説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 記憶部を有効利用しつつ複数のジョブを並行して実行する画像処理装置を提供する。
【解決手段】 複合機1は、登録された複数のジョブのそれぞれによる画像処理を、画像処理メモリ80を用い並行して実行可能である。保障領域確保部72aは、一のジョブが登録された際に、画像処理メモリ80において、ジョブの画像処理に必要な容量分の空き領域が存在する状態で、この空き領域となっていた領域を、ジョブに対する保障領域として確保する。領域拡張部72b、保障領域確保部72aによる一のジョブの保障領域の確保後に、画像処理メモリ80に所定容量分の空き領域が存在する状態で、この空き領域を拡張領域として、保障領域が確保された上記ジョブの画像処理のための領域を拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を記憶部に一時的に蓄積する画像処理装置に係り、特に、登録された複数のジョブのそれぞれによる画像処理を、記憶部を用い並行して実行可能な画像処理装置に関する。ここで、各ジョブは、コピー機能、プリント機能、スキャナ機能、ファックス機能、ボックス機能等の内のいずれか1つの機能による画像処理に対応する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られたこの種の画像形成装置の一つは、コピー機能、プリント機能及びファックス機能を有し、各機能毎に専用のメモリを備えている(例えば、特許文献1参照)。これら専用メモリを用いることによって、各機能に応じた画像処理を、その実行に必要となる入出力部(スキャナ部やプリンタ部等)が競合しない場合に、並行して行えるようになっている。
【0003】
このような従来の画像形成装置に対して、特許文献2に開示された複合機は、コピー機能、プリント機能及びファックス機能に加えスキャナ機能を有し、これら4つの機能による画像処理に1つのメモリを共用するようになっている。このメモリの共用化によって、そのメモリ容量は、上記従来の画像形成装置が有する各機能毎の専用メモリの総容量に比べて格段に小さく抑えられ、製造コストの低減やメモリの有効利用が図られている。
【0004】
【特許文献1】特許3662695号公報(図4、段落0056〜0058等)
【特許文献2】特許3703770号公報(図1、段落0010、0022等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の複合機では、メモリが共用され、特許文献1の画像形成装置よりも製造コストが低減されていたものの、各機能による画像処理、例えばプリントとファクシミリ送信とが並行して行われるように、メモリが使用されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解決することができる画像処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る画像処理装置は、複数のジョブを登録可能であり、登録されたジョブのそれぞれによる画像処理を、記憶部を用い並行して実行可能な画像処理装置である。本画像処理装置は、一のジョブが登録された際に、前記記憶部において、前記ジョブの画像処理に必要な容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域となっていた領域を、前記ジョブに対する保障領域として確保する保障領域確保手段と、該保障領域確保手段による前記一のジョブに対する前記保障領域の確保後に、前記記憶部に、所定容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域を拡張領域として、前記保障領域が確保された前記ジョブの画像処理のための領域を拡張する領域拡張手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2に係る画像処理装置は、請求項1に係る画像処理装置において、前記領域拡張手段が、他のジョブの登録後に、前記保障領域確保手段により他のジョブに対する前記保障領域が確保されていない場合に、前記一のジョブのための領域の拡張を停止することを特徴とする。
請求項3に係る画像処理装置は、請求項1又は請求項2に係る画像処理装置において、前記領域拡張手段が、前記保障領域確保手段により前記保障領域が前記記憶部に確保されているジョブの内で、該確保が最初に行われたジョブについてのみ、領域の拡張を行うことを特徴とする。
請求項4に係る画像処理装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に係る画像処理装置において、前記一のジョブの一部分の実行が終了した際に、前記領域拡張手段により拡張された前記記憶部の領域の内の、前記ジョブの前記一部分に相当する容量の領域を、空き領域へと開放する領域開放手段を備えたことを特徴する。
請求項5に係る画像処理装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に係る画像処理装置において、前記一のジョブの実行が終了した際に、前記保障領域確保手段により確保された前記保障領域を、空き領域へと開放する保障領域開放手段を備えたことを特徴とする。
請求項6に係る画像処理方法は、複数のジョブが登録され、登録されたジョブのそれぞれによる画像処理が、記憶部が用いられ並行して実行される画像処理方法である。本画像処理方法は、一のジョブが登録された際に、前記記憶部において、前記ジョブの画像処理に必要な容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域となっていた領域を、前記ジョブに対する保障領域として確保し、前記一のジョブに対する保障領域の確保後に、前記記憶部に、所定容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域を拡張領域として、前記保障領域が確保された前記ジョブの画像処理のための領域を拡張することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る画像処理装置では、登録される複数のジョブのそれぞれに対し、各ジョブによる画像処理の実行のための保障領域が(共用の)記憶部上に確保される。そのため、これら複数のジョブは、(必要な入力装置又は出力装置が競合しない場合に、)各保障領域が用いられつつ並行して実行可能である。そして、空き領域がなお存在する状態で、1又は複数のジョブ、例えば最初に登録された1つのジョブにつき、保障領域が拡張可能になっているため、ジョブがより迅速に完了するように記憶部の有効利用が図られている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
(最良の実施の形態)
本発明の最良の実施の形態である複合機について説明する。本複合機は、コピー機能、プリント機能、スキャナ機能、及び、ファックス機能(ファックス送信機能及びファックス受信機能)を有し、これらいずれか1つの機能による画像処理を、1つのジョブとして実行する。ユーザは、この複合機に複数のジョブを登録可能であり、登録されたジョブのそれぞれによる画像処理は、必要となる入出力装置が競合しない場合に、並行して実行される。
【0010】
図1に示すように、この複合機1は、各機能に応じた画像処理を実行するために、スキャナ部10、プリンタ部20、ファクシミリ通信部30、通信インターフェース40、操作部50、表示部60、及び、制御部70を備えている。制御部70には、半導体メモリが画像処理メモリ80として設けられていて、この画像処理メモリ80に入出力される画像に対応した画像データ、及び、その入出力のための処理の過程で画像の展開により生じた中間データ等が一時的に記憶されるようになっている。画像データは、圧縮又は伸張されることがあり、他の信号処理が、画像データに施されることもある。
【0011】
スキャナ部10は、原稿から画像を読み取って画像データを制御部70(画像処理メモリ80)に入力するようになっている。より具体的には、スキャナ部10は、原稿台(図示省略)に載せられた原稿に光を照射し、その反射光をイメージセンサ(図示省略)により電気信号に変換して画像信号を生成する。さらに、スキャナ部10は、この画像信号にA/D変換等を施し、得られた画像データを、順次、制御部70に入力するように構成されている。
【0012】
プリンタ部20は、制御部70から出力された画像データに基づき、用紙上に画像をプリントするようになっている。具体的に、プリンタ部20は、制御部70から出力される画像データに基づき変調されたレーザ光を、レーザダイオード(図示省略)から出射し、このレーザ光を導き集光して感光体ドラム(図示省略)上で静電潜像を形成する。続いて、プリンタ部20は、この感光体ドラム上にトナーを供給することによってトナー像を形成し、トナー像を用紙の表面に転写する。画像がプリントされた用紙は、排出トレイ(図示省略)上に排出される。
【0013】
ファクシミリ通信部30は、制御部70から出力される画像データを、電話回線を通じ相手方となるファクシミリへと送信し、また、相手方ファクシミリから画像データを受信して制御部70に入力するようになっている。即ち、ファクシミリ通信部30は、NCU(図示省略)により電話回線との接続を制御しつつ、制御部70から出力される画像データを圧縮し変調して、相手方ファクシミリへと送信する。また、ファクシミリ通信部30は、NCUにより電話回線と接続しつつ、相手方ファクシミリから受信される画像データを復調し伸張して、制御部70に入力する。
【0014】
通信インターフェース40は、複合機1のLANへの接続を可能にしている。このLANには、PCが接続されていて、複合機1は、PCとの間で画像データを送受信することができる。複合機1は、LAN上のルータを介して、インターネットに接続することも可能である。
【0015】
制御部70内の画像処理メモリ80と、上記各部10,20,30,40との間では、各種ジョブの実行に際し、次のように画像データがやり取りされる。コピー機能のジョブでは、スキャナ部10から画像処理メモリ80へ画像データが入力され、画像処理メモリ80からプリンタ部20へ画像データが出力される。プリント機能のジョブでは、通信インターフェース40から画像処理メモリ80へ画像データが入力され、画像処理メモリ80からプリンタ部20へ画像データが出力される。スキャナ機能のジョブでは、スキャナ部10から画像処理メモリ80へ画像データが入力され、画像処理メモリ80から通信インターフェース40へ画像データが出力される。
【0016】
ファックス送信機能のジョブでは、スキャナ部10(又は通信インターフェース40)から画像処理メモリ80へ画像データが入力され、画像処理メモリ80からファクシミリ通信部30へ画像データが出力される。ファックス受信機能のジョブでは、ファクシミリ通信部30から画像処理メモリ80へ画像データが入力され、画像処理メモリ80からプリンタ部20へ画像データが出力される。
操作部50は、ユーザから、各ジョブ(上記各種機能による画像処理)の登録を受け付け、表示部60は、ユーザに対し、各ジョブの登録をガイドするメッセージを表示するようになっている。
【0017】
複合機1は、組み込みシステムの一種である。制御部70は、図示を省略したが、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、EPROM、入出力インターフェース等を含み、上述した各部10,20,30,40,50,60と接続されている。制御部70が、ROM内の所定のプログラムに基づき、複合機1全体の動作を制御することによって、各ジョブによる画像処理が実行されるようになっている。特に、各ジョブの画像処理は、制御部70の画像処理メモリ80を用いて並行して実行可能であるが、本複合機1の特徴の一つは、画像処理メモリ80上における各ジョブの処理領域の確保及び開放にある。以下、この特徴について詳述する。図1の制御部70内には、この特徴に関わるプログラムの主要な機能に対応した各処理部71〜73を表している。各処理部71〜73は、並行動作するようになっている。
【0018】
ジョブ管理部71は、ジョブの実行状態を管理し、メモリ管理部72は、ジョブの実行に必要な画像処理メモリ80上の処理領域を管理する。ジョブ実行部73は、各部10,20,30,40を制御して、各ジョブによる画像処理を実行する。このジョブ実行部73は、複数のジョブを並行して実行可能になっている。メモリ管理部72は、より詳細に、保障領域確保部72aと、領域拡張部72bと、領域開放部72cと、保障領域開放部72dとを有し、各部72a〜dは次に説明するように動作する。
【0019】
各部72a〜dの説明を補助するために、図2(a)〜(f)及び図3(a)〜(f)は、ジョブA,Bが順次に登録された際の、各ジョブA,Bの処理領域の確保及び開放を例示している。例えば、ジョブAをA4サイズの4枚の画像のコピーとし、ジョブBをA4サイズの2枚の画像のファックス送信とする。図2(a)〜(f)及び図3(a)〜(f)のそれぞれにおいて、最も左側の矩形は、画像処理メモリ80の状態を表し、その右に並ぶ1つ又は2つの矩形は、ジョブの状態を表している。各矩形の縦方向への長さは、容量の大きさに対応する。
【0020】
ジョブ管理部71(図1)は、1つのジョブが登録された際、この登録されたジョブに対して、画像処理メモリ80上での保障領域の確保を、メモリ管理部72の保障領域確保部72aに要求する。ここにいう保障領域は、例えば、各ジョブが実行可能となる最小限の容量の領域であり、各ジョブにおける画像1枚分の画像処理に必要な容量としてよい。(保障領域のサイズは、ジョブや画像の種類によって異なり得る。)
【0021】
そして、保障領域確保部72aは、画像処理メモリ80上に、その1つのジョブに対する保障領域の容量分の空き領域、即ち、そのジョブについて画像1枚分の画像処理に必要な容量分の空き領域が存在していれば、この空き領域を、そのジョブに対する保障領域として確保する。保障領域確保部72aによりジョブに対し保障領域が確保されると、ジョブ実行部73はそのジョブの実行を開始する。ジョブA,Bについての例では、図2(a)が、初期において画像処理メモリ80全体が空き領域となっている状態で、ジョブAが登録されたことを表している。このジョブAに対し、図2(b)のように、保障領域が確保される。
【0022】
さらに、領域拡張部72bは、保障領域確保部72aによる1つのジョブの保障領域の確保後、画像処理メモリ80上に所定容量分の空き領域が存在する状態で、その空き領域の全部分へと、上記保障領域として確保された領域を、そのジョブの画像処理のために拡張する。例えば、空き領域が画像1枚分の画像処理に必要な容量よりも大きくなっている場合、ジョブの処理領域が拡張される。ジョブA,Bについての例では、図2(c)のように、ジョブAの実行のために確保された領域が、画像処理メモリ80全体にまで拡張されている。(ジョブAの処理領域は、実行の当初に確保された保障領域と、その後の拡張により得られた拡張領域とからなっている。)
【0023】
領域開放部72c(図1)は、ジョブの一部分の実行が終了した際、領域拡張部72bにより拡張された画像処理メモリ80上の領域(拡張領域)の内の、ジョブのその一部分に相当する容量の領域を、空き領域へと開放する。具体的には、画像5枚分のプリントを行うジョブの内、画像1枚分のプリントが終了すると、この画像1枚分のプリントに必要な容量の領域が、空き領域として開放される。
【0024】
ジョブA,Bの例において、上述のようにジョブAの実行が開始された状態で(図2(c))、続いて、ジョブBが登録されたとする(図2(d))。ところが、ジョブBのこの登録の直後、画像処理メモリ80上に、ジョブBに対する保障領域を確保可能な空き領域が存在していないから、ジョブBは登録直後には実行することができない。その後にジョブAの一部分の実行が終了すると、その一部分の容量に相当する領域が空き領域へと開放され(図2(e))、この領域の開放によって、ジョブBの保障領域の確保が可能になり、ジョブBの保障領域が確保されジョブBの実行が開始される(図2(f))。その後も、ジョブAの他の一部分の実行が終了するに伴って、ジョブAの他の一部分に相当する容量の拡張領域が、順次、開放されていく(図3(a)、(b))。
【0025】
ここで、領域拡張部72bによる領域の拡張には、次の2つの制限が設けられている。即ち、(1)領域拡張部72bは、他のジョブの登録後に、保障領域確保部72aにより他のジョブの保障領域が確保されていない場合に、既に保障領域が確保されている一のジョブのための領域の拡張を停止するようになっている。例えば、図2(b)のように、ジョブAの保障領域が確保された状態から、図4(a)のように、続けてジョブBが登録されたとすると、ジョブAの処理領域は拡張されないということである。また、図2(e)のように、ジョブAの実行が開始された後に画像処理メモリ80上に空き領域が生じた状態において、図4(b)のように、ジョブAの容量が大きく、ジョブAの処理領域が拡張可能であったとする。このような状態にあっても、ジョブBが登録されているので、ジョブAの処理領域は拡張されない。領域拡張についてのこれらの制限(図4(a)、(b))によって、登録されたジョブが複数存在する場合、それらジョブが並行動作する状態へと、より早く移行することになる。
【0026】
(2)領域拡張部72bは、保障領域確保部72aにより保障領域が画像処理メモリ80に確保されているジョブの内で、最初に保障領域が確保されたジョブについてのみ、領域の拡張を行うようになっている。例えば、図3(b)のように2つのジョブA,Bについて保障領域が確保されている状態で、たとえ、ジョブA及びジョブBのいずれについても、処理領域が拡張可能であったとしても、保障領域が最初に確保されたジョブAについてのみ、領域の拡張が可能になっている。複数のジョブが同様の容量、処理速度であり、それらのジョブが並行動作している場合において、領域拡張についてのこの制限によって、先に登録されたジョブがより早く終了することになる。これは、ジョブの処理順序についてのユーザの通常の期待に沿うものである。
【0027】
そして、保障領域開放部72d(図1)は、1つのジョブの実行が完全に終了した際、保障領域確保部72aにより確保された保障領域を、空き領域へと開放するようになっている。即ち、図3(c)のように、ジョブAの実行が完全に終了した状態で、ジョブAの保障領域は開放されている。さらに、ジョブBの実行が進んでいくに伴って、順次、拡張領域及び保障領域が開放されていく(図3(d)〜(f))。1つのジョブの保障領域の開放は、そのジョブの実行が終了した時点に行われるようになっているから、保障領域が確保されている複数のジョブには、並行動作が保障されている。
【0028】
以上の画像処理メモリ80についての制御をより具体的に説明する。図5に示すフローチャート中で、ジョブ管理としてのS11〜S13での処理、メモリ管理としてのS21〜S29での処理、ジョブ実行としてのS31〜S35での処理は、それぞれ、ジョブ管理部71による処理、メモリ管理部72による処理、ジョブ実行部73による処理に含まれる。(上述のように、ジョブ管理部71、メモリ管理部72及びジョブ実行部73は、並行して処理を行うことが可能であり、ジョブ実行部73は、複数のジョブの実行を可能な限り並行して行うようになっている。)
【0029】
複合機1における図5の処理の実行にあたって、操作部50に対するユーザの操作、又は、LANを介して接続されるPC等でのユーザの操作により、1つのジョブの実行が複合機1に登録される。このジョブの登録に応じて、ジョブ管理部71は、このジョブに対する保障領域の確保をメモリ管理部72に要求する(S11)。メモリ管理部72は、ジョブの保障領域確保の要求に応じて、画像処理メモリ80上に、保障領域分の空き領域が存在するか否かを判定する(S21)。
【0030】
メモリ管理部72でのこのS21の判定の際、初期において、図2(a)のように、画像処理メモリ80の全てが空き領域となっている。保障領域分の空き領域が存在している場合(S21にてYes)、メモリ管理部72は、そのジョブに対して保障領域を確保するとともに、その旨をジョブ管理部71へと通知する(S22)。一方、画像処理メモリ80が、その判定の際に実行中の他のジョブに占有され、保障領域分の空き領域が存在しない場合(S21にてNo)、メモリ管理部72は特別な処理を行うことなく、S21に処理が戻される。つまり、他のジョブの実行の一部又は全部が終了することにより、他のジョブの処理領域が開放されることが待たれる。
【0031】
S22にて、メモリ管理部72が、ジョブ管理部71に、ジョブの保障領域が確保されたことを通知すると、ジョブ管理部71が、ジョブ実行部73に対し、ジョブの実行開始を要求する(S12)。ジョブ実行部73は、ジョブ開始のこの要求に応じて、メモリ管理部72に対し、ジョブについての処理領域の取得を要求する(S31)。(ジョブの処理領域は、後に示す処理手順によって、上述した保障領域上又は拡張領域上に取得されるようになっている。)
【0032】
メモリ管理部72は、ジョブの処理領域を取得するために、保障領域内に空きがあるか否かを判定する(S23)。保障領域内に空きがある場合(S23にてYes)、メモリ管理部72は、ジョブの処理領域をその保障領域内で取得し、その旨をジョブ実行部に通知する(S24)。ジョブ実行部73は、保障領域内でのジョブの処理領域の取得の通知に応じて、図2(b)のように、ジョブの実行を開始する。ジョブの実行により、1画像分ずつの画像処理(S32)が順に行われていく。
【0033】
これに対し、一のジョブの保障領域内に、そのジョブの処理領域を取得するための空きがない場合(S23にてNo)、メモリ管理部72は、待ちジョブとなっている他のジョブが存在するか否かを先ず判定する。即ち、他のジョブの登録後にその保障領域が確保されず、他のジョブが保障領域の確保のために空きを待つ状態となっているか否かが判定される。他のジョブが、保障領域確保のための空きを待っている場合(S25にてYes)、メモリ管理部72は特別な処理を行うことなく、S23へと処理が戻され、他のジョブを実行させるために、実行中のジョブの終了又は一部終了が待たれる。
【0034】
一方、他のジョブが、保障領域確保のための空きを待っていない場合(S25にてNo)、さらに、メモリ管理部72は、画像処理メモリ80上の保障領域外に空きがあるか否かを判定する(S26)。保障領域外に空きがない場合(S26にてNo)、S25にてYesの場合と同様に、S23へと処理が戻され、実行中のジョブの終了又は一部終了が待たれる。また、保障領域外に空きがある場合(S26にてYes)、メモリ管理部72は、一のジョブの処理領域を、保障領域外のその空きへと拡張し、この処理領域の拡張をジョブ実行部73に通知する(S27)。ジョブ実行部73は、ジョブの処理領域の拡張の通知に応じ、そのジョブの実行として、保障領域及び拡張領域を用い、1画像分ずつの画像処理を継続する(S32、図2(c))。
【0035】
これらのように、登録されたジョブについては、S24により保障領域内で取得された処理領域で、その実行が開始され、また、他のジョブや画像処理メモリ80の状態によって、S27により処理領域が拡張されるようになっている。ジョブ実行部73は、1画像分の画像処理が終了すると、その画像処理に用いていた処理領域の開放を、メモリ管理部72に対し要求する(S33)。メモリ管理部72は、この領域開放の要求に応じて、実際に処理領域を開放する(S28)。
【0036】
ここで開放される処理領域についてより詳しく説明すると、開放される処理領域は、拡張領域上の処理領域であり(図2(e))、処理領域の開放に伴い、対応する拡張領域も空き領域へと開放されることになる。
【0037】
また、通常、画像処理メモリ80への画像の入出力は、FIFOで行われる。つまり、1つのジョブにおいて、画像処理メモリ80へ先に入力されてきた画像から順に処理され、処理後の画像が出力されていく。いま、1つのジョブが4枚分のA4画像のコピーであるものとすると、保障領域が、このジョブの第1枚の画像の処理のために確保され、第1拡張領域〜第3拡張領域(拡張領域内の3つの部分領域)が、それぞれ、第2枚の画像〜第4枚の画像についての処理のために確保される。例えば、画像処理メモリ80の容量が20Mバイトであり、保障領域及び第1拡張領域〜第3拡張領域の容量がそれぞれ5Mバイトであるものとしてよい。
【0038】
そうして、1枚目の画像の処理が終了すると、第1拡張領域、第2拡張領域、第3拡張領域に記憶されていた2枚目〜4枚目の画像のデータが、それぞれ、保障領域、第1拡張領域、第2拡張領域にシフトされる。このようなデータのシフト後に、第3拡張領域となっていた領域が、空き領域として開放される。
【0039】
ジョブが、逐次、実行されていくことにより、そのジョブについての画像処理が全て終了すると(S34にてYes)、ジョブ実行部73は、ジョブ管理部71に対して、画像処理が終了したことを通知する(S35)。ジョブ管理部71は、この画像終了通知に応じて、メモリ管理部72に対し、保障領域の開放を要求し(S13)、メモリ管理部72は、保障領域開放のこの要求に応じて、実際に保障領域を開放する(S29、図3(b)、(c))。
【0040】
以上の複合機1では、登録される複数のジョブのそれぞれに対し、各ジョブによる画像処理の実行のための保障領域が画像処理メモリ80上に確保される。そのため、これら複数のジョブは、スキャナ部10又はプリンタ部20等の使用が競合しない場合に、各保障領域が用いられつつ並行して実行可能である。そして、空き領域がなお存在する状態で、画像処理メモリ80上に保障領域が確保されているジョブの内で、最初に登録された1つのジョブにつき、保障領域が拡張可能になっている。保障領域の拡張によって、ジョブがより迅速に完了するように、画像処理メモリ80の有効利用が図られている。
【0041】
(他の実施の形態等)
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態を変更して実施することができる。
a. 例えば、複合機は、ボックス機能を有するものとして、複合機に、ジョブの1つとして、ボックス機能による画像処理が登録可能になっていてもよい。ボックス機能とは、HDD等の外部記憶装置に、スキャナ部10で得られた画像データやファクシミリ通信部30で受信された画像データを一時保管することをいう。この場合、制御部70には外部記憶装置が接続され、このボックス機能による画像処理には、スキャナ部10又はファクシミリ通信部30から制御部70への画像データの入力、及び、制御部70から外部記憶装置への画像データの出力が伴われる。
【0042】
b. ファクシミリの送受信に加えて、インターネットファクシミリを送受信するようにしてもよい。
【0043】
c. 最初に登録されたジョブについてのみ、処理領域の拡張が行われるものとした。これとは異なり、最初に登録されたジョブを拡張してもなお空き領域が存在する場合などに、次に登録されたジョブの処理領域を拡張するようにしてもよい。これによると、記憶部がより有効に利用され、次に登録されたジョブについて、処理が早められることになる。
【0044】
d. 記憶部が半導体メモリであることを想定して、各ジョブの処理領域の確保及び開放について説明した。記憶部は、その一部又は全部に、HDD等の他の記憶装置を用いるものとしてもよい。即ち、複数の登録ジョブについての並行動作の保障、記憶部の有効利用といった観点からは、記憶部が半導体メモリのみにより構成される必要はない。ただ、複合機に半導体メモリのみからなる記憶部を搭載することにより、製造コストをより小さく抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本複合機で実行されるプログラムの主要な機能を示すブロック図
【図2】ジョブの処理領域の確保及び開放の例を説明するための第1の図
【図3】ジョブの処理領域の確保及び開放の例を説明するための第2の図
【図4】ジョブの処理領域の確保の他の例を説明するための図
【図5】実行プログラムによる処理手順の概要を示すフローチャート
【符号の説明】
【0046】
1…………複合機(画像処理装置)
10………スキャナ部
20………プリンタ部
30………ファクシミリ通信部
40………通信インターフェース
50………操作部
60………表示部
70………制御部
71………ジョブ管理部
72………メモリ管理部
72a……保障領域確保部(保障領域確保手段)
72b……領域拡張部(領域拡張手段)
72c……領域開放部(領域開放手段)
72d……保障領域開放部(保障領域開放手段)
73………ジョブ実行部
80………画像処理メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のジョブを登録可能であり、登録されたジョブのそれぞれによる画像処理を、記憶部を用い並行して実行可能な画像処理装置であって、
一のジョブが登録された際に、前記記憶部において、前記ジョブの画像処理に必要な容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域となっていた領域を、前記ジョブに対する保障領域として確保する保障領域確保手段と、
該保障領域確保手段による前記一のジョブに対する前記保障領域の確保後に、前記記憶部に、所定容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域を拡張領域として、前記保障領域が確保された前記ジョブの画像処理のための領域を拡張する領域拡張手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記領域拡張手段は、他のジョブの登録後に、前記保障領域確保手段により他のジョブに対する前記保障領域が確保されていない場合に、前記一のジョブのための領域の拡張を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記領域拡張手段は、前記保障領域確保手段により前記保障領域が前記記憶部に確保されているジョブの内で、該確保が最初に行われたジョブについてのみ、領域の拡張を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された画像処理装置。
【請求項4】
前記一のジョブの一部分の実行が終了した際に、前記領域拡張手段により拡張された前記記憶部の領域の内の、前記ジョブの前記一部分に相当する容量の領域を、空き領域へと開放する領域開放手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記一のジョブの実行が終了した際に、前記保障領域確保手段により確保された前記保障領域を、空き領域へと開放する保障領域開放手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
複数のジョブが登録され、登録されたジョブのそれぞれによる画像処理が、記憶部が用いられ並行して実行される画像処理方法であって、
一のジョブが登録された際に、前記記憶部において、前記ジョブの画像処理に必要な容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域となっていた領域を、前記ジョブに対する保障領域として確保し、
前記一のジョブに対する保障領域の確保後に、前記記憶部に、所定容量分の空き領域が存在する状態で、該空き領域を拡張領域として、前記保障領域が確保された前記ジョブの画像処理のための領域を拡張する
ことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−200673(P2009−200673A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38344(P2008−38344)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】