画像形成装置およびフレームの設計方法
【課題】簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置において、装置本体部からの騒音を抑制する外装部材である外装カバーに対向するように内装部材であるフレーム100を設ける。そして、外装カバーに対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための多数の穴領域で形成される開口部を設ける。フレーム等に開口部を設けることにより、簡易な方式で装置外に放射される騒音エネルギーを低減することができる。
【解決手段】画像形成装置において、装置本体部からの騒音を抑制する外装部材である外装カバーに対向するように内装部材であるフレーム100を設ける。そして、外装カバーに対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための多数の穴領域で形成される開口部を設ける。フレーム等に開口部を設けることにより、簡易な方式で装置外に放射される騒音エネルギーを低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関し、特に、画像形成装置の装置本体部からの騒音を抑制する内装部材の構成およびフレームの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置から発生する騒音が外部に漏れることを防止することは重要な課題であった。
【0003】
図15は、従来の画像形成装置の外観構成図である。
図15を参照して、従来の画像形成装置1000は、図示しない装置本体部からの騒音を抑制するために装置本体部全体を覆うように外装カバー45が正面、背面および側面側に設けられている。なお、図15の画像形成装置1000においては、外装カバー45とともに給紙トレイ1030、排紙トレイ16および表示部1020が設けられている場合が示されている。
【0004】
図16は、画像形成装置の装置本体部の構成の一部を説明する図である。
図16を参照して、電子写真方式で潜像担持体としてのドラムタイプの感光体1、現像ユニット6を構成する4つの現像器、および像担持体ベルトとしての中間転写ベルト7aを用いてカラー画像を形成するカラープリンタが示されている。なお、ここでは画像形成装置の主な部品についてのみ説明する。
【0005】
具体的には、画像形成のために例えば回転移動される像担持体の一例としてのドラム型の感光体1と、複数の、例えば4つの現像器を感光体1の移動面上に現像によりトナー像を形成する現像ユニット6と、感光体1と同期した例えば周回移動して感光体1の移動面まわりに設定される転写位置にて感光体1の移動面上に順次形成されるトナー像を順次に積層して転写される中間転写ユニット7とを備えている。
【0006】
感光体1は、レーザプリントヘッド8からの画像信号により変調されたレーザ光9による画像露光、つまり光学的な印字を受けて画像信号通りの電気的な潜像、つまり静電潜像を色ごとに形成し、これが現像によって顕像化したトナー像に形成される。
【0007】
電気的な潜像を現像することに関連して、感光体1上のトナー像は中間転写ユニット7の中間転写ベルト7a上に一次転写器としての転写ローラ11からの電荷付与によって静電的な吸引により静電転写するようにしている。
【0008】
また、中間転写ベルト7aに順次に積層して静電転写され合成し終わったトナー像は、その移動面まわりに設定される転写位置に給紙部12aなどから給送されてくる転写紙の上に二次転写器としての転写ローラ14からの静電的な吸引によって静電的に一括して二次転写し、二次転写後の転写紙を定着器15を通して画像形成を終了し排紙トレイ16上に排出する。
【0009】
一次転写および二次転写の双方とも画像形成に採用する現像方式に対応して静電転写以外の転写方式で転写されてもよい。また、定着器15も現像方式に対応したものを用いればよく、不要な場合もある。
【0010】
カラー画像形成のために複数の現像器のそれぞれはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナー2a〜5aで静電潜像を現像し、本例では粉体樹脂トナーを用いることに関連して加熱または加圧、あるいはそれら双方を採用した定着器15を用いる。なお、ブラックの現像器の使用は必須ではない。
【0011】
また、カラー画像は4つ以上の現像器を用いて形成するものでもよい。さらにカラー画像を形成するものに限られることはなく、2以上の現像器を切り替え使用するものであれば本発明を適用して有効である。
【0012】
感光体1は帯電チャージャ34、クリーナ35を有したプロセスユニット36を形成する。
【0013】
図17は、画像形成装置の装置本体部の斜視図である。
図17を参照して、ここでは、外装カバー45を除いた画像形成装置の装置本体部の斜視図が示されている。ここでは、装置本体部が設けられており、装置本体部を固定および支持する内装部材であるフレーム1100が示されている。
【0014】
また、ここでは、上述した4つの現像器を有する現像ユニット6が示されている。
そして、フレーム1100に対して装置本体部を駆動するための各種モータが設置されている場合が示されている。具体的には、上述の現像ユニット6や、中間転写ベルト7aあるいは転写ローラ11等を駆動するためのモータM1〜M4がそれぞれ設置される。また、ファンFNも設置される。
【0015】
これらのモータM1〜M4等に基く回転機構やファンFN等が駆動することにより騒音が発生するため従来においては騒音を抑制するために外装材である外装カバーの厚みや質量を大きくすることで外装材の面密度を大きくして音の透過損失を大きくする方式や、吸音材を外装材に貼り付けたりする方式が取られていた。
【0016】
また、外装材を固体層と空気層を交互に積層した積層体や中空二重壁構造にすることにより静音化を図る方式もある。
【0017】
また、特開2000−235396号公報においては、外装部材においてヘルムホルツ共鳴器を構成するように設計することにより静音化を図る方式が開示されている。
【特許文献1】特開2000−235396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来の防音構造では、外装材の厚みや質量を大きくする方式であるため装置が大型化したり、重くなったりさらには材料面からコストがかかる可能性がある。
【0019】
吸音材に使用に関しても、吸音材の材料コストの他に、吸音材貼り付けのためのスペースを確保する必要がある。
【0020】
一般的に吸音材の厚みと吸音性能の間には相関があり、装置の大型化につながることにもなる。
【0021】
また、上述したように外装部材において、積層体の構成や中空二重壁構造を取ることは、コスト面において不利であるし、装置が大型化する可能性もある。
【0022】
また、外装部材においてヘルムホルツ共鳴器を構成する場合においても同様の問題がある。さらには、ヘルムホルツ共鳴器の場合には、吸音対象となる音の周波数が限定される問題があり、設計が複雑化する可能性がある。
【0023】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【0024】
また、別の発明は、簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することが可能なフレームの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る画像形成装置は、装置本体部からの騒音を抑制する外装部材と、装置本体部を構成する騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付ける内装部材とを備える。内装部材は、外装部材との間に所定の間隔を空けて配置され、外装部材に対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための開口部を有する。
【0026】
特に、開口部は、内部機器の近傍に設けられる。
好ましくは、開口部は、装置本体部側からの音が直接漏れない位置に設けられる。
【0027】
好ましくは、内装部材に設けられる開口部の開口率は、0.2以下に設定される。
本発明に係るフレームの設計方法は、画像形成装置の外装部材の内側において、装置本体部を構成する騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付けるフレームの設計方法であって、フレームにおいて、部品が配置されない領域を抽出するステップと、フレームに穴を開けた場合に部品の配置に従って内部の騒音源が見える領域を抽出するステップと、部品の配置されていない領域の中から内部の騒音源が見える領域を除いて機能上必要ではない領域を特定するステップと、機能上必要ではない領域において、開口部を設計するステップとを備える。開口部を設計するステップは、機能上必要ではない領域において、穴領域を設定するステップと、フレーム全体の面積に対する設定された穴領域の開口率を算出するステップと、算出された開口率に基いて減衰する音圧レベルをシミュレートするステップと、シミュレートした減衰する音圧レベルが所定条件を満たしているか否かを判断するステップと、シミュレートした結果、減衰する音圧レベルが所定条件を満たしている場合に設定された穴領域の開口率がフレームの強度条件に従う所定範囲内であるか否かを判断するステップと、所定範囲内である場合には、設定された穴領域を開口部として設定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る画像形成装置は、内部機器を取り付ける内装部材において、外装部材に対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための開口部を有する。したがって、簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0030】
本発明にかかる画像形成装置であるカラープリンタは、内装部材に加工を施すことにより装置外に放射される騒音エネルギーを低減する。具体的には、内装部材に従来の内装部材と比較して開口部となる多数の穴領域を設ける。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に従う内装部材の一部を説明する図である。
なお、画像形成装置の外観構成図および装置本体部の構成等については、図15および図16で説明したのと同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
図1を参照して、ここでは、本発明の実施の形態に従う内装部材であるフレーム100が示されている。ここでは、図示しないが装置本体部からの騒音を抑制する外装カバーに対向する面が示されている(以下においてはおもて面とも称する)。
【0033】
また内装部材であるフレーム100と外装カバーとの間には所定の間隔が設けられており、内装部材に生じる振動が直接フレーム100に伝達されないように設計されているものとする。
【0034】
また、内装部材には、上述したモータM1〜M4が設置されている場合が示されている。なお、モータM1〜M4は、フレーム100と図示しない外装部材である外装カバーとの間に設けられる構成である。
【0035】
なお、図1に示されるフレーム100上のモータM1〜M4の位置と図17で説明したフレーム1100と固定されているモータM1〜M4の位置とは少しレイアウト面で異なるが、機能としては同様でありベルトあるいはギヤ等を介して図16で説明した現像ユニット6や、中間転写ベルト7aあるいは転写ローラ11等が駆動される。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に従う内装部材のフレーム100の裏面を説明する図である。
【0037】
図2を参照して、フレーム100の裏面側において、取り付け部材200が取り付けられている場合が示されている。すなわち、図1をともに参照して、モータM3およびM4は、内部の部品と一体となって揺動するため、取り付け部材200に固定した状態でフレーム100にぶら下がるような構成となっている。
【0038】
図2においてモータM3,M4からの駆動の伝達にベルトが用いられ、所定の部品が当該ベルトを介して伝達駆動される。
【0039】
図3は、フレーム100を説明する図である。
図4は、従来のフレーム1100を説明する図である。
【0040】
図3および図4を参照して、従来のフレーム1100と比較して、本発明の実施の形態に従うフレーム100には比較的面積の広い開口部を設ける。
【0041】
フレーム1100においても多数の穴領域により形成される開口部が設けられているように見えるが実際には、ネジ止め用あるいは固定金具用の穴領域として設けられているものであり、部品等と組み合わせた場合には、ほとんどの穴領域は塞がれることになる。
【0042】
図4において、部品等を組み合わせた場合にフレーム1100に設けられた穴領域により形成される開口部の開口率すなわちフレーム全体の面積に対する開口部の面積の割合は、2.4%である。
【0043】
一方、図3を参照して、本発明の実施の形態に従うフレーム100について部品等を組み合わせた場合における開口部の実質的な開口率は7.8%である。
【0044】
図5は、モータM3,M4およびモータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200を説明する図である。
【0045】
図5を参照して、ここでは、フレーム100の裏面側と接触して固定される面が示されている。
【0046】
図6は、モータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200の裏面側を説明する図である。
【0047】
図5および図6に示されるように取り付け部材200においても、モータM3,M4等を取り付けるためのネジ止め用あるいは固定金具用の穴以外の多数の穴領域を設ける。
【0048】
図7は、取り付け部材200を説明する図である。
図8は、従来の取り付け部材1200を説明する図である。
【0049】
図8を参照して、従来の取り付け部材には、ネジ止め用あるいは固定金具用の穴が設けられているに過ぎずほぼ穴領域は塞がれることになる。
【0050】
図7を参照して、従来の取り付け部材1200と比較して、本発明の実施の形態に従う取り付け部材にはネジ止め用あるいは固定金具用の穴以外に開口部を形成する多数の穴領域を設ける。
【0051】
なお、本例においては、大小種々の面積の穴領域を分散的に設けて開口部を形成する場合が示されている。当該構成は、穴領域を分散的に設けて開口部の面積を確保しつつ取り付け部材の強度も確保するために行われている。
【0052】
また、多数の穴領域は、モータM3,M4が取り付けられる近傍に多数設けられることにより騒音の減衰効果を大きくすることが可能である。
【0053】
図7において、部品等を組み合わせた場合に取り付け部材200に設けられた穴領域により形成される開口部の開口率すなわち取り付け部材全体の面積に対する開口部の面積の割合は、6.9%である。
【0054】
一方、図8を参照して、従来の取り付け部材1200について部品等を組み合わせた場合における開口部の実質的な開口率は1.2%である。
【0055】
図9は、本発明の実施の形態に従う音響減衰構造の作用原理を説明する図である。
図9を参照して、ここでは、外装部材である外装カバー45と、内装部材であるフレーム100とが示されている。
【0056】
ここで、フレーム100にモータおよびファン等の騒音あるいは振動源が固定されたものであるためのフレーム100が騒音源として考えられる。
【0057】
ここで、Piは、フレーム100から外装部材である外装カバー45に放射される入射音響エネルギーとする。なお、フレーム100から発生する騒音は様々な方向に広がっていくが、ここでは、外装カバー45に届くエネルギーを対象とする。
【0058】
外装カバー45に届いたエネルギーの一部は、透過して装置外部で騒音として認識される。
【0059】
Ptは、外装カバー45を透過した透過エネルギーである。
外装カバー45に届いたエネルギーの一部は、反射してフレーム100の方向に戻っていく。Prは、外装カバー45で反射した反射音響エネルギーである。
【0060】
反射音響エネルギーPrは、フレーム100に達するとその一部は装置本体部に透過し、一部は反射して再び外装カバー45の方向に向かっていく。
【0061】
Pzは、装置本体部に内部入射する透過音響エネルギーである。
装置外部に達する騒音は、これらの透過および反射を繰り返して外部に透過するエネルギーの総和として考えることが可能である。
【0062】
なお、音響エネルギーは、各部材に対して垂直に入射すると仮定する。また、各部材の外側からの廻り込みは無いものとし、装置本体部に内部入射する透過音響エネルギーPzは内部にて減衰するものと仮定する。
【0063】
外装カバー45およびフレーム100の材質に関する定数をα、βとする。また、フレーム100に設けられた開口部の全体の面積に対する開口部の面積の割合である開口率をqとする。
【0064】
外装カバー45とフレーム100との間の反射が無限回繰り返された場合に入射音響エネルギーPiと透過音響エネルギーPtとの関係は「騒音制御工学ハンドブック」(社団法人日本騒音制御工学会編、技報堂出版株式会社2001年4月発行)等に示されている関係式を用いて次式のように導出できる。
【0065】
【数1】
【0066】
なお、α、βは、次式となる。
【0067】
【数2】
【0068】
ここで、mA,mBはそれぞれ外装カバー45およびフレーム100の面密度、ωは角周波数、ρは空気密度、cは、音速を指し示す。
【0069】
一般的に騒音の大きさの単位として用いられる音圧レベルの関係は、入射音圧レベルをLpi、透過音圧レベルをLptとすると、次式で表わされる。
【0070】
【数3】
【0071】
また、音響透過損失Rは、次式で示される。
【0072】
【数4】
【0073】
ここで、外装カバー45について厚さ2.5mm、のABS樹脂(密度1.1g/mm3)とすると、面密度mAは、2.75kg/mm2となる。
【0074】
また、フレーム100について厚さ1.0mm、の鋼板(密度7.6g/mm3)とすると、面密度mBは、7.6kg/mm2となる。
【0075】
外装カバーの音響透過損失Raは、次式で示される。
【0076】
【数5】
【0077】
また、フレーム100の音響透過損失Rbは、次式で示される。
【0078】
【数6】
【0079】
図10は、開口率qが0の場合と開口率qを変化させた場合との音圧レベルの差を説明する図である。
【0080】
図10を参照して、左縦軸は音圧レベルの差が示されている。また、横軸は開口率である。
【0081】
図10に示されるように開口率qが増加すればするほど音圧レベルの差が大きくなる。すなわち、音響減衰効果が高くなる。
【0082】
一方、右縦軸は、開口率qが0の場合と開口率の影響に従うフレームの剛性割合が示されている。剛性特性については点線で示されており、開口率qが増加すればするほどフレームの剛性は低下することになる。
【0083】
したがって、開口率qとフレームの剛性(強度)はトレードオフの関係にある。
なお、図10においては、騒音の周波数を500Hzとしてシミュレーションしたものである。
【0084】
図11は、騒音の周波数を1000Hzとした場合の開口率qを変化させた場合の音圧レベルの差を説明する図である。
【0085】
図11を参照して、ここで示されているように騒音の周波数が高いほど開口率の影響が大きいことが分かる。なお、剛性特性については、点線で示されている図10で示されている剛性特性と同じである。
【0086】
本例においては、騒音周波数を500Hzと1000Hzの場合についてシミュレーションした場合を説明したがこれ以外の騒音周波数の場合においても同様の効果を期待することができる。
【0087】
図12は、本発明の実施の形態に従うフレームと従来のフレームについて、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【0088】
具体的には、本発明の実施の形態に従うフレーム100および従来のフレーム1100の測定においては、取り付け部材200をそれぞれ取り付けた状態で測定した。
【0089】
図12に示されるように、従来のフレームにおいては、モータ駆動音として45.4dBの音圧レベルを計測した。一方、本発明のフレームにおいては、モータ駆動音として43.2dBの音圧レベルを計測した。したがって、その差2.2dBであった。
【0090】
一般的には、音圧レベルで1dBの差を人間は認識することが可能であると言われており、図12に示される計測結果に基けば十分効果を認識できるレベルである。
【0091】
図13は、本発明の実施の形態に従う取り付け部材と従来の取り付け部材について、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【0092】
具体的には、本発明の実施の形態に従う取り付け部材200および従来の取り付け部材1200の測定においては、フレーム100をそれぞれ取り付けた状態で測定した。
【0093】
図13に示されるように、従来の取り付け部材1200においては、モータ駆動音として42.5dBの音圧レベルを計測した。一方、本発明の取り付け部材200においては、モータ駆動音として40.9dBの音圧レベルを計測した。したがって、その差は1.6dBであった。
【0094】
したがって、当該構成においても図13に示される計測結果に基けば十分に効果を認識することが可能である。
【0095】
上述したように本発明にかかる画像形成装置においては、装置本体部からの騒音を抑制する外装部材である外装カバー45に対向するように内装部材であるフレームあるいは取り付け部材を設ける。そして、外装部材に対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための多数の穴領域で形成される開口部を設ける。フレーム等に開口部を設けることにより、簡易な方式で装置外に放射される騒音エネルギーを低減することができる。
【0096】
図14は、本発明の実施の形態に従うフレームに対して開口部を設ける場合の設計方法を説明するフロー図である。
【0097】
図14を参照して、まず、開口部を設ける前の設計されたフレームに対して必要な部品を配置する(ステップS1)。
【0098】
次に、減衰させる音圧レベルの条件およびフレームの強度の条件を設定する(ステップS2)。
【0099】
当該フレームにおいて、部品の配置されていない領域を抽出する(ステップS3)。
フレームに穴を開けた場合に部品の配置に従って内部の騒音源が見える領域を抽出する(ステップS4)。
【0100】
画像形成装置の装置本体側(内部)においては、用紙の給紙動作を行なう機構部や搬送ローラの回転/停止を制御するクラッチや電磁力によって可動片を引き込んだり,押し出したりするアクチュエータであるソレノイドが内部の騒音源となることが考えられる。したがって、穴を開けた場合にこれらの内部の騒音源が見える領域であるか否かを判断して、見える領域を抽出する。具体的には、一例として、フレームに穴を開けた場合にその任意の点と内部の騒音源とを結ぶ線と、フレームの法線との成す角度を測って所定角度以内か否かを判断して、所定角度以内であれば内部の騒音源が見える領域であると判断することが可能である。例えば、一例として所定角度として0〜75°に設定することが可能である。
【0101】
部品の配置されていない領域の中から内部の騒音源が見える領域を除いて機能上必要ではない領域を特定する(ステップS5)。
【0102】
装置本体側(内部)から騒音が入射される可能性のある領域を抽出して開口部を設ける領域から除去することにより、装置本体側(内部)からの騒音を抑制することができる。
【0103】
そして、機能上必要ではない領域において、穴領域を設定する(ステップS6)。穴領域は大小種々のものがあり、ユーザの指定により選択されるものとする。
【0104】
そして、次に、フレーム全体の穴領域の面積に基く開口率を算出する(ステップS7)。
【0105】
算出された開口率に基いて減衰する音圧レベルをシミュレートする(ステップS8)。
そして、シミュレートした結果減衰する音圧レベルが所定条件を満たしているか判定する(ステップS9)。
【0106】
具体的には、ステップS2で設定された減衰させる音圧レベルの条件を満たしているか否か、例えば、開口部を設ける場合と設けない場合との音圧レベルの差が例えば1dB以上あるか否かを判定する。
【0107】
ステップS9において、所定条件を満たしていなければステップS6に戻って再び機能上必要ではない領域において穴領域を再設定する。
【0108】
一方、ステップS9において、所定条件を満たしていれば次にフレームの強度条件に従って開口部の開口率の範囲を設定する(ステップS10)。
【0109】
具体的には、図10あるいは図11等に示される剛性特性の点線図からフレームの剛性に従う開口率を算出する。例えば、フレームの剛性が−0.3程度未満であれば補強する部材等を組み合わせて用いることにより剛性レベルを維持することが可能である場合に、その場合の開口率を算出して、開口率qの範囲を0.2以下に設定することが可能である。
【0110】
次に、算出された開口率が所定条件を満たしているか否かを判定する(ステップS11)。例えば、開口率qが0.2以下の範囲内であるか否かを判定して、満たしている場合には、ステップS13に進む。
【0111】
そして、設定された穴領域を開口部として設定(ステップS13)して、終了する(エンド)。
【0112】
一方、ステップS11において、算出された開口率が所定条件を満たしていない場合には、フレーム強度が条件を満たさない場合となるため設計エラーと判定する(ステップS12)。
【0113】
当該フローに従うことにより、画像形成装置の装置本体部からの騒音を抑制する内装部材であるフレームを設計することができる。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施の形態に従う内装部材の一部を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う内装部材のフレーム100の裏面を説明する図である。
【図3】フレーム100を説明する図である。
【図4】従来のフレーム1100を説明する図である
【図5】モータM3,M4およびモータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200を説明する図である。
【図6】モータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200の裏面側を説明する図である。
【図7】取り付け部材200を説明する図である。
【図8】従来の取り付け部材1200を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態に従う音響減衰構造の作用原理を説明する図である。
【図10】開口率qが0の場合と開口率qを変化させた場合との音圧レベルの差を説明する図である。
【図11】騒音の周波数を1000Hzとした場合の開口率qを変化させた場合の案厚レベルの差を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態に従うフレームと従来のフレームについて、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態に従う取り付け部材と従来の取り付け部材について、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態に従うフレームに対して開口部を設ける場合の設計方法を説明するフロー図である。
【図15】従来の画像形成装置の外観構成図である。
【図16】画像形成装置の装置本体部の構成の一部を説明する図である。
【図17】画像形成装置の装置本体部の斜視図である。
【符号の説明】
【0116】
1 感光体、2a〜5a トナー、6 現像ユニット、7 中間転写ユニット、7a 中間転写ベルト、8 レーザプリントヘッド、9 レーザ光、12a 給紙部、11,14 転写ローラ、15 定着器、16 排紙トレイ、34 帯電チャージャ、35 クリーナ、36 プロセスユニット、45 外装カバー、100,1100 フレーム、200,1200 取り付け部材、1000 画像形成装置、1020 表示部、1030 給紙トレイ、M1〜M4 モータ、FN ファン。
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関し、特に、画像形成装置の装置本体部からの騒音を抑制する内装部材の構成およびフレームの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置から発生する騒音が外部に漏れることを防止することは重要な課題であった。
【0003】
図15は、従来の画像形成装置の外観構成図である。
図15を参照して、従来の画像形成装置1000は、図示しない装置本体部からの騒音を抑制するために装置本体部全体を覆うように外装カバー45が正面、背面および側面側に設けられている。なお、図15の画像形成装置1000においては、外装カバー45とともに給紙トレイ1030、排紙トレイ16および表示部1020が設けられている場合が示されている。
【0004】
図16は、画像形成装置の装置本体部の構成の一部を説明する図である。
図16を参照して、電子写真方式で潜像担持体としてのドラムタイプの感光体1、現像ユニット6を構成する4つの現像器、および像担持体ベルトとしての中間転写ベルト7aを用いてカラー画像を形成するカラープリンタが示されている。なお、ここでは画像形成装置の主な部品についてのみ説明する。
【0005】
具体的には、画像形成のために例えば回転移動される像担持体の一例としてのドラム型の感光体1と、複数の、例えば4つの現像器を感光体1の移動面上に現像によりトナー像を形成する現像ユニット6と、感光体1と同期した例えば周回移動して感光体1の移動面まわりに設定される転写位置にて感光体1の移動面上に順次形成されるトナー像を順次に積層して転写される中間転写ユニット7とを備えている。
【0006】
感光体1は、レーザプリントヘッド8からの画像信号により変調されたレーザ光9による画像露光、つまり光学的な印字を受けて画像信号通りの電気的な潜像、つまり静電潜像を色ごとに形成し、これが現像によって顕像化したトナー像に形成される。
【0007】
電気的な潜像を現像することに関連して、感光体1上のトナー像は中間転写ユニット7の中間転写ベルト7a上に一次転写器としての転写ローラ11からの電荷付与によって静電的な吸引により静電転写するようにしている。
【0008】
また、中間転写ベルト7aに順次に積層して静電転写され合成し終わったトナー像は、その移動面まわりに設定される転写位置に給紙部12aなどから給送されてくる転写紙の上に二次転写器としての転写ローラ14からの静電的な吸引によって静電的に一括して二次転写し、二次転写後の転写紙を定着器15を通して画像形成を終了し排紙トレイ16上に排出する。
【0009】
一次転写および二次転写の双方とも画像形成に採用する現像方式に対応して静電転写以外の転写方式で転写されてもよい。また、定着器15も現像方式に対応したものを用いればよく、不要な場合もある。
【0010】
カラー画像形成のために複数の現像器のそれぞれはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナー2a〜5aで静電潜像を現像し、本例では粉体樹脂トナーを用いることに関連して加熱または加圧、あるいはそれら双方を採用した定着器15を用いる。なお、ブラックの現像器の使用は必須ではない。
【0011】
また、カラー画像は4つ以上の現像器を用いて形成するものでもよい。さらにカラー画像を形成するものに限られることはなく、2以上の現像器を切り替え使用するものであれば本発明を適用して有効である。
【0012】
感光体1は帯電チャージャ34、クリーナ35を有したプロセスユニット36を形成する。
【0013】
図17は、画像形成装置の装置本体部の斜視図である。
図17を参照して、ここでは、外装カバー45を除いた画像形成装置の装置本体部の斜視図が示されている。ここでは、装置本体部が設けられており、装置本体部を固定および支持する内装部材であるフレーム1100が示されている。
【0014】
また、ここでは、上述した4つの現像器を有する現像ユニット6が示されている。
そして、フレーム1100に対して装置本体部を駆動するための各種モータが設置されている場合が示されている。具体的には、上述の現像ユニット6や、中間転写ベルト7aあるいは転写ローラ11等を駆動するためのモータM1〜M4がそれぞれ設置される。また、ファンFNも設置される。
【0015】
これらのモータM1〜M4等に基く回転機構やファンFN等が駆動することにより騒音が発生するため従来においては騒音を抑制するために外装材である外装カバーの厚みや質量を大きくすることで外装材の面密度を大きくして音の透過損失を大きくする方式や、吸音材を外装材に貼り付けたりする方式が取られていた。
【0016】
また、外装材を固体層と空気層を交互に積層した積層体や中空二重壁構造にすることにより静音化を図る方式もある。
【0017】
また、特開2000−235396号公報においては、外装部材においてヘルムホルツ共鳴器を構成するように設計することにより静音化を図る方式が開示されている。
【特許文献1】特開2000−235396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来の防音構造では、外装材の厚みや質量を大きくする方式であるため装置が大型化したり、重くなったりさらには材料面からコストがかかる可能性がある。
【0019】
吸音材に使用に関しても、吸音材の材料コストの他に、吸音材貼り付けのためのスペースを確保する必要がある。
【0020】
一般的に吸音材の厚みと吸音性能の間には相関があり、装置の大型化につながることにもなる。
【0021】
また、上述したように外装部材において、積層体の構成や中空二重壁構造を取ることは、コスト面において不利であるし、装置が大型化する可能性もある。
【0022】
また、外装部材においてヘルムホルツ共鳴器を構成する場合においても同様の問題がある。さらには、ヘルムホルツ共鳴器の場合には、吸音対象となる音の周波数が限定される問題があり、設計が複雑化する可能性がある。
【0023】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【0024】
また、別の発明は、簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することが可能なフレームの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る画像形成装置は、装置本体部からの騒音を抑制する外装部材と、装置本体部を構成する騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付ける内装部材とを備える。内装部材は、外装部材との間に所定の間隔を空けて配置され、外装部材に対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための開口部を有する。
【0026】
特に、開口部は、内部機器の近傍に設けられる。
好ましくは、開口部は、装置本体部側からの音が直接漏れない位置に設けられる。
【0027】
好ましくは、内装部材に設けられる開口部の開口率は、0.2以下に設定される。
本発明に係るフレームの設計方法は、画像形成装置の外装部材の内側において、装置本体部を構成する騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付けるフレームの設計方法であって、フレームにおいて、部品が配置されない領域を抽出するステップと、フレームに穴を開けた場合に部品の配置に従って内部の騒音源が見える領域を抽出するステップと、部品の配置されていない領域の中から内部の騒音源が見える領域を除いて機能上必要ではない領域を特定するステップと、機能上必要ではない領域において、開口部を設計するステップとを備える。開口部を設計するステップは、機能上必要ではない領域において、穴領域を設定するステップと、フレーム全体の面積に対する設定された穴領域の開口率を算出するステップと、算出された開口率に基いて減衰する音圧レベルをシミュレートするステップと、シミュレートした減衰する音圧レベルが所定条件を満たしているか否かを判断するステップと、シミュレートした結果、減衰する音圧レベルが所定条件を満たしている場合に設定された穴領域の開口率がフレームの強度条件に従う所定範囲内であるか否かを判断するステップと、所定範囲内である場合には、設定された穴領域を開口部として設定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る画像形成装置は、内部機器を取り付ける内装部材において、外装部材に対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための開口部を有する。したがって、簡易な方式により装置外に放射される騒音エネルギーを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0030】
本発明にかかる画像形成装置であるカラープリンタは、内装部材に加工を施すことにより装置外に放射される騒音エネルギーを低減する。具体的には、内装部材に従来の内装部材と比較して開口部となる多数の穴領域を設ける。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に従う内装部材の一部を説明する図である。
なお、画像形成装置の外観構成図および装置本体部の構成等については、図15および図16で説明したのと同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
【0032】
図1を参照して、ここでは、本発明の実施の形態に従う内装部材であるフレーム100が示されている。ここでは、図示しないが装置本体部からの騒音を抑制する外装カバーに対向する面が示されている(以下においてはおもて面とも称する)。
【0033】
また内装部材であるフレーム100と外装カバーとの間には所定の間隔が設けられており、内装部材に生じる振動が直接フレーム100に伝達されないように設計されているものとする。
【0034】
また、内装部材には、上述したモータM1〜M4が設置されている場合が示されている。なお、モータM1〜M4は、フレーム100と図示しない外装部材である外装カバーとの間に設けられる構成である。
【0035】
なお、図1に示されるフレーム100上のモータM1〜M4の位置と図17で説明したフレーム1100と固定されているモータM1〜M4の位置とは少しレイアウト面で異なるが、機能としては同様でありベルトあるいはギヤ等を介して図16で説明した現像ユニット6や、中間転写ベルト7aあるいは転写ローラ11等が駆動される。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に従う内装部材のフレーム100の裏面を説明する図である。
【0037】
図2を参照して、フレーム100の裏面側において、取り付け部材200が取り付けられている場合が示されている。すなわち、図1をともに参照して、モータM3およびM4は、内部の部品と一体となって揺動するため、取り付け部材200に固定した状態でフレーム100にぶら下がるような構成となっている。
【0038】
図2においてモータM3,M4からの駆動の伝達にベルトが用いられ、所定の部品が当該ベルトを介して伝達駆動される。
【0039】
図3は、フレーム100を説明する図である。
図4は、従来のフレーム1100を説明する図である。
【0040】
図3および図4を参照して、従来のフレーム1100と比較して、本発明の実施の形態に従うフレーム100には比較的面積の広い開口部を設ける。
【0041】
フレーム1100においても多数の穴領域により形成される開口部が設けられているように見えるが実際には、ネジ止め用あるいは固定金具用の穴領域として設けられているものであり、部品等と組み合わせた場合には、ほとんどの穴領域は塞がれることになる。
【0042】
図4において、部品等を組み合わせた場合にフレーム1100に設けられた穴領域により形成される開口部の開口率すなわちフレーム全体の面積に対する開口部の面積の割合は、2.4%である。
【0043】
一方、図3を参照して、本発明の実施の形態に従うフレーム100について部品等を組み合わせた場合における開口部の実質的な開口率は7.8%である。
【0044】
図5は、モータM3,M4およびモータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200を説明する図である。
【0045】
図5を参照して、ここでは、フレーム100の裏面側と接触して固定される面が示されている。
【0046】
図6は、モータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200の裏面側を説明する図である。
【0047】
図5および図6に示されるように取り付け部材200においても、モータM3,M4等を取り付けるためのネジ止め用あるいは固定金具用の穴以外の多数の穴領域を設ける。
【0048】
図7は、取り付け部材200を説明する図である。
図8は、従来の取り付け部材1200を説明する図である。
【0049】
図8を参照して、従来の取り付け部材には、ネジ止め用あるいは固定金具用の穴が設けられているに過ぎずほぼ穴領域は塞がれることになる。
【0050】
図7を参照して、従来の取り付け部材1200と比較して、本発明の実施の形態に従う取り付け部材にはネジ止め用あるいは固定金具用の穴以外に開口部を形成する多数の穴領域を設ける。
【0051】
なお、本例においては、大小種々の面積の穴領域を分散的に設けて開口部を形成する場合が示されている。当該構成は、穴領域を分散的に設けて開口部の面積を確保しつつ取り付け部材の強度も確保するために行われている。
【0052】
また、多数の穴領域は、モータM3,M4が取り付けられる近傍に多数設けられることにより騒音の減衰効果を大きくすることが可能である。
【0053】
図7において、部品等を組み合わせた場合に取り付け部材200に設けられた穴領域により形成される開口部の開口率すなわち取り付け部材全体の面積に対する開口部の面積の割合は、6.9%である。
【0054】
一方、図8を参照して、従来の取り付け部材1200について部品等を組み合わせた場合における開口部の実質的な開口率は1.2%である。
【0055】
図9は、本発明の実施の形態に従う音響減衰構造の作用原理を説明する図である。
図9を参照して、ここでは、外装部材である外装カバー45と、内装部材であるフレーム100とが示されている。
【0056】
ここで、フレーム100にモータおよびファン等の騒音あるいは振動源が固定されたものであるためのフレーム100が騒音源として考えられる。
【0057】
ここで、Piは、フレーム100から外装部材である外装カバー45に放射される入射音響エネルギーとする。なお、フレーム100から発生する騒音は様々な方向に広がっていくが、ここでは、外装カバー45に届くエネルギーを対象とする。
【0058】
外装カバー45に届いたエネルギーの一部は、透過して装置外部で騒音として認識される。
【0059】
Ptは、外装カバー45を透過した透過エネルギーである。
外装カバー45に届いたエネルギーの一部は、反射してフレーム100の方向に戻っていく。Prは、外装カバー45で反射した反射音響エネルギーである。
【0060】
反射音響エネルギーPrは、フレーム100に達するとその一部は装置本体部に透過し、一部は反射して再び外装カバー45の方向に向かっていく。
【0061】
Pzは、装置本体部に内部入射する透過音響エネルギーである。
装置外部に達する騒音は、これらの透過および反射を繰り返して外部に透過するエネルギーの総和として考えることが可能である。
【0062】
なお、音響エネルギーは、各部材に対して垂直に入射すると仮定する。また、各部材の外側からの廻り込みは無いものとし、装置本体部に内部入射する透過音響エネルギーPzは内部にて減衰するものと仮定する。
【0063】
外装カバー45およびフレーム100の材質に関する定数をα、βとする。また、フレーム100に設けられた開口部の全体の面積に対する開口部の面積の割合である開口率をqとする。
【0064】
外装カバー45とフレーム100との間の反射が無限回繰り返された場合に入射音響エネルギーPiと透過音響エネルギーPtとの関係は「騒音制御工学ハンドブック」(社団法人日本騒音制御工学会編、技報堂出版株式会社2001年4月発行)等に示されている関係式を用いて次式のように導出できる。
【0065】
【数1】
【0066】
なお、α、βは、次式となる。
【0067】
【数2】
【0068】
ここで、mA,mBはそれぞれ外装カバー45およびフレーム100の面密度、ωは角周波数、ρは空気密度、cは、音速を指し示す。
【0069】
一般的に騒音の大きさの単位として用いられる音圧レベルの関係は、入射音圧レベルをLpi、透過音圧レベルをLptとすると、次式で表わされる。
【0070】
【数3】
【0071】
また、音響透過損失Rは、次式で示される。
【0072】
【数4】
【0073】
ここで、外装カバー45について厚さ2.5mm、のABS樹脂(密度1.1g/mm3)とすると、面密度mAは、2.75kg/mm2となる。
【0074】
また、フレーム100について厚さ1.0mm、の鋼板(密度7.6g/mm3)とすると、面密度mBは、7.6kg/mm2となる。
【0075】
外装カバーの音響透過損失Raは、次式で示される。
【0076】
【数5】
【0077】
また、フレーム100の音響透過損失Rbは、次式で示される。
【0078】
【数6】
【0079】
図10は、開口率qが0の場合と開口率qを変化させた場合との音圧レベルの差を説明する図である。
【0080】
図10を参照して、左縦軸は音圧レベルの差が示されている。また、横軸は開口率である。
【0081】
図10に示されるように開口率qが増加すればするほど音圧レベルの差が大きくなる。すなわち、音響減衰効果が高くなる。
【0082】
一方、右縦軸は、開口率qが0の場合と開口率の影響に従うフレームの剛性割合が示されている。剛性特性については点線で示されており、開口率qが増加すればするほどフレームの剛性は低下することになる。
【0083】
したがって、開口率qとフレームの剛性(強度)はトレードオフの関係にある。
なお、図10においては、騒音の周波数を500Hzとしてシミュレーションしたものである。
【0084】
図11は、騒音の周波数を1000Hzとした場合の開口率qを変化させた場合の音圧レベルの差を説明する図である。
【0085】
図11を参照して、ここで示されているように騒音の周波数が高いほど開口率の影響が大きいことが分かる。なお、剛性特性については、点線で示されている図10で示されている剛性特性と同じである。
【0086】
本例においては、騒音周波数を500Hzと1000Hzの場合についてシミュレーションした場合を説明したがこれ以外の騒音周波数の場合においても同様の効果を期待することができる。
【0087】
図12は、本発明の実施の形態に従うフレームと従来のフレームについて、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【0088】
具体的には、本発明の実施の形態に従うフレーム100および従来のフレーム1100の測定においては、取り付け部材200をそれぞれ取り付けた状態で測定した。
【0089】
図12に示されるように、従来のフレームにおいては、モータ駆動音として45.4dBの音圧レベルを計測した。一方、本発明のフレームにおいては、モータ駆動音として43.2dBの音圧レベルを計測した。したがって、その差2.2dBであった。
【0090】
一般的には、音圧レベルで1dBの差を人間は認識することが可能であると言われており、図12に示される計測結果に基けば十分効果を認識できるレベルである。
【0091】
図13は、本発明の実施の形態に従う取り付け部材と従来の取り付け部材について、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【0092】
具体的には、本発明の実施の形態に従う取り付け部材200および従来の取り付け部材1200の測定においては、フレーム100をそれぞれ取り付けた状態で測定した。
【0093】
図13に示されるように、従来の取り付け部材1200においては、モータ駆動音として42.5dBの音圧レベルを計測した。一方、本発明の取り付け部材200においては、モータ駆動音として40.9dBの音圧レベルを計測した。したがって、その差は1.6dBであった。
【0094】
したがって、当該構成においても図13に示される計測結果に基けば十分に効果を認識することが可能である。
【0095】
上述したように本発明にかかる画像形成装置においては、装置本体部からの騒音を抑制する外装部材である外装カバー45に対向するように内装部材であるフレームあるいは取り付け部材を設ける。そして、外装部材に対して放射され、反射された反射音を装置本体部の側へ透過させるための多数の穴領域で形成される開口部を設ける。フレーム等に開口部を設けることにより、簡易な方式で装置外に放射される騒音エネルギーを低減することができる。
【0096】
図14は、本発明の実施の形態に従うフレームに対して開口部を設ける場合の設計方法を説明するフロー図である。
【0097】
図14を参照して、まず、開口部を設ける前の設計されたフレームに対して必要な部品を配置する(ステップS1)。
【0098】
次に、減衰させる音圧レベルの条件およびフレームの強度の条件を設定する(ステップS2)。
【0099】
当該フレームにおいて、部品の配置されていない領域を抽出する(ステップS3)。
フレームに穴を開けた場合に部品の配置に従って内部の騒音源が見える領域を抽出する(ステップS4)。
【0100】
画像形成装置の装置本体側(内部)においては、用紙の給紙動作を行なう機構部や搬送ローラの回転/停止を制御するクラッチや電磁力によって可動片を引き込んだり,押し出したりするアクチュエータであるソレノイドが内部の騒音源となることが考えられる。したがって、穴を開けた場合にこれらの内部の騒音源が見える領域であるか否かを判断して、見える領域を抽出する。具体的には、一例として、フレームに穴を開けた場合にその任意の点と内部の騒音源とを結ぶ線と、フレームの法線との成す角度を測って所定角度以内か否かを判断して、所定角度以内であれば内部の騒音源が見える領域であると判断することが可能である。例えば、一例として所定角度として0〜75°に設定することが可能である。
【0101】
部品の配置されていない領域の中から内部の騒音源が見える領域を除いて機能上必要ではない領域を特定する(ステップS5)。
【0102】
装置本体側(内部)から騒音が入射される可能性のある領域を抽出して開口部を設ける領域から除去することにより、装置本体側(内部)からの騒音を抑制することができる。
【0103】
そして、機能上必要ではない領域において、穴領域を設定する(ステップS6)。穴領域は大小種々のものがあり、ユーザの指定により選択されるものとする。
【0104】
そして、次に、フレーム全体の穴領域の面積に基く開口率を算出する(ステップS7)。
【0105】
算出された開口率に基いて減衰する音圧レベルをシミュレートする(ステップS8)。
そして、シミュレートした結果減衰する音圧レベルが所定条件を満たしているか判定する(ステップS9)。
【0106】
具体的には、ステップS2で設定された減衰させる音圧レベルの条件を満たしているか否か、例えば、開口部を設ける場合と設けない場合との音圧レベルの差が例えば1dB以上あるか否かを判定する。
【0107】
ステップS9において、所定条件を満たしていなければステップS6に戻って再び機能上必要ではない領域において穴領域を再設定する。
【0108】
一方、ステップS9において、所定条件を満たしていれば次にフレームの強度条件に従って開口部の開口率の範囲を設定する(ステップS10)。
【0109】
具体的には、図10あるいは図11等に示される剛性特性の点線図からフレームの剛性に従う開口率を算出する。例えば、フレームの剛性が−0.3程度未満であれば補強する部材等を組み合わせて用いることにより剛性レベルを維持することが可能である場合に、その場合の開口率を算出して、開口率qの範囲を0.2以下に設定することが可能である。
【0110】
次に、算出された開口率が所定条件を満たしているか否かを判定する(ステップS11)。例えば、開口率qが0.2以下の範囲内であるか否かを判定して、満たしている場合には、ステップS13に進む。
【0111】
そして、設定された穴領域を開口部として設定(ステップS13)して、終了する(エンド)。
【0112】
一方、ステップS11において、算出された開口率が所定条件を満たしていない場合には、フレーム強度が条件を満たさない場合となるため設計エラーと判定する(ステップS12)。
【0113】
当該フローに従うことにより、画像形成装置の装置本体部からの騒音を抑制する内装部材であるフレームを設計することができる。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施の形態に従う内装部材の一部を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に従う内装部材のフレーム100の裏面を説明する図である。
【図3】フレーム100を説明する図である。
【図4】従来のフレーム1100を説明する図である
【図5】モータM3,M4およびモータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200を説明する図である。
【図6】モータM3,M4が直接取り付けられる取り付け部材200の裏面側を説明する図である。
【図7】取り付け部材200を説明する図である。
【図8】従来の取り付け部材1200を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態に従う音響減衰構造の作用原理を説明する図である。
【図10】開口率qが0の場合と開口率qを変化させた場合との音圧レベルの差を説明する図である。
【図11】騒音の周波数を1000Hzとした場合の開口率qを変化させた場合の案厚レベルの差を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態に従うフレームと従来のフレームについて、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態に従う取り付け部材と従来の取り付け部材について、取り付けられたモータを駆動した場合に測定した音圧レベルの比較結果を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態に従うフレームに対して開口部を設ける場合の設計方法を説明するフロー図である。
【図15】従来の画像形成装置の外観構成図である。
【図16】画像形成装置の装置本体部の構成の一部を説明する図である。
【図17】画像形成装置の装置本体部の斜視図である。
【符号の説明】
【0116】
1 感光体、2a〜5a トナー、6 現像ユニット、7 中間転写ユニット、7a 中間転写ベルト、8 レーザプリントヘッド、9 レーザ光、12a 給紙部、11,14 転写ローラ、15 定着器、16 排紙トレイ、34 帯電チャージャ、35 クリーナ、36 プロセスユニット、45 外装カバー、100,1100 フレーム、200,1200 取り付け部材、1000 画像形成装置、1020 表示部、1030 給紙トレイ、M1〜M4 モータ、FN ファン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体部からの騒音を抑制する外装部材と、
前記装置本体部を構成する、騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付ける内装部材とを備え、
前記内装部材は、前記外装部材との間に所定の間隔を空けて配置され、前記内部機器から前記外装部材に対して放射され、反射された反射音を前記装置本体部の側へ透過させるための開口部を有する、画像形成装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記内部機器の近傍に設けられる、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記装置本体部側からの音が直接漏れない位置に設けられる、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記内装部材に設けられる開口部の開口率は、0.2以下に設定される、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置の外装部材の内側において、装置本体部を構成する騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付けるフレームの設計方法であって、
前記フレームにおいて、部品が配置されない領域を抽出するステップと、
前記フレームに穴を開けた場合に部品の配置に従って内部の騒音源が見える領域を抽出するステップと、
部品の配置されていない領域の中から内部の騒音源が見える領域を除いて機能上必要ではない領域を特定するステップと、
前記機能上必要ではない領域において、開口部を設計するステップとを備え、
前記開口部を設計するステップは、
前記機能上必要ではない領域において、穴領域を設定するステップと、
前記フレーム全体の面積に対する前記設定された穴領域の開口率を算出するステップと、
前記算出された開口率に基いて減衰する音圧レベルをシミュレートするステップと、
前記シミュレートした減衰する音圧レベルが所定条件を満たしているか否かを判断するステップと、
前記シミュレートした結果、減衰する音圧レベルが所定条件を満たしている場合に設定された穴領域の開口率が前記フレームの強度条件に従う所定範囲内であるか否かを判断するステップと、
所定範囲内である場合には、前記設定された穴領域を前記開口部として設定するステップとを含む、フレームの設計方法。
【請求項1】
装置本体部からの騒音を抑制する外装部材と、
前記装置本体部を構成する、騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付ける内装部材とを備え、
前記内装部材は、前記外装部材との間に所定の間隔を空けて配置され、前記内部機器から前記外装部材に対して放射され、反射された反射音を前記装置本体部の側へ透過させるための開口部を有する、画像形成装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記内部機器の近傍に設けられる、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記装置本体部側からの音が直接漏れない位置に設けられる、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記内装部材に設けられる開口部の開口率は、0.2以下に設定される、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置の外装部材の内側において、装置本体部を構成する騒音あるいは振動を生じさせる内部機器を取り付けるフレームの設計方法であって、
前記フレームにおいて、部品が配置されない領域を抽出するステップと、
前記フレームに穴を開けた場合に部品の配置に従って内部の騒音源が見える領域を抽出するステップと、
部品の配置されていない領域の中から内部の騒音源が見える領域を除いて機能上必要ではない領域を特定するステップと、
前記機能上必要ではない領域において、開口部を設計するステップとを備え、
前記開口部を設計するステップは、
前記機能上必要ではない領域において、穴領域を設定するステップと、
前記フレーム全体の面積に対する前記設定された穴領域の開口率を算出するステップと、
前記算出された開口率に基いて減衰する音圧レベルをシミュレートするステップと、
前記シミュレートした減衰する音圧レベルが所定条件を満たしているか否かを判断するステップと、
前記シミュレートした結果、減衰する音圧レベルが所定条件を満たしている場合に設定された穴領域の開口率が前記フレームの強度条件に従う所定範囲内であるか否かを判断するステップと、
所定範囲内である場合には、前記設定された穴領域を前記開口部として設定するステップとを含む、フレームの設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−31347(P2009−31347A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192249(P2007−192249)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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