説明

画像形成装置、および画像形成方法

【課題】記録材搬送ベルト等と感光ドラムとの離間を行わなくても、ブラック単色モードにおけるカラー感光ドラムの磨耗を抑制できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】ブラック単色モードが設定されると、感光ドラム1Yに緩衝トナー像Tbを形成して中間転写ベルト5に転写させる。中間転写ベルト5上の緩衝トナー像Tbは、感光ドラム1Y、1M、1Cの一次転写部T1を潤滑した後に、中間転写ベルト5から感光ドラム1M、1Cへ逆転写される。感光ドラム1M、1C上の緩衝トナー像Tbはドラムクリーニング装置7M、7Cによって回収される。画像形成ステーションKは、緩衝トナー像Tbを除去された中間転写ベルト5を用いて黒色トナーのみを用いた画像形成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト、記録材搬送ベルト等を用いて異なる分解色のトナー像を順次重ねて転写するカラー画像形成装置に関する。詳しくは、黒色のトナーだけを用いて画像形成を行ういわゆるブラック単色モードにおける使用されない感光ドラムの潤滑制御に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる分解色のトナー像を形成する複数の感光ドラムを中間転写ベルトや記録材搬送ベルトの直線部に配列させたタンデム方式の画像形成装置が実用化されている。タンデム方式の画像形成装置では、例えば4個の感光ドラムでイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの分解色のトナー像をそれぞれ形成し、中間転写ベルトや記録材に順次重ねて転写して、フルカラーの画像形成を行う。
【0003】
ブラック単色モードが設定された場合や画像データがモノクロ画像の場合、タンデム方式の画像形成装置では、通常、ブラックのトナー像を形成する感光ドラムだけを用いてブラック単色モードの画像形成を行う。比較的に高価なイエロー、マゼンタ、シアンのトナーの使用が節約され、トナー像の重ね合わせ誤差が無くなって、画像の解像度も向上するからである。
【0004】
特許文献1には、記録材搬送ベルトの直線区間に4個の感光ドラムを配列した画像形成装置が示される。そして、ブラック単色モードが設定されると、最も下流側に配置されたブラックのトナー像を形成する感光ドラムだけを用いて画像形成する。このとき、記録材搬送ベルトの上流側部分は、他の分解色の感光ドラムから離間する方向に移動して、感光ドラムの転写ニップが解放される。転写ニップの解放によって記録材搬送ベルトの負荷が軽減されて走行が安定し、使用しない感光ドラムによる無駄な消耗/磨耗、電力消費も回避できるからである。
【0005】
特許文献2には、中間転写ベルトの直線区間に4個の感光ドラムを配列した画像形成装置が示される。そして、ブラック単色モードが設定されると、上流側に配置された3個の感光ドラムが中間転写ベルトから離間する方向に移動する。
【0006】
特許文献3には、感光ドラムのトナー像を中間転写部材に一次転写する画像形成装置が示される。ここでは、感光ドラムから中間転写部材へのトナー像の転写性を高めるために、感光ドラムと中間転写部材との駆動速度を少し異ならせている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−62642号公報
【特許文献2】特開2003−43770号公報
【特許文献3】特開平6−317992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、特許文献2に示される画像形成装置では、記録材搬送ベルト、中間転写ベルトと言ったベルト部材に対して3個の感光ドラムを当接/離間させる大型の機構が必要である。記録材搬送ベルト等を移動した状態で格納する空間や、移動しても記録材搬送ベルト等に所定の張力を付与し続けるための機構も必要である。当接/離間を繰り返しても記録材搬送ベルト等と感光ドラムと転写ローラ等とによる転写ニップが精度高く再現されるように、精密で剛性の高い機構や機械部品が必要になる。これらにより、部品点数の増加、機構の大型化、重量化を招いてしまい、画像形成装置の小型軽量化、低コスト化を妨げていた。
【0009】
しかし、このような代償を払ってでも転写ニップを強制的に解放しなければ、ブラック以外のトナー像を形成する感光ドラムは、記録材搬送ベルト等と直接接触して損耗が激しくなる。特に、特許文献3に示されるように、ベルト部材と感光ドラムとの間に駆動力差を設定している場合や、感光ドラムをベルト部材に従動回転させてトルクの摩擦伝達を行わせている場合、ベルト部材と摩擦する感光ドラムの磨耗は一段と激しくなる。
【0010】
本発明は、記録材搬送ベルト等と感光ドラムとの離間を行わなくてもブラック単色モードにおけるカラー感光ドラムの磨耗を抑制できる画像形成方法を提供することを目的としている。黒色画像の形成方法に直接使用する画像形成装置を提供することを目的としている。特に、カラートナーと一体に感光ドラムを収納したシステムカートリッジの寿命を延長して、カラー印刷の機会が少ない使用環境でもシステムカートリッジの性能を長期間維持できる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像形成装置は、循環する移動体と、前記移動体に接して上流側から順番に配置した第1、第2、第3像担持体と、前記第1、第2、第3像担持体からそれぞれ前記移動体へトナー像を転写させる第1、第2、第3転写手段とを有するものである。前記第1、第2、第3像担持体にそれぞれ形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に重ねて転写する第1モードと、前記第3像担持体に形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に転写する第2モードとを実行する。前記第2モードでは、前記第1像担持体で緩衝トナー像を形成して前記第1転写手段により前記移動体に転写し、前記移動体の前記緩衝トナー像を前記第2転写手段により前記第2像担持体へ転写させる制御手段を有する。
【0012】
同じ課題を解決する別発明の画像形成装置は、循環する移動体と、前記移動体に接して上流側から順番に配置した第1、第2像担持体と、前記第1、第2像担持体からそれぞれ前記移動体へトナー像を転写させる第1、第2転写手段とを有するものである。前記第1、第2像担持体にそれぞれ形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に重ねて転写する第1モードと、前記第2像担持体に形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に転写する第2モードとを実行する。前記第2モードでは、前記第1像担持体で緩衝トナー像を形成し、前記緩衝トナー像の前記移動体への転写を前記第1転写手段により阻止させる制御手段を有する。
【0013】
本発明の画像形成方法は、循環する移動体に接して上流側に有彩色のトナー像を形成する有彩色像担持体を配置し、下流側に黒色トナー像を形成する黒色像担持体を配置した画像形成装置に適用される。ブラック単色モードか否かを判別する第1工程と、前記ブラック単色モードに該当する場合に、前記有彩色像担持体と前記移動体との間に潤滑物質を供給して摩擦接触を緩和させる第2工程と、前記潤滑物質を前記黒色像担持体よりも上流側で除去する第3工程と、前記黒色像担持体に形成したトナー像を前記移動体に転写させる第4工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置では、第2モードが設定されると、第3像担持体だけを用いて記録材に画像形成する。このとき、第1、第2像担持体は、画像形成の結果には関与しないが、移動体へ接触したままに置かれるので、第1、第2像担持体と移動体との間に潤滑物質としての緩衝トナー像を介在させて直接接触を緩和させる。緩衝トナー像は、上流側の第1像担持体(1つとは限らない)から移動体に転写されて下流側の第2像担持体(1つとは限らない)で回収されるので、第3像担持体で移動体に転写されるトナー像には重ならない。第1像担持体で形成した緩衝トナー像を多重的に活用して第1像担持体と第2像担持体との両方で、また、第1像担持体と第2像担持体との間に別の像担持体が配置されている場合は、その別の像担持体でも、それぞれの表面と移動体との直接接触が緩和される。
【0015】
従って、トナーを介在させないで圧接状態に保つ従来の場合に比較して、第1、第2像担持体の磨耗や擦過損傷が抑制され、第1、第2像担持体と移動体との両方で耐久時間が伸びる。
【0016】
別発明の画像形成装置では、第2モードが設定されると、第2像担持体だけを用いて記録材に画像形成する。このとき、第1像担持体(1つとは限らない)は、画像形成の結果には関与しないが、移動体へ接触したままに置かれるので、第1像担持体と移動体との間に潤滑物質としての緩衝トナー像を介在させて直接接触を緩和させる。緩衝トナー像は、移動体に転写されることなく第1像担持体で処理されるので、第2像担持体で移動体に転写されるトナー像には重ならない。第1像担持体で形成した緩衝トナー像によって、その表面と移動体との直接接触が緩和される。
【0017】
従って、トナーを介在させないで圧接状態に保つ従来の場合に比較して、第1像担持体の磨耗や擦過損傷が抑制され、第1像担持体と移動体との両方で耐久時間が伸びる。
【0018】
本発明の画像形成方法では、黒色像担持体と移動体との間に潤滑物質を介在させて有彩色像担持体の磨耗や擦過損傷を抑制する。潤滑物質は、黒色像担持体に達する前に除去されるので、黒色像担持体では、形成したブラックのトナー像を、潤滑物質の影響を避けて移動体に転写できる。このため、移動体に転写されたブラックトナーのトナー像には循環物質が基本的に混合または重畳しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の画像形成装置は、以下に説明する実施形態の限定的な構成には限定されない。カラートナー等の潤滑物質を用いて感光ドラムの磨耗を抑制する限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
【0020】
本実施形態では、異なる分解色のトナー像を形成する4つの感光ドラムを用いてフルカラー画像形成を行う画像形成装置を説明する。しかし、本発明は、中間色を含む4つ以上の感光ドラムを配置した画像形成装置、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外のトナーを用いる画像形成装置、淡色トナーを用いた画像形成装置等で実施してもよい。中間転写ベルト、記録材搬送ベルト、中間転写ドラム、記録材搬送ドラムを相互に置き換えた実施形態でも本発明は実施できる。本発明の画像形成装置は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途に対応させて実施できる。
【0021】
なお、特許文献1乃至3に示される画像形成装置の構成、搭載された各電源、装置機器の詳細構造、制御等については、繰り返しの煩雑を回避すべく、図示を省略して詳細な説明も省略する。
【0022】
<画像形成装置>
図1は第1実施形態の画像形成装置の主要部構成を模式的に示す説明図、図2は感光ドラム周囲の拡大図である。図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置100は、中間転写ベルト5の直線部に4個の感光ドラム1Y、1M、1C、1Kを配列した電子写真方式のフルカラー複写機である。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kは、それぞれ付設装置を含めて画像形成ステーションY、M、C、Kにユニット化され、画像形成ステーションY、M、C、K単位で交換可能である。
【0023】
画像形成ステーションY、M、C、Kでは、トナーボトル8Y、8M、8C、8Kから、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナーを現像装置4Y、4M、4C、4Kに供給している。画像形成ステーションY、M、C、Kは、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成した静電潜像を、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナーで現像して各分解色のトナー像を形成する。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに形成されたイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナー像が一次転写部T1で中間転写ベルト5に順次重ねて一次転写されることにより、フルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト5に形成されたフルカラーのトナー像は、二次転写部T2で記録材Pに二次転写される。フルカラーのトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置9へ搬送されて加圧加熱処理されてトナー像を定着される。
【0024】
中間転写ベルト5は、駆動ローラ21とテンションローラ22と二次転写内ローラ23とに掛け渡して支持され、駆動ローラ21に駆動されて矢印R5方向に循環する。駆動ローラは金属芯金上に導電ゴム層を有する1×10〜1×10Ωのローラ部材であって、芯金は接地電位に接続されている。
【0025】
一次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kは、中間転写ベルト5を介して感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに圧接する。これにより、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと中間転写ベルト5との間には、一次転写ニップとしての一次転写部T1が形成される。
【0026】
二次転写外ローラ24は、中間転写ベルト5を介して二次転写内ローラ23に圧接する。これにより、中間転写ベルト5と二次転写外ローラ24との間には、二次転写ニップとしての二次転写部T2が形成される。
【0027】
中間転写ベルト5に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト5の循環に伴って二次転写部T2に搬送される。一方、給紙カセット12(給紙カセット16)に収納されていた紙、透明フィルム等の記録材Pは、給紙ローラ13(給紙ローラ14)によって1枚ずつ取り出されてレジストローラ15まで搬送されて待機する。レジストローラ15は、中間転写ベルト5に形成されたフルカラートナー像の先頭にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り出し、中間転写ベルト5と等しい速度で二次転写部T2を搬送して通過させる。不図示の二次転写バイアス電源によって二次転写内ローラ23と二次転写外ローラとの間に形成された電界によって、中間転写ベルト5上のフルカラーのトナー像が記録材Pへ移動する。
【0028】
二次転写部T2で記録材Pへ転写されずに中間転写ベルト5に残留した転写残トナーは、ベルトクリーニング装置10で回収除去されて、中間転写ベルト5を次回の一次転写に備えさせる。
【0029】
中間転写ベルト5は、厚さ85μmのポリイミド樹脂フィルムを基材として、カーボンブラックを分散させることにより、表面抵抗率で1×1012Ω/□、体積抵抗率で1×10Ω・cmとなるように抵抗調整した。中間転写ベルト5の駆動速度(プロセススピード)を250mm/sec、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの駆動速度を245mm/secとして中間転写体5と感光ドラム1Y、1M、1C、1Kとの駆動速度差をつけた。
【0030】
ところで、画像形成ステーションY、M、C、Kは、現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いる現像剤がそれぞれイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックのトナーである以外は共通に構成されている。従って、図2では、画像形成ステーションY、M、C、Kに共通な説明を、部材の参照記号の添え字Y、M、C、Kを除いて詳細に説明する。
【0031】
図2に示すように、画像形成ステーションは、像担持体としてドラム型の感光ドラム1を備えている。感光ドラム1は、外径30mmのアルミニウム製のシリンダの外周面に、感光層としての有機光半導体(OPC)層を塗布形成している。
【0032】
感光層は、有機感光体層に抵抗値が10〜1014Ωcmの表面層を形成したものや、アモルファスシリコン感光体などを用いることが好ましい。電荷注入帯電を実現でき、オゾン発生の防止、および消費電力の低減に効果があり、帯電性も向上するからである。そこで、直径30mmのアルミニウム製のドラム基体上に、次のような第1層〜第5層を下から順に形成して負帯電性の有機感光体層を形成した。第1層は、アルミニウム基体の欠陥等を均すために設けられた下引き層であり、厚さ20μmの導電層からなる。第2層は、基体から注入された正電荷が感光体表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する正電荷注入防止層であり、アラミン樹脂とメトキシメチル化ナイロンによって10×10Ωcm程度に抵抗調整した厚さ1μmの中抵抗層である。
【0033】
第3層は、露光を受けることによって正負の電荷対を発生する電荷発生層であり、ジアゾ系の顔料を樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層である。第4層は、ポリカーボネート樹脂にヒドラゾンを分散したP型半導体の電荷輸送層である。従って、感光ドラム1表面の負電荷は第4層を移動することができず、第3層の電荷発生層で発生した正電荷のみを感光ドラム1表面に輸送できる。
【0034】
第5層は、絶縁性樹脂のバインダーにSnO超微粒子を分散した材料を塗布して形成される電荷注入層である。具体的には、絶縁性樹脂に光透過性の絶縁フィラーであるアンチモンをドーピングして低抵抗化(導電化)し、この樹脂に対して粒径0.03μmのSnO粒子を70重量パーセント分散した材料の塗工層である。このように調合した塗工材料をディッピング法、スプレー塗工法、ロール塗工法、ビーム塗工法等の適当な塗工法で厚さ約3μmに塗工して、電荷注入層を形成することができる。
【0035】
矢印R1方向に回転する感光ドラム1を囲んで、帯電ローラ3、露光装置2、現像装置4、一次転写ローラ6、およびドラムクリーニング装置7が配置される。感光ドラム1の表面は、帯電ローラ3によって一様に帯電された後、露光装置2からレーザ光を走査露光されて各分解色の静電潜像を形成される。
【0036】
帯電ローラ3には、帯電バイアス電源35から、電気接触子、これを接触させた芯金を介して所定の帯電バイアス電圧が印加される。各分解色のトナー像を形成する際の帯電バイアス電圧は、周波数1800Hzの交流電圧1500Vと直流電圧−800Vとの重畳電圧であって、感光ドラム1の周面を負極性の所定電位(−700V程度)に一様帯電させる。
【0037】
感光ドラム1に形成された静電潜像は、現像装置4によってそれぞれの分解色のトナーを担持させることによりトナー像に現像される。現像装置4は、トナー容器41の貯留したトナーと磁性粒子とを含む2成分系トナーを現像スリーブ42に穂立ち状態で担持させて感光ドラム1の表面に接触させる。現像スリーブ42には、現像バイアス電源38から所定の現像バイアス電圧が印加される。各分解色のトナー像を形成する際の現像バイアス電圧は、電流制御されて変化するが、例えば交流電圧1200Vと直流電圧−300Vとの重畳電圧であって、負極性に帯電したトナーを静電潜像の電位に応じた量だけ感光ドラム1の表面に付着させる。
【0038】
感光ドラム1に形成された分解色のトナー像は、一次転写ローラ6を用いて中間転写ベルト5をトナーの帯電極性と反対極性に帯電させることにより、感光ドラム1から中間転写ベルト5へ移動する。一次転写ローラ6には、一次転写バイアス電源37から一次転写バイアス電圧を印加される。一次転写バイアス電圧は、トナーの帯電極性と反対極性の直流電圧であって、転写電流をフィードバックして定電流制御される。
【0039】
中間転写ベルト5に一次転写されることなく一次転写部T2を通過した転写残トナーは、感光ドラム1の回転に伴ってドラムクリーニング装置7に搬送されて除去され、感光ドラム1を次回のトナー像形成に備えさせる。ドラムクリーニング装置7は、感光ドラム1を長さ方向に横断して配置されたクリーニングブレードを感光ドラム1の表面に摺擦させて転写残トナーやその他の付着物を掻き落とす。
【0040】
<第1実施形態>
図3はブラック単色モードにおける感光ドラムの潤滑制御のフローチャートである。
【0041】
第1実施形態では、最も上流側の感光ドラム1Yに形成した緩衝トナー像を中間転写ベルト5に一次転写して、感光ドラム1Y、1M、1Cの潤滑制御を行う。用済みの緩衝トナー像は、感光ドラム1M、1Cへ逆転写してドラムクリーニング装置7M、7Cにより除去回収する。画像形成装置100は、ブラック単色モードとフルカラーモードとを有しており、ブラック単色モードでも感光ドラム1Y、1M、1Cと中間転写ベルト5とは離間することなく接触状態を保つ。
【0042】
図1、図2を参照して図3に示すように、制御部36は、画像データが白黒画像の場合(S111のYES)および白黒印刷モードが設定されている場合(S112のYES)に、ブラック単色モードを設定する(S113)。しかし、それ以外の場合(S112のNO)にはフルカラーモードを設定する(S114)。
【0043】
そして、フルカラーモードでは、上述したように、帯電バイアス電圧、現像バイアス電圧、一次転写バイアス電圧を制御して、すべての画像形成ステーションY、M、C、Kを用いた画像形成を行う(S118)。
【0044】
しかし、ブラック単色モードでは、画像形成ステーションY、M、Cを制御して感光ドラム1Y、1M、1Cの潤滑制御を行いつつ(S115)、画像形成ステーションKのみを用いた画像形成を行う(S117)。
【0045】
感光ドラム1Y、1M、1Cの潤滑制御では、制御部36が、帯電ローラ3Yの帯電バイアス電圧と現像装置4Yの現像バイアス電圧とを制御して、露光装置2Yを用いることなく、感光ドラム1Yに緩衝トナー像を形成する。そして、制御部36が、一次帯電ローラ6Yの一次転写バイアス電圧を制御して緩衝トナー像を中間転写ベルト5に一次転写し、中間転写ベルト5とともに感光ドラム1Y、1M、1Cの一次転写部T1を通過させる。
【0046】
また、制御部36が、一次転写ローラ6M、6Cの一次転写バイアス電圧を制御して中間転写ベルト5の緩衝トナー像を感光ドラム1M、1Cへ逆転写させる。感光ドラム1M、1Cへ逆転写した緩衝トナー像は、ドラムクリーニング装置7M、7Cによって自動的にクリーニングされる。
【0047】
これにより、画像形成ステーションKの一次転写部T1では、緩衝トナー像を除去された中間転写ベルト5上に、ブラックのトナー像が一次転写される。中間転写ベルト5上に一次転写されたブラックのトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pに二次転写される。
【0048】
第1実施形態では、感光ドラム1Yで現像を行うためのイエロートナーを潤滑物質として用いることにより、感光ドラム1Yにおける中間転写ベルト5との直接摩擦接触を回避する。感光ドラム1Yで形成した緩衝トナー像を中間転写ベルト5に一次転写して、通過する感光ドラム1Y、1M、1Cとの一次転写部T1を順番に潤滑する。潤滑の用を終えた緩衝トナー像は、中間転写ベルト5から感光ドラム1M、1Cへ逆転写された後にドラムクリーニング装置7M、7Cにより除去される。感光ドラム1Kでは、感光ドラム1M、1Cによって緩衝トナー像が二重に除去された中間転写ベルト5に黒色トナー像を一次転写する。
【0049】
従って、感光ドラム1Y、1M、1Cの摩擦負担を軽減する目的を、離間機構に頼らず、潤滑によって達成し、感光ドラム1Y、1M、1Cの潤滑を行う仕組みを既存の装置/機構の枠組み内で実現している。感光ドラム1Y、1M、1Cを中間転写ベルト5に接触させたままとして、感光ドラム1Y、1M、1Cの摩擦負担を既存のトナーによって軽減する。フルカラー画像を形成するための既存の装置/機構だけを活用して感光ドラム1Y、1M、1Cを潤滑し、潤滑に用いたトナーを除去する。
【0050】
従って、感光ドラム1Y、1M、1Cを中間転写ベルト5から離間させる機構を設ける必要が無く、感光ドラム1Y、1M、1Cの潤滑を行うための専用の装置/機構を追加する必要も無い。既存の装置/機構/電源を利用して、既存の制御のわずかな変更だけで感光ドラム1Y、1M、1Cの潤滑を実現できる。
【0051】
また、後述するように、通常のカラー画像形成に比較して桁違いに少ないトナー消費で十分な潤滑効果が得られるので、いたずらにイエロートナーを消費して早期にフルカラー画像形成の支障をきたす結果とはならない。ただし、マゼンタ、シアンよりも消費量は多くなる可能性があるので、交換トナーカートリッジや交換プロセスカートリッジでは、マゼンタ、シアンのものよりもイエローのものについて、そのトナー容量を割り増ししてもよい。
【0052】
<具体的な制御>
図4は感光ドラムの潤滑制御の様子を模式的に示す説明図、図5は転写電流とトナーの転写性能との関係を示す線図、図6は転写電流とトナー回収効率との関係を示す線図である。図7は中間転写ベルトと感光ドラムの周速差と感光ドラムの寿命との関係を示す線図である。
【0053】
図4に示すように、緩衝トナー像Tbは、ブラック単色モードで感光ドラム1Y、1M、1Cと中間転写ベルト5との間に介在させるために作像されるごく薄いトナー層である。
【0054】
画像形成ステーションYでは、帯電ローラ3Yに直流電圧のみの帯電バイアス電圧を印加する。フルカラーモードでは、帯電ローラ3Yに対して直流電圧と交流電圧とを重畳した帯電バイアス電圧が印加されるが、交流電圧を印加すると感光ドラム1Y表層の削れ量が増加するため、直流電圧のみの帯電バイアス電圧とした。現像バイアス電圧によっては、帯電ローラ3Yを接地して帯電バイアス電圧を0Vとしてもよい。
【0055】
第1実施形態では、帯電ローラ3Yの帯電バイアス電圧は0Vとし、露光装置2Yを用いずに、現像装置4Yの現像バイアス電圧を−100〜−500Vの範囲で制御して感光ドラム1の全周をアナログ現像させた。現像バイアス電圧を上昇させると、感光ドラム1Yに現像されるトナー濃度は増加し、そのときのトナー載り量は0.05mg/cm以上であった。このトナーを緩衝層として機能させるためには、一次転写部T1での転写効率とトナー消費量とから見て、感光ドラム1Yにおけるトナー載り量が0.02mg/cm以上0.10mg/cm未満であることが望ましい。
【0056】
感光ドラム1Yをアナログ現像して得た緩衝トナー像Tbを、一次転写部T1へ一次転写バイアス電圧を印加することにより中間転写ベルト5へ一次転写する。このときの転写条件は、フルカラーモード時に比べてトナー載り量が小さいため、フルカラーモード時よりも小さい転写電流を設定する。
【0057】
具体的には、フルカラーモード時の転写電流は12〜16μAで一次転写バイアス電圧は300V〜500Vとなる。トナー載り量の少ない緩衝トナー像Tbを同じ転写電流で一次転写すると、一次転写バイアス電圧が過大となって、中間転写ベルト5と感光ドラム1Yとの間で放電が発生し、トナーの帯電極性の反転や除電が起きる。
【0058】
そこで、ブラック単色モードでは、転写電流を5〜10μAとして、一次転写ローラ6Yの一次転写バイアス電圧を50〜200Vに制御した。これにより、感光ドラム1Yから中間転写ベルト5への転写効率が85%以上確保できた。図5には、感光ドラム1Yに形成したトナー載り量0.05mg/cmの緩衝トナー像Tbを一次転写したときの転写効率を示す。図5の縦軸は転写効率、横軸は電流である。転写効率は次式(1)により求めた。
【0059】
(転写効率)[%]=100*(感光ドラムトナー載り量)/(中間転写ベルトトナー載り量) (1)
【0060】
画像形成ステーションMでは、一次転写ローラ6Mに、一次転写ローラ6Yとは逆極性の一次転写バイアス電圧を印加して中間転写ベルト5から感光ドラム1Mへ緩衝トナー像Tbの一部を逆転写した。一次転写ローラ6Mに印加する一次転写バイアス電圧の絶対値は、フルカラーモード時よりも小さくして、緩衝トナー像Tbが画像形成ステーションMで全回収されないようにした。具体的には、転写電流を−3.5μAとして、一次転写バイアス電圧を−150Vに制御した。中間転写ベルト5に転写されたトナー載り量が0.045mg/cmの緩衝トナー像Tbを感光ドラム1Mへ逆転写する際の転写電流とトナー回収効率との関係を図6に示す。トナー回収効率は次式(2)により求めた。
【0061】
(トナー回収効率)[%]=100*(感光ドラムトナー載り量)/(中間転写ベルトトナー載り量) (2)
【0062】
画像形成ステーションCでは、一次転写ローラ6Cに一次転写バイアス電圧−150Vを印加して、中間転写ベルト5に残った緩衝トナー像Tbを感光ドラム1Cへほとんど回収した。感光ドラム1Cの一次転写部T1を通過した中間転写ベルト5におけるトナー載り量は0.001mg/cm以下であり、帯電極性が正極性に反転したものや帯電荷量の低いものが主体であった。従って、中間転写ベルト5に残留したイエロートナーは、図1に示すように、二次転写部T2で記録材Pへほとんど転写されることなく中間転写ベルト5に残留してベルトクリーニング装置10により除去回収される。また、ブラック単色モードで画像形成した記録材Pを観察しても、イエロートナーの痕跡は、全く認識不可能なレベルであった。
【0063】
中間転写ベルト5と感光ドラム1Y、1M、1C、1Kとの間に駆動速度差を設定した場合の駆動速度差と感光ドラムの寿命との関係を図7に示す。図7には第1実施形態の潤滑制御を行った場合と行わなかった場合とを比較して示している。周速差は次式(3)により求めた。
【0064】
(周速差)[%]=((中間転写ベルト駆動速度)−(感光ドラム駆動速度))/(中間転写ベルト駆動速度) (3)
【0065】
タンデム方式で中間転写ベルトを用いた画像形成装置の中には、トナー転写効率を高める目的で感光ドラムと中間転写ベルトとの搬送速度が異なる装置がある。このような装置では感光ドラムの削れが著しいことが知られている。また、感光ドラムの周速度と中間転写ベルトの搬送速度とを意図的に異なる設定にしていない画像形成装置においても、画像形成中、実際には一次転写部で速度差が生じており、感光ドラムの表層の磨耗に直接寄与している。さらに、感光ドラムと中間転写ベルトとの周速が異なる場合、感光ドラムの表層の削れ量が著しく増えて感光ドラム寿命が短命となる。
【0066】
図7によれば、潤滑制御によって感光ドラムと中間転写ベルトの駆動速度差による感光ドラムの摺擦負荷が軽減されて、感光ドラムの寿命が2倍以上に延びることが示されている。
【0067】
<第2実施形態>
第1実施形態の画像形成ステーションYでは、露光装置2Yを作動させることなく、帯電ローラ3Yの帯電バイアス電圧と現像装置4Yの現像バイアス電圧とを制御して緩衝トナー像Tbを感光ドラム1Yに形成した。しかし、露光装置2Yを作動させて緩衝トナー像Tbのトナー分布パターンを制御することにより、少ないトナー載り量でも高い潤滑性能を発揮させることができる。
【0068】
第2実施形態では、図1、図2に示した構成で図3の制御を実行し、図4に示すように緩衝トナー像Tbを形成した。ただし、ブラック単色モードでは、画像形成ステーションYに露光装置2Yにて静電潜像を書き込み、1Dot 9Spaceのハーフトーン画像を作像し、これを緩衝トナー像Tbとして用いた。ブラック単色モードで記録材Pの画像出力に関与しない画像形成ステーションY、M、Cにおけるその他の処理は、第1実施形態の方法と全く同様に行った。ここで、1Dot 9Spaceとは、10Dot四方あたりの白地部に1Dotのトナー像が規則的かつ連続的に並んだ画像パターンのことである。
【0069】
画像形成ステーションYでは、1Dot 9Spaceの緩衝トナー像Tbを感光体ドラム1Yに形成し、第1実施形態と全く同様の転写バイアス電圧制御で中間転写ベルト5へ一次転写した。
【0070】
画像形成ステーションM、Cでは、第1実施形態と全く同様の転写バイアス電圧制御で中間転写ベルト5から感光ドラム1M、1Cへ緩衝トナー像Tbを回収した。
【0071】
これにより、第1実施形態の露光装置2Yを作動させない場合の感光ドラムの寿命約35万枚は、1Dot 9Spaceの緩衝トナー像Tbにおける約65万枚まで長寿命化できた。
【0072】
表1は、静電潜像パターンを異ならせて作像したDot密度の異なる緩衝トナー像Tbにおける感光ドラム1Yの寿命を示す。表1に示すように、感光ドラム1Yの表面に形成する緩衝トナー像TbのDot密度は、40Spaceあたり1Dot以上とすることが望ましい。なお、感光体ドラム1Yに作像した緩衝トナー像Tbのトナー載り量は約0.02mg/cmであった。
【0073】
【表1】

【0074】
<第3実施形態>
図8は第3実施形態の画像形成装置の主要部構成を模式的に示す説明図、図9は感光ドラムの潤滑制御の様子を模式的に示す説明図、図10は中間転写ベルトと感光ドラムの周速差と感光ドラムの寿命との関係を示す線図である。第3実施形態の画像形成装置200は、記録材搬送ベルト5Hを用いて記録材Pに異なる分解色のトナー像を順次重ねて一次転写する以外は、また、緩衝トナー像をそれぞれの感光ドラム1M、1Y、1Cで形成すること以外は、第1実施形態の画像形成装置100と同様に構成されている。従って、図8中、図1、図2と共通する構成には共通の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
図8に示すように、第3実施形態の画像形成装置200は、静電写真プロセスを用いてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する画像形成ステーションY、M、C、Kを直列に配置したタンデム方式である。記録材Pは、カセット12、16から1枚ずつ取り出されて、不図示の帯電器を用いて帯電させた記録材搬送ベルト5Hに吸着担持される。記録材搬送ベルト5Hは循環して記録材Pを感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの一次転写ニップT1に通過させる。
【0076】
フルカラーモードでは、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kでそれぞれ形成した分解色のトナー像を記録材搬送ベルト5H上の記録材Pに順次転写して重ね合わせる。フルカラーのトナー像が形成された記録材Pは、定着装置9へ搬送されて加熱加圧を受けてトナー像を定着される。
【0077】
ブラック単色モードが設定されると、感光ドラム1Kにだけトナー像を形成して記録材Pに転写させるが、感光ドラム1Y、1M、1Cも記録材搬送ベルト5Hに接触し続ける。そこで、感光ドラム1Y、1M、1Cに個別の緩衝トナー像を担持させ、記録材搬送ベルト5Hに緩衝トナー像を転写させることなく、感光ドラム1Y、1M、1Cを潤滑させる。このとき、一次転写ローラ6Y、6M、6Cには、記録材搬送ベルト5Hへの緩衝トナー像の転写を阻止するために、フルカラーモードでトナー像を転写する際とは逆極性の直流電圧を印加する。
【0078】
図9に示すように、緩衝トナー像Tbは、以下のように形成する。フルカラーモード時は、帯電ローラ3Y、3M、3Cに直流電圧と交流電圧を重畳した帯電バイアス電圧を印加する。しかし、交流電圧を印加すると感光ドラム1Y、1M、1Cの削れ量が増加するため、直流電圧のみが望ましい。第3実施形態では、帯電ローラ3Y、3M、3Cの印加電圧は0Vとした。
【0079】
そして、露光装置2Y、2M、2Cを用いることなく、現像装置4Y、4M、4Cの現像バイアス電圧を10〜100Vとしてアナログ現像し、これにより、感光ドラム1Y、1M、1Cにそれぞれ緩衝トナー像Tbを形成した。現像バイアス電圧を上昇させると感光ドラム1Y、1M、1C上に現像されるトナー濃度は増加し、そのときのトナー載り量は0.002〜0.01mg/cmであった。緩衝トナー像Tbとして機能させるために、一次転写部(T1:図8)での転写効率を考慮して、感光ドラム1Y、1M、1Cのトナー載り量を0.005mg/cmに調整した。
【0080】
感光ドラム1Y、1M、1Cに担持させた緩衝トナー像Tbは、それぞれドラムクリーニング装置7Y、7M、7Cにてクリーニングブレードを摺擦させることにより全て回収させている。
【0081】
一次転写ローラ6Y、6M、6Cには、フルカラーモード時の転写バイアス電圧とは逆極性で、絶対値がフルカラーモード時の転写バイアス電圧よりも小さい転写阻止バイアス電圧を印加する。こうすることによって、未帯電トナーが転写ローラ圧によって記録材搬送ベルト5Hへ転写することを防ぐことができる。また、必要以上の電流を供給した場合に転写ニップ上下流で発生する放電を受けることによるトナー電荷の極性反転も防ぐことができる。
【0082】
ところで、感光ドラム1Y、1M、1C上の緩衝トナー像における未帯電トナーや極性反転したトナーは、フルカラーモード時とは逆極性にバイアスされた一次転写ローラ6Y、6M、6Cによって記録材搬送ベルト5Hへ転写される可能性がある。しかし、未帯電トナーや極性反転したトナーは、最下流の一次転写ローラ6Kの転写バイアス電圧によって感光ドラム1Kへ逆転写されて、その後、ドラムクリーニング装置7Kによって感光ドラム1Kから回収される。従って、感光ドラム1Kから記録材Pへ転写されるトナー像には緩衝トナー像の未帯電トナーが重ならない。未帯電トナーが記録材搬送ベルト5Hに付着して連れ回って記録材Pを裏汚れさせることもない。
【0083】
以上のようにすることで、ブラック単色モードの画像に影響を及ぼすことなく感光ドラム1Y、1M、1Cを潤滑して記録材搬送ベルト5Hとの直接接触、摩擦負担を軽減できる。また、記録材Pへ画像出力しない画像形成ステーションY、M、Cのドラムクリーニング装置7Y、7M、7Cのクリーニングブレードへトナーを供給することで感光ドラム1Y、1M、1Cとの摩擦力を軽減できる。これにより、感光ドラム1Y、1M、1Cの回転負荷が軽減されて安定し、記録材搬送ベルト5Hを含めた駆動の電力消費が節約される。感光ドラム1Y、1M、1Cの摩擦負荷が軽減されて、磨耗/損傷を起しにくくなり、感光体ドラム1Y、1M、1Cの寿命が2〜3倍に長寿命化できる。
【0084】
図10には、記録材搬送ベルト5Hと感光ドラム1Y、1M、1Cとの駆動速度差と、感光体ドラム1Y、1M、1Cの寿命の関係を示す。感光体ドラム1Y、1M、1C上にトナー載り量0.005mg/cmの緩衝トナー像Tbを現像した場合について、緩衝トナー像Tbを形成する潤滑制御を行わない場合と比較した。図10に示すように、緩衝トナー像Tbを形成する潤滑制御によって、周速差による感光ドラム1Y、1M、1Cと記録材搬送ベルト5Hとの摺擦が軽減され、どの周速差でも感光ドラム1Y、1M、1Cの寿命が延びる。
【0085】
<発明との対応>
画像形成装置100は、循環する中間転写ベルト5と、中間転写ベルト5に接して上流側から順番に配置した感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kからそれぞれ中間転写ベルト5へトナー像を転写させる一次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kとを有する。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kにそれぞれ形成したトナー像を中間転写ベルト5に重ねて転写する第1(フルカラー)モードと、感光ドラム1Kに形成したトナー像を中間転写ベルト5に転写する第2(ブラック単色)モードとを実行する。制御部36は、第2モードでは、感光ドラム1Yで緩衝トナー像Tbを形成して一次転写ローラ6Yにより中間転写ベルト5に転写し、中間転写ベルト5の緩衝トナー像Tbを一次転写ローラ6M、6Cにより感光ドラム1M、1Cへ転写させる。
【0086】
画像形成装置200では、循環する記録材搬送ベルト5Hと、記録材搬送ベルト5Hに接して上流側から順番に配置した感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kからそれぞれ記録材搬送ベルト5Hへトナー像を転写させる一次転写ローラ6Y、6M、6C、6Kとを有する。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kにそれぞれ形成したトナー像を記録材搬送ベルト5Hに重ねて転写する第1(フルカラー)モードと、感光ドラム1Kに形成したトナー像のみを記録材搬送ベルト5Hに転写する第2(ブラック単色)モードとを実行する。制御部36は、第2モードでは、ドラム1Y、1M、1Cでそれぞれ緩衝トナー像Tbを形成し、緩衝トナー像Tbの記録材搬送ベルト5Hへの転写を一次転写ローラ6Y、6M、6Cにより阻止させる。
【0087】
画像形成装置100は、感光ドラム1Yの表面をそれぞれ一様に帯電させる帯電ローラ3Yと、一様に帯電した前記表面を露光してそれぞれ静電潜像を形成する露光装置2Yと、トナーを前記静電潜像に付着してそれぞれトナー像に現像する現像装置4Yとを備える。
【0088】
第1実施形態では、制御部36は、帯電ローラ3Yと現像装置4Yとを制御して、露光装置2Yを用いることなく緩衝トナー像Tbを形成する。第2実施形態では、制御部36は、露光装置2Yを制御して分散したドット状の静電潜像を形成し、現像装置4Yにより現像して緩衝トナー像Tbを形成する。いずれにせよ、緩衝トナー像Tbは、トナーの一様な分布密度を持たせてトナー載り量が0.02〜0.10mg/cmに調整されている。
【0089】
画像形成装置100は、循環する中間転写ベルト5に接して上流側に有彩色のトナー像を形成する感光ドラム1Y、1M、1Cを配置し、下流側に黒色トナー像を形成する感光ドラム1Kを配置する。制御部36は、ブラック単色モードか否かを判別し、ブラック単色モードに該当する場合に、感光ドラム1Y、1M、1Cと中間転写ベルト5との間にトナーを潤滑物質として供給して摩擦接触を緩和させる。前記潤滑物質は感光ドラム1Kよりも上流側で除去され、感光ドラム1Kに形成したトナー像が中間転写ベルト5に転写される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1実施形態の画像形成装置の主要部構成を模式的に示す説明図である。
【図2】感光ドラム周囲の拡大図である。
【図3】ブラック単色モードにおける感光ドラムの潤滑制御のフローチャートである。
【図4】感光ドラムの潤滑制御の様子を模式的に示す説明図である。
【図5】転写電流とトナーの転写性能との関係を示す線図である。
【図6】転写電流とトナー回収効率との関係を示す線図である。
【図7】中間転写ベルトと感光ドラムの周速差と感光ドラムの寿命との関係を示す線図である。
【図8】第3実施形態の画像形成装置の主要部構成を模式的に示す説明図である。
【図9】感光ドラムの潤滑制御の様子を模式的に示す説明図である。
【図10】中間転写ベルトと感光ドラムの周速差と感光ドラムの寿命との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0091】
Y、M、C、K 画像形成ステーション
1Y 第1像担持体(感光ドラム)
1C 第2像担持体(感光ドラム)
1K 第3像担持体、黒色像担持体(感光ドラム)
2Y 第1露光手段(露光装置)
2C 第2露光手段(露光装置)
2K 露光装置
3Y 第1帯電手段(帯電ローラ)
3C 第2帯電手段(帯電ローラ)
3K 帯電ローラ
4Y 第1現像手段(現像装置)
4C 第2現像手段(現像装置)
4K 現像装置
5、5H 移動体(中間転写ベルト、記録材搬送ベルト)
6Y 第1転写手段(一次転写ローラ)
6C 第2転写手段(一次転写ローラ)
6K 第3転写手段(一次転写ローラ)
7Y、7M、7C ドラムクリーニング装置
8Y、8M、8C トナーボトル
9 定着装置
10 ベルトクリーニング装置
P 記録材
T1 一次転写部
T2 二次転写部
Tb 緩衝トナー像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環する移動体と、
前記移動体に接して上流側から順番に配置した第1、第2、第3像担持体と、
前記第1、第2、第3像担持体からそれぞれ前記移動体へトナー像を転写させる第1、第2、第3転写手段と、
前記第1、第2、第3像担持体にそれぞれ形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に重ねて転写する第1モードと、
前記第3像担持体に形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に転写する第2モードと、を有する画像形成装置において、
前記第2モードでは、前記第1像担持体で緩衝トナー像を形成して前記第1転写手段により前記移動体に転写し、前記移動体の前記緩衝トナー像を前記第2転写手段により前記第2像担持体へ転写させる制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
循環する移動体と、
前記移動体に接して上流側から順番に配置した第1、第2像担持体と、
前記第1、第2像担持体からそれぞれ前記移動体へトナー像を転写させる第1、第2転写手段と、
前記第1、第2像担持体にそれぞれ形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に重ねて転写する第1モードと、
前記第2像担持体に形成したトナー像を前記移動体または前記移動体に担持させた記録材に転写する第2モードと、を有する画像形成装置において、
前記第2モードでは、前記第1像担持体で緩衝トナー像を形成し、前記緩衝トナー像の前記移動体への転写を前記第1転写手段により阻止させる制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記第1像担持体の表面をそれぞれ一様に帯電させる第1帯電手段と、
一様に帯電した前記第1像担持体の前記表面を露光してそれぞれ静電潜像を形成する第1露光手段と、
トナーを前記第1像担持体の前記静電潜像に付着してそれぞれトナー像に現像する第1現像手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1帯電手段と前記第1現像手段とを制御して、前記第1露光手段を用いることなく前記緩衝トナー像を形成することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1像担持体の表面をそれぞれ一様に帯電させる第1帯電手段と、
一様に帯電した前記第1像担持体の前記表面を露光してそれぞれ静電潜像を形成する第1露光手段と、
トナーを前記第1像担持体の前記静電潜像に付着してそれぞれトナー像に現像する第1現像手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1露光手段を制御して分散したドット状の前記静電潜像を形成し、前記第1現像手段により現像して前記緩衝トナー像を形成することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記緩衝トナー像は、トナーの一様な分布密度を持たせてトナー載り量が0.02以上0.10mg/cm以下に調整されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
循環する移動体に接して上流側に有彩色のトナー像を形成する有彩色像担持体を配置し、下流側に黒色トナー像を形成する黒色像担持体を配置した画像形成装置における画像形成方法において、
ブラック単色モードか否かを判別する第1工程と、
前記ブラック単色モードに該当する場合に、前記有彩色像担持体と前記移動体との間に潤滑物質を供給して摩擦接触を緩和させる第2工程と、
前記潤滑物質を前記黒色像担持体よりも上流側で除去する第3工程と、
前記黒色像担持体に形成したトナー像を前記移動体に転写させる第4工程と、を備えたことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−111885(P2008−111885A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293331(P2006−293331)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】