説明

画像形成装置

【課題】 電圧制御発振器(VCO)の制御及び出力電圧の発振を抑え、実用上問題無い立ち上がり時間での安定した高圧出力を簡易な方法で可能とする圧電トランス式高圧電源装置を用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成部、静電潜像にトナー像を形成する現像部、及びトナー像を転写材に転写する転写部を備える画像形成装置に用いられる圧電トランス式高圧電源装置において、
圧電トランス、
圧電トランス駆動回路、
出力電圧設定信号を出力する出力電圧設定信号出力回路、
出力電圧検出回路、及び
前記出力電圧検出回路からの信号と、前記出力電圧設定信号とに基づいて、前記圧電トランス駆動回路を制御する制御信号を出力する駆動制御回路を有し、
前記出力電圧設定信号出力回路は、目標電圧より小さい電圧に対応する出力電圧設定信号を出力し、その後、目標電圧に対応する出力電圧設定信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセス方式の画像形成装置に使用される圧電トランス式高圧電源装置及び、それを使用した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセス方式の画像形成装置において、転写部などの画像形成に係わる直流バイアス等のための高圧電源装置の小型化・軽量化は、画像形成装置自体の小型化・軽量化にも繋がる。このため、上記高圧電源装置に用いられるトランスとして、巻線式の電磁トランスに変わり、薄型で軽量の高出力の圧電トランスを用いることが検討されている。セラミックを素材とした圧電トランスを用いることにより、電磁トランス以上の効率で高電圧を生成することが可能となり、しかも、一次側および二次側間の結合に関係なく一次側と二次側の電極間の距離を離すことが可能となる。したがって、特別に絶縁の為にモールド加工する必要がなくなり、高圧電源装置を小型・軽量にできる。
【0003】
圧電トランス式高圧電源の回路構成例を図2を用いて説明する。ここに示す回路は、転写部に使用される高圧電源の一例であり、101は高圧電源の圧電トランス(圧電セラミックトランス)である。圧電トランス101の出力はダイオード102、103及び高圧コンデンサ104によって正電圧に整流平滑され負荷である転写ローラ(図3の430)に供給される。出力電圧検出回路206において、出力電圧Voutは抵抗105、106、107によって分圧され、保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)にVsnsとして出力される。
【0004】
ここで、出力電圧検出回路206は、抵抗105、106、107とコンデンサ115を図2のように構成することにより、フィルタ回路として機能する。したがって、出力電圧検出信号Vsnsは、出力電圧Voutに対して、抵抗とコンデンサの部品定数によって決まる回路時定数でレベル変化する。
【0005】
他方、出力電圧設定手段として、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)には抵抗114を介してDCコントローラ(後述)からアナログ信号である高圧電源の出力電圧設定信号Vcontが入力される。
【0006】
ここでオペアンプ109と抵抗114とコンデンサ113を図2のように構成することにより、積分回路として機能しており、抵抗とコンデンサの部品定数によって決まる積分時定数により出力電圧設定信号Vcontがオペアンプ109に入力される。
【0007】
また、オペアンプ109の出力端は電圧制御発振器(VCO)110に接続され、その出力端がインダクタ112に接続されたトランジスタ111を駆動することで、圧電トランスの一次側に電源を供給する。
【0008】
また、圧電トランスの周波数に対する出力特性は、一般的に図5に示すような共振周波数fにおいて出力電圧が最大となるような裾広がりな形状をしている。したがって、駆動周波数を変化させることにより出力電圧の可変制御が可能である。例えば、駆動周波数を上記共振周波数fより十分に高い周波数から低い周波数(上記共振周波数fより高い周波数)へ変化させることで圧電トランスの出力電圧を増加させていくことが可能となる。
【0009】
このような圧電トランス式高圧電源は、例えば特許文献1に開示されている。
【0010】
上記回路において、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの比較を行い、その結果の電圧値が電圧制御発振器(VCO)110に入力され、周波数変換(V−F変換)され、その周波数を用いて圧電トランスが駆動される。出力電圧設定信号Vcontを所望の目標電圧、或いは出力のOFFに対応したレベルに設定することで、出力電圧を立上げ、或いは立下げを行う。このとき、電圧制御発振器(VCO)110の制御において回路発振を起こさせることなく、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの比較のフィードバック回路動作を正常に動作させるためには、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの各時定数を適切に設定する必要がある。
【0011】
しかし、回路発振しないように時定数を設定すると出力の応答性が悪化(立ち上がり時間/立ち下り時間が長くなる)してしまい、画像形成用高圧として実用上問題無い応答性を得ることが難しくなってしまう、という問題が有った。
【0012】
以下に、従来例での回路制御の一例を示す。
【0013】
図2の回路の出力電圧設定信号Vcontの入力段の積分回路定数として、抵抗114を1MΩ、コンデンサ113を4700pFと設定し、出力電圧を0Vから+3.5KVDCへ立ち上げるため、出力電圧設定信号Vcontとして0Vから約10Vのステップ信号を入力した場合の転写部用出力電圧出力電圧立ち上げ特性を図7に示す。
【0014】
この図7で、横軸は時間、縦軸は電圧を示し、出力電圧設定信号Vcontを下段に、出力信号Voutを上段に示している。
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この場合、出力電圧が0Vから目標電圧の+3.5KVまでの立ち上がり時間は約100msecであり、巻線式電磁トランスを用いた場合の立ち上がり時間(約40msec)に比べ遅くなってしまっており、この立ち上がり時間の遅さが、圧電トランス式高圧電源を画像形成装置に使用する際の問題となることがある。
【0016】
本発明の目的は、上記課題を解決することである。
【0017】
また、本発明の他の目的は、電圧制御発振器(VCO)の制御及び出力電圧の発振を抑え、実用上問題無い立ち上がり時間での安定した高圧出力を簡易な方法で可能とする圧電トランス式高圧電源装置及びそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に従う圧電トランス式高圧電源装置は、
像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成部、静電潜像にトナー像を形成する現像部、及びトナー像を転写材に転写する転写部を備える画像形成装置に用いられる圧電トランス式高圧電源装置において、
圧電トランス、
圧電トランス駆動回路、
出力電圧設定信号を出力する出力電圧設定信号出力回路、
出力電圧検出回路、及び
前記出力電圧検出回路からの信号と、前記出力電圧設定信号とに基づいて、前記圧電トランス駆動回路を制御する制御信号を出力する駆動制御回路を有し、
前記出力電圧設定信号出力回路は、目標電圧より小さい電圧に対応する出力電圧設定信号を出力し、その後、目標電圧に対応する出力電圧設定信号を出力する。
【0019】
好適には、前記圧電トランス式高圧電源装置は、前記潜像形成部、現像部、転写部の少なくとも1つに対し高圧電圧を印加する。
【0020】
また、好適には、前記画像形成装置は、転写材をベルトに静電吸着させて搬送し転写材上にトナーを転写させる方式であり、前記圧電トランス式高圧電源装置は、転写材をベルトに静電吸着させるために転写材を帯電させる帯電吸着部に対し高圧電圧を印加する。
【0021】
好適には、前記出力電圧設定信号出力回路は、目標電圧まで段階的に出力を大きくなるように出力電圧設定信号を出力する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な方法で電圧制御発振器(VCO)の制御及び出力電圧の発振を抑え、実用上問題無い立ち上がり時間での安定した高圧出力を可能となる。
【0023】
本発明によれば、電圧制御発振器(VCO)の制御及び出力電圧の発振に対してのマージンを大きくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を実施するための好適な実施例を添付図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0025】
まず、本発明に係わる実施例1を説明する。
【0026】
図3は本実施例の画像形成装置の一例で有るカラーレーザプリンタの構成図である。レーザプリンタ401は転写材で有る記録紙32を収納するデッキ402を有し、デッキ402内の記録紙32の有無を検知するデッキ紙有無センサ403、デッキ402から記録紙32を繰り出すピックアップローラ404、前記ピックアップローラ404によって繰り出された記録紙32を搬送するデッキ給紙ローラ405、前記デッキ給紙ローラ405と対をなし、記録紙32の重送を防止するためのリタードローラ406が設けられている。そして、デッキ給紙ローラ405の下流には記録紙32を同期搬送するレジストローラ対407、前記レジストローラ対407への記録紙32の搬送状態を検知するレジ前センサ408が配設されている。
【0027】
またレジストローラ対407の下流には静電吸着搬送転写ベルト(以下ETBと記す)409が配設されている。前記ETB上には、転写材である記録紙32をETB上に静電吸着させるために記録紙32を帯電させるための吸着手段として吸着ローラ500が配設されている。前記ETB上には後述する4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックB)分のプロセスカートリッジ410Y、410M、410C、410B(以下、4色に共通する説明においては、「プロセスカートリッジ410」など、「Y」、「M」、「C」、「B」を省略した符号を用いる)とスキャナーユニット420Y、420M、420C、420Bからなる画像形成部によって形成された画像が転写ローラ430Y、430M、430C、430Bによって順次重ね合わされてゆくことによりカラー画像が形成され記録紙32上に転写搬送される。
【0028】
さらに下流には記録紙32上に転写されたトナー像を熱定着するための定着装置として、内部に加熱用のヒータ432を備えた定着部材で有る定着スリーブ433と加圧手段で有る加圧ローラ434との対、定着スリーブからの記録紙32を搬送するための、定着排紙ローラ対435、定着部からの搬送状態を検知する定着排紙センサ436が配設されている。
【0029】
また、前記各スキャナユニット420には、後述するビデオコントローラ440から送出される各画像信号に基づいて変調されたレーザ光を発光するレーザユニット421、各レーザユニット421からのレーザ光を各感光ドラム305上に走査するためのポリゴンミラー422とスキャナモータ423、結像レンズ群424より構成されている。そして、前記各プロセスカートリッジ410には公知の電子写真プロセスに必要な感光ドラム305、帯電ローラ303と現像ローラ302、トナー格納容器411を具備しており、レーザプリンタ401に対して着脱可能に構成されている。さらに、前記ビデオコントローラ440はパーソナルコンピュータ等の外部装置441から送出される画像データを受け取ると前記画像データをビットマップデータに展開し、画像形成用の画像信号を生成する。
【0030】
また、201はレーザプリンタの制御部であるDCコントローラであり、RAM207a、ROM207b、タイマ207c、デジタル入出力ポート207d、D/Aポート207e、A/Dポート207fを具備したMPU(マイクロコンピュータ)207、及び各種入出力制御回路(不図示)等で構成されている。
【0031】
さらに、202は高圧電源部であり、各プロセスカートリッジに対応した帯電高圧電源(不図示)、現像高圧電源(不図示)と、各転写ローラ430に対応した高圧を出力可能な圧電トランスを使用した転写高圧電源とで構成されている。
【0032】
次に本実施例の圧電トランス式高圧電源構成を図4のブロック図に基づいて説明する。なお、本発明に係わる高圧電源構成は、正電圧、負電圧どちらの出力回路に対しても有効であるため、ここでは代表的に正電圧を必要とする転写高圧電源について説明を行う。また、転写高圧電源は各転写ローラ430Y、430M、430C、430Bに対応し、4回路設けられているが、回路構成は各回路とも同じであるため、図4では1回路のみの説明を行う。
【0033】
制御ユニットであるDCコントローラ201に搭載されたMPU(マイクロコンピュータ)207からD/Aポート207eから、出力電圧設定信号Vcontが出力され、高圧電源部202上に設けられたオペアンプ等により構成される積分回路(比較回路)203に入力される。積分回路(比較回路)203の出力は電圧制御発振回路(VCO)110を介して周波数に変換され、その周波数によりスイッチング回路204が駆動される。これにより、圧電トランス(圧電セラミックトランス)101は動作し、素子の周波数特性及び昇圧比に応じた電圧を出力する。トランス出力は整流回路205により例えば図示しているように正電圧に整流平滑され、高圧出力Voutが負荷、例えば転写ローラ430に供給される。一方、整流後の電圧は検出回路206を介して比較回路203に帰還され出力電圧検出信号Vsnsが出力電圧設定信号Vcontと同電位になるように、積分回路(比較回路)203の出力制御される。
【0034】
次に、図2を用いて実際の圧電トランス式高圧電源回路について説明する。オペアンプ109の反転入力端子(−端子)には、直列抵抗114とコンデンサ113を介してDCコントローラ201から高圧電源の出力電圧設定信号Vcontが入力される。
【0035】
他方、出力電圧検出回路206において、出力電圧Voutは、抵抗105、106、107によって分圧され、分圧出力は、コンデンサ115及び保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に出力電圧検出信号Vsnsとして出力される。オペアンプ109の出力端は電圧制御発振器(VCO)110に接続され、この電圧制御発振器110の出力端はトランジスタ111のベースに接続される。トランジスタ111のコレクタはインダクタ112を介して電源(+24V)に接続されていると同時に、圧電トランス101の一次側電極の一方に接続される。圧電トランス101の出力はダイオード102、103及び高圧コンデンサ104によって正電圧に整流平滑され負荷である転写ローラ430に供給される。
【0036】
ここで、圧電トランス101の駆動周波数に対する出力電圧の特性を図5に示す。同図に示すように、共振周波数fにおいて出力電圧が最大となり、周波数による出力電圧の制御が可能であることが判る。なお、規定出力電圧Edc出力時の駆動周波数をfxとする。
【0037】
また、電圧制御発振器(VCO)110は、入力電圧が上がると出力周波数を上昇させ、入力電圧が下がると出力周波数を下げるように動作する。この条件において、仮に、出力電圧Voutが圧電トランス101の規定出力電圧Edcに対応した電圧より少し上昇した場合、抵抗105を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)の入力電圧Vsnsも上がり、オペアンプ109の出力端子の電圧は上がる。つまり、電圧制御発振器110の入力電圧が上がるので、圧電トランス101の駆動周波数も上がる。
【0038】
従って、圧電トランス101は駆動周波数fxより少し高い周波数で駆動され、この駆動周波数が上がることにより圧電トランス101の出力電圧は下がる。その結果、出力電圧Voutを下げる方向に制御を行われることとなる。すなわち、この回路は負帰還制御回路を構成している。
【0039】
一方、出力電圧Voutが規定出力電圧Edcよりも下がると、オペアンプ109の入力電圧Vsnsも下がり、オペアンプ109の出力端子の電圧は下がる。つまり、電圧制御発振器110の出力周波数が下がるので、圧電トランス101は出力電圧を上げる方向に制御が行われることとなる。このように、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)に入力されるDCコントローラ201からの出力電圧設定信号Vcontの電圧(設定電圧:以下、この設定電圧もVcontで表す)で決定される電圧Edcに等しくなるよう、出力電圧が定電圧制御される。
【0040】
次に、DCコントローラ201からオペアンプ109の反転入力端子(−端子)に入力される出力電圧設定信号Vcontと、出力電圧を検出しオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に入力される出力電圧検出信号Vsnsを構成する回路について詳細に説明する。まず、オペアンプ109と抵抗114とコンデンサ113を図2のように構成することにより、積分回路として機能しており、出力電圧の設定信号Vcontに対して、抵抗114とコンデンサ113の部品定数によって決まる時定数Tcontに応じて変化する信号がオペアンプ109に入力される。
【0041】
ここで、抵抗114の抵抗値が大きいほど、時定数Tcontは大きくなる。同様に、コンデンサ113の容量が大きいほど、時定数Tcontは大きくなる。また、抵抗105,106,107とコンデンサ115によるフィルタ回路が構成されており、出力電圧Voutに対して、抵抗105,106,107とコンデンサ115の部品定数によって決まる時定数Tsnsに応じて変化する出力電圧検出信号Vsnsがオペアンプ109に入力される。このとき、
Tcont>Tsns
Tcont=R114×C113
Tsns=Rs×C115
ただし、式中のR105,R106,R107,R114,C113,C115は、それぞれ、抵抗105,106,107,114の抵抗値を、コンデンサ113,115の容量を示す。また、RsはR105,R106,R107の合成抵抗となるように、抵抗114とコンデンサ113の定数、及び抵抗105,106,107とコンデンサ115の定数を決定することにより、発振のない制御が可能となる。すなわち、Tsnsの方の時定数が小さく、立上がりが早いことでフィードバック制御が正常に発振なく動作することが可能となる。
【0042】
本実施例では、Tcontは5msec、Tsnsは1msecに設定している。
【0043】
Tcont,Tsnsの時定数が大きいと、フィードバック制御が遅くなるため、出力バイアスの立ち上がり時間が遅くなってしまう。また、Tcont,Tsnsの時定数が小さいと、フィードバックする駆動周波数の変化が大きくなり、圧電トランス101の共振周波数f0を超えてしまい、フィードバック制御が破綻してしまう。
【0044】
このため、Tcont,Tsnsとしては、約0.5msec〜100msec程度の範囲(より好ましくはTcontは約1から約10msec,Tsnsは約0.5msec〜約5msec程度の範囲)で適時最適な値を設定することが望ましい。
【0045】
このような回路を使用した圧電トランス方式高圧電源での目標電圧を出力するための制御について説明する。
【0046】
従来例のように目標電圧を出力するために出力設定電圧Vcontとして0Vからのステップ電圧を入力した場合、出力電圧Voutも0Vからスタートするため、出力電圧検出信号Vsnsも小さい値であるため、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsとの差は大きいので、その後の周波数変換(V−F変換)された圧電トランスを駆動する周波数としては大きい周波数となる。出力電圧Voutの出力が大きくなるにつれて、出力電圧検出信号Vsnsも大きくなるため、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsとの差は小さくなり、周波数変換(V−F変換)された圧電トランスを駆動する周波数としては、次第に周波数が小さくなっていく。
【0047】
圧電トランスは図5のような共振周波数を中心とした末広がりの出力特性をもっており、駆動周波数としては図5の共振周波数よりも周波数の高い出力電圧特性の裾野部分の周波数部分から共振周波数部分部の出力電圧特性のピーク部へ向けて周波数が低く変化していくことになる。このため出力電圧特性の裾野部分では、駆動周波数の変化に対して出力電圧の変化が小さく、0Vから目標電圧までの出力電圧の立ち上げ時間が図7のように長くなってしまう。
【0048】
これに対して、本発明の本実施例では、図1のように目標電圧を出力するまえに目標電圧よりも低いプレバイアス電圧を印加する時間を設けている。本実施例では一例として転写部の目標電圧+3.5KVに対し、プレバイアス電圧値を+1KV、プレバイアス印加時間を約300msecとしている。
【0049】
本実施例では目標電圧出力前に0Vからプレバイアス電圧まで出力電圧を立ち上げた後に目標電圧まで立ち上げるようにしたため、圧電トランス出力電圧特性の裾野部分からの電圧立ち上げスタートでは出力電圧特性のピークに近い部分からのスタートとなる。このため、駆動周波数変化に対する出力電圧変化が大きい部分を使用でき、出力電圧の立ち上げを早く行うことが出来る。
【0050】
本実施例では、従来例が約100msecの立ち上げ時間であったのに対し、約60msecと立ち上げ時間を短く、画像形成用の高圧電源特性として実用上問題無い立ち上げ時間とすることが出来た。
【0051】
本実施例では、一例として目標電圧+3.5KVに対し、プレバイアス電圧を+1KV、印加時間を約300msecとしたが、本発明はこれに拘るものではなく、プレバイアス電圧値、印加時間ついては他の適切な設定としても同様の効果を得ることは可能である。
【0052】
また、本実施例では転写部の画像形成に係わる高圧電源について説明したが、潜像形成部(図3の帯電ローラ303)、現像部(図3の現像ローラ302)、帯電吸着部(図3の吸着ローラ500)など他の画像形成にかかわる高圧電源についても同様に実施し効果を得ることが可能である。
【0053】
本実施例では画像形成装置の説明を、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に説明したものの、高圧バイアスを用いた画像形成装置であれば他の方式の画像形成装置でも本発明の適用範囲とする。
【0054】
本実施例では、出力電圧を0Vから目標電圧まで立ち上げる場合について説明を行ったが、出力電圧を目標電圧から0Vまで立ち下げる場合についても同様に、目標電圧からいきなり0Vに立ち下げるのではなく、一度目標電圧より低い電圧まで下げた後に0Vに制御することで、立下り時間を同様に短くすることが可能である。
【実施例2】
【0055】
本発明の実施例2について説明を行う。実施例1で説明されている部分と同様の部分については、説明を省略する。
【0056】
本発明の実施例2では、圧電トランス式高圧電源の出力制御において、図6のようにプレバイアス電圧印加後、最終目標電圧を出力するまでに、段階的に出力をアップしていくように制御することを特徴としている。本実施例では、プレバイアス電圧を印加後最終目標電圧まで3段階に電圧制御目標値を代えることで段階的に出力電圧を大きくし最終目標電圧を出力させるようにしている。
【0057】
図2の回路図において、電圧比較部のオペアンプ109に入力される出力電圧設定電圧は抵抗114、コンデンサ113からなる積分回路により、電圧波形はステップ電圧差をVoとすると、V=V0(1−exp(−t/τcont))のように変化する。
【0058】
実施例1のように一度に目標電圧まで制御した場合(図8の点線部)と、本実施例2のように3段階に段階的に出力電圧を大きくした場合(図8の実線部)の電圧比較部のオペアンプ109に入力される積分回路通過後のVcont信号を示したグラフを図8に示す。
【0059】
本実施例のように多段階に分けたほうが1段階当りの積分量は小さくなるため、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの比較のフィードバック回路動作を正常に動作させ、電圧制御発振器(VCO)110の制御において回路発振を起こさないことに対してのマージンを実施例1の場合よりも多く確保できる効果がある。また、逆に、実施例1と同じマージンとした場合には積分回路の時定数を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第一の発明に係わる実施例1での圧電トランス式高圧電源の出力制御の説明図である。
【図2】圧電トランス方式高圧電源の回路図の一例を示す図である。
【図3】同実施例に係る、カラーレーザプリンタの構成図である。
【図4】同実施例に係る、圧電トランス高圧電源のブロック図である。
【図5】圧電トランスの駆動周波数に対する出力電圧の特性を表す図である。
【図6】本発明の第二の発明に係わる実施例2での圧電トランス式高圧電源の出力制御の説明図である。
【図7】従来の圧電トランス式高圧電源の出力制御の説明図である。
【図8】実施例2でのプレバイアス印加後の段階立上げの説明図である。
【符号の説明】
【0061】
101 圧電トランス
105,106,107,108,114 抵抗
113,114 コンデンサ
108 保護用抵抗
109 オペアンプ
110 電圧制御発振器(VCO)
201 DCコントローラ
202 高圧電源(圧電トランス式高圧電源装置)
207 MPU(マイクロプロセッサ)
401 カラーレーザプリンタ(画像形成装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成部、静電潜像にトナー像を形成する現像部、及びトナー像を転写材に転写する転写部を備える画像形成装置に用いられる圧電トランス式高圧電源装置において、
圧電トランス、
圧電トランス駆動回路、
出力電圧設定信号を出力する出力電圧設定信号出力回路、
出力電圧検出回路、及び
前記出力電圧検出回路からの信号と、前記出力電圧設定信号とに基づいて、前記圧電トランス駆動回路を制御する制御信号を出力する駆動制御回路を有し、
前記出力電圧設定信号出力回路は、目標電圧より小さい電圧に対応する出力電圧設定信号を出力し、その後、目標電圧に対応する出力電圧設定信号を出力する。
【請求項2】
前記圧電トランス式高圧電源装置は、前記潜像形成部、現像部、転写部の少なくとも一つに対し高圧電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の圧電トランス式高圧電源装置。
【請求項3】
前記画像形成装置は、転写材を静電吸着させて搬送し、転写材上にトナーを転写させる方式であり、前記圧電トランス式高圧電源装置は、転写材をベルトに静電吸着させるために転写材を帯電させる帯電吸着部に高圧電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の圧電トランス式高圧電源装置。
【請求項4】
前記出力電圧設定信号出力回路は、目標電圧まで段階的に出力を大きくなるように出力電圧設定信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の圧電トランス式高圧電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−53887(P2007−53887A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368135(P2005−368135)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】