説明

画像処理装置

【構成】画像データの高周波成分は、BPF60およびコアリング回路62によって抽出される。抽出された高周波成分の振幅はアンプ64によって減衰される。また、抽出された高周波成分の振幅の上限は、リミッタ68によって制限される。リミッタ68によって制限された上限を有する高周波成分の振幅は、アンプ70によって増幅される。アンプ64から出力された高周波成分は加算器66によって画像データに重畳され、アンプ70から出力された高周波成分は加算器72によって画像データに重畳される。
【効果】輪郭の鮮鋭度および細部の再現性が一体的に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置に関し、特にディジタルカメラに適用され、入力画像の高周波成分を増幅する、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例が、特許文献1に開示されている。この背景技術によれば、FIR型のフィルタから出力された原信号の高周波成分が、リミッタ回路およびスライス回路に供給される。リミッタ回路からは、原信号に重畳されているノイズ成分の反転信号が出力される。また、スライス回路からは、輪郭強調用の2次微分波形が出力される。
【0003】
リミッタ回路およびスライス回路の出力はその後、利得調整を経て原信号と加算される。調整された利得を有する反転信号を原信号に加算することで、原信号からノイズ成分が除去される。また、調整された利得を有する2次微分波形を原信号に加算することで、輪郭が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−220975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、背景技術では、画像の細部の再現性を向上させる処理が実行されることはなく、画像処理の性能に限界がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、輪郭の鮮鋭度および細部の再現性を一体的に向上させることができる、画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従う画像処理装置(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、入力画像の高周波成分を抽出する抽出手段(60, 62)、抽出手段によって抽出された高周波成分に第1ゲインを付与する第1付与手段(64)、抽出手段によって抽出された高周波成分の振幅の上限を制限する制限手段(68)、制限手段によって制限された上限を有する高周波成分に第2ゲインを付与する第2付与手段(70)、および第1付与手段によって付与された第1ゲインを有する高周波成分と第2付与手段によって付与された第2ゲインを有する高周波成分とを入力画像に重畳する重畳手段(66, 72)を備える。
【0008】
好ましくは、抽出手段は、高域の周波数帯域に対応する抽出特性を有するフィルタ手段(60)、および基準を上回る振幅を有する周波数成分をフィルタ手段の出力から取り出すコアリング手段(62)を含む。
【0009】
好ましくは、第1ゲインは高周波成分の振幅を減衰させる値を示し、第2ゲインは高周波成分の振幅を増幅させる値を示す。
【0010】
好ましくは、被写界を捉える撮像手段(16)がさらに備えられ、入力画像は撮像手段によって捉えられた被写界を表す画像に相当する。
【発明の効果】
【0011】
第1付与手段によって付与された第1ゲインを有する高周波成分を入力画像に重畳することで、輪郭の鮮鋭度が向上する。また、制限手段によって制限された振幅と第2付与手段によって付与された第2ゲインとを有する高周波成分を入力画像に重畳することで、画像の細部の再現性が向上する。さらに、第1付与手段および制限手段によって注目される高周波成分を共通の抽出手段によって抽出することで、輪郭の鮮鋭度および細部の再現性が一体的に向上する。
【0012】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施例の基本的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】撮像面における評価エリアの割り当て状態の一例を示す図解図である。
【図4】図2実施例に適用される信号処理回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図4実施例に適用されるYデータ処理回路の構成の一部を示すブロック図である。
【図6】図5実施例に適用されるコアリング回路の入出力特性の一例を示すグラフである。
【図7】(A)はYデータ処理回路への入力の一例を示す波形図であり、(B)はBPFの出力の一例を示す波形図であり、(C)はコアリング回路の出力の一例を示す波形図であり、(D)はアンプの出力の一例を示す波形図であり、(E)はリミッタの出力の一例を示す波形図であり、(F)は他のアンプの出力の一例を示す波形図であり、(G)は加算器の出力の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
[基本的構成]
【0015】
図1を参照して、この発明の実施例である画像処理装置は、抽出手段1は、入力画像の高周波成分を抽出する。第1付与手段2は、抽出手段1によって抽出された高周波成分に第1ゲインを付与する。制限手段3は、抽出手段1によって抽出された高周波成分の振幅の上限を制限する。第2付与手段4は、制限手段3によって制限された上限を有する高周波成分に第2ゲインを付与する。重畳手段5は、第1付与手段2によって付与された第1ゲインを有する高周波成分と第2付与手段4によって付与された第2ゲインを有する高周波成分とを入力画像に重畳する。
【0016】
第1付与手段2によって付与された第1ゲインを有する高周波成分を入力画像に重畳することで、輪郭の鮮鋭度が向上する。また、制限手段3によって制限された振幅と第2付与手段4によって付与された第2ゲインとを有する高周波成分を入力画像に重畳することで、画像の細部の再現性が向上する。さらに、第1付与手段2および制限手段3によって注目される高周波成分を共通の抽出手段1によって抽出することで、輪郭の鮮鋭度および細部の再現性が一体的に向上する。
[実施例]
【0017】
図2を参照して、この実施例のディジタルカメラ10は、ドライバ18aおよび18bによってそれぞれ駆動されるフォーカスレンズ12および絞り機構14を含む。フォーカスレンズ12および絞り機構14を経た被写界の光学像は、撮像装置16の撮像面に照射される。
【0018】
撮像面には複数の受光素子(=画素)が2次元状に配置され、撮像面は原色ベイヤ配列の色フィルタ(図示せず)によって覆われる。撮像面に配置された受光素子は色フィルタを構成するフィルタ要素と1対1で対応し、各受光素子で生成される電荷の量はR,GまたはBの色に対応する光の強度を反映する。
【0019】
電源が投入されると、CPU34は、動画取り込み処理を実行するべく、ドライバ18cに露光動作および電荷読み出し動作の繰り返しを命令する。ドライバ18cは、図示しないSG(Signal Generator)から出力された垂直同期信号Vsyncに応答して、撮像面を露光し、かつこれによって生成された電荷をラスタ走査態様で読み出す。撮像装置16からは、読み出された電荷に基づく生画像データが周期的に出力される。出力される生画像データは、各画素がR,GおよびBのいずれか1つの色情報を有する画像データに相当する。
【0020】
信号処理回路20は、撮像装置16から出力された生画像データに色分離を施して各画素がR,GおよびBの全ての色情報を有するRGB形式の画像データを作成し、作成された画像データに白バランス調整を施し、そして調整された白バランスを有する画像データの形式をYUV形式に変換する。変換されたYUV形式の画像データは、メモリ制御回路22を通してSDRAM24に書き込まれる。
【0021】
LCDドライバ26は、SDRAM24に格納された画像データをメモリ制御回路24を通して繰り返し読み出し、読み出された画像データに基づいてLCDモニタ28を駆動する。この結果、被写界を表す動画像(スルー画像)がモニタ画面に表示される。
【0022】
図3を参照して、撮像面の中央には評価エリアEVAが割り当てられる。評価エリアEVAは水平方向および垂直方向の各々において16分割され、256個の分割エリアが評価エリアEVAを形成する。
【0023】
輝度評価回路30は、YUV変換によって生成されたYデータを分割エリア毎に積分し、256個の積分値つまり256個の輝度評価値を出力する。フォーカス評価回路32は、YUV変換によって生成されたYデータの高周波成分を分割エリア毎に積分し、256個の積分値つまり256個のフォーカス評価値を出力する。これらの積分処理は垂直同期信号Vsyncが発生する毎に実行され、輝度評価値およびフォーカス評価値は垂直同期信号Vsyncに応答して輝度評価回路30およびフォーカス評価回路32から出力される。
【0024】
キー入力装置36に設けられたシャッタボタン36sは、状態ST0〜ST2の間で遷移する。“ST0”は非操作状態に相当し、“ST1”は半押し状態に相当し、そして“ST2”は全押し状態に相当する。したがって、状態ST0から状態ST2への遷移は、状態ST1を経由して行われる。
【0025】
シャッタボタン36sが状態ST0のとき、CPU34は、輝度評価回路30から出力された輝度評価値に基づいて適正EV値を算出するべく、簡易AE処理を繰り返し実行する。算出された適正EV値を定義する絞り量および露光時間はドライバ18bおよび18cにそれぞれ設定され、これによってスルー画像の明るさが適度に調整される。
【0026】
シャッタボタン36sが状態ST0から状態ST1に遷移すると、CPU34は、厳格AE処理およびAF処理を以下の要領で実行する。
【0027】
厳格AE処理は輝度評価回路30から出力された複数の輝度評価値を参照して実行され、これによって最適EV値が算出される。算出された最適EV値を定義する絞り量および露光時間もまたドライバ18bおよび18cにそれぞれ設定され、これによってスルー画像の明るさが最適値に調整される。
【0028】
AF処理は、フォーカスレンズ12の移動と並列してフォーカス評価回路32から出力された複数のフォーカス評価値を参照して実行される。合焦点は複数のフォーカス評価値の変化に注目して探索され、フォーカスレンズ12はこうして発見された合焦点に配置される。これによって、スルー画像の鮮鋭度が向上する。
【0029】
シャッタボタン36sが状態ST2に遷移すると、CPU34は、静止画取り込み処理を実行する。シャッタボタン36sが状態ST2に遷移した時点の被写界を表す1フレームの画像データは、SDRAM24に設けられたワークエリア(図示せず)に退避される。静止画取り込み処理が完了すると、CPU34は記録処理のためにI/F38を起動する。I/F38は、ワークエリアに退避された画像データをメモリ制御回路22を通して読み出し、読み出された画像データをファイル形式で記録媒体40に記録する。
【0030】
信号処理回路20は、図4に示すように構成される。色分離回路50は、撮像装置16から入力された生画像データに色分離処理を施してRGB画像データを作成する。作成されたRGB画像データのうち、Rデータは白バランス調整回路52を構成する増幅器52rを経てYUV変換回路54に与えられ、GデータはそのままYUV変換回路54に与えられ、そしてBデータは白バランス調整回路52を構成する増幅器52bを経てYUV変換回路54に与えられる。
【0031】
増幅器52rはRデータをゲインαに従って増幅し、増幅器52bはBデータをゲインβに従って増幅する。ゲインαおよびβは適正ゲインを定義するパラメータであり、これによってRGB画像データの白バランスが的確に調整される。
【0032】
YUV変換回路54は、こうして調整された白バランスを有するRGB画像データをYUV画像データに変換する。変換されたYUV画像データのうち、UデータおよびVデータはそのまま出力され、YデータはYデータ処理回路56を介して出力される。
【0033】
Yデータ処理回路56は、図5に示すように構成される。BPF60は、Yデータの高周波成分を抽出し、抽出された高周波成分をコアリング回路62に与える。Yデータが図7(A)に示す波形を有する場合、図7(B)に示す波形を有する高周波成分がBPF60から出力される。
【0034】
コアリング回路62は、図6に示す入出力特性を有する。図6によれば、“−TH1”〜“TH1”の範囲の入力レベルは0レベルに抑圧される。一方、“TH1”を上回る範囲の入力レベルはマイナスのオフセットを付加され、“−TH1”を下回る範囲の入力レベルはプラスのオフセットを付加される。こうして、|TH1|を上回る振幅を有する高周波成分がコアリング回路62によって取り出される。コアリング回路62から出力される高周波成分の波形は、図7(B)に示す高周波成分に対応して図7(C)に示す要領で変化する。
【0035】
アンプ64は、コアリング回路62から出力された高周波成分に“1.0”未満のゲインを付与する。この結果、高周波成分の振幅は図7(D)に示す要領で減衰される。リミッタ68は、コアリング回路62から出力された高周波成分の振幅の上限を図7(E)に示す要領で制限する。アンプ70は、リミッタ68から出力された高周波成分に“1.0”を上回るゲインを付与する。この結果、上限が制限された高周波成分の振幅は、図7(F)に示す要領で増幅される。
【0036】
加算器66および72はそれぞれ、アンプ66から出力された高周波成分およびアンプ70から出力された高周波成分を、YUV変換回路54から出力されたYデータに加算する。加算器72からは、図7(G)に示す波形を有するYデータが出力される。
【0037】
以上の説明から分かるように、画像データの高周波成分は、BPF60およびコアリング回路62によって抽出される。抽出された高周波成分の振幅はアンプ64によって減衰される。また、抽出された高周波成分の振幅の上限は、リミッタ68によって制限される。リミッタ68によって制限された上限を有する高周波成分の振幅は、アンプ70によって増幅される。アンプ64から出力された高周波成分は加算器66によって画像データに重畳され、アンプ70から出力された高周波成分は加算器72によって画像データに重畳される。
【0038】
アンプ64によって減衰された高周波成分を画像データに重畳することで、輪郭の鮮鋭度が向上する。また、リミッタ68によって上限が制限されかつアンプ70によって増幅された高周波成分を画像データに重畳することで、画像の細部の再現性が向上する。さらに、アンプ64およびリミッタ68によって注目される高周波成分を共通のコアリング回路62によって抽出することで、輪郭の鮮鋭度および細部の再現性が一体的に向上する。
【符号の説明】
【0039】
10 …ディジタルカメラ
16 …撮像装置
20 …信号処理回路
56 …Yデータ処理回路
60 …BPF
62 …コアリング回路
64,70 …アンプ
68 …リミッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像の高周波成分を抽出する抽出手段、
前記抽出手段によって抽出された高周波成分に第1ゲインを付与する第1付与手段、
前記抽出手段によって抽出された高周波成分の振幅の上限を制限する制限手段、
前記制限手段によって制限された上限を有する高周波成分に第2ゲインを付与する第2付与手段、および
前記第1付与手段によって付与された第1ゲインを有する高周波成分と前記第2付与手段によって付与された第2ゲインを有する高周波成分とを前記入力画像に重畳する重畳手段を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、高域の周波数帯域に対応する抽出特性を有するフィルタ手段、および基準を上回る振幅を有する周波数成分を前記フィルタ手段の出力から取り出すコアリング手段を含む、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1ゲインは前記高周波成分の振幅を減衰させる値を示し、
前記第2ゲインは前記高周波成分の振幅を増幅させる値を示す、請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
被写界を捉える撮像手段をさらに備え、
前記入力画像は前記撮像手段によって捉えられた被写界を表す画像に相当する、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249955(P2011−249955A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118962(P2010−118962)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】