説明

画像形成装置および像担持体停止方法

【課題】中間転写ベルト等の像担持体への転写残トナーの固着を防止して良好な画質を維持し、且つ、像担持体の長寿命化および消費電力の抑制を実現すること。
【解決手段】2次転写位置近傍の内部温度T1および外気温度T2を内部温度センサおよび外気温度センサによりそれぞれ取得し、取得されたT1およびT2に基づき、内部温度検出位置38からクリーニングブレード37までの停止候補区間の温度分布を推測し、一の画像形成ジョブの終了の際に、停止候補区間内に温度が転写残トナーが中間転写ベルト31に固着しないトナー固着安全温度Tsとなる安全位置がある場合には、中間転写ベルトの転写残トナーが付着した領域の後端部が安全位置まで移動したときに、中間転写ベルトを停止させ、安全位置がない場合には、クリーニングブレード37により転写残トナーを除去した後に中間転写ベルトを停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体停止方法および当該像担持体停止方法を実行する画像形成装置に関し、特に、転写後に像担持体の停止を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像に現像器からトナーを供給して顕像化し、当該顕像化されたトナー像を直接用紙に転写するか、中間転写ベルト等の別の像担持体上に一度トナー像を転写して、転写されたトナー像を用紙へとさらに転写した後、熱定着して画像形成が行われる。
【0003】
ここで、用紙への転写の際に、像担持体上のトナーの全てが用紙上に転写されるというわけではなく、いくらかは転写されずに像担持体表面に残留する(以下、「転写残トナー」という。)。
転写残トナーは、次の画像形成の際に画像汚れの原因となるほか、定着装置からの熱で溶融して中間転写ベルト上に固着すると、その部分に画像が形成されず白抜けの原因となる。そのため、次の画像形成プロセスに先立って転写残トナーを除去することが必要となる。転写残トナーを除去する方法としては様々な方式が知られているが、弾性を有する板状のクリーニングブレードにより像担持体表面を摺擦して転写残トナーを掻き落として回収する方式が簡便で安価なことより一般的に使用されている。
【0004】
しかし、この場合、クリーニングブレードとの摩擦により中間転写ベルトが磨耗して劣化が促進されるという問題がある。
そこで、中間転写ベルトの回転駆動距離を短くして上記磨耗を抑制する方法として、転写後すぐにクリーニングせずに転写残トナーが転写位置を通過した直後に中間転写ベルトを停止させて駆動距離を極力短くする構成がある。この場合、次の画像形成プロセス実行の際に中間転写ベルトが回転駆動されると転写残トナーはクリーニングされる。
【0005】
しかし、定着装置は、通常、転写位置のすぐ用紙搬送方向下流側に設けられており、転写位置近傍は定着装置からの熱により高温になりやすいため、上記の構成の場合、クリーニングされずに中間転写ベルト上に付着している転写残トナーが熱により溶融して中間転写ベルトに固着する虞がある。
さらに、定着温度を低くして省エネ化を図るために、近年、より低い温度で溶融して定着可能な低温定着トナーの開発が進んでおり、このようなトナーが使用される場合、転写残トナーがより低い温度でも溶融して中間転写ベルト上に固着しやすくなる。
【0006】
そこで、中間転写ベルト上の転写残トナーの溶融を防止する技術の一つとして、冷却ファンを設けて中間転写ベルト(中間転写体)を冷却する構成が、特許文献1に開示されている。
また、他の一つとして、画像形成装置内の空気を装置外へと排出する排風ファンや中間転写ベルトを冷却する冷却ファン、従動ローラに冷却用のヒートパイプを設け、中間転写ベルトを冷却する構成が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−31503号公報
【特許文献2】特開2001−296755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および2の構成においては、2次転写後に中間転写ベルトを停止させるまでの駆動距離は低減されないため、クリーニングブレードによる中間転写ベルトの磨耗を抑制することはできない。
さらには、冷却ファンを設ける場合、その駆動により消費電力が増加するため、省エネの観点から好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであって、中間転写ベルト等の像担持体への転写残トナーの固着を防止して良好な画質を維持し、且つ、像担持体の長寿命化および消費電力の抑制を実現することができる画像形成装置、および画像形成装置において実行される像担持体停止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、駆動手段により回転駆動される像担持体上のトナー像を、転写位置において被転写体に転写する画像形成装置であって、像担持体の回動経路上に配され、前記像担持体上に残存している転写残トナーを除去する清掃手段と、前記転写残トナーの前記像担持体への固着容易性を指標する情報を取得する取得手段と、前記取得された情報に基づき、前記転写残トナーの固着容易性を指標する情報が安全値以下であるかどうかを判定する判定手段と、一の画像形成ジョブの終了の際に、前記判定手段により、前記転写残トナーの固着容易性を指標する情報の値が、所定の安全値以下であると判定された場合には、像担持体の転写残トナーが付着した領域の後端部が、前記清掃手段による清掃位置に到達するまでの所定の停止位置まで移動したときに、前記駆動手段を停止させ、前記転写残トナーの固着容易性を指標する情報の値が、所定の安全値よりも大きいと判定された場合には、前記清掃手段により転写残トナーを除去させた後に、前記駆動手段を停止させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、転写残トナーの固着容易性を指標する情報の値が所定の安全値以下である場合には、転写残トナーが像担持体に固着する虞がないので、良好な画質を維持しつつ、転写残トナーが付着した領域の後端部が清掃手段による清掃位置に到達する前に像担持体を停止させることにより、転写後停止されるまでの像担持体の駆動距離を低減し、その結果、清掃手段による像担持体の磨耗を低減させて像担持体の長寿命化を図ると共に、消費電力を抑制することができる。
【0012】
また、転写残トナーの固着容易性を指標する情報の値が所定の安全値よりも大きく、転写残トナーを像担持体に付着したままにしておくと固着する虞がある場合には、清掃手段により転写残トナーを除去させた後に像担持体を停止させて、良好な画質を維持することができる。
ここで、前記取得手段は、特定の位置における固着容易性を指標する情報に基づいて、前記像担持体の回転方向の前記転写位置から前記清掃位置までに到る停止候補区間における固着容易性の変化の状態を推測により取得し、前記判定手段は、前記停止候補区間において、前記推測された固着容易性が前記安全値以下となる位置があるか否かを判定し、前記制御手段は、前記固着容易性が前記安全値以下と判定された位置がある場合には、これを停止位置として、像担持体の転写残トナーが付着した領域の後端部が、当該停止位置まで移動したときに、前記駆動手段を停止させ、前記固着容易性が前記安全値以下と判定された位置がない場合には、前記清掃手段により転写残トナーを除去させた後に、前記駆動手段を停止させてもよい。
【0013】
これにより、停止候補区間における転写残トナーの固着容易性の変化の状態を推測により取得するため、当該変化の状態を検出するための検出手段を当該停止候補区間に亘って設けなくて済むため、コスト抑制に資することができる。
また、前記転写残トナーの固着容易性を指標する情報は、機外の環境情報および前記転写位置付近の環境情報のうち、少なくとも一方を含み、前記環境情報は、温度および湿度のうち、少なくとも一方を含んでもよい。
【0014】
これにより、停止候補区間の両端付近の環境情報に基づいて転写残トナーの像担持体への固着容易性を判定するため、停止候補区間から離れた箇所の環境情報を用いる場合と比べて、当該区間における転写残トナーの固着容易性についてより正確な判断を行うことができる。
また、転写残トナーの固着容易性に大きく影響する要素である温度および/もしくは湿度に基づいて、転写残トナーの固着容易性を判断するため、転写残トナーの固着容易性をより正確に判断することができる。
【0015】
また、本発明は、上記画像形成装置において実行される像担持体停止方法とすることもできる。この場合においても、上記と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る画像形成装置の概略構成を示した模式的断面図である。
【図2】上記画像形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】停止領域の温度分布を表すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る中間転写ベルト停止制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る中間転写ベルト停止制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係る推測内部温度算出用の係数のテーブルである。
【図7】本発明の実施の形態3に係る中間転写ベルト停止制御の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
以下、本発明に係る定着装置および画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
(1−1.プリンタの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るプリンタ100の全体構成を示す概略断面図である。当該プリンタ100は、画像形成部10、給紙部20、転写部30、定着装置40、および制御部50等を備える構成となっている。
【0018】
このプリンタ100は、ネットワーク(例えばLAN:Local Area Network)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを多重転写してフルカラーの画像形成を実行する。
以下、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各再現色をC、M、Y、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのC、M、Y、Kを添字として付加する。
【0019】
画像形成部10は、作像部1C、1M、1Y、1K、光学部15、中間転写ベルト31、クリーニングブレード14および37などを備えている。
中間転写ベルト31は、無端状のベルトであり、駆動ローラ32と従動ローラ33に張架されて矢印A方向に周回駆動される。
クリーニングブレード14および37は、それぞれ感光体ドラム11および中間転写ベルト31に対してカウンター方向に当接して配置されており、それぞれ感光体ドラム11および中間転写ベルト31表面の残留トナーや紙粉等のゴミを清掃する。
【0020】
光学部15は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、制御部50からの駆動信号によりC〜K色の画像形成のためのレーザ光を発し、感光体ドラム11C〜11Kを露光走査する。この露光走査によって、帯電チャージャ12C〜12Kにより帯電された感光体ドラム11C〜11K上に静電潜像が形成される。各静電潜像の形成は、現像器13C〜13Kにより現像されて感光体ドラム11C〜11K上にC〜K色のトナー像が、中間転写ベルト31上の同じ位置に重ね合わせて1次転写されるようにタイミングをずらして実行される。そして、1次転写ローラ34C〜34Kによって付与される静電力により中間転写ベルト31上に各色のトナー像が順次転写されてフルカラーのトナー像が形成され、さらに2次転写位置36方向に移動する。
【0021】
一方、給紙部20は、シートSを収容する給紙カセット21と、給紙カセット21内のシートSを搬送路23上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ22と、繰り出されたシートSを2次転写位置36に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対24などを備えており、中間転写ベルト31上のトナー像の移動タイミングに合わせて給紙部20からシートSを2次転写位置36に給送し、2次転写ローラ35による静電力の作用により中間転写ベルト31上のトナー像が一括してシートS上に2次転写される。
【0022】
2次転写位置36を通過したシートSは、さらに定着装置40に搬送され、シートS上のトナー像(未定着画像)が、定着装置40における加熱・加圧によりシートSに定着された後、排出ローラ対61を介して排出トレイ62上に排出される。
また、制御部50は、外部の端末との通信や画像処理、上記各部の駆動制御などを実行する。
【0023】
プリンタ100の前面上部の操作しやすい位置には、操作パネル8(図2参照)が設けられている。操作パネル8には、コピー枚数を入力するためのテンキー、コピー開始を指示するためのコピースタートキー、画像形成モードを選択するためのキーに加えて、プリンタ100の状態、例えば、ジョブ実行指示を待っている状態(待機中)であることなどを示すメッセージ画面が表示されるタッチパネル式の液晶表示部が備えられており、当該液晶表示部のタッチパネル機能により、給紙トレイの選択やコピー濃度の調整等を受付ける。
【0024】
2次転写位置36よりも中間転写ベルト31の走行方向下流側であって2次転写位置36近傍には、当該2次転写位置36近傍の温度を検出する内部温度センサ71が配設されている。
また、クリーニングブレード37の近傍には、プリンタ100が設置されている場所の機外の温度を検出する外気温度センサ72が配設されている。
【0025】
図2は、制御部50の構成を示すブロック図である。同図に示すように制御部50は主な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)51、通信インターフェース(I/F)部52、ROM(Read Only Memory)53、RAM(Random Access Memory)54、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )55、バックアップメモリ56等を備える。
【0026】
通信I/F部52は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースであり、外部からのプリントジョブのデータを受信する。
CPU51は、ROM53から必要なプログラムを読み出し、上記画像形成部10、給紙部20、転写部30、定着装置40の動作をタイミングを取りながら統一的に制御して、通信I/F部52が受信したプリントジョブのデータに基づくプリント動作を円滑に実行させる。
【0027】
EEPROM55は、不揮発メモリより成る記憶手段であり、転写電圧情報や、画像安定化パラメータ値等の情報を記憶する。
バックアップメモリ56は、EEPROM等の不揮発性メモリから成り、入力されたプリントジョブの定着温度、プリント枚数、両面プリントか片面プリントかといった情報が記憶される。また、後述する中間転写ベルト31上の停止候補区間における温度分布を推測するためのテーブルのデータが格納されている。
【0028】
なお、バックアップメモリ56、は、独立したメモリデバイスでなくてもよく、プリントジョブの情報を記憶する機能をEEPROM55に、上記温度分布を推測するためのテーブルのデータを格納する機能をROM53に、それぞれ実行させるとしてもよい。
固着安全性判定部511および温度分布推測部512は、CPU51の機能の一部である。
【0029】
温度分布推測部512は、中間転写ベルト31の走行方向下流側における2次転写位置36の近傍であって内部温度センサ71により温度が検出される位置に最も近い中間転写ベルト31の回動経路における位置である内部温度検出位置38からクリーニングブレード37に至る区間における温度分布を推測する。
固着安全性判定部は、内部温度センサ71による検出温度が、転写残トナーが融着する虞のない安全温度以下であるかどうかを判定し、また、温度分布推測部512により推測された温度分布に基づいて、上記区間において安全温度以下の位置があるかどうかを判定する。
【0030】
固着安全性判定部511および温度分布推測部512については、詳しくは、後述する。
また、CPU51は、単一のCPUに限られず、互いに連携して働く複数のCPUから成ってもよい。
(1−2.中間転写ベルト停止制御)
(1−2−1.温度分布)
プリンタ等の画像形成装置においては、装置小型化のため、通常、定着装置は2次転写位置のすぐ下流側に設けられており、その近傍は定着装置からの熱により温度が高くなりやすい。
【0031】
また、ゴム等から成るクリーニングブレードは、熱によりゴムが柔らかくなるとクリーニング性能が低下するため、一般に2次転写位置から離れた位置に設けられている。
加えて、装置小型化のため、装置の高さ方向(図1においては、Y−Y’方向)のサイズを縮小する目的で、クリーニングブレードは、中間転写ベルトの上(Y方向)または下(Y’方向)ではなく、横(X方向またはX’方向)に設けられている場合が多い。
【0032】
そのため、図1に示すように、駆動ローラ32と従動ローラ33に張架された中間転写ベルト31の水平方向における一方の端に定着装置40が、もう一方の端にクリーニングブレード37が配設される構成が一般に広く採用されている。
この場合、2次転写終了後に、転写残トナーRをクリーニングブレード37によりクリーニングするために、中間転写ベルト31を約半周分回転させなくてはならならず、クリーニングブレード37による中間転写ベルト31の磨耗が促進される要因の1つとなっている。
【0033】
従って、クリーニングブレード37をもっと2次転写位置に近い位置に配置するか、もしくは、転写残トナーRをクリーニングブレード37まで移動させる手前で中間転写ベルト31を停止させておくことができれば、上記クリーニングブレード37による中間転写ベルト31の磨耗を抑制することができる。
ところが、クリーニングブレード37は、上述のように、定着装置40からの熱の影響を極力避けるために、定着装置40の用紙搬送方向すぐ上流側にある2次転写位置に近い位置に配置することが難しい。
【0034】
また、定着装置40からの熱を遮るための熱遮蔽部材等を定着装置40とクリーニングブレード37との間に設ける場合、その分コストアップの要因となる上、熱遮蔽部材を設置するためのスペースが必要となり、装置大型化の要因にもなる。
そこで、本実施の形態においては、内部温度センサ71および外気温度センサ72による検出温度に基づいて、中間転写ベルト31の回動経路における内部温度検出位置38からクリーニングブレード37までの区間の温度分布を推測し、推測された温度分布において、転写残トナーRが溶融して中間転写ベルト31上に固着する虞のない温度領域のうち最も高い温度(以下、「安全温度」という。)以下の位置があるかどうかを判定し、安全温度以下の位置がある場合には、当該位置を中間転写ベルト31の停止位置に設定し、中間転写ベルト31上の転写残トナーRが付着している領域の中間転写ベルト31の走行方向における後端部が当該停止位置まで移動したときに、駆動ローラ32を駆動する不図示のモータを制御して中間転写ベルト31の回転を停止させる制御を行う。以下、中間転写ベルト31上の転写残トナーRが付着している領域の中間転写ベルト31の走行方向における後端部を、「転写残トナーRの後端部」といい、中間転写ベルト31の回動経路における内部温度検出位置38からクリーニングブレード37までの区間を、「停止候補区間」という。
【0035】
なお、上記転写残トナーRの後端部の位置の特定については、例えば、以下のようにして行うことができる。感光体ドラム11の露光走査終了時点からの経過時間をカウントし、露光位置から1次転写位置までの距離を感光体ドラム11の回転周速度で除して感光体ドラム11上に形成されたトナー像の後端部が中間転写ベルト31に転写されるタイミングを算出し、当該転写タイミングからの経過時間と中間転写ベルト31の走行速度との積から、トナー像後端部の1次転写位置からの走行距離を求め、当該走行距離を転写残トナーRの後端部の1次転写位置からの走行距離として、転写残トナーRの後端部の位置を特定してもよい。カラー画像が形成される場合には、各色それぞれの感光体ドラム11についてトナー像の後端部が中間転写ベルト31に転写されるタイミングを算出し、その中で中間転写ベルト31の走行方向において最も下流側の位置に転写される部分のトナー色用の感光体ドラム11の転写タイミングを採用すると、転写残トナーRの後端部をより正確に検出することができる。
【0036】
また、次のようにしてもよい。用紙の搬送路上に設けられた用紙センサ(不図示)による用紙後端の検出時間から用紙後端が2次転写位置36を通過するタイミングを算出し、2次転写位置36を用紙後端が通過する際に用紙後端が接触していた中間転写ベルト31上の位置を転写残トナーRの後端として(即ち、用紙後端をトナー画像の後端と略等しいとみなして)、2次転写位置を通過した時点からの経過時間と中間転写ベルトの走行速度との積から中間転写ベルトの走行距離を求め、当該走行距離を転写残トナーRの後端部の2次転写位置36からの走行距離として、転写残トナーRの後端部の位置を特定してもよい。
【0037】
なお、転写残トナーRの後端部の検出方法については、上記に限られず、その他の適当な方法により検出してもよい。
図3は、停止候補区間の温度分布を表すグラフである。当該温度分布のグラフは、中間転写ベルト31表面近傍の空気の温度分布を表している。ここで、中間転写ベルト31表面近傍とは、具体的には、例えば、中間転写ベルト31の表面から20[mm]離れた距離である。中間転写ベルト31は、画像形成動作実行中は回転駆動されて表面温度が均一化されているため、停止直後においては同図に示す温度分布とは異なる温度分布の状態となっている場合が多い。しかし、中間転写ベルト31を構成している樹脂等の材料は非常に薄く(例えば、90[μm])、熱容量が小さいため、比較的短い時間で中間転写ベルト31表面近傍の空気の温度と略等しくなって、同図に示す温度分布と略一致するようになる。
【0038】
同図に示すように、内部温度センサ71により検出される内部温度T1は、定着装置40からの熱の影響を受けて温度が高く、クリーニングブレード37に近づくにつれて温度が低下していく。
なお、同図に示す温度分布のグラフは一例であり、機種や使用環境、使用条件等によって、同図に示すグラフとは異なる形状の温度分布グラフとなる場合もある。
【0039】
プリンタ100の図1におけるX方向側において定着装置40の近傍には、定着装置40からの熱により温められた空気や定着の際に用紙の水分が蒸発して生じた水蒸気を機外へ排出するための排気ファン73が設けられ、X’方向側においてクリーニングブレード37および外気温度センサ72近傍には、外気を機内に取り込むための吸気口74が設けられている。排気ファン73により機内の空気が排出され、吸気口74を通じて機外の空気が取り込まれるため、クリーニングブレード37近傍の温度は、外気の温度と略等しくなっている。従って、本実施の形態においては、外気温度センサ72による外気の検出温度T2をクリーニングブレード37の設置位置における中間転写ベルト31の表面温度としている。
【0040】
図3のグラフに戻って、トナー固着安全温度Tsは、転写残トナーRが溶融して中間転写ベルト31表面に固着する虞がある温度領域と固着する虞がない温度領域との間の閾値であり、具体的には、トナーのガラス転移点温度である溶融温度から、固着の危険性を回避して安全性をより高めるために若干の余裕を設けて、その分だけ溶融温度より低めに設定されている温度である。前記余裕については、個々のプリンタの機種によってそれぞれのサイズや装置内部の気流の向きおよび速度等の要素を加味して個々の機種ごとに決定される。
【0041】
同図に示す温度分布のグラフは、内部温度T1と外気温度T2との様々な組み合わせについて予め実験等により測定されたデータがバックアップメモリ56に記憶されており、必要に応じて当該バックアップメモリ56から読み出される。当該バックアップメモリ56に記憶されているデータは、グラフそのもののデータでもよく、グラフを導き出すための数式等が記憶されていてもよい。
【0042】
当該温度分布グラフにおいて、停止候補区間内に、温度がトナー固着安全温度Tsとなる位置があれば、当該位置よりもクリーニングブレード37側(中間転写ベルト31の走行方向下流側)の温度はトナー固着安全温度Tsよりも低いため、転写残トナーRの後端部が、温度分布グラフにおいて温度がトナー固着安全温度Tsとなる位置よりもクリーニングブレード37側に位置するように中間転写ベルト31を停止させれば、転写残トナーRが溶融して固着する虞はない。以下、上記温度分布グラフにおいて温度がトナー固着安全温度Tsとなる位置を「安全位置」という。
【0043】
ここで、2次転写後の中間転写ベルト31の走行距離低減による磨耗抑制効果をできるだけ高くするためには、転写残トナーRの後端が安全位置に来た時に中間転写ベルト31を停止させればよい。以下、転写残トナーの後端を停止させる位置を「転写残トナー停止位置」という。
なお、中間転写ベルト31を回転駆動させる駆動源としてのモータには通常、DCモータ等が用いられており、ステッピングモータのように目的とする位置で確実に停止させるのは困難であるため、モータの回転を停止処理後も慣性力により実際に停止するまでにいくらか回転する場合が多い。
【0044】
ここでは、転写残トナー停止位置で中間転写ベルト31を停止させるとの表現には、転写残トナーRの後端部が転写残トナー停止位置に到達した瞬間に中間転写ベルトの回転を停止させる処理を行う場合と、転写残トナー停止位置に転写残トナーRの後端部が到達する以前に中間転写ベルト31の回転停止処理を実行し、慣性力により中間転写ベルト31がその後も少し回転を続けて、中間転写ベルト31が停止した際に結果的に転写残トナーRの後端部が転写残トナー停止位置に位置している場合、および、慣性力により転写残トナーRの後端部が転写残トナー停止位置を通過して若干下流側まで移動している場合を含む意味で用いる。以下、実施の形態2、3、および各変形例についても同様である。
(1−2−2.中間転写ベルト停止制御処理)
図4は、本実施の形態における中間転写ベルト停止制御の処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
なお、プリンタ100全体を制御する不図示のメインルーチンが別途有り、当該メインルーチンにおいて、当該中間転写ベルト停止制御のサブルーチンがコールされる毎に実行される。また、当該中間転写ベルト停止制御は、1つのプリントジョブにおける最後の形成画像が2次転写されるタイミングに合わせて実行される。以下、各実施の形態および各変形例においても同様である。
【0046】
中間転写ベルト停止制御のサブルーチンがコールされると、先ず内部温度センサ71により検出された内部温度T1を取得する(ステップS1)。
次に、バックアップメモリ56に記憶されているトナー固着安全温度Tsを読み出し、内部温度T1がTs以下であるかどうかを固着安全性判定部511により判定する(ステップS2、ステップS3)。
【0047】
内部温度T1がトナー固着安全温度Ts以下である場合、内部温度検出位置38を転写残トナー停止位置に設定し、設定された転写残トナー停止位置で中間転写ベルト31を停止させて(ステップS3:YES、ステップS8、ステップS10)、メインルーチンにリターンする。
内部温度T1がトナー固着安全温度Ts以下でない場合、外気温度センサ72により検出された外気温度T2を取得し、続いてバックアップメモリ56に記憶されている温度分布テーブルのデータを読み出して、停止候補区間の現在の温度分布を温度分布推測部512により推測する(ステップS3:NO、ステップS4、ステップS5、ステップS6)。
【0048】
次に、推測した温度分布において、温度が安全温度となる位置である安全位置が存在するかどうかの判定を固着安全性判定部511により行う(ステップS7)。
安全位置が存在する場合、当該安全位置を転写残トナー停止位置に設定し、設定された転写残トナー停止位置で中間転写ベルトを停止させて(ステップS7:YES、ステップS9、ステップS10)、メインルーチンにリターンする。
【0049】
安全位置が存在しない場合、転写残トナーをクリーニングブレード37によりクリーニングした後、中間転写ベルトを停止させて(ステップS7:NO、ステップS11、ステップS12)、メインルーチンにリターンする。
(1−3.実施の形態1のまとめ)
上記実施の形態1の方法によると、内部温度T1が安全温度Ts以下である場合には、それ以上移動させなくても転写残トナーRが中間転写ベルト31表面に融着する虞が無いため、内部温度検出位置38を転写残トナー停止位置に設定して中間転写ベルト31を停止させる。内部温度検出位置38における温度である内部温度T1が安全温度Tsより高い場合には、停止候補区間の温度分布を推測し、当該区間において温度が安全温度Tsとなる位置があるかどうかを判定し、ある場合には、安全位置を転写残トナー停止位置に設定して中間転写ベルト31を停止させ、無い場合には、従来通り転写残トナーをクリーニングブレード37によりクリーニングして中間転写ベルト31を停止させる。このような方法により、停止候補区間内に安全位置がある場合には、転写残トナーの後端部をクリーニングブレード37の手前で停止させることができ、これにより2次転写後の中間転写ベルト31の駆動距離を低減させて中間転写ベルト31の磨耗を抑制すると共に、駆動距離が低減された分、消費電力を抑制することができる。
【0050】
さらに、内部温度T1が安全温度Ts以下である場合には、温度分布を推測する処理を省略することができる。
加えて、停止候補区間の温度分布の状態を取得するために、当該停止候補区間の両端近傍に配置されている内部温度センサ71および外気温度センサ72の間において互いに所定の間隔を開けて更に複数の温度センサを設ける代わりに、内部温度センサ71および外気温度センサ72による検出温度に基づいて停止候補区間の温度分布を推測するため、上記複数の温度センサを新たに設けなくてもよく、コスト抑制に資することができる。
【0051】
また、内部温度センサ71と、外気温度センサ72と、温度分布推測部512とは、転写残トナーの中間転写ベルト31への固着のしやすさを指標する温度情報として検出温度および推測による温度分布を取得する取得手段と捉えることができる。
なお、上記内部温度検出位置38は、中間転写ベルト31の回動経路上の走行方向下流側における2次転写位置36の近傍の位置であるとしたが、当該近傍とは、より具体的には、中間転写ベルト31を回転駆動するモータが停止されてから中間転写ベルト31が実際に停止するまでの間に中間転写ベルト31が慣性力により走行する距離(具体的には、例えば、30[mm])としてもよい。このようにすると、2次転写が終了した直後にモータを停止させることができ、2次転写後の中間転写ベルト31の駆動距離を最も少なくすることができるため、中間転写ベルト31の長寿命化の効果をより期待することができる。
<実施の形態2>
上記実施の形態1においては、内部温度センサによる検出温度である内部温度T1と、外気温度センサによる検出温度である外気温度T2とを基に、停止候補区間の温度分布を推測した。
【0052】
本実施の形態においては、内部温度センサ71を用いないで停止候補区間の温度分布を推測する構成について、より具体的には、外気温度センサ72により検出される外気温度T2と、現在実行中のプリントジョブおよび前回のプリントジョブのプリント条件の情報とから内部温度T1を推測し、当該推測されたT1およびT2に基づいて停止候補区間の温度分布を推測する構成について説明する。
【0053】
なお、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ構成要素については、同符号を付して、その説明を省略する。
排気ファン73によりプリンタ100内部の空気が機外に排出され、代わりに吸気口74から外気がプリンタ100内部に取り込まれるため、プリンタ100内部の温度は外気温度T2の影響を受ける。内部温度検出位置38の温度である内部温度T1は、定着装置40に近いため、外気温度T2に加えて定着装置40からの熱の影響を大きく受ける。定着装置40からの熱の影響は、実行されるプリントジョブの条件によって異なる。ここで、プリントジョブの条件とは、例えば、定着温度、プリント枚数、両面プリントであるか片面プリントであるかなどである。
【0054】
定着温度は、使用される用紙のタイプ、例えば、普通紙であるか厚紙であるかによって定着温度が異なり、定着温度が異なると内部温度T1が受ける影響も当然異なる。
画像形成装置は、通常、プリントジョブが入力される前の待機時には、定着温度よりも低い待機温度で定着装置の加熱ローラを待機させておき、プリントジョブが入力されると加熱ローラの温度を定着温度にまで上昇させてプリントジョブを実行する。そのため、連続プリント枚数が多いと、その分、加熱ローラが定着温度に維持される時間が長くなり、内部温度T1が上昇しやすくなる。
【0055】
また、両面プリントジョブの場合、1面目のトナー像が定着装置40において加熱されて定着された後、2面目にトナー像を転写するために再び2次転写位置36に搬送されて来る。このとき、再び搬送されて来る用紙は、1面目の画像定着の際に加熱されて温度が上昇しているため、2次転写位置36近傍の温度はさらに上昇しやすくなる。
内部温度T1は、今回の(現在実行中の)プリントジョブのプリント条件による影響のみならず、前回のプリントジョブのプリント条件による影響も受けている。加えて、上に述べたように、待機時の定着装置40の待機温度は定着温度よりも低く設定されているため、前回のプリントジョブ終了時から今回のプリントジョブを受付けるまでの待機時間の長さによってもT1は影響を受ける。
【0056】
本実施の形態においては、今回と前回のプリントジョブのプリント条件として、定着温度、プリント枚数、両面/片面プリントの情報を取得し、これに加えて前回のプリントジョブ終了時からの待機時間に基づいて、今回のプリントジョブ終了時における内部温度を推測し、当該推測された内部温度(以下、推測された内部温度を「t1」とする。)と、外気温度センサ72により検出された外気温度T2とに基づいて、停止候補区間の温度分布を推測する。
(2−1.中間転写ベルト停止制御)
図5は、本実施の形態における中間転写ベルト停止制御の処理内容を示すフローチャートである。
【0057】
当該中間転写ベルト停止制御のサブルーチンがコールされると、先ず外気温度センサ72により検出された外気温度T2を取得する(ステップS21)。
続いて、今回のプリントジョブのプリント条件の情報を取得して、前回のプリントジョブのプリント条件の情報を取得し、待機時間Sを取得する(ステップS22、ステップS23、ステップS24)。
【0058】
取得された今回のプリントジョブのプリント条件情報、前回のプリントジョブのプリント条件情報、待機時間Sに基づいて、次の式1に示す演算式により、現在の推測内部温度t1を算出する(ステップS25)。ここで、推測内部温度t1の算出は、温度分布推測部512により行われるとしてもよい。
(式1) t1={(Kf×Tfc+Kn×Nc)+(Kf×Tfp+Kn×Np)}×T2×Kd−Ks×T2×S
ここで、図6の表に示すように、式1において、Tfcは今回の定着温度を、Tfpは前回の定着温度を、Ncは今回のプリント枚数を、Npは前回のプリント枚数を表す変数であり、Kfは定着温度の補正係数、Knはプリント枚数の補正係数、Kdは両面プリントの場合の補正係数(片面プリントの場合は、Kdは無しであるか、もしくは、Kd=1とする)、Ksは待機時間の補正係数である。これらの補正係数は、予め実験等により求められ、ROM53やバックアップメモリ56に記憶されており、必要に応じて読み出される。また、これらの補正係数は、必ずしも定数でなくてもよく、T2の値によって決定される変数(T2の関数)であってもよい。
【0059】
ステップS25において推測内部温度t1が算出されると、バックアップメモリ56に記憶されているトナー固着安全温度Tsを読み出し、推測内部温度t1がTs以下であるかどうかを固着安全性判定部511により判定する(ステップS26、ステップS27)。
推測内部温度t1がトナー固着安全温度Ts以下である場合、内部温度検出位置38を転写残トナー停止位置に設定し、設定された転写残トナー停止位置で中間転写ベルト31を停止させて(ステップS27:YES、ステップS31、ステップS33)、メインルーチンにリターンする。
【0060】
推測内部温度t1がトナー固着安全温度Ts以下でない場合、バックアップメモリ56に記憶されている温度分布テーブルのデータを読み出して、停止候補区間の現在の温度分布を温度分布推測部512により推測する(ステップS27:NO、ステップS28、ステップS29、ステップS30)。
次に、推測した温度分布において、温度が安全温度となる位置である安全位置が存在するかどうかの判定を固着安全性判定部511により行う(ステップS30)。
【0061】
安全位置が存在する場合、当該安全位置を転写残トナー停止位置に設定し、設定された転写残トナー停止位置で中間転写ベルトを停止させて(ステップS30:YES、ステップS32、ステップS33)、メインルーチンにリターンする。
安全位置が存在しない場合、転写残トナーをクリーニングブレード37によりクリーニングした後、中間転写ベルトを停止させて(ステップS30:NO、ステップS34、ステップS35)、メインルーチンにリターンする。
(2−2.実施の形態2のまとめ)
本実施の形態の構成によると、画像形成装置に通常設置されている外気温度センサ72によって検出される外気温度T2と、今回および前回のプリントジョブのプリント条件情報と、前回のプリントジョブから今回のプリントジョブまでの待機時間Sとに基づいて内部温度を推測し、推測された推測内部温度t1と、外気温度T2とに基づいて、実施の形態1と同様にして停止候補区間の温度分布を推測するため、内部温度センサ71を新たに設ける必要が無く、実施の形態1の効果に加えて、コスト抑制に資することができる。
<実施の形態3>
上記実施の形態1および2においては、停止候補区間の温度分布を推測し、停止候補区間において温度が安全温度Tsとなる安全位置があるかどうかを判定した。
【0062】
本実施の形態においては、停止候補区間の温度分布を推測する代わりに、内部温度検出位置における内部温度T1が安全温度以下であるかどうかによって、中間転写ベルト停止制御を行う構成について説明する。
なお、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ構成要素については、同符号を付して、その説明を省略する。
(3−1.中間転写ベルト停止制御)
図7は、本実施の形態における中間転写ベルト停止制御の処理内容を示すフローチャートである。
【0063】
当該中間転写ベルト停止制御のサブルーチンがコールされると、先ず内部温度センサ71により検出された内部温度T1を取得する(ステップS41)。
次に、バックアップメモリ56に記憶されているトナー固着安全温度Tsを読み出し、内部温度T1がTs以下であるかどうかを固着安全性判定部511により判定する(ステップS42、ステップS43)。
【0064】
内部温度T1がトナー固着安全温度Ts以下である場合、内部温度検出位置38を転写残トナー停止位置に設定し、設定された転写残トナー停止位置で中間転写ベルト31を停止させて(ステップS43:YES、ステップS44、ステップS45)、メインルーチンにリターンする。
内部温度T1がトナー固着安全温度Ts以下でない場合、転写残トナーをクリーニングブレード37によりクリーニングした後、中間転写ベルトを停止させて(ステップS43:NO、ステップS46、ステップS47)、メインルーチンにリターンする。
(3−2.実施の形態3のまとめ)
上記実施の形態3の構成によると、内部温度センサ71による検出温度T1が安全温度Ts以下である場合には、内部温度検出位置38を転写残トナー停止位置に設定して中間転写ベルトを停止させるので、これにより2次転写後の中間転写ベルト31の走行距離を低減させて中間転写ベルト31の磨耗を抑制すると共に、消費電力を抑制することができる。
【0065】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を含むものである。
(1)トナーは一般に、高湿環境下においては空気中の水分を吸収してより固着しやすくなる性質がある。そこで、転写残トナーの中間転写ベルト表面への固着しやすさを指標する情報として、温度に代えてセンサにより湿度(相対湿度)を検出し、検出された湿度に基づいて、転写残トナーRの中間転写ベルト31表面への固着しやすさを判定してもよい。
【0066】
この場合、実施の形態1における温度を湿度に代えて、内部湿度と外気湿度を検出して停止候補区間の湿度分布を推測して、湿度が転写残トナーRが中間転写ベルト31に固着する虞のない湿度の値である安全値となる位置である安全位置があるかどうかを判定して、安全位置がある場合には、安全位置を転写残トナー停止位置に設定して中間転写ベルトを停止させ、安全位置がない場合には、クリーニングブレード37により転写残トナーRをクリーニングした後に中間転写ベルト31を停止させるようにしてもよい。
【0067】
また、実施の形態2における温度を湿度に代えて、外気湿度を検出して内部湿度を推測し、推測された内部湿度と検出された外気湿度とに基づいて、停止候補区間の湿度分布を推測した後、上記と同様の中間転写ベルト停止制御を行ってもよい。
さらに、実施の形態3における温度を湿度に代えて、内部湿度を検出し、検出された内部湿度が安全値以下であれば、内部湿度検出位置を転写残トナー停止位置に設定して中間転写ベルト31を停止させ、内部湿度が安全値より高い場合には、クリーニングブレード37により転写残トナーRをクリーニングした後に中間転写ベルト31を停止させるようにしてもよい。
【0068】
(2)上記変形例1においては、温度に代えて湿度(相対湿度)に基づいて転写残トナーRの中間転写ベルト31表面へ固着する虞があるかどうか、固着する虞がない安全位置があるかどうかを判定して中間転写ベルト停止制御を実行したが、温度と相対湿度の両方に基づいて、同様の方法により中間転写ベルト停止制御を実行するようにしてもよい。
この場合、温度と相対湿度とから絶対湿度を求め、当該絶対湿度を用いるようにしてもよく、温度と相対湿度の情報を別々に用いてもよい。また、絶対湿度の大きさを指標するものとして、複数段階(例えば、8段階)に分類された環境ステップを用いてもよい。
【0069】
(3)上記各実施の形態においては、温度分布の推測および停止制御を行う対象を中間転写ベルト31としたが、これに限られない。温度分布の推測および停止制御を行う対象を、例えば、別の像担持体としての感光体ドラム11としてもよい。
この場合、感光体ドラム11の周面の回転経路において、1次転写位置からクリーニングブレード14による清掃位置までの間を停止候補区間とし、当該停止候補区間の温度分布を推測し、推測された温度分布に基づいて、転写残トナーが感光体ドラム11表面に固着する虞のない安全値以下となる安全位置があるかどうかを判定し、安全位置がある場合には、当該安全位置を停止位置に設定して感光体ドラム11を当該停止位置で停止させるようにしてもよい。
【0070】
この場合においても、1次転写終了後にクリーニングブレード14の手前で停止させることにより、感光体ドラム11の駆動距離を低減させてクリーニングブレード14との摩擦による感光体ドラム11の磨耗を低減させ、感光体ドラム11の長寿命化を図ると同時に、消費電力の抑制を図ることができる。
(4)上記実施の形態1および3においては、中間転写ベルト31の走行方向下流側において、2次転写位置36近傍に内部温度センサ71を配置して内部温度T1を検出したが、これに限られない。例えば、内部温度センサ71が2次転写位置36から中間転写ベルト31の走行方向下流側におけるクリーニングブレード37の手前までの区間内のいずれの位置に内部温度センサ71が配置されてもよい。
【0071】
この場合において、実施の形態1の方法を適用する場合、2次転写位置36から内部温度検出位置を通ってクリーニングブレード37までの区間を停止候補区間として、当該停止候補区間の温度分布を推測するようにしてもよい。
また、実施の形態3の方法を適用する場合、内部温度T1がトナー固着安全温度Ts以下であるときには、内部温度検出位置が転写残トナー停止位置に設定されるが、この場合においても、内部温度検出位置はクリーニングブレード37よりも手前側であるので、中間転写ベルト31の駆動距離を低減させて中間転写ベルト31の長寿命化および消費電力の抑制を図ることができる。ただし、内部温度検出位置はできるだけ2次転写位置36に近い方が、上記中間転写ベルト31の長寿命化および消費電力の抑制については、より大きな効果が期待される。
【0072】
(5)上記実施の形態1および2では、停止候補区間において内部温度検出位置38がもっとも温度が高く、クリーニングブレード37側へ向かうに従って温度が単純減少する形の温度分布であったが、これに限られない。内部温度センサ71の設置位置、プリンタ100内部の各部品の構造、構成、設置位置等によっては、例えば、内部温度検出位置38からクリーニングブレード37へと向かうに連れて一度温度が低下した後再び増加してまた減少するような形の温度分布となる場合も考えられ、また、内部温度検出位置38よりも温度が高い位置が存在する場合も考えられる。このような場合においても、温度が安全温度となる位置のうち、最も、クリーニングブレード37に近い位置を転写残トナー停止位置に設定して中間転写ベルト31を停止させることにより、転写残トナーが融着する虞が無く、且つ、転写残トナーの後端部をクリーニングブレード37の手前で停止させて、2次転写後の中間転写ベルト31の駆動距離を低減させて、中間転写ベルト31の磨耗を抑制することができる。
【0073】
(6)上記実施の形態2においては、推測内部温度t1を算出するためのプリント条件として、定着温度、プリント枚数、両面プリントであるか片面プリントであるか、待機時間の情報を用いたが、これらに限られない。内部温度に影響を与えるその他の要素についても考慮に入れて推測内部温度t1を算出してもよい。
(7)上記実施の形態2においては、推測内部温度t1を算出するために、今回のプリントジョブのプリント条件情報、前回のプリントジョブのプリント条件情報、および、待機時間を用いて算出したが、これに限られない。
【0074】
例えば、所定時間経過ごとに現在の行われている動作をチェックし、動作状況に応じた当該所定時間の間の内部温度の上昇量もしくは下降量を推測により算出し、算出された上昇量/下降量を時間経過に伴い累積加減算することにより、推測内部温度t1を算出してもよい。この場合、所定時間とは、例えば、100[ms]であり、動作状況とは、例えば、プリント動作の実行、待機、冷却ファンの駆動等であり、それぞれの動作状況について昇温レートもしくは降温レートが予め実験等により求められ、設定されていてもよい。
【0075】
また、上記昇温レートおよび降温レートは、外気温度T2の関数であってもよいし、外気温度T2を複数の段階に分類し、それぞれの段階において適用される昇温レートおよび降温レートが予め実験等により求められ、テーブル等に格納されてROM53やバックアップメモリ56等に記憶されていてもよい。
(8)上記実施の形態1および2においては、外気温度センサ72により検出される外気温度T2を、クリーニングブレード37近傍の温度として用いたが、これに限られない。例えば、吸気口74がクリーニングブレード37から離れた位置に設けられている場合、クリーニングブレード37近傍の温度が外気温度T2と大きく異なることが考えられる。このような場合には、クリーニングブレード37の温度もしくはその近傍の温度を検出する温度センサを別途配置して、当該センサによる検出温度を停止候補区間の温度分布の推測に用いてもよい。
【0076】
(9)上記実施の形態1および3においては、内部温度センサ71は、中間転写ベルト31の走行方向下流側における2次転写位置36近傍の温度を検出したが、これに限られず、例えば、駆動ローラ32や2次転写ローラ35、搬送路を形成するガイド部材等の2次転写位置36周辺に配置されている部材などの表面温度を直接検出してもよい。
(10)上記実施の形態および変形例においては、タンデム型カラープリンタについて説明したが、これに限定されるものではなく、モノクロのプリンタでもよいし、4サイクル方式のカラー画像形成装置や、その他複写機、ファックス装置およびこれらの複合機など、およそ回転する像担持体上のトナー像が被転写体に転写される構成を備えた画像形成装置一般に適用されるものである。即ち、像担持体が中間転写ベルトであり、被転写体が記録シート(用紙)である構成や、像担持体が感光体ドラムであり、被転写体が中間転写ベルトである構成などに適用できる。
【0077】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、上記実施の形態および変形例の内容を可能な範囲で夫々組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の中間転写ベルト停止制御方法は、クリーニングブレードによる中間転写ベルト磨耗を抑制して中間転写ベルトの長寿命化と共に、消費電力も抑制する技術として有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 作像部
11 感光体ドラム
14、37 クリーニングブレード
31 中間転写ベルト
32 駆動ローラ
36 2次転写位置
38 内部温度検出位置
40 定着装置
50 制御部
71 内部温度センサ
72 外気温度センサ
73 排気ファン
74 吸気口
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段により回転駆動される像担持体上のトナー像を、転写位置において被転写体に転写する画像形成装置であって、
像担持体の回動経路上に配され、前記像担持体上に残存している転写残トナーを除去する清掃手段と、
前記転写残トナーの前記像担持体への固着容易性を指標する情報を取得する取得手段と、
前記取得された情報に基づき、前記固着容易性を指標する情報が安全値以下であるかどうかを判定する判定手段と、
一の画像形成ジョブの終了の際に、前記判定手段により、前記固着容易性を指標する情報の値が、所定の安全値以下であると判定された場合には、像担持体の転写残トナーが付着した領域の後端部が、前記清掃手段による清掃位置に到達するまでの所定の停止位置まで移動したときに、前記駆動手段を停止させ、
前記固着容易性を指標する情報の値が、前記所定の安全値よりも大きいと判定された場合には、前記清掃手段により転写残トナーを除去させた後に、前記駆動手段を停止させる制御手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記取得手段は、特定の位置における前記固着容易性を指標する情報に基づいて、前記像担持体の回転方向の前記転写位置から前記清掃位置までに到る停止候補区間における前記固着容易性の変化の状態を推測により取得し、
前記判定手段は、前記停止候補区間において、前記推測された固着容易性が前記安全値以下となる位置があるか否かを判定し、
前記制御手段は、前記固着容易性が前記安全値以下と判定された位置がある場合には、これを停止位置として、前記像担持体の転写残トナーが付着した領域の後端部が、当該停止位置まで移動したときに、前記駆動手段を停止させ、前記固着容易性が前記安全値以下と判定された位置がない場合には、前記清掃手段により転写残トナーを除去させた後に、前記駆動手段を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記特定の位置は、前記清掃手段近傍の位置と前記転写位置近傍の位置のうち、少なくとも前記清掃手段近傍の位置を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記転写位置近傍の位置における前記固着容易性を指標する情報を取得し、
前記所定の停止位置は、前記像担持体の回転方向下流側の前記転写位置近傍の位置である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記固着容易性を指標する情報は、前記清掃手段近傍の環境情報および前記転写位置近傍の環境情報のうち、少なくとも一方を含み、
前記環境情報は、温度および湿度のうち、少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記清掃手段近傍の環境情報は、機外の環境情報を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
駆動手段により回転駆動される像担持体上のトナー像を、転写位置において被転写体に転写し、転写後に当該像担持体上に残存している転写残トナーを、像担持体の回動経路上に配された清掃手段により清掃位置において除去する画像形成装置が実行する像担持体停止方法であって、
前記転写残トナーの前記像担持体への固着容易性を指標する情報を取得する取得ステップと、
前記取得された情報に基づき、前記固着容易性を指標する情報が安全値以下であるかどうかを判定する判定ステップと、
一の画像形成ジョブの終了の際に、前記判定ステップにおいて、前記固着容易性を指標する情報の値が、所定の安全値以下であると判定された場合には、像担持体の転写残トナーが付着した領域の後端部が、前記清掃位置に到達するまでの所定の停止位置まで移動したときに、前記駆動手段を停止させ、
前記固着容易性を指標する情報の値が、所定の安全値よりも大きいと判定された場合には、前記清掃手段により転写残トナーを除去させた後に、前記駆動手段を停止させる制御ステップと、を含む
ことを特徴とする像担持体停止方法。
【請求項8】
前記取得ステップは、特定の位置における前記固着容易性を指標する情報に基づいて、前記像担持体の回転方向の前記転写位置から前記清掃位置までに到る停止候補区間における前記固着容易性の変化の状態を推測により取得し、
前記判定ステップは、前記停止候補区間において、前記推測された固着容易性が前記安全値以下となる位置があるか否かを判定し、
前記制御ステップは、前記固着容易性が前記安全値以下と判定された位置がある場合には、これを停止位置として、前記像担持体の転写残トナーが付着した領域の後端部が、当該停止位置まで移動したときに、前記駆動手段を停止させ、前記固着容易性が前記安全値以下と判定された位置がない場合には、前記清掃手段により転写残トナーを除去させた後に、前記駆動手段を停止させる
ことを特徴とする請求項4に記載の像担持体停止方法。
【請求項9】
前記特定の位置は、前記清掃手段近傍の位置と前記転写位置近傍の位置のうち、少なくとも前記清掃手段近傍の位置を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の像担持体停止方法。
【請求項10】
前記取得ステップにおいて取得される前記固着容易性を指標する情報は、前記転写位置近傍の位置における情報であり、
前記所定の停止位置は、前記像担持体の回転方向下流側の前記転写位置近傍の位置である
ことを特徴とする請求項7に記載の像担持体停止方法。
【請求項11】
前記固着容易性を指標する情報は、前記清掃手段近傍の環境情報および前記転写位置近傍の環境情報のうち、少なくとも一方を含み、
前記環境情報は、温度および湿度のうち、少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の像担持体停止方法。
【請求項12】
前記清掃手段近傍の環境情報は、機外の環境情報を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の像担持体停止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−18280(P2012−18280A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155206(P2010−155206)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】