説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 チップ単位でのガンマ特性の差異に着目して、このガンマ特性を補正して色むらを抑制するようにした画像処理装置を提供する。
【解決手段】 光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置における画像処理装置において、イメージセンサチップのチップ単位のガンマ特性を検出するガンマ特性検出手段4,6と、この検出されたチップ単位のガンマ特性をそれぞれ補正することによりチップ単位の色むらを抑制する補正手段5,7とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置及び画像処理方法に関し、特に光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置を用いた画像処理方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置における原稿の読み取り方式として、光源からの光を原稿に照射して、当該原稿からの反射光をイメージセンサにより受光して電気信号に変換する方式が一般的である。
【0003】
そして、最近では、装置の小型化を目的として、LED(Light Emitting Diode)を光源として使用して、リニアセンサで画像を読み取るCIS(Contact Image Sensor)と称されるものが広く普及してきている。
【0004】
かかるCISにおけるイメージセンサは、光電変換センサ(画像のピクセルに相当)を直線状に並べたセンサチップを複数個用いて構成された、いわゆるマルチチップ方式のイメージセンサアレイが広く使用されている。
【0005】
このようなマルチチップ方式のCISでは、各々のチップ毎に特性が異なるために、原稿を読み取った時に、チップ幅で色むらが発生し、極端な場合には、読み取った画像データに縞模様が生じることになる。
【0006】
そこで、特許文献1や2を参照すると、彩度を調整するに際して、低彩度の画像信号に対してのみ彩度をおとす変換処理をなすことにより、マルチチップ方式のCISを構成するチップ幅の単位で発生する色むらを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−183396号公報
【特許文献2】特開2010−154152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1や2の技術では、前述したように、彩度をおとすことにより色むらを抑制しているが、彩度をおとすことで、色再現性を犠牲にしてしまっているという問題がある。
【0009】
なお、原稿読み取り前に、白板等でシェーディング補正用データの作成を行って、読み取りデータのシェーディング補正を行うことにより、センサチップ特性のばらつきを抑制することが一般的に知られている。しかしながら、チップ間のγ特性が大きく異なると、中間調において、チップ幅の単位での色むらが起きるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、チップ単位でのγ特性の差異に着目して、このγ特性を補正することにより、色再現性を犠牲にすることなく色むらを抑制するようにした画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による画像処理装置は、
光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置における画像処理装置であって、
前記イメージセンサチップのチップ単位のガンマ特性を検出するガンマ特性検出手段と、
この検出されたチップ単位のガンマ特性をそれぞれ補正することによりチップ単位の色むらを抑制する補正手段とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明による画像処理方法は、
光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置における画像処理方法であって、
前記イメージセンサチップのチップ単位のガンマ特性を検出するガンマ特性検出ステップと、
この検出されたチップ単位のガンマ特性をそれぞれ補正することによりチップ単位の色むらを抑制する補正ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、チップ単位のγ特性を算出してこれを逆換算し補正することにより、色むらを抑制するようにしたので、簡単な構成で、かつ色再現性を犠牲にすることなく色むらの抑制が可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態により得られたあるチップのγ特性の例とその補正特性を示す図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の更に他の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態の概略機能ブロック図である。図1を参照すると、本発明の一実施の形態は、画像処理部1と、色むら抑制部2と、マルチチップ方式のCIS3と、シェーディング補正用データ取得部8とを有して構成されている。
【0016】
色むら抑制部2は、LED点灯時間調整部4と、γ逆換算部5と、γ算出部6と、変換テーブル7とにより構成されている。LED点灯時間調整部4は、γ算出時において、CIS3のLED点灯時間を調整する機能を有する。γ算出部6は、この時のCIS3出力を基にしてγを算出する機能を有する。変換テーブル7は、CIS3の特性に応じて、予め各γ値の逆換算値を格納しているテーブルである。
【0017】
γ逆換算部5は、γ算出部6の算出結果を基に、変換テーブル7を参照して、原稿読み取りデータを換算し、階調度とCIS出力値との特性(図3参照)をリニアにする機能を有するものである。なお、画処理部1は、一般的に知られているシェーディング補正や下地除去等の画像処理をなすものである。
【0018】
シェーディング補正用データ取得部8は、γ算出部6でのγ算出時に必要となる明補正データや暗補正データを取得する機能を有する。
【0019】
図2は図1に示した本発明の一実施の形態におけるγ算出動作を示すフローチャートであり、特に、LED点灯時間調整部4及びγ算出部6が行うγ算出処理のフローチャートである。図3は、この算出されたあるチップのγ特性(点線)と、このγ特性をリニアにすべくγ逆換算した場合の特性(実線)を、それぞれ示すグラフである。
【0020】
図2を参照して本実施の形態の動作を説明する。先ず、LED点灯時間調整部4において、LED点灯時間を90%に設定して(ステップS1)、そのときのCIS3の出力を読み取る(ステップS2)。
【0021】
なお、このときのシェーディング補正用データ取得部8によるシェーディング補正用データの明補正データ取得時のLED点灯時間は100%とする。次に、LED点灯時間調整部4において、LED点灯時間を30%に設定して(ステップS3)、そのときのCIS3の出力を読み取る(ステップS4)。
【0022】
これら2つのデータとシェーディング補正用データ取得部8により取得した暗補正データとを用いて、γ算出部6において、ステップS5に示したγ算出を行うことになる。
【0023】
すなわち、
(90%時のCIS出力−暗補正データ)/(30%時のCIS出力−暗補正データ)……(1)
なる式の算出を行うのである。なお、S5においては、「90%時のCIS出力」を「90%データ」と表記し、また「30%時のCIS出力」を「30%データ」と表記しており、以下そのように表記するものとする。
【0024】
上記(1)式の意味を以下に説明する。CIS3の各チップのγ特性のγは、疑似的に、下記の式(2)で表すことができる。
(y−c)=a*(xのγ乗)……(2)
ここで、yはCIS出力、xは原稿色、aは比例定数、cは暗補正データである。
【0025】
いま、LED点灯時間を90%(画像の階調度の90%に相当する)としたときのCIS出力である90%データをy1とし原稿色をx1とし、また30%(画像の階調度の30%に相当する)としたときのCIS出力である30%データをy2とし原稿色をx2とすると、
γ={log(y1−c)−log(y2−c)}/{log(x1)−log(x2)}=log{(y1−c)/(y2−c)}/log{x1/x2}……(3)
となる。
【0026】
この式(3)において、x1/x2=90%データ/30%データであり、既知であるので、(y1−c)/(y2−c)が分かれば、γが算出できる。よって、上記の式(1)を算出するようにしているのである。
【0027】
いま仮に、CIS3が10個のチップからなり、これら各チップには、200ピクセルがあるとすれば、以上のステップS1〜S5の処理が、全てのチップの全てのピクセルで同時に行われることになる。
【0028】
したがって、チップ単位でのγの平均化処理が行われる(ステップS6)。すなわち、1チップ内の各ピクセルのγのばらつきを平均化する必要があるために、このステップS6の平均化処理が行われるのである。更に、別のチップとのγのばらつきが大きい場合があり(例えば、1チップ目のγが1.1に対して、2チップ目のそれが1.2など)、よって、どのチップがどのγかの対応付けが必要であり、よって各チップとγとの対応付けがなされる。
【0029】
しかる後に、各チップ毎に算出して検出されたγ特性(図3の点線)が、γ逆拡散部5において変換テーブル7を用いて逆変換されてリニアな特性(図3の実線)に変換されるのである。
【0030】
なお、上記においては、階調度に対応するLED点灯時間を90%と30%の2点としているが、例えば、80%と20%との2点のデータを用いても良い。ここで、仮に、100%の近くや0%の近くの2点のデータを用いた場合には、γ特性は算出できない。なぜなら、0%が階調0、100%が階調255となるγもあり、この場合、その間のカーブ(特性)は算出できない。その一方で、約50%の真ん中近くのデータを用いた場合は、100%に近いところや0%に近いところのγに対して誤差が生じることになる。
【0031】
よって、画像の各ピクセルの階調度の約90%〜約60%の範囲内の所定の第1の階調度と、階調度の約40%〜約10%の範囲内の所定の第2の階調度とにそれぞれ対応したチップ出力データを検出して、これら2つのデータを用いてγ算出を行うのが良い。こうすることにより、単に2点のチップ出力データを用いるのみでγの算出ができ、よって高速処理が可能となる。
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態について図4を参照して説明する。なお、図4においては、図1と同等部分には同一符号をもって示している。本例における色むら抑制部2は、LED電流調整部9と、γ逆換算部5と、γ算出部6と、変換テーブル7とにより構成されている。他の構成は、先の実施の形態における図1の構成と同等である。
【0033】
本実施の形態では、図1におけるLED点灯時間調整部4の代わりに、LED電流調整部9が用いられており、このLED電流部調整部9により、LEDの電流の調整を行うようになっている。先の実施の形態では、例えば、点灯時間を調整して、γ算出のための90%と30%との2点の階調度に相当するチップ出力を得ていたが、本例では、LEDの駆動電流を調整して、γ算出のための90%と30%との2点の階調度に相当するチップ出力を得ている。
【0034】
図5を参照して、本実施の形態におけるγ算出の動作を説明する。先ず、LED電流調整部9において、90%LED電流設定を行い(ステップS11)、その時のCIS3出力を読み取る(ステップS12)。なお、シェーディング補正用データの明補正データ取得時のLED電流を100%とする。
【0035】
次に、LED電流調整部9において、30%LED電流設定を行い(ステップS13)、その時のCIS3出力を読み取る(ステップS14)。こうして得られた2つのデータと、シェーディング補正用データ取得部8で取得した暗補正データとを用いて、ステップS15に示した式による算出を行うことによって、γを算出することになる。
【0036】
この場合のステップS15に示したγ算出のための式については、上述したとおりであることは明白である。そして、チップ単位でのγの平均化および各チップとの対応付けを行う(ステップS16)
【0037】
原稿読み取り時において、γ逆換算部5は、変換テーブル7を用いて各チップの換算を行うことで、図3の実線で示したように特性をリニアとするものである。
【0038】
本発明の更に他の実施の形態を図6を参照して説明する。図6を参照すると、図4に示した色むら抑制部2の内部に、シェーディング補正部10を設けているなお、図1においても同様な構成が可能であることは勿論である。
【0039】
図1や図4の例では、シェーディング補正は、画像処理部1の内部で行うようになっているが、本例では、シェーディング補正を先に実施し、これを考慮にいれたγ逆換算処理を行うことにより、特性をリニアとするものである。
【0040】
上記の各実施の形態における動作手順は、予めプログラムとして記録媒体に格納しておき、これをコンピュータにより読み取らせて実行させるように構成することができることは明白である。
【0041】
上記の実施の形態の一部または全部は、特許請求の範囲に記載の他に、以下のようにも記載され得るが、以下の記載に限定されることはない。
【0042】
[付記1]
特許請求の範囲における請求項1〜5いずれかに記載の画像処理装置であって、
前記第1及び第2の階調度に対応したチップ出力を得るために、前記光の照射時間または光の強度を制御するようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【0043】
[付記2]
特許請求の範囲における請求項6〜10いずれかに記載の画像処理方法であって、
前記第1及び第2の階調度に対応したチップ出力を得るために、前記光の照射時間または光の強度を制御するようにしたことを特徴とする画像処理方法。
【0044】
[付記3]
光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置における画像処理方法をコンピュータに読み取らせて実行させるようにしたプログラムであって、
前記イメージセンサチップのチップ単位のガンマ特性を検出する処理と、
この検出されたチップ単位のガンマ特性をそれぞれ補正することによりチップ単位の色むらを抑制する処理とを含むことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0045】
1 画像処理部
2 色むら抑制部
3 CIS
4 LED点灯時間調整部
5 γ逆換算部
6 γ算出部
7 変換テーブル
8 シェーディング補正データ取得部
9 LED電流調整部
10 シェーディング補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置における画像処理装置であって、
前記イメージセンサチップのチップ単位のガンマ特性を検出するガンマ特性検出手段と、
この検出されたチップ単位のガンマ特性をそれぞれ補正することによりチップ単位の色むらを抑制する補正手段とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ガンマ特性検出手段は、前記チップの各々において、画像の各ピクセルの階調度の90%〜60%のうちの所定の第1の階調度と、前記階調度の40%〜10%のうちの所定の第2の階調度とに、それぞれ対応したチップ出力を検出して、前記第1及び第2の階調度に対応したチップ出力に基づいて前記チップ毎のガンマ特性を算出する算出手段を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記算出手段は、あるピクセルにおいて、前記第1及び第2の階調度に対応したチップ出力を、それぞれy1、y2とし、暗補正データをcとしたとき、
(y1−c)/(y2−c)
を用いて、当該ピクセルの前記ガンマ特性を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記チップの各々において、全ピクセルについて得られた前記ガンマ特性を平均化して、この平均を当該チップのガンマ特性とすることを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記チップ単位のガンマ特性を、この特性とは逆特性を用いて補正することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
光を原稿に照射してその反射光を電気信号に変換するイメージセンサチップを複数個用いて構成された画像読取装置における画像処理方法であって、
前記イメージセンサチップのチップ単位のガンマ特性を検出するガンマ特性検出ステップと、
この検出されたチップ単位のガンマ特性をそれぞれ補正することによりチップ単位の色むらを抑制する補正ステップとを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
前記ガンマ特性検出ステップは、前記チップの各々において、画像の各ピクセルの階調度の90%〜60%のうちの所定の第1の階調度と、前記階調度の40%〜10%のうちの所定の第2の階調度とにそれぞれ対応したチップ出力を検出して、前記第1及び第2の階調度に対応したチップ出力に基づいて前記チップ毎のガンマ特性を算出する算出ステップを有することを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記算出ステップは、あるピクセルにおいて、前記第1及び第2の階調度に対応したチップ出力を、それぞれy1、y2とし、暗補正データをcとしたとき、
(y1−c)/(y2−c)
を用いて、当該ピクセルの前記ガンマ特性を算出することを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記補正ステップは、前記チップの各々において、全ピクセルについて得られた前記ガンマ特性を平均化して、この平均を当該チップのガンマ特性とすることを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記補正ステップは、前記チップ単位のガンマ特性を、この特性とは逆特性を用いて補正することを特徴とする請求項6〜9いずれかに記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191278(P2012−191278A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50915(P2011−50915)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】