説明

画像形成装置、画像形成装置の制御方法

【課題】印刷速度を落とすことなく、脱調を防止しつつ騒音も抑えることのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明による画像形成装置は、現像剤を収容する現像カートリッジを複数着脱可能であり、且つ、回転軸を中心に回転させることによって、装着された現像カートリッジのいずれか一つを現像位置に移動させるロータリ現像ユニットと、ロータリ現像ユニットを回転させる駆動モータと、駆動モータのトルクを制御するコントローラとを備える。このとき、コントローラは、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態に応じて、駆動モータのトルクを可変制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置におけるロータリ駆動モータの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置としては、帯電させた感光体に露光を行い静電潜像を形成し、カラー印刷に用いられる色のトナーを各色ごとに収容した複数の現像カートリッジ(いわゆる、トナーカートリッジ)をロータリの回転軸の周りに配置してこれを回転させ順次現像位置に切り替えて感光体上にトナー像を形成させることによって、フルカラーの多色画像を形成するもの(いわゆる、4サイクル方式)が知られている。例えば、特許文献1には、このような4サイクル方式の画像形成装置が記載されている。
【特許文献1】特開2004−109321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の4サイクル方式の画像形成装置では、ロータリの駆動モータを一定のトルクで駆動している。このとき、駆動モータのトルクをロータリの回転に必要な最大トルクに合わせると、必要トルクが小さいときに微小振動が生じ、動作音が大きく、騒音となってユーザに不快感をもたらすことになる。一方、騒音を小さくするためにトルクを小さくすると、必要トルクが大きいときに脱調し、ロータリ現像ユニットを現像位置まで回転させられず現像できないため、画像不良が生じてしまう。
【0004】
そのため、従来、ロータリ回転時の騒音を抑える場合には、駆動モータのトルクを回転に必要な最大トルクに合わせた上で、ロータリを遅く回転させるという制御法が採られている。この制御法によれば、脱調を防止しつつ騒音を抑えることができる。しかしながら、現像カートリッジの切り替えに時間がかかり印刷速度が遅くなるため、ユーザに新たなストレスが生じることとなっている。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み、印刷速度を落とすことなく、脱調を防止しつつ騒音も抑えることのできる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明による画像形成装置は、現像剤を収容する現像カートリッジを複数着脱可能であり、且つ、回転軸を中心に回転させることによって、装着された現像カートリッジのいずれか一つを現像位置に移動させるロータリ現像ユニットと、ロータリ現像ユニットを回転させる駆動モータと、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態に応じて、駆動モータのトルクを制御するコントローラと、を備える。
【0007】
かかる発明によれば、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態に応じて、ロータリ現像ユニットを回転させるために必要且つ十分なトルクで駆動モータのトルクを可変制御するため、印刷速度を落とすことなく、脱調を防止し且つ騒音を抑えることのできる画像形成装置を提供することが可能となる。
【0008】
このとき、駆動モータは、当該駆動モータに流す電流量に応じてトルクが決まるものであり、コントローラは、現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態に応じて、駆動モータに流す電流量を制御することにより、当該駆動モータのトルクを制御するものであることが好ましい。かかる発明によれば、駆動モータに流す電流量によって駆動モータのトルクを可変制御できるようになる。
【0009】
また、好適には、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態とは、ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの数及び装着箇所を示す装着状況、ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの現像剤の残量、ロータリ現像ユニットの回転位置を示す位相、又はロータリ現像ユニットの回転加速度のうち、少なくともいずれか一つを含むものである。かかる発明によれば、現像カートリッジの装着状況等に応じて、駆動モータのトルクを可変制御することが可能となる。
【0010】
さらに好適には、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態とは、ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの数及び装着箇所を示す装着状況と、ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの現像剤の残量と、ロータリ現像ユニットの回転位置を示す位相と、ロータリ現像ユニットの回転加速度と、を全て含むものである。かかる発明によれば、現像カートリッジの装着状況等に応じて、駆動モータのトルクをさらに緻密に可変制御することが可能となる。
【0011】
このとき、コントローラは、装着状況及び現像剤残量に基づいて基準電流量を求め、位相に基づいて調整係数を求め、回転加速度に基づいて補整係数を求め、基準電流量に調整係数を乗じたものに補整係数を加算して電流量を算出し、当該算出された電流量によって前記駆動モータを制御することが好ましい。かかる発明によれば、調整係数等を使用することにより、必要十分なトルクを得るために駆動モータに流す電流量を容易に算出することが可能となる。
【0012】
また、本発明による画像形成装置のトルク制御方法は、現像剤を収容する現像カートリッジを複数着脱可能であり、且つ、回転軸を中心に回転させることによって、装着された現像カートリッジのいずれか一つを現像位置に移動させるロータリ現像ユニットと、ロータリ現像ユニットを回転させる駆動モータと、駆動モータのトルクを制御するコントローラと、を備える画像形成装置において駆動モータのトルクを制御する方法であって、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態を検出した結果を、コントローラが取得するステップと、取得した検出結果に応じて、コントローラが駆動モータのトルクを制御するステップと、を備える。
【0013】
かかる発明によれば、ロータリ画像ユニット等を備える画像形成装置において、ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又はロータリ現像ユニットの状態に応じて、ロータリ現像ユニットを回転させるために必要且つ十分なトルクで駆動モータのトルクを可変制御することによって、印刷速度を落とすことなく、脱調を防止しつつ騒音を抑えることのできる制御方法を提供することが可能となる。
【0014】
本発明によるプログラムは、本発明による画像形成装置のトルク制御方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。本発明のプログラムは、CD−ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0015】
なお、本発明において「位相」とは、ロータリ現像ユニットが所定の基準位置からどれだけ(角度が何度)回転した位置にあるか示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本画像形成装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る現像カートリッジを装備する画像形成装置の一実施形態であるカラーレーザプリンタ10の概略構成を示す縦断側面図である。本実施形態のカラーレーザプリンタ10は、単一感光体方式と中間転写方式とを採用したフルカラーの電子写真方式の画像形成装置として構成されており、図示するように、現像手段である現像カートリッジ12を保持するロータリ現像ユニット14を備える。
【0018】
さらに、カラーレーザプリンタ10は、像担持体として機能する感光体16と、感光体16を均一の電位(例えば、−700V)に帯電させる帯電ローラ18と、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色に色分解された各色毎の画像を帯電された感光体16上にレーザを照射して静電潜像として形成する露光ユニット20と、感光体16上に現像された各色のトナー像を転写ベルト22に重ねて転写してカラートナー像を形成する一次転写ユニット24と、シートカセット26からシート(記録媒体)を搬送する搬送ユニット28と、搬送されたシートに転写ベルト22に形成されたカラートナー像を転写する二次転写ユニット30と、シート上に転写されたカラートナー像をシートに融着定着させて排紙する定着ユニット32と、こうしたカラーレーザプリンタ10全体の動作を制御するコントローラ34とを備える。
【0019】
ロータリ現像ユニット14には、回転軸52を中心に回転自在に設けられた支持フレーム50、図示を省略する回転駆動部などの部材が設けられている。また、支持フレーム50に対して着脱自在に構成されてそれぞれの色のトナー(現像剤)を内蔵するシアン用の現像カートリッジ12C、マゼンタ用の現像カートリッジ12M、イエロー用の現像カートリッジ12Y、およびブラック用の現像カートリッジ12Kを備える。これらの各現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kは、いわゆるトナーカートリッジとして交換可能に装着される。
【0020】
現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kは現像ユニット14の周方向での位置が決定されることで、感光体16に対して選択的に隣接し、トナーを感光体16の表面に供給することができる。これにより、感光体16上の静電潜像が選択されたトナー色で現像化される。具体的には、回転軸52を中心にロータリ現像ユニット14を90度ずつ4回回転させることにより4個の現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kを順番に感光体16に対向する位置に合わせ、4回にわたって感光体16上に各色のトナー像を現像する。
【0021】
こうして感光体16に現像される各色のトナー像は、一次転写ユニット24の転写ベルト22に重ねて転写され、二次転写ユニット30でシートユニット22により搬送されたシートに転写され、定着ユニット32により定着されてカラーレーザプリンタ10から排紙される。
【0022】
なお、帯電ローラ18や露光ユニット20、シートユニット22、二次転写ユニット30などについては、通常のカラーレーザプリンタやカラーの複写機と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0023】
図2は、コントローラ34の電気的構成の概略を示すブロック図である。コントローラ34は、図示するように、CPU36やRAM38,ROM40を中心としたマイクロプロセッサとして構成されている。また、各種センサ48(例えば、後述の光学センサなど)による検出値やその他の入力信号(例えば、操作者によるプリント指示信号など)が信号ラインを介して入力されるように構成され、これらの入力信号に基づいて帯電ローラ制御部42、ロータリ現像ユニット制御部44、および露光ユニット制御部46などを介して、帯電ローラ18に印加する帯電電位、ロータリ現像ユニット14の回転駆動やロータリ現像ユニット14に印加する現像バイアス電位、および露光ユニット20の露光量などのカラーレーザプリンタ10の各部の動作を制御する。
【0024】
図3は、ロータリ現像ユニット14の要部を示す斜視図である。図示するように、ロータリ現像ユニット14は中心に回転軸52を有し、該回転軸52の周囲には互いに90度の角度の間隔で形成された4つのフレーム要素54から構成される支持フレーム50が回転軸52に固定して設けられている。各フレーム要素54の間には収納部56が形成されており、各収納部56に対して前述の4色の現像カートリッジ12C,12M,12Y及び12Kが収納(装着)される。
【0025】
支持フレーム50における各フレーム要素54の末端には末端圧入部58が形成され、各末端圧入部58の内側には内側圧入部60が形成されている。現像カートリッジ12を支持フレーム50に装着する場合には、現像カートリッジ12を収納部56内に配置した状態で長手方向にスライドさせ、現像カートリッジ12の左側端部(末端圧入部58が形成されている側の端部)に設けられる端部カバーの2つの圧入突起部(図示略)をそれぞれ末端圧入部58と内側圧入部60とに圧入する。これにより現像カートリッジ12が支持フレーム50に対して固定される。なお、図3では、簡略のため現像カートリッジ12Cのみを示している。
【0026】
回転軸52にはロータリ駆動モータからなる回転駆動部(図示略)がクラッチを介して接続されており、該ロータリ駆動モータを駆動することで支持フレーム50を回転させ、4つの現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kのうち、いずれか一つの現像カートリッジを選択的に感光体16と対向する現像位置(図1中、現像カートリッジ12Cの位置)に位置決めできるように構成されている。
【0027】
このロータリ駆動モータは定電圧で駆動されるステッピングモータであり、所定のホームポジションから回し始めて、何パルスをステッピングモータへ入れたかによって、ロータリ現像ユニット14の位相を判断できる。また、このロータリ駆動モータは、当該モータに供給する電流の大きさによって、トルクを略比例制御することができるものである。つまり、該ロータリ駆動モータは、ロータリ現像ユニット14を回転駆動させるにあたり必要なトルクを出すために、必要トルクに対応した電流を流す必要がある。ここで、電流が不足していれば脱調となり、所望の位置にロータリ現像ユニット14を移動させることができない。また、必要以上に過多な電流を入れると、微小振動し、騒音が生じる。
【0028】
支持フレーム50に保持される現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kは、いずれも同一の構成を有している。従ってここでは、現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kを総称して現像カートリッジ12として、以下説明する。
【0029】
次に、コントローラ34による回転駆動部(ロータリ駆動モータ)の電流制御について説明する。本実施形態では、必要かつ十分なトルクを得るために、コントローラ34は、(1)現像カートリッジ12の装着状況X、(2)ロータリ現像ユニット14の位相θ、(3)現像カートリッジ12のトナー残量W、及び(4)ロータリ現像ユニット14の加速度a、に応じてロータリ駆動モータに流す電流量I(X,θ,W,a)を調整している。このことについて、以下、詳細に説明する。
【0030】
(現像カートリッジの装着状況)
ロータリ現像ユニット14は、現像カートリッジ12の装着状況によって加重(重量バランス)に偏りが生じる。この加重の偏りが回転軸52から離れるほど、すなわち、偏加重が大きいほど、ロータリ現像ユニット14を回転させるときに大きなトルクが必要となる。さらに、これに加えて、ロータリ現像ユニット14全体の重量が大きいほど慣性モーメントが大きくなるため、必要トルクも大きくなる。
【0031】
図4は、本実施形態における現像カートリッジ12の装着状況、及びロータリ現像ユニット14の位相を示す図である。図4において、図形14はロータリ現像ユニット14を示すものであり、丸印12はロータリ現像ユニット14に装着されている現像カートリッジ12を示すものである。また、図形14の右上の扇形領域は、図1における現像カートリッジ12Cの位置(感光体16に対向する位置)を示すものである。したがって、図4(A)の左端の図は、ロータリ現像ユニット14に現像カートリッジ12が1個も装着されていない状態を示しており、図4(B)の左端の図は、図1における現像カートリッジ12C及び12Yの位置に現像カートリッジ12が装着されている状態を示している。なお、図4では、上述の2つの図以外は符号を省略している。
【0032】
図4(A)は、上述のとおり、現像カートリッジ12が1個も装着されていない状態、図4(B)は、対向した2個のみが装着されている状態、図4(C)は、4個とも装着されている状態、図4(D)は、1個のみ装着されている状態、図4(E)は、3個装着されている状態、及び図4(F)は、隣り合う2個のみ装着されている状態をそれぞれ示している。
【0033】
本実施形態のように現像カートリッジ12を4個収納可能な、いわゆる4サイクル型のロータリ現像ユニットの場合、現像カートリッジ12の装着状況は図4(A)から(F)の6通りのケースが考えられることになる。そして、この6通りのケースは、(A)から(F)の順に(すなわち、図4の図示で下方に行くほど)偏加重等が大きくなるため、ロータリ駆動モータを駆動する際に必要な最大トルクが大きくなる。したがって、必要かつ十分なトルクを得るためには、(A)から(F)に向かうほどロータリ駆動モータに流す電流の最大値を大きくする必要がある。
【0034】
(ロータリ現像ユニットの位相)
ロータリ現像ユニット14は回転軸52を中心に回転駆動されるものであるが、ロータリ現像ユニット14に装着された現像カートリッジ12が、この回転のどの位置にあるかによって回転運動のモーメントが変わるため、必要トルクも変わる。したがって、必要且つ十分なトルクを得るためには、ロータリ現像ユニットの位相によって、ロータリ駆動モータに流す電流を変動させる必要がある。具体的には、現像カートリッジ12の重さで回転が加速される位置(位相)にあるときは電流量を小さく、逆に、重さで回転が減速されるときは電流量を大きくするとよい。
【0035】
そして、本実施形態では、現像カートリッジ12の装着状況Xとロータリ現像ユニット14の位相θとに基づいて、ロータリ駆動モータに流す電流量を算出する際の基準となる基準電流量I(X,θ)を決定するものとしている。なお、ここでは、現像カートリッジ12の装着状況毎に、図4に示すように位相を定めている。
【0036】
図5は、現像カートリッジ12の装着状況X毎の、位相θと基準電流量I(X,θ)との関係を示す図である。図5において、横軸はロータリ現像ユニット14の位相θを表している。縦軸は基準電流量I(X,θ)を表している。図5の(A)〜(F)は、図4の(A)〜(F)の6通りのケースに対応するものであり、図5(A)は、現像カートリッジ12が1個も装着されていないケースにおける位相θと基準電流量I(A,θ)との関係を示す図である。同様に、図5(B)は、対向した2個のみが装着されているケース、図5(C)は、4個とも装着されているケース、図5(D)は、1個のみ装着されているケース、図5(E)は、3個装着されているケース、及び図5(F)は、隣り合う2個のみ装着されているケースをそれぞれ示している。
【0037】
(現像カートリッジのトナー残量)
現像カートリッジ12の重量はトナー残量によって変動するものである。そのため、装着されている現像カートリッジ12のトナー残量に応じて、ロータリ現像ユニット14の偏加重の大きさや慣性モーメントが変動し、回転に必要なトルクも変動することになる。したがって、ロータリ現像ユニット14に装着されている現像カートリッジ12のトナー残量に応じて、ロータリ駆動モータに流す電流を調整することが望ましい。なお、トナー残量は、例えば、各現像カートリッジ12に備えられた記憶素子(図示略)に記録されたトナーカウントに応じて求めればよい。
【0038】
図6は、トナー残量Wと調整係数k(W)との関係の概略を示す図である。図6において、横軸はトナー残量Wを表しており、0がエンプティ(空)の状態、1が満杯の状態を意味している。縦軸は調整係数k(W)を表している。調整係数k(W)とは、トナー残量W(すなわち、トナーの重量)に応じてトルクが変動する分を調整するための係数である。なお、ロータリ現像ユニット14に現像カートリッジ12が複数個装着されている場合には、トナー残量Wとしては、トナー残量の平均値を用いることができる。
【0039】
(ロータリ現像ユニットの加減速)
ロータリ現像ユニット14を停止状態から定速回転状態にもっていくとき、或いは、定速回転状態から停止状態にもっていくとき、回転を加速ないし減速するためのトルクが補足的に必要となる。すなわち、回転を加速させる際には、より大きなトルクが必要となるため、ロータリ駆動モータに流す電流を所定量上乗せするとよい。一方、減速させる際には、より小さなトルクで済むため、モータに流す電流を所定量減じるとよい。
【0040】
図7は、ロータリ現像ユニット14の回転の加速度aと補整係数C(a)との関係の概略を示す図である。図7において、横軸は回転の加速度aを表している。縦軸は補整係数C(a)を表している。補整係数C(a)とは、加速度aに応じてトルクが変動する分を調整するための係数である。なお、加速度aが負のときは減速の状態を表している。
【0041】
以上のようにして、本実施形態では、ロータリ駆動モータに流す電流量I(X,θ,W,a)を決定している。このとき、現像カートリッジ12の装着状況X及びロータリ現像ユニット14の位相θと基準電流量I(X,θ)との関係、トナー残量Wと調整係数k(W)との関係、並びにロータリ現像ユニット14の回転の加速度aと補整係数C(a)との関係を、予めROM40に格納しておき、ロータリ現像ユニット14を駆動制御する際にこのROM40を参照するものとしている。
【0042】
(ロータリ駆動モータへの電流制御)
次に、ロータリ駆動モータへの電流制御のフローについて具体的に説明する。
【0043】
図8は、コントローラ34がロータリ駆動モータへ流す電流量を算出するフローを示す図である。まず、ロータリ現像ユニット14を回転させる制御に先立って、コントローラ34は、現像カートリッジ12の装着状況Xとロータリ現像ユニット14の位相θを検出し、基準電流量I(X,θ)を求める(S80)。なお、コントローラ34は、コントローラ34に組み込まれたメカコンファームウェアにより現像カートリッジ12の装着状況X等を取得することができる。
【0044】
本実施形態では、装着状況Xが先述の(A)から(F)のうちどの状況であるかを検出するとともに、現時点における位相θが0度、90度、180度、又は270度のうち何れであるかを検出する。そして、この検出結果に対応する基準電流量I(X,θ)を、ROM40から読み出す。
【0045】
次に、コントローラ34は、現像カートリッジ12のトナー残量Wを検出し、調整係数k(W)を求める(S81)。本実施形態では、各現像カートリッジ12に備えられた記憶素子からトナーカウントを読み出してトナー残量Wを検出する。ロータリ現像ユニット14に複数個の現像カートリッジ12が装着されている場合は、各トナー残量の平均値を求める。そして、ROM40に格納された関係式に基づいて、調整係数k(W)を求める。
【0046】
そして、コントローラ34は、ロータリ現像ユニット14の回転の加速度aに基づいて、補整係数C(a)を求める(S82)。本実施形態のような4サイクル型のロータリ現像ユニットの場合、印刷時にロータリ現像ユニット14を90度単位で回転させて、現像カートリッジ12の位置合わせをしている。このとき、回転の初期に加速し、終期に減速するよう制御されている。そして、ROM40に格納された関係式に基づいて、補整係数C(a)を求めている。
【0047】
その後、コントローラ34は、ロータリ駆動モータに流す電流量I(X,θ,W,a)を算出する(S83)。具体的には、次の数式(1)に基づいて算出する。
(1) I(X,θ,W,a)=k(W)×I(X,θ)+C(a)
【0048】
最後に、コントローラ34は、算出された電流量I(X,θ,W,a)をロータリ駆動モータに流し、ロータリ現像ユニット14の回転駆動を制御する(S84)。
【0049】
図9および図10は、ロータリ駆動モータへの電流制御の一例として、隣り合う2個の現像カートリッジのみロータリ現像ユニット14に装着されている状態(図4の(F)の状態)で、このロータリ現像ユニット14を位相0度から一回転させるときに、コントローラ34がロータリ駆動モータに流す電流量を示す図である。図9および図10において、横軸は位相θを表し、縦軸はロータリ駆動モータに流す電流量Iを表している。
【0050】
ここで、図9は、ロータリ現像ユニット14を、位相0度から90度毎に停止させつつ一回転させる場合を示している。また、図10は、位相0度から(途中で停止させることなく)一回転させた後に停止させる場合を示している。なお、図9および図10の例では、回転の最初の45度で加速し、最後の45度で減速する場合を示している。
【0051】
図9および図10において、破線90は現像カートリッジ12の装着状況(この場合は(F)のケース)とロータリ現像ユニット14の位相θにより求められる基準電流量I(F,θ)を示している。破線91は、トナー残量Wにより定まる調整係数k(W)を加味した電流量k(W)×I(F,θ)を示している。このように、トナー残量W、すなわち重量に応じて、電流量の振幅が調整される。
【0052】
そして、図9の実線92および図10の実線93は、ロータリ駆動モータに流す電流量I(F,θ,W,a)を示している。これらは、破線91に対して、加速度aにより定まる補整係数C(a)を加えたものである。このように、加速度aに応じて電流量の高さが調整される。
【0053】
以上のとおり、本実施形態における画像形成装置は、コントローラ34が、(1)現像カートリッジ12の装着状況、(2)ロータリ現像ユニット14の位相、(3)現像カートリッジ12のトナー残量、及び(4)ロータリ現像ユニット14の加速度、に基づいてロータリ駆動モータに流す電流量を調整することにより、必要かつ十分なトルクを確保することができるようになっている。これにより、トルク不足のために生じる脱調及びトルク超過のために生じる微小振動の両者を防止することが可能となり、画像形成装置における画像形成不良を防止することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【0055】
例えば、本実施形態では、(1)現像カートリッジ12の装着状況、(2)ロータリ現像ユニット14の位相、(3)現像カートリッジ12のトナー残量、及び(4)ロータリ現像ユニット14の加速度、の全ての要素を加味して、ロータリ駆動モータに流す電流量を制御するものしたが、上記4つの要素のうち何れか一つのみを加味して電流量を制御してもよいし、任意の要素を2つ又は3つ組み合わせて電流量を制御してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、数式(1)に基づいてロータリ駆動モータに流す電流量を算出するものとしたが、これ以外の算出法を用いてもよい。例えば、装着状況Xと位相θとトナー残量Wとの3つの関係に基づいて基準電流量I(X,θ,W)を求め、この基準電流量I(X,θ,W)に補整係数C(a)を加えて電流量を算出するようにすれば、より精緻な電流制御が可能となる。
【0057】
このとき、例えば、トナー残量Wを3段階に分けて考えるものとすれば、図4の(E)のケースでは、基準電流量I(E,θ,W(W1,W2,W3))を求めるために、θが4通り(0度、90度、180度、270度)、W1〜W3がそれぞれ3通り、計4×3×3×3=108個のレコードを有するテーブルを予めROM40に記憶させておけば、基準電流量をこのテーブルから求められることになる。
【0058】
また、本実施形態では、コントローラ34は、メカコンファームウェアにより現像カートリッジ12の装着状況を判断するものとしたが、現像カートリッジ12の装着状況を検知するための接触式又は非接触式のセンサを新たに設け、当該センサにより装着状況を検知するものとしてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、所定のホームポジションから回し始めて、何パルスをステッピングモータへ入れたかによって、ロータリ現像ユニット14の位相を判断しているが、エンコーダを使用して位相を検出してもよい。また、ホームポジションの検出は、例えば、ロータリ現像ユニット14に遮光板を設けるとともに、当該ユニットの外部に光学センサ等の位置センサを設け、遮光板がセンサを横切ってから所定パルス数でホームポジションに停止させるようにしてもよい。また、爪でロックをかけてホームポジションに止まるようにし、回転時はロックを外して、そこから何パルスかで位相を判断するようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、記憶素子に記録されたトナーカウントによってトナー残量を検出するものとしたが、現像カートリッジ12の壁に透光性の窓を設け、この窓から現像カートリッジ12内のトナー残量をフォトセンサ等により検出するものとしてもよい。
【0061】
また、本実施形態のカラーレーザプリンタ10では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーが詰められた4個の現像カートリッジ12C,12M,12Y,12Kをロータリ現像ユニット14に装着するもの(いわゆる、4サイクル方式)としたが、ロータリ現像ユニット14が回動可能な機構を有するものであれば、3個以下の現像カートリッジを装着するものでもよいし、5個以上の現像カートリッジを装着するものでもよい。
【0062】
また、本実施形態では、記録剤として複数の色のトナーが詰められた現像カートリッジ12を装着するカラーレーザプリンタ10について説明したが、同様の現像カートリッジ40Kを装着するカラー複写機としてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】カラーレーザプリンタ10の概略構成を示す縦断側面図である。
【図2】コントローラ34の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図3】ロータリ現像ユニット14の要部を示す斜視図である。
【図4】装着状況X、及び位相θを示す図である。
【図5】装着状況Xと位相θと基準電流量I(X,θ)との関係を示す図である。
【図6】トナー残量Wと調整係数k(W)との関係の概略を示す図である。
【図7】回転の加速度aと補整係数C(a)との関係の概略を示す図である。
【図8】ロータリ駆動モータへ流す電流量を算出するフローを示す図である。
【図9】ロータリ駆動モータへの電流制御の一例である。
【図10】ロータリ駆動モータへの電流制御の一例である。
【符号の説明】
【0064】
10 カラーレーザプリンタ(画像形成装置)、12 現像カートリッジ、14 ロータリ現像ユニット、34 コントローラ、44 ロータリ現像ユニット制御部、50 支持フレーム、52 回転軸、56 収納部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する現像カートリッジを複数着脱可能であり、且つ、回転軸を中心に回転させることによって、装着された現像カートリッジのいずれか一つを現像位置に移動させるロータリ現像ユニットと、
前記ロータリ現像ユニットを回転させる駆動モータと、
前記ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又は前記ロータリ現像ユニットの状態に応じて前記駆動モータのトルクを制御するコントローラと、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記駆動モータは、
当該駆動モータに流す電流量に応じてトルクが決まるものであり、
前記コントローラは、
前記現像カートリッジの状態又は前記ロータリ現像ユニットの状態に応じて、前記駆動モータに流す電流量を制御することにより、当該駆動モータのトルクを制御する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又は前記ロータリ現像ユニットの状態とは、前記ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの数及び装着箇所を示す装着状況、前記ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの現像剤の残量、前記ロータリ現像ユニットの回転位置を示す位相、又は前記ロータリ現像ユニットの回転加速度のうち、少なくともいずれか一つを含む、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又は前記ロータリ現像ユニットの状態とは、前記ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの数及び装着箇所を示す装着状況と、前記ロータリ現像ユニットに装着された現像カートリッジの現像剤の残量と、前記ロータリ現像ユニットの回転位置を示す位相と、前記ロータリ現像ユニットの回転加速度と、を全て含む、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記装着状況及び前記現像剤残量に基づいて基準電流量を求め、前記位相に基づいて調整係数を求め、前記回転加速度に基づいて補整係数を求め、前記基準電流量に前記調整係数を乗じたものに前記補整係数を加算して前記電流量を算出し、当該算出された電流量によって前記駆動モータを制御する、
請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
現像剤を収容する現像カートリッジを複数着脱可能であり、且つ、回転軸を中心に回転させることによって、装着された現像カートリッジのいずれか一つを現像位置に移動させるロータリ現像ユニットと、
前記ロータリ現像ユニットを回転させる駆動モータと、
前記駆動モータのトルクを制御するコントローラと、
を備える画像形成装置において、前記駆動モータのトルクを制御する方法であって、
前記ロータリ現像ユニットに装着される現像カートリッジの状態又は前記ロータリ現像ユニットの状態を検出した結果を、前記コントローラが取得するステップと、
前記取得した検出結果に応じて、前記コントローラが前記駆動モータのトルクを制御するステップと、
を備える制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−219344(P2007−219344A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41995(P2006−41995)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】