説明

画像処理装置と画像記録装置とプログラム

【課題】 多値の画像データの変換による画質劣化を解消する。
【解決手段】 整数変換部102は画像データから整数部出力値を、小数変換部103は画像データから小数部変換値をそれぞれ出力し、閾値設定部107は閾値群を出力し、2値化部104は小数部変換値から小数部2値を出力し、加算器105は整数部変換値と小数部2値と誤差メモリ106からの誤差成分とを加算した補正データを出力し、比較判定部108は補正データと閾値群から数2の演算によって出力値Out(x,y)を求めて決定し、出力端子111へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多値の画像データを高精細かつ高階調に処理する画像処理装置と画像記録装置とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ,ディジタルカメラを含む入力装置で読み取った多値の画像データを、プリンタ,ディスプレイを含む出力装置に出力する画像入出力システムが存在する。
上記のような画像入出力システムには、入力装置で読み取った多値(例えば、8ビット精度ならば256階調)の画像データを、出力装置が出力可能な階調数の画像データに変換し、擬似的に連続階調を表現する擬似中間調処理を行うものが存在する。
また、出力装置がドットのON/OFFのみの2値しか表現できないときには2値化処理を行うものがある。
上記2値化処理の中で、高速処理が可能なディザ処理や、解像性と階調性に共に優れたものとして誤差拡散処理や平均誤差最小法処理が存在する。
【0003】
上記誤差拡散法と平均誤差最小法処理は、誤差の拡散作業をいつ行うかが異なるだけであり、論理的には等価なものである。
さらに、上記誤差拡散処理を、2値だけでなく3値以上の階調数にも適応したものとして、多値誤差拡散処理が存在する。
この多値誤差拡散処理は、2値誤差拡散処理と同様に、階調性と解像性に優れた処理が可能である。
一方、出力装置における3値以上の階調数を確保するために各種の方式がある。
例えば、出力装置としてインクジェットプリンタにおいては、吐出するインク量を制御することにより大中小ドットとドット径を変化させたり、ドットの重ね打ちや濃度を異なったインク又は濃淡インクを用いたりして3値以上の階調数を再現している。
一般的には淡インクの濃度を濃インクの1/2〜1/6に希釈している。
【0004】
また、グラビア印刷のような凹版印刷において版に掘り込む深さを変化させることで紙に転写するインク量を制御し、3値以上の階調数を確保する方式がある。
ところで、印刷機、インクジェットプリンタ、電子写真で印刷したとき、インクのにじみや広がりにより得られる網点が元の網点に比べて大きく太る現象が生じる。このような減少を「ドットゲイン」という。
上記誤差拡散処理では、局所的に発生した誤差を近傍画素に拡散して濃度を保存するようにフィードバックをかけている。
しかしながら、上述したドットゲインがあるため、高濃度部において元の入力値に対して網点が大きくなり、高濃度部において濃度飽和が生じ易い。
【0005】
しかし、ディザ処理であればドットゲインの影響を考慮して設計することができるので問題はない。
ディザ処理では、ディザを構成する最小単位セルを複数組み合わせて矩形としたスーパーセルを用いるのが一般的である。
例えば、スーパーセルのサイズが32×32である1ビット(bit)ディザ処理用のディザであれば1025個のドットパターンを出力することができる。
ところで、一般的な入力装置で読み取った多値は8bit=256値であるため1025個のドットパターンを必要としない。
この1025個というスーパーセルのサイズから求まる論理的に出力可能な階調数から、ドットゲインを考慮して目標となる明度または濃度曲線となるように256個のドットパターンを選択することで、ドットゲインの影響を見え難くすることができる。
【0006】
一般的なプリンタで誤差拡散処理を用いるには、ドットゲインがあるため、γ変換した画像を誤差拡散処理する必要がある。
図6に示すように、γ変換後の値が実数となるようにすれば誤差拡散処理でも問題はない。図6に示す数値では、あるプリンタにおいて階調値1が入力されたとき、0.52という値で誤差拡散処理を実施すればドットゲインにより入力値1に相当する明度又は濃度を表現することができる理想出力値を示している。
図6に示すようなγ変換後の値が実数とすると誤差拡散部も実数で演算しなければならない。
この場合、誤差を記憶するメモリなどの容量が大きくなってしまう。
【0007】
また、ドットゲインを考慮した誤差拡散処理として、特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。
特許文献1に記載されている誤差拡散処理では、誤差拡散部において入力値8bitを14bitに変換して誤差拡散を行う。この記述では、bit数を増やすときに単純に各入力値を64倍するのではなく、ドットゲインを考慮して狙いとなる明度または濃度を表現する値に変換することで階調性を良好にしている。
しかし、特許文献1の技術では、誤差メモリはγ変換後の値が実数とした誤差拡散処理よりは容量が少ないものの、8bit入力の誤差拡散処理よりは多い容量が必要となってしまう。
【0008】
また、特許文献2の技術では、誤差を拡散する係数の合計を1未満とすることにより、濃度保存しないようにしている。これにより、高濃度部では濃度飽和し難いという特性が得られる。このように、高濃度部では濃度飽和し難い特許文献2の技術であるが、一律に誤差を100%未満の値で分配するので、ハイライト部ではドットの生成が遅れてしまうという問題がある。
そこで、誤差の減算部において複数の減算用テーブルを使用することにより、ドットゲインを考慮した狙いとなる明度または濃度を表現する手法が考えられる。
このような手法では、誤差メモリを特許文献1の技術のように多く必要としない。
しかし、上記手法は省メモリで実行できるものであるが、印字モード毎に階調特性を記載した複数の減算用テーブルを切り替えなければならなくなる。
【0009】
これは、ハードウェアで誤差拡散処理を行う場合、多数のモードに対応し難くなってしまうという欠点がある。
また、ドットゲインを考慮した誤差拡散用のγ変換技術として、図6に示すようにγ変換後の値が実数値の小数点以下を面積階調で表現する技術が考えられる。
ところで、特許文献3に記載の技術のように、多値誤差拡散処理には入力画素に応じて閾値を設定するものがある。
この技術は、多値の切り替わり部で生じるドット生成遅れによるグラデーション中に生じる擬似輪郭を抑制する技術であるが、多値誤差拡散処理の際にγ変換を行ったところ、多値の切り替わり部において画質劣化が生じてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2007−124195号公報
【特許文献2】特開2004−72293号公報
【特許文献3】特開2004−112089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように従来のいずれの技術でも、多値誤差拡散において階調性の向上と多値切り替わり部における画質劣化抑制することができないという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、多値の画像データの変換による画質劣化を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は上記の目的を達成するため、入力されたM値の画像データをN値(MとNは正の整数,M>N>2)に変換する画像処理装置であって、上記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の整数部に対応する値に変換する手段と、上記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値に変換する手段と、上記変換で得られた理想的な階調数の整数部に対応する値と上記変換で得られた理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値とを加算した補正データを求める手段と、上記求められた補正データと所定の閾値とに基づいて上記N値の画像データに変換する手段を有する画像処理装置を提供する。
また、上記理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値はディザ処理によって得られた値にするとよい。
【0012】
さらに、上記理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値はディザ処理のマトリクスサイズで乗算した値を四捨五入した値、又は小数点以下切捨てた値を階調毎に記憶するテーブルに基づいて求めるようにするとよい。
また、上記ディザ処理は分散系のディザ処理を用いるようにするとよい。
さらに、上記ディザ処理は、ベイヤー型ディザ処理を用いるようにするとよい。
また、上記理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値は、ディザ処理で2値化して得られる0または1の値にするとよい。
【0013】
さらに、上記のような画像処理装置を備えた画像記録装置も提供する。
さらにまた、コンピュータに、入力されたM値の画像データをN値(MとNは正の整数,M>N>2)に変換する手順を実行させるためのプログラムであって、上記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の整数部に対応する値に変換する手順と、上記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値に変換する手順と、上記変換で得られた理想的な階調数の整数部に対応する値と上記変換で得られた理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値とを加算した補正データを求める手順と、上記求められた補正データと所定の閾値とに基づいて上記N値の画像データに変換する手順とを実行させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0014】
この発明による画像処理装置と画像記録装置は、多値の画像データの変換による画質劣化を解消することができる。
また、この発明によるプログラムは、コンピュータに多値の画像データの変換による画質劣化を解消できるようにするための機能を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔実施例〕
図1は、この発明の画像処理装置の実施例の機能構成を示すブロック図であり、特に、この発明に特徴的な画像処理を行う画像処理部のブロック構成を示す。
図2は、この発明の画像記録装置の実施例の構成を示す図である。
図3は、この発明の実施の画像処理装置を用いて構成される画像入出力システムの実施例の構成を示す図である。
図4は、図2に示す画像記録装置のインクジェット記録ヘッドの構成例を示すブロック図である。
図5は、図2に示す画像記録装置のインクジェット記録ヘッドの他の構成例を示すブロック図である。
【0016】
図3に示すように、画像入力装置301はスキャナ,ディジタルカメラを含む入力デバイスであり、入力画像について、例えば8ビット精度ならば256階調の画像データとして画像処理装置302へ出力する。
画像処理装置(画像処理部)302では、画像入力装置301から入力された256階調の画像データに対し、この後段の画像記録装置303で出力可能な階調数に変換する処理を行う。この階調数変換処理では多値誤差拡散処理や多値平均誤差最小法の処理を含む公知の処理を用いる。この画像処理装置302の変換処理によって量子化した画像データを、図2に示す画像記録装置(画像形成装置、画像出力装置)303へ出力する。
【0017】
図2に示すように、画像記録装置303は、フレーム201に横架したガイドレール202,203に移動可能に載設されたキャリッジ204にインクジェット記録ヘッド205(以下「記録ヘッド」と略称する)を搭載し、図示を省略したモータ等の駆動源によってキャリッジをガイドレール方向に移動して走査(主走査)可能とすると共に、ガイド板206にセットされる用紙207を、図示を省略した駆動源によってドライブギヤ208及びスプロケットギヤ209を介して回動される送りノブ210aを備えたプラテン210によって取り込み、プラテン210の周面とこれに圧接するプレッシャローラ211とによって搬送し、記録ヘッド205によって用紙207にカラーインクを吐出して画像を印字記録する。
【0018】
記録ヘッド205は、図4に示すように、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各色のインクをそれぞれ吐出するための4個のインクジェットヘッド4K,4C,4M,4Yを、あるいは、図5に示すように、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ライトシアン(LC)及びライトマゼンタ(LM)の各色のインクをそれぞれ吐出するための6個のインクジェットヘッド5K,5C,5M,5Y,5LC,5LMを用紙207の主走査方向の同一線上に配置して構成している。なお、画像記録装置303の商品構成によってはインクの数を増減させても何ら構わない。例えば、ライトブラック,シアン,マゼンタ,イエロー,ブラックの各色のインクの濃度を3段,4段に分けた構成にして高画質を実現した記録ヘッドにしてもよい。
【0019】
上記記録ヘッド205の各インクジェットヘッドは、例えば、圧電素子,気泡発生用ヒータを含むエネルギー発生手段であるアクチュエータを選択的に駆動して、液室内のインクに圧力を与えることによって、この液室に連通するノズルからインク滴を吐出飛翔させて、用紙207に付着させることで画像記録(画像形成)する。
画像記録装置303は、電子写真を用いて画像記録(画像形成)する場合でもこの発明にかかる画像処理方法が適用可能である。
この実施例の画像記録装置303の記録ヘッド205のインクジェットヘッドは、例えば、吐出するインクのドット径を変化させて、図11の(a)に示す小ドットと図11の(b)に示す大ドットを出力するものであり、小ドットの階調値を127、大ドットの階調値を255とする。
【0020】
図1に示すように、画像処理装置302の入力端子101は、画像入力装置301より多値の画像データを入力し、整数変換部102,少数変換部103,閾値設定部107へそれぞれ出力する。
ここで、2次元の画像データをIn(x,y)と表わす。xは画像データの主走査方向のアドレスを、yは画像データの副走査方向のアドレスをそれぞれ示す。
整数変換部102は、図7に示す変換テーブル(LUT)を保持し、入力された画像データ(入力値)In(x,y)を変換テーブル(LUT)に基づいて対応する整数部出力値ip(x,y)に変換して加算器105へ出力する。
同様に、小数変換部103は、図8に示す変換テーブル(LUT)を保持し、入力された画像データ(入力値)In(x,y)を変換テーブル(LUT)に基づいて対応する小数部変換値dp(x,y)に変換して2値化部104へ出力する。
【0021】
閾値設定部107は、図10に示すIn(x,y)の入力値に応じた閾値群Thr(x,y)を設定して、閾値群Thr(x,y)を比較判定部108へ出力する。
ここで、閾値群Thr(x,y)とは、ドットオフ(off)と小ドットの判定に用いる第1閾値Thr1(x,y)と、小ドットと大ドットの判定に用いる第2閾値Thr2(x,y)からなる。
2値化部104は、図9に示す2値化閾値の一覧のテーブルを保持し、入力された画像データIn(x,y)のアドレス(x,y)に対応するテーブル中の2値化閾値bt(x,y)と、小数変換部103より入力される小数部変換値dp(x,y)とを用いて、次の数1の演算によって小数部2値b(x,y)を求め、加算器105へ出力する。
【0022】
【数1】

【0023】
加算器105は、整数変換部102より入力される整数部変換値ip(x,y)と、2値化部104より入力される小数部2値b(x,y)と、誤差メモリ106から入力される誤差成分E(x,y)とを加算した補正データC(x,y)を計算して求め、その補正データC(x,y)を比較判定部108と減算器109へ出力する。
比較判定部108は、加算器105から入力される補正データC(x,y)と閾値設定部107から入力される閾値群Thr(x,y)とを用いて、次の数2の演算によって出力値Out(x,y)を求めて決定し、出力端子111へ出力する。
ここで閾値群Thr(x,y)はドットオフと小ドットの出力判定閾値Thr1(x,y)と小ドットと大ドットの出力判定閾値Thr2(x,y)からなるものである。
【0024】
【数2】

【0025】
出力端子111は、比較判定部108から入力されるOut(x,y)を画像出力装置303へ出力すると共に、減算器109へも出力される。
減算器109は、加算機105から入力される補正データC(x,y)と、比較判定部108から入力される出力値Out(x,y)とを用いて、次の数3の演算によって、現画素で発生した誤差e(x,y)を算出し、誤差拡散部110へ出力する。
〔数3〕
e(x,y)=C(x,y)−Out(x,y)
【0026】
誤差拡散部110では、予め設定された拡散係数に基づいて、誤差e(x,y)を配分して誤差メモリ106に蓄積されている誤差データE(x,y)に加算していく。
例えば、拡散係数として図12に示す係数を用いた場合、誤差拡散部110では次に示す数4〜数7の演算処理を行う。
以上のようにして、図1に示した画像処理装置302において2値誤差拡散処理が行われる。
【0027】
〔数4〕
E(x+1,y)=E(x+1,y)+e(x,y)×7/16
〔数5〕
E(x−1,y+1)=E(x−1,y+1)+e(x,y)×5/16
〔数6〕
E(x,y+1)=E(x,y+1)+e(x,y)×3/16
〔数7〕
E(x+1,y+1)=E(x+1,y+1)+e(x,y)×1/16
【0028】
次に、上述のような処理により、なぜ多値誤差拡散処理でドットゲインに対して効果があるのかについて説明する。
例えば、図6に示すような実数値へのγ変換を行うことができたとき、ドットゲインを考慮した狙いとなる明度または濃度を表現することができるものとする。
図7に示す変換テーブルは、図6に示す変換テーブルの整数部の値に変換するものである。また、図8に示す変換テーブルは、図6に示す変換テーブルの小数点以下の値を図9に示すディザのマトリクスサイズ256(16×16)で乗算し、小数点以下を切り捨てた値に変換するものである。
例えば、図8の階調値1の変換結果は133となっているが、この値を図9に示すディザで2値化すると、ディザマトリクスサイズ256画素のうち133画素は“1”を出力し、123画素は“0”となる。この256画素の2値化結果に対する平均値は0.52となる。
【0029】
ここで、誤差拡散処理に平均化作用があるので、小数点以下の部分を面積階調する画素数で乗算した値で保持すれば、実数のγ変換を必要としない。
図1に示した画像処理装置302では、小数点以下の値を面積階調表現するのにディザ処理を使用した場合を示しており、面積階調を行えばよいので誤差拡散であってもかまわないが、ディザ処理のほうが高速に処理できるので好ましい。
また、画像処理装置302で実行するディザ処理は、誤差拡散部110と干渉してモアレを生じないようにするためにも集中系のディザ処理よりも分散系ディザ処理の方を用いるのが好ましい。
さらに、分散系ディザ処理として、特にベイヤー(Baye)ディザ処理がディザマトリクスサイズが小さくすみ、省メモリとなって好ましい。
【0030】
図8に示した変換テーブルの係数では、図6に示した変換テーブルの小数点以下の値を図9に示した変換テーブルのディザのマトリクスサイズ256(16×16)で乗算し、小数点以下を切り捨てた値にしているが、四捨五入した値とすれば割り切り誤差の影響が少なくなって好ましい。
また、本方式では面積階調の出力値を0と1の2値とした場合を示したが、ディザマトリクスを修正して3値又は4値ディザを用いて面積階調を行うこともできる。
しかしながら、3値又は4値とすると誤差拡散部110と干渉して、好ましからざるテクスチャを出力することがあるため、小数部の面積階調した結果は、周波数空間で高周波となる特性が好ましく、実空間では0と1の2値がもっとも好ましい画像となる。
さらに、ディザマトリクスのサイズを大きくすればするほど小数部で表現可能な値が細かくなる。
【0031】
一方、ディザマトリクスサイズを大きくするとディザを保持する2値化部104のメモリが大きくなってしまって好ましくない。例えば、省メモリとして2×2の場合は階調表現できる小数点のステップは0.25単位となってしまう。
これは、インクジェットプリンタで普通紙に印字する場合、紙白部とインクを全面に出力した箇所との明度差が、インクジェット専用紙に出力する場合に比べて少ない。
このような場合では、0.25ステップで階調表現するのではドットゲインを考慮して狙いとなる明度または濃度を表現する値に変換することが難しい。
そこで、ディザマトリクスサイズは4×4,2×8又は8×2以上であることが好ましい。
【0032】
例えば、階調値127が入力されたとき、図6に示す理想出力値が127.5であったとして説明する。
図11の大小ドットの階調値をそれぞれ255・127としてあり、階調値1から127まではドットoffと小ドットの混在で階調表現し、階調値128から階調値255までは小ドットと大ドットの混在で階調表現する区間である。
理想出力値が127.5であれば、整数変換部102・小数変換部103・2値化部104による変換値は、128画素は127に、128画素は128に変換される。
単純な3値誤差拡散の閾値を用いた場合、整数変換部102・小数変換部103・2値化部104による変換値が127となった画素はドットoffと小ドットを出力し、変換値が128となった画素は小ドットと大ドットを出力することになり、ドットoff・小ドット・大ドットが混在することとなる。階調表現としては問題ないが、画質的に好ましくない。
【0033】
閾値設定部107が、図10のような入力値に応じて閾値群thr(x,y)を出力するとき、入力データIn(x,y)の理想出力値が127.5であったとして説明する。
閾値群thr(x,y)のドットoffと小ドットの出力判定閾値thr1(x,y)=0を出力する。
理想出力値が127.5であるから、thr1(x,y)の値0と比較してドットoffを出力することはないため、出力される画像は小ドットと中ドットで階調表現されることとなる。
このように、入力値に応じて閾値群を設定すれば多値誤差拡散において複数種のドットが混在することなく画質的に好ましい結果となる。
【0034】
以上の説明から明らかなように、この実施例の画像入出力システムによれば、誤差拡散における階調変換において多値誤差拡散における階調変換において、理想的な階調値の小数点以下を面積階調とすることで、ドットゲインによる画質劣化問題を解決し、かつ、入力値に応じた閾値を設定することで、多値誤差拡散において階調性の向上と多値切り替わり部における画質劣化抑制して良好な画質の出力画像結果を得ることことができる。
また、多値誤差拡散においてドットゲインによる画質劣化問題と多値切り替わり部における画質劣化問題を解消することができる。
さらに、省メモリでかつ高速にドットゲインによる画質劣化問題を解消することができる。
また、ドットゲインによる画質劣化問題を解消することができる。
さらに、後段の誤差拡散処理との干渉を抑えることができる。
また、後段の誤差拡散処理との干渉を抑え、かつ省メモリで設計することができる。
さらに、後段の誤差拡散処理との干渉を抑えることができる。
【0035】
次に、図3に示した画像入出力システムでは、処理に応じてそれぞれの装置を独立したものとして示したが、この限りではなく、画像処理装置302の機能が画像入力装置301中に存在する形態や、画像出力装置303中に存在する形態等もある。
また、上述の実施例においては図11に示した大小ドットによる3値誤差拡散を説明したが、図13の(a)に示す淡インクのドットと図13の(b)に示す濃インクのドットを用いた3値誤差拡散処理を行うようにしてもよい。
さらに、上述の実施例においては3値誤差拡散処理を説明したが、4値誤差拡散処理,5値誤差拡散処理を行うようにしてもよい。
また、上述の実施例においては誤差拡散処理を説明したが、同じようにして平均誤差最小法の処理においても適用することができる。
【0036】
さらに、上述の実施例においてはインクジェット方式の画像記録装置を用いた場合の例を説明したが、電子写真印刷,オフセット印刷,グラビア印刷を含む一般的なプロッタにおいても上述と同様にして適用することができる。
また、この発明は、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ,インタフェース機器,リーダ,プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機,ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
さらに、上述した実施例の画像処理装置における機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、画像入出力システム,画像形成装置に供給し、その画像入出力システム,画像形成装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても、実現することができることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が上述した実施例における各機能を実現することになる。
【0037】
上記プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMを含む各種の記録媒体を用いることができる。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施例における各機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施例における各機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施例における各機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0038】
なお、上述した実施例は、本発明の好適な実施例の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による画像処理装置と画像記録装置とプログラムは、複写機,ファクシミリ装置などの装置単体、ホストコンピュータ,インタフェース機器,リーダ,プリンタなどから構成されるシステムにおいても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の画像処理装置の実施例の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の画像記録装置の実施例の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の画像処理装置を用いて構成される画像入出力システムの実施例の構成を示す図である。
【図4】図2に示す画像記録装置のインクジェット記録ヘッドの構成例を示すブロック図である。
【0041】
【図5】図2に示す画像記録装置のインクジェット記録ヘッドの他の構成例を示すブロック図である。
【図6】γ変換の結果の一例を示す図である。
【図7】図1に示す整数変換部の変換テーブルの一例を示す図である。
【図8】図1に示す少数変換部の変換テーブルの一例を示す図である。
【図9】ディザマトリクスの一例を示す図である。
【0042】
【図10】閾値群の一例を示す図である。
【図11】図2に示す画像記録装置のインクジェット記録ヘッドの吐出するインクのドット形状の一例を示す図である。
【図12】拡散係数の一例を示す図である。
【図13】図2に示す画像記録装置のインクジェット記録ヘッドの吐出するインクのドット形状の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
4K,5K:ブラックのインクジェットヘッド 4C,5C:シアンのインクジェットヘッド 4M,5M:マゼンタのインクジェットヘッド 4Y,5Y:イエローのインクジェットヘッド 5LC:ライトシアンのインクジェットヘッド 5LM:ライトマゼンタのインクジェットヘッド 101:入力端子 102:整数変換部 103:少数変換部 104:2値化部 105:加算器 106:誤差メモリ 107:閾値設定部 108:比較判定部 109:減算器 110:誤差拡散部 111:出力端子 201:フレーム 202,203:ガイドレール 204:キャリッジ 205:インクジェット記録ヘッド 206:ガイド板 207:用紙 208:ドライブギヤ 209:スプロケットギヤ 210a:送りノブ 210:プラテン 211:プレッシャローラ 301:画像入力装置 302:画像処理装置 303:画像記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたM値の画像データをN値(MとNは正の整数,M>N>2)に変換する画像処理装置であって、
前記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の整数部に対応する値に変換する手段と、
前記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値に変換する手段と、
前記変換で得られた理想的な階調数の整数部に対応する値と前記変換で得られた理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値とを加算した補正データを求める手段と、
前記求められた補正データと所定の閾値とに基づいて前記N値の画像データに変換する手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値はディザ処理によって得られた値であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値はディザ処理のマトリクスサイズで乗算した値を四捨五入した値、又は小数点以下切捨てた値を階調毎に記憶するテーブルに基づいて求めることを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ディザ処理は分散系のディザ処理を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ディザ処理は、ベイヤー型ディザ処理を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値は、ディザ処理で2値化して得られる0または1の値であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項8】
コンピュータに、入力されたM値の画像データをN値(MとNは正の整数,M>N>2)に変換する手順を実行させるためのプログラムであって、前記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の整数部に対応する値に変換する手順と、前記入力されたM値の画像データを所望する濃度又は明度が得られる理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値に変換する手順と、前記変換で得られた理想的な階調数の整数部に対応する値と前記変換で得られた理想的な階調数の小数部を面積階調で表現する値とを加算した補正データを求める手順と、前記求められた補正データと所定の閾値とに基づいて前記N値の画像データに変換する手順とを実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−130306(P2010−130306A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302426(P2008−302426)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】