説明

画像形成装置

【課題】 フェイスダウン、フェイスアップ両方の排出ができる画像形成装置においてフェイスアップ排出させる場合に、画像形成装置まで出向くことなくフェイスアップ排出トレイを開閉することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 フェイスアップトレイ3は通常は垂直に立ち上がり、本体1の側面に接して閉じている。用紙搬送方向切り替え手段73をフェイスアップ方向に切り替えると回転軸73bに係合しているフック33が外れ、フェイスアップトレイ3が付勢手段32によって開くようにする。用紙排出ローラ75に接続された、クラッチ機構82を有するギヤ列81、83をフェイスアップトレイ3に設けられた扇形ギヤ34に接続し、必要に応じて排出ローラ75の駆動力をクラッチ機構で伝達してフェイスアップトレイを閉じるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスアップ排出とフェイスダウン排出が可能な画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、画像が形成された用紙を排出する場合、順番が正しく積み重ねられるようにフェイスダウン排出されるようになっている。フェイスダウン排出部は、多くの場合画像形成部や定着部の上に設定され、定着部からそこまで屈曲した搬送路が設定されている。しかし、厚紙などでは曲率半径の小さい屈曲した搬送路を搬送されると用紙が折れ曲がってしまうことがある。そのため、用紙が曲がらないような経路を搬送されるように、定着部からほぼ真っ直ぐに延びる排出部を設けた画像形成装置が既に知られている。定着部からほぼ真っ直ぐに延びる排出部は、用紙の画像形成面が上を向く、フェイスアップ排出部となる。
【0003】
フェイスアップ排出された用紙を受けるため、トレイを設ける必要がある。このような目的で設けられるトレイ、すなわちフェイスアップトレイとしては、ユーザがフェイスアップ排出する際に、画像形成装置外壁に取り付けるものや、特許文献1、2のように本体外装を手で開いてトレイとするものが提案されている。
【特許文献1】特開2001−278525号公報(第3頁、図2)
【特許文献2】特開平11−133689号公報(第2頁−第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のいずれの装置においてもフェイスアップトレイを用意せずにフェイスアップ排出動作させると次のような問題が起こる。フェイスアップトレイを画像形成装置外壁に取り付けるものの場合、フェイスアップトレイがないために画像が形成された用紙が床に落ちて折れたり汚れたりする。また、特許文献1または2に記載のものでは、閉じられたフェイスアップトレイに排出が阻まれて画像が形成された用紙が排出ローラと閉じられたフェイスアップトレイの間でしわになったり、排出ローラに詰まったりする。
【0005】
結局、上記のいずれの装置においても、フェイスアップ排出させるたびに使用者はフェイスアップトレイを用意しに画像形成装置まで出向かなければならない。特に画像形成装置から遠い場所に設置されたパソコンから画像を形成させる場合には、トレイを用意してからパソコンに戻って画像形成指示を出し、画像が形成された用紙を画像形成装置まで取りに行かねばならず、パソコンから画像形成装置までの往復が面倒であった。
【0006】
一方、フェイスアップ排出用のトレイを開いたままにしておいた場合、用紙排出口から冷気が入り込み、本体内部の暖気が逃げるため、トナー像を加熱して用紙に定着させる定着ローラの温度が低下しやすくなり、定着ローラを所定の温度までたびたび加熱する必要があるため電力が無駄になっていた。さらに画像形成装置のそばを通りかかった人が開いたフェイスアップ排出用のトレイにぶつかることもあった。
【0007】
そこで、本発明では、開閉可能なフェイスアップトレイが、フェイスダウン排出する場合は閉じられており、フェイスアップ排出する場合は自動的に開くことで、フェイスアップトレイの用意の手間を省き、用紙の無駄をなくすことができる、画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、フェイスアップ排出したあとで、用紙が取り除かれると、または一定時間が経過するとフェイスアップトレイが自動的に閉まることにより、定着ローラの温度を低下しにくくして電力を節約でき、また、フェイスアップトレイに人や物がぶつかることによる無用の事故を防ぐことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の画像形成装置では、画像形成面を上にして排出される用紙を受けるフェイスアップトレイと、画像形成面を下にして排出される用紙を受けるフェイスダウントレイと、画像形成後の用紙を前記いずれかのトレイに振り分ける用紙搬送方向切り替え手段と、装置全体を制御する制御部とを備える画像形成装置において、
前記フェイスアップトレイは本体の側面に開閉自在に取り付けられ、閉じた状態では自由端を上に向けて本体側面に接し、開いた状態では本体側面から突出するものであるとともに、このフェイスアップトレイが閉じた時にこれを捕捉しそのまま維持するロック手段と、このフェイスアップトレイを開く方向に付勢する付勢手段とが設けられており、前記制御部により、前記用紙搬送方向切り替え手段が前記フェイスダウントレイへの誘導態勢から前記フェイスアップトレイへの誘導態勢に切り替えられると、前記ロック手段が解除され、前記フェイスアップトレイが前記付勢手段により開く構成とする。
【0010】
また、本発明の画像形成装置では、前記フェイスアップトレイの開閉支点を扇の要のようにして回転する、前記フェイスアップトレイに設けられた扇形ギヤと、画像形成装置の各部に駆動力を伝える主モータと、クラッチ機構を有し前記主モータの駆動力を前記フェイスアップトレイが閉じるように前記扇形ギヤに伝えるギヤ列と、前記フェイスアップトレイの開閉状態を検知するフェイスアップトレイ開閉検知センサとを備え、前記フェイスアップトレイが開いた状態において、前記制御部が前記用紙搬送方向切り替え手段を前記フェイスダウントレイへの誘導態勢に切り替えると同時に前記クラッチ機構を接続することにより前記フェイスアップトレイが閉じ始め、前記フェイスアップトレイが完全に閉じたことを前記フェイスアップトレイ開閉検知センサが検知したことを受け、前記クラッチ機構を解除するものとする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置では、前記フェイスアップトレイの開閉支点を扇の要のようにして回転する、前記フェイスアップトレイに設けられた扇形ギヤと、前記扇形ギヤに接続する駆動ギヤと、前記駆動ギヤの中心と主軸で接続されたフェイスアップトレイ駆動モータと、前記フェイスアップトレイの開閉状態を検知するフェイスアップトレイ位置検知センサを備え、前記フェイスアップトレイが開いた状態において、前記制御部が前記用紙搬送方向切り替え手段を前記フェイスダウントレイへの誘導態勢に切り替えると同時に前記フェイスアップトレイ駆動モータを前記フェイスアップトレイが閉じる方向に回転させ、前記フェイスアップトレイが閉じたことを前記フェイスアップトレイ位置検知センサが検知したことを受け、前記モータを停止させるものとする。
【0012】
また、本発明の画像形成装置では、前記フェイスアップトレイが開いた状態の時に前記フェイスアップトレイ上の用紙の有無を検知する用紙検知センサを設け、この用紙検知センサが前記フェイスアップトレイ上に用紙があることを検知している間は前記制御部が前記フェイスアップトレイを閉じる動作を行わないものとする。
【0013】
また、本発明の画像形成装置では、前記フェイスアップトレイの用紙載置面に窪みを設け、前記フェイスアップトレイを閉じたとき、用紙載置面に残留した用紙が前記窪みの中に収まるようにするものとする。
【0014】
また、本発明の画像形成装置では、前記フェイスアップトレイが閉じたときに前記窪みの入口を閉ざす蓋を前記本体側に設け、この蓋は本体内に退避可能であるとともに常時は付勢手段により進出位置に押し出されているものとする。
【0015】
また、本発明の画像形成装置では、前記フェイスアップトレイに断熱処理を施すものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による画像形成装置は、開閉可能なフェイスアップトレイに用紙を排出するときに、制御部により用紙搬送方向切り替え手段をフェイスダウントレイへの誘導態勢からフェイスアップトレイへの誘導態勢に切り替えると、ロック手段が解除されてフェイスアップトレイが付勢手段によって開くため、使用者が画像形成装置まで出向いてフェイスアップトレイを開く手間を省くことができる。
【0017】
また、本発明によれば、フェイスアップトレイが開いた状態において、用紙搬送方向切り替え手段を通常の使用状態であるフェイスダウントレイへの誘導態勢に切り替えると、制御部によりクラッチ機構を動作させて主モータの動力によりフェイスアップトレイが閉じるため、フェイスアップトレイへの用紙排出口から画像形成装置内部の暖気が逃げるままにすることを防ぐことができ、定着ローラの温度を維持するための電力を節約することができる。また、フェイスアップトレイに人や物がぶつかることによる無用の事故を防ぐことができる。
【0018】
また、本発明によれば、フェイスアップトレイが開いた状態において、制御部によりフェイスアップトレイ駆動モータを動作させてフェイスアップトレイが閉じるため、使用者がフェイスアップ排紙された用紙を取ったあと、フェイスアップトレイを閉じ忘れても、フェイスアップトレイへの用紙排出口から画像形成装置内部の暖気が逃げるのを防ぐことができ、定着ローラの温度を維持するための電力を節約することができる。また、フェイスアップトレイに人や物がぶつかることによる無用の事故を防ぐことができる。
【0019】
また、本発明によれば、用紙検知センサが開いた状態のフェイスアップトレイ上に用紙があることを検知している間は制御部がフェイスアップトレイを閉じる動作を行わないため、画像が形成された用紙が床に落ちたり、フェイスアップトレイによって折れ曲がったりすることや、用紙によってフェイスアップトレイが完全に閉じないことによる誤動作を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明によれば、フェイスアップトレイが閉じたとき、万一用紙が残っていたとしても、その用紙は窪みの中に収まるため、画像が形成された用紙が床に落ちることや、用紙が挟まってフェイスアップトレイが完全に閉じないことによる誤動作を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明によれば、フェイスアップトレイが閉じた状態で窪みの入口を塞ぐ蓋を設けるため、画像形成装置の見栄えをよくすることができる。また、フェイスアップトレイが閉じる動作の途中でフェイスアップトレイ上の用紙が蓋に触れると蓋が本体内部に押し戻されるため、用紙が挟まってフェイスアップトレイが完全に閉じないことによる誤動作を防ぐことができる。
【0022】
また、本発明によれば、フェイスアップトレイの内側全面に断熱シートを取り付けるため、画像形成装置内部の暖気が冷めにくく、定着ローラの温度を維持するための電力を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。図1は本発明の画像形成装置の実施形態に係るプリンタの概略構成図である。本体1の上面にはフェイスダウントレイ2、左側面には開閉可能なフェイスアップトレイ3、右側面には開閉可能な手差し給紙トレイ43が設けられている。
【0024】
本体1の内部には、給紙部4、画像形成部5、定着部6および制御部9が内蔵されている。まず給紙部4について説明する。給紙部4は給紙カセット41、給紙ローラ42、手差し給紙トレイ43および給紙ローラ対44からなる。給紙カセット41は、用紙Pが収容され、本体1の下部に配設されている。用紙Pはここから給紙ローラ42により1枚ずつ用紙搬送路71へ送り出され、搬送ローラ対群72によって搬送される。また、手差し給紙トレイ43は開閉可能であり、本体1の右側に備えられている。ここに用紙Pを載置しておくことにより、給紙カセット41の用紙Pと同様に用紙Pは給紙ローラ対44により1枚ずつ用紙搬送路71へ送り出され、搬送ローラ対群72によって搬送される。
【0025】
次に画像形成部5について説明する。画像形成部5は、感光体ドラム51と、その周囲に配設された帯電器52、光走査ユニット53、現像器54、転写ローラ55、クリーニング器56とを備える。使用者が、本体1に直接またはネットワークを経由して接続された図示しないパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略称で呼ぶ)から画像形成の指示を出すと制御部9が指示を受け、感光体ドラム51は時計回りに回転し、まず帯電器52により感光体ドラム51の表面は均一に帯電される。次に、光走査ユニット53から感光体ドラム51の表面にレーザ光が照射されて、用紙Pに形成される画像の部分又は前記画像以外の部分に相当する電荷が消去され、感光体ドラム51の表面に静電潜像が形成される。そして現像器54によって感光体ドラム51上の静電潜像にトナーが供給され静電潜像が顕像化する。
【0026】
感光体ドラム51がさらに回転し、トナー画像が転写ローラ55と対向する位置に来たときに、それに合わせて、感光体ドラム51と転写ローラ55との間に用紙Pが搬送されてくる。このとき転写ローラ55に、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されることにより、感光体ドラム51上のトナー画像が用紙P上に転写される。感光体ドラム51上の転写されなかった残留トナーはクリーニング器56によって感光体ドラム51上から除去される。一方トナー画像が転写された用紙Pは定着ローラ61と加圧ローラ62とが圧接してなる定着部6に搬送され、ここでトナー画像は加熱・加圧されて用紙Pに定着する。その後用紙Pは用紙搬送方向切り替え手段73により、搬送方向が切り替えられ、フェイスダウン排出ローラ対74またはフェイスアップ排出ローラ対75によってフェイスダウントレイ2またはフェイスアップトレイ3の上に排出される。
【0027】
図2に用紙搬送方向切り替え手段73およびその近傍の部材の正面形状を示す。用紙搬送方向切り替え手段73は方向切り替え用ピン73aを有し、回転軸73bを中心に回動可能である。方向切り替え用ピン73aは、ソレノイド76aにより上下可能な方向切り替え用フック76と係合する。用紙搬送方向切り替え手段73は、使用者のパソコンからの指示を受けた制御部9が方向切り替え用フック76を上下させることにより、実線で示すフェイスダウントレイへの誘導態勢と破線で示すフェイスアップトレイへの誘導態勢とに切り替えられる。
【0028】
搬送ローラ対群45、フェイスダウン排出ローラ対74およびフェイスアップ排出ローラ対75など、本体1内部の回転部分は主モータ(不図示)から駆動力が伝えられている。また、制御部9はプリンタ全体を制御する。
【0029】
図3に本発明の第1の実施形態を示す。図3のプリンタの部分概略構成図のように、フェイスアップトレイ3にはフェイスアップトレイ3が閉じた状態で用紙搬送方向切り替え手段73の回転軸73bに係合するロック用フック33が設けられている。また、フェイスアップトレイ3の開閉支点31には、フェイスアップトレイ3を開く方向に付勢するねじりコイルばねからなる付勢手段32が取り付けられている。また、フェイスアップトレイ3の内側(フェイスアップトレイ3を閉じたときに本体1の方向を向く側)の全面に断熱シート37が取り付けられている。
【0030】
図4に示すロック用フック33と回転軸73bの拡大部分のように、回転軸73bは外周の一部に平坦部を設けた形状であり、用紙搬送方向切り替え手段73がフェイスダウントレイ2への誘導態勢である場合は、実線で示すようにロック用フック33と係合し、図3のようにフェイスアップトレイ3は閉じている。使用者がパソコンを操作することにより用紙搬送方向切り替え手段73がフェイスアップトレイ3への誘導態勢に切り替わると、回転軸73bが回転し、破線で示すようにロック用フック33が持ち上げられて回転軸73bとの係合が外れる。ロック用フック33が回転軸73bから外れると、図5のように、付勢手段32によりフェイスアップトレイ3が開く。
【0031】
このように構成することにより、使用者はフェイスアップ排出する際に、プリンタまで出向かなくてもフェイスアップトレイ3を開くことができる。また、断熱シート37によって、フェイスアップトレイ3が閉じているときの本体1内部の保温性能が向上するため、定着ローラ61の温度低下を抑えることができ、定着ローラ61の所定の温度の維持のための通電量を減らすことができ、電力を節約することができる。
【0032】
また、第1の実施形態において、フェイスアップトレイ3の回転支点31近傍には、図3および図5に示すように回転支点31を扇の要のようにして回転する扇形ギヤ34と、フェイスアップトレイ3の開閉状態を検知するフェイスアップトレイ開閉検知センサ35とが設けられている。また、フェイスアップトレイ3にはフェイスアップトレイ3の上の用紙の有無を検知する用紙検知センサ36が設けられている。フェイスアップトレイ開閉器園地センサ35と用紙検知センサ36はともに光反射型センサからなり、ギヤ34が近接したことまたはフェイスアップトレイ3の上に用紙があることを検知する。また、図6の本体1の右側面方向から見たフェイスアップ排出ローラ対75の周辺の概略構成図のように、フェイスアップ排出ローラ対75を構成するローラ75aおよびローラ75bのうち下のローラ75bの回転軸75cにはクラッチ機構82を有するギヤ81が回転軸75cに対して回転自由かつ左右に移動しないように取り付けられている。また、主モータ(不図示)からギヤ75dによって回転軸75cに伝えられた駆動力を、ギヤ81からフェイスアップトレイ3が閉じる方向に扇形ギヤ34に伝えるギヤ列83が設けられている。回転軸75cは主モータからの駆動力を受け、常に回転している。
【0033】
図7の、接続されている状態のクラッチ機構の周辺の部分断面図を用いてクラッチ機構82について説明する。クラッチ機構82は、ローラ75bの回転軸75cに固定されたフランジ82aと、単数または複数個の歯82cが外周に設けられた円筒形のスリーブ82bと、スリーブ82b内部に配置された締め付けばね82dからなる。フランジ82aにはボス部82eが設けられており、このボス部82eはギヤ81に設けられたボス部81aに向かい合い、またボス部81aとほぼ同じ直径である。スリーブ82bは、ボス部81aとボス部82eを内側に通すように配置され、回転自由であるが、図中左右方向の移動範囲はギヤ81およびフランジ82aで制限されている。締め付けばね82dはコイルばねで構成され、その内径はボス部81aおよびボス部82eの外径に近い値であり、その外径はスリーブ82bの内径よりもやや小さい値である。締め付けばね82dは一端をスリーブ82bに固定され、他端をギヤ81に固定されており、コイルの内側がボス部81aおよびボス部82bに軽く接触するように配置されている。
【0034】
図7および、図8に示す解除されている状態のクラッチ機構の周辺の部分断面図を用いてクラッチ制御ソレノイド84について説明する。クラッチ制御ソレノイド84はフラッパ式のものであり、ソレノイドフラッパ84aおよび電磁石84bを備えている。ソレノイドフラッパ84aの先端には、スリーブの歯82cと平行に爪84cが設けられている。ソレノイドフラッパ84aは磁性金属の板からなり、クラッチ制御ソレノイド84の電源がOFFの状態では、図8に示すように爪84cが歯82cに係合するように折り曲げて形成されている。クラッチ制御ソレノイド84の電源がONの状態では、図7に示すようにソレノイドフラッパ84aが電磁石84bに吸い寄せられて弾性変形して爪84cが上方へ変位し、爪84cの歯82cへの係合が解除される。
【0035】
続いて、クラッチ機構82による駆動力伝達動作について説明する。クラッチ制御ソレノイド84の電源がONの状態では、図7のように爪84cと歯82cとの係合が解除されている。この状態では、回転軸75cの回転により回転するフランジ82aのボス部82eに締め付けばね82dが巻き付き、スリーブ82bもともに回転し、さらに締め付けばね82dがギヤ81のボス部81aに巻き付くため、ギヤ81に駆動力が伝えられる。
【0036】
クラッチ制御ソレノイド84の電源がOFFの状態では、図8のように爪84cが歯82cに係合している。この状態では、回転軸75cの回転によりフランジ82aは回転するが、スリーブ82bは爪84Cにより固定される。締め付けばね82dはフランジ82aのボス部82eに接触するものの、ボス部82eの回転方向は締め付けばね82dの巻き付きを緩める方向であるため、ギヤ81には駆動力が伝えられない。以上のクラッチ機構82の動作をふまえて、図5〜8を用いてフェイスアップトレイ3を閉じる動作を説明する。
【0037】
用紙がフェイスアップトレイ3の上にあるときは、用紙検知センサ36が用紙を検知し、これを受けて制御部9はフェイスアップトレイ3を閉じる動作を開始しない。
【0038】
使用者がフェイスアップトレイ3から用紙を回収すると、用紙検知センサ36が用紙を検知しなくなり、これを受けて制御部9はフェイスアップトレイ3を閉じる動作を開始する。すなわち、方向切り替え用フック76を下に動かして用紙搬送方向切り替え手段73をフェイスダウントレイ2への誘導態勢に切り替えると同時に、クラッチ制御ソレノイド84の電源をONにしてクラッチ機構82をつなぎ、回転軸75cの駆動力により扇形ギヤ34を回転させてフェイスアップトレイ3を閉じる。するとロック用フック33が回転軸73bに係合し、フェイスアップトレイ3がロックされる。センサ34がフェイスアップトレイ3の閉じたことを検知したことを受け、制御部9はクラッチ制御ソレノイドの電源をOFFにして、フェイスアップトレイ3を閉じる動作を完了する。
【0039】
ここで、ギヤ81およびクラッチ機構82の設置場所は回転軸75cに限られない。主モータの駆動力が伝えられていればどの回転軸に取り付けられても構わない。その場合、扇形ギヤ34をフェイスアップトレイ3が閉じる方向に回転させるように、ギヤ列83を構成するギヤはギヤ81の回転方向に応じて単数または複数個設ける。
【0040】
このように構成することにより、用紙をフェイスアップトレイ3から回収したときにフェイスアップトレイ3を閉じ忘れても、用紙検知センサ36が用紙を検知しなくなったことを受けて自動的にフェイスアップトレイ3が閉じるため、開いたままのフェイスアップトレイ3にぶつかることによる無用の事故を減らすことができる。また、本体1内部の暖気がフェイスアップトレイ3への用紙排出口から放出され続けるということがなくなるため、定着ローラ61の温度低下を抑えることができ、電力を節約することができる。さらに、用紙検知センサ36により用紙がフェイスアップトレイ3の上にある場合はフェイスアップトレイ3を閉じる動作を行わないため、画像が形成された用紙が床に落ちて汚れたり、フェイスアップトレイ3の閉じる動作によって折れ曲がったりすることがない。
【0041】
本発明の第2の実施形態を、図9のプリンタの概略構成図に示す。第2の実施形態では、フェイスアップトレイ3に、フェイスアップトレイ3よりも幅の狭い用紙が収まる窪み38が設けられている。フェイスアップトレイ3が閉じた時には窪み38の端が上を向き、上部に開いた入口ができる。このフェイスアップトレイ3が閉じた時に、窪み38の上部の入口を塞ぐ、蓋39が本体1に設けられている。蓋39は窪み38と同じ幅であって、本体1内部から本体側面に設けた蓋挿入口39aを通して設けられている。蓋39は、圧縮コイルばねからなる付勢手段39bにより窪み38の上部の入口を塞ぐ方向に付勢されている。
【0042】
図10は本発明の第2の実施形態に係るプリンタの部分正面図である。フェイスアップトレイ3の回転支点31近傍には、回転支点31を扇の要のようにして回転する扇形ギヤ34と、フェイスアップトレイ3の開閉状態を検知するフェイスアップトレイ開閉検知センサ35と、フェイスアップトレイ閉鎖部85とが設けられている。フェイスアップトレイ閉鎖部85は、扇形ギヤ34に噛み合うフェイスアップトレイ閉鎖ギヤ85aおよびフェイスアップトレイ閉鎖ギヤ85aの中心に回転軸が接続され、フェイスアップトレイ3が閉じる方向にフェイスアップトレイ閉鎖ギヤ85aを回転させるフェイスアップトレイ閉鎖モータ85bとからなる。
【0043】
また、第1の実施形態と同様に、フェイスアップトレイ3にはフェイスアップトレイ3が閉じた状態で用紙搬送方向切り替え手段73の回転軸73bに係合するロック用フック33が設けられており、フェイスアップトレイ3の開閉支点31には、フェイスアップトレイ3を開く方向に付勢するねじりコイルばねからなる付勢手段32が取り付けられている。
【0044】
第1の実施形態と同様に用紙搬送方向切り替え手段73の方向をフェイスアップトレイ3への誘導態勢に切り替えることによってフェイスアップトレイ3が開く。フェイスアップトレイ3への用紙排出完了後一定の時間が経過すると、フェイスアップトレイ3上の用紙の有無にかかわらず、制御部9はフェイスアップトレイ3を閉じる動作を開始する。すなわち、方向切り替え用フック76を下に動かして用紙搬送方向切り替え手段73をフェイスダウントレイ2への誘導態勢に切り替えると同時に、フェイスアップトレイ閉鎖モータ37bを回転させ、フェイスアップトレイ3を閉じると、ロック用フック33が回転軸73bに係合し、フェイスアップトレイ3がロックされる。フェイスアップトレイ3の上に用紙がある場合でも、窪み38に用紙が収まるため、フェイスアップトレイ3を閉じることができる。フェイスアップトレイ開閉検知センサ34がフェイスアップトレイ3の閉じたことを検知したことを受け、制御部9はフェイスアップトレイ閉鎖モータ37bを停止し、フェイスアップトレイ3を閉じる動作を完了する。
【0045】
フェイスアップトレイ3の上の用紙が窪み38よりも長手方向が長い場合でも、図11の部分拡大図のように、フェイスアップトレイ3が閉じると蓋39が用紙Pに触れて、付勢手段39bに付勢されながら本体内部に押し戻されるため、フェイスアップトレイ3を閉じることができる。ここで、蓋39は図12の部分拡大図のように、ねじりコイルばねからなる付勢手段39bに付勢され、上端部を回動軸として回動可能とすることもできる。
【0046】
このように構成することにより、フェイスアップトレイ3を閉じ忘れた場合でも自動的にフェイスアップトレイ3が閉じるため、開いたフェイスアップトレイ3にぶつかることによる無用の事故を減らすことができる。また、本体1内部の暖気がフェイスアップトレイ3への用紙排出口から逃げなくなるため、定着ローラ61の温度低下を抑えることができ、電力を節約することができる。
【0047】
また、万一フェイスアップトレイ3の上に用紙が残っている場合にフェイスアップトレイ3が閉じられたとしても窪み38に用紙が収まるため、フェイスアップトレイ3が閉じる動作の途中で用紙が本体1とフェイスアップトレイ3の間に挟まってフェイスアップトレイ3が完全に閉じないことによる誤動作がなくなる。例えば、制御部9が閉じられないフェイスアップトレイ3を繰り返し閉じようとするといった誤動作がなくなる。
【0048】
また、フェイスアップトレイ3の上に用紙がない場合もしくは用紙が窪み38よりも小さい場合は、蓋39が窪み38の上部の入口を塞ぐため見栄えも悪くない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る画像形成装置のフェイスアップトレイの開閉機構は、用紙排出トレイだけでなく、開閉可能な手差し給紙トレイにも利用することができる。また、画像形成装置はプリンタに限られず、ファクシミリ、複写機、またはこれらの複合機であってもこの開閉機構を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の画像形成装置の実施形態に係るプリンタの概略構成図
【図2】用紙搬送方向切り替え手段近傍の正面図
【図3】第1の実施形態に係るプリンタの部分正面図
【図4】ロック用フックと用紙搬送方向切り替え手段の回転軸の部分拡大図
【図5】第1の実施形態に係るフェイスアップトレイが開いた状態のプリンタの部分正面図
【図6】本体の右側面方向から見たフェイスアップ排出ローラ対周辺の概略構成図
【図7】接続されている状態のクラッチ機構の周辺の部分断面図
【図8】解除されている状態のクラッチ機構の周辺の部分断面図
【図9】第2の実施形態に係るプリンタの概略構成図
【図10】第2の実施形態に係るプリンタの部分正面図
【図11】第2の実施形態に係るプリンタの部分拡大図
【図12】第2の実施形態の変形実施態様に係るフェイスアップトレイ3の部分拡大図
【符号の説明】
【0051】
1 本体
2 フェイスダウントレイ
3 フェイスアップトレイ
9 制御部
32 付勢手段
33 ロック用フック
34 扇形ギヤ
35 フェイスアップトレイ開閉検知センサ
36 用紙検知センサ
37 断熱シート
38 窪み
39 蓋
39a 蓋挿入口
39b 付勢手段
73 用紙搬送方向切り替え手段
73a 方向切り替え用ピン
73b 回転軸
81 ギヤ
82 クラッチ機構
83 ギヤ列
85 フェイスアップトレイ閉鎖部
85a フェイスアップトレイ閉鎖ギヤ
85b フェイスアップトレイ閉鎖モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成面を上にして排出される用紙を受けるフェイスアップトレイと、画像形成面を下にして排出される用紙を受けるフェイスダウントレイと、画像形成後の用紙を前記いずれかのトレイに振り分ける用紙搬送方向切り替え手段と、装置全体を制御する制御部とを備える画像形成装置において、
前記フェイスアップトレイは本体の側面に開閉自在に取り付けられ、閉じた状態では自由端を上に向けて本体側面に接し、開いた状態では本体側面から突出するものであるとともに、このフェイスアップトレイが閉じた時にこれを捕捉しそのまま維持するロック手段と、このフェイスアップトレイを開く方向に付勢する付勢手段とが設けられており、前記制御部により、前記用紙搬送方向切り替え手段が前記フェイスダウントレイへの誘導態勢から前記フェイスアップトレイへの誘導態勢に切り替えられると、前記ロック手段が解除され、前記フェイスアップトレイが前記付勢手段により開くことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記フェイスアップトレイの開閉支点を扇の要のようにして回転する、前記フェイスアップトレイに設けられた扇形ギヤと、画像形成装置の各部に駆動力を伝える主モータと、クラッチ機構を有し前記主モータの駆動力を前記フェイスアップトレイが閉じるように前記扇形ギヤに伝えるギヤ列と、前記フェイスアップトレイの開閉状態を検知するフェイスアップトレイ開閉検知センサとを備え、前記フェイスアップトレイが開いた状態において、前記制御部が前記用紙搬送方向切り替え手段を前記フェイスダウントレイへの誘導態勢に切り替えると同時に前記クラッチ機構を接続することにより前記フェイスアップトレイが閉じ始め、前記フェイスアップトレイが完全に閉じたことを前記フェイスアップトレイ開閉検知センサが検知したことを受け、前記クラッチ機構を解除することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記フェイスアップトレイの開閉支点を扇の要のようにして回転する、前記フェイスアップトレイに設けられた扇形ギヤと、前記扇形ギヤに接続する駆動ギヤと、前記駆動ギヤの中心と主軸で接続されたフェイスアップトレイ駆動モータと、前記フェイスアップトレイの開閉状態を検知するフェイスアップトレイ位置検知センサを備え、前記フェイスアップトレイが開いた状態において、前記制御部が前記用紙搬送方向切り替え手段を前記フェイスダウントレイへの誘導態勢に切り替えると同時に前記フェイスアップトレイ駆動モータを前記フェイスアップトレイが閉じる方向に回転させ、前記フェイスアップトレイが閉じたことを前記フェイスアップトレイ位置検知センサが検知したことを受け、前記モータを停止させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記フェイスアップトレイが開いた状態の時に前記フェイスアップトレイ上の用紙の有無を検知する用紙検知センサを設け、この用紙検知センサが前記フェイスアップトレイ上に用紙があることを検知している間は前記制御部が前記フェイスアップトレイを閉じる動作を行わないことを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記フェイスアップトレイの用紙載置面に窪みを設け、前記フェイスアップトレイを閉じたとき、用紙載置面に残留した用紙が前記窪みの中に収まるようにしたことを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記フェイスアップトレイが閉じたときに前記窪みの入口を閉ざす蓋を前記本体側に設け、この蓋は本体内に退避可能であるとともに常時は付勢手段により進出位置に押し出されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記フェイスアップトレイに断熱処理を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−8270(P2006−8270A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184454(P2004−184454)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】