説明

画像形成装置、プリントヘッドのずれ量検出方法、プログラム及び記録媒体

【課題】画像形成装置が備える端部がオーバーラップするプリントヘッド同士のつなぎ目の位置のずれ量を、簡単かつ安価な構成で検出する。
【解決手段】画像形成装置Gは、複数の発光素子を有する第1と第2のプリントヘッド2、3により形成された感光体ドラム9の潜像を現像して画像を形成する。第1と第2のプリントヘッド2、3は、それぞれ端部が主走査方向に互いにオーバーラップして配置され、感光体ドラム9上のオーバーラップ部分に所定のパターンを形成する。オーバーラップ部分のパターンの画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、濃度検知センサ10によるオーバーラップ部分の画像濃度の測定結果と、第1と第2のプリントヘッド2、3のずれ量に対応して予め設定した画像濃度の基準濃度データに基づき、第1と第2のプリントヘッド2、3の主走査方向のずれ量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子アレイを用いた光書き込み装置を備えた画像形成装置、画像形成装置におけるプリントヘッドのずれ量検出方法、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を適用した広幅複写機や広幅プリンタなどの画像形成装置では、安価なA3又はA4サイズ幅の発光素子アレイユニット、例えば発光素子がLED(発光ダイオード)であるLEDプリントヘッドを複数用いて主走査方向に千鳥状に配置し、広幅サイズの書き込みに対応する光書き込み装置が使用されている。
【0003】
このような、複数のLEDプリントヘッドを主走査方向に千鳥状に配置した光書き込み装置では、LEDプリントヘッドの取り付け位置の精度や誤差、又は、LEDプリントヘッドの熱膨張などにより、隣り合うLEDプリントヘッド同士のつなぎ目部分のドット位置にずれが生じて、出力画像の縦方向に黒スジや白スジが発生し、画像品質を低下させることがある。
【0004】
この問題を解決するために、従来、LEDプリントヘッドのつなぎ目部分の位置ずれ量をセンサを用いて検出して、位置ずれを補正する画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
この従来の画像形成装置では、PSDセンサ(Position Sensitive Detector)を用いてLEDプリントヘッドの光を直接受光し、各LED素子の点灯順序と光量に対するPSDセンサの出力レベルに基づき、LEDプリントヘッドの位置ずれを検出する。
【0005】
ところが、この従来の画像形成装置では、位置ずれを検出するために、PSDセンサをプリントヘッドと感光体ドラムの間に配置するか、或いは、プリントヘッドからの光をPSDセンサまで導く導光部材を配置する必要がある。その際、プリントヘッドの焦点距離(プリントヘッドと感光体ドラムの間隔)は2mm程度であるため、その間にPSDセンサを配置するのは極めて難しく、実現に多大な困難が伴う。これに対し、導光部材などを設けると、装置が大掛かりとなり構成も複雑化し、コストも上昇するという問題が生じる。
【0006】
また、従来、LEDプリントヘッドを感光体の主走査方向に沿って千鳥状に複数配置し、各LEDプリントヘッドのオーバーラップ部分に配置した濃度検知センサで、感光体の1周期分の濃度検知を行い、その結果に基づいて、各LEDプリントヘッドの光量を個々に調整して、その焦点位置ずれを補正する画像形成装置も知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、この従来の画像形成装置では、複数のLEDプリントヘッドのオーバーラップ部分に対して、複数の濃度検知センサを配置しなければならず、コストが高くなる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、画像形成装置が備える端部がオーバーラップするプリントヘッド同士のつなぎ目の位置のずれ量を、簡単かつ安価な構成で検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、それぞれ端部が主走査方向に互いにオーバーラップして配置され、感光体に潜像を形成する第1と第2のプリントヘッドと、該第1と第2のプリントヘッドにより前記感光体上の前記オーバーラップ部分に形成されたパターンの画像濃度を測定する画像濃度測定手段と、該画像濃度測定手段による前記オーバーラップ部分の画像濃度の測定結果と、前記第1と第2のプリントヘッドのずれ量に対応して予め設定した画像濃度の基準濃度データに基づき、前記第1と第2のプリントヘッドの主走査方向のずれ量を算出する算出手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載された画像形成装置において、前記第1と第2のプリントヘッドは、前記オーバーラップ部分の発光素子を所定数ごとに交互に点灯及び消灯させて前記感光体上のパターンを形成することを特徴とする画像形成装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された画像形成装置において、前記第1と第2のプリントヘッドの一方により前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する手段と、該基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定して、前記画像濃度の基準濃度データを設定する手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された画像形成装置において、前記ずれ量に基づき、プリントヘッド同士の位置ずれを補正する手段を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載された画像形成装置において、前記発光素子を交互に点灯及び消灯させる所定数を変更させる手段を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された画像形成装置において、前記第1と第2のプリントヘッドにより前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する手段と、該第1と第2のプリントヘッドによる基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定する手段と、該画像濃度の測定結果に基づき、前記第1と第2のプリントヘッドが形成したパターンの画像濃度の差を補正する手段と、該補正後の画像濃度に基づき、前記画像濃度の基準濃度データを設定する手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載された画像形成装置において、前記第1と第2のプリントヘッドは、前記感光体上のオーバーラップ部分のみに前記各パターンを形成することを特徴とする画像形成装置である。
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載された画像形成装置において、前記第1と第2のプリントヘッドは、前記画像濃度測定手段による画像濃度の測定範囲よりも広くオーバーラップして配置されていることを特徴とする画像形成装置である。
請求項9の発明は、プリントヘッドにより形成された感光体の潜像を現像して画像を形成する画像形成装置におけるプリントヘッドのずれ量検出方法であって、それぞれ端部が主走査方向に互いにオーバーラップして配置され、感光体に潜像を形成する第1と第2のプリントヘッドにより、前記感光体上の前記オーバーラップ部分に所定のパターンを形成する工程と、該オーバーラップ部分のパターンの画像濃度を測定する工程と、該オーバーラップ部分のパターンの画像濃度の測定結果と、前記第1と第2のプリントヘッドのずれ量に対応して予め設定した画像濃度の基準濃度データに基づき、前記第1と第2のプリントヘッドの主走査方向のずれ量を算出する工程と、を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項10の発明は、請求項9に記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、前記所定のパターンを形成する工程は、前記第1と第2のプリントヘッドにより、前記オーバーラップ部分の発光素子を所定数ごとに交互に点灯及び消灯させて前記感光体上の所定のパターンを形成する工程を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項11の発明は、請求項9又は10に記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、前記第1と第2のプリントヘッドの一方により前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する工程と、該基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定して、前記画像濃度の基準濃度データを設定する工程と、を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項12の発明は、請求項9ないし11のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、前記ずれ量に基づき、プリントヘッド同士の位置ずれを補正する工程を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項13の発明は、請求項10ないし12のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、前記発光素子を交互に点灯及び消灯させる所定数を変更させる工程を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項14の発明は、請求項9ないし13のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、前記第1と第2のプリントヘッドにより前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する工程と、該第1と第2のプリントヘッドによる基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定する工程と、該画像濃度の測定結果に基づき、前記第1と第2のプリントヘッドが形成したパターンの画像濃度の差を補正する工程と、該補正後の画像濃度に基づき、前記画像濃度の基準濃度データを設定する工程と、を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項15の発明は、請求項9ないし14のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、前記第1と第2のプリントヘッドは、前記感光体上のオーバーラップ部分のみに前記各パターンを形成することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法である。
請求項16の発明は、請求項9ないし15のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法の各工程をコンピュータで実行させるためのプログラムである。
請求項17の発明は、請求項16に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置が備える端部がオーバーラップするプリントヘッド同士のつなぎ目の位置のずれ量を、簡単かつ安価な構成で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の画像形成装置の要部を概略的に示す図である。
【図2】図2Aは、本実施形態の画像形成装置の概略構成を示すブロック図であり、図2Bは、画像形成装置が備える制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】LEDプリントヘッドのつなぎ目で1ドット以下のずれ量を検出する原理を説明する図である。
【図4】LEDプリントヘッドのつなぎ目で1ドット以下のずれ量を検出する手順を示すフローチャートである。
【図5】LEDプリントヘッドのつなぎ目で4ドット以下のずれ量を検出する原理を説明する図である。
【図6】4ドット以下のずれ量を検出するときの複数の基準濃度データの設定について説明するための図である。
【図7】LEDプリントヘッドのつなぎ目で4ドット以下のずれ量を検出する手順を示すフローチャートである。
【図8】LEDプリントヘッドのつなぎ目のずれ量を精度良く検出する手法を説明するための図である。
【図9】ずれ量に応じてLEDプリントヘッドを移動させて位置ずれを補正する手順を説明するための図である。
【図10】ずれ量に応じてつなぎ目のLEDプリントヘッドの光量を制御して位置ずれを補正する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の画像形成装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の画像形成装置の要部を概略的に示す図である。
この画像形成装置Gは、図示のように、ドラム状に形成された感光体である感光体ドラム9と、感光体ドラム9を軸線回りに所定速度で回転させる回転駆動装置(図示せず)とを備えている。また、画像形成装置Gは、感光体ドラム9を囲んで、その回転方向(副走査線方向)に順に配置された、帯電チャージャ1、第1のプリントヘッド2、第2のプリントヘッド3、現像装置4、濃度検知センサ10、転写チャージャ5、分離チャージャ6、クリーニングユニット7、及び、除電ランプ8を備えている。
【0012】
帯電チャージャ1は、感光体ドラム9の外周の表面を一様に帯電させる。第1と第2のプリントヘッド2、3は、帯電させた感光体ドラム9の表面に、画像に相当するパターン光を照射して、感光体ドラム9の表面に潜像(静電潜像)を形成する。現像装置4は、感光体ドラム9の静電潜像を現像用の粉体(トナー)により現像する。この現像された感光体ドラム9上の画像のトナーは、転写チャージャ5において、転写紙(図示せず)に重ね合わされて転写される。
【0013】
分離チャージャ6は、転写紙を感光体ドラム9から分離させる。クリーニングユニット7は、感光体ドラム9の表面に残った転写残トナーを清掃する。除電ランプ8は、清掃後の感光体ドラム9上の残留電位を除電して一様に取り払う。濃度検知センサ10は、感光体ドラム9に形成された画像の濃度(トナー濃度)を検知して測定するための画像濃度測定手段(例えば、反射型フォトセンサ等の検知センサ)であり、後述するように、第1と第2のプリントヘッド2、3の位置ずれを検出するときに使用される。
【0014】
ここで、第1と第2のプリントヘッド2、3は、それぞれ感光体ドラム9の幅方向(主走査線方向)に沿って、かつ、感光体ドラム9の回転方向(副走査線方向)に所定間隔を開けて配置されている。併せて、第1と第2のプリントヘッド2、3は、感光体ドラム9に設定された主走査線方向の異なる範囲に配置されるとともに、一部の配置範囲が重複するように、配置範囲の境界側で、それぞれ端部が主走査方向に互いにオーバーラップして配置されている。これにより、第1と第2のプリントヘッド2、3は、感光体ドラム9の主走査方向に沿って、互いのつぎ目(配置範囲の境界)をオーバーラップさせて、感光体ドラム9を幅方向に2分割した範囲に配置される。また、第1と第2のプリントヘッド2、3は、それぞれの一部(端部)を主走査方向にオーバーラップさせて、感光体ドラム9の主走査方向の全感光範囲に亘り配置される。
【0015】
この第1と第2のプリントヘッド2、3は、複数の発光素子を一次元状に配列させたアレイ状の発光素子からなり、ここでは、LEDを発光素子としたLEDプリントヘッド(以下、第1のLEDプリントヘッド2、第2のLEDプリントヘッド3という)により構成される。これら第1と第2のLEDプリントヘッド2、3は、各発光素子が点灯したときに発生する光を感光体ドラム9に照射して、感光体ドラム9の表面に静電潜像を形成する。その際、画像形成装置Gは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3により、感光体ドラム9に2分割で画像を書き込み、それらを組み合わせて1つの静電潜像を形成した後、静電潜像を現像装置4のトナーにより現像する。
【0016】
図2Aは、この画像形成装置Gの概略構成を示すブロック図であり、図2Bは、画像形成装置Gが備える制御装置の内部構成を示すブロック図である。なお、図面では、LEDプリントヘッドはLPHと表す。
画像形成装置Gは、図2Aに示すように、原稿を読み取る手段である読取部100、読み取られた原稿の画像(画像情報)に画像処理を施す画像処理部200、及び、原稿を複写するときに画像を書き込む書込部500を有する。また、画像形成装置Gは、装置全体を制御する制御装置300、制御装置300にキー入力などを行う操作手段である操作部400を有し、制御装置300に上記した濃度検知センサ10が接続されている。
【0017】
制御装置300は、図2Bに示すように、各種の演算処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)301、CPU301により使用される各種設定情報、プログラム、データ等を格納するROM(Read Only Memory)302、及び、CPU301が直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)303を有するコンピュータからなる。また、制御装置300は、CPU301によりROM302に格納されたプログラムを実行することで得られる機能実現手段として、画像形成装置Gの制御や各種の処理等を実行する各手段を有する。
【0018】
書込部500(図2A参照)は、画像処理部200から転送された画像データの信号をプリントヘッド制御回路501で1画素単位ビットに変換し、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3で光(ここでは、赤外光)に変換して出力する。その際、プリントヘッド制御回路501は、画像を感光体ドラム9の幅方向に対応する方向に2分割して、分割された各画像のデータを、第1のLEDプリントヘッド2と第2のLEDプリントヘッド3に並行して転送する。また、第2のLEDプリントヘッド3は、第1のLEDプリントヘッド2よりも感光体ドラム9の回転方向の下流に配置されている。そのため、プリントヘッド制御回路501は、第2のLEDプリントヘッド3に対し、遅延回路を通して、第1のLEDプリントヘッド2と第2のLEDプリントヘッド3の副走査線方向の間隔、及び、感光体ドラム9の周速により決定される遅延時間だけ遅延させてデータを転送する。
【0019】
これにより、感光体ドラム9上で、第2のLEDプリントヘッド3が書き込む画像を、第1のLEDプリントヘッド2が書き込んだ画像に1ラインに合成させる。また、画像形成装置Gは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の取り付け位置の精度や誤差などによる、それらの主走査線方向の位置ずれを補正するために、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の各発光素子(ドット)の位置のずれ量を検出する。その後、ずれ量の検出結果に基づき、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の取り付け位置を調整等する。
【0020】
図3は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目で1ドット(図面では、ドットはdotと表す)以下のずれ量を検出する原理を説明する図である。また、図3Aは、つなぎ目で、丸印により表すドット(LED)にずれがないときのパターン(テストパターン)を示す図、図3Bは、1/2ドットのずれが生じたときのテストパターンを示す図、図3Cは、濃度検知センサ10の出力チャート図である。
画像形成装置Gは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目のオーバーラップ部分(重複部分)で、感光体ドラム9上に所定の画像からなるテストパターンを形成し、濃度検知センサ10で、感光体ドラム9上に形成されたテストパターンの画像の濃度を測定する。このテストパターンは、制御装置300のROM302に記憶されている。
【0021】
このテストパターンの形成時(図3A参照)には、転写紙は使わずに、感光体ドラム9上に上記のように画像を形成する。また、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3は、オーバーラップ部分の発光素子を所定数ごとに交互に点灯及び消灯させて感光体ドラム9上に所定のテストパターン(図面では、点灯部が黒、消灯部が白からなる画像で示す)を形成する。ここでは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3は、オーバーラップ部分で相対するドットにて、それぞれドットの配列方向に沿って点灯(図の黒丸)と消灯(図の白丸)を交互に繰り返し、1ドット毎に1ドットずつ照射して、感光体ドラム9上にテストパターンを形成する。画像形成装置Gは、濃度検知センサ10で、形成後のテストパターンの画像濃度を測定する。なお、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3は、濃度検知センサ10による画像濃度の測定範囲よりも広くオーバーラップして配置されている。即ち、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目のオーバーラップ部分(テストパターンを形成する領域)は500ドット程度であり、つなぎ目内に設定された濃度検知センサ10の検知範囲(画像濃度を測定する範囲)より十分広くなっている。その結果、濃度検知センサ10は、検知領域が多少ずれても、つなぎ目内に位置してテストパターンを検知できるため、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3と濃度検知センサ10の取り付け誤差による影響を受けずに、つなぎ目のずれ量を検出できる。
【0022】
1ドット以下のずれ量を検出する際に、テストパターンの画像濃度は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のドットにずれがないときに最も薄く(図3A参照)、ずれが大きくなるほど次第に濃くなり(図3B参照)、ずれが1ドットになると最も濃くなる。これに対し、濃度検知センサ10(図3C参照)の出力は、画像濃度が薄いときに高く、画像濃度が濃いときに低くなる。これを利用して、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目のオーバーラップ部分で、濃度検知センサ10の出力の変化量dにより、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の主走査線方向の位置のずれ量を検出する。
【0023】
つまり、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の両方で、同じ白線と黒線が交互に並んだチャート(いわゆる万線チャート)を形成して重ね合わせると、画像の干渉により、ドットがずれているときは画像濃度が濃くなり、ずれていないときは薄くなる。この画像濃度を濃度検知センサ10で測定して読み取り、濃度の変化量をずれ量に換算することで、ずれ量を検出する。
【0024】
ずれ量は、濃度検知センサ10の出力が黒ベタのとき、つまり第1と第2のLEDプリントヘッド2、3が1ドットずれるときの濃度と、ずれがないときのテストパターンの濃度を基準に、以下の換算式で算出される。
ずれ量(ドット)={第1LEDプリントヘッド白黒P−(第1LEDプリントヘッド白黒P+第2LEDプリントヘッド白黒P)/(第1LEDプリントヘッド白黒P−黒ベタ)}×N
【0025】
この換算式で、「第1LEDプリントヘッド白黒P」は、基準濃度データであり、オーバーラップ部分に、第1のLEDプリントヘッド2で、ドットを交互に点灯及び消灯させてテストパターン(以下、白黒1ドットパターンという)を書き込み、濃度検知センサ10で測定した濃度(図3Cのセンサ出力:ずれなしに対応する出力)である。
「第1LEDプリントヘッド白黒P+第2LEDプリントヘッド白黒P」は、ずれ量の検出用データであり、オーバーラップ部分に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の両方で白黒1ドットパターンを書き込み、濃度検知センサ10で測定した濃度(図3Cのセンサ出力:ずれなし、1/2ドットずれ、1ドットずれ等の各出力)である。
なお、上記実施形態とは逆に、テストパターンの画像濃度は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のドットにずれがないとき黒ベタとし、ずれがあると濃度が薄くなるように構成してもよい。
【0026】
「黒ベタ」は、オーバーラップ部分を全面塗りつぶしてテストパターンを書き込み、これを濃度検知センサ10で測定した濃度であり、上記した1ドットずれたときに対応する濃度(図3Cのセンサ出力:1ドットずれに対応する出力)である。
「第1LEDプリントヘッド白黒P−黒ベタ」は、ずれ量の検出範囲dである。
「N」は、テストパターンの白黒ドットの繰り返し間隔であり、例えば、図3に示すように1ドット間隔で1ドット以下のずれ量を検出するときはN=1となる。これに対し、4ドット間隔で4ドット以下のずれ量を検出するときはN=4、8ドット間隔で8ドット以下のずれ量を検出するときはN=8となる。
【0027】
図4は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目で1ドット以下のずれ量を検出する手順を示すフローチャートである。
画像形成装置Gは、図示のように、まず、感光体ドラム9を回転させて、濃度検知センサ10で感光体ドラム9の初期表面の濃度を測定して読み取り、濃度検知センサ10の測定濃度に基づき、検出処理時の感光体ドラム9の表面状態を把握して、濃度検知センサ10のキャリブレーションを実行する(S101)。ここでは、感光体ドラム9の表面を測定したときの濃度検知センサ10のセンサ出力(出力電圧)が所定の電圧(例えば、4V)になるように調整してキャリブレーションを実行する。
【0028】
次に、第1のLEDプリントヘッド2により、オーバーラップ部分で、上記した白黒1ドットパターンを書き込んで、感光体ドラム9上に、等間隔の白黒線からなる基準濃度データ用のテストパターンを形成する(S102)。このテストパターンの画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、測定結果を基準濃度データとして、制御装置300のRAM303に蓄積する(S103)。
【0029】
次に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3により、オーバーラップ部分で、上記した白黒1ドットパターンを書き込んで、感光体ドラム9上のオーバーラップ部分に、ずれ量の検出用データのテストパターンを形成する(S104)。このテストパターンの画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、測定結果をずれ量検出用データとして、制御装置300のRAM303に蓄積する(S105)。次に、第1のLEDプリントヘッド2により、オーバーラップ部分で、全ドットを点灯させて光を照射し、上記した黒ベタに対応するパターンを書き込んで、感光体ドラム9上に、基準濃度データ用のテストパターンを形成する(S106)。このテストパターンの画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、測定結果を黒ベタ時の基準濃度データとして、制御装置300のRAM303に蓄積する(S107)。画像形成装置Gは、このようにして、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の一方(ここでは、第1のLEDプリントヘッド2)により、オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させる。これにより、感光体ドラム9上に基準濃度データ用の各テストパターンを形成し、その画像濃度を濃度検知センサ10で測定して、画像濃度の基準濃度データを設定する。
【0030】
続いて、設定した2つの基準濃度データと、ずれ量検出用データを制御装置300のRAM303から読み出し、各データと上記した換算式に基づき、CPU301により演算処理して各値を換算式に代入する。これにより、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3に発生した1ドット以下の位置のずれ量を検出する(S108)。このように、画像形成装置Gは、濃度検知センサ10によるオーバーラップ部分の画像濃度の測定結果と、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のずれ量に対応して予め設定した画像濃度の基準濃度データに基づき、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の主走査方向のずれ量を算出する。その際、ずれ量は、例えば、図3Aに示すテストパターンのときには、なしと算出され、図3Bに示すテストパターンのときには、1/2ドットと算出されて、各状態のずれ量が検出される。なお、第1のLEDプリントヘッド2に替えて、第2のLEDプリントヘッド3で基準濃度データ用のテストパターンを形成することもできる。
【0031】
以上のように、この画像形成装置Gでは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3同士のつなぎ目において、それらの主走査線方向の位置のずれ量を、1つの濃度検知センサ10を使用した測定により検出できる。また、隣接した第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の双方で、同じパターンを書き込み、これらの画像の干渉を使用して位置ずれを判別し、ずれ量を検出できるため、装置が複雑になるのを防止できる。その結果、ずれ量を、簡単かつ安価な構成で検出することができる。更に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3が、感光体ドラム9上のオーバーラップ部分のみに各テストパターンを形成することで、トナーの消費を抑えることができる。
【0032】
加えて、白黒1ドットパターン(ずれがないとき)と、黒ベタのテストパターン(ずれが1ドットのとき)とを測定して基準濃度データとするため、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の熱膨張などの測定条件の影響を受けずに、位置のずれ量を精度よく検出できる。また、ここでは、例えば、電源をオンするたびや、ずれ量の検出処理を実行するたびに、濃度検知センサ10で感光体ドラム9の初期表面の濃度を測定し、上記のようにキャリブレーションを実行する。これに伴い、センサ出力を調整するなどして、感光体ドラム9の表面状態などによる影響をなくし、ずれ量を繰り返し精度よく検出できる。
【0033】
以上、1ドット以下のずれ量を検出する例を説明したが、複数ドット以下のずれ量も同様に検出できる。
図5は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目で4ドット以下のずれ量を検出する原理を説明する図である。また、図5Aは、つなぎ目で、丸印により表すドット(LED)にずれがないときのテストパターンを示す図、図5Bは、2ドットのずれが生じたときのテストパターンを示す図、図5Cは、濃度検知センサ10の出力チャート図である。
【0034】
ここでは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3は、オーバーラップ部分で相対するドットにて、それぞれドットの配列方向に沿って、4ドットごとに交互に点灯及び消灯させて、4ドット毎に4ドットずつ照射し、感光体ドラム9上にテストパターンを形成する。画像形成装置Gは、濃度検知センサ10で、形成後のテストパターンの画像濃度を測定する。上記と同様に、4ドット以下のずれ量を検出する際にも、テストパターンの画像濃度は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のドットにずれがないときに最も薄く(図5A参照)、ずれが大きくなるほど次第に濃くなり(図5B参照)、ずれが4ドットになると最も濃くなる。
【0035】
これに対し、濃度検知センサ10(図5C参照)の出力は、画像濃度が薄いときに高く、画像濃度が濃いときに低くなる。これを利用して、濃度検知センサ10により、上記と同様に第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の主走査線方向の位置のずれ量を検出する。つまり、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の両方で同じチャート(万線チャート)を形成して画像を干渉させ、この画像濃度を濃度検知センサ10で測定して、濃度の変化量をずれ量に換算する。ずれ量は、上記した1ドット以下のずれ量の検出時と同じ換算式を使用して算出できるが、ここでは、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3によるドットの点灯及び消灯の繰り返し間隔は、それぞれ連続する4ドットを単位として行う。従って、換算式中の「N」は4となる。これにより、4ドット以下のずれ量を検出できる。
【0036】
ただし、濃度検知センサ10による画像濃度の測定値は、ずれ量が大きくなるのに応じて、単位ずれ量当たりの変化の程度が次第に小さくなることがある。この場合には、ずれ量を順次変化させて複数の基準濃度データを設定することで、ずれ量を精度よく検出できる。
【0037】
図6Aは、4ドット以下のずれ量を検出するときの複数の基準濃度データの設定について説明するための図であり、図6Bは、各テストパターンを濃度検知センサ10で測定した画像濃度(センサ出力)のチャート図である。
基準濃度データを設定するときには、図6Aに示すように、まず、第1のLEDプリントヘッド2により、オーバーラップ部分で4ドット毎に4ドットずつ照射し、感光体ドラム9上にテストパターン(パターン0という)を形成する。このパターン0の画像の濃度を、濃度検知センサ10で測定して、この濃度検知センサ10の測定結果を0ドットずれ(ずれなし)のデータとする。
【0038】
また、第1のLEDプリントヘッド2により、パターン0で照射した4ドットの一方側に更に1ドット照射し、感光体ドラム9上にテストパターン(パターン1という)を形成する。このパターン1の画像の濃度を、濃度検知センサ10で測定して、この濃度検知センサ10の測定結果を1ドットずれのデータとする。続いて、第1のLEDプリントヘッド2により、パターン1で照射した5ドットの一方側に更に1ドット照射し、感光体ドラム9上にテストパターン(パターン2という)を形成する。このパターン2の画像の濃度を、濃度検知センサ10で測定して、この濃度検知センサ10の測定結果を2ドットずれのデータとする。
【0039】
更に、第1のLEDプリントヘッド2により、パターン2で照射した6ドットの一方側に更に1ドット照射し、感光体ドラム9上にテストパターン(パターン3という)を形成する。このパターン3の画像の濃度を、濃度検知センサ10で測定して、この濃度検知センサ10の測定結果を3ドットずれのデータとする。また、第1のLEDプリントヘッド2により、パターン3で照射した7ドットの一方側に更に1ドット照射し、感光体ドラム9上にテストパターン(パターン4という)を形成する。このパターン4の画像の濃度を、濃度検知センサ10で測定して、この濃度検知センサ10の測定結果を4ドットずれのデータとする。
【0040】
ここでは、各パターン0〜4の画像濃度を濃度検知センサ10で測定すると、センサ出力は、図6Bに示すように、画像形成プロセスの条件等により、ドットのずれ量に応じて次第に変化する。その結果、複数の基準濃度データは、全ドットで照射されたパターン4(黒ベタ)に近づくにつれて、センサ出力の変化が小さくなるように曲線的に変化する。この場合には、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のずれ量(ドット数)が大きくなるにしたがい、濃度検知センサ10の検出精度が変化して低くなる傾向がある。これに対し、基準濃度データ間毎に両側の基準濃度データを直線的に結んで、曲線を複数の直線で表して補正することで、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のずれ量に左右されずに、精度よくずれ量を検出できる。
【0041】
このように基準濃度データを設定すれば、例えば、ずれ量が2.5ドットのとき、ずれ量検出用データ(センサ出力)は、2ドットと3ドットの各ずれ量の基準濃度データの中間に位置する。従って、各データを比較等することで、ずれ量検出用データは、2ドットと3ドットの基準濃度データの中間の値となることから、ずれ量が2.5ドットであると算出される。このように複数の基準濃度データを使用することで、ずれ量を1ドット以下まで精度よく算出して検出できる。
【0042】
図7は、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目で4ドット以下のずれ量を検出する手順を示すフローチャートである。
画像形成装置Gは、図示のように、まず、感光体ドラム9を回転させて、濃度検知センサ10で感光体ドラム9の初期表面の濃度を測定して読み取り、上記と同様に濃度検知センサ10のキャリブレーションを実行する(S201)。
【0043】
次に、第1のLEDプリントヘッド2により、オーバーラップ部分で、上記したパターン0を書き込んで、感光体ドラム9上に、基準濃度データ用のテストパターンを形成する(S202)。このパターン0の画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、測定結果を基準濃度データ(0ドットずれデータ)として、制御装置300のRAM303に蓄積する(S203)。続いて、第1のLEDプリントヘッド2により、オーバーラップ部分で、上記したパターン1を書き込んで、感光体ドラム9上に、基準濃度データ用のテストパターンを形成する(S204)。このパターン1の画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、測定結果を基準濃度データ(1ドットずれデータ)として、制御装置300のRAM303に蓄積する(S205)。
【0044】
以下同様に、第1のLEDプリントヘッド2により、上記したパターン2を書き込み(S206)、画像濃度を測定して基準濃度データ(2ドットずれデータ)としてRAM303に蓄積する(S207)。次に、第1のLEDプリントヘッド2により、上記したパターン3を書き込み(S208)、画像濃度を測定して基準濃度データ(3ドットずれデータ)としてRAM303に蓄積する(S209)。続いて、第1のLEDプリントヘッド2により、上記したパターン4を書き込み(S210)、画像濃度を測定して基準濃度データ(4ドットずれデータ)としてRAM303に蓄積する(S211)。画像形成装置Gは、このようにして、第1のLEDプリントヘッド2が有するオーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、感光体ドラム9上に基準濃度データ用の各テストパターンを形成し、その画像濃度を測定して、画像濃度の基準濃度データを設定する。
【0045】
次に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3により、オーバーラップ部分で、4ドット毎に4ドットずつ照射して、白黒4ドットパターンを書き込んで、感光体ドラム9上に、ずれ量の検出用データのテストパターンを形成する(S212)。このテストパターンの画像濃度を濃度検知センサ10で測定し、測定結果をずれ量検出用データとしてRAM303に蓄積する(S213)。その後、複数の基準濃度データとずれ量検出用データを制御装置300のRAM303から読み出し、CPU301により、各データを比較等して演算処理し、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3に発生した4ドット以下の位置のずれ量を、1ドット以下の検出精度で検出する(S214)。このように、画像形成装置Gは、オーバーラップ部分の画像濃度の測定結果と、ずれ量に対応して予め設定した複数の画像濃度の基準濃度データに基づき、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の主走査方向のずれ量を算出する。
【0046】
なお、この画像形成装置Gでは、制御装置300により制御して、発光素子の交互に点灯及び消灯させる所定数(書き込み、又は白黒線の所定幅)を変更させて、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の作動パターンを変更できる。これにより、検出可能なずれ量と、その検出量を変更して、ずれ量の検出を、1ドットや4ドット以外の数のドットで適宜行うことができる。その際、例えば10ドット以下のずれ量を検出するときは、オーバーラップ部分で、10ドット以下の整数ドットのテストパターンを基準濃度データとして、10ドット毎に10ドットずつ照射したテストパターンで、以上と同様にずれ量を検出すればよい。また、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の2つに加えて、第3のLEDプリントヘッドや第4のLEDプリントヘッドなどを設けて、複数のLEDプリントヘッドを、それぞれ端部を主走査方向に順にオーバーラップさせて配置してもよい。このようにしても、各つぎ目のLEDプリントヘッド(それぞれが第1と第2のLEDプリントヘッドになる)で、上記と同様にずれ量を検出できる。
【0047】
次に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のつなぎ目のずれ量を精度良く検出する手法について説明する。
図8は、この手法を説明するための図である。
図8Aに示すように、異なるLEDプリントヘッド、つまり第1と第2のLEDプリントヘッド2、3では、濃度検知センサ10による測定時に、基準濃度データのセンサ出力(画像濃度)に差が生じることが懸念される。そのため、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3で形成した同じ基準濃度データ用のテストパターンに対するセンサの出力が同じ出力になるように、各テストパターンの画像濃度の測定結果に基づき、例えば、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の光量を変化させたり、現像能力を変化させたりする。このようにして、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3で形成した同じテストパターンに対するセンサ出力が同じ出力になるように調整して、それぞれ測定される画像濃度の差を補正する。この補正後の画像濃度に基づき画像濃度の基準濃度データを設定し、補正された基準濃度データを基準にずれ量を算出することで、異なるLEDプリントヘッド2、3の誤差等の影響を低減して、つなぎ目のずれ量をより精度よく検出できる。
【0048】
また、補正された第1と第2のLEDプリントヘッド2、3で得られた複数の基準濃度データは、上記のように、全ドットで照射されたパターンに近づくにつれて、濃度検知センサ10の出力の変化が小さくなるように曲線的に変化する。この曲線を、所定の変換式等を使用して直線に補正して、この補正した画像濃度の基準濃度データに基づいてずれ量を算出することで、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のずれ量に左右されず、その影響を受けずに、ずれ量を一層精度よく検出できる。
【0049】
加えて、全ドットで照射されたパターンに近づくにつれて、濃度検知センサ10(図6B参照)の出力の変化が小さくなる、つまり、濃度検知センサ10の検出精度が低下する。そのため、基準濃度パターン及びずれ量検出用パターンの点灯等させるドットの所定数を、検出したいずれ量より大きくすることで、濃度検知センサ10の出力の変化が十分大きい一部の領域(図8A:変化が大きい領域)を基準にずれ量を算出して、検出精度の低下を防止できる。即ち、図6に示した4ドット以下の第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のずれ量の検出原理を用いて、同じパターンで、例えば、3ドット以下のずれ量を検出することで、濃度検知センサ10の検出精度の低下を防止できる。このように、所定数以上の整数ドットで書き込まれた各テストパターンの画像濃度を測定し、これを基準濃度データとして、所定数よりも小さいずれ量を算出することで、測定条件の影響を受けずに、高い精度で検出ができる。
【0050】
更に、感光体ドラム9上に形成されたテストパターンは、理想的なパターンの幅よりも太くなる傾向がある。例えば、600dpiの解像度を持つ場合の1ドットは、理想的には約42.3μmとなるが(図8B)、特別な処理をしない限り、それよりも太くなる。この太さの誤差を補正することで、検出精度を向上させて、1ドット以下のずれ量を高い精度で検出できる。
【0051】
次に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のオーバーラップ部分(つなぎ目)のずれ量を検知した後に、ずれ量に基づき、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3同士の位置ずれを補正する位置ずれ補正手段について説明する。位置ずれ補正手段には物理的にLEDプリントヘッドを移動させる手段と、画像のつなぎ目部分のLEDの光量を制御して、つなぎ目の部分が目立たなくさせる手段の2つがある。
【0052】
(1)物理的に移動させる手段
図9は、ずれ量に応じて第1と第2のLEDプリントヘッド2、3を移動させて位置ずれを補正する手順を説明するための図である。
図9に示すように、ずれ量を検出した後、その検出結果に基づき、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の位置をアクチュエータ(図示せず)により移動させて、発光素子の位置のずれを確認する。例えば、図9Aに示すように、1/2ドットずれていたときには、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のオーバーラップ部分に、1ドット毎に1ドット照射してテストパターンを書きながら、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の一方又は両方の位置をずらして、所定距離(例えば、20μm)だけアクチュエータにより移動させる。アクチュエータは、バックラッシュのない送り機構を使用する。
【0053】
ここでは、図9Bに示すように、第2のLEDプリントヘッド3の位置を左へ移動させながら、濃度検知センサ10でテストパターンの濃度を測定し、図9Gに示すセンサ出力のチャート図と対比する。センサ出力が最も高いとき、あるいは最も低いときに、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のドットの位置があっているので、そのときの位置を第2のLEDプリントヘッド3の停止位置とする。その際、第2のLEDプリントヘッド3の位置を左へ1/4ドット移動させ、センサ出力が最高又は最低ではないときには、続けて左方向へ移動させ、1/2ドット移動させて、センサ出力が最高(テストパターンの画像濃度が最も薄くなる)の位置で一旦停止させる(図9C)。
【0054】
続いて、停止した位置が正しいか否かの確認のために、更に、第2のLEDプリントヘッド3を左へ1/4ドット移動させながら(図9D)、濃度検知センサ10で画像濃度を測定する。画像濃度が最も濃い濃度よりも薄いときには、続けて左へ移動させ(図9E)、濃度が最も濃いときの位置に停止させる(図9F)。この停止位置を第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のドットずれがない位置と判断し、位置ずれの補正を終了する。この方法では、テストパターンを形成しながら、LEDプリントヘッドをずらして、テストパターンの濃度を測定するので、位置ずれの補正に要する時間を短縮できる。
【0055】
(2)つなぎ目のLED(ドット)の光量を制御して、目立たなくさせる手段
図10は、ずれ量に応じてつなぎ目のLEDプリントヘッドの光量を制御して位置ずれを補正する手順を説明するための図である。
図10Aに示すように、例えば、1/2ドットずれているときに、第2のLEDプリントヘッド3の画像のつなぎ目にある1/2ドットずれたLED(ドット)の光量を1/2(50%)にする。また、1/4ドットずれているときには(図10B)、第2のLEDプリントヘッド3の画像のつなぎ目にある1/4ドットずれたLED(ドット)の光量を3/4(75%)にする。
【0056】
更に、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3のいずれか一方だけではなく、両方の光量を制御することもできる。例えば、図10Cに示すように、1/2ドットずれたときには、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3の画像のつなぎ目にある両ドットの光量を3/4(75%)にすればよい。
なお、光量を制御しようとするドットの周囲に画像データが存在しないときには、光量の制御を行わないこともできる(図10D)。これにより、画像のつなぎ目に線画像等があったときに、その画像が細くなるのを防止できる。
【0057】
これら2つの位置ずれ補正手段は、ユーザーの都合に合わせて適宜選択すればよい。例えば、第1と第2のLEDプリントヘッド2、3を移動させるアクチュエータなどの送り機構の設置が不都合であるときは、画像のつなぎ目の光量を制御する補正手段を用いればよい。
【0058】
なお、本発明は、以上説明した画像形成装置GにおけるLEDプリントヘッド2、3のずれ量検出方法の各工程を、コンピュータで実行させるためのプログラムとして実現することもできる。また、このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、又はMO等、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・帯電チャージャ、2・・・第1のLEDプリントヘッド、3・・・第2のLEDプリントヘッド、4・・・現像装置、5・・・転写チャージャ、6・・・分離チャージャ、7・・・クリーニングユニット、8・・・除電ランプ、9・・・感光体ドラム、10・・・濃度検知センサ、100・・・読取部、200・・・画像処理部、300・・・制御装置、301・・・CPU、302・・・ROM、303・・・RAM、400・・・操作部、500・・・書込部、501・・・プリントヘッド制御回路、G・・・画像形成装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特許第4019654号公報
【特許文献2】特開2007−38546公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ端部が主走査方向に互いにオーバーラップして配置され、感光体に潜像を形成する第1と第2のプリントヘッドと、
該第1と第2のプリントヘッドにより前記感光体上の前記オーバーラップ部分に形成されたパターンの画像濃度を測定する画像濃度測定手段と、
該画像濃度測定手段による前記オーバーラップ部分の画像濃度の測定結果と、前記第1と第2のプリントヘッドのずれ量に対応して予め設定した画像濃度の基準濃度データに基づき、前記第1と第2のプリントヘッドの主走査方向のずれ量を算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記第1と第2のプリントヘッドは、前記オーバーラップ部分の発光素子を所定数ごとに交互に点灯及び消灯させて前記感光体上のパターンを形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像形成装置において、
前記第1と第2のプリントヘッドの一方により前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する手段と、
該基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定して、前記画像濃度の基準濃度データを設定する手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記ずれ量に基づき、プリントヘッド同士の位置ずれを補正する手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記発光素子を交互に点灯及び消灯させる所定数を変更させる手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記第1と第2のプリントヘッドにより前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する手段と、
該第1と第2のプリントヘッドによる基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定する手段と、
該画像濃度の測定結果に基づき、前記第1と第2のプリントヘッドが形成したパターンの画像濃度の差を補正する手段と、
該補正後の画像濃度に基づき、前記画像濃度の基準濃度データを設定する手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記第1と第2のプリントヘッドは、前記感光体上のオーバーラップ部分のみに前記各パターンを形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載された画像形成装置において、
前記第1と第2のプリントヘッドは、前記画像濃度測定手段による画像濃度の測定範囲よりも広くオーバーラップして配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
プリントヘッドにより形成された感光体の潜像を現像して画像を形成する画像形成装置におけるプリントヘッドのずれ量検出方法であって、
それぞれ端部が主走査方向に互いにオーバーラップして配置され、感光体に潜像を形成する第1と第2のプリントヘッドにより、前記感光体上の前記オーバーラップ部分に所定のパターンを形成する工程と、
該オーバーラップ部分のパターンの画像濃度を測定する工程と、
該オーバーラップ部分のパターンの画像濃度の測定結果と、前記第1と第2のプリントヘッドのずれ量に対応して予め設定した画像濃度の基準濃度データに基づき、前記第1と第2のプリントヘッドの主走査方向のずれ量を算出する工程と、
を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、
前記所定のパターンを形成する工程は、前記第1と第2のプリントヘッドにより、前記オーバーラップ部分の発光素子を所定数ごとに交互に点灯及び消灯させて前記感光体上の所定のパターンを形成する工程を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、
前記第1と第2のプリントヘッドの一方により前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する工程と、
該基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定して、前記画像濃度の基準濃度データを設定する工程と、
を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、
前記ずれ量に基づき、プリントヘッド同士の位置ずれを補正する工程を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、
前記発光素子を交互に点灯及び消灯させる所定数を変更させる工程を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項14】
請求項9ないし13のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、
前記第1と第2のプリントヘッドにより前記オーバーラップ部分の発光素子を点灯又は消灯させ、前記感光体上に前記基準濃度データ用のパターンを形成する工程と、
該第1と第2のプリントヘッドによる基準濃度データ用のパターンの画像濃度を測定する工程と、
該画像濃度の測定結果に基づき、前記第1と第2のプリントヘッドが形成したパターンの画像濃度の差を補正する工程と、
該補正後の画像濃度に基づき、前記画像濃度の基準濃度データを設定する工程と、
を有することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法において、
前記第1と第2のプリントヘッドは、前記感光体上のオーバーラップ部分のみに前記各パターンを形成することを特徴とするプリントヘッドのずれ量検出方法。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれかに記載されたプリントヘッドのずれ量検出方法の各工程をコンピュータで実行させるためのプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−194684(P2011−194684A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63192(P2010−63192)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】