説明

画像形成装置および画像形成システム

【課題】 画像形成装置の記憶容量を増加させることなく、用紙の種類に応じた画像形成装置の制御を行う。
【解決手段】 当該シートに対応した画像形成パラメータおよび搬送パラメータが埋め込まれたシートの表面に画像を形成する画像形成部6と、画像形成部6へシートを供給するとともに、画像形成部6で画像が形成されたシートを排出する搬送手段と、シートに埋め込まれた画像形成パラメータおよび搬送パラメータを読み取るタグリーダ70と、読み取られた画像形成パラメータを用いて画像形成部6を制御するとともに、搬送パラメータを用いてシートの搬送を制御する画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの種類に応じて画像形成装置を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成に用いるシートにシートの属性を表す情報(属性データ)を予め埋め込んでおき、画像形成の際に画像形成装置に属性データを読み取らせ、シートの属性に基づいて画像形成装置を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1)。埋め込まれる属性データは、例えば、シートの材質、サイズ、厚さなどを表す情報である。シートに属性データを埋め込む方法としては、シートに取り付けたIC(Integrated Circuit)タグに属性データを書き込む方法や、属性データを表すバーコードの画像を不可視トナーなどを用いてシート表面に形成する方法などがある。画像形成装置は、シートの属性に応じた制御パラメータを記憶している。画像形成装置は、シートから読み取られた属性データに対応する制御パラメータを読み出し、この制御パラメータを用いて、シートの搬送や画像形成に関する制御を行う。この技術を用いれば、シートの種類に応じて搬送や画像形成のための制御を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2002−86862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の技術には以下に示す問題点がある。上記の画像形成装置は、シートの属性と制御パラメータとを対応付けたルックアップテーブルを記憶している。しかしながら、用紙の種類は多種多様である。多種の用紙に対応した制御パラメータを記憶させるためには、大きな記憶容量が必要となり、画像形成装置のコストの増大を招いてしまう。
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、画像形成装置の記憶容量を増加させることなく、用紙の種類に応じた画像形成装置の制御を行うことのできる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の課題を解決するために、本発明は、当該シートに対応した画像形成パラメータおよび搬送パラメータが埋め込まれたシートの表面に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段へ前記シートを供給するとともに、前記画像形成手段で画像が形成されたシートを排出する搬送手段と、前記シートに埋め込まれた画像形成パラメータおよび搬送パラメータを読み取る読取手段と、前記読取手段で読み取られた画像形成パラメータを用いて前記画像形成手段を制御するとともに、前記搬送パラメータを用いて前記搬送手段を制御する制御手段とを有する画像形成装置を提供する。
上記の画像形成装置によれば、シートに埋め込まれた画像形成パラメータおよび搬送パラメータが読取手段によって読み取られ、この画像形成パラメータを用いて画像形成手段の制御が行われ、搬送パラメータを用いて搬送手段の制御が行われる。
【0005】
上記の画像形成装置においては、前記画像形成手段は、前記シートに画像を転写する転写手段と、該転写手段により転写された画像を該シートに定着させる定着手段とを有し、前記画像形成パラメータは、前記転写手段における転写電流および転写電圧、前記定着手段における定着温度および定着圧力のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、上記の画像形成装置においては、前記搬送パラメータは、前記搬送手段における搬送速度およびニップ圧のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、上記の画像形成装置においては、入力された画像に対して所定の処理を加える画像処理手段を有し、前記画像形成パラメータは、前記画像処理手段における画像処理条件を含むことが好ましい。
また、上記の画像形成装置においては、前記読取手段は、前記シートに付されたICタグに書き込まれている物性値を読み取ることが好ましい。
【0006】
また、本発明は、当該シートに対応した画像形成パラメータおよび搬送パラメータが埋め込まれたシートと、画像形成装置とからなる画像形成システムにおいて、前記画像形成装置は、前記シートの表面に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段へ前記シートを供給するとともに、前記画像形成手段で画像が形成されたシートを排出する搬送手段と、前記シートに埋め込まれた画像形成パラメータおよび搬送パラメータを読み取る読取手段と、前記読取手段で読み取られた画像形成パラメータを用いて前記画像形成手段を制御するとともに、前記搬送パラメータを用いて前記搬送手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする画像形成システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートの物性値が異なっても画像形成後の品質を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる画像形成装置1の構成を示す図である。本実施形態においては、複写機の例を用いて説明するが、プリンタ等にも本発明は適用可能である。
画像形成装置1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等(いずれも図示省略)からなる制御部4を有し、ROMに格納されたコンピュータプログラムをCPUが実行することによって画像形成装置1各部の制御を行う。指示入力部41は、テンキー、スタートボタン等からなるキーボード40、タッチパネル機能を有する液晶パネルからなる表示部39を備えており、画像形成装置1に対する指示を入力することができる。また、画像形成装置1に異常等が発生した場合に、タッチパネル上に情報を表示することができる。
【0009】
給紙トレイ9には画像を形成するためのICタグ付きシート100が収容される。ユーザが指示入力部41により画像形成の指示を入力すると、給紙ローラ33が回転駆動され、給紙トレイ9からICタグ付きシート100を1枚ずつ送り出す。給紙トレイ9から送り出されたICタグ付きシート100はローラ対34、35、37によって搬送路36に沿って搬送される。
転写ベルト8は、ローラ26、27、28、29に張架されており、矢印Bの方向に循環駆動される。
【0010】
画像入力部12は、原稿を光学的に読み取って画像データを生成するスキャナ装置である。プラテンガラス2上に載置された原稿に対して光源13により光が照射され、この反射光が光学系3によって処理される。反射光は、ミラー14、15、16を介して受光部17で受光される。そして、画像処理部18が反射光を電気信号に変換し、画像データを生成する。
制御部4は、画像入力部12で生成された画像データに基づいてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の信号を生成し、後述する露光装置に供給する。
記憶部5には、画像形成装置1の制御に用いる制御パラメータが記憶されている。この制御パラメータについては後述する。
【0011】
画像形成部6は、画像形成エンジン7Y、7M、7C、7K、転写ベルト8等からなる。
画像形成エンジン7Y、7M、7C、7Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する。各画像形成エンジンの構成は共通であるから、ここでは画像形成エンジン7Yについてのみ説明する。
画像形成エンジン7Yは、静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム20Yの周囲に、帯電装置21Y、露光装置19Y、現像装置22Y、クリーナ24Y等を設けて構成されている。
【0012】
帯電装置21Yは、矢印Aの方向に回転駆動される感光体ドラム20Yの表面を所定の電位に帯電させる。
露光装置19Yは、帯電装置3Yによって所定の電位に帯電した感光体ドラム2Yに対して、画像データに基づいた露光用ビームLBを照射するROS(Raster Output Scanner)である。露光装置19Yは、図示しない半導体レーザーから画像データに基づいてレーザー光を出射し、このレーザー光を偏向走査することにより感光体ドラム20Yの表面に静電潜像を形成する。感光体ドラム20Yの表面では、レーザー光が照射された部分の電位が、感光体ドラム20Yの有する光導電性により所定のレベルまで減少する。このように、感光体ドラム20Yの表面電位が変化することにより、感光体ドラム20Yの表面には画像データにもとづいた静電潜像が形成される。
【0013】
現像装置22Yは、感光体ドラム20Y表面に形成された静電潜像を顕像化する装置である。トナータンク23Yからはトナー(帯電色材)が供給され、感光体ドラム20Yの帯電極性と同極性に帯電したトナーによって静電潜像を反転現像することによってトナー像を得る。
感光体ドラム20Yはその下方に位置する転写ベルト8と圧接しており、上記のようにして形成されたトナー像が転写ベルト8に転写される。
クリーナ24Yは、感光体ドラム20Yに残存したトナーを除去する装置である。
【0014】
以上が画像形成エンジン7Yの構成である。画像形成エンジン7M、7C、7Kにおいても各色に対応したトナー像が形成され、転写ベルト8に重ねて転写される。なお、これ以降、画像形成エンジン7Y、7M、7C、7Kを区別する必要のない場合には、単に画像形成エンジン7と称する。他の構成要素についても同様に、Y、M、C、Kの別を区別する必要のない場合には、Y、M、C、Kの表記を省略するものとする。
【0015】
給紙トレイ9から搬送路36上に送り出されたICタグ付きシート100は、転写ベルト8と転写ローラ30とが形成するニップ部に進入し、転写ベルト8に圧接される。この圧接力および静電吸引力によってトナー像がICタグ付きシート100の表面に転写される。
トナー像が転写されたICタグ付きシート100は、ローラ対31によって定着装置11に導かれる。定着装置11においては、ICタグ付きシート100に対して加圧および加熱が施され、トナー像がICタグ付きシート100に定着される。このようにして画像形成が行われたICタグ付きシート100は、排紙トレイ32に排出される。
【0016】
図2は、ICタグ付きシート100の構成を示す図である。シート101は、例えばJIS(日本工業規格)A4サイズの普通紙であり、その上隅にはICタグ102が取り付けられている。このICタグ102は、外部装置との間で非接触式でデータの授受を行うことのできる、いわゆる無線ICタグである。ICタグ102は、書き込まれたデータを保持する不揮発性の半導体メモリ、コイル状のアンテナ等からなり、外部の機器との間でマイクロ波、誘導電磁界等を用いてデータ通信を行うことができる。ICタグ102には、当該ICタグが付されているシートの物性値に対応した制御パラメータが書き込まれている。図3は、ICタグ102に書き込まれている制御パラメータの例を示す図である。制御パラメータは、画像形成に関する制御に用いられる画像形成パラメータ、シートの搬送に関する制御に用いられる搬送パラメータに大別される。画像形成パラメータの種類は、トナー像を転写ベルト8あるいはICタグ付きシート100に転写する際の転写電流、転写電圧、定着装置11における定着温度および定着圧力、画像処理部18における画像処理条件などである。搬送パラメータの種類は、ICタグ付きシート100の搬送速度、ニップ圧などである。制御パラメータは、アドレスと対応付けられて記憶されている。このアドレスは、例えば16進数で表されている。
【0017】
給紙ローラ33の近傍には、ICタグ102からデータを読み取るためのタグリーダ70が設けられている。給紙トレイ9からICタグ付きシート100が送り出される際、ICタグ付きシート100に付されたICタグ102に書き込まれているアドレスおよび制御パラメータがタグリーダ70によって読み取られる。画像形成装置10の制御部4は、読み取られたアドレスに基づいて制御パラメータの種類を認識し、この制御パラメータを画像形成装置1各部の制御に用いる。あるいは、ICタグ102から読み取られたアドレスに対応する画像形成装置10内の対応するメモリ番地に制御パラメータを格納しておき、以後、画像形成パラメータあるいは搬送パラメータとして画像形成装置1各部の制御に用いる。
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、シートに埋め込まれた制御パラメータを用いて画像形成手段および搬送手段が制御される。画像形成装置内部の記憶部に制御パラメータを記憶させておく必要がないから、記憶容量が少なくて済み、コストの増大を防ぐことができる。この制御パラメータを用いて画像形成装置の制御を行うことにより、シートの物性値が異なっても画像形成後の品質を安定させることができる。制御パラメータには、転写電流、転写電圧、定着温度、定着圧力、搬送速度、ニップ圧、画像処理条件のうち少なくとも1つが含まれているから、きめ細かな制御が可能となる。
【0019】
<変形例>
以上説明した形態に限らず、本発明は種々の形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形した形態でも実施可能である。
上記の実施形態においては、シートに付されたICタグに制御パラメータが予め書き込まれている例を示したが、シートの物性値を測定し、この物性値に応じた制御パラメータを決定してICタグに書き込む装置を用いてもよい。また、この装置を画像形成装置の給紙トレイ近傍に設けておき、給紙トレイから送り出されるシートに制御パラメータを埋め込むようにしてもよい。
【0020】
上記の実施形態においては、シートに付されたICタグに書き込まれたシートの物性値を読み取る例を示したが、この物性値を表すバーコードの画像をシート上に形成するようにしてもよい。この場合、紫外線あるいは赤外線のみを吸収し可視光を透過する不可視の記録材料を用いてバーコードの画像を形成すれば、ユーザにとって余計な情報が視認されることがないから好ましい。
上記の実施形態においては、マイクロ波または誘導電磁界を用いてデータを授受する非接触式のICタグを用いた例を示したが、接触式のICタグを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像形成装置1の構成を示す図である。
【図2】ICタグ付きシート100の構成を示す図である。
【図3】ICタグに書き込まれている制御パラメータの例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1…画像形成装置、、12…画像入力部、2…プラテンガラス、3…光学系、4…制御部、5…記憶部、41…指示入力部、39…表示部、40…キーボード、9…給紙トレイ、33…給紙ローラ、34、35、37…ローラ対、36…搬送路、8…転写ベルト、26、27、28、29…ローラ、12…プラテンガラス、13…光源、14、15、16…ミラー、17…受光部、18…画像処理部、6…画像形成部、7Y、7M、7C、7K…画像形成エンジン、20Y…感光体ドラム、21Y…帯電装置、19Y…露光装置、22Y…現像装置、24Y…クリーナ、30…転写ローラ、31…ローラ対、32…排紙トレイ、100…ICタグ付きシート、101…シート、102…ICタグ、70…タグリーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該シートに対応した画像形成パラメータおよび搬送パラメータが埋め込まれたシートの表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段へ前記シートを供給するとともに、前記画像形成手段で画像が形成されたシートを排出する搬送手段と、
前記シートに埋め込まれた画像形成パラメータおよび搬送パラメータを読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られた画像形成パラメータを用いて前記画像形成手段を制御するとともに、前記搬送パラメータを用いて前記搬送手段を制御する制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段は、前記シートに画像を転写する転写手段と、該転写手段により転写された画像を該シートに定着させる定着手段とを有し、
前記画像形成パラメータは、前記転写手段における転写電流および転写電圧、前記定着手段における定着温度および定着圧力のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送パラメータは、前記搬送手段における搬送速度およびニップ圧のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
入力された画像に対して所定の処理を加える画像処理手段を有し、
前記画像形成パラメータは、前記画像処理手段における画像処理条件を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記読取手段は、前記シートに付されたICタグに書き込まれている物性値を読み取ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
当該シートに対応した画像形成パラメータおよび搬送パラメータが埋め込まれたシートと、画像形成装置とからなる画像形成システムにおいて、
前記画像形成装置は、
前記シートの表面に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段へ前記シートを供給するとともに、前記画像形成手段で画像が形成されたシートを排出する搬送手段と、
前記シートに埋め込まれた画像形成パラメータおよび搬送パラメータを読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られた画像形成パラメータを用いて前記画像形成手段を制御するとともに、前記搬送パラメータを用いて前記搬送手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−88477(P2006−88477A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275885(P2004−275885)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】