通されて、位置決め片と挟み込み防止片の間に引き出される。そして、電線は、第2孔に挿通されて、挟み込み防止片と第2部材との間に引き出される。
【0017】
電線は、位置決め片の第1孔に挿通されることにより、位置決め片に対して位置決めされる。また、電線は、挟み込み防止片の第2孔に挿通されることにより、挟み込み防止片に対して位置決めされる。よって、簡素な構成で、電線を位置決め片および挟み込み防止片に対して位置決めすることができる。
【0018】
位置決め片に、揺動軸線に平行な方向に延びる1対の第1切り込みおよび1対の第1切り込みを結ぶ第2切り込みが入れられていてもよい。そして、第1切り込みおよび第2切り込みによって周囲から分離される部分が1対の第1切り込み間を延びる折り曲げ線で折り曲げられることにより、電線を包み込んで保持する電線保持部が形成されていてもよい。
【0019】
電線保持部に電線が保持されることにより、電線が第1部材に対して位置決めされる。
【0020】
電線に第1電線および第1電線に供給される電圧よりも低い電圧が供給される第2電線が含まれる場合、電線保持部に第1電線が保持されることが好ましい。
【0021】
これにより、第2電線よりも高い電圧が供給される第1電線を位置決め片に対して確実に位置決めすることができる。そして、第1電線が第2電線に近づくことが防止されるので、第2電線が信号線である場合には、第1電線からのノイズが第2電線を流れる信号に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0022】
また、複数の電線が設けられる場合、電線保持部に電線が保持されるとともに、電線保持部が形成されることによって生じる開口に他の電線が通されるとよい。
【0023】
これにより、複数の電線を位置決め片に対して位置決めすることができる。
【0024】
位置決め片は、第1部材に対して位置決めされていることが好ましい。
【0025】
位置決め片が第1部材に対して位置決めされるという簡素な構成で、電線を第1部材に対して位置決めすることができる。
【0026】
本発明に係る画像読取装置は、前記画像処理装置と、前記第1部材に設けられ、シートに形成された画像を読み取る画像読取部と、前記第1部材に設けられ、前記画像読取部を制御するメイン基板と、前記第2部材に設けられ、手動によって操作されるスイッチと、前記第2部材に設けられて、前記メイン基板と通信可能に接続され、前記スイッチから信号が入力されるサブ基板と、前記第1部材に設けられたセンサと、前記サブ基板と前記センサとを接続する電線とを含む。
【0027】
よって、この画像読取装置では、前述の画像処理装置に関して述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
画像読取装置は、画像読取部によって読み取られるべき画像が形成された前記シートが載置されるトレイをさらに備えていてもよい。この場合、センサは、トレイにシートが載置されたことを検出するシート載置センサであってもよい。
【0029】
たとえば、メイン基板が休止しているスリープ状態で、トレイにシートが載置されると、シート載置センサからの信号が電線を通してサブ基板に入力される。この信号の入力に応答して、メイン基板を起動させることにより、スイッチからメイン基板への信号の入力を有効化することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、簡素な構成で、第1部材と前記第2部材との間に跨がる電線が第1部材と第2部材との間に挟み込まれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るイメージスキャナ1の外観斜視図であり、前記イメージスキャナ1の非使用時の状態を示す。
【図2】図2は、前記イメージスキャナ1の外観斜視図であり、前記イメージスキャナ1の使用時の状態を示す。
【図3】図3は、前記イメージスキャナ1の断面図である。
【図4】図4は、前記イメージスキャナ1の上ユニット5の分解斜視図である。
【図5】図5は、前記イメージスキャナ1の斜視図であり、前記上ユニット5の外側部材が開かれた状態を示す。
【図6】図6は、前記上ユニット5の斜視図であり、前記イメージスキャナ1の外側部材72が開かれた状態を示す。
【図7】図7は、前記イメージスキャナ1に設けられるシート状部材73の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<イメージスキャナの外観構成>
【0033】
図1に示されるように、画像読取装置の一例としてのイメージスキャナ1は、スキャナ本体2、供給トレイ3および排出トレイ4を備えている。
【0034】
スキャナ本体2には、上ユニット5および下ユニット6が含まれる。スキャナ本体2の正面には、シート排出口7が上ユニット5および下ユニット6に跨がって形成されている。
【0035】
なお、イメージスキャナ1を平面上に載置した状態で、そのイメージスキャナ1を正面側から見て、前後、左右および上下を規定する。そして、図1以降の各図では、図面の理解を助けるために、必要に応じて、その規定された方向を矢印で示す。
【0036】
上ユニット5は、下ユニット6に対して、下ユニット6の前上端縁に沿って左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に結合されている。そして、上ユニット5は、揺動により、前方に下り傾斜した通常姿勢、すなわち図2に示される姿勢と、その通常姿勢から後端部が上方に持ち上がった非図示のメンテナンス姿勢とに変位可能である。上ユニット5がメンテナンス姿勢をなす状態では、上ユニット5と下ユニット6との間が開放され、シートのジャム処理やメンテナンスを行うことができる。
【0037】
上ユニット5の上面には、図2に示されるように、操作表示部8が設けられている。操作表示部8には、複数のスイッチの一例としての操作ボタン9およびパイロットランプ10などが配置されている。
【0038】
下ユニット6は、左端部および右端部に、それぞれ側面視台形状のサイドパネル11を備えている。この1対のサイドパネル11により、イメージスキャナ1の左右の側面が形成されている。上ユニット5が通常姿勢をなす状態で、1対のサイドパネル11により、上ユニット5が左右から挟まれて、上ユニット5の左右の側面が覆われる。また、その状態で、上ユニット5の上面は、各サイドパネル11の上端縁とほぼ同一の面内に配置される。
【0039】
トレイの一例としての供給トレイ3は、下ユニット6に対して、下ユニット6の後上端縁に沿って左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に支持されている。供給トレイ3は、揺動により、スキャナ本体2の上面に上方から対向する収納姿勢、すなわち図1に示される姿勢と、スキャナ本体2の後上端部から後上方に延びる使用姿勢、すなわち図2に示される姿勢とに変位可能である。また、供給トレイ3は、スキャナ本体2の平面形状とほぼ同形状の板状に形成されている。そのため、供給トレイ3が収納姿勢をなす状態で、スキャナ本体2の上面は、供給トレイ3によって覆い隠される。
【0040】
供給トレイ3が使用姿勢をなす状態で、左右方向に延びる略矩形状のシート供給口12が後上方に開放される。
【0041】
供給トレイ3が使用姿勢をなす状態で、左右1対のリブ状のシート幅ガイド部材13が形成される。1対のシート幅ガイド部材13は、それらの間の中央をセンタ基準として、互いに同じ移動量で近接/離間可能に設けられている。
【0042】
排出トレイ4は、略矩形板状に形成されている。排出トレイ4は、スキャナ本体2の最下部に収納された状態、すなわち図1に示される状態と、シート排出口7からスキャナ本体2の前方に引き出された状態、すなわち図2に示される状態とに変位可能に設けられている。
<イメージスキャナの内部構成>
【0043】
上ユニット5および下ユニット6は、図3に示されるように、それぞれ上フレーム31および下フレーム32を備えている。上フレーム31の後端縁および下フレーム32の後端縁により、シート供給口12が形成されている。
【0044】
シート供給口12の奥側には、供給ローラ33が配置されている。供給ローラ33は、下フレーム32により、左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。供給ローラ33は、シートの搬送時に、右側から見て反時計回りに回転する。
【0045】
供給ローラ33の前上方には、規制部材34、シート押さえ部材35および分離片ユニット36が設けられている。規制部材34、シート押さえ部材35および分離片ユニット36は、上フレーム31に取り付けられている。
【0046】
規制部材34は、供給ローラ33側に尖った側面視略三角形状に形成されている。
【0047】
シート押さえ部材35は、板ばねからなる。シート押さえ部材35の基端部は、上フレーム31の後端部に取り付けられ、その遊端部は、供給ローラ33の周面に前上方から当接している。
【0048】
分離片ユニット36は、ゴムからなる分離片37を備えている。分離片37は、規制部材34に対して供給ローラ33の回転方向の下流側に配置されている。分離片37の表面は、供給ローラ33の周面に弾性的に接触している。
【0049】
供給ローラ33に対してシートの搬送方向の下流側には、LFローラ38,39が左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0050】
LFローラ38,39に対してシートの搬送方向の下流側には、画像読取部の一例としての上CISユニット41および下CISユニット42が設けられている。上CISユニット41および下CISユニット42は、それぞれ上ユニット5および下ユニット6に保持されている。
【0051】
上CISユニット41および下CISユニット42の下流側には、排出ローラ43,44が左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。
<イメージスキャナにおける画像の読取り>
【0052】
イメージスキャナ1では、シートの一方面および他方面に形成されている画像を選択的に読み取ることができる。また、イメージスキャナ1では、シートの両面に形成されている画像を並行して読み取ることができる。以下、シートの搬送および画像の読取りについて時系列的に説明する。
【0053】
1対のシート幅ガイド部材13の間の間隔が読取対象のシートの幅に合わされる。その後、読取対象のシートの前端部が1対のシート幅ガイド部材13の間に後上方から差し込まれる。シートの後端部は、供給トレイ3上に載置される。
【0054】
シートの自重により、シートが前下方に滑り、シートの先端部が供給ローラ33の周面上に導かれる。そして、最下位置のシートは、その先端部が分離片ユニット36に接触すると、分離片ユニット36との摩擦抵抗によって停止する。また、上側のシートは、その先端縁がシート押さえ部材35に当接することによって停止する。これにより、シートのセットが完了する。
【0055】
また、シートの進入により、シート押さえ部材35の遊端部が持ち上げられ、シートの上面にシート押さえ部材35が当接する。シート押さえ部材35の付勢力により、最下位置のシートが供給ローラ33の周面に押しつけられる。
【0056】
供給ローラ33が右側から見て反時計回りに回転すると、最下位置のシートと供給ローラ33の周面との摩擦力により、最下位置のシートが供給ローラ33の周面とともに移動する。また、最下位置のシートとその直上のシートとの摩擦力により、最下位置のシートにその上方のシートがつられて移動する。そして、それらのシートの先端が分離片37の表面に当接すると、分離片37により、上方のシートの移動が規制されて、最下位置のシートのみが分離片37と供給ローラ33の周面とのニップ部分を通過する。
【0057】
シートの先端がLFローラ38,39のニップ部分に当接すると、LFローラ38,39の回転により、シートの先端部がそのニップ部分に引き込まれる。そして、LFローラ38,39の回転により、シートが搬送方向の下流側にさらに搬送される。
【0058】
シートの搬送が進むと、シートの上面および下面がそれぞれ上CISユニット41および下CISユニット42と対向する。そして、上CISユニット41および下CISユニット42からそれぞれシートの上面および下面に光が照射される。シートの上面および下面での反射光がそれぞれ上CISユニット41および下CISユニット42に内蔵されたイメージセンサに受けられることにより、シートの上面および下面に形成されている画像の読取りが達成される。
【0059】
その後、シートの先端が排出ローラ43,44のニップ部分に当接すると、排出ローラ43,44の回転により、シートの先端部がそのニップ部分に引き込まれる。そして、排出ローラ43,44の回転により、シートが搬送方向の下流側に搬送される。シートの後端が排出ローラ43,44から離れると、シートは、排出トレイ4上に排出される。
<上ユニットの構成>
【0060】
筐体の一例としての上ユニット5は、図4に示されるように、第1部材の一例としての内側部材71、第2部材の一例としての外側部材72およびシート状部材73を互いに分離可能に備えている。
<内側部材の構成>
【0061】
内側部材71は、外形が左右方向に長い矩形状に形成されている。内側部材71は、上フレーム31と、上フレーム31を左右両側から挟む1対のサイドプレート74とを一体的に備えている。図5に示されるように、内側部材71の下端部は、下ユニット6に対して下ユニット6の前上端縁に沿って左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に結合される。これにより、上ユニット5は、通常姿勢とメンテナンス姿勢とに変位可能に設けられている。
【0062】
また、内側部材71の上端縁には、図6に示されるように、複数の被係止部77が左右方向に間隔を空けて設けられている。各被係止部77は、後上方に先細りとなる断面略三角形状に形成されている。
<外側部材の構成>
【0063】
外側部材72は、内側部材71に対向する矩形状の対向部78と、対向部78の周縁から外側部材に向けて延びる周縁部79とを一体的に備えている。図2に示される操作表示部8は、対向部78に設けられている。
【0064】
周縁部79の後下端部には、図4に示されるように、複数の係止部80が左右方向に間隔を空けて設けられている。
【0065】
周縁部79の上端部には、内側部材71の各被係止部77に対応して、平板状の係止部81が左右方向に間隔を空けて設けられている。
【0066】
各係止部81が被係止部77に係止され、各係止部80が内側部材71の下端縁に係止されることにより、外側部材72の閉状態が維持される。そして、各係止部80が内側部材71の下端縁から外され、各係止部81が被係止部77から外されることにより、外側部材72の閉状態が解除される。
<シート状部材の構成>
【0067】
シート状部材73は、図7に示されるように、可撓性を有する略矩形状のフィルムシートからなる。シート状部材73には、その長手方向と直交する方向(短辺に沿う方向)の中央より一方側に少し片寄った位置に、長手方向(長辺に沿う方向)に延びるミシン目91が形成されている。そして、シート状部材73は、ミシン目91で2つ折りにされることにより、ミシン目91の一方側および他方側に、それぞれ挟み込み防止片92および位置決め片93を有している。
【0068】
挟み込み防止片92には、一部が不連続な環状の切り込みが入れられている。具体的には、挟み込み防止片92には、1対の第1切り込み94,95と、第2切り込み96とが入れられている。1対の第1切り込み94,95は、長手方向と直交する方向に間隔を空けて、それぞれ長手方向に直線状に延びている。第2切り込み96は、各第1切り込み94,95の一端間を結んでいる。第2切り込み96は、途中部が凸状に屈曲している。
【0069】
また、挟み込み防止片92には、各第1切り込み94,95の他端間を結ぶ折り曲げ線97に対して第2切り込み96側と反対側に、第2切り込み96の途中部の凸状に対応して、折り曲げ線97と平行をなす差込用スリット98が形成されている。
【0070】
さらに、挟み込み防止片92には、3個の電線挿通孔99A,99B,99Cが互いに間隔を空けて形成されている。
【0071】
位置決め片93には、3個の電線挿通孔101A,101B,101Cと、4個の突起物挿通孔102A,102B,102C,102Dと、2個の兼用孔103A,103Bとが互いに間隔を空けて形成されている。
【0072】
位置決め片93の周縁部104は、挟み込み防止片92側に折り曲げられている。この折り曲げにより、位置決め片93にこしがつけられている。
<電線の挟み込み防止構造>
【0073】
内側部材71の外側部材72と対向する面には、たとえば、供給トレイ3上にシートが載置されたことを検出するためのシート載置センサ111と、シートの通過を検出するためのシート通過センサ112と、シートの重送を検出するための重送センサ201とが設けられている。シート載置センサ111およびシート通過センサ112には、それぞれ第2電線の一例としての電線113,114の一端が接続されている。電線113,114には、たとえば、3Vの電圧が供給される。第1電線の一例としての電線115は、超音波式の重送センサ201に接続されている。電線115には、電線113,114に供給される電圧よりも高い電圧、たとえば、24Vが供給される。
【0074】
一方、外側部材72の内側部材71と対向する面には、サブ基板121が設けられている。サブ基板121は、操作表示部8の裏側に配置されている。サブ基板121には、操作表示部8の操作ボタン9およびパイロットランプ10(図2参照)が電気的に接続されている。操作ボタン9が操作されると、操作ボタン9からサブ基板121にスイッチ信号が入力される。また、サブ基板121からパイロットランプ10に駆動電流が供給される。さらに、サブ基板121は、ハーネス122を介して、下ユニット6の底部に配置されたメイン基板123(図3,5参照)と電気的に接続されている。
【0075】
図5,6に示されるように、シート状部材73は、ミシン目91(折り目)が内側部材71の下端縁の上方でその下端縁に沿って延びるように、内側部材71と外側部材72との間に配置される。位置決め片93の各突起物挿通孔102A,102B,102C,102Dおよび各兼用孔103A,103Bには、内側部材71の外側部材72と対向する面に形成された突起物125が挿通される。これにより、位置決め片93は、内側部材71に対して位置決めされる。挟み込み防止片92は、ミシン目91を揺動軸線として、内側部材71側の領域内で位置決め片93に対向する位置と、ミシン目91から開状態の外側部材72側に延びる領域との間で揺動することができる。
【0076】
シート載置センサ111から延びる電線113は、位置決め片93の第1孔の一例としての電線挿通孔101Aを通されて、挟み込み防止片92と位置決め片93との間に引き出されている。そして、電線113は、挟み込み防止片92の第2孔の一例としての電線挿通孔99Aを通されて、外側部材72側に引き出されている。さらに、電線113は、挟み込み防止片92の別の電線挿通孔99Bを通されて、挟み込み防止片92と位置決め片93との間に引き出され、挟み込み防止片92の端縁を経由して、サブ基板121に接続されている。
【0077】
シート通過センサ112から延びる電線114は、位置決め片93の第1孔の一例としての電線挿通孔101Bを通されて、挟み込み防止片92と位置決め片93との間に引き出されている。そして、電線114は、位置決め片93の兼用孔103Aを通されて、内側部材71側に引き出されている。さらに、電線114は、位置決め片93の電線挿通孔101Cを通されて、挟み込み防止片92と位置決め片93との間に再び引き出されている。第1切り込み94,95および第2切り込み96で囲まれる折り曲げ片131は、折り曲げ線97に沿って位置決め片93側に折り曲げられている。電線114は、折り曲げ片131の折り曲げによって形成される開口132を通されて、挟み込み防止片92と外側部材72との間に引き出され、サブ基板121に接続されている。
【0078】
重送センサに接続された電線115は、位置決め片93の第1孔の一例としての兼用孔103Bを通されて、挟み込み防止片92と位置決め片93との間に引き出されている。そして、電線113は、位置決め片93の突起物挿通孔102Aから突出した突起物125に保持されて、挟み込み防止片92の開口132の右側に延びている。開口132の右側において、折り曲げ片131は、電線115を包み込むように湾曲し、第2切り込み96の途中部の凸状に対応した突片133が差込用スリット98に差し込まれることにより、電線115を挟み込み防止片92との間に保持する電線保持部134を形成している。電線115は、挟み込み防止片92の第2孔の一例としての電線挿通孔99Cを通されて、外側部材72側に引き出され、サブ基板121に接続されている。
【0079】
上ユニット5の組立ての際には、まず、外側部材72の各係止部81が内側部材71の被係止部77に係止される。次に、内側部材71と開状態の外側部材72との間に、シート状部材73が配置される。また、内側部材71から延びる電線113〜115がシート状部材73の電線挿通孔99Aなどに通され、各電線113〜115がサブ基板121に接続される。その後、外側部材72が内側部材71に重ね合わされる。そして、外側部材72の各係止部80が内側部材71の下端縁に係止される。これにより、上ユニット5の組立てが完了する。
【0080】
上ユニット5の組み立て後は、外側部材72の各係止部80が内側部材71の下端縁から外され、外側部材72の各係止部81が内側部材71の被係止部77から外されることにより、外側部材72が内側部材71から分離される。
<作用効果>
【0081】
挟み込み防止片92は、内側部材71内を外側部材72の下端縁と平行に延びるミシン目91を中心に揺動可能に設けられている。外側部材72が内側部材71内を開放する開状態では、挟み込み防止片92は、ミシン目91から外側部材72側に延びる領域に配置される。そして、外側部材72が開状態から内側部材71に重なる閉状態に変位されると、挟み込み防止片92は、ミシン目91を中心に回動し、ミシン目91を含む内側部材71側の領域に配置される。
【0082】
内側部材71と外側部材72との間に跨がる電線113は、位置決め片93の電線挿通孔101Aを通されることにより、位置決め片93に対して位置決めされている。また、電線113は、挟み込み防止片92の電線挿通孔99Aを通されることにより、挟み込み防止片92に対して位置決めされている。このように、簡素な構成で、電線113が位置決め片93および挟み込み防止片92に対して位置決めされている。電線114,115についても同様である。
【0083】
電線113〜115が挟み込み防止片92に対して位置決めされているので、外側部材72が内側部材71に重ねられるときに、電線113〜115の位置が挟み込み防止片92に対してずれることなく、電線113〜115の一部が挟み込み防止片92と内側部材71との間に挟み込まれる。よって、挟み込み防止片92を設けるという簡素な構成で、電線が内側部材71と外側部材72との間に挟み込まれることを防止できる。
【0084】
また、電線113〜115が位置決め片93に対して位置決めされ、位置決め片93が内側部材71に対して位置決めされることにより、電線113〜115は、内側部材71に対して位置決めされている。
【0085】
電線113〜115が内側部材71に対して位置決めされているので、挟み込み防止片92と内側部材71との間で電線113〜115の位置がずれることを防止できる。その結果、電線113〜115が内側部材71と外側部材72との間に挟み込まれることをさらに防止できる。
【0086】
また、電線113,114よりも高い電圧が供給される電線115は、折り曲げ片131が電線115を包み込むように折り曲げられることによって形成される電線保持部134に保持されている。
【0087】
これにより、電線115は、挟み込み防止片92と位置決め片93との間で確実に位置決めされる。そして、電線115が電線113,114に近づくことが防止されるので、電線115からのノイズが電線113,114を流れるセンサ信号に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0088】
挟み込み防止片92および位置決め片93は、可撓性を有する1枚のシート状部材73を2つ折りにして形成されている。
【0089】
1枚のシート状部材73を用いた簡素な構成で、挟み込み防止片92および位置決め片93を形成することができる。
【0090】
そして、挟み込み防止片92と位置決め片93との境界にミシン目91が形成されているので、シート状部材73を容易に折り曲げることができ、1枚のシート状部材73から挟み込み防止片92および位置決め片93を容易に形成することができる。
【0091】
また、イメージスキャナ1には、シート載置センサ111、サブ基板121およびメイン基板123が備えられている。シート載置センサ111は、電線113を介して、サブ基板121と電気的に接続されている。また、サブ基板121は、ハーネス122を介して、メイン基板123と電気的に接続されている。
【0092】
たとえば、メイン基板123が休止している状態(スリープ状態)で、供給トレイ3にシートが載置されると、シート載置センサ111からの信号が電線113を通してサブ基板121に入力される。この信号の入力に応答して、メイン基板123を起動させることにより、操作ボタン9からメイン基板123への信号の入力を有効化することができる。
<変形例>
【0093】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0094】
前述の実施形態では、画像処理装置および画像読取装置の一例として、イメージスキャナ1を取り上げたが、本発明に係る挟み込み防止構造は、イメージスキャナ1などの画像読取装置以外の機器に適用することが可能である。たとえば、複写機や複合機などの画像処理装置における自動原稿供給装置と画像形成装置本体との間での電線の挟み込みを防止するために、本発明に係る挟み込み防止構造を適用することができる。
【0095】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 イメージスキャナ
5 上ユニット
3 供給トレイ
9 操作ボタン
41 上CISユニット
42 下CISユニット
71 内側部材
72 外側部材
73 シート状部材
91 ミシン目
92 挟み込み防止片
93 位置決め片
94 第1切り込み
95 第1切り込み
96 第2切り込み
97 折り曲げ線
99A 電線挿通孔
99C 電線挿通孔
101A 電線挿通孔
101B 電線挿通孔
103B 兼用孔
111 シート載置センサ
112 シート通過センサ
113 電線
114 電線
115 電線
121 サブ基板
123 メイン基板
134 電線保持部
132 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、前記第1部材に重なる閉状態と前記第1部材内を開放する開状態とに変位する第2部材とを備える筐体と、
前記第2部材が前記第1部材に重ねられるときに、前記第1部材と前記第2部材との間に跨がって設けられる電線が前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込まれることを防止するための防止構造とを備え、
前記防止構造は、前記第1部材内を前記第1部材の一端縁と平行に延びる揺動軸線を中心に、前記揺動軸線を含む前記第1部材側の領域と前記揺動軸線から前記開状態の前記第2部材側に延びる領域との間で揺動可能に設けられる挟み込み防止片を備え、
前記電線が前記挟み込み防止片に対して位置決めされている、画像処理装置。
【請求項2】
前記防止構造は、前記電線を前記第1部材に対して位置決めするための位置決め片を備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記挟み込み防止片および前記位置決め片は、それぞれ可撓性を有する1枚のシート状部材を2つ折りにして形成される一方片および他方片である、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記シート状部材には、前記一方片と前記他方片との境界にミシン目が形成されている、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記位置決め片には、第1孔が形成され、
前記挟み込み防止片には、第2孔が形成され、
前記電線は、前記第1部材と前記位置決め片との間から前記第1孔に挿通され、前記位置決め片と前記挟み込み防止片の間を通されて、前記第2孔に挿通され、前記挟み込み防止片と前記第2部材との間に延びている、請求項2〜4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記位置決め片に前記揺動軸線に平行な方向に延びる1対の第1切り込みおよび1対の前記第1切り込みを結ぶ第2切り込みが入れられて、前記第1切り込みおよび前記第2切り込みによって周囲から分離される部分が1対の前記第1切り込み間を延びる折り曲げ線で折り曲げられることによって形成され、前記電線を包み込んで保持する電線保持部を備える、請求項2〜5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記電線には、第1電線と、前記第1電線に供給される電圧よりも低い電圧が供給される第2電線とが含まれ、
前記電線保持部は、前記第1電線を保持する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記電線は、複数設けられており、
前記電線保持部が形成されることによって生じる開口に前記電線保持部によって保持される前記電線と異なる前記電線を通すことにより、前記電線が前記位置決め片に対して位置決めされる、請求項6または7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記位置決め片は、前記第1部材に対して位置決めされている、請求項2〜8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
前記第1部材に設けられ、シートに形成された画像を読み取る画像読取部と、
前記第1部材に設けられ、前記画像読取部を制御するメイン基板と、
前記第2部材に設けられ、手動によって操作されるスイッチと、
前記第2部材に設けられて、前記メイン基板と通信可能に接続され、前記スイッチから信号が入力されるサブ基板と、
前記第1部材に設けられたセンサと、
前記サブ基板と前記センサとを接続する電線とを含む、画像読取装置。
【請求項11】
前記画像読取部によって読み取られるべき画像が形成された前記シートが載置されるトレイをさらに含み、
前記センサは、前記トレイに前記シートが載置されたことを検出するシート載置センサである、請求項10に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115772(P2013−115772A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262885(P2011−262885)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】