説明

画像形成装置、プロセスカートリッジおよび画像形成方法

【課題】印字パターンであるトナー層とベルトが直接接触することを防ぎ、転写性を向上させる。
【解決手段】色の異なる複数の像担持体と現像装置を有すプロセスユニットによって形成されたそれぞれのトナー像は、1次転写手段に転写され、前記一次転写手段上のトナー像が転写材に転写される2次転写手段を有する画像形成装置において、前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーによるトナー像を形成するプロセスユニットを前記1次転写手段の最上流に配置し、当該最上流に配置されるプロセスユニットと並列する次のプロセスユニットとの間にバイアス手段を設け、前記バイアス手段により前記最上流に配置されたプロセスユニットから形成されるトナー像に該トナーの正規帯電と同じバイアスを印加して前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーを前記1次転写手段に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、プロセスカートリッジおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式では、トナー画像を形成し中間転写方式により中間転写体にトナー画像を形成後に紙などの転写材に転写して定着することにより永久画像が得られていた。
【0003】
このような画像形成装置の中間転写方式では、画像を形成するのに用いられるトナーが、時間が経つこと(経時)によってトナー表層の外添剤が剥がれ、またトナーが割れて内包されるワックス成分がそのトナーの表層に染み出して劣化が起きていた。これによってトナーの中間転写体への付着が増え、トナーが中間転写体から転写材に静電力で移動する際に、中間転写体上の下層のトナーが中間転写体の転写ベルト上に残り、その結果、転写材上に移行したトナーにより、ぼそぼそとしたぼそつき画像となる問題があった。
【0004】
このような転写性を改善させて画像を向上させる発明として、特許文献1の発明が挙げられる。この特許文献1には、各色の画像の重ね合わせの精度を得るための各色の画像の位置補正に供する位置検出用のパターンを、光反射率が低い色の現像剤によるパターンでも、記録材担持体上に下敷き画像を要することなく形成して位置検出することを可能とし、これにより記録材の下敷き画像による裏汚れをなくした画像形成装置が記載されている。
【0005】
より詳細には、光に対する反射率がほとんどないブラックトナーによるレジスト合わせ用のパターンでも、他のマゼンタ、シアン、イエロートナーによるパターンと同様、転写ベルト上にブラックトナーによるパターンの下にたとえばイエロートナーによるベタの下敷き画像を要することなく形成して、位置検出することを可能とすることが記載されている。また、この特許文献の段落0016には、ブラックの直前のイエローステーション(第3ステーション)において、イエロートナーをベタで下敷き転写し、このイエロートナーを下敷き転写した特定のイエロー領域に、ブラックトナーによるレジストレーション補正(レジスト合わせ用)のパターンを重畳転写し、とあり、イエローステーションをブラックの直前に設けることが記載されている。
【0006】
また特許文献2には、耐摩耗性に優れた中間転写体を用いた場合に特有の異常画像の発生しない中間転写体を提供するために、中間転写ベルトの表面がフッ素含有ポリイミドを含み、そのフッ素含有ポリイミドが、特定の化合物の反応で生成されるポリイミド前駆体を、イミド化して得られたものであることが記載されている。さらに、この特許文献2には、中間転写ベルトは、導電体層と誘電体層の二層からなる中間転写媒体を備え、上記誘電体層は、厚みが5ないし30μmの溶剤可溶型フッ素樹脂であることが開示されている。この特許文献2の発明によってトナーの転写性が改善されて画質が向上したが、ベルトの材質が限られ、またコストの点で問題を残している。
【0007】
また特許文献3には、転写性を高める目的で、二次中間転写体上に透明の微粒子を塗布する機構を備え、トナー像が二次中間転写体に転写されるのに先立って透明な微粒子を塗布することで、二次中間転写体から転写材に転写する三次転写の転写効率を向上させ、色味の変動を防止する発明が開示されている。
【0008】
しかしながら、この発明でも、コストが上昇し、その上、装置の省スペース化に関し、未だ問題が山積している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、印字パターンであるトナー層とベルトとが直接接触することを防ぎ、転写性を向上させることにより画像の向上が図れるような画像形成装置、プロセスカートリッジおよび画像形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の解決手段を有する。
(1)像担持体と現像装置を有する色の異なるトナー毎のプロセスユニットが1次転写手段上に複数並列され、前記1次転写手段は複数のローラで張架された無端状のベルトで構成され、前記プロセスユニット毎の前記現像装置により前記プロセスユニット毎の各像担持体上にトナー像が形成され、前記トナー像は、前記1次転写手段に転写され、前記1次転写手段上のトナー像が転写材に転写される2次転写手段を有する画像形成装置において、
前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーによるトナー像を形成するプロセスユニットを前記1次転写手段の最上流に配置し、当該最上流に配置されるプロセスユニットと並列する次のプロセスユニットとの間にバイアス手段を設け、前記バイアス手段により前記最上流に配置されたプロセスユニットから形成されるトナー像に該トナーの正規帯電と同じバイアスを印加して前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーを前記1次転写手段に転写することを特徴とする。
(2)前記(1)に記載の画像形成装置において、前記最上流に配置したプロセスユニットのトナーはイエローであることを特徴とする。
(3)前記(1)または(2)に記載の画像形成装置において、前記最上流に配置したプロセスユニットの印字付着量は、印字パターンに該プロセスユニットのトナーを含まない部分の該トナーの付着量が、0.2g/m以上1.0g/m以下であることを特徴とする。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の画像形成装置において、前記1次転写バイアスを、最上流のプロセスユニットの像担持体の暗電位Vdと現像バイアスVbの絶対値の差が、正規のVdと正規のVbの絶対値の差よりも大きくなるように印加することを特徴とする。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の画像形成装置において、前記1次転写バイアスは、前記最上流のプロセスユニットの下流に位置するプロセスユニットの間に設けられる帯電付与部材であることを特徴とする。
(6)前記(5)に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材はスコロトロンであることを特徴とする。
(7)前記(5)に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材はゴムローラであることを特徴とする画像形成装置。
(8)前記(5)に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材は発泡ローラであることを特徴とする画像形成装置。
(9)前記(5)に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材はブラシであることを特徴とする画像形成装置。
(10)前記(1)から(9)のいずれかに記載の画像形成装置において、下流に位置するプロセスユニットの走行距離が所定の閾値を超えたときに、前記最上流のプロセスユニットによる印字をすることを特徴とする。
(11)前記(10)に記載の画像形成装置において、下流に位置するプロセスユニットの走行距離を算出する手段として、当該プロセスユニットに付帯したIDチップによって読み込むことを特徴とする。
(12)前記(10)に記載の画像形成装置において、下流に位置するプロセスユニットの走行距離を算出する手段として、当該プロセスユニットを駆動するモータの回転数から算出することを特徴とする。
(13)前記(1)から(12)のいずれかに記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジであって、当該プロセスカートリッジは前記(1)から(12)のいずれかに記載のプロセスユニットであって、前記画像形成装置の本体に着脱自在に装着可能なことを特徴とする。
(14)前記(1)から(12)のいずれかに記載の画像形成装置を用いて、転写材との明度差が最も小さい色のトナーによるトナー像にバイアスを印加して、前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーを前記画像形成装置の1次転写手段に転写する画像形成方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印字パターンであるトナー層とベルトが直接接触することを防ぎ、転写性を向上させて画質を向上することができる画像形成装置、この装置に装着可能なプロセスカートリッジおよび画像形成方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成装置の概略構成図である。
【図2】1次転写手段である無端ベルト上の最下層(無端ベルトと接触する層)として、転写材との明度差が最も小さい色のトナーが用いられ、その上に他の色のトナー像を積層したトナー像が転写された状態を示す図である。
【図3】図1と同様の構成を有する画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図4】最上流のイエロートナーの付着量を変えたときのブルーベタ画像の色味変化ΔEとの関係を示すグラフである。
【図5】VdとVbの絶対値の差分と、色味ΔEとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の画像形成装置に用いられる最上流に位置するプロセスユニットとその隣のプロセスユニット間に設けられる帯電付与部材として、スコロトロンを使用した構成例を示す図である。
【図7】同じく帯電付与部材として、ゴムローラを使用した構成例を示す図である。
【図8】同じく帯電付与部材として、発泡ローラを使用した構成例を示す図である。
【図9】同じく帯電付与部材として、導電ブラシを使用した構成例を示す図である。
【図10】プロセスカートリッジの走行距離と、制御の有無の組み合わせによる画像品質(ボソツキ)を確認した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明の画像形成装置の概略構成を示す。1はφ24の円筒形の感光体ドラム(以下、感光体と記載する)であり、周速120mm/sで回転している。感光体1の表面には帯電手段であるローラ形状の帯電器2が圧接されており、感光体1の回転により従動回転しており、図示しない高圧電源によりDCあるいはDCにACが重畳されたバイアスが印加されることで感光体1は一様に表面電位−500Vに帯電されている。なお上記説明中、感光体ドラムの大きさ、その周速、帯電されたときの表面電位の値などは例示であり、本発明の効果を得る範囲内であれば、その他の値でもよい。また後述する説明でも使用する数値等も同様である。
【0014】
続いて感光体1は前記した一様に帯電した感光体1上に、潜像形成手段である露光手段3により画像情報が露光光として照射されて露光され、静電潜像が形成される。この露光工程はレーザーダイオード(LD)素子から光変調を施されたレーザ光が感光体ドラム表面上で結像して照射されるようになっている。
【0015】
このレーザ光を走査することで所望する画像に対応して感光体ドラム1に潜像の書き込みが行われ、感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。
【0016】
4は現像手段である1成分接触現像器であり、図示しない高圧電源から供給される所定の現像バイアスによって、前記感光体1の静電潜像をトナー像として顕像化する。なお現像手段は2成分現像器を用いてもよい。
【0017】
10は感光体1、帯電器2、現像器4が一体化され作像手段を有するプロセスユニットであり、このプロセスユニットはプロセスカートリッジの形態であることが好ましい。このプロセスユニットの好ましい形態であるプロセスカートリッジは、本発明の画像形成装置本体に着脱自在に装着されることを特徴としている。
【0018】
好適なプロセスカートリッジ10としてはたとえば図1に示すように、転写ベルト15上に並列に4個配設され、フルカラー画像形成時はイエロー(10Y)、マゼンタ(10M)、シアン(10C)、ブラック(10Bk)の順で可視像(トナー像)を形成し、各色の可視像(各色のトナーによる像)が、当接される中間転写ベルト15に順次重ね転写されることでフルカラー画像が形成される。
【0019】
中間転写ベルト(1次転写ベルト:1次転写手段)15は、駆動兼2次転写対向ローラ21(後述)、金属製のクリーニング対向ローラ16、1次転写ローラ5(後述)、テンションローラ20(後述)により張架され、図示しない駆動モータにより駆動ローラ21を介して回転駆動されるようになっている。なおベルト張力としてテンションローラ20の両側にばねにより加圧している。テンションローラ20はΦ19、幅231mmのアルミニウム製パイプであり、両端部にはφ22のフランジが圧入されベルト15の蛇行を規制する規制部材として機能している(図示せず)。なお中間転写ベルト15の搬送方向は図1の矢印で示す向きである。
【0020】
駆動ローラ21は、ポリウレタンゴム(肉厚0.3〜1mm)、薄層コーティングローラ(肉厚0.03〜0.1mm)等が使用可能であるが、本実施形態の例では温度による径変化が小さいウレタンコーティングローラ(肉厚0.05、φ19)を使用する例を示す。
【0021】
1次転写部材5として、導電ブレードや導電スポンジローラ、金属ローラ等が使用可能であるが、本実施形態の例ではφ8の金属ローラを用い、感光体1に対して中間転写ベルト15の移動方向に8mm、垂直上方向に1mmオフセット配置させた。感光体1に対して1次転写ローラ5に図示しない単独の高圧電源により所定の転写バイアスを共通に印加させることで中間転写ベルト15を介して転写電界を形成し、感光体1上のトナー画像を中間転写ベルト15に転移させる。
【0022】
17はトナーマークセンサ(TMセンサ)であり、TMセンサは発光素子と受光素子の組み合わせで正反射型や拡散型センサによってベルト15上のトナー像濃度、各色位置測定をおこない、画像濃度や色合わせを調整する。
【0023】
32は中間転写ベルトクリーニングユニットであり、クリーニングブレード31により中間転写ベルト15上の転写残トナーを掻き取ることでクリーニングをおこなう。クリーニングブレードは、厚さ1.5〜3mm、ゴム硬度(JIS A)65〜80°のウレタンゴムの材質のものを使用し、中間転写ベルト15に対してカウンタ方向に当接させている。掻き取られた転写残トナーは図示しないトナー搬送経路を通り中間転写体用廃トナー収納部33に収納される。ベルト15のクリーニングニップ部に該当する部分、あるいはクリーニングブレード31のエッジ部の少なくとも一方は、組み付け時に、潤滑剤、トナー、ステアリン酸亜鉛等の塗布剤が塗布されて、クリーニングニップ部におけるブレード捲れ上がりを防止するとともに、クリーニングニップ部にダム層を形成しクリーニング性能を高めている。
【0024】
なお、中間転写ベルト15を張架している各ローラは、図示しない中間転写ベルトユニット側板によって中間転写ベルト15の両側より支持されている。
【0025】
中間転写ベルト15としては、PVDF(フッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、TPE(熱可塑性エラストマー)等にカーボンブラック等の導電性材料を分散させ樹脂フィルム状にしたエンドレスベルトが用いられる。本実施形態では、引張弾性率1000〜2500MPaで厚さ90〜160μm、幅230mmのベルトを用いた。
【0026】
25は2次転写ローラである。2次転写ローラ25はたとえばφ6のSUS等の金属芯金に、導電性材料によって106〜1010Ωの抵抗値に調整されたウレタン等の弾性体が被覆され、φ19、幅222mmに構成されている。その材料としては、イオン導電性ローラ(ウレタン+カーボン分散、NBR(二トリルゴム)、ヒドリン)や電子導電タイプのローラ(EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等が用いられるが、本実施例ではφ20、アスカーC硬度35〜50°のウレタンローラを用いた。ここで、2次転写ローラ25の抵抗値が前記範囲を超えると電流が流れ難くなるため、必要な転写性を得る為にはより高電圧を印加しなければならなくなり、電源コストの増大を招く。また、高電圧を印加する必要が生じるため、転写部ニップ前後の空隙で放電が起こり、ハーフトーン画像上に放電による白ポチ抜けが発生する。これは低温低湿環境(例えば10℃15%RH(相対湿度))において顕著となる。逆に、2次転写ローラ25の抵抗値が前記範囲を下回ると同一画像上に存在する複数の色画像部(例えばY、M、Cの3色重ね像)と単色画像部との転写性が両立できなくなる。これは、2次転写ローラ25の抵抗値が低い為、比較的低電圧で単色画像部を転写するのに十分な電流が流れるが、複数の色画像部を転写するには単色画像部に最適な電圧よりも高い電圧値が必要となる。このため、複数の色画像部を転写できる電圧に設定すると単色画像では転写電流過剰となり転写効率の低減を招くからである。
【0027】
転写材22は、中間転写ベルト15面のトナー画像先端部が2次転写位置に到達するタイミングに合わせて給紙搬送ローラ23、レジストローラ対24によって給紙され、図示しない高圧電源により所定の転写バイアスが印加されることで中間転写ベルト15上のトナー画像が転写材22に転移する。本構成において、給紙は縦型パスをとっている。転写材22は2次転写対向ローラ21の曲率によって中間転写ベルト15から分離され、転写材22に転写されたトナー画像は定着手段40によって定着された後に排紙される。
【0028】
図2は本発明の重要な特徴部分を説明するための概要図である。15は1次転写手段としての中間転写ベルトであり、図2の左側の図はベルト15上に5層からなる3色重ねによるトナー層が転写され、また右側の図は4層からなるトナー層からなる2色重ねによるトナー層が転写されていることを示している。これらのトナー層の最下層のトナーは、紙などの転写材との明度差が最も小さいトナーが用いられている。ベルト15の最下層には最上流側のプロセスカートリッジで転写されたトナー201が最下層として形成されており、その上に下流のプロセスカートリッジで転写されたトナー層202が積層されて乗っていることを示している。トナー201がベルトとトナー層202の間に入ることで、紙などの転写材に転写する際にトナー層202とベルト15のトナーとの間に付着力は働かず、よって転写性が向上する。また、最下層のトナー201が転写材に転写されたとしても転写材との明度差が小さいため色味の変化は極めて少ない。なお明度差が最も小さいトナーによるトナー像形成手段を有するプロセスユニット(プロセスカートリッジ)は、1次転写手段上の最上流に配置されている。
【0029】
図3は図1と同様の構成を有する画像形成装置であり、最上流のプロセスカートリッジがイエローカートリッジとなっている。
【0030】
また図4は最上流のイエロートナーの付着量(最下層のトナー層の層の数の指標となるもの)を変えたときの青のベタ画像の色味変化ΔEとの関係を示すグラフである。ベルト上にブルーベタを付着量10g/m(g/m2をg/m^2と表記することがある)転写し、転写材上の色味の変化を定義する値としてΔEを用いて確認した。基準画像として新品の中間転写ベルトと新品のプロセスカートリッジの組み合わせにより転写したブルーベタを用いた。色味の評価基準としては色味の差分ΔEが、0〜1.5までを◎(非常に良好)、1.5〜3.0を(良好)、3.0〜4.5(わずかに不良)を△、4.5以上を×(不良)とした。イエロートナーの付着量が多くなるにつれてΔEも増加していき2g/mを越えたあたりで飽和する。ΔEが1.5以下はイエロートナーの付着量が0.2g/m以上1g/m以下であることがわかった。なおΔEは、
式 ΔE=((L0−L1+(a0−a1+(b0−b11/2
で算出される。
【0031】
ただし、上式中、L0、a0、b0は、基準色のL、a、b値であり、L1、a1、b1は、比較色のL、a、b値である。またブルー(青)を評価対象としたのは、ブルー構成色にイエローが入っていないため、色味の変化として考えたためである。
【0032】
本発明では、1次転写バイアスをトナーと同極性の−バイアスを印加することで、+帯電したトナーである、かぶりトナーを積極的に転写ベルト上に転写させる。このかぶりトナーは、2次転写時には転写材上には移らず、転写ベルト上に残るようにした。画像形成装置の構成自体は図1と同じである。
【0033】
本発明では、転写ベルト上に+帯電のトナーを転写するために、感光体上の暗電位Vdと現像バイアスVbの値を変更している。図5はVdとVbの絶対値の差分と、色味ΔEとの関係を示すグラフである。最上流のイエローカートリッジの現像バイアスは−250Vであり、感光体の暗電位は−500Vを基準として、付着量10g/mの青のベタ画像(ブルーベタ画像)の転写材上の色味の変化ΔEを確認した。VdとVbの絶対値の差(|Vd|−|Vb|)を大きくしていくと、感光体へ移る+荷電トナーが増加し、それに伴い転写ベルト上にも+荷電トナーが増えていく。VdとVbの絶対値の差の増加とともに色味の差も低減していることがわかる。つまり、VdとVbの絶対値の差を正規のVdと正規のVbの絶対値の差分(現像バイアスVbは−250V、感光体の暗電位Vdは−500Vであるから、正規のVdと正規のVbの絶対値の差分は250Vである)よりも大きくすることで色味の変化は抑えることが出来る(図5参照)。
【0034】
1次転写手段である無端状ベルト15上に設けられる最上流のプロセスユニットとその下流側のプロセスユニットとの間に設けられるバイアス手段としての具体的な帯電付与部材について、図6〜9を用いて次に説明する。
【0035】
図6〜9に+帯電付与部材の構成例を示す。図6〜9に示すそれぞれの帯電付与部材には、+バイアスを印加可能な構成としている。図6には、帯電付与部材としてスコロトロン81を使用した構成を例示している。また、図7には、帯電付与部材としてゴムローラ82を例示し、図8には帯電付与部材として発泡ローラ83を例示し、図9には帯電付与部材として導電ブラシ84を使用した構成を例示している。本発明の画像形成装置では、このようなバイアス手段により、前記した最上流に配置されたプロセスユニットから形成されるトナー像に、このトナーの正規帯電と同じバイアスを印加して、転写材との明度差が最も小さい色のトナーを、1次転写手段(中間転写ベルト15)に転写することを特徴としている。
【0036】
次に、前記最上流のプロセスユニットのトナーを下流側のプロセスユニットの印字部のベルト転写体の最下層に印字する制御をどのタイミングでするかについて説明する。本発明では、プロセスユニットにおけるトナーが経時で劣化したタイミングで印字要求された画像のデータをCTL(電荷輸送層:charge transport layer )で処理する際に、印字要求された画像パターンの位置に最上流のトナーを印字することとしている。ここで言うトナーの劣化とはトナー表層の外添材が、剥がれたりまたはトナーの中に埋没する結果、トナー同士の付着力が増加することを指す。そして、トナー劣化の指標として、プロセスカートリッジ(プロセスユニット)内の感光体(感光体ドラム)の走行距離を用いることとしている。本発明では、このような走行距離を得る手段(読取手段)としては、感光体ドラムの走行距離をプロセスカートリッジに具備したIDチップより読み取り、走行距離が予め決められた閾値を超えた場合にのみ、図10に示されているような前記制御をすることができる。このような走行距離は、たとえば感光体ドラムの走行距離を、プロセスカートリッジを駆動するモータの回転数より算出することができる。
【0037】
図10にプロセスカートリッジの走行距離と前記制御の有無の組み合わせによる画像品質(ボソツキ)を確認した結果を示す。使用したプロセスカートリッジの寿命は5000mである。
【0038】
ボソツキの指標としては新品のプロセスカートリッジでのブルーベタ画像の印字を基準にし、この基準との色味差ΔEを用いた。ボソツキに関しては、非常に良好◎、良好を○、わずかに不良を△、明らか不良を×とし、それに対応する色味差ΔEに関しては、0〜1.5までを◎、1.5〜3.0を○、3.0〜4.5を△、4.5以上を×とて評価した。ボソツキのレベルが非常に良好と判断できるΔE=1.5に着目してみると、制御なしの場合(図10の実線の部分を参照)、プロセスカートリッジの走行距離が1000mを越えたあたりからΔEが1.5を超えている。一方、制御ありの場合、ΔEの上昇傾きは小さくなりΔEが1.5を超えるのは2500mとなる。このように、制御することで転写性が向上し、トナー劣化に対する転写のロバスト性が向上したと言える。
【符号の説明】
【0039】
1 感光体
1Y イエローの感光体(最上流のプロセスユニット内の感光体)
2 帯電器
2Y イエローの帯電器(最上流のプロセスユニット内の帯電器)
3 露光手段(潜像形成手段)
4 現像器
5 1次転写部材
6 感光体クリーニングブレード
6Y イエローの感光体クリーニングブレード(最上流のプロセスユニット内の感光体クリーニングブレード)
8a〜8d 帯電付与部材(バイアス手段)
10 プロセスユニット(最上流のプロセスユニットの下流側に設けられたプロセスユニット)
10Y イエローのプロセスユニット(最上流のプロセスユニット)
15 中間転写ベルト
21 2次転写対向ローラ
22 転写材22
23 給紙搬送ローラ
24 レジストローラ対
25 2次転写ローラ
31 クリーニングブレード
32 中間転写ベルトクリーニングユニット
33 中間転写体用廃トナー収納部
40 定着手段
81 スコロトロン
82 ゴムローラ
83 発泡ローラ
84 導電ブラシ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開平11−143172号公報
【特許文献2】特開2004-191546号公報
【特許文献3】特開2007−187813号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と現像装置を有する色の異なるトナー毎のプロセスユニットが1次転写手段上に複数並列され、前記1次転写手段は複数のローラで張架された無端状のベルトで構成され、前記プロセスユニット毎の前記現像装置により前記プロセスユニット毎の各担持体上にトナー像が形成され、前記トナー像は、前記1次転写手段に転写され、前記1次転写手段上のトナー像が転写材に転写される2次転写手段を有する画像形成装置において、
前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーによるトナー像を形成するプロセスユニットを前記1次転写手段の最上流に配置し、当該最上流に配置されるプロセスユニットと並列する次のプロセスユニットとの間にバイアス手段を設け、前記バイアス手段により前記最上流に配置されたプロセスユニットから形成されるトナー像に該トナーの正規帯電と同じバイアスを印加して前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーを前記1次転写手段に転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1において、前記最上流に配置したプロセスユニットのトナーはイエローであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記最上流に配置したプロセスユニットの印字付着量は、印字パターンに該プロセスユニットのトナーを含まない部分の該トナーの付着量が、0.2g/m以上1.0g/m以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記1次転写バイアスを、最上流のプロセスユニットの像担持体の暗電位Vdと現像バイアスVbの絶対値の差が、正規のVdと正規のVbの絶対値の差よりも大きくなるようにバイアスを印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記1次転写バイアスは、前記最上流のプロセスユニットの下流に位置するプロセスユニットの間に設けられる帯電付与部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材はスコロトロンであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材はゴムローラであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項5に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材は発泡ローラであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項5に記載の画像形成装置において、前記帯電付与部材はブラシであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の画像形成装置において、下流に位置するプロセスユニット(プロセスカートリッジ)の走行距離が所定の閾値を超えたときに、前記最上流のプロセスユニットによる印字をすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置において、下流に位置するプロセスユニットの走行距離を算出する手段として、当該プロセスユニットに付帯したIDチップによって読み込むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項10に記載の画像形成装置において、下流に位置するプロセスユニットの走行距離を算出する手段として、当該プロセスユニットを駆動するモータの回転数から算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の画像形成装置用のプロセスカートリッジであって、当該プロセスカートリッジは請求項1から12に記載のプロセスユニットであって、前記画像形成装置の本体に着脱自在に装着可能なことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の画像形成装置を用いて、転写材との明度差が最も小さい色のトナーによるトナー像にトナーの正規帯電と同じバイアスを印加して、前記転写材との明度差が最も小さい色のトナーを前記画像形成装置の1次転写手段に転写することを特徴とする画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−22249(P2011−22249A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165531(P2009−165531)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】