説明

画像処理装置

【課題】装置構成を簡易なものとして各処理を分散し装置全体のスループットを向上させる。
【解決手段】メインコントローラー40とサブコントローラー50とがUSBケーブル14を介して接続されたプリンター10において、処理対象のCMYKデータがカラーのときにはサブコントローラー50にKデータを送信し、サブコントローラー50でKデータのハーフトーン処理を伴って印刷データを生成しメインコントローラー40でCMYデータのハーフトーン処理を伴って印刷データを生成するから、CMYデータとKデータとを並行処理してスループットを向上させることができる。また、CMYKデータがモノクロのときにはメインコントローラー40でKデータのハーフトーン処理を伴って印刷データを生成するから、Kデータを送信することなくスムーズに処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、詳しくは、CMYK表色系のうちCMYのインクを吐出するノズルからなるノズル群とKのインクを吐出するノズルからなるノズル群とが異なるノズル密度で形成されてなる吐出ヘッドに接続され、入力した画像データを印刷用データに変換処理して前記吐出ヘッドに出力する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像処理装置としては、2つのバッファー領域が設けられた共有メモリーと、XHTMLなどの文書データを解釈して画素毎に階調値が記録されたラスターデータを生成し共有メモリーのバッファー領域に書き込むメインのデータ処理装置と、バッファー領域に書き込まれたラスターデータにハーフトーン処理などを行なって印刷用データを生成するサブのデータ処理装置とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、サブのデータ処理装置が一方のバッファー領域に書き込まれたラスターデータを処理する間にメインのデータ処理装置が他方のバッファー領域に次の印刷分のラスターデータを書き込むことにより、装置全体のスループットを向上させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−98636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなデータ処理装置は、通常は自身が有する個別のメモリーにアクセスして各種データ処理を行うことができるが、上述したように複数のデータ処理装置が共有メモリーにアクセス可能な構成とした場合には、各データ処理装置が同時に同じバッファー領域にアクセスすることがないようにしなければならない。そのため、共有メモリーへの自由なアクセスを制限するための機能を各データ処理装置に新たに付加することなどが必要となり、装置構成が複雑なものとなったりコストが嵩んだりしてしまう。
【0005】
本発明の画像処理装置は、装置構成を簡易なものとして各処理を分散し装置全体のスループットを向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像処理装置は、
CMYK表色系のうちCMYのインクを吐出するノズルからなるノズル群とKのインクを吐出するノズルからなるノズル群とが異なるノズル密度で形成されてなる吐出ヘッドに接続され、入力した画像データを印刷用データに変換処理して前記吐出ヘッドに出力する画像処理装置であって、
前記画像データを入力する第1の処理装置と、該第1の処理装置と所定の通信インターフェースを介して通信可能に接続される第2の処理装置とを備え、
前記第1の処理装置は、前記入力した画像データをCMYKのインクを用いるカラーの印刷用データに変換するときには処理対象のCMYKの多階調のデータのうちKのデータを前記所定の通信インターフェースを介して前記第2の処理装置に送信しCMYのデータを画素毎の2値化を伴って変換処理し、前記入力した画像データをKのインクのみを用いるモノクロの印刷用データに変換するときには処理対象のKの多階調のデータを画素毎の2値化を伴って変換処理し、
前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から送信されたKの多階調のデータを画素毎の2値化を伴って変換処理する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像処理装置では、画像データを入力する第1の処理装置と、第1の処理装置と所定の通信インターフェースを介して通信可能に接続される第2の処理装置とを備え、第1の処理装置が、入力した画像データをCMYKのインクを用いるカラーの印刷用データに変換するときには処理対象のCMYKの多階調のデータのうちKのデータを所定の通信インターフェースを介して第2の処理装置に送信しCMYのデータを画素毎の2値化を伴って変換処理し、入力した画像データをKのインクのみを用いるモノクロの印刷用データに変換するときには処理対象のKの多階調のデータを画素毎の2値化を伴って変換処理し、第2の処理装置が、第1の処理装置から送信されたKの多階調のデータを画素毎の2値化を伴って変換処理する。これにより、第1の処理装置と第2の処理装置とを単に所定の通信インターフェースを介して接続する簡易な構成として、各処理装置がそれぞれ独立に処理を実行可能とすることができる。このため、カラーの印刷用データに変換するときには、CMYのデータの処理とKのデータの処理とを各処理装置に分散させて各処理を並行して行なうことができる。特に、CMYのデータとKのデータとはノズル密度の相違に伴って画素数が異なるものとなるが、画素毎の2値化の処理を分散させることで処理効率を上げることができる。この結果、装置全体としてスループットを向上させることができる。また、モノクロデータに変換するときには、Kのデータを第2の処理装置に送信することなく、第1の処理装置で効率よく処理することができる。
【0009】
こうした本発明の画像処理装置において、前記第1の処理装置は、Kのデータを圧縮してから送信する装置であり、前記第2の処理装置は、前記圧縮されたKのデータを解凍してから変換処理する装置であるものとすることもできる。こうすれば、Kのデータの送信に要する時間を短縮することができる。この態様の本発明の画像処理装置において、前記第1の処理装置は、可逆圧縮方式を用いてKのデータを圧縮する装置であるものとすることもできる。こうすれば、画質が損なわれることなくデータを送信することができる。
【0010】
また、本発明の画像処理装置において、前記吐出ヘッドは、Kのノズル群がCMYのノズル群よりも高密度に形成されてなるものとすることもできる。この態様の本発明の画像処理装置において、前記第1の処理装置は、前記入力した画像データをKのノズル群のノズル密度に応じた解像度で前記処理対象のCMYKの多階調のデータに変換し、Kのデータを送信した後にCMYのデータの解像度をCMYのノズル群のノズル密度に応じた解像度に変換する装置であるものとすることもできる。こうすれば、第2の処理装置は、Kのデータの解像度をKのノズル群のノズル密度に応じた解像度に変換する必要がないため、Kのデータの処理をスムーズに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】インクジェットプリンター10の構成の概略を示す構成図。
【図2】印刷ヘッド25の構成の概略を示す構成図。
【図3】ASIC43,53と印刷ヘッド25との接続関係を示す説明図。
【図4】ASIC43,53の機能ブロック図。
【図5】印刷処理のシーケンスを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の画像処理装置を搭載したインクジェットプリンター10の構成の概略を示す構成図であり、図2は印刷ヘッド25の構成の概略を示す構成図であり、図3はASIC43,53と印刷ヘッド25との接続関係を示す説明図である。本実施形態のインクジェットプリンター10は、図1に示すように、記録紙Sに画像を印刷するプリンター機構20と、各種処理を実行するメインコントローラー40と、メインコントローラー40にUSBケーブル14を介して通信可能に接続され各種処理を実行するサブコントローラー50とを備える。ここで、画像処理装置としては、メインコントローラー40とサブコントローラー50とが該当する。
【0013】
プリンター機構20は、左右方向にループ状に架け渡されたベルト21により駆動されガイド22に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ23と、このキャリッジ23に搭載されシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)(以下、適宜C,M,Y,Kとする)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ24と、各インクカートリッジ24から供給された各インクに圧力をかけて記録紙Sに向かってインクを吐出する印刷ヘッド25と、背面側から供給された記録紙Sを手前側へ送り出す搬送ローラー26とを備える。印刷ヘッド25には、図2に示すように、CMYの各色のインクを個別に吐出可能なノズル32C,32M,32Yが記録紙Sの搬送方向(副走査方向)に沿って配置されたノズル群30C,30M,30Yと、ブラック(K)のインクを吐出可能なノズル32Kが副走査方向に沿って配置されたノズル群30K1,30K2とが形成されている。ここで、各ノズル群の構成について、シアン(C)のノズル群30Cを例に挙げて説明する。ノズル群30Cは、2つのノズル列C1,C2からなり、各ノズル列C1,C2はそれぞれピッチが所定長さLとなるようにノズル32Cが配置されている。また、ノズル列C1のノズル32Cとノズル列C2のノズル32Cとは副走査方向に沿って千鳥(ジグザグ)になるよう配置され、そのピッチが所定長さLの半分の長さL/2となっている。本実施形態では、所定長さLはドットが150dpiの解像度となるように設定され、ノズル列C1によって形成されるドットとノズル列C2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、シアン(C)のドットの解像度は300dpiとなる。マゼンタ(M)のノズル群30Mおよびイエロー(Y)のノズル群30Yも同様に構成されているため、得られる解像度は300dpiとなる。また、ブラック(K)のノズル群30K1,30K2も同様にそれぞれ2つのノズル列K11,K12および2つのノズル列K21,K22からなる。さらに、ノズル群30K1のノズル32Kとノズル群30K2のノズル32Kとの副走査方向のピッチが長さL/2の半分の長さL/4となるよう配置されている。このため、ノズル群30K1によって形成されるドットとノズル群30K2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、ブラック(K)のドットの解像度は600dpiとなる。このように、印刷ヘッド25は、合計10列のノズル列を備え、CMYのドットの解像度が300dpi、Kのドットの解像度が600dpiとなるよう構成されている。即ち、CMYのノズル密度に比してKのノズル密度が高密度となっている。また、印刷ヘッド25は、各ノズルに個々に設けられた圧電素子に電圧を印加して変形させ、これにより加圧されたインクが吐出されることで記録紙Sにドットを形成している。図3では、ノズル列C1のノズル32Cにそれぞれ設けられる圧電素子をまとめて圧電素子38C1として図示し、印刷ヘッド25は、この圧電素子38C1に電圧を印可する回路として駆動回路36C1を備える。同様に、各ノズル列C2〜K22の圧電素子をまとめて圧電素子38C2〜38K22とし、これらの圧電素子38C2〜38K22に電圧を印加する回路として駆動回路36C2〜36K22を備える。なお、印刷ヘッド25は計10列のノズル列を備えるため、計10個の駆動回路36C1〜36K22を備えることになる。
【0014】
メインコントローラー40は、図1に示すように、CPU41などが搭載されたSOC(System On a Chip)40aと、各種データや各種テーブルなどを記憶したROM46と、データの読み書きが可能なSDRAM45と、写真などの画像データが保存されたメモリーカードMCとの接続に用いられるカードインターフェース(I/F)47とを備える。SOC40aには、CPU41の他に、サブコントローラー50と情報のやり取りを行なうUSBインターフェース(I/F)42と、印刷処理に関する各種処理を実行したりプリンター機構20を制御したりするASIC43と、SDRAM45よりも高速でアクセス可能な図示しないSRAMなどが搭載されており、これらは、バス48を介して互いに各種制御信号やデータのやり取りをすることができるよう接続されている。なお、バス48は、SOC40aとROM46やSDRAM45,カードI/F47とを接続する外部バスとしても機能する。また、ASIC43は、図3に示すように、印刷ヘッド25の10個の駆動回路36C1〜36K22のそれぞれに10本の送信ケーブル44(44a〜44j)を介して接続されており、各駆動回路36C1〜36K22に駆動信号を送信することができる。メインコントローラー40は、プリンター機構20からの各種動作信号を入力したり、USBI/F42を介してサブコントローラー50から送信される各種制御信号を入力したり、カードI/F47を介してメモリーカードMCに保存された画像データを入力したりする。また、USBI/F42を介してサブコントローラー50に画像データや各種制御信号を出力したりする。カードI/F47を介してメモリーカードMCから入力された画像データは、印刷ヘッド25のKのドットの解像度に合わせて600dpiのRGBデータとしてSDRAM45に記憶される。なお、入力された画像データがRGBデータ以外のときにはCPU41によりRGBデータに色変換してから記憶し、解像度が600dpi以外のときには隣接する画素同士の間に補間により画素を生成したり所定の割合で画素を間引いたりする。なお、RGBデータの各値は濃淡に応じて値0〜255の256階調(8ビット)で表されるものとする。
【0015】
サブコントローラー50は、図1に示すように、カードI/F47を備えない点を除いてメインコントローラー40と同様に構成されるため、各構成要素についてはメインコントローラー40の構成要素の符号に値10を加えた符号とする。このサブコントローラー50は、USBI/F52を介してメインコントローラー40から送信される画像データや各種制御信号を入力したり、USBI/F52を介してメインコントローラー40に各種制御信号を出力したりする。なお、入力した画像データは、SDRAM55に記憶される。また、ASIC53は、図3に示すように、印刷ヘッド25の10個の駆動回路36C1〜36K22のそれぞれに10本の送信ケーブル54(54a〜54j)を介して接続されており、ASIC43と同様に各駆動回路36C1〜36K22に駆動信号を送信することができる。
【0016】
ここで、メインコントローラー40のASIC43とサブコントローラー50のASIC53とが有する印刷処理に関する各機能について説明する。図4は、ASIC43,53の機能ブロック図である。ASIC43は、図4(a)に示すように、画像入力部43aと、色変換処理部43bと、圧縮処理部43cと、解像度変換処理部43dと、ハーフトーン処理部43eと、マイクロウィーブ処理部43fと、駆動信号送信部43gとを備える。画像入力部43aは、SDRAM45に記憶されているRGBデータを処理に必要な分、例えば印刷ヘッド25の1パス分の印刷データの生成処理に必要な分ずつ入力する。色変換処理部43bは、入力したRGBデータをSDRAM45に記憶された色変換ルックアップテーブル(LUT)を参照してCMYKデータに変換する色変換処理を行なう。なお、色変換処理されたCMYKデータの各値は濃淡に応じて値0〜255の256階調(8ビット)で表されるものとする。この色変換処理部43bは、CMYの3つのインクを用いて黒色(グレー)を表現するいわゆるコンポジットブラックを生成しないように色変換処理を行なう。このため処理対象のRGBデータが黒色を示す値のときには、処理後のCMYKデータはC=M=Y=0となりKのみのデータに変換されることになる。圧縮処理部43cは、色変換処理したCMYKデータからKデータを抽出して圧縮処理を行なう。Kデータの抽出は、色変換処理したCMYKデータの各画素に含まれるCMYKの階調値のうちKの階調値のみを取り出すことにより行なう。また、圧縮処理は、可逆圧縮方式により行ない、本実施形態では同一データの連続する長さを符号化して圧縮するランレングス圧縮を用いる。ここで、Kのインクは比較的濃い色の印刷にのみ用いられるため、カラー印刷におけるKデータの発生確率は他のCMYデータの発生確率に比して低くなることが多い。このため、CMYKデータからKデータを抽出してランレングス圧縮を行なう場合には、Kデータのない余白部分が連続することが多くなり圧縮処理をスムーズに行なうと共に圧縮効率を上げることができる。解像度変換処理部43dは、所定の割合で画素を間引いたり隣接する画素同士の各階調値の平均値を算出して1つの画素に置き換えたり隣接する画素同士の間に補間により新たに画素を生成したりすることにより解像度を変換する。ハーフトーン処理部43eは、各8ビットのCMYKデータを各2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を行なう。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法を用いて行なう。ディザ法は、予め設定されたディザマトリックスによって与えられる閾値と各画素の階調値との大小比較によってドットのオン/オフに2値化するものである。また、誤差拡散法は、注目画素の階調値と所定の閾値とを大小比較してドットのオン/オフに2値化し、2値化後の階調値と元の階調値との差分である誤差を注目画素の周囲の未処理画素に一定の割合で拡散するものである。このように、ハーフトーン処理では、いずれの処理を用いる場合であってもCMYKデータの各画素毎に処理が必要となる。マイクロウィーブ処理部43fは、ハーフトーン処理された2値化データを印刷ヘッド25がドットを形成する順番に並べ替えて1パス分のイメージデータを生成する。このとき、ノズルピッチが印刷解像度に相当する間隔よりも広い場合には、先のパスで形成されたドットのラインの間を次のパスで形成するドットのラインで埋めるいわゆるマイクロウィーブ処理が行なわれるようドットの形成順を決定する。駆動信号送信部43gは、1パス分のイメージデータから印刷ヘッド25の圧電素子38C1〜38K22に印可する電圧のパルスを駆動信号として生成し駆動回路36C1〜36K22にそれぞれ送信する。これらの各処理部は、処理が完了したデータをSDRAM45の図示しないデータバッファーに記憶したり、SDRAM45のデータバッファーから処理対象のデータを読み込んで処理を行なう。なお、図示は省略したが、プリンター機構20のキャリッジ23を往復動するモーターや搬送ローラー26を駆動するモーターの制御は、ASIC43が行なう。
【0017】
一方、ASIC53は、図4(b)に示すように、SDRAM55に記憶された画像データを入力する画像入力部53aと、ランレングス圧縮により圧縮処理された画像データを解凍処理する解凍処理部53cと、ASIC43のハーフトーン処理部43e,マイクロウィーブ処理部43f,駆動信号送信部43gとそれぞれ同様の処理を行なうハーフトーン処理部53e,マイクロウィーブ処理部53f,駆動信号送信部53gとを備える。これらの各処理部は、ASIC43の各処理部と同様に、SDRAM55の図示しないデータバッファーを用いて処理を行なう。このように、ASIC43,53はそれぞれSDRAM45,55の各データバッファーを用いて各処理を実行するため、メインコントローラー40とサブコントローラー50とは互いに独立して処理を実行することができる。
【0018】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター10の動作、特にSDRAM45に記憶された解像度が600dpiの各8ビットのRGBデータに基づいて印刷処理する場合の動作について説明する。図5は、メインコントローラー40とサブコントローラー50とにより印刷処理を実行する際のシーケンスを示す説明図である。このシーケンスにおいて、メインコントローラー40はCPU41やASIC43の上述した各処理機能を適宜用いて処理を実行するものとし、サブコントローラー50も同様とする。なお、図中()内の数値は画像データのビット数を示す。まず、メインコントローラー40は、SDRAM45に記憶されたRGBデータのうち、1パス分の印刷処理に必要なRGBデータを入力する(ステップS100)。次に、入力した各8ビットのRGBデータをLUTを用いて各8ビットのCMYKデータに色変換する色変換処理を実行し(ステップS110)、色変換後のデータがカラーデータであるかモノクロデータであるかを判定する(ステップS120)。上述したように、本実施形態ではコンポジットブラックを生成しないため、色変換後のCMYの各階調値がいずれも値0であるか否かを調べることにより、カラーデータであるかモノクロデータであるかを判定するものとした。
【0019】
ステップS120で色変換後のデータがカラーデータであると判定したときには、メインコントローラー40は、色変換後のCMYKデータのうちKデータを抽出してランレングス圧縮による圧縮処理を実行し(ステップS130)、圧縮したKデータをサブコントローラー50に送信する(ステップS140)。上述したように、ランレングス圧縮によりKデータを効率よく圧縮することができるから、スムーズに圧縮処理を行なって、データ送信時間を短くすることができる。また、ランレングス圧縮は可逆圧縮であるため、画質が損なわれるのを防止することができる。Kデータを送信すると、残りのCMYデータの解像度の変換処理を実行する(ステップS150)。色変換処理がなされてKデータが抽出された残りのCMYデータは解像度が600dpiとなっているが、印刷ヘッド25のCMYのドットの解像度は300dpiであるため、それに合わせて解像度を300dpiに変換する。解像度変換処理を行なうと、各8ビットのCMYデータを各2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を実行し(ステップS160)、CMYの1パス分のイメージデータを生成して(ステップS170)、サブコントローラー50から送信される処理完了信号を受信するのを待つ(ステップS180)。
【0020】
一方、サブコントローラー50は、メインコントローラー40から送信されたKデータの受信が完了するのを待って(ステップS300)、受信したKデータの解凍処理を実行する(ステップS310)。解凍処理を実行すると、8ビットのKデータを2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を実行して(ステップS320)、Kの1パス分のイメージデータを生成する(ステップS330)。なお、送信されたKデータは、Kの解像度に合わせて600dpiとなっているから、サブコントローラー50は解凍処理後に解像度変換処理をすることなく、スムーズにハーフトーン処理を開始することができる。イメージデータを生成すると、処理完了信号をメインコントローラー40に送信して(ステップS340)、メインコントローラー40から送信される駆動信号送信指示を受信するのを待つ(ステップS350)。このように、Kデータの処理をサブコントローラー50で行なうことにより処理を分散させることができる。上述したように、メインコントローラー40とサブコントローラー50とは、独立して処理が可能であるから分散させた処理の並行処理が可能となる。特に、ハーフトーン処理は各画素毎に処理が必要であり、解像度の相違により画素数の異なるKデータのハーフトーン処理とCMYデータのハーフトーン処理とをまとめて行なうことはできないが、これを分散させて並行処理することにより処理効率を向上させることができる。なお、処理を分散させるためにKデータの圧縮処理や送信処理が必要となるが、上述したように、スムーズに圧縮処理してデータ送信時間を短くすることができ、また、各画素毎の処理となるハーフトーン処理に比して比較的短時間の処理となるため、各処理に要する時間がそれほど大きな問題となることはない。
【0021】
ステップS180で処理完了信号を受信したメインコントローラー40は、駆動信号送信指示をサブコントローラー50に送信してから(ステップS190)、1パス分のノズル32C,32M,32Yの駆動信号を印刷ヘッド25に送信する(ステップS200)。具体的には、1パス分のCMYデータから生成した駆動信号を送信ケーブル44a〜44fを介して印刷ヘッド25の駆動回路36C1〜36Y2にそれぞれ送信する。一方、ステップS350で駆動信号送信指示を受信したサブコントローラー50は、1パス分のノズル32Kの駆動信号を印刷ヘッド25に送信する(ステップS360)。具体的には、1パス分のKデータから生成した駆動信号をケーブル54g〜54jを介して印刷ヘッド25の駆動回路36K11〜36K22にそれぞれ送信する。こうして1パス分のCMYKデータが印刷ヘッド25に送信されると、メインコントローラー40は、各モータを制御して1パス分の印刷処理を実行する(ステップS240)。これらの処理は、次パスのデータがなくなるまで繰り返し実行される。
【0022】
一方、ステップS120で色変換後のデータがモノクロデータであると判定したときには、CMYデータの処理は不要であり、メインコントローラー40は、8ビットのKデータを2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を実行する(ステップS210)。ハーフトーン処理を実行すると、Kの1パス分のイメージデータを生成し(ステップS220)、1パス分のノズル32Kの駆動信号を印刷ヘッド25に転送して(ステップS230)、ステップS240で1パス分の印刷処理を実行する。駆動信号の送信は、具体的には、1パス分のKデータから生成した駆動信号をケーブル44g〜44jを介して印刷ヘッド25の駆動回路36K11〜36K22にそれぞれ送信することにより行なわれる。このように、CMYデータの処理が不要なモノクロデータのときには、Kデータをサブコントローラー50に送信することなくメインコントローラー40で処理を行なう。このため、Kデータの圧縮処理や送信処理に要する時間が不要となり、スムーズに処理を行なうことができる。
【0023】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のメインコントローラー40が「第1の処理装置」に相当し、サブコントローラー50が「第2の処理装置」に相当し、印刷ヘッド25が「吐出ヘッド」に相当する。
【0024】
以上詳述した本実施形態のインクジェットプリンター10によれば、メインコントローラー40とサブコントローラー50とをUSBインターフェースを介して接続しておき、RGBデータを色変換処理したCMYKデータがカラーデータのときにはサブコントローラー50にKデータを送信しKデータのハーフトーン処理を伴ってイメージデータを生成しメインコントローラー40でCMYデータのハーフトーン処理を伴ってイメージデータを生成するから、画素数の異なるCMYデータのハーフトーン処理とKデータのハーフトーン処理とを並行して行なうことにより処理効率を向上させることができ、CMYKデータがモノクロデータのときにはメインコントローラー40でKデータのハーフトーン処理を伴ってイメージデータを生成するから、Kデータを送信することなくスムーズに処理することができる。また、Kデータは可逆圧縮方式であるランレングス圧縮により効率よく圧縮されて送信されるため、画質が損なわれることなくデータ送信時間なども短くすることができる。さらに、色変換処理されたCMYKデータは、Kのノズルの解像度に合わせたものとなっているから、サブコントローラー50は解像度変換処理を行なうことなくKデータの処理をスムーズに行なうことができる。
【0025】
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0026】
上述した実施形態では、印刷ヘッド25のKのノズル密度が高密度に形成されCMYのノズル密度が低密度に形成されるものとしたが、これに限られず、CMYのノズル密度が高密度に形成されKのノズル密度が低密度に形成されるものとしてもよい。その場合、メモリーカードMCから入力された画像データはCMYのドットの解像度に合わせたRGBデータとしてSDRAM45に記憶するものとすればよく、また、印刷処理において抽出したKデータを300dpiの解像度に変換処理してからサブコントローラー50に送信したりサブコントローラー50に解像度変換処理部を備えて受信したKデータを300dpiの解像度に変換処理するものなどとすればよい。なお、ノズル群30C,30M,30Y,30K1,30K2は、ノズル列を各2列ずつ備える構成としたが、これに限られず、各1列ずつとしてもよいし3以上の複数列備えるものなどとしてもよい。
【0027】
上述した実施形態では、ランレングス圧縮によりKデータを圧縮するものとしたが、これに限られず、ハフマン符号化などの他の可逆圧縮方式により圧縮するものとしてもよい。また、可逆圧縮方式に限られず、不可逆圧縮方式を用いるものとしてもよい。さらに、このような圧縮処理を行なわないものとしてもよく、抽出したKデータをそのまま送信するものとしてもよい。ただし、データ送信時間を短縮するためには本実施形態のように圧縮処理することが好ましい。
【0028】
上述した実施形態では、色変換処理後のCMYKデータからカラーデータかモノクロデータかを判定してカラー印刷の処理とモノクロ印刷の処理とを分けるものとしたが、これに限られず、ユーザーからのカラーまたはモノクロの印刷指定などに基づいて処理を分けるものとしてもよい。
【0029】
上述した実施形態では、メモリーカードMCに記憶された画像データを入力するものとしたが、これに限られず、パソコンなどから送信される画像データを入力するものなどとしてもよい。また、パソコンなどから送信される画像データとしてCMYKデータが送信されるものとしてもよく、その場合、ステップS110のRGBデータからCMYKデータへの色変換処理を省略するものなどとすればよい。
【0030】
上述した実施形態では、インク色はシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の4色としたが、これに限られず、ライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)などを含んで5色や6色としたり、それ以上の複数色としてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、各コントローラーがUSBインターフェースを備えるものとしたが、これに限られず、IEEE1394インターフェースなど他の規格のインターフェースを備えるものとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、画像処理装置をインクジェットプリンター20の印刷ヘッド25に接続される形態としたが、これに限られず、ファクシミリ装置などのインクを吐出可能な吐出ヘッドに接続される形態としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 インクジェットプリンター、14 USBケーブル、20 プリンター機構、21 ベルト、22 ガイド、23 キャリッジ、24 インクカートリッジ、25 印刷ヘッド、26 搬送ローラー、30C,30M,30Y,30K1,30K2 ノズル群、32C,32M,32Y,32K ノズル、36C1,36C2,36M1,36M2,36Y1,36Y2,36K11,36K12,36K21,36K22 駆動回路、38C1,38C2,38M1,38M2,38Y1,38Y2,38K11,38K12,38K21,38K22 圧電素子、40 メインコントローラー、40a,50a SOC、41,51 CPU、42,52 USBインターフェース(I/F)、43,53 ASIC、43a,53a 画像入力部、43b 色変換処理部、43c 圧縮処理部、43d 解像度変換処理部、43e,53e ハーフトーン処理部、43f,53f マイクロウィーブ処理部、43g,53g 駆動信号送信部、44(44a〜44j),54(54a〜54j) 送信ケーブル、45,55 SDRAM、46,56 ROM、47 カードインターフェース(I/F)、48,58 バス、50 サブコントローラー、53C 解凍処理部、C1,C2,M1,M2,Y1,Y2,K11,K12,K21,K22 ノズル列、MC メモリーカード、S 記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMYK表色系のうちCMYのインクを吐出するノズルからなるノズル群とKのインクを吐出するノズルからなるノズル群とが異なるノズル密度で形成されてなる吐出ヘッドに接続され、入力した画像データを印刷用データに変換処理して前記吐出ヘッドに出力する画像処理装置であって、
前記画像データを入力する第1の処理装置と、該第1の処理装置と所定の通信インターフェースを介して通信可能に接続される第2の処理装置とを備え、
前記第1の処理装置は、前記入力した画像データをCMYKのインクを用いるカラーの印刷用データに変換するときには処理対象のCMYKの多階調のデータのうちKのデータを前記所定の通信インターフェースを介して前記第2の処理装置に送信しCMYのデータを画素毎の2値化を伴って変換処理し、前記入力した画像データをKのインクのみを用いるモノクロの印刷用データに変換するときには処理対象のKの多階調のデータを画素毎の2値化を伴って変換処理し、
前記第2の処理装置は、前記第1の処理装置から送信されたKの多階調のデータを画素毎の2値化を伴って変換処理する
画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記第1の処理装置は、Kのデータを圧縮してから送信する装置であり、
前記第2の処理装置は、前記圧縮されたKのデータを解凍してから変換処理する装置である
画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の処理装置は、可逆圧縮方式を用いてKのデータを圧縮する装置である請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドは、Kのノズル群がCMYのノズル群よりも高密度に形成されてなる請求項1ないし3いずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の処理装置は、前記入力した画像データをKのノズル群のノズル密度に応じた解像度で前記処理対象のCMYKの多階調のデータに変換し、Kのデータを送信した後にCMYのデータの解像度をCMYのノズル群のノズル密度に応じた解像度に変換する装置である請求項4記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20408(P2011−20408A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169081(P2009−169081)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】