説明

画像処理装置

【課題】異常を検知して電源を切断した場合でも履歴情報を残すことができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置1は、揮発性のシステムメモリ22と、不揮発性メモリ23と、画像処理を制御するとともに、制御結果を履歴情報220としてシステムメモリ22に書き込むCPU20と、システムメモリ22から履歴情報220を不揮発性メモリ23部に転送する転送処理部26と、パルス送信部25との通信に基づき、CPU20の異常を検知したとき、転送処理部26により履歴情報220を転送させ、異常の検知から一定時間経過後に電源の供給を停止する電源制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CPU等の暴走を検出する暴走検出手段を有する複写機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この複写機は、機器の制御を行うCPUと、暴走検出手段としてのウォッチドッグタイマと、ウォッチドッグタイマにより暴走が検知されたとき、CPUのリセット処理を実行するリセット生成回路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−91171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、異常を検知して電源を切断した場合でも履歴情報を残すことができる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の画像処理装置を提供する。
【0007】
[1]揮発性記憶部と、不揮発性記憶部と、画像処理を制御するとともに、制御結果を履歴情報として前記揮発性記憶部に書き込む処理制御部と、前記揮発性記憶部から前記履歴情報を前記不揮発性記憶部に転送する転送部と、前記処理制御部との通信に基づき、前記処理制御部の異常を検知したとき、前記転送部により前記履歴情報を転送させ、前記異常の検知から一定時間経過後に電源の供給を停止する電源制御部とを備えた画像処理装置。
【0008】
[2]前記電源制御部は、前記処理制御部の処理が停止してから第1の規定時間が経過したことにより前記処理制御部の異常を検知する第1の異常検知部と、前記処理制御部の処理が停止してから前記第1の規定時間よりも長い第2の規定時間が経過したことにより前記処理制御部の異常を検知する第2の異常検知部とを有し、前記第1の異常検知部により前記処理制御部の異常を検知したとき、前記転送部により前記履歴情報を転送させ、前記第2の異常検知部により前記処理制御部の異常を検知したとき、前記電源の供給を停止する前記[1]に記載の画像処理装置。
【0009】
[3]前記処理制御部は、前記画像処理に関する駆動部を制御し、前記電源制御部は、前記駆動部への電源の供給を停止する前記[1]に記載の画像処理装置。
【0010】
[4]前記不揮発性記憶部は、前記画像処理装置の制御プログラムが記憶された記憶部である前記[1]に記載の画像処理装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、異常を検知して電源を切断した場合でも履歴情報を残すことができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、第1及び第2の異常検知部を有していない場合に比較して、電源制御部の構成を簡略化することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、異常を検知したときに駆動部の動作を停止することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、履歴情報と制御プログラムを記憶する記憶部を共用化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、画像処理装置の内部信号の一例を示す信号波形図である。
【図3】図3は、画像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る画像処理装置は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部と、画像処理を制御するとともに、制御結果を履歴情報として前記揮発性記憶部に書き込む処理制御部と、前記揮発性記憶部から前記履歴情報を前記不揮発性記憶部に転送する転送部と、前記処理制御部との通信に基づき、前記処理制御部の異常を検知したとき、前記転送部により前記履歴情報を転送させ、前記異常の検知から一定時間経過後に電源を遮断する電源制御部とを備える。
【0017】
上記構成において、処理制御部の異常が検知されると、転送部により履歴情報を転送された後に電源の供給が停止されるので、電源の供給が停止された場合でも履歴情報を不揮発性記憶部に残すことができる。
【0018】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の概略構成の一例を示すブロック図である。図2は、画像処理装置の内部信号の一例を示す信号波形図である。
【0019】
この画像処理装置1は、画像形成部3及び用紙搬送部4が有する制御対象機器を制御する機器制御部2と、画像形成部3と、用紙搬送部4と、第1の異常検出部としての第1のウォッチドッグタイマ部5Aと、第2の異常検出部としての第2のウォッチドッグタイマ部5Bとを備える。機器制御部2には、画像形成部3、用紙搬送部4、第1のウォッチドッグタイマ部5A及び第2のウォッチドッグタイマ部5Bがそれぞれ接続されている。
【0020】
(機器制御部)
機器制御部2は、処理制御部としてのCPU20と、プログラムROM21と、揮発性記憶部としてのシステムメモリ22と、不揮発記憶部としての不揮発性メモリ23と、複数のポート24と、パルス送信部25と、転送部としての転送処理部26と、電源管理部27とを備え、プログラムROM21、システムメモリ22、不揮発性メモリ23、ポート24、パルス送信部25及び転送処理部26がバス28により相互に接続されている。なお、電源管理部27、第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bは、電源制御部を構成する。
【0021】
プログラムROM21は、図示しない画像処理プログラムが記憶されている。なお、プログラムROM21は、画像処理プログラムを記憶した記憶領域以外に書き込み可能な記憶領域を有する場合には、その記憶領域に後述する動作履歴情報が転送されて書き込まれてもよい。
【0022】
CPU20は、プログラムROM21の画像処理プログラムに従って動作することにより、制御対象機器、画像形成部3及び用紙搬送部4等を制御するとともに、画像形成部3の画像形成に用いる画像情報の加工、変換等の画像処理を制御する。また、CPU20は、制御対象機器、画像形成部3及び用紙搬送部4等を制御した制御結果や、バス28上を流れる各種信号等を動作履歴情報220としてシステムメモリ22に書き込む。
【0023】
システムメモリ22は、例えば、RAM等により実現されている。システムメモリ22は、例えば、不揮発性メモリ23に比べてCPU20によるデータの書き込み速度が速く、書き換え可能耐性が高いという特性を有する。
【0024】
不揮発性メモリ23は、例えば、フラッシュメモリ、HDD等により実現されている。
【0025】
ポート24には、制御対象機器がそれぞれ接続されており、CPU20と制御対象機器との間で各種の信号が入出力される。
【0026】
パルス送信部25は、CPU20が正常に動作している場合には、第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bとの間で通信を行う。具体的には、パルス送信部25は、図2に示すように、動作保証パルス110をパルス周期時間100毎に第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bに送信する。そして、CPU20が、画像処理プログラム等の不具合が原因となって暴走を始めたような場合には、パルス送信部25は、動作保証パルス110の送信を停止する。
【0027】
転送処理部26は、例えば、DMA(Direct Memory Access)方式によりCPU20を介さずにシステムメモリ22と不揮発性メモリ23との間でデータ転送を行うコントローラである。転送処理部26は、第1のウォッチドッグタイマ部5Aから割込信号を受信したとき、システムメモリ22に保持されている動作履歴情報220を不揮発性メモリ23に転送する転送処理を行う。なお、この転送処理は、転送処理部26によらずに、CPU20により行われるようにしてもよい。
【0028】
電源管理部27は、図示しない電源線により制御対象機器及び機器制御部2の各部に電源を供給する。電源管理部27は、第2のウォッチドッグタイマ部5Bからリセット信号を受信したとき、制御対象機器及び機器制御部2の各部に対する電源の供給を停止する。
【0029】
(画像形成部)
画像形成部3は、用紙搬送部4により搬送された用紙に可視像を形成する図示しない感光体ドラム、現像ローラ及び転写ベルト等の回転体と、それら回転体を回転させるモータ30と、感光体ドラムから用紙に転写された画像を熱及び加圧力により用紙に定着させる圧着器31等を備える。なお、モータ30及び圧着器31は、ポート24に接続された制御対象機器である。
【0030】
(用紙搬送部)
用紙搬送部4は、例えば、A4,B4等の用紙をサイズ毎に収容する図示しないトレイと、トレイから用紙を搬送路に沿って搬送するモータ40と、モータ40による回転力の伝達及びその解除を制御するクラッチ41等を備える。なお、モータ40及びクラッチ41は、ポート24に接続された制御対象機器である。
【0031】
なお、制御対象機器は、画像処理装置に関する駆動部であればよく、上記のモータ30,40、圧着器31及びクラッチ41等に限られない。
【0032】
(ウォッチドッグタイマ部)
第1のウォッチドッグタイマ部5Aは、パルス送信部25から動作保証パルス110をパルス周期時間100毎に受信し、図2に示すように、第1の規定時間101A内にパルス送信部25から動作保証パルス110を受信しなかったことによりCPU20の異常を検知する。そして、第1のウォッチドッグタイマ部5Aは、CPU20の異常を検知したとき、転送処理部26に転送処理を要求する割込信号111を送信する。
【0033】
第2のウォッチドッグタイマ部5Bは、パルス送信部25から動作保証パルス110をパルス周期時間100毎に受信し、図2に示すように、第2の規定時間101B内にパルス送信部25から動作保証パルス110を受信しなかったことによりCPU20の異常を検知する。そして、第2のウォッチドッグタイマ部5Bは、CPU20の異常を検知したとき、電源管理部27に電源の供給の停止を要求するリセット信号112を送信する。
【0034】
ここで、第2のウォッチドッグタイマ部5Bの第2の規定時間101Bは、図2に示すように、第1のウォッチドッグタイマ部5Aの第1の規定時間101Aよりも長く設定されている。また、第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bの時間差、すなわち、第2の規定時間101Bから第1の規定時間101Aを減算した時間は、転送処理部26の転送処理に要する時間よりも長く設定されている。
【0035】
なお、第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5Aは、1つのタイマ部として構成されていてもよく、その場合のタイマ部は、CPU20の異常を検知し、転送処理部26に割込信号111を送信してから一定時間後、すなわち、第2の規定時間101Bから第1の規定時間101Aを減算した時間が経過した後に、電源管理部27にリセット信号112を送信すればよい。また、2つの規定時間101A,101Bは、例えば、コンデンサと抵抗の時定数を利用する方法や、内部タイマを2つ使用する方法等により設定してもよい。
【0036】
(画像処理装置の動作)
図3は、画像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。まず、画像処理装置1において、機器制御部2が正常に動作している場合には(S1:Yes)、パルス送信部25から第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bに動作保証パルス110がパルス周期時間100毎に送信される(S10)。
【0037】
また、機器制御部2において、画像処理プログラム等の不具合が原因となってCPU20が暴走を始めたような場合には(S1:No)、パルス送信部25から第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bに動作保証パルス110が送信されなくなる。
【0038】
一方、機器制御部2の動作とは別に、第1のウォッチドッグタイマ部5Aは、第1の規定時間101A内にパルス送信部25から動作保証パルス110を受信したか否かを監視している(S20)。また、第2のウォッチドッグタイマ部5Bも同様に、第2の規定時間101B内にパルス送信部25から動作保証パルス110を受信したか否かを監視している(S30)。
【0039】
そして、第1及び第2のウォッチドッグタイマ部5A,5Bが、第1及び第2の規定時間101A,101B内に動作保証パルス110をそれぞれ受信した場合には(S20:Yes,S30:Yes)、上記ステップS1に戻り、監視を継続する。
【0040】
一方、第1のウォッチドッグタイマ部5Aが、第1の規定時間101A内に動作保証パルス110を受信しなかった場合には(S20:No)、第1のウォッチドッグタイマ部5Aは、転送処理部26に割込信号111を送信する(S21)。転送処理部26は、割込信号111を受信すると、システムメモリ22の動作履歴情報220を不揮発性メモリ23に転送する(S22)。
【0041】
さらに、第2のウォッチドッグタイマ部5Bが、第2の規定時間101B内に動作保証パルス110を受信しなかった場合には(S30:No)、第2のウォッチドッグタイマ部5Bは、電源管理部27にリセット信号112を送信する(S31)。電源管理部27は、リセット信号112を受信すると、制御対象機器や機器制御部2の各部に対する電源の供給を停止する(S32)。
【0042】
以上にようにして、電源管理部27により電源の供給が停止されると、システムメモリ22の動作履歴情報220は失われてしまうが、動作履歴情報220は、リセット前に不揮発性メモリ23に転送されているので、不揮発性メモリ23の動作履歴情報220は、その後利用可能である。
【0043】
例えば、画像処理装置1は、その後電源が投入されると、不揮発性メモリ23に動作履歴情報220が記憶されている旨を通知し、ユーザは、その動作履歴情報220の画面出力、印刷出力及び記録媒体へのデータ出力等の出力指示を行い、画像処理装置1は、その指示に従って動作履歴情報220を出力する。そして、ユーザは、その出力された動作履歴情報220を不具合の原因解析等に利用する。また、不揮発性メモリ23を画像処理装置1から取り外し、その取り外した不揮発性メモリ23を情報処理装置(PC)に取り付けて、情報処理装置から不揮発性メモリ23に記憶された動作履歴情報220を読み出すようにしてもよい。
【0044】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、上記の実施の形態では、画像処理装置は、画像形成部を有していたが、その他に画像読取部、ファックス通信部等を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…画像処理装置、2…機器制御部、3…画像形成部、4…用紙搬送部、5A…第1のウォッチドッグタイマ部、5B…第2のウォッチドッグタイマ部、20…CPU、21…プログラムROM、22…システムメモリ、23…不揮発性メモリ、24…ポート、25…パルス送信部、26…転送処理部、27…電源管理部、28…バス、30…モータ、31…圧着器、40…モータ、41…クラッチ、100…パルス周期時間、101A…第1の規定時間、101B…第2の規定時間、110…動作保証パルス、111…割込信号、112…リセット信号、220…動作履歴情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性記憶部と、
不揮発性記憶部と、
画像処理を制御するとともに、制御結果を履歴情報として前記揮発性記憶部に書き込む処理制御部と、
前記揮発性記憶部から前記履歴情報を前記不揮発性記憶部に転送する転送部と、
前記処理制御部との通信に基づき、前記処理制御部の異常を検知したとき、前記転送部により前記履歴情報を転送させ、前記異常の検知から一定時間経過後に電源の供給を停止する電源制御部とを備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記電源制御部は、前記処理制御部の処理が停止してから第1の規定時間が経過したことにより前記処理制御部の異常を検知する第1の異常検知部と、前記処理制御部の処理が停止してから前記第1の規定時間よりも長い第2の規定時間が経過したことにより前記処理制御部の異常を検知する第2の異常検知部とを有し、前記第1の異常検知部により前記処理制御部の異常を検知したとき、前記転送部により前記履歴情報を転送させ、前記第2の異常検知部により前記処理制御部の異常を検知したとき、前記電源の供給を停止する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記処理制御部は、前記画像処理に関する駆動部を制御し、
前記電源制御部は、前記駆動部への電源の供給を停止する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記不揮発性記憶部は、前記画像処理装置の制御プログラムが記憶された記憶部である請求項1に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−199947(P2010−199947A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41930(P2009−41930)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】