説明

画像形成システム

【課題】超音波と光を併用した造影技術を提供する。
【解決手段】超音波プローブ116は、蛍光物質を含んだバブルに対して超音波を送波してバブルから発する超音波を受波する。超音波画像形成部122は、バブルから発する超音波を受波することよって得られる受波信号に基づいて、バブルを含んだ超音波画像を形成する。光プローブ220は、蛍光物質を含んだバブルに対して励起光を照射してバブルから発する光を受光する。蛍光画像形成部210は、バブルから発する光を受光することによって得られる受光信号に基づいて、バブルを含んだ蛍光画像を形成する。画像合成部322は、蛍光画像と超音波画像を合成することにより合成画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バブルを利用した画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブル(またはナノバブル)は、液体などに注入された微細な気泡を意味している。このマイクロバブルは、様々な優れた特性を備えているため、多くの分野で利用されている。例えば、医療分野への応用として、マイクロバブルが超音波の好適な反射体となることから、超音波画像を取得する際の血管造影剤として利用されている。
【0003】
さらに、近年になり、マイクロバブルなどの粒子に蛍光性質を付与し、その蛍光性質を利用して造影する技術も提案されている。例えば、特許文献1には、粒子に蛍光成分と消光成分を付与し、蛍光成分と消光成分の距離に応じて光の強度が変化することを利用した造影技術が記載されている。また、特許文献2には、蛍光用の造影剤をエマルジョンに含有させることにより、造影剤の送達を向上させる技術が記載されている。また、特許文献3には、造影剤の送達を向上させるために、蛍光物質をリポソームなどのマイクロキャリアに含有させる技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−325115号公報
【特許文献2】特開2005−263647号公報
【特許文献3】特開2005−220045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと、本願の発明者は、マイクロバブルなどの微小気泡(バブル)を利用した造影技術について研究を重ねてきた。特に、超音波の反射体であるバブルに蛍光性質を付与し、そのバブルを利用して造影する技術について研究を重ねてきた。
【0006】
本発明は、その研究の過程において成されたものであり、その目的は、超音波と光を併用した造影技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である画像形成システムは、蛍光物質を含んだバブルに対して励起光を照射して前記バブルから発する光を受光する光検出部と、前記バブルに対して超音波を送波して前記バブルから発する超音波を受波する超音波検出部と、前記バブルから発する光を受光することによって得られる受光信号に基づいて前記バブルを含んだ蛍光画像を形成する蛍光画像形成部と、前記バブルから発する超音波を受波することよって得られる受波信号に基づいて前記バブルを含んだ超音波画像を形成する超音波画像形成部と、蛍光画像と超音波画像を合成することにより合成画像を形成する画像合成部とを有することを特徴とする。
【0008】
望ましい態様において、前記画像形成システムは、回転軸方向に伸長された回転プローブをさらに有し、回転プローブの回転軸方向の先端部に前記光検出部と前記超音波検出部が設けられ、回転プローブが回転することにより、光検出部によって照射されて受光される光と超音波検出部によって送受波される超音波が互いに略同一の平面内で回転走査され、前記画像合成部は、互いに略同一の平面に対応した蛍光画像と超音波画像を合成して合成画像を形成することを特徴とする。
【0009】
望ましい態様において、前記画像形成システムは、前記光検出部と前記超音波検出部の位置情報を取得する位置検出部をさらに有し、前記画像合成部は、位置検出部によって取得された位置情報に基づいて蛍光画像と超音波画像の互いの位置合わせをして合成画像を形成することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である画像形成方法は、蛍光物質を含んだバブルに対して励起光を照射して前記バブルから発する光を受光する工程と、前記バブルに対して超音波を送波して前記バブルから発する超音波を受波する工程と、前記バブルから発する光を受光することによって得られる受光信号に基づいて前記バブルを含んだ蛍光画像を形成する工程と、前記バブルから発する超音波を受波することによって得られる受波信号に基づいて前記バブルを含んだ超音波画像を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
望ましい態様において、前記画像形成方法は、前記蛍光画像と前記超音波画像を合成することにより合成画像を形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の好適な態様であるバブルは、親水基を外側とし疎水基を内側として略球形の表面に沿って形成された殻層と、殻層によって形成された略球形の空間内に閉じ込められる流体と、励起光を受けて光を発する蛍光物質とを含み、超音波と光を併用した造影のための造影剤として用いられることを特徴とする。
【0013】
望ましい態様において、前記蛍光物質は、殻層によって閉じ込められた流体内に封入されることを特徴とする。望ましい態様において、前記蛍光物質は、蛍光標識された抗体であり殻層に化学的に修飾されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、超音波と光を併用した造影技術が提供される。例えば、本発明の好適な態様により、蛍光画像と超音波画像を合成した合成画像を形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1には、本発明に係るバブルの好適な実施形態が示されており、図1は、蛍光性質を備えたマイクロバブルの構造を説明するための模式図である。マイクロバブル10は、例えば溶液などに注入された「微細な気泡」を意味し、様々な優れた特性をもつため多くの
分野で利用されている。
【0017】
マイクロバブル10の殻(シェル)16は、例えばリン脂質等の生体由来の高分子からなる界面活性機能を有し、親水基12を外側(溶液側)とし、疎水基14を内側(内部空間側)とした層を形成する。つまり、疎水基14が内側に集まって内部を包み込み、親水基12が外側に集まってバブルの表面を形成している。これにより、略球形に形成されたマイクロバブル10は、例えば生体内で長時間安定して存在することが出来る。
【0018】
マイクロバブル10は、その直径が例えば0.1〜10μm程度に形成される。なお、径の大きさに応じて、例えばナノバブルと呼ばれる場合もある。
【0019】
殻16によって形成された略球形の内部空間には、気体や液体などの流体が閉じ込められる。その流体には、例えばPFC(Perfluorocarbon: パーフルオロカーボン)などが用いられている。また、内部に閉じ込める流体として、溶液に溶解しづらい不活性なガスを用いることにより、マイクロバブル10の安定性の向上が期待される。
【0020】
本実施形態では、マイクロバブル10が、さらに、蛍光物質18を備えている。図1において、蛍光物質18は、マイクロバブル10の殻16によって閉じ込められた流体内に封入される。蛍光物質18は、例えば、赤外蛍光体のナノ粒子(蛍光標識されたナノ粒子)である。また、蛍光標識された微小粒子に異なる種類の分子を捕捉するための、別の種類の抗体を標識しても良い。
【0021】
本実施形態のマイクロバブル10は、超音波の反射体としての性質を備えている。さらに、マイクロバブル10は、蛍光物質18を備えており、この蛍光物質18が励起光を受けて光を発する。これにより、本実施形態のマイクロバブル10は、例えば、超音波と光を併用した造影のための造影剤として用いられる。なお、超音波と光を併用した造影については後に詳述する。
【0022】
図2は、蛍光性質を備えたマイクロバブルの他の構造を説明するための模式図である。近年になり、マイクロバブル10の表面にタンパク質(抗原、抗体)や核酸(DNA、RNA)などを標識する技術が開発されている。本発明においても、目的分子を捕捉するための物質をマイクロバブル10の表面に修飾する技術が利用されてもよい。
【0023】
図2(A)は、マイクロバブル10の外側表面に、目的分子を補足するための抗体20が修飾された構造を示している。例えば、界面活性剤にPEG鎖を付与し、PEG鎖の末端に抗体20を化学的に修飾させる。図2(A)の符号22は、PEG鎖のついた親水基を示している。
【0024】
図2(B)は、マイクロバブル10の外側表面に、蛍光標識された抗体24が修飾された構造を示している。抗体を蛍光標識する方法としては、例えば、蛍光体のNHS反応基(N-Hydroxy succinimide - ester)とタンパク質中の一級アミンとで架橋させる方法や、蛍光色素中のイソチオシアネート基を抗体中の反応基と架橋させる方法などがある。なおマイクロバブル10の殻の内壁に蛍光物質が標識されてもよい。
【0025】
図1および図2に示したマイクロバブル10に含まれる各部の具体例は次のとおりである。殻は例えばHuman albumin、Phospholipids、PLGA(Polylactic glycolic acid)などである。また、マイクロバブル10内部の流体は、例えば、空気、Octafluoropropane、Perfluoropropane、Perfluorohexane、Perfluorocarbonなどである。また、蛍光物質(蛍光色素)は、FITC、Cy3、Cy5、Cy6、IRDye700DX、IRDye800cwなどである。さらに、バブルの標識方法としては、PEG(ポリエチレングリコール)、Biotin(ビオチン)などを利用する方式がある。上述した、殻、流体、蛍光色素、バブル標識方法の各具体例を任意に組み合わせることにより、マイクロバブル10が形成される。
【0026】
図3には、本発明に係る画像形成システムの好適な実施形態が示されており、図3は、画像形成システムの全体構成を示す機能ブロック図である。図3に示す画像形成システムは、前述のマイクロバブル(図1、図2の符号10)を利用して、画像を形成するシステムである。マイクロバブルは例えば生体内の診断部位(血管や腫瘍など)に投与される。
【0027】
信号発生器110は、送信パルスを形成するための駆動信号を生成して送信ビームフォーマ112へ出力する。送信ビームフォーマ112は、超音波プローブ116に含まれる図示しない複数の振動素子を制御して送信ビームを形成し、また、形成した送信ビームを必要に応じて電子的に走査する。送信アンプ114は、送信ビームフォーマ112から供給される信号に対して増幅処理を施す。そして、増幅処理された送信信号が、送受信切替部(T/R)を介して、超音波プローブ116へ出力される。
【0028】
超音波プローブ116は、送信信号に基づいて、マイクロバブルが投与された生体内の診断部位に対して超音波を照射するとともに、診断部位からの反射エコーと、マイクロバブルが振動することによって発生する放射エコーやマイクロバブルが破砕した際に発する衝撃波エコーを受信する。受信された受信信号は、送受信切替部(T/R)を介して、受信アンプ118へ供給されて増幅処理される。
【0029】
受信ビームフォーマ120は、超音波プローブ116に含まれる複数の振動素子から得られる受信信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。これにより、受信ビームフォーマ120から整相加算後の受信信号が出力される。
【0030】
超音波画像形成部122は、整相加算後の受信信号に基づいて超音波画像を形成する。例えば、診断部位に投与されたマイクロバブルが検出され、マイクロバブルが存在する位置(深さ)において輝度等を適宜調整した超音波画像を形成することにより、診断部位(血管や腫瘍など)が強調された(造影された)画像が形成される。なお、マイクロバブルが存在する位置の受信信号の振幅などに基づいて、その位置におけるマイクロバブルの強さ(バブルの集積量)を判断し、マイクロバブルの強さに応じた色を超音波画像に施してもよい。
【0031】
一方、光プローブ220は、マイクロバブルが投与された生体内の診断部位に対して励起光(レーザ)を照射するとともに、マイクロバブルが備える蛍光物質から発する光を受光する。受光によって得られた受光信号は、受光信号解析部212へ供給される。
【0032】
受光信号解析部212は、受光信号に基づいて、蛍光物質から発する光の位置や光の強さなどを解析する。そして、蛍光画像形成部210は、受光信号の解析結果に基づいて蛍光画像を形成する。
【0033】
例えば、光プローブ220によって、ある平面に対して略垂直に励起光が照射され、その励起光が当該平面内で二次元的に走査される。そして、受光信号解析部212によって、各走査位置の受光信号から各走査位置における光の有無や光の強さが求められる。さらに、蛍光画像形成部210によって、各走査位置の光の有無や強さを反映させた当該平面に平行な画像が形成される。
【0034】
また、例えば、光干渉断層法(OCT:Optical Coherence Tomography)を利用して、光プローブ220によって受光された光の干渉を解析することにより、蛍光画像形成部210において超音波断層画像のような二次元の光断層画像が形成されてもよい。
【0035】
超音波画像形成部122で形成された超音波画像(画像データ)と蛍光画像形成部210で形成された蛍光画像(画像データ)は、画像合成部322へ供給される。そして、画像合成部322において、超音波画像と蛍光画像を合成した合成画像が形成される。画像合成部322で形成された合成画像は、表示器324に表示される。表示器324としては、例えば、CRTモニタや液晶モニタなどが好適である。もちろん、他の表示デバイスを利用してもよい。
【0036】
超音波プローブ116と光プローブ220は、互いに別々のプローブ(別体型プローブ)として形成されてもよいし、超音波プローブ116と光プローブ220を一体化したプローブ(一体型プローブ)を形成してもよい。超音波プローブ116と光プローブ220が、互いに別々のプローブとして形成される場合には、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置を検出する位置検出部320が設けられることが望ましい。
【0037】
位置検出部320は、超音波プローブ116に取り付けられる磁気センサ312と、光プローブ220に取り付けられる磁気センサ314の検出結果に基づいて、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置を検出する。
【0038】
位置の検出には、公知の手法を利用することができる。例えば、基準となる位置に設置された磁場発生器(図示せず)によって磁場分布が形成される。磁場発生器は、軸方向がそれぞれ互いに直交する3方向に対応した3つの磁場発生コイルを有しており、これにより三次元的な磁場分布を形成する。また、磁気センサ312,314の各々にも、軸方向がそれぞれ互いに直交する3方向に対応した3つの磁場検出コイルが設けられている。
【0039】
そして、例えば、磁気センサ312,314によって磁場の強さが計測され、その磁場の強さに基づいて、位置検出部320において磁場分布内における磁気センサ312,314の位置、つまり、磁場発生器を基準位置とした場合の超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置が特定される。なお、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の方向が特定されてもよい。
【0040】
位置検出部320において、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置が特定されると、その位置情報が画像合成部322へ供給される。画像合成部322は、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置情報に基づいて、超音波画像と蛍光画像を合成する。こうして、超音波画像と蛍光画像の互いの位置合わせをして合成画像を形成することができる。
【0041】
図4は、光プローブ(図3の符号220)の内部構成を説明するための図である。レーザ発生部221から照射される励起光(例えば波長700nm)は、レンズ222,224によって光学的に収束され、マイクロバブル10を含んだ診断部位に焦点照射される。
【0042】
照射スポットにあるマイクロバブル10は、例えば赤外蛍光標識されており、励起光を受けて赤外蛍光を発光する。蛍光は、ハーフミラー223によって受光レンズ225に導かれ、バンドパスフィルタ226を介して、受光素子227によって受光される。受光素子227は、蛍光信号を電気信号に変換、増幅する。電気信号は、例えば図示されていない信号処理部でA/D変換されメモリに記憶され、受光信号として受光信号解析部212によって処理される。
【0043】
図5は、超音波プローブと光プローブを一体化したプローブを説明するための図である。超音波振動子117は、複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が電気的に制御されて超音波ビーム130が形成される。そして、超音波ビーム130を介して得られるエコー信号が、超音波画像形成部(図3の符号122)へ供給される。
【0044】
一方、レンズ224を介して励起光230が照射されると、マイクロバブルに含まれる蛍光物質が蛍光を発する。そして、その蛍光がハーフミラー223によってファイバ228へ導かれ、電気信号へ変換された後に受光信号解析部(図3の符号212)へ供給される。
【0045】
図5に示す一体型プローブは、略円筒状に形成されており、その軸方向の先端部で超音波ビーム130を送受波し、また、励起光230を照射して蛍光を受光している。超音波ビーム130と励起光230は、互いに略同一直線上で反対方向に向けられている。そして、円筒状のプローブが軸を中心として回転することにより、超音波ビーム130と励起光230が互いに略同一の平面内で回転走査され、同一平面内で受波信号と受光信号が得られる。こうして、画像合成部(図3の符号322)によって、互いに略同一の平面に対応した蛍光画像と超音波画像を合成した合成画像が形成される。
【0046】
図6は、図5に示す一体型プローブによって形成される合成画像を説明するための図である。合成画像60は、一体型プローブによって得られる超音波画像66と蛍光画像64を合成した画像である。図5に示す一体型のプローブの場合、超音波ビームと励起光が互いに略同一の平面内で回転走査されるため、超音波画像66と蛍光画像64も互いに略同一の平面に対応した画像となる。
【0047】
プローブ断面62は、一体型プローブの断面であり、このプローブ断面62の位置から超音波ビームと励起光が回転走査される。図6において、プローブ断面62から放射状に伸びる矢印は超音波ビームと励起光を模式的に示したものである。
【0048】
超音波画像66は、例えば、Bモード画像であり、回転走査される超音波ビームから得られる受波信号(エコー信号)に基づいて形成される。もちろん、超音波画像66としてドプラ画像などを形成してもよい。
【0049】
蛍光画像64は、励起光を回転走査して各走査方向において得られる受光信号に基づいて形成される。例えば、光干渉断層法を利用して、受光された光の干渉を解析することにより、各走査方向ごとに励起光の深さ方向に沿った各位置における光の強度が求められ、蛍光画像64として、超音波断層画像のような二次元の光断層画像が形成される。なお、各走査方向ごとに光の強度を求め、強度の大きい走査方向をプローブ断面62から放射状に伸びる帯で示した画像を形成してもよい。
【0050】
図7は、別体型プローブによって形成される合成画像を説明するための図である。超音波プローブ116と光プローブ220が互いに別々のプローブとして形成された別体型プローブの場合、まず、光プローブ220がx方向とy方向に二次元的に走査され、各走査位置においてその走査位置の光の強度が測定される。これにより、二次元平面内の各走査位置ごとに光の強度を示した蛍光画像74が形成される。
【0051】
次に、超音波プローブ116によって蛍光画像74に対して略垂直な走査面内で超音波ビームが走査される。これにより、蛍光画像74に対して略垂直な超音波断層画像76が形成される。超音波断層画像76には、バブルの集積が少量の部分78(マイクロバブルからの反射波や衝撃波が少ない部分)やバブルの集積が大量の部分79(マイクロバブルからの反射波や衝撃波が多い部分)などが示されており、これにより、蛍光画像74の深さ方向に関するバブルの集積の程度が示される。
【0052】
なお、超音波プローブ116と光プローブ220の各々には磁気センサが設けられており、位置検出部(図3の符号320)によって、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置が特定される。そして、画像合成部(図3の符号322)は、超音波プローブ116と光プローブ220の各々の位置情報に基づいて、超音波断層画像76と蛍光画像74の互いの位置合わせをして合成画像を形成する。
【0053】
超音波プローブ116は、蛍光画像74のうちの光の強度が大きい部分で超音波ビームを形成する。例えば、ユーザが蛍光画像74を見ながら光の強度の大きい部分を判断し、診断部位のうちの光の強度が大きい部分に超音波プローブ116を持ってゆく。また、蛍光画像74を画像解析して、例えば、輝度の大きい部分を光の強度の大きい部分と判断してもよい。なお、蛍光画像74の全体に亘って超音波プローブ116を走査することにより、三次元の超音波画像を形成してもよい。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態により、例えば、次のような診断が可能になる。例えば、マウス等の小動物の静脈から蛍光標識バブルを投与し、血管内を循環させる。超音波による観察では、リアルタイムで血管が画像化される。また、血管以外の臓器の形状も観察することが出来る。また、カラードップラ等の血流計測を行うこともできる。蛍光を利用した観察では、表在の血管が非常に高精細に画像化される。2つの画像化技術を組み合わせることで、細密な画像、深部の画像、組織形状、血流の量や方向という情報、定量化、リアルタイム観察などの多機能の観察が可能となる。
【0055】
また、バブルに抗体等を標識して、分子標的させてもよい。つまり、蛍光装置による観察では、表面方向の広い範囲を一度に観察することが出来るため、バブルの集積性(目的分子の分布)を容易に捜索できる。超音波による観察では、バブルの集積性(目的分子の分布)深さ方向の情報を得ることが出来る。超音波による診断と蛍光を利用した診断を組み合わせることで、例えば、細胞表面に移植した腫瘍細胞に特異的に発現している蛋白質の3次元分布を画像化することが出来る。
【0056】
更に、まず、蛍光を利用して血管内のバブルを画像化し、次に、超音波を利用してバブルを破砕する。蛍光物質は、バブルから離れ微小化されるため血管外に放出される。その分布を、蛍光を利用して画像化する。2つの画像を比較することで、血管から放出される蛍光標識された粒子、分子の様子を画像化することが出来る。
【0057】
なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】蛍光性質を備えたマイクロバブルの構造を説明するための模式図である。
【図2】蛍光性質を備えたマイクロバブルの他の構造を説明するための図である。
【図3】本発明に係る画像形成システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【図4】光プローブの内部構成を説明するための図である。
【図5】一体型プローブを説明するための図である。
【図6】一体型プローブによって形成される合成画像を説明するための図である。
【図7】別体型プローブによって形成される合成画像を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
10 マイクロバブル、18 蛍光物質、122 超音波画像形成部、210 蛍光画像形成部、322 画像合成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質を含んだバブルに対して励起光を照射して前記バブルから発する光を受光する光検出部と、
前記バブルに対して超音波を送波して前記バブルから発する超音波を受波する超音波検出部と、
前記バブルから発する光を受光することによって得られる受光信号に基づいて前記バブルを含んだ蛍光画像を形成する蛍光画像形成部と、
前記バブルから発する超音波を受波することよって得られる受波信号に基づいて前記バブルを含んだ超音波画像を形成する超音波画像形成部と、
蛍光画像と超音波画像を合成することにより合成画像を形成する画像合成部と、
を有する、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
回転軸方向に伸長された回転プローブをさらに有し、
回転プローブの回転軸方向の先端部に前記光検出部と前記超音波検出部が設けられ、
回転プローブが回転することにより、光検出部によって照射されて受光される光と超音波検出部によって送受波される超音波が互いに略同一の平面内で回転走査され、
前記画像合成部は、互いに略同一の平面に対応した蛍光画像と超音波画像を合成して合成画像を形成する、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成システムにおいて、
前記光検出部と前記超音波検出部の位置情報を取得する位置検出部をさらに有し、
前記画像合成部は、位置検出部によって取得された位置情報に基づいて蛍光画像と超音波画像の互いの位置合わせをして合成画像を形成する、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項4】
蛍光物質を含んだバブルに対して励起光を照射して前記バブルから発する光を受光する工程と、
前記バブルに対して超音波を送波して前記バブルから発する超音波を受波する工程と、
前記バブルから発する光を受光することによって得られる受光信号に基づいて前記バブルを含んだ蛍光画像を形成する工程と、
前記バブルから発する超音波を受波することによって得られる受波信号に基づいて前記バブルを含んだ超音波画像を形成する工程と、
を含む、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成方法において、
前記蛍光画像と前記超音波画像を合成することにより合成画像を形成する工程をさらに含む、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
親水基を外側とし疎水基を内側として略球形の表面に沿って形成された殻層と、
殻層によって形成された略球形の空間内に閉じ込められる流体と、
励起光を受けて光を発する蛍光物質と、
を含み、
超音波と光を併用した造影のための造影剤として用いられる、
ことを特徴とするバブル。
【請求項7】
請求項6に記載のバブルにおいて、
前記蛍光物質は、殻層によって閉じ込められた流体内に封入される、
ことを特徴とするバブル。
【請求項8】
請求項6に記載のバブルにおいて、
前記蛍光物質は、蛍光標識された抗体であり殻層に化学的に修飾される、
ことを特徴とするバブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−142355(P2008−142355A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333792(P2006−333792)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「健康安心プログラム/分子イメージング機器研究開発プロジェクト/悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器研究開発プロジェクト/ラベル化造影剤を用いた超音波によるがんの超早期診断システムの研究開発に係る先導研究」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】