説明

画像形成装置、およびプログラム

【課題】通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減する。
【解決手段】各種のサービス(役務)の提供を要求する信号にて要求された役務を実行する制御部30を備えており、制御部30は、稼動状態にて画像形成命令に基づき用紙に画像を形成する画像出力部33に省電力状態が設定された場合には、取得した信号に応じて実行する役務を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク等の通信回線に接続されたプリンタや複写機等の画像形成装置では、通常、例えば通信回線から送られる画像形成命令の受信状況等に応じて、消費電力を低く抑える省電力状態が設定される。しかし、通信回線を介して画像形成命令等が送信されるタイミングを予測することは困難である。そのため、画像形成装置を省電力状態に移行させても、通信回線から画像形成命令等を受け取る通信機能部は稼働状態が維持される。
例えば特許文献1には、ネットワークインターフェース等の制御部としてメインCPUよりも消費電力の小さなサブCPUを設け、省エネモード(省電力状態)ではメインCPUへの通電をオフしてサブCPUのみに通電し、ネットワークインターフェース等からのデータ受信に応じてサブCPUからメインCPUに復帰トリガーを発行する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−5029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、省電力状態に設定された画像形成装置では、通信機能部が通信回線から信号を受信した場合には、受信した信号が処理の必要があるものか、必ずしも処理の必要がないものかに拘わらず、信号を処理する信号処理部が省電力状態から復帰する。そのため、頻繁に信号が送信される通信環境下では信号処理部の省電力状態からの復帰回数が増加し、省電力状態を設定することによる画像形成装置での消費電力の削減を充分に実現できない場合がある。
本発明は、通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、外部装置から画像形成命令および各種の役務の提供を要求する信号を取得する取得手段と、前記取得手段にて取得された前記信号にて提供を要求された役務を実行する役務実行手段と、稼動状態と当該稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて前記取得手段にて取得された前記画像形成命令に基づき用紙に画像を形成する画像形成手段とを備え、前記役務実行手段は、前記信号に応じて実行する役務を前記画像形成手段に前記省電力状態が設定された場合に制限することを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記役務実行手段は、前記省電力状態が設定されるまでに実行された役務の実行頻度に基づいて当該省電力状態にて実行する役務を選択することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3に記載の発明は、前記省電力状態が設定された場合に実行される役務を指定するポート番号を記憶する記憶手段をさらに備え、前記役務実行手段は、前記画像形成手段での前記省電力状態の設定中に前記取得手段にて取得された前記信号のうち、当該信号に記述されたポート番号が前記記憶手段に記憶されたポート番号と一致する当該信号にて指定された役務を実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項4に記載の発明は、前記省電力状態が設定された場合に実行される役務を前記外部装置に通知する通知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0007】
請求項5に記載の発明は、コンピュータに、外部装置から画像形成命令および各種の役務の実行を要求する信号を取得する機能と、取得された前記信号にて指定された役務を実行する機能と、前記画像形成命令に基づき用紙に画像を形成する画像形成手段に稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態が設定された場合にて実行する役務を選択する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【0008】
請求項6に記載の発明は、前記役務を選択する機能は、前記省電力状態が設定されるまでに実行された役務の実行頻度に基づいて当該省電力状態にて実行する役務を選択することを特徴とする請求項5記載のプログラムである。
請求項7に記載の発明は、選択された役務を指定するポート番号を記憶手段に記憶させる機能をさらに有し、前記役務を実行する機能は、前記画像形成手段での前記省電力状態の設定中に取得された前記信号のうち、当該信号に記述されたポート番号が前記記憶手段に記憶されたポート番号と一致する当該信号にて指定された役務を実行することを特徴とする請求項5記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、選択された前記役務を外部装置に通知する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項5記載のプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べ、通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減することができる。
本発明の請求項2によれば、本発明を採用しない場合に比べ、ユーザが画像形成装置を使用する際の利便性が損なわれるのを抑制することができる。
本発明の請求項3によれば、本発明を採用しない場合に比べ、省電力状態にある画像形成装置を使用するユーザの利便性が損なわれるのを抑制しながら省電力状態での画像形成装置の消費電力を低く維持することができる。
本発明の請求項4によれば、本発明を採用しない場合に比べ、省電力状態にある画像形成装置にて利用できる役務をユーザが予め把握することができる。
【0010】
本発明の請求項5によれば、本発明を採用しない場合に比べ、通信回線に接続された画像形成装置にて消費される電力を低減することができる。
本発明の請求項6によれば、本発明を採用しない場合に比べ、ユーザが画像形成装置を使用する際の利便性が損なわれるのを抑制することができる。
本発明の請求項7によれば、本発明を採用しない場合に比べ、省電力状態にある画像形成装置を使用するユーザの利便性が損なわれるのを抑制しながら省電力状態での画像形成装置の消費電力を低く維持することができる。
本発明の請求項8によれば、本発明を採用しない場合に比べ、省電力状態にある画像形成装置にて利用できる役務をユーザが予め把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の画像形成システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態の端末装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】本実施の形態の画像形成装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】本実施の形態の画像形成装置にて設定される動作モードを説明する図である。
【図5】本実施の形態の画像形成装置に省電力状態が設定された場合に停止させるサービスを制御部が選択する際の処理内容の一例を示したフローチャートである。
【図6】本実施の形態の画像形成装置に省電力状態が設定された場合における制御部でのパケット処理の内容の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成システムの説明>
図1は、本実施の形態の画像形成システム1の構成例を示す図である。図1に例示した画像形成システム1では、例えばユーザ(操作者、作業者)の作業スペース(例えば、デスク)等に設置された外部装置の一例としての端末装置2と、端末装置2からの画像形成命令に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置の一例としての画像形成装置3とが、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等といった通信回線の一例としてのネットワーク4を介して双方向に通信可能に接続されている。通信回線としては、電話回線や衛星通信回線(例えば、デジタル衛星放送における空間伝送路)等を含んでもよい。
なお、ネットワーク4上には通常、複数の端末装置2と複数の画像形成装置3とが接続可能であるが、図1では、その一部として、それぞれ1台の端末装置2と1台の画像形成装置3とが接続された構成部分を示している。
【0013】
<端末装置の説明>
まず、端末装置2について説明する。
ネットワーク4に接続される端末装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、文書や図形、グラフィック、写真等からなる画像データを作成・記憶する。
図2は、本実施の形態の端末装置2の構成を説明するブロック図である。図2に示したように、端末装置2は、端末装置2全体の動作制御や各種の情報処理を行う制御部20、予め定めたアプリケーションソフトに従って画像データを作成する画像データ作成部21、ユーザからの指示入力の受付やユーザへの各種情報の表示を行うユーザインタフェース(UI)部22を備えている。また、端末装置2は、プログラムや各種データ等が記憶される外部記憶部23、ネットワーク4との通信を行い、例えば画像データに関する画像形成命令を画像形成装置3に送信する通信部24を備えている。さらに、端末装置2は、端末装置2の各構成部に対し電力線27を介して電力を供給する電力供給部25を備えている。
この制御部20、画像データ作成部21、UI部22、外部記憶部23、通信部24、および電力供給部25は、PCI(Peripheral Components Interconnect bus)バス26に接続され、相互に信号や情報の送受信を行う。
【0014】
端末装置2の上記した構成部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、外部記憶部23に、端末装置2の各構成部を制御するためのオペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト、さらには、画像データ作成部21にて作成された画像データや外部記憶部23に記憶された画像データ等に関する画像形成装置3への画像形成命令(印刷命令:以下、「印刷ジョブ」)を生成するプリンタドライバプログラム等が記憶されている。そして、端末装置2の図示しない演算装置(CPU)が、これらのプログラムを外部記憶部23から主記憶装置(例えば、RAM)に読み込み、制御部20、画像データ作成部21、および通信部24等の各構成部の機能を実現する処理を行う。
【0015】
<端末装置での印刷ジョブの生成/送信処理の説明>
端末装置2においてユーザによる印刷指示がUI部22に入力されると、制御部20は、外部記憶部23からプリンタドライバプログラムを読み込み、起動させる。それにより、制御部20はプリンタドライバプログラムに従って、画像データ作成部21にて作成された画像データや外部記憶部23に記憶された画像データ等に関する印刷ジョブの生成処理を実行する。そして、制御部20は、生成した印刷ジョブを通信部24から画像形成装置3に送信する。
なお、「画像形成命令(印刷ジョブ)」とは、画像データに、例えば印刷部数、用紙サイズ、N−up(用紙の1ページ内に電子文書のNページを割り付ける印刷)、余白の大きさ等の印刷形式を指定する各種属性データが付加された1つのまとまったデータの集合(印刷ジョブデータ)を意味する。
【0016】
<端末装置がネットワークを介して画像形成装置に要求するサービスの説明>
端末装置2において制御部20は、外部記憶部23から各種アプリケーションソフトを読み込んで起動させ、ネットワーク4に接続された画像形成装置3に対する各種サービスの提供を要求する信号(以下、パケット)を通信部24から送信する。
具体的には、端末装置2は、ネットワーク4を介して画像形成装置3に次のような各種サービス(役務)の提供を要求する。例えば、SNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて画像形成装置3内部のMIB(Management Information Base)にて管理情報を参照または設定し、その結果の返信を要求するサービス、Webブラウザを用いた画像形成装置3内部の管理情報の参照または設定の要求や印刷ジョブの制御指示を行うサービス、WebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)による画像形成装置3内部の親展ボックスに記憶されている各種ファイルの送信を要求するサービス、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)を用いた電子メール本文や添付ファイルについてのプリントを要求するサービス、NetWareを用いたプリントを要求するサービス等の提供を要求する。
その場合に、制御部20は、画像形成装置3に対して要求するサービスの種類を、画像形成装置3に送信するパケットに記述するポート番号により指定する。ポート番号はパケットのトランスポート層(TCP(Transmission Control Protocol)ヘッダ)でのサービスを特定するものであり、ポート番号が指定されると各種サービスを実行するプロトコルは一意に定まる。そのため、パケットにて指定したポート番号によって、画像形成装置3に対して要求するサービスの種類が画像形成装置3にて特定される。
【0017】
<画像形成装置の説明>
次に、画像形成装置3について説明する。
本実施の形態の画像形成装置3は、省電力状態が設定された際には、予め設定された一または複数のサービスだけを実行し、それ以外のサービスを停止させる。それにより、省電力状態の設定中に実行するサービスを限定して、省電力状態での消費電力を低く維持する。
省電力状態が設定された際に実行するサービスは、例えば予め定めた選択条件を満たすサービスや予め特定されたサービス等、ユーザの利便性が損なわれるのを抑えながら省電力状態での画像形成装置3の消費電力を低く維持するように選択される。
【0018】
引き続いて、上記した動作を行う本実施の形態の画像形成装置3の構成について述べる。
図3は、本実施の形態の画像形成装置3の構成を説明するブロック図である。図3に示したように、画像形成装置3は、画像形成装置3全体の動作制御や画像処理を含む各種の情報処理を行う処理手段の一例としての制御部30、ネットワーク4との通信を行って信号(パケット)を取得する取得手段の一例としての通信部31を備えている。
制御部30は、動作制御や情報処理を実行する際の演算処理を行うCPU301、CPU301の作業用メモリ等として用いられるRAM302、CPU301により実行されるプログラム等にて用いられる設定値やテーブル等のデータが格納されるROM303、各種のデータが記憶されるSRAM(Static Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリ(NVM:Non-Volatile Memory)304を備えている。そして、これらはPCIバス305を介して相互に接続されている。
【0019】
また、画像形成装置3は、ユーザからの指示入力の受付やユーザへの各種情報の表示を行うユーザインタフェース(UI)部32、ネットワーク4を介して端末装置2から送信される印刷ジョブに従って用紙上に画像を形成する画像形成手段の一例としての画像出力部33を備えている。画像出力部33としては、例えば電子写真方式の画像形成エンジンが用いられる。
加えて、画像形成装置3は、画像形成装置3の各構成部を制御するためのオペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト等の各種のプログラムや、画像データ等の各種データが記憶される例えばハードディスク(HDD)で構成される外部記憶部34を備えている。
【0020】
また、画像形成装置3は、商用電源から供給される例えば100Vの交流電力または商用電源からの交流電力を予め定めた直流電圧(例えば、24V,12V,5V,3V)に変換して各構成部に供給する電力供給部35を備えている。電力供給部35には、画像出力部33や外部記憶部34等の各構成部への例えば交流電圧100V、直流電圧24V、12V等の駆動系電力を供給する第1電力線351と、各構成部への例えば電圧5Vや3Vの制御系電力を供給する第2電力線352と、制御部30や通信部31、さらにはUI部32の入力部(不図示)への制御系電力を供給する第3電力線353とが接続されている。
そして、電力供給部35は、制御部30にて設定される画像形成装置3の動作モード(動作状態)に応じて、第1電力線351への駆動系電力の供給や停止を設定し、第2電力線352への制御系電力の供給や停止を設定する。一方、電力供給部35は、第3電力線353への制御系電力は動作モードに拘わらず常時供給する。
【0021】
画像形成装置3に配置された上記の制御部30、通信部31、UI部32、画像出力部33、外部記憶部34、および電力供給部35は、PCIバス36に接続され、相互に信号の送受信を行う。
また、画像形成装置3の上記した構成部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、画像形成装置3の制御部30のCPU301が、オペレーティングシステムやアプリケーションソフト等の各種プログラムを外部記憶部34から主記憶装置(RAM302)に読み込み、制御部30、通信部31、UI部32、画像出力部33、外部記憶部34、および電力供給部35等の各構成部の機能を実現させる処理を行い、さらには各構成部に対する動作制御や情報処理等を実行する。
【0022】
なお、このオペレーティングシステムやアプリケーションソフト等の各種プログラムに関するその他の提供形態としては、予めROM303に格納された状態にて提供され、RAM302にロードされる形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROM303を備えている場合には、制御部30のCPU301がセッティングされた後に、プログラムだけがROM303にインストールされ、RAM302にロードされる形態がある。また、インターネット等のネットワーク4を介して制御部30にプログラムが伝送され、制御部30のROM303にインストールされて、RAM302にロードされる形態がある。さらにまた、DVD−ROMやフラッシュメモリ等の外部記録媒体からRAM302にロードされる形態がある。
【0023】
<画像形成装置の制御部の機能の説明>
次に、画像形成装置3の制御部30の機能について説明する。
画像形成装置3の制御部30は、まず、例えば端末装置2からネットワーク4を介して画像形成装置3自身に向けて送信された印刷ジョブを処理する機能を有する。すなわち、制御部30は、ネットワーク4から送信された印刷ジョブに従って印刷ジョブに含まれる画像データに処理(画像処理)を施し、画像処理済みの画像データを画像出力部33に転送する。
【0024】
また、制御部30は、例えば端末装置2からの印刷ジョブの受信状況等に応じて画像形成装置3の動作モード(動作状態)を制御する機能を有する。図4は、本実施の形態の画像形成装置3にて設定される動作モードを説明する図である。図4に示したように、制御部30は、動作モードとして「画像形成動作モード」と「スタンバイモード」と「スリープモード」とを選択的に設定する。
画像形成動作モードは、画像処理済みの画像データが画像出力部33に転送された場合に設定され、画像出力部33にて印刷ジョブに従った用紙上への画像形成動作を実行している動作状態である。また、スタンバイモードは、例えば端末装置2から印刷ジョブを取得した場合やUI部32にてユーザからの指示入力があった場合に設定される。そしてスタンバイモードは、例えば制御部30にて印刷ジョブに含まれる画像データの全部または一部に関する画像処理が終了した際に直ちに画像形成動作モードに移行する動作状態である。さらにまた、スタンバイモードは、画像形成動作モードの終了後の予め定めた期間(待機時間T)においても設定される場合がある。画像形成動作モードやそれに準ずるスタンバイモードでは、電力供給部35から第1電力線351を介して画像形成装置3内の画像形成に関する動作を行う構成部に駆動系電力が供給され、第2電力線352を介して画像形成装置3内の制御・処理に関する動作を行う構成部に制御系電力が供給される。
【0025】
スリープモードは、例えば画像形成動作モードが終了しスタンバイモードが設定された後の予め定めた時間長の待機時間Tを経過しても再び印刷ジョブの受信やUI部32でのユーザからの指示入力がない場合に設定される動作状態である。スリープモードでは、制御部30や通信部31、UI部32の入力部(不図示)だけが動作を継続し、それ以外の構成部は動作を停止する。すなわち、スリープモードにおいては、電力供給部35から第3電力線353を介した制御部30や通信部31、UI部32の入力部(不図示)への制御系電力の供給は継続される。その一方で、電力供給部35から第1電力線351を介した画像形成装置3内の画像形成に関する動作を行う構成部への駆動系電力が停止され、第2電力線352を介した画像形成装置3内の制御・処理に関する動作を行う構成部への制御系電力が停止される。それにより、スリープモードによる画像形成装置3の省電力化が図られる。
ここで、スリープモードにおいて、制御部30のCPU301への制御系電力を停止し、制御部30内のRAM302およびROM303への制御系電力の供給だけを継続するように構成してもよい。それにより、スリープモードにおいてCPU301が停止状態に設定され、画像形成装置3の更なる省電力化が図られる。本実施の形態では、スリープモードにおいて制御部30のCPU301への制御系電力を停止するものとし、通信部31がパケットを受信する度にCPU301が停止状態から復帰される構成が採用される。
【0026】
制御部30は、例えば画像形成動作モードの終了後にスタンバイモードが設定されてから待機時間Tを経過しても印刷ジョブの受信等がない場合には、スリープモードへの移行を指示するスリープモード移行信号を生成する。なお、ここでの待機時間Tは“0”も含み、スタンバイモードが設定された直後にスリープモード移行信号を生成してもよい。
一方、スリープモードが設定された状態で印刷ジョブを受信した場合、またはスリープモードが設定された状態でUI部32にてユーザからの指示入力があった場合には、制御部30は、スリープモードからの復帰を指示するスリープモード復帰信号を生成する。
【0027】
そして、制御部30(CPU301)は、生成したスリープモード移行信号またはスリープモード復帰信号をPCIバス36を介して電力供給部35に送信する。電力供給部35が制御部30からスリープモード移行信号を取得した場合には、第1電力線351からの駆動系電力の供給を停止し、第2電力線352からの制御系電力の供給を停止する。それにより、制御部30や通信部31、UI部32の入力部(不図示)以外の構成部は動作を停止する。
また、電力供給部35が制御部30からスリープモード復帰信号を取得した場合には、第1電力線351からの駆動系電力の供給を開始し、第2電力線352からの制御系電力の供給を開始する。それにより、画像出力部33や外部記憶部34等といった画像形成処理に関連する構成部が動作可能状態(稼動状態)に設定される。
【0028】
また、画像形成装置3の制御部30は、通信部31がネットワーク4から受信するパケット(信号)を解析して、パケットが画像形成装置3に対して要求するサービスの種類をパケットに記述されたポート番号によって特定する。そして、ポート番号によって特定されたサービス(プロトコル)を実行する。さらには、必要に応じて、サービスにより得られた情報をパケットの送信元に通信部31を介して送信する。したがって、制御部30は、パケット(信号)にて指定されたサービス(役務)を実行する役務実行手段としても機能する。
その際に、制御部30は、省電力状態が設定された場合に実行するサービスを選択する機能を有する。例えば、パケットにより指定されたサービスの実行頻度をサービスの種類毎に調べ、サービスの実行頻度について予め設定された選択条件を満たすサービスを判定する。実行頻度が予め定めた選択条件を満たさないサービスが存在する場合には、省電力状態が設定された際にそのサービスの実行を停止するように制御する。
【0029】
このように、画像形成装置3に省電力状態が設定された場合には、制御部30は、サービスの実行頻度について予め設定された選択条件を満たす一または複数のサービスだけを実行する。それにより、省電力状態の設定中に実行するサービスが限定されるので、制御部30の処理動作頻度が低減される。さらには、制御部30および通信部31が、サービスにより得られた情報をパケットの送信元に送信処理する頻度が低減される。そのため、省電力状態の設定中に制御部30および通信部31の動作回数が減少し、ネットワーク4に接続された画像形成装置3における省電力状態での消費電力が低く維持される。
また、サービスの実行頻度に着目して省電力状態が設定された場合に実行するサービスを選択するので、ユーザの利便性が損なわれるのが抑えられる。
【0030】
具体的には、制御部30は、通信部31がネットワーク4から受信したパケットに関し、実行頻度が予め定めた選択条件を満たすサービスに対応したポート番号が記述されたパケットは処理する。その一方で、実行頻度が予め定めた選択条件を満たさないサービスに対応したポート番号が記述されたパケットは廃棄する。
ここでの「実行頻度に関して予め定めた選択条件」とは、例えば、予め定めた期間間隔毎の実行回数が予め定めた回数以上であるか否かとして設定される。
なお、省電力状態が設定された際に実行するサービスを選択する際の選択条件としては、例えば省電力状態が設定された際に実行するサービスの種類を予め定めておく「サービスの種類に関して予め定めた選択条件」等を設定してもよい。すなわち、ユーザの利便性が損なわれるのを抑えるとともに、省電力状態での画像形成装置3の消費電力を低く維持する選択条件であれば、何れの条件を設定してもよい。
【0031】
<画像形成装置に省電力状態が設定された際に停止させるサービスの選択の説明>
図5は、画像形成装置3に省電力状態が設定された場合に停止させるサービスを制御部30が選択する際の処理内容の一例を示したフローチャートである。
図5に示したように、制御部30は、制御部30内に配置したタイマ(不図示)での時間計測を開始させる(S101)。そして、通信部31がネットワーク4から自身宛のパケットを受信し、通信部31からパケットを取得すると(S102でYes)、制御部30は、パケットを解析してポート番号を特定する(S103)。さらに、制御部30は、特定したポート番号が指定するサービス(プロトコル)の種類を特定し(S104)、サービスの種類毎の実行回数Nに1を加算する(S105)。
続いて、タイマでの計測時間が予め定めた規定時間に到達していなければ(S106でNo)、制御部30は、ステップ102に戻り、通信部31からのパケットの取得を継続する。
【0032】
一方、タイマでの計測時間が予め定めた規定時間に到達していれば(S106でYes)、制御部30は、サービスの種類毎の実行回数Nを降順に並べて(ソートして)(S107)、実行回数Nが予め定めた規定回数Nd以上のサービスを選別する(S108)。そして、制御部30は、実行回数Nが予め定めた規定回数Nd以上のサービスを指定するポート番号を記憶手段の一例としてのNVM304に記憶する(S109)。すなわち、ステップ108では、省電力状態が設定された場合に実行するサービスについての選択条件を、実行回数Nに関する予め定めた規定回数Nd以上であることとして設定している。
ステップ109にてポート番号をNVM304に記憶した後、制御部30は、タイマでの計測時間をリセットする(S110)。そして、制御部30は、ステップ101に戻り、再びステップ101以下の処理を開始する。
【0033】
なお、図5のステップ108では、実行回数Nが予め定めた規定回数Nd以上のサービスを選別したが、実行回数Nの順位に着目して、例えばステップ107で降順にソートされたサービスについて上位からM番目(M≧1)以上のサービスを選別してもよい。
また、図5のステップ106での規定時間やステップ108での規定回数NdをユーザがUI部32から設定できるように構成してもよい。この場合のステップ106での規定時間は、例えば時間単位、日単位、週単位、月単位等で設定される。
【0034】
<画像形成装置に省電力状態が設定された場合のパケット処理の説明>
図6は、画像形成装置3に省電力状態が設定された場合における制御部30でのパケット処理の内容の一例を示したフローチャートである。
図6に示したように、制御部30は、通信部31がネットワーク4から自身宛のパケットを受信し、通信部31からパケットを取得すると(S201でYes)、制御部30は、パケットを解析してポート番号を特定する(S202)。そして、制御部30は、特定したポート番号をNVM304に記憶されたポート番号と比較する(S203)。
特定したポート番号がNVM304に記憶されたポート番号と一致する場合には(S204でYes)、制御部30は、取得したパケットのポート番号にて指定されたサービスを実行する(S205)。
一方、特定したポート番号がNVM304に記憶されたポート番号と一致しない場合には(S204でNo)、制御部30は、取得したパケットを廃棄する(S206)。
【0035】
なお、図6に示した処理を実行するか否かをユーザがUI部32から選択するように構成してもよい。さらに、図6に示した処理を実行する例えば時間帯や曜日を予め設定できるように構成してもよい。
また、画像形成装置3に省電力状態が設定される前、または省電力状態の設定中に、省電力状態が設定された場合に停止させるサービスの種類をUI部32に表示するように成してもよい。
さらには、省電力状態が設定された場合に停止させるサービスの種類を通知手段として機能する通信部31から電子メールにより端末装置2に通知するように構成してもよい。また、停止させるサービスの種類を画像形成装置3にてレポートとして出力するように構成してもよい。
また、NVM304に記憶されたポート番号は、図6に示した処理により記憶されたものの他に、例えば上記した「サービスの種類に関して予め定めた選択条件」等により設定されたものであってもよい。すなわち、省電力状態が設定された場合に実行するサービスを予め選択し、そのサービスに対応するポート番号をNVM304に記憶しておいてもよい。さらには、省電力状態が設定された場合に実行するサービスをユーザが選択し、ユーザが選択したサービスに対応するポート番号をNVM304に記憶するように構成してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成システム1に用いられる画像形成装置3では、省電力状態(スリープモード)の設定時において受信したパケットが画像形成装置3に対して提供を要求するサービス(役務)の中で、予め設定された一または複数のサービスだけを実行し、それ以外のサービスを停止させる。それにより、画像形成装置3においては、省電力状態の設定中に実行するサービスをユーザの利便性が損なわれるのを抑える範囲で限定して、省電力状態での消費電力を低く維持している。
【符号の説明】
【0037】
1…画像形成システム、2…端末装置、3…画像形成装置、4…ネットワーク、20,30…制御部、21…画像データ作成部、22,32…ユーザインタフェース(UI)部、24,31…通信部、33…画像出力部、34…外部記憶部、35…電力供給部、301…CPU、302…RAM、303…ROM、304…不揮発性メモリ(NVM)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から画像形成命令および各種の役務の提供を要求する信号を取得する取得手段と、
前記取得手段にて取得された前記信号にて提供を要求された役務を実行する役務実行手段と、
稼動状態と当該稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて前記取得手段にて取得された前記画像形成命令に基づき用紙に画像を形成する画像形成手段とを備え、
前記役務実行手段は、前記信号に応じて実行する役務を前記画像形成手段に前記省電力状態が設定された場合に制限することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記役務実行手段は、前記省電力状態が設定されるまでに実行された役務の実行頻度に基づいて当該省電力状態にて実行する役務を選択することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記省電力状態が設定された場合に実行される役務を指定するポート番号を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記役務実行手段は、前記画像形成手段での前記省電力状態の設定中に前記取得手段にて取得された前記信号のうち、当該信号に記述されたポート番号が前記記憶手段に記憶されたポート番号と一致する当該信号にて指定された役務を実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記省電力状態が設定された場合に実行される役務を前記外部装置に通知する通知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
コンピュータに、
外部装置から画像形成命令および各種の役務の実行を要求する信号を取得する機能と、
取得された前記信号にて指定された役務を実行する機能と、
前記画像形成命令に基づき用紙に画像を形成する画像形成手段に稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態が設定された場合にて実行する役務を選択する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記役務を選択する機能は、前記省電力状態が設定されるまでに実行された役務の実行頻度に基づいて当該省電力状態にて実行する役務を選択することを特徴とする請求項5記載のプログラム。
【請求項7】
選択された役務を指定するポート番号を記憶手段に記憶させる機能をさらに有し、
前記役務を実行する機能は、前記画像形成手段での前記省電力状態の設定中に取得された前記信号のうち、当該信号に記述されたポート番号が前記記憶手段に記憶されたポート番号と一致する当該信号にて指定された役務を実行することを特徴とする請求項5記載のプログラム。
【請求項8】
選択された前記役務を外部装置に通知する機能をさらに実現させることを特徴とする請求項5記載のプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−173187(P2010−173187A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18688(P2009−18688)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】