説明

画像形成装置、画像形成方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】画像検査装置でプリンターの出力画像のハロー現象を検査し、元画像に対してハロー現象の発生の度合いに応じた最適な補正を行って再印刷する。
【解決手段】画像検査装置104は、画像出力装置103から出力された印刷物を読み取り装置105により読み取った検査画像と、DFE102の元画像(正解画像)とを比較し、色差を検査する。色差が中程度のとき、中間調処理方法を変更することによりハロー現象を補正し、色差が大きいとき、補正制御部113は、元画像に対して色差に応じた画素値の補正処理を行ってハロー現象を補正する。画像出力装置103は、ハロー現象が補正された元画像を再印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロー現象を補正する画像形成装置、画像形成方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーフトーンの地肌画像上に高濃度の文字やベタ画像を形成する際に、文字やベタ画像の周辺の地肌部の濃度が低下するハロー現象は、印刷物の品質を低下させる。そこで、ハロー現象が発生した場合に、決定した補正値を適用して、濃度低下の範囲に応じて線形に補正することにより、ハロー現象を抑制する技術がある(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した補正方法では、プリントオンデマンドプリンターに装備された画像検査装置で出力画像のハロー現象を検査していないため、プリンターの経時変動に伴う様々なハロー現象に対応した最適な補正ができず、印刷物の品質が低下してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、画像検査装置でプリンターの出力画像のハロー現象を検査し、元画像に対してハロー現象の発生の度合いに応じた最適な補正を行って再印刷する画像形成装置、画像形成方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、出力用紙に印刷画像データを印刷して出力画像を得る画像出力手段と、前記印刷した出力画像を読み取った検査画像データと前記印刷画像データとを比較し、前記印刷した出力画像のハロー現象を検査する画像検査手段と、前記印刷画像データに対してハロー現象を補正する複数の補正手段と、前記画像検査手段が検査した出力画像のハロー現象の発生の度合いに応じた補正手段を、前記複数の補正手段から選択する選択手段とを備え、前記画像出力手段は、前記選択された補正手段により前記ハロー現象が補正された前記印刷画像データを再印刷することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、画像検査装置がプリンターの出力画像のハロー現象を検査し、元画像に対してハロー現象の発生の度合いに応じた最適な補正を行って再印刷しているので、ハロー現象が補正された印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の画像形成装置の全体構成を示す。
【図2】画像処理装置の構成を示す。
【図3】画像検査装置の構成を示す。
【図4】ハロー現象を説明する図である。
【図5】ハロー現象の発生の度合いに応じた色差を示す。
【図6】ハロー現象の画像を補正処理した画像を示す。
【図7】本発明の画像検査装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の画像形成装置の全体構成を示す。画像形成装置は、クライアントPC101と、デジタルフロントエンド(DFE)と呼ばれるプリントサーバー102と、画像出力装置103と、画像検査装置104からなる。
【0010】
クライアントPC101がプリントを指示すると、プリントサーバーDFE102は、プリンター言語の解析、画像の描画を行ない、最終的には、接続されている画像出力装置(プリンター)103が受け取れる出力ビット数にあったビットマップ画像を生成する。この実施例では、600dpiCMYKの8ビットのRIP画像データを生成し、この画像データが画像出力装置103に送られて印刷出力される。
【0011】
画像出力装置103は、一般的な電子写真方式の画像出力装置であり、画像出力装置103の画像形成部は、画像処理装置106、レーザー書き込み装置107、現像ドラム108、帯電装置109、現像装置110、中間転写ベルト111、定着装置112からなる。
【0012】
図2は、画像処理装置の構成を示す。画像処理装置106は、プリントサーバーDFE102から送られてきた画像データに対して、補正テーブルに従った補正を行うγ補正処理部201、中間調処理を行う中間調処理部202からなる。
【0013】
帯電装置109は、現像ドラム108の表面に所望の電荷を与える機能を持ち、その帯電量は帯電電位制御信号を制御することによって変えることができる。現像装置110は現像ドラム上にトナーを現像する機能を持ち、現像バイアスVbを現像バイアス制御信号によって変えることができる。レーザー書き込み装置107は画像信号に合わせて現像ドラム上に潜像を形成する機能を持ち、レーザー発光時の露光光量をLDパワー制御信号によって変えることができる。
【0014】
印刷出力された出力紙は、画像検査装置104に接続されている画像読み取り装置105によって画像情報が読み取られる。上記RIP画像データは正解画像として画像検査装置104にも転送されている。画像検査装置104では、このRIP画像データと画像読み取り装置105で読み取られた画像データを比較することで出力画像の検査を行なう。この検査は、定期的にすなわち印刷出力の枚数が所定枚数に達したときに自動的に実施される。
【0015】
図3は、画像検査装置104の構成を示す。画像読み取り装置105で読み取られた出力画像は、RGBデータとして出力され、このデータは色変換装置301でL*a*b*値に変換される。同時にDEF102から送られている正解画像データ(CMYK各8bit)は、色変換装置302でL*a*b*値に変換される。画像比較装置303は、この2つのデータを比較して、印刷された出力画像の注目画素の色差ΔEを検出する(注目画素の濃度低下を色差で検出する)。
ΔE=((L*−L*+(a*−a*+(b*−b*1/2
また、画像比較装置303は、色差ΔEから最大色差ΔEmaxも検出する。
【0016】
図4は、ハロー現象を説明する図である。図4(a)に示す、印刷対象の元画像のように、薄い色の背景に濃い同色のオブジェクトがある場合に、図4(b)に示す出力画像のように、オブジェクトの周りの濃度が低下して白い光輪状になる現象をハロー現象と呼ぶ。ハロー現象は、画像出力装置103を構成する、帯電装置109、現像装置110などの劣化により発生し、経時変動する。
【0017】
本発明では、画像検査装置104で検出した出力画像(ユーザー画像)の色差(検出結果)に基づいて、画像処理装置106の中間調処理部202が以下の第1の補正処理(1)の動作を制御し、プリントサーバーDFE102の補正制御部113が、以下の第2の補正処理(2)の動作を制御する。
【0018】
第1の補正処理(1)では、ハロー現象が発生しにくい中間調処理方法を選択する。ハロー現象は、ドットが安定する低線数でかつドットスクリーンの中間調処理を施すことにより改善される。そこで、適用されている中間調処理方法(例えば、ユーザーが図2の中間調処理202として高線数のラインスクリーン処理を選択)を、低線数でかつドットスクリーンの中間調処理に変更して出力することにより、ハロー現象を補正する。
【0019】
この方法は、中間調処理方法の変更のみであるので、印刷物の生産性は低下しないが、ハロー現象を最適に補正できない。
【0020】
第2の補正処理(2)では、元画像に対し、ハロー現象が発生しないような画像処理を施す。図4(c)の元画像に対して、図4(d)に示すように、濃い色のオブジェクトの周りのハロー現象の発生部分の背景の色を濃くするように補正処理を施すことにより、ハロー現象を補正する。この補正処理方法は、前掲した特許文献1に記載の方法を基本とするが、前述したように不十分な処理方法である。
【0021】
本発明では、画像検査装置104が、出力画像のハロー現象を検査し、画像検査装置104で検出される色差ΔEに基づき、プリンターの経時変動に伴う様々なハロー現象を最適に補正する。
【0022】
画像検査装置104で検出される色差ΔEに基づき、プリンターの経時変動に伴う様々なハロー現象を最適に補正する方法を以下、説明する。
【0023】
プリンターの経時変動に伴うハロー現象は様々に変化し、図4(e)、(f)に示すように、濃度が低下して白くなる部分の長さが異なる場合や、図4(g)、(h)に示すように、白くなる部分の長さが同じでも濃度が異なる場合など様々である。
【0024】
図5は、ハロー現象の画像に対する、図4の(e)〜(h)におけるΔEのグラフを示す。図5のグラフに示すように、ΔEの形状により様々なハロー現象を確認できる。
【0025】
本発明では、ΔEに基づいて、図4(d)に示すようにハロー現象を回避する画像処理を元画像の各画素に対して施すことにより、ハロー現象を補正する。
【0026】
式1は、ハロー現象を補正する式を示す。
注目画素の補正画素値=注目画素の元画素値+(オブジェクト部元画素値
−背景部元画素値)×(ΔE/ΔEmax)×k 式1
ここで、ΔEmaxは、ハロー現象が発生している領域の最大色差であり、kは、0(補正効果なし)から1(最大補正量)を範囲とする補正係数であり、ハロー現象の補正の程度に応じて、ユーザーが自由に設定可能な係数である。
【0027】
図6は、図5のハロー現象の画像に対して、式1(k=0.5)の補正処理を適用した画像を示す。ΔEに応じてハロー現象が発生している部分の画素値を増やす処理により、ハロー現象の発生の度合いに応じた最適な補正を実施することができる。ただし、この補正処理では、元画像を変更することから、印刷物の生産性が低下する。
【0028】
図7(a)は、図3の画像検査装置104に追加構成される、本発明の画像検査装置104の構成を示し、画像検査装置104の選択部401は、図7(b)に示すテーブルを参照し、色差ΔEの大きさに応じて、第1の補正処理(1)または第2の補正処理(2)を選択し、動作を制御する(○が実行を示す)。402は、図7(b)のテーブルが記憶されているテーブル記憶部である。
【0029】
図7(b)において、色差の小/中/大は以下の通りである。
0<ΔE≦3.2 色差「小」
3.2<ΔE≦6.5 色差「中」
6.5<ΔE 色差「大」
【0030】
・色差が小さい場合
色差ΔEが3.2以内であれば、ハロー現象は目立たないためハロー補正処理は実行しない。
・色差が中程度の場合
色差ΔEが6.5以内であれば、ハロー現象は若干目立つ程度であり、第1の補正処理(1)により十分に補正できるので、生産性を低下させないことを重視して、第1の補正処理を実行する。すなわち、前述したように、ユーザーが使用している中間調処理方法を変更して出力することにより、ハロー現象を補正する。
・色差が大きい場合
色差ΔEが6.5以上であれば、ハロー現象は相当目立つ状態であり、第1の補正処理(1)では補正できないので、第2の補正処理(2)を実行する。すなわち、プリントサーバーDFE102の補正制御部113は、注目画素の元画素値に対して、上記した式1による画素値の補正処理を行って、ハロー現象を補正する。
【0031】
上記したように印刷物を出力し、その色差を検査した結果、色差が中程度/大きい場合には、DFE102内にある元画像に対して、上記した第1/第2の補正処理(1)/(2)を行い、再度、画像出力装置103から、ハロー現象が補正された印刷物を出力する。
【0032】
以上の構成により、印刷画像に発生したハロー現象の発生の度合いに応じて補正処理の動作を制御することで、印刷物の生産性の低下を極力抑えながらハロー現象を抑制することができる。
【0033】
また、ハロー現象は経時変動し、画像出力装置を構成する帯電装置、現像装置などの劣化に起因することから、それらのユニット交換を実施することも有効である。そこで、本実施例では、色差が大きい場合には、第2の補正処理(2)を実行するだけでなく、画像検査装置は、ユーザーに対してユニット交換を促すメッセージを、画像出力装置の操作部などに表示し、報知する。
【0034】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0035】
101 クライアントPC
102 デジタルフロントエンド(DFE)
103 画像出力装置
104 画像検査装置
105 画像読み取り装置
106 画像処理装置
107 レーザー書き込み装置
108 現像ドラム
109 帯電装置
110 現像装置
111 中間転写ベルト
112 定着装置
113 補正制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2010−50708号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力用紙に印刷画像データを印刷して出力画像を得る画像出力手段と、前記印刷した出力画像を読み取った検査画像データと前記印刷画像データとを比較し、前記印刷した出力画像のハロー現象を検査する画像検査手段と、前記印刷画像データに対してハロー現象を補正する複数の補正手段と、前記画像検査手段が検査した出力画像のハロー現象の発生の度合いに応じた補正手段を、前記複数の補正手段から選択する選択手段とを備え、前記画像出力手段は、前記選択された補正手段により前記ハロー現象が補正された前記印刷画像データを再印刷することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の補正手段は、前記画像出力手段における中間調処理方法を変更する第1の補正手段と、前記印刷画像データの画素値を補正する第2の補正手段を有し、前記選択手段は、前記ハロー現象の発生の度合いが所定値未満の場合に、前記第1の補正手段を用いてハロー現象を補正し、前記ハロー現象の発生の度合いが前記所定値以上の場合に、前記第2の補正手段を用いてハロー現象を補正することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の補正手段は、前記中間調処理方法として低線数のドットスクリーンの中間調処理を実行することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の補正手段は、前記印刷画像データにおけるオブジェクト部の画素値と背景部の画素値との差と前記ハロー現象の発生の度合いである色差の大きさと補正係数に応じた補正量を、前記印刷画像データに加算することにより、前記印刷画像データの画素値を補正することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記補正係数は、前記ハロー現象の補正の程度に応じて、ユーザーが任意に設定可能な係数であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像検査手段は、前記ハロー現象の発生の度合いに応じて、前記画像出力手段を構成するユニットの交換を促すメッセージをユーザーに報知することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
出力用紙に印刷画像データを印刷して出力画像を得る画像出力工程と、前記印刷した出力画像を読み取った検査画像データと前記印刷画像データとを比較し、前記印刷した出力画像のハロー現象を検査する画像検査工程と、前記印刷画像データに対してハロー現象を補正する複数の補正工程と、前記画像検査工程が検査した出力画像のハロー現象の発生の度合いに応じた補正工程を、前記複数の補正工程から選択する選択工程とを備え、前記画像出力工程は、前記選択された補正工程により前記ハロー現象が補正された前記印刷画像データを再印刷することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項7記載の画像形成方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−106456(P2012−106456A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258452(P2010−258452)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】