説明

画像形成装置及びミスト回収方法

【課題】液体吐出時に発生するミスト状の液滴のノズル近傍への付着を防止し、長期間の連続動作を可能とする画像形成装置及びミスト回収方法を提供する。
【解決手段】複数のノズルが紙搬送方向と角度θをなす列方向に並べられたノズル群を有し、複数のノズル群が紙搬送方向と略直交する行方向に沿って並べられたインクジェットヘッド150のノズル面150Aに、各ノズル群の紙搬送方向下流側にノズル群の方向(列方向)と略平行方向に導電性パターン160(列方向パターン160A)が形成される。列方向パターン160Aを帯電させると、吐出後にインク(主液滴)から分離したインクミストに対して列方向パターン160Aの方向へ移動させる静電気力Cが作用して、インクミストが列方向パターン160Aに付着するので、他のノズルの近傍にインクミストが付着することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びミスト回収方法に係り、特にインクジェットヘッドから液体を吐出する際に発生するミスト状の液滴の液体吐出面への付着を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを用いて記録媒体上にインクや機能性材料を吐出して画像形成を行う画像形成装置は、環境に優しく、種々の記録媒体に対して高速記録が可能であり、さらに、インクが滲みにくく高精細画像が得られるなどの特徴を有し、汎用の画像形成装置として様々な分野で活用されている。
【0003】
インクジェット方式によるインク吐出時には、主液滴の発生とともに、主液滴よりも微小なサテライトや、主液滴から分離して失速したミストが発生する。インクに含有される機能性材料の蒸発が無視できる場合に、ミストのサイズは0.5μm〜10μm程度であり、特に、1μm前後のミストの発生を抑制することが困難である。ミストは装置内を浮遊し、装置内部を汚染していまい、特に、ヘッドのノズルプレート上(吐出面)にミストが付着すると吐出異常の原因となり得る。また、エンコーダ等の検出器にミストが付着すると記録媒体の搬送異常を誘発し、搬送異常に起因する描画異常を引き起こし得る。かかる描画異常は、画像形成に悪影響を与えてしまう。
【0004】
特許文献1には、ノズルプレートに形成した導電性被膜をサテライトが帯電する電荷と反対極性に帯電させ、導電性被膜にサテライトを吸着する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−21840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、図7及び図8を用いて、従来技術の課題について詳説する。
【0007】
図7は、複数のノズル251がマトリクス配置されたヘッド250をノズル面(インク吐出面)250Aの側から見た概略平面図であり、図7の実線で囲まれた部分は、ノズル面250Aの一部を拡大した拡大図である。図7において符号251を付して図示した紙搬送方向と所定の角度をなす斜め方向の線分は、同方向に沿って並べられた複数のノズル(ノズル群)を表している。
【0008】
図7に示すように、ノズル251からインク(不図示)を吐出すると、ノズル面250Aの近傍では、紙搬送方向と略平行方向の気流Aと、ノズル251の配列方向に沿う吐出による気流Bが発生し、気流Aと気流Bが合成された気流Dがインク液滴(主液滴)から分離したインクミスト(不図示)に作用して、該インクミストは気流Dの方向へ移動する。特に、ノズル251がマトリクス配置されたヘッド250は、紙搬送方向の上流側(図7における下側)で発生したインクミストが、図7の気流Dによって紙搬送方向の下流側(図7における上側)へ移動して、下流側のノズル251の近傍に付着してしまうおそれがある。ノズル251の近傍にインクミストが付着すると、当該ノズル251の吐出異常の原因となり得る。
【0009】
図8は、紙搬送方向と略直交する方向にミストを回収するための電極260が形成されたヘッド250’のノズル面250A’を図示した概略平面図である。また、図8の実線で囲まれた部分は、ノズル面250A’の一部を拡大した拡大図である。
【0010】
図8に示すように、電極260を帯電させて発生した紙搬送方向に沿う方向の静電気力Cがインクミストに作用すると、気流Aの方向に沿うインクミストに作用する力が増長され、インクミストの速度や体積によっては、インクミストが電極260を超えて隣接するノズルの近傍に付着してしまう恐れがある。
【0011】
紙搬送方向の下流側に隣接するノズルにインクミストが付着することを回避するには、紙搬送方向のノズル間ピッチPnsを大きくすればよいが、ヘッド全体が大型化してしまうという問題がある。
【0012】
すなわち、従来は、高解像度の画像記録を行うことができる小型のヘッドを具備したインクジェット記録装置において、インクミストやコンタミを防止しつつ、長時間動作させる有効な手段が存在しなかった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液体吐出時に発生するミスト状の液滴のノズル近傍への付着を防止し、長期間の連続動作を可能とする画像形成装置及びミスト回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが二次元状に配置されるとともに、前記ノズルに対応して導電性パターンが形成されるノズルプレートを具備するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記記録媒体とを相対的に搬送する搬送手段と、前記導電性パターンを帯電させる帯電手段と、を備え、前記ノズルプレートは、前記搬送手段の搬送方向と略直交する行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に沿って前記複数のノズルが配置されるとともに、前記列方向に沿って複数のノズルが配置されたノズル群が前記行方向に沿って少なくとも1つ配置される構造を有し、前記導電性パターンは、前記ノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に、前記列方向と略平行方向に沿って形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インクジェットヘッドと記録媒体の相対搬送方向と直交する行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に複数のノズルが並べられたノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に、該列方向に沿って導電性パターンが形成されるので、該導電性パターンを帯電させてノズルから液体が吐出された後に発生するミスト状の液滴に対して導電性パターンの方向への静電気力を作用させることで、該ミスト状の液滴が搬送方向下流側の他のノズルの近傍への移動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの構成例を示す平面透視図
【図3】インク室ユニットの立体的構成を示す断面図
【図4】図1に示すインクジェットヘッドのメンテナンス機構の構成を示すブロック図
【図5】図1に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロックロック図
【図6】本発明の実施形態に係るミスト回収方法の説明図
【図7】従来技術に係る課題を説明する図
【図8】他の従来技術に係る課題を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
次に、本発明が適用されるオンデマンド方式のインクジェット記録装置の全体構成について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置10は、インク(水性インク)と処理液(凝集処理液)を用いて記録媒体24の記録面に画像を形成する2液凝集方式の記録装置であり、主として、給紙部12、処理液付与部14、描画部16、乾燥部18、定着部20、及び排出部22を備えて構成される。給紙部12には、枚葉紙である記録媒体24が積層されており、この記録媒体24が給紙部12から処理液付与部14に送られ、処理液付与部14で記録面に処理液が付与された後、描画部16で記録面に色インクが付与される。インクが付与された記録媒体24は、定着部20で画像が堅牢化された後、排出部22によって搬送される。
【0019】
また、インクジェット記録装置10は、各部の間に中間搬送部26、28、30を備え、この中間搬送部26、28、30によって記録媒体24の受け渡しが行われるようになっている。即ち、処理液付与部14と描画部16との間には、第1の中間搬送部26が設けられ、この第1の中間搬送部26によって処理液付与部14から描画部16への記録媒体24の受け渡しが行われる。同様に、描画部16と乾燥部18との間には、第2の中間搬送部28が設けられ、この第2の中間搬送部28によって描画部16から乾燥部18への記録媒体24の受け渡しが行われる。さらに、乾燥部18と定着部20との間には、第3の中間搬送部30が設けられ、この第3の中間搬送部30によって乾燥部18から定着部20への記録媒体24の受け渡しが行われる。
【0020】
以下、インクジェット記録装置10の各部(給紙部12、処理液付与部14、描画部16、乾燥部18、定着部20、排出部22)について説明する。
【0021】
(給紙部)
給紙部12は、記録媒体24を処理液付与部14に供給する機構である。給紙部12には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から記録媒体24が一枚ずつ処理液付与部14に給紙される。
【0022】
(処理液付与部)
処理液付与部14は、記録媒体24の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部16で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0023】
図1に示すように、処理液付与部14は、給紙胴52、処理液ドラム54、及び処理液塗布装置56を備えている。給紙胴52は、給紙部12の給紙トレイ50と処理液ドラム54の間に配置され、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。給紙部12から給紙された記録媒体24は、この給紙胴52によって受け取られ、処理液ドラム54に受け渡される。なお、給紙胴52の代わりに、後述する中間搬送部を設けてもよい。
【0024】
処理液ドラム54は、記録媒体24を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段を備え、この保持手段によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で、処理液ドラム54を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送されるようになっている。なお、処理液ドラム54は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を処理液ドラム54の周面に密着保持することができる。
【0025】
処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置56が設けられる。処理液塗布装置56は、記録媒体24の記録面に処理液を塗布する装置であり、塗布される処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム54上の記録媒体24に圧接されて計量後の処理液を記録媒体24に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置56によれば、処理液を計量しながら記録媒体24に塗布することができる。処理液の膜厚は、描画部16のインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから打滴されるインクの液滴径より十分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2plのときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体24の表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
【0026】
なお、本実施形態では、記録媒体24の記録面に処理液を付与する方式として、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。また、描画部16のインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから記録媒体に打滴されたインクに加熱、加圧、輻射線照射等によるエネルギーを付与して該インクを記録媒体に定着させる描画方式では、処理液付与部14は省略される。
【0027】
(描画部)
描画部16は、インクジェット方式でインクを打滴することによって入力画像に対応した画像を描画する機構であり、描画ドラム70、用紙抑えローラ74、及びインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yを備えている。インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム70の回転方向に上流側から順に配置される。
【0028】
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体24を保持し、回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、描画ドラム70は、その外周面に爪形状の保持手段を備え、この保持手段によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で、描画ドラム70を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yからインクが付与される。
【0029】
用紙抑えローラ74は、描画ドラム70の外周面に記録媒体24を密着させるためのガイド部材であり、描画ドラム70の外周面に対向する位置に配置されている。具体的には、中間搬送部26からの記録媒体24の受渡位置よりも記録媒体24の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)下流側であり、且つ、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yよりも記録媒体24の搬送方向上流側に配置される。
【0030】
中間搬送部26から描画ドラム70に受け渡された記録媒体24は、上述の保持手段によって先端が保持された状態で回転搬送される際、用紙抑えローラ74によって押圧され、描画ドラム70の外周面に密着されられる。このようにして、記録媒体24を描画ドラム70の外周面に密着させた後に、描画ドラム70の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの直下の印字領域に送られる。
【0031】
インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、記録媒体24における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのノズル面150Aには、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、記録媒体24の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0032】
また、描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体24の記録面とインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yのノズル面が略平行となるように、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは水平面に対して傾けて配置されている。
【0033】
上記の如く構成された各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体24の記録面に向かって吐出される。これにより、処理液付与部14で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体24上での色材流れなどが防止され、記録媒体24の記録面に画像が形成される。その際、描画部16の描画ドラム70は、処理液付与部14の処理液ドラム54に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yに処理液が付着することがなく、インクの不吐出要因を低減することができる。
【0034】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0035】
(乾燥部)
乾燥部18は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム76、及び溶媒乾燥装置78を備えている。
【0036】
乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体24を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、乾燥ドラム76は、その外周面に爪形状の保持手段を備え、この保持手段によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で、乾燥ドラム76を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して溶媒乾燥装置78による乾燥処理が行われる。なお、乾燥ドラム76は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を乾燥ドラム76の周面に密着保持することができる。
【0037】
溶媒乾燥装置78は、乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置され、ハロゲンヒータ80を含んで構成される。ハロゲンヒータ80は、所定の温度(たとえば50℃〜70℃)の温風を一定の風量(12m/分)で記録媒体24に向けて吹き付けるように制御される。
【0038】
このように構成される溶媒乾燥装置78によって、乾燥ドラム76に保持された記録媒体24の記録面のインク溶媒に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部18の乾燥ドラム76は、描画部16の描画ドラム70に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部18の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
【0039】
乾燥ドラム76の曲率は、0.002(1/mm)以上0.0033(1/mm)以下の範囲であることが好ましい。乾燥ドラム76の曲率が0.002(1/mm)未満だと、記録媒体24を湾曲させてもそのコックリングの矯正効果が不足する一方で、0.0033(1/mm)を超えると、記録媒体24が必要以上に湾曲して元に戻らず、スタック時に湾曲した状態で出力されてしまうためである。
【0040】
また、乾燥ドラム76の表面温度は50℃以上に設定するとよい。記録媒体24の裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。このとき、乾燥ドラム76の外周面に記録媒体24を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体24を密着させる手段としては、真空吸着、静電吸着など様々な方式を適用することが可能である。
【0041】
なお、乾燥ドラム76の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム76の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75度以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0042】
このように構成された乾燥ドラム76の外周面に、記録媒体24の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体24の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体24のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0043】
(定着部)
定着部20は、定着ドラム84、ハロゲンヒータ86、定着ローラ88、及びインラインセンサ90で構成される。ハロゲンヒータ86、定着ローラ88、及びインラインセンサ90は、定着ドラム84の外周面に対向する位置に配置され、定着ドラム84の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
【0044】
定着ドラム84は、その外周面に記録媒体24を保持して回転搬送させるドラムであり、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。また、定着ドラム84は、その外周面に爪形状の保持手段を備え、この保持手段によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で定着ドラム84を回転させることによって、回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ86による予備加熱と、定着ローラ88による定着処理と、インラインセンサ90による検査が行われる。なお、上記の定着ドラム84は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を定着ドラム84の周面に密着保持することができる。
【0045】
ハロゲンヒータ86は、所定の温度(たとえば180℃)に制御される。これにより、記録媒体24の予備加熱が行われる。
【0046】
定着ローラ88は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体24を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ88は、定着ドラム84に対して圧接するように配置されており、定着ドラム84との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体24は、定着ローラ88と定着ドラム84との間に挟まれ、所定のニップ圧(たとえば0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0047】
また、定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(たとえば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体24を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体24の凹凸に押し込み定着が行なわれるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0048】
なお、上記の実施形態では、定着ローラ88を1つだけ設けた構成となっているが、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性に応じて、複数段設けた構成でもよい。また、定着ドラム84の表面を所定の温度(たとえば60℃)に制御するようにしてもよい。
【0049】
一方、インラインセンサ90は、記録媒体24に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0050】
上記の如く構成された定着部20によれば、乾燥部18で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ88によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体24に固定定着させることができる。また、定着部20によれば、定着ドラム84が他のドラムに対して構造上分離されているので、定着部20の温度設定を、描画部16や乾燥部18と分離して自由に設定することができる。
【0051】
特に本実施形態で用いられる定着ドラム84は、上述の乾燥ドラム76と同様に、所定の曲率を有し且つ表面温度が所定温度に設定された回転搬送体として構成され、定着ドラム84の曲率は、0.002(1/mm)以上0.0033(1/mm)以下の範囲であることが好ましい。定着ドラム84の曲率が0.002(1/mm)未満だと、記録媒体24を湾曲させてもそのコックリングの矯正効果が不足する一方で、0.0033(1/mm)を超えると、記録媒体24が必要以上に湾曲して元に戻らず、スタック時に湾曲した状態で出力されてしまうためである。
【0052】
また、定着ドラム84の表面温度は50℃以上に設定するとよい。定着ドラム84の外周面に保持された記録媒体24を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
【0053】
なお、定着ドラム84の表面温度の上限については特に限定されるものではないが、メンテナンス性の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態で用いられる定着ローラ88は、表面硬度は71°以下であることが好ましい。加熱加圧部材である定着ローラ88の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体24の凹凸に対して追随効果を期待でき、定着ムラをより効果的に防止できる。
【0055】
また、画像中の水分を揮発させ、高沸点有機溶剤を画像中に適量濃縮させた状態(具体的には、画像中に高沸点有機溶剤がインク打滴量の4%以上残存している状態)にしておくと、画像破壊を起こさない程度の強度を有しつつ、定着時に定着ローラ(加熱加圧部材)88の表面に対して変形しやすくなるので好ましい。さらに、画像中にバインダー成分を含む場合は、画像を予め加熱しておくと同様に、定着ローラ88の表面に対して、画像の追随性を期待でき、定着ムラをより効果的に防止できる。
【0056】
ここで、「画像中に高沸点有機溶剤がインク打滴量の4%以上残存している状態」とは、定着処理時のタイミングにおける、インク打滴量に対する記録媒体表面に存在する画像中の高沸点有機溶剤の残留量の割合が4%以上である状態をいう。
【0057】
このように構成された定着ドラム84の外周面に、記録媒体24の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体24の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら加熱加圧して定着させることで、水分を乾燥しきれず、多少のコックリングが発生しうる状態であっても、コックリングを矯正することが可能となる。
【0058】
また、パルプ繊維の膨潤により記録媒体24の表面(記録面)に凹凸を発生させようとする力に対して、記録媒体24の表面を引き伸ばし、コックリングで発生する凹凸を緩和し平滑化した状態で定着ローラ88により定着できるので、コックリングに起因する定着ムラの発生を防止することができる。
【0059】
(排出部)
図1に示すように、定着部20に続いて排出部22が設けられている。排出部22は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と定着部20の定着ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体24は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
【0060】
(中間搬送部)
次に、第1の中間搬送部26の構造について説明する。なお、第2の中間搬送部28、第3の中間搬送部30は、第1の中間搬送部26と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0061】
第1の中間搬送部26の中間搬送体32は、前段のドラムから記録媒体24を受け取り、回転搬送させた後、後段のドラムに受け渡すためのドラムであり、回転自在に取り付けられている。また、中間搬送体32は、モータ(図1中不図示、図5に符号188を付して図示)によって回転するようになっており、後述のモータドライバ176(図5参照)によってその回転が駆動制御される。中間搬送体32は、その外周面に爪形状の保持手段を備え、この保持手段によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。記録媒体24は、保持手段によって先端が保持された状態で中間搬送体32を回転させることによって、記録媒体24を回転搬送される。その際、記録媒体24の記録面が内側、非記録面が外側を向くように回転搬送される。
【0062】
第1の中間搬送部26によって搬送された記録媒体24は、後段のドラム(即ち、描画ドラム70)に受け渡される。その際、中間搬送部26の保持手段と描画部16の保持手段を同期させることによって、記録媒体24の受け渡しが行われる。受け渡された記録媒体24は、描画ドラム70によって保持されて回転搬送される。
【0063】
〔インクジェットヘッドの構造〕
次に、各インクジェットヘッドの構造について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を示すものとする。
【0064】
図2(a)はヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)はその一部の拡大図であり、図2(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図である。また、図3はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図2(a)、(b)中の3−3線に沿う断面図)である。
【0065】
記録媒体24上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図2(a)、(b)に示すように、インク吐出口であるノズル151が設けられるノズルプレート(図2中不図示、図3に符号151Aを付して図示)と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体24の搬送方向(紙搬送方向)と直交する方向;主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0066】
記録媒体24の搬送方向(副走査方向)と略直交する方向(主走査方向)に記録媒体24の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図2(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドブロック150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体24の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
【0067】
さらに、短尺のヘッドブロック150’はノズル群を1つだけ備え、必要なノズル群の数だけヘッドブロック150’をつなぎ合わせて、ラインヘッドを構成してもよい。
【0068】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル151が設けられ、他方に供給口154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0069】
各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に供給される。
【0070】
圧力室152の一部の面(図3において天面)を構成し、且つ、共通電極と兼用される振動板156には、個別電極157を備えた圧電素子158が接合されている。個別電極157に駆動電圧を印加することによって圧電素子158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子158が元の状態に戻る際、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0071】
本例では、ヘッド150に設けられたノズル151から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子158を適用したが、圧力室152内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
【0072】
かかる構造を有するインク室ユニット153を図2(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θ(0°<θ<90°)を有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0073】
即ち、主走査方向に対してある角度θをなす方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0074】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。また、本例に適用されるノズル配置は、全ノズルを使用してドットを形成したときに、主走査方向におけるドット密度が450dpi以上となるノズル配置が適用される。
【0075】
本例に適用されるヘッド150は、ノズル151が設けられるノズルプレート(図3に符号151Aを付して図示)のノズル面150Aに導電性パターン160が形成されている。導電性パターン160は、副走査方向に対して角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に沿って形成される列方向パターン160Aと、主走査方向に沿って形成され、主走査方向に沿って並べられた複数の列方向パターン160Aのそれぞれと導通する行方向パターン160Bを含んでいる。また、行方向パターン160Bの一方の端部(図2(a)における左側端部)は、不図示の配線を介して電源装置(図2(a)〜(c)中不図示、図5に符号199を付して図示)に接続される。
【0076】
列方向パターン160Aは、各ノズル群の紙搬送方向下流側に形成され、各ノズル群の列方向の長さと同一の長さ、又は各ノズル群の列方向の長さを超える長さを有している。
【0077】
ヘッド150の動作開始に応動して導電性パターン160を帯電させると、インク吐出時に発生するインクミストに対して、各ノズル151と列方向パターン160Aとを最短距離で結んだ方向に静電気力(図6(b)に符号Cを付して図示)が作用して、インクミストの紙搬送方向への移動が抑制される。
【0078】
各ノズル151(各ノズル群)と列方向パターン160Aとの最短距離は、数μm〜数十mm程度が好ましく、5μm〜30μm程度がより好ましい。各ノズル151と導電性パターンとの最短距離の好ましい範囲が維持されれば、列方向パターン160Aはノズル群のノズル配列方向に対して斜めに形成されてもよい。
【0079】
また、図2(a)〜(c)には、幅が均一な直線状の導電性パターン160を例示したが、導電性パターンの形状は直線状に限定されない。例えば、部分的に幅が異なっていてもよいし、曲線と直線とを組み合わせた形状など、様々な形態を適用可能である。
【0080】
行方向パターン160Bは、紙搬送方向の最下流側に形成する態様が好ましい。すなわち、すべてのノズル151について、紙搬送方向下流側に行方向パターンが形成されることで、インクミストが行方向パターン160Bを超えて行方向パターン160Bの紙搬送方向下流側に移動したとしても、インクミストの移動先にはノズル151が存在せず、インクミストがノズル151の近傍に付着することがない。行方向パターン160Bと紙搬送方向の最下流側のノズルとの距離は、1mmを超える態様が好ましい。
【0081】
また、行方向パターンをノズル面150Aと反対側の面に形成してもよい。かかる態様では、ノズルプレート151Aを貫通する配線パターンを用いて行方向パターン160Bと列方向パターン160Aと導通させる態様が好ましい。
【0082】
導電性パターン160には、金、プラチナなど電気伝導率の高い金属材料が好適に用いられる。また、導電性パターン160の帯電量は接地電位(基準電位)に対して500V〜5000V程度が好ましく、1000V程度がより好ましい。導電性パターン160の帯電量はインクミストの物性、体積等により前記の好ましい範囲内において適宜設定するとよい。
【0083】
図2(a)〜(c)に図示した導電性パターン160は、電気的絶縁性能を有する不図示の保護膜により被覆される。該保護膜は、導電性パターン160に対応してパターンニングしてもよいし、ノズル151の開口部を避けてノズル面150Aの全面にわたって成膜してもよい。
【0084】
ノズルプレート151Aは、高精度の加工が可能であり、加工が容易なシリコンや金属材料が好適に用いられる。ノズルプレート151Aに金属材料を適用する場合には、ノズルプレート151Aと導電性パターン160の間にも絶縁膜を形成するとよい。
【0085】
〔インク供給系及びメンテナンス処理部の構成〕
図4は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系及びメンテナンス処理部の概略構成を示したブロック図である。インク供給タンク161はヘッド150にインクを供給する基タンクである。インク供給タンク161の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0086】
インク供給タンク161とヘッド150の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ162が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0087】
なお、図4には図示しないが、ヘッド150の近傍又はヘッド150と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0088】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル151の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ164と、ヘッド150のノズル面150Aの清掃手段としてクリーニングブレード166が設けられている。
【0089】
これらキャップ164及びクリーニングブレード166を含むメンテナンスユニット(メンテナンス手段)は、不図示の移動機構によってヘッド150に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド150下方のメンテナンス位置に移動される。
【0090】
キャップ164は、図示せぬ昇降機構によってヘッド150に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ164を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド150に密着させることにより、ノズル面150Aをキャップ164で覆う。
【0091】
印字中又は待機中において、特定のノズル151(図3参照)の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子158(図3参照)が動作してもノズル151からインクを吐出できなくなってしまう。
【0092】
このような状態になる前に、圧電素子158の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で圧電素子158を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍の劣化インクを排出すべくキャップ164に向かって予備吐出が行われる。「予備吐出」には、パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出などと呼ばれる処理が含まれる。
【0093】
また、ヘッド150内のインクや圧力室152(図3参照)の内部に気泡が混入した場合、圧電素子158が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド150にキャップ164を当て、吸引ポンプ167で圧力室152内の気泡が混入したインクを吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク168へ送液する。
【0094】
この吸引動作は、初期のインクのヘッド150への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室152内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0095】
クリーニングブレード166は、ヘッド150のノズル面150Aに当接される部分にゴムが適用され、図示せぬブレード移動機構によりヘッド150のノズル面150Aに摺動可能である。ノズル面150Aにインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード166をノズル面150Aに摺動させることでノズル面150Aを拭き取り、ノズル面150Aを清掃する。
【0096】
〔制御系の説明〕
図5は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0097】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
【0098】
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0099】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、処理液付与制御部196、乾燥制御部197、定着制御部198等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0100】
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0101】
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0102】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図5には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号188で図示されている。例えば、図5に示すモータ188には、図1に示す給紙胴52、処理液ドラム54、描画ドラム70、乾燥ドラム76、定着ドラム84、渡し胴94などの回転を駆動するモータ、第1〜第3中間搬送部26、28、30の中間搬送体32の回転を駆動するモータなどが含まれている。
【0103】
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図5には、装置内の各部に配置されるヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図5に示すヒータ189には、図1に示す乾燥部18に設けられる溶媒乾燥装置78のハロゲンヒータ80、中間搬送体32の内部に設けられる乾燥ユニット38のハロゲンヒータなどが含まれている。さらに、図1に示す乾燥ドラム76、定着ドラム84の表面を加熱するヒータも含まれている。
【0104】
さらに、このインクジェット記録装置10は、処理液付与制御部196、乾燥制御部197、及び定着制御部198を備えており、システムコントローラ172からの指示にしたがって、それぞれ、処理液塗布装置56、溶媒乾燥装置78、及び定着ローラ88の各部の動作を制御する。
【0105】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド150の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0106】
また、プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0107】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド150の圧電素子158(図3参照)に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子158に印加して圧電素子158を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図5に示すヘッドドライバ184には、ヘッド150の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0108】
センサ185は、装置内の各部に設けられる各種センサ類であり、図1に示したインラインセンサ90の他、温度センサ、位置検出センサ、圧力センサ、搬送系に設けられるリニアエンコーダ等が含まれている。センサ185の出力信号はシステムコントローラ172に送られ、システムコントローラ172は該出力信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送り、装置各部の制御が行われている。
【0109】
メンテナンス制御部191は、図4に図示したキャップ164やクリーニングブレード166を含むメンテナンス処理部の動作を制御する。すなわち、メンテナンス制御部191は、システムコントローラ172の指令に応じてヘッド150を所定のメンテナンス位置に移動させるとともに、該メンテナンス位置におけるメンテナンス処理中のキャップ164、クリーニングブレード166、吸引ポンプ167等の動作を制御する。
【0110】
電源部199は、システムコントローラ172の指令に応じて、導電性パターン160と接地電位(基準電位)との間に電圧を印加する導電性パターン160の帯電手段として機能する。ヘッド150の動作中は、導電性パターン160を常時帯電させるように電源部199が制御される。電源部199は、導電性パターン160に印加する電圧を可変させる機能を有する態様が好ましい。
【0111】
〔インクミスト回収方法の説明〕
次に、図6を用いて、ヘッド150のノズル面150Aの近傍に浮遊するインクミストを回収する機能について詳説する。
【0112】
図6は、上部にヘッド150のノズル面150Aの構造を簡略化して図示した説明図である。同図下部の実線で囲まれた部分は、ノズル面150Aの一部を拡大した図である。図6は、複数のノズル151が列方向に沿って並べられたノズル群を破線で図示し、ノズル群と略平行方向に沿って形成される列方向パターン160A及び主走査方向(図2(a)参照)に沿って形成される行方向パターン160Bを含む導電性パターン160を実線で図示している。また、所定の配線を介して導電性パターン160に所定の電圧を印加する電源部199は符号Vを付して図示している。
【0113】
図6の拡大図において、符号Aを付した矢印線は紙搬送方向と略平行方向に発生する気流を表し、符号Bを付した矢印線はノズル群の配列方向に発生する吐出による気流を表している。また、符号Cを付して図示した矢印線は導電性パターン160(列方向パターン160A)によって発生させた静電気力を表している。
【0114】
静電気力Cの作用によって、図6における一番下のノズル151の近傍に浮遊するインクミスト(不図示)は、太幅の矢印曲線で図示した列方向パターン160Aの方へ移動し、列方向パターン160Aに付着する。したがって、インクミストが近隣のノズル(例えば、図6下部の中央のノズル151)の近傍に移動することを回避でき、紙搬送方向の隣接ノズルに付着することを防止できる。
【0115】
本例に示すノズル151のマトリクス配置では、隣接するノズル群の間の紙送り方向における配置間隔が離れているので、インクミストが列方向パターン160Aを超えて他のノズル151に付着することが防止される。
【0116】
紙搬送方向と直交する方向に隣接するノズル群の間隔は十分に離れているので、各ノズル群のそれぞれについて列方向パターン160Aを形成したとしても、ヘッド150の大型化を回避することができる。
【0117】
例えば、主走査方向に並ぶように投影した投影ノズルピッチが450npiで配置されている場合には、紙搬送方向に対して角度θ(0°<θ<90°)をなすノズルの配列方向に隣接するノズル間のピッチは821μmであり、紙搬送方向と直交する方向に隣接するノズル間のピッチは1694μmであり、幅が10〜1690μm程度の列方向パターン160Aを形成することが可能である。
【0118】
ノズルプレート151A(図3参照)にシリコンを用いると、吐出時のインクとノズル151との摩擦によって、ノズルプレート151Aは負極性に帯電しやすいので、吐出後のインクは正極性に帯電し、インク(主液滴)から分離したインクミストも正極性に帯電している。正極性に帯電しているインクミストを導電性パターン160の方へ移動させる静電気力を発生させるには、導電性パターン160を負極性に帯電させることが好ましい。
【0119】
すなわち、導電性パターン160の帯電極性がインクミストの帯電極性と反対極性となるように電源部199から導電性パターン160に印加される電圧が制御される。
【0120】
また、ノズル151内のインクを導電性パターン160の帯電極性と反対極性に帯電させる態様も好ましい。かかる態様において、導電性パターン160の電位の絶対値がインクの電位の絶対値を超えるように構成する態様が好ましい。
【0121】
なお、ヘッド150内のインクを帯電させる手段には、公知の技術(例えば、ヘッド150内のインクに対して所定の電圧を印加する手段を備える等)を適用可能である。
【0122】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、複数のノズル151がマトリクス配置されたヘッド150のノズル面150Aに、紙搬送方向と角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に並べられたノズル群の紙搬送方向下流側にノズル群と平行方向に沿って導電性パターン160(列方向パターン)が形成され、インク吐出時に導電性パターン160を帯電させるので、ノズルの近傍に発生したインクミストに対して列方向パターン160Aの方への静電気力が作用して、列方向パターン160Aにインクミストを付着させることができ、紙搬送方向に隣接するノズルの方へのインクミストの移動が防止される。
【0123】
また、隣接するノズル群の間の距離が離れているので、各ノズル群の紙搬送方向下流側に形成された列方向パターン160Aを超えて、紙搬送方向下流側に隣接するノズル群のノズル151の近傍にインクミストが付着することがない。
【0124】
〔変形例〕
次に、上述した実施形態に係る変形例について説明する。
【0125】
図3に符号160’を付して図示したように、導電性パターンをノズルプレート151Aのノズル面150Aと反対側の面に形成してもよい。かかる態様によれば、ノズル面150Aに形成される絶縁性保護膜を省略することができる。
【0126】
また、ノズル面150Aに形成された導電性パターン160(図2(a)〜(c)参照)を帯電させるための手段として、図4に図示したクリーニングブレード166を使用することが可能である。すなわち、金属は摩擦によって負極性に帯電しやすい性質を有しているので、クリーニングブレード166をノズル面150Aに摺動させると、摩擦帯電によって導電性パターン160は負極性に帯電する。
【0127】
クリーニングブレード166のノズル面150Aに接触する部分にゴムを適用するとよい。また。導電性パターン160を帯電させる手段としてクリーニングブレード166を用いる場合には、クリーニングブレード166によるノズル面150Aのメンテナンス中に導電性パターンを帯電させることが可能である。
【0128】
本例では、画像形成装置の一例として記録媒体にカラーインクを吐出してカラー画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、マスクパターンの形成やプリント配線基板の配線描画など基板に樹脂液等により所定のパターン形状を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0129】
以上、本発明に係る画像形成装置を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0130】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0131】
(発明1):記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが二次元状に配置されるとともに、前記ノズルに対応して導電性パターンが形成されるノズルプレートを具備するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと前記記録媒体とを相対的に搬送する搬送手段と、前記導電性パターンを帯電させる帯電手段と、を備え、前記ノズルプレートは、前記搬送手段の搬送方向と略直交する行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に沿って前記複数のノズルが配置されるとともに、前記列方向に沿って複数のノズルが配置されたノズル群が前記行方向に沿って少なくとも1つ配置される構造を有し、前記導電性パターンは、前記ノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に、前記列方向と略平行方向に沿って形成されることを特徴とする画像形成装置。
【0132】
本発明によれば、インクジェットヘッドと記録媒体の相対搬送方向と直交する行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に複数のノズルが並べられたノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に、該列方向に沿って導電性パターンが形成されるので、該導電性パターンを帯電させてノズルから液体が吐出された後に発生するミスト状の液滴に対して導電性パターンの方向への静電気力を作用させることで、該ミスト状の液滴が搬送方向下流側の他のノズルの近傍に移動することが防止される。
【0133】
インクジェットヘッドは、インクジェット方式を用いてノズルプレートに設けられたノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドであり、その構成例として、該ノズルと連通する液室と、液室内の液体を加圧する加圧手段と、を備える態様が挙げられる。また、インクジェットヘッドから吐出される液体は、記録媒体に画像を形成(記録)するカラーインクや基板上に所定のパターンを形成する樹脂液など様々な液体が含まれる。
【0134】
また、複数のモジュールをつなぎ合わせて1つのインクジェットヘッドを構成する態様も可能である。かかる態様における「インクジェットヘッド」の概念には、インクジェットヘッドに含まれる1つのモジュールが含まれる。
【0135】
ミスト状の液滴とは、ノズルから吐出された主液滴から分離した該主液滴よりも小さい体積を有する微小液滴を含む概念である。ミスト状の液滴は、「サテライト」、「コンタミ」などと呼ばれるものを含んでいる。
【0136】
記録媒体の搬送方向と直交する方向のドット密度が450dpi以上となるように高密度にノズルが配置されたインクジェットヘッドは、隣接するノズル間のピッチがより小さくなり、隣接するノズルの近傍にミスト状の液滴が付着しやすくなるので、ミスト状の液滴のノズル近傍への付着を効果的に防止し得る。
【0137】
(発明2):発明1に記載の画像形成装置において、前記ノズルプレートは、複数の前記ノズル群を前記行方向に沿って配置させた構造を有し、前記複数のノズル群のそれぞれについて前記導電性パターンが形成されることを特徴とする。
【0138】
かかる態様によれば、隣接するノズル群の間隔を離すことができ、ミスト状の液滴が導電性パターンを超えて他のノズルの近傍に付着することが防止される。
【0139】
ノズル群ごとに形成された導電性パターンのそれぞれと導通する配線パターンを形成してもよい。該配線パターンの形成例として、インクジェットヘッドに対して記録媒体を搬送させるときの搬送方向の最下流側に搬送方向と直交する方向に沿って形成する態様が挙げられる。
【0140】
(発明3):発明1又は2に記載の画像形成装置において、前記導電性パターンは、前記ノズルプレートの液体が吐出される液体吐出面側面に形成されるとともに、絶縁性能を有する絶縁膜により被覆されることを特徴とする。
【0141】
かかる態様によれば、液体吐出面の近傍に浮遊しているミスト状の液滴に対して、導電性パターンによる静電気力を効果的に作用させることができる。
【0142】
(発明4):発明1又は2に記載の画像形成装置において、前記導電性パターンは、前記ノズルプレートの液体が吐出される液体吐出面の反対側面に形成されることを特徴とする。
【0143】
かかる態様によれば、液体吐出面に絶縁性被膜を形成する必要がなく、ノズルプレートの製作工程の簡素化が可能である。
【0144】
(発明5):発明1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ノズルプレートの材料は、シリコンを含み、前記帯電手段は、前記導電パターンを負極性に帯電させることを特徴とする。
【0145】
かかる態様において、シリコンによってノズルプレートを構成する態様では、ノズルを通過する際のノズルと液体との摩擦により、ノズルプレートは負極性に帯電しやすく、一方、液体は正極性に帯電しやすくなる。したがって、導電性パターンを負極性に帯電させることで、正極性に帯電した液体(主液滴)から分離したミスト状の液滴も正極性に帯電しているので、該ミスト状の液滴に対して静電気力を作用させることが可能となる。
【0146】
(発明6):発明1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記帯電手段は、前記液体吐出面を摺動する部分にゴムを含むブレードと、前記インクジェットヘッドのメンテナンス時に前記ブレードを前記液体吐出面に摺動させて、前記導電性パターンを帯電させるように前記ブレードの動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0147】
かかる態様によれば、導電性パターンに所定の電圧を印加する電源装置を備えることなく、他の用途を持つ既存の構成を用いて導電性パターンを帯電させることが可能である。
【0148】
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記液体を前記導電性パターンと反対極性に帯電させる液体帯電手段を備えたことを特徴とする。
【0149】
かかる態様において、液体帯電手段はインクジェットヘッド内のインクを帯電させるように構成するとよい。
【0150】
(発明8):発明7に記載の画像形成装置において、前記導電性パターンの電位の絶対値は、前記液体の電位の絶対値を超えることを特徴とする。
【0151】
かかる態様によれば、シリコンは負極性に帯電しやすいため、液体を正電荷に帯電させやすく、静電吸着効果を上げることができる。
【0152】
(発明9):発明1乃至8のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ノズル群と前記導電性パターンとの最短距離は、5μm以上30μm以下であることを特徴とする。
【0153】
かかる態様によれば、インク吐出の後に発生するインクミストに対して、導電性パターンによる静電気力を確実に作用させることができる。
【0154】
(発明9):発明1乃至9のいずれかに記載の画像形成装置において、前記ノズルプレートは、前記複数のノズルをすべて使用してドットを形成したときに記録媒体搬送方向に対して略直交する方向に1インチあたり450ドット以上のドット密度となるように、前記複数のノズルが配置される構造を有することを特徴とする。
【0155】
かかる態様によれば、本発明は記録媒体搬送方向と直交する方向のドット密度が450dpi以上の画像形成において特に効果を発揮する。
【0156】
(発明11):複数のノズルが二次元状に配置されたインクジェットヘッドと記録媒体とを相対的に搬送させながら、前記複数のノズルから前記記録媒体に液体を吐出する際に、前記行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に複数のノズルが配置されたノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に前記ノズル群と略平行方向に沿って形成された導電性パターンを帯電させて、各ノズルから液体が吐出された後に前記液体から分離したミスト状の液滴を前記導電性パターンの方へ移動させることを特徴とするミスト回収方法。
【0157】
本発明において、インクジェットヘッドの稼働中は常に導電性パターンを帯電させておく態様が好ましい。
【符号の説明】
【0158】
10…インクジェット記録装置、72M,72K,72C,72Y,150…インクジェットヘッド、150A…ノズル面、151A…ノズルプレート、160…導電性パターン、166…クリーニングブレード、199…電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液体を吐出する複数のノズルが二次元状に配置されるとともに、前記ノズルに対応して導電性パターンが形成されるノズルプレートを具備するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体とを相対的に搬送する搬送手段と、
前記導電性パターンを帯電させる帯電手段と、
を備え、
前記ノズルプレートは、前記搬送手段の搬送方向と略直交する行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に沿って前記複数のノズルが配置されるとともに、前記列方向に沿って複数のノズルが配置されたノズル群が前記行方向に沿って少なくとも1つ配置される構造を有し、
前記導電性パターンは、前記ノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に、前記列方向と略平行方向に沿って形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ノズルプレートは、複数の前記ノズル群を前記行方向に沿って配置させた構造を有し、前記複数のノズル群のそれぞれについて前記導電性パターンが形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記導電性パターンは、前記ノズルプレートの液体が吐出される液体吐出面に形成されるとともに、絶縁性能を有する絶縁膜により被覆されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記導電性パターンは、前記ノズルプレートの液体が吐出される液体吐出面の反対側面に形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記ノズルプレートの材料は、シリコンを含み、
前記帯電手段は、前記導電パターンを負極性に帯電させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記帯電手段は、前記液体吐出面を摺動する部分にゴムを含むブレードと、
前記インクジェットヘッドのメンテナンス時に前記ブレードを前記液体吐出面に摺動させて、前記導電性パターンを帯電させるように前記ブレードの動作を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記液体を前記導電性パターンと反対極性に帯電させる液体帯電手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記導電性パターンの電位の絶対値は、前記液体の電位の絶対値を超えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記ノズル群と前記導電性パターンとの最短距離は、5μm以上30μm以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記ノズルプレートは、前記複数のノズルをすべて使用してドットを形成したときに記録媒体搬送方向に対して略直交する方向に1インチあたり450ドット以上のドット密度となるように、前記複数のノズルが配置される構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
複数のノズルが二次元状に配置されたインクジェットヘッドと記録媒体とを相対的に搬送させながら、前記複数のノズルから前記記録媒体に液体を吐出する際に、前記行方向に対して所定の角度θ(0°<θ<90°)をなす列方向に複数のノズルが配置されたノズル群の前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を搬送させるときの搬送方向下流側に前記ノズル群と略平行方向に沿って形成された導電性パターンを帯電させて、各ノズルから液体が吐出された後に前記液体から分離したミスト状の液滴を前記導電性パターンの方へ移動させることを特徴とするミスト回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−214788(P2010−214788A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64505(P2009−64505)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】