説明

画像形成装置、及び、画像形成方法

【課題】記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合の画像の変化を低減させる。
【解決手段】記録媒体の表面を覆うために用いられるカバー部材の光学特性を取得する特性取得部201と、記録媒体に形成する画像の画像データを取得する画像取得部204と、カバー部材の光学特性に基づいて画像データを補正する画像補正部(γ補正カーブ導出部203、γ変換部205、及び、色変換部206)と、補正された画像データに基づいて画像を記録媒体に形成する画像形成部108とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに基づいて画像を記録媒体の表面に形成する画像形成装置、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、記録媒体の色に応じて、形成する画像の色を調整することにより、記録媒体の色の影響が低減された良好なカラーバランスの画像を記録媒体の表面に形成する装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この画像形成装置は、特許文献1に開示されているように、例えば、記録媒体の色情報を取得する色情報取得処理手段と、各色の画像濃度を設定するための変量を設定する変量設定処理手段と、色情報に基づいて変量を変更するための補正値を設定する補正値設定処理手段と、変量に従って画像を形成する画像形成処理手段とを有する構成となっている。この従来の画像形成装置は、画像のカラーバランスに対する記録媒体の色の影響を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−257960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像形成装置は、画像形成後の記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合に、カバー部材の光学特性の影響による、カバー部材を介して見た画像の画質の劣化を低減させることまではできない、という課題があった。
【0006】
そのため、従来の画像形成装置によって形成された画像は、記録媒体がカバー部材によって覆われた場合に、カバー部材の光学特性の影響を受けて、画像の画質が劣化し、画像が見え難くなってしまうことがあった。なお、「記録媒体がカバー部材によって覆われた場合」とは、例えば、記録媒体が写真用紙であり、その写真用紙がアルバムのポケットに入れられた場合等がある。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合の画像の画質の劣化を低減させる画像形成装置、及び、画像形成方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、第1発明は、画像データに基づいて画像を記録媒体に形成する画像形成装置であって、前記記録媒体の表面を覆うために用いられるカバー部材の光学特性を取得する特性取得部と、前記記録媒体に形成する画像の画像データを取得する画像取得部と、前記カバー部材の光学特性に基づいて前記画像データを補正する画像補正部と、前記補正された画像データを前記記録媒体に形成する画像形成部とを備える構成とする。
【0009】
この画像形成装置は、画像補正部がカバー部材の光学特性に基づいて画像データを補正する。そのため、この画像形成装置は、記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合に、画像の画質に対するカバー部材の光学特性の影響を低減させることができる。
【0010】
また、第2発明は、画像を光学的に読み取る機能を有する画像形成装置によって、画像データに基づいて画像を記録媒体に形成する画像形成方法であって、前記記録媒体を覆うことが予定されているカバー部材と、所定の値以上のコントラスト比を有する任意のパターンが付された標準サンプル媒体とに対し、当該カバー部材が当該標準サンプル媒体を覆うように配置された状態で、当該カバー部材を介して当該標準サンプル媒体のパターンを光学的に読み取ることによって、当該カバー部材の特性データとして、カバー透過RGB画像データを取得するカバー部材の特性データ取得工程と、前記カバー部材の特性データ取得工程によって取得されたカバー透過RGB画像データと、露出状態の前記標準サンプル媒体のパターンを光学的に読み取ることによって予め取得された標準サンプル媒体の基準特性データとに基づいて、画像データを補正するための補正用データを導出する導出工程と、前記導出工程で導出された前記補正データに基づいて、前記画像データを補正する補正工程と、前記補正工程によって補正された前記画像データを、印刷可能な色空間を表す画像データに変換する色空間変換工程と、前記色空間変換工程によって変換された前記画像データに基づいて、各色の画像を形成する画像形成工程とを有する構成とする。
【0011】
この画像形成方法は、カバー部材の光学特性に基づいて画像データを補正する。そのため、この画像形成方法は、記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合に、画像の画質に対するカバー部材の光学特性の影響を低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合の画像の変化を低減させる画像形成装置を提供することができる。
また、第2発明によれば、記録媒体の表面がカバー部材によって覆われる場合の画像の変化を低減させる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る画像形成装置の全体の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係る画像形成装置の機能手段の構成を示す図である。
【図3】実施形態1に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態1に係る画像形成装置のカバー部材の特性データ取得時の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態1で用いる基準色票の構成を示す図である。
【図6】実施形態1で用いる基準色票のRedチャネルのヒストグラムの一例を示す図である。
【図7】実施形態1で用いる特性データ・基準特性データの参照テーブルの構成を示す図である。
【図8】γ補正カーブの一例を示す図である。
【図9】実施形態2に係る画像形成装置の機能手段の構成を示す図である。
【図10】実施形態2に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施形態2に係る画像形成装置の画像強調処理時の動作を示すフローチャートである。
【図12】実施形態2で用いる強調レベルの一例を示す図である。
【図13】実施形態2に係る画像形成装置による文字強調効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
以下、図1及び図2を参照して、本実施形態1に係る画像形成装置の構成につき説明する。ここでは、本実施形態1に係る画像形成装置100として、デジタルカラー複合機を想定して説明する。なお、図1は、本実施形態1に係る画像形成装置の全体の構成を示す図である。また、図2は、実施形態1に係る画像形成装置の機能手段の構成を示す図である。図1は、本実施形態1に係る画像形成装置の全体の構成を、また、図2は、その機能手段の構成を示している。
【0016】
(画像形成装置の全体の構成)
本実施形態1に係る画像形成装置としてのデジタルカラー複合機100は、プリンタにファクシミリ機能や、スキャナ機能、コピー機能等を付加した装置である。
【0017】
図1に示すように、デジタルカラー複合機100は、スキャナ部101、RAM102、ROM103、CPU104、オペレーションパネル105、HDD106、外部I/F107、及び、プリンタ部(画像形成部)108を備えている。
【0018】
スキャナ部101は、図示せぬ記録媒体(原稿)の画像を光学的に読み取る読取部である。スキャナ部101は、図示せぬ原稿載置台、自動原稿搬送機構、光源、受光素子、信号処理部を備えている。
【0019】
スキャナ部101は、ユーザが原稿を原稿載置台又は自動原稿搬送機構にセットして画像読取を指示することにより、原稿の画像を光学的に読み取る。このとき、スキャナ部101は、原稿が原稿載置台にセットされていれば、光源が原稿載置台にセットされた原稿に光を照射し、受光素子がその反射光を受光して原稿の画像信号を信号処理部に出力する。一方、スキャナ部101は、原稿が自動原稿搬送機構にセットされていれば、原稿が画像読取用に設けられた窓部を通過するように、自動原稿搬送機構が原稿を搬送するとともに、光源が自動原稿搬送機構によって搬送された原稿に光を照射し、受光素子がその反射光を受光して原稿の画像信号を信号処理部に出力する。この後、スキャナ部101は、信号処理部が原稿の画像信号に対してA/D変換等の信号処理を行う。これにより、スキャナ部101は、赤(Red;R)、緑(Green;G)、及び青(Blue;B)の色毎に、原稿のRGB画像データを取得する。
【0020】
なお、デジタル複合機100は、ユーザが、原稿の代わりに、記録媒体を覆うために用意されたカバー部材を原稿載置台又は自動原稿搬送機構にセットした場合に、原稿のRGB画像データの代わりに、カバー部材の光学特性を取得する。本実施形態では、カバー部材の光学特性は、カバー部材の透過特性であるものとして説明する。ここでは、「カバー部材の透過特性」は、カバー部材によって覆われた状態(被覆状態)で測定された標準サンプル媒体の反射特性を意味しているものとして説明する。「カバー部材の透過特性」は、カバー部材によって標準サンプル媒体を覆い、その状態で、カバー部材を介して標準サンプル媒体の反射特性を測定することによって取得される。
【0021】
例えば、本実施形態1では、ユーザが、図5(a)に示す基準色票501を原稿載置台の上にセットし、さらに、図5(b)に示すカバー部材502を基準色票501の上にセットして、基準色票501をカバー部材502で覆った状態とし、スキャナ部101に画像読取を指示するものとする。
【0022】
なお、「基準色票501」とは、カバー部材502の光学特性(ここでは、透過特性)を測定するために予め用意された標準サンプル媒体を意味している。また、「カバー部材502」とは、記録媒体を覆うことが予定されている部材を意味している。
【0023】
スキャナ部101は、スキャナ部101と基準色票501との間にあるカバー部材502を介して基準色票501の画像を読み取る。これにより、スキャナ部101は、カバー部材502を透過した基準色票501のRGB画像データ(以下、「カバー透過RGB画像データ」と称する)を取得する。デジタル複合機100は、スキャナ部101によって取得されたカバー透過RGB画像データの光学特性(主に、RGBの各色のヒストグラム特性)を特性取得部201(図2参照)によって解析する。これにより、デジタル複合機100は、カバー部材502の光学特性を取得する。
【0024】
RAM102は、揮発性のメモリである。RAM102は、スキャナ部101によって取得されたRGB画像データを一時的に保存する。
【0025】
ROM103は、読み出し専用のメモリである。ROM103は、各部の動作制御や画像補正処理等を行うための各種の制御プログラムを格納する。
【0026】
CPU104は、RAM102をワーキングメモリとし、ROM103に格納された制御プログラムを実行する演算手段である。
【0027】
オペレーションパネル105は、各種のオペレーションを実行するための操作部である。オペレーションパネル105は、図示せぬテンキーや、選択キー、読取開始ボタン、液晶ディスプレイ、タッチパネル等が設けられている。オペレーションパネル105は、ユーザの操作により、画像読取の開始や中断、各種設定の選択操作等を実行する。
【0028】
HDD106は、データの読み出し及び書き込みが自在な記録装置である。HDD106は、RGB画像データや設定項目を保存する。なお、デジタルカラー複合機100は、HDD106の代わりに、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶手段を用いることもできる。
【0029】
外部I/F107は、外部装置との電気的な接続を行う外部通信部である。外部I/F107は、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格のI/Fや、ネットワークI/Fとして構成されている。外部I/F107は、デジタルカラー複合機100と外部装置であるパーソナルコンピュータ(PC)109(又は、外部メディア)とを接続する。
【0030】
プリンタ部108は、記録媒体に画像を形成する画像形成部である。プリンタ部108は、例えば、電子写真方式のページプリンタ機構として構成されている。プリンタ部108は、スキャナ部101によって取得されたRGB画像データ又はPC109が送信したRGB画像データに基づいて、画像を形成する。その際に、デジタルカラー複合機100は、RGB画像データを各色の現像剤(例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)、及び、黒(K)の各色のトナー)で表現可能なCMYK画像データに変換し、プリンタ部108によってCMYK画像データに基づいて各色の現像剤像(トナー像)を記録媒体の表面に形成する。
【0031】
(画像形成装置の機能手段の構成)
デジタルカラー複合機100は、CPU104がRAM102をワーキングメモリとしてROM103に格納された制御プログラムを実行することにより、各部における通信制御や、書き込み制御、画像処理等の演算を実行する。
【0032】
図2に、CPU104の内部の機能を示す。図2に示すように、CPU104は、特性取得部201、基準特性記憶部202、γ補正カーブ導出部203、画像取得部204、γ変換部205、色変換部206、及び、画像形成制御部207として機能している。CPU104は、ROM103に格納された制御プログラムを実行することにより、これらの各機能を実現する。なお、本実施形態1では、γ補正カーブ導出部203、γ変換部205、及び、色変換部206は、特許請求の範囲に記載されている「画像補正部」を構成している。
【0033】
(特性取得部)
特性取得部201は、記録媒体の表面を覆うことが予定されているカバー部材502(図5(b)参照)の光学特性(ここでは、カバー部材502の透過特性(すなわち、カバー部材502を介して測定された基準色票501の反射特性))を取得する機能手段である。特性取得部201は、スキャナ部101と電気的に接続されており、スキャナ部101からカバー透過RGB画像データ(すなわち、カバー部材502を透過した基準色票501のRGB画像データ)を取得する。そして、特性取得部201は、そのカバー透過RGB画像データの、RGBの各色のヒストグラム特性を解析することにより、カバー部材502の光学特性を取得する。
【0034】
(基準特性記憶部)
基準特性記憶部202は、露出した状態の基準色票501(図5(a)参照)のRGBの各チャネル別の反射特性を表すヒストグラム特性データ(以下、「基準特性データ」と称する)が予め記憶される記憶手段である。「基準特性データ」は、露出した状態の基準色票501のRGB画像データから取得される。
【0035】
「露出した状態の基準色票501のRGB画像データ」は、図5(a)に示すように、基準色票501がカバー部材502(図5(b)参照)によって覆われることなく露出した状態でスキャナ部101の図示せぬ原稿載置台の上にセットされ、スキャナ部101が画像読取を実行することにより、又は、基準色票501がスキャナ部101の図示せぬ自動原稿搬送機構にセットされ、スキャナ部101が画像読取を実行することにより、取得される。このとき、スキャナ部101は、図示せぬ光源が基準色票501に光を照射し、図示せぬ受光素子がその反射光を受光して基準色票501の画像信号を図示せぬ信号処理部に出力する。この後、スキャナ部101は、図示せぬ信号処理部が基準色票501の画像信号に対してA/D変換等の信号処理を行う。これにより、スキャナ部101は、露出した状態の基準色票501のRGB画像データを取得する。
【0036】
なお、前記した「基準特性データ」は、特性取得部201が、スキャナ部101から「露出した状態の基準色票501のRGB画像データ」を取得して、そのRGB画像データを解析し、RGBの各チャネル別の露出した状態の基準色票501のヒストグラム特性を求めることにより、取得される。
【0037】
特性取得部201は、基準特性データを取得すると、取得された基準特性データを基準特性記憶部202に記憶させる。なお、図2に示す例では、基準特性記憶部202は、RAM102の中に設けられているが、HDD106(又は、図示せぬフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶手段)の中であってもよい。
【0038】
(γ補正カーブ導出部)
γ補正カーブ導出部203は、RGBの各色の画像信号に対するγ補正カーブを決定する機能手段である。γ補正カーブ導出部203は、特性取得部201によって取得されたカバー部材502の特性データと基準特性記憶部202に予め記憶された基準特性データとの差分に基づいて、RGBの各色の画像信号に対するγ補正カーブを決定する。このとき、γ補正カーブ導出部203は、被覆状態におけるγ補正後の画像の見え方が、露出状態におけるγ補正前の画像の見え方と同等になるように、RGBの各色の画像信号に対するγ補正カーブを決定する。
【0039】
なお、「被覆状態」とは、画像が形成された記録媒体や標準サンプル媒体である基準色票501等の媒体が、カバー部材502によって覆われた状態を意味している。また、「露出状態」とは、画像が形成された記録媒体や標準サンプル媒体である基準色票501等の媒体が、カバー部材502によって覆われていない状態を意味している。
【0040】
(画像取得部)
画像取得部204は、記録媒体に形成する画像データを取得する機能手段である。画像取得部204は、外部I/F107を介してPC109からRBG画像データ(以下、「入力RGB画像データ」と称する)を取得する。
【0041】
なお、ここでは、画像取得部204は、外部I/F107を介して外部メディア又は外部装置から入力RGB画像データを取得するものとして説明する。しかしながら、画像取得部204は、スキャナ部101からスキャナ部101によって読み取られた原稿のRGB画像データを入力RGB画像データとして取得するようにしてもよく、さらには、スキャナ部101によって読み取られた原稿のRGB画像データに対して各種の画像処理が施された画像処理後のRGB画像データを入力RGB画像データとして取得するようにしてもよい。
【0042】
(γ変換部)
γ変換部205は、入力RGB画像データの各RGB値に対してγ変換を施す機能手段である。γ変換部205は、γ補正カーブ導出部203によって求められたγ補正カーブに基づいて、入力RGB画像データの各RGB値に対してγ変換を施すことにより、出力RGB画像データを生成する。
【0043】
(色変換部)
色変換部206は、プリンタ部108で各色の現像剤像として記録媒体の表面に形成するCMYK画像データを生成する機能手段である。「CMYK画像データ」は、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)、及び、黒(K)の各色のドットパターンを表す画像データである。色変換部206は、γ変換部205によって生成された出力RGB画像データを、CMYKの色毎にドットパターン化された画像データに変換することにより、CMYK画像データを生成する。
【0044】
(画像形成制御部)
画像形成制御部207は、プリンタ部108に画像形成処理を実行させる機能手段である。画像形成制御部207は、色変換部206によって生成されたCMYK画像データに対して階調補正処理を施し、その階調補正処理が施されたCMYK画像データに基づいてプリンタ部108を作動させる。これにより、画像形成制御部207は、プリンタ部108に、各色の現像剤による図示せぬ記録媒体の表面への画像形成処理を実行させる。
【0045】
<画像形成装置の動作>
以下、図3及び図4を参照して、本実施形態1に係る画像形成装置の動作につき説明する。図3は、実施形態1に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。図4は、実施形態1に係る画像形成装置のカバー部材の特性データ取得時の動作を示すフローチャートである。
【0046】
なお、各データは、記憶部(RAM102又はHDD106(図1参照))に読み出し自在に一旦格納されてから、その後の処理を行う所要の構成要素に出力される。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
【0047】
ここでは、まず、ユーザが、基準色票501(図5(a)参照)をスキャナ部101の図示せぬ原稿載置台の上にセットし、さらに、カバー部材502(図5(b)参照)を基準色票501の上にセットして、基準色票501をカバー部材502で覆った状態とする。なお、図5は、実施形態1で用いる基準色票の構成を示す図である。図5(a)は、基準色票501の構成を示しており、また、図5(b)は、カバー部材502がその基準色票501の上を覆っている状態を示している。図5に示す例では、基準色票501は、白色と黒色との2色に区分された領域からなるパターンが付された構成となっている。このパターンは、白色の画素の領域と黒色の画素の領域とが所定の値以上のコントラスト比となるように、形成されている。
【0048】
ユーザは、基準色票501とカバー部材502とをスキャナ部101の図示せぬ原稿載置台の上にセットすると、オペレーションパネル105を操作して、モードを特性取得モードに設定し、さらに、画像読取をデジタルカラー複合機100に指示する。
【0049】
すると、図3に示すように、デジタルカラー複合機100は、図示せぬ制御部が、これを検出して特性取得モードの設定を受け付ける(S105)。これに応答して、デジタルカラー複合機100は、特性取得モードに移行する。なお、「特性取得モード」とは、カバー部材502の特性データ(ここでは、透過特性データ)を取得するモードを意味している。
【0050】
デジタルカラー複合機100は、特性取得モードになると、スキャナ部101及び特性取得部201が作動して、カバー部材502の特性データを取得する(S110)。
【0051】
以下、図4を参照して、S110のカバー部材502の特性データ取得時の処理につき説明する。
【0052】
図4に示すように、S110では、デジタルカラー複合機100は、スキャナ部101が、スキャナ部101と基準色票501との間にあるカバー部材502を介して基準色票501の画像を読み取る。このとき、スキャナ部101は、図示せぬ光源がカバー部材502に対して光を照射し、図示せぬ受光素子がその反射光を受光してカバー部材502を透過した基準色票501の画像信号を図示せぬ信号処理部に出力する。この後、スキャナ部101は、図示せぬ信号処理部がカバー部材502を透過した基準色票501の画像信号に対してA/D変換等の信号処理を行う。これにより、スキャナ部101は、カバー透過RGB画像データ(すなわち、カバー部材502を透過した基準色票501のRGB画像データ)を取得する(S205)。
【0053】
スキャナ部101は、カバー透過RGB画像データを取得すると、取得されたカバー透過RGB画像データを特性取得部201に出力する。特性取得部201は、スキャナ部101からカバー透過RGB画像データを取得すると、取得されたカバー透過RGB画像データを解析して、カバー部材502の特性データとしてRGBの各チャネル別のヒストグラムを作成する(S210)。
【0054】
このとき、特性取得部201は、取得されたカバー透過RGB画像データの画素データを順次解析し、RGBの色別に、被覆状態の基準色票501のRGBの各色の輝度値の出現頻度を示すヒストグラム(図6に示す実線L2参照)を作成する。
【0055】
図6は、実施形態1で用いる基準色票のRedチャネルのヒストグラムの一例を示す図である。図6は、被覆状態の基準色票501のRedチャネルのヒストグラムを実線L2で示している。なお、図6は、露出状態の基準色票501のRedチャネルのヒストグラムも破線L1で示している。図6は、一例として、Redチャネルのヒストグラムのみを示しているが、Greenチャネル及びBlueチャネルも同様の形態となっている。
【0056】
特性取得部201は、被覆状態の基準色票501のヒストグラムを作成すると、RGBの色毎に、被覆状態の基準色票501のRGBの各色のヒストグラム(図6に示す実線L2参照)から、輝度値として0〜127の値を持つ画素(低輝度の画素)の平均輝度値「Bb」、及び、輝度値として128〜255の値を持つ画素(高輝度の画素)の平均輝度値「Wb」を求める(S215)。これによって、取得される低輝度の画素の平均輝度値「Bb」及び高輝度の画素の平均輝度値「Wb」が「特性データ」となる。
【0057】
図7は、実施形態1で用いる特性データ・基準特性データの参照テーブルの構成を示す図である。図7は、R(赤)、G(緑)、及び、B(青)の特性データとして、Rの低輝度の画素の平均輝度値「BbRed」、Rの高輝度の画素の平均輝度値「WbRed」、Gの低輝度の画素の平均輝度値「BbGreen」、Gの高輝度の画素の平均輝度値「WbGreen」、Bの低輝度の画素の平均輝度値「BbBlue」、Bの高輝度の画素の平均輝度値「WbBlue」を示している。図7中、各数値は、各平均輝度値に対応する0〜255の階調の値を示している。
【0058】
特性取得部201は、取得された特性データBb(BbRed,BbGreen,BbBlue)及びWb(WbRed,WbGreen,WbBlue)を、図7に示すテーブルの形でHDD106に保存する(S220)。これにより、S110のカバー部材502の特性データ取得時の処理が終了する。このとき、特性取得部201は、S220で特性データBb及びWbをHDD106に保存すると、特性データBb及びWbをRAM102にも保存するようにしてもよい。
【0059】
なお、図7は、カバー部材502のR(赤)、G(緑)、及び、B(青)の基準特性データとして、Rの低輝度の画素の平均輝度値「BaRed」、Rの高輝度の画素の平均輝度値「WaRed」、Gの低輝度の画素の平均輝度値「BaGreen」、Gの高輝度の画素の平均輝度値「WaGreen」、Bの低輝度の画素の平均輝度値「BaBlue」、Bの高輝度の画素の平均輝度値「WaBlue」を示している。「基準特性データ」とは、前記した通り、RGBの各チャネル別の露出状態の基準色票501のヒストグラム特性を表すデータである。
【0060】
「基準特性データ」は、スキャナ部101及び特性取得部201が、事前に、特性データを取得する場合と同様に、以下のように動作することによって取得される。
【0061】
例えば、スキャナ部101は、基準色票501のみが図示せぬ原稿載置台の上に露出した状態でセットされており、その状態で画像読取を実行する。これにより、スキャナ部101は、露出状態の基準色票501のRGB画像データを取得する。スキャナ部101は、露出状態の基準色票501のRGB画像データを取得すると、特性取得部201に出力する。
【0062】
特性取得部201は、スキャナ部101から露出状態の基準色票501のRGB画像データが入力されると、露出状態の基準色票501のRGB画像データの画素データを順次解析し、RGBの色別に、露出状態の基準色票501の、RGBの各色の輝度値の出現頻度を示すヒストグラム(図6に示す点線L1参照)を作成する。
【0063】
特性取得部201は、露出状態の基準色票501のヒストグラムを作成すると、ヒストグラムに基づいて、RGBの色毎に、輝度値として0〜127の値を持つ画素(低輝度の画素)の平均輝度値「Ba」、及び、輝度値として128〜255の値を持つ画素(高輝度の画素)の平均輝度値「Wa」を求める。これによって、取得される低輝度の画素の平均輝度値「Ba」及び高輝度の画素の平均輝度値「Wa」が「基準特性データ」となる。
【0064】
特性取得部201は、取得された基準特性データBa(BaRed,BaGreen,BaBlue)及びWa(WaRed,WaGreen,WaBlue)を、図7に示すテーブルの形でHDD106に保存する。なお、特性取得部201は、基準特性データBa及びWaをHDD106に保存すると、基準特性データBa及びWaをRAM102にも保存するようにしてもよい。
【0065】
図3に示すように、S110の後、デジタルカラー複合機100は、γ補正カーブ導出部203が、γ補正カーブを導出する(S115)。このとき、γ補正カーブ導出部203は、図7に示す、S110で取得されたカバー部材502の特性データBb(BbRed,BbGreen,BbBlue)及びWb(WbRed,WbGreen,WbBlue)とHDD106(又は、RAM102)に事前に保存されている基準特性データBa(BaRed,BaGreen,BaBlue)及びWa(WaRed,WaGreen,WaBlue)とに基づいて、RGBの各色のγ補正カーブを導出する。
【0066】
なお、一般的に、基準色票501に付されたパターンは、カバー部材502によって覆われると、コントラストが低下する。そのため、例えば、色がR(赤)の場合に、基準特性データ(BaRed,WaRed)とカバー部材502の特性データ(BbRed,WbRed)との関係は、BaRed<BbRed、WaRed>WbRedとなる。
【0067】
そこで、γ補正カーブ導出部203は、カバー部材502による影響を打ち消す方向、すなわち、記録媒体に形成された画像のコントラストを強める方向で、γ補正カーブ(図8参照)を導出する。
【0068】
図8は、γ補正カーブの一例を示す図である。図8は、入力値となる画像のRedチャネル値(入力R輝度値;BIN_Red,WIN_Red)と、入力値を置き換える出力値(出力R輝度値;BOUT_Red,WOUT_Red)との関係を示している。γ補正カーブ導出部203は、γ補正カーブとして、輝度値0〜127の範囲では、点(BIN_Red,BOUT_Red)と点(127,127)とを通る直線を導出し、また、輝度値127〜255の範囲では、点(127,127)と点(WIN_Red,WOUT_Red)とを通る直線を導出する。
【0069】
図8に示す例では、γ補正カーブ導出部203は、基準色票501に付されたパターンのコントラストがカバー部材502によって低下した場合に、(BIN_Red,BOUT_Red)=(BbRed,BaRed)とし、(WIN_Red,WOUT_Red)=(WbRed,WaRed)とすることにより、コントラストを元の画像の値に近づけるγ補正カーブを導出している。γ補正カーブ導出部203は、Greenチャネル及びBlueチャネルについても、同様にγ補正カーブを導出する。
【0070】
なお、γ補正カーブの導出方法は、これに限るものではなく、シグモイド型のコントラストカーブや、点(0,0)と点(255,255)とを通るスプライン補間曲線等を用いてもよい。
【0071】
画像取得部204は、外部I/F107を介してPC109から入力RGB画像データを取得する(S120)。画像取得部204は、入力RGB画像データを取得すると、入力RGB画像データをγ変換部205に出力する。
【0072】
γ変換部205は、画像取得部204から入力RGB画像データが入力されると、入力RGB画像データに対して、S115でγ補正カーブ導出部203によって導出されたγ補正カーブに基づいてγ変換を行う(S125)。これにより、γ変換部205は、出力RGB画像データを生成する。γ変換部205は、出力RGB画像データを生成すると、出力RGB画像データを色変換部206に出力する。
【0073】
なお、本実施形態1では、デジタルカラー複合機100は、S125のγ変換において、S115で導出されたγ補正カーブを利用している。しかしながら、デジタルカラー複合機100は、γ補正カーブを予め導出してHDD106に保存しておき、S125のγ変換で、そのγ補正カーブを利用するようにしてもよい。この場合に、例えば、デジタルカラー複合機100は、ユーザがオペレーションパネル105の選択画面を介してHDD106に保存されたγ補正カーブを選択する構成にしてもよい。
【0074】
色変換部206は、γ変換部205から出力RGB画像データが入力されると、出力RGB画像データを、プリンタ部108による印刷可能な色空間を表すCMYK画像データに変換する(S130)。色変換部206は、CMYK画像データを画像形成制御部207に出力する。
【0075】
画像形成制御部207は、色変換部206からCMYK画像データが入力されると、CMYK画像データに対して階調補正処理を施し、その階調補正処理が施されたCMYK画像データに基づいてプリンタ部108を作動させる。その結果、画像形成制御部207が、階調補正処理されたCMYK画像データに基づいて、各色の現像剤による図示せぬ記録媒体の表面への画像形成処理を、プリンタ部108に実行させる(S135)。これにより、デジタル複合機100は、一連の処理を終了する。
【0076】
このデジタル複合機100は、カバー部材502の光学特性に基づいて入力RGB画像信号にγ補正を施すことができる。そのため、デジタル複合機100は、例えば、画像形成後の記録媒体がカバー部材502によって覆われ、これにより、画像のコントラストが低下して見える場合であっても、画像のコントラストの低下分を補うように、コントラストを強めて形成(印刷)することができる。したがって、デジタル複合機100は、画像形成後の記録媒体がカバー部材502によって覆われる場合であっても、画像の良好なコントラストを保つことができる。
【0077】
以上の通り、実施形態1に係るデジタル複合機100によれば、画像形成後の記録媒体がカバー部材502によって覆われる場合に、画像補正部(γ補正カーブ導出部203、γ変換部205、及び、色変換部206)がカバー部材502の光学特性に基づいて画像データの濃度を補正することにより、画像の画質に対するカバー部材502の光学特性の影響を低減させることができる。そのため、デジタル複合機100によって形成された画像は、カバー部材502によって覆われた状態で閲覧される場合でも、画質が良好となり、鮮明に見える。
【0078】
[実施形態2]
<画像形成装置の構成>
以下、図9を参照して、本実施形態2に係る画像形成装置の構成につき説明する。図9は、実施形態2に係る画像形成装置の機能手段の構成を示す図である。
【0079】
図9に示すように、本実施形態2に係る画像形成装置としてのデジタル複合機100bは、実施形態1のデジタル複合機100(図2参照)と比較すると、CPU104が、γ補正カーブ導出部203及びγ変換部205の代わりに、強調レベル決定部901及び画像強調部902として機能する点で相違している。なお、本実施形態2では、強調レベル決定部901、画像強調部902、及び、色変換部206は、特許請求の範囲に記載されている「画像補正部」を構成している。
【0080】
強調レベル決定部901は、文字や線等の画素に対して視認性の低下を抑制するための強調レベルの強さを決定する機能手段である。強調レベル決定部901は、特性取得部201によって取得された特性データBb(BbRed,BbGreen,BbBlue)及びWb(WbRed,WbGreen,WbBlue)と、基準特性記憶部202によって保存されている基準特性データBa(BaRed,BaGreen,BaBlue)及びWa(WaRed,WaGreen,WaBlue)との差分に基づいて、文字や線等の視認性の低下を抑制するために、文字や線等に対して強調処理を施すレベル(以下、「強調レベル」と称する)を決定する。このとき、強調レベル決定部901は、被覆状態における強調処理後の画像の見え方が、露出状態における強調処理前の画像の見え方と同等になるように、文字や線等の画素に対する強調レベルを決定する。
【0081】
画像強調部902は、文字や線等の画素に対して強調処理を施した出力RGB画像データを生成する機能手段である。画像強調部902は、入力RGB画像データの中から文字や線等の領域を判別し、強調レベル決定部901で決定された強調レベルに応じて文字や線等の画素に対して強調処理を施し、これによって、出力RGB画像データを生成する。
【0082】
なお、強調レベル決定部901及び画像強調部902以外の構成要素は、実施形態1と同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0083】
<画像形成装置の動作>
以下、図10及び図11を参照して、本実施形態2に係る画像形成装置の動作につき説明する。図10は、実施形態2に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。図11は、実施形態2に係る画像形成装置の画像強調処理時の動作を示すフローチャートである。
【0084】
図10に示すように、本実施形態2のデジタル複合機100bの動作は、実施形態1のデジタル複合機100の動作と比較すると、S115の処理の代わりにS116の処理を実行する点、及び、S125の処理の代わりにS126の処理を実行する点で相違している。
【0085】
以下、本実施形態2のデジタル複合機100bの動作について、実施形態1のデジタル複合機100と相違する動作を重点的に説明し、実施形態1のデジタル複合機100と同様の動作(図3参照)については、前記した実施形態1のデジタル複合機100の動作をこの実施形態2のデジタル複合機100bの動作に読み替えるものとして、詳細な説明を省略する。
【0086】
図11に示すように、デジタル複合機100bは、実施形態1のデジタル複合機100と同様に、S105及びS110の処理(「特性取得モードの設定受付」処理及び「カバー部材の特性データの取得」処理)を実行する。
【0087】
そして、S110の後、デジタル複合機100bは、強調レベル決定部901が、S110で取得された特性データBb(BbRed,BbGreen,BbBlue)及びWb(WbRed,WbGreen,WbBlue)とHDD106(又は、RAM102)に事前に保存されている基準特性データBa(BaRed,BaGreen,BaBlue)及びWa(WaRed,WaGreen,WaBlue)とに基づいて、文字や線等の強調レベルを決定する(S116)。
【0088】
このとき、強調レベル決定部901は、高濃度(0〜127)側成分のカバー部材502の特性データBb(BbRed,BbGreen,BbBlue)から濃度値Dbを以下の(1)式で求める。
Db=1/(0.299×BbRed+0.587×BbGreen+0.114×BbBlue) …(1)
【0089】
同様に、強調レベル決定部901は、高濃度(0〜127)側成分の基準特性データBa(BaRed,BaGreen,BaBlue)から濃度値Daを以下の(2)式で求める。
Da=1/(0.299×BaRed+0.587×BbGreen+0.114×BbBlue) …(2)
なお、係数「0.299」、係数「0.587」、及び係数「0.114」は、実験によって導き出された値である。これらの係数は、許容誤差範囲を設けることにより、その範囲内で変動する。
【0090】
そして、強調レベル決定部901は、高濃度(0〜127)側成分のカバー部材502の特性データBbと高濃度(0〜127)側成分の基準特性データBaとの濃度値比Db/Daによって、例えば、図12に示すように、強調レベルを決定する。図12は、実施形態2で用いる強調レベルの一例を示す図である。
【0091】
なお、図12は、濃度値比Db/Daが「1以上」の場合の強調レベルを「0」とし、濃度値比Db/Daが「0.7以上(かつ、1未満)」の場合の強調レベルを「1」とし、濃度値比Db/Daが「0.5以上(かつ、0.7未満)」の場合の強調レベルを「2」とし、濃度値比Db/Daが「0.5未満」の場合の強調レベルを「3」とする例を示している。
【0092】
S116の後、デジタル複合機100bは、実施形態1のデジタル複合機100と同様に、S120の処理(「画像データ取得」処理)を実行する。
【0093】
そして、S120の後、デジタル複合機100bは、画像強調部902が、S116で決定された強調レベルに基づいて、S120で取得された入力RGB画像データに強調処理を施す(S126)。図11は、このS126の処理の詳細を示している。
【0094】
図11に示すように、まず、画像強調部902は、強調レベルが「0」であるか否かを判定する(S305)。
【0095】
S305の判定で、強調レベルが「0」であると判定された場合(“Yes”の場合)に、画像強調部902は、何も処理をせずに、画像強調処理を終了する。
【0096】
一方、S305の判定で、強調レベルが「0」でないと判定された場合(“No”の場合)に、画像強調部902は、公知の文字認識技術や像域分離技術を使用して、S120で取得された入力RGB画像データから、文字や線等の画素を抽出する(S310)。
【0097】
そして、画像強調部902は、S310で抽出された文字や線等の輪郭画素を黒に置換する(S315)。これにより、画像強調部902は、文字や線等の輪郭画素の強調処理を実行する。
【0098】
次に、画像強調部902は、強調レベルが「1」であるか否かを判定する(S320)。
【0099】
S320の判定で、強調レベルが「1」であると判定された場合(“Yes”の場合)に、画像強調部902は、何も処理をせずに、画像強調処理を終了する。
【0100】
一方、S320の判定で、強調レベルが「1」でないと判定された場合(“No”の場合)に、画像強調部902は、S310で抽出された文字や線等のすべての画素を黒に置換する(S325)。これにより、画像強調部902は、文字や線等の全画素に対する高濃度化の強調処理を実行する。
【0101】
次に、画像強調部902は、強調レベルが「2」であるか否かを判定する(S330)。
【0102】
S330の判定で、強調レベルが「2」であると判定された場合(“Yes”の場合)に、画像強調部902は、何も処理をせずに、画像強調処理を終了する。
【0103】
一方、S330の判定で、強調レベルが「2」でないと判定された場合(“No”の場合)に、画像強調部902は、S310で抽出された文字や線等のすべての画素に膨張処理を施し、文字や線等を太く加工する。これにより、画像強調部902は、文字や線等の画素に対する太線化の強調処理を実行する。
【0104】
このようにして、画像強調部902は、S126の画像強調処理を実行する。
S126の後、デジタル複合機100bは、実施形態1のデジタル複合機100と同様に、S130及びS135の処理(「色空間変換」処理及び「画像形成」処理)を実行する。
【0105】
このデジタル複合機100bは、図13に示すように、カバー部材502の光学特性に基づいて文字や細線等の画素に対して画像強調処理を施すことができる。図13は、実施形態2に係る画像形成装置による文字強調効果を示す図である。図13は、強調レベル3の文字強調処理による効果の一例を示している。図13(a)は、記録媒体1301が露出状態となっており、その記録媒体1301の表面に形成された画像の見え方を示している。また、図13(b)は、記録媒体1301が被覆状態となっており、かつ、文字強調処理が記録媒体1301の表面に形成された画像に施されていない場合の画像の見え方を示している。また、図13(c)は、記録媒体1302が被覆状態となっており、かつ、文字強調処理が記録媒体1302の表面に形成された画像に施されている場合の画像の見え方を示している。
【0106】
図13(b)に示すように、記録媒体1301は、文字強調処理が施されていないため、画像の濃度が低下し文字の視認性が悪くなる。
これに対して、図13(c)に示すように、記録媒体1302は、強調レベル3の強調処理で、文字や細線等の画素に対して高濃度化及び太線化の強調処理が施されているため、カバー部材502による濃度低下がある場合であっても、文字や線等の視認性を良好に保つことができる。
【0107】
以上の通り、実施形態1に係るデジタル複合機100bによれば、画像形成後の記録媒体がカバー部材502によって覆われる場合に、カバー部材502の光学特性に基づいて文字や線等の強調処理を実行するため、文字や線等の視認性を良好に保つことができ、これにより、画像の画質に対するカバー部材502の光学特性の影響を低減させることができる。そのため、デジタル複合機100bによって形成された画像は、カバー部材502によって覆われた状態で閲覧される場合でも、画質が良好となり、鮮明に見える。
【0108】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0109】
例えば、実施形態では、画像形成装置としてデジタルカラー複合機100を例にして説明したが、本発明は、ファクシミリ装置や、コピー機にも適用することができる。
【0110】
また、例えば、実施形態では、カバー部材502の特性データとしてヒストグラムの平均を用いたが、カバー部材502の特性データは、透過率、光沢度等の他の光学特性を用いることもできる。
【0111】
また、例えば、実施形態では、デジタルカラー複合機100は、カバー部材502で覆われた状態(被覆状態)で読み取られた基準色票501のRGB画像データとカバー部材502で覆われていない状態(露出状態)で読み取られた基準色票501のRGB画像データとの差分を利用することにより、カバー部材502の特性データを取得している。しかしながら、デジタルカラー複合機100は、カバー部材502の特性データを直接測定する測定手段を備え、その測定手段によってカバー部材502の特性データを取得するように構成されていてもよい。この場合に、測定手段は、例えば、カバー部材502の特性データとして、カバー部材502を透過する透過光を測定するように構成することもできる。
【0112】
また、例えば、実施形態2では、デジタルカラー複合機100bは、文字や線等の画素を強調することによって画像を強調しているが、文字サイズや文字のフォントを変更することによって画像を強調するように構成されていてもよい。
【0113】
また、例えば、実施形態2で用いた濃度値Dbの算出式(1)及び濃度値Dbの算出式(2)は、変更することができる。ただし、算出式を変更した場合は、算出式の変更に合わせて、図12に示す強調レベルの設定を変更する必要がある。
【符号の説明】
【0114】
100 デジタル複合機(画像形成装置)
101 スキャナ部
102 RAM
103 ROM
104 CPU
105 オペレーションパネル
106 HDD
107 外部I/F
108 プリンタ部(画像形成部)
109 PC(パーソナルコンピュータ)
201 特性取得部
202 基準特性記憶部
203 γ補正カーブ導出部
204 画像取得部
205 γ変換部
206 色変換部
207 画像形成制御部
501 基準色票
502 カバー部材
901 強調レベル決定部
902 画像強調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて画像を記録媒体に形成する画像形成装置において、
前記記録媒体の表面を覆うために用いられるカバー部材の光学特性を取得する特性取得部と、
前記記録媒体に形成する画像の画像データを取得する画像取得部と、
前記カバー部材の光学特性に基づいて前記画像データを補正する画像補正部と、
前記補正された画像データを前記記録媒体に形成する画像形成部とを備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記画像取得部は、原稿を光学的に読み取ることにより前記画像データを取得する画像読取部を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、
さらに、外部装置又は外部メディアから前記画像データを取得する外部通信部を備え、
前記画像取得部は、前記外部通信部を介して外部装置又は外部メディアから前記画像データを取得する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
さらに、事前に取得された前記カバー部材の光学特性を記憶する保存部を備え、
前記特性取得部は、前記保存部から前記カバー部材の光学特性を取得する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記カバー部材の光学特性は、標準サンプル媒体が前記カバー部材によって覆われた状態で測定された、当該標準サンプル媒体の被覆時の反射特性である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
さらに、前記標準サンプル媒体が前記カバー部材によって覆われずに露出している状態で測定された、前記標準サンプル媒体の露出時の反射特性を記憶する記憶部を備え、
前記画像補正部は、前記標準サンプル媒体の被覆時の反射特性と露出時の反射特性との差分に基づいて、前記画像データを補正する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記画像補正部は、前記画像データに対してγ補正を施す
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記画像補正部は、
標準サンプル媒体が前記カバー部材によって覆われた状態で測定された当該標準サンプル媒体の被覆時の反射特性と、当該標準サンプル媒体が前記カバー部材によって覆われていない状態で測定された当該標準サンプル媒体の露出時の反射特性とに基づいて、各色のγ補正カーブを導出し、
当該γ補正カーブに基づいて、被覆状態におけるγ補正後の画像の見え方が、露出状態におけるγ補正前の画像の見え方と同等になるように、前記画像データに対してγ補正を施す
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記画像補正部は、前記画像データの文字及び線を構成する画素に対して強調処理を施す
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置において、
前記画像補正部は、
標準サンプル媒体が前記カバー部材によって覆われた状態で測定された当該標準サンプル媒体の被覆時の反射特性と、当該標準サンプル媒体が前記カバー部材によって覆われていない状態で測定された当該標準サンプル媒体の露出時の反射特性とに基づいて、強調処理の対象となる画素毎に、各画素に対する濃度及び太さのいずれか一方又は双方を強調する強調レベルを決定し、
当該強調レベルに基づいて、被覆状態における強調処理後の画像の見え方が、露出状態における強調処理前の画像の見え方と同等になるように、強調処理の対象となる画素に対して強調処理を施す
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の画像形成装置において、
前記画像補正部は、
高濃度側成分の前記標準サンプル媒体の被覆時の反射特性から濃度値Dbと、高濃度側成分の前記標準サンプル媒体の露出時の反射特性から濃度値Daとを求め、濃度値比Db/Daに応じて、前記強調レベルを決定する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
画像を光学的に読み取る機能を有する画像形成装置によって、画像データに基づいて画像を記録媒体に形成する画像形成方法において、
前記記録媒体を覆うことが予定されているカバー部材と、所定の値以上のコントラスト比を有する任意のパターンが付された標準サンプル媒体とに対し、当該カバー部材が当該標準サンプル媒体を覆うように配置された状態で、当該カバー部材を介して当該標準サンプル媒体のパターンを光学的に読み取ることによって、当該カバー部材の特性データとして、カバー透過RGB画像データを取得するカバー部材の特性データ取得工程と、
前記カバー部材の特性データ取得工程によって取得されたカバー透過RGB画像データと、露出状態の前記標準サンプル媒体のパターンを光学的に読み取ることによって予め取得された標準サンプル媒体の基準特性データとに基づいて、画像データを補正するための補正用データを導出する導出工程と、
前記導出工程で導出された前記補正データに基づいて、前記画像データを補正する補正工程と、
前記補正工程によって補正された前記画像データを、印刷可能な色空間を表す画像データに変換する色空間変換工程と、
前記色空間変換工程によって変換された前記画像データに基づいて、各色の画像を形成する画像形成工程とを有する
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成方法において、
前記導出工程は、前記標準サンプル媒体のパターンのコントラストが前記カバー部材によって低下した場合に、コントラストを元の画像の値に近づけるγ補正カーブを導出するγ補正カーブの導出工程であり、
前記補正工程は、前記画像データに対して、前記γ補正カーブの導出工程によって導出されたγ補正カーブに基づいてγ変換を行うγ変換工程である
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
請求項12に記載の画像形成方法において、
前記導出工程は、画像を構成する各画素に対して、濃度及び太さのいずれか一方又は双方を強調するための強調レベルを決定する強調レベルの決定工程であり、
前記補正工程は、画素毎に、前記強調レベル決定工程によって決定された強調レベルに応じて各画素に対して強調処理を施す画像強調処理工程である
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−93404(P2012−93404A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238224(P2010−238224)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】