説明

画像形成装置

【課題】ジャム発生時にユーザに対して処理手順を確実に認識させるようにしたジャム処理機能性に優れた画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の両面搬送ユニットが連接されている場合でそれらのどれかでシートが滞留したジャムを発生すると、ジャム検出センサがそれを検出する。ジャム処理時、画像形成装置本体に設けた表示部に両面搬送ユニットを開く順序をユニット順ごとに表示してユーザに指示する。例えば、両面搬送ユニット80の上側搬送ガイド80Uが開かれたか否かを光学センサ115が検出している。ユニット開き順序が指示に沿っていないとき、表示部の表示を次ステップの表示に切り替えず、それをユーザに認識せしめる。ユーザの誤操作によるジャム処理で画像形成装置本体が誤作動しないよう、未然に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタおよび複合機などの画像形成装置に関し、特に搬送中のシートが紙詰まり(ジャム)を発生したときの処理機能に優れた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、シートを搬送する搬送路はいくつかのユニットを連結して構成され、各搬送ユニットは例えば上下2つに分割して開閉できるようになっている。したがって、搬送中の搬送ユニットでシートのジャムが発生した場合、搬送ユニットを開いてジャムしたシートを取り除くことができる。ジャムの発生はジャム検出センサによる検出で認識されて異常信号が発生される。ジャムしたシートが取り除かれるとジャム検出センサの検出に基づく異常信号が解除され、使用再開できるようになる。
【0003】
通常、ジャムが生じた場合には、画像形成装置の画像形成動作を停止させるため、画像形成装置内部の複数の箇所でシートが停止している。そのため、停止している全てのシートを取り除かないと使用再開ができない。そこで、効率良くシートを取り除くために、画像形成装置の表示部にジャム処理の手順を表示してユーザに装置内のシートを取り除かせるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−187332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の技術では、ジャム発生時にユーザに対してジャム処理の手順を表示部で表示することによりジャム処理を効率的に行われるようにしている。しかしながら、ユーザが処理の手順を間違えてジャム処理してしまう場合がある。その場合、ジャムしたシートが完全に取り除けなかったり、シートがちぎれたりするなどして装置内に残存して、再度ジャム処理を行わなければならず処理作業時間が延びてダウンタイムが長くなる。また、ユーザの間違った手順による処理によってジャム検出センサなど精細な機器の破損にもつながるおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ジャム発生時にユーザに対して処理手順を確実に認識させるようにしたジャム処理機能性に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、複数の搬送ユニットを連結して構成されるシートの搬送路を備える画像形成装置において、前記搬送ユニットの各々に装着されて、シートが滞留したことを検出するシート検出手段と、前記シート検出手段からの検出信号に基づき、前記複数の搬送ユニットの通路を開く順序を順次切り替えて表示する表示部と、前記搬送ユニットの開閉を検出するために各搬送ユニットに設けられたユニット開閉検出手段と、を備え、前記ユニット開閉検出手段からの検出信号に基づいて前記搬送ユニットの開く順序が表示に従っていないときは、前記表示部の表示を切り替えないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による画像形成装置によれば、搬送路内でシートが滞留してジャムを発生した際、各搬送ユニットの通路を開く順序を表示部に表示する。搬送ユニットの開く順序が表示に沿っていないとき、表示が切り換わらない。結果、ユーザの誤操作を未然に防いで正規の処理手順に沿って確実な処理を指示でき、画像形成装置本体の誤作動を未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明による画像形成装置の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置本体1は給送部としての、シートSを積載するトレイ11を有するデッキ10と、デッキ10に積載されているシートを送り出す給送部としてのエア給紙機構12とを有している。さらに、搬送部20,30を有し、また転写部44、定着部50、排紙部60および反転部70を有している。また、図示のように、例えば3つの両面搬送ユニット(搬送ユニット)80,81,82が連結して設けられている。ジャム発生時ならびにメンテナンス時はそれら定着部50、搬送部30および反転部70を一緒に画像形成装置本体1の本体前面から引き出すことができる。また、搬送部20は外装カバーと一体化しており、ジャム処理時にその外装カバーと一緒に開いて外部に引き出せる。排紙部60と3つの両面搬送ユニット80,81,82は本体枠に固定されている。また、後述するように、それら両面搬送ユニット80,81,82にはそれぞれジャムしたシートSを検出するためのジャム検出センサが装着されている(図4中の符号201,202,203)。
【0011】
図2は、上記3つが連結された両面搬送ユニットのうちの1つ、例えば両面搬送ユニット80を代表的に示している。両面搬送ユニット80は上下の搬送ガイド80U,80Lからなり、シート搬送方向と直交するシート幅方向の奥側に設けた回動ヒンジ110を介して図示のように片開きできるようになっている。ジャムが発生した場合、回動ヒンジ110から上下の搬送ガイド80U,80Lの一方を他方から開けば、そこに滞留しているシートSを容易に取り除ける。また、上側の搬送ガイド80Uにはこの場合従動ローラ(図示略)が、下側の搬送ガイド80Lには駆動ローラRが配置されている。
【0012】
図3(a),(b)は、本実施形態の要部であるユニット開閉検出手段を示す。
【0013】
例えば両面搬送ユニット80において、上側の搬送ガイド80Uの回動中心近傍にセンサフラグ(ユニット開閉検出手段)116が配置され、下側の搬送ガイド80Lの回動中心近傍には光学センサ(ユニット開閉検出手段)115が配置されている。光学センサ115はそれら上下の搬送ガイド80U,80Lが閉じた状態でセンサフラグ116に設けたスリットを通して透光状態にある。
【0014】
ジャムしたシートを取り除く際、図3(a)の状態から上側の搬送ガイド80Uを図3(b)のように回動ヒンジ110によって開くと、センサフラグ116は搬送ガイド80Uと一体に回動し、それまで透光状態であった光学センサ115が遮光に変わる。光学センサ115が遮光状態になったことで、搬送ガイド80U,80Lが開かれたと判断される。そのように、光学センサ115の論理は、閉状態で透光、開状態で遮光となるから、光学センサ115が万が一故障しておれば、搬送ガイド80U,80Lが閉状態でも遮光状態となってしまうので、画像形成装置本体1が稼動することはない。それにより、画像形成装置本体1の誤動作を未然に防止することができる。
【0015】
図3(b)のような開状態で、ユーザは搬送ガイド80U,80L間からジャムしたシートSを手前側に引っ張り出す。そのため、光学センサ115などからなるユニット開閉検出手段が両面搬送ユニット80よりも前側に有る場合は開口量が大きく、検出精度も良好である。しかしその反面、シートSが引っ掛かかりやすく邪魔であり、またユーザが光学センサ115に不用意に触ってしまったり、センサフラグ116を破損に至らしめる場合がある。
【0016】
したがって、本実施形態にあっては、ユニット開閉検出手段を両面搬送ユニット80の奥側の回動ヒンジ110を設けた部位の近傍に配置したことで、開口する前面側に配置した場合とでは前述のような不具合が改善される。すなわち、ジャム処理時にシートを前側に出す際の邪魔にはならない。また、ユーザが不用意に触って誤検出を引き起こすこともなく、センサフラグ116が損傷を受けることもない。以上から、両面搬送ユニット80を取り外さないかぎり、外部からユーザが光学センサ115などの検出部に接触できないようにしている。
【0017】
ここで、ジャム処理手順の一例について図4以下の図を参照して説明する。
【0018】
シートSのサイズや装置仕様などが異なれば、ジャム時に滞留するシートSの枚数や滞留形態も様々である。また、画像形成装置本体1が高速化すると、装置本体内を循環して搬送中のシートSの枚数も増え、図4に示すように、隣り合う複数の両面搬送ユニット80,81,82に跨って複数枚のシートS1,S2が滞留してしまうことがある。
【0019】
そのよう状況を想定して、両面搬送ユニット80,81,82の各々にはジャムで滞留したシートSを検出するジャム検出センサ(シート検出手段)201,202,203が配置されている。図4のようにユニット間に跨ってシートS1,S2が停止すると、ジャム検出センサ201,202,203はそれぞれ滞留したシートS1,S2を検出して信号を出力する。
【0020】
ジャム検出によって、画像形成装置本体1の上部に配置されているモニタ画面などによる表示部M(図1参照)にジャム処理を行う手順が表示される。この表示は、処理する手順ごとに表示が切り換わるものであり、ユーザはその表示を確認して、表示手順に従ってジャム処理を開始する。このような表示は、画像形成装置本体1に設けられている制御手段Cによって行われる。この制御手段Cは、センサフラグ116と光学センサ115からなるユニット開閉検出手段、またジャム検出センサ201,202,203からの各検出信号に基づいて表示及び表示の切り替えを行う。
【0021】
両面搬送ユニット間に複数のシートS1,S2が跨ってジャム発生した場合(図4)、適正な処理手順が順次表示部Mに表示して指示される。その場合、図5に示すように、まず両面搬送ユニット80の上側の搬送ガイド80Uを開くことをユーザに表示して指示し、それに続いて両面搬送ユニット81の上側の搬送ガイド81Uを開くことを表示して指示する。そのようにしてジャムしたシートS1を取り除くよう表示して指示する。その後、図6に示すように、両面搬送ユニット82の搬送ガイド82Uを開くよう表示して指示し、ジャムしたシートS2を取り除くよう指示する。
【0022】
ところで、ユーザが間違えて表示部Mに表示した処理手順のとおりに操作をしない場合がある。ユーザが間違えて搬送ガイドを開いてしまう場合も考えられる。例えば、図7に示すように、ユーザが最初から両面搬送ユニット81の搬送ガイド81Uを開いてしまうことが考えられる。その場合、ジャムした1枚目のシートS1と2枚目のシートS2の双方の一部がユーザには見えることから、その状態でユーザがそれらシートS1,S2を取り出そうと引っ張ってしまう。すると、シートS1,S2の大部分はそれぞれ両面搬送ユニット80のローラR1,R2間と、両面搬送ユニット82のローラR5、R6間に挟まれているため、引っ張られた勢いでシートS1,S2がちぎれて破断してしまう可能性がある。それを修復するために余分な作業を要し、結局はダウンタイムを増加させてしまう。
【0023】
本実施形態にあっては、指示した処理手順とは異なる順番にユーザが両面搬送ユニット80,81,82を開いた場合、制御手段Cがユニット開閉検出手段からの検出信号に基づいて異なる順番で開かれてことを判定する。そして、制御手段Cが表示部Mにおける表示を次ステップの表示に切り替わらないようにする。それによって、ユーザは間違った処理手順ではジャムしたシートS1,S2が完全に取り除かれないということを認識する。なお、指示した処理手順と異なる手順で両面搬送ユニット80,81,82を開けた場合には、表示部Mにおける表示を次ステップの表示に切り替わらないようにするとともに、アラーム音やアラーム表示で警告してもよい。
【0024】
その際、ジャム検出センサ201,202,203のどれか1つが検出信号を出力すると、例えばシートS1が両面搬送ユニット80から引き抜かれると、ジャム処理が終了したと誤判断し、それが画像形成装置本体1の誤動作を引き起こす可能性がある。このような不具合を防止するため、光学センサ115などのユニット開閉検出手段によって搬送ガイド80U,80Lの開閉状態を検出して確認する。すなわち、ジャムしたシートの有無のチェックと、搬送ガイド開閉チェックとを一度の動作で確実に行うようにしている。
【0025】
また、図8(a),(b)は、両面搬送ユニット60と定着部50とが連結した構造において、定着部50が装置本体前方に引き出され、両面搬送ユニット60が画像形成装置本体1の内部に固定して設けられている。この場合、シートS1,S2,S3の3つがジャムによって滞留している例が示されている。ジャム処理に際して定着部50が引き出されると、両面搬送ユニット60に跨って滞留しているシート2が切れてしまう。そのシートS2が厚紙などのように比較的に腰が強くかつ固い材質のものであれば、装置側が損傷してしまう可能性すらある。それへの対処として、第1の実施形態の場合と同じく表示部Mに処理手順が表示される。図8(b)に示すように、まず両面搬送ユニット60の搬送ガイド60Uを開き、滞留しているシートS3,S2を取り出す。次に、定着部50を装置本体前方へ引き出すことでシートS1を取り出す。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、図9(a),(b)は、上記第1の実施形態の応用例ともいうべき第2の実施形態を示す。
【0027】
第1の実施形態を示す図3(a),(b)においては、両面搬送ユニットの奥側に光学センサ115とセンサフラグ116を配置し、搬送ガイド80U,80Lの開閉動作で光学センサ115の透光状態または遮光状態を検出することで、上側の搬送ガイド80Uが開かれたか否かを検出していた。
【0028】
それに対して、この第2の実施形態においては、反射型センサ120を可動側である上側の搬送ガイド80Uに配置し、固定側である下側の搬送ガイド80Lには反射型センサ120との対向位置に貫通孔121を設けている。この構成によって、搬送ガイド80Uが閉じた図9(a)の状態では反射型センサ129が反射せず、図9(b)のように搬送ガイド80Uが開かれると反射型センサ120が反射する。この反射信号の有無によって搬送ガイド80Uが開かれたか否かを検出することで、上記第1の実施形態で述べられた効果と同様の効果が得られる。
【0029】
なお、以上のように本発明について数例の実施形態が説明されたが、本発明はそれら各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、その他の実施形態、応用例および変形例、そしてそれらの組み合わせも可能である。
【0030】
例えば、各実施形態においては、ジャム発生個所が両面搬送ユニット80,81,82について説明されたが、それら「両面ユニット」はあくまで具体例であって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態のユニット開閉検出手段を装備した画像形成装置本体を示す図。
【図2】第1の実施形態において連接された実施形態の両面搬送ユニットの1つを示す斜視図。
【図3】同図(a),(b)は第1の実施形態においてジャム処理前のユニット閉時とジャム処理時のユニット開時をそれぞれ示す断面図。
【図4】複数枚のシートが連接された複数の両面搬送ユニット間に跨ってジャムした態様を示す断面図。
【図5】通常のジャム処理手順例を示す断面図。
【図6】同じく通常のジャム処理手順例を示す断面図。
【図7】指示手順と異なりユーザが独断で処理する態様を示す断面図。
【図8】同図(a),(b)は両面搬送ユニットと定着部とが連接した構造におけるジャム処理前のユニット閉時とジャム処理時のユニット開時をそれぞれ示す断面図。
【図9】同図(a),(b)は第2の実施形態におけるジャム処理前のユニット閉時とジャム処理時のユニット開時をそれぞれ示す断面図。
【符号の説明】
【0032】
80〜82 両面搬送ユニット
80U 上側の搬送ガイド
80L 下側の搬送ガイド
110 回動ヒンジ
115 光学センサ(ユニット開閉検出手段)
116 センサフラグ(ユニット開閉検出手段)
201〜203 ジャム検出センサ(シート検出手段)
C 制御手段
M 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送ユニットを連結して構成されるシートの搬送路を備える画像形成装置において、
前記搬送ユニットの各々に装着されて、シートが滞留したことを検出するシート検出手段と、
前記シート検出手段からの検出信号に基づき、前記複数の搬送ユニットの通路を開く順序を順次切り替えて表示部に表示させる制御手段と、
前記搬送ユニットの開閉を検出するために各搬送ユニットに設けられたユニット開閉検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ユニット開閉検出手段からの検出信号に基づいて前記搬送ユニットの開く順序が表示に従っていないと判断したときは、前記表示部の表示を切り替えないようにすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送ユニットが、シート搬送方向に直交するシート幅方向の手前側一端部を開放可能に奥側他端部が回動可能に支持された2つの搬送ガイドから構成され、それら2つの搬送ガイドが開かれて通路が開放されたことを検出する前記ユニット開閉検出手段を前記奥側他端部の近傍に設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
ユニット開閉検出手段が、前記2つの搬送ガイドの一方が他方に対して前記手前側一端部から開かれたことを透光または遮光によって検出する光学センサであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−62990(P2007−62990A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254273(P2005−254273)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】