説明

画像形成装置

【課題】ケーシング部材の内面に付着した放電生成物が昇華して像保持体周囲に滞留する前に除去することができる技術を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、像保持体1に対向配置されたコロナ放電電極を囲む放電シールド12(ケーシング部材)と、放電シールド12の内面を清掃する清掃部材8と、清掃部材8を放電シールド12の長手方向に移動させる移動手段9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、像保持体に対してコロナ放電により帯電または除電を行う放電装置において、コロナ放電により生成されたオゾン(O)や窒素酸化物(NOx)等の放電生成物が、放電電極やケーシング部材の内側に蓄積することが知られている。この蓄積した放電生成物は、数時間から数十時間を掛けて昇華し、酸化性ガスとなって像保持体を徐々に劣化させる。昇華したオゾンは、高濃度で画像形成装置内に滞留すると、像保持体表面を酸化して光感度低下や帯電能力を減少させる。一方、NOxは、空気中の水分と反応して硝酸となり、像保持体表面に薄い膜を形成して静電潜像を破壊する。このような現象は特に高温高湿環境下で顕著であり、結果として画像白抜けなどの問題が発生する。
【0003】
一方、近年は像保持体を長寿命化するため、像保持体表面に摩耗の少ない硬質材料で形成された保護層(オーバーコート層)が設けられることが多くなってきている。その反面、酸化性ガスにより劣化を受けた像保持体表面が、ブレードによって除去されずに残ってしまうという課題を有している。また、オーバーコート層は酸化性ガスに弱い特性を有していることが多く、酸化性ガスを除去する技術が必要とされている。このような課題を解決する技術としては、例えば、特許文献1および2に記載の発明が公知である。特許文献1に記載の発明は、放電装置のグリッド部材およびケーシング部材にオゾン分解用発熱体を装着するというものであり、特許文献2に記載の発明は、被放電体に対向する側に設けられた開口部と、開口部を介して被放電体に放電する放電ワイヤと、放電ワイヤを囲むケーシング部材と、ケーシング部材内を加熱する加熱手段とからなるものである。
【特許文献1】特開平5−281829号公報
【特許文献2】特開2001−312122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に画像形成装置内に滞留するOやNOxは、換気用ファンによって画像形成装置外に排出されるが、ケーシング部材の内部の排気にはむらがあり、画像形成装置外に排出されるまでに時間が掛かってしまうという懸念がある。また、特に画像形成装置が長期に停止しているときは、放電装置に直面する像保持体表面が昇華した放電生成物によって劣化され易いという問題がある。このような背景を鑑み、本発明は、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物が昇華して像保持体周囲に滞留する前に除去することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、像保持体に対向配置されたコロナ放電電極を囲むケーシング部材と、前記ケーシング部材の内面を清掃する清掃部材と、前記清掃部材を前記ケーシング部材の長手方向に移動させる移動手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ケーシング部材の外面において長手方向に延在する、または、長手方向の端部に配置された加熱手段を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ケーシング部材の前記像保持体と直面しない部位において前記ケーシング部材の長手方向に延在する通気口を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、画像形成が行われないときまたは省エネモードのときに、前記清掃部材を前記ケーシング部材の長手方向に往復滑走させる駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記駆動制御手段は、前記像保持体に対してコロナ放電した累積時間を記憶手段に記憶し、前記累積時間から清掃部材の滑走時間を換算することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、画像形成が行われないときまたは省エネモードのときに、前記加熱手段を加熱させる加熱制御手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明において、換気用ファンと、前記換気用ファンを前記清掃部材の滑走と同時に駆動させる換気制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明において、前記清掃部材は多孔質な不織布または発泡体であることを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発明において、前記清掃部材はアルミナまたは炭化ケイ素を主成分とする研磨材を含有することを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発明において、前記清掃部材は炭素質物、シリカ、アルミナ、または酸化第2鉄を主成分とする分解剤および酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化第1鉄、または二酸化マンガンを主成分とする触媒を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ケーシング部材の内面を清掃する清掃部材が、移動手段によってケーシング部材の長手方向に移動する。このため、ケーシング部材の長手方向に移動する清掃部材とケーシング部材の内面との間に働く摩擦力によって、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物が掻き落とされる。よって、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物は、昇華して像保持体周囲に滞留する前に除去される。
【0016】
請求項2に記載の発明において、加熱手段がケーシング部材の外面において長手方向に延在する場合には、加熱手段から発生した熱は、ケーシング部材の長手方向全体に伝導される。ケーシング部材全体に伝導された熱は、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物の昇華を促進する。昇華した放電生成物は、ケーシング部材の長手方向に移動する清掃部材によって吸着されるため、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物は、昇華して像保持体周囲に滞留する前に除去される。一方、加熱手段がケーシング部材の外面において長手方向の端部に配置された場合には、加熱手段から発生した熱は、ケーシング部材の長手方向の端部に伝導される。この端部に伝導された熱は、この端部の内面において停止している清掃部材に伝導される。加熱された清掃部材が、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物の昇華を促進しながら滑走するため、本件発明を適用する場合と比べて低消費電力で除去される。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、清掃部材によって除去されずに昇華した放電生成物は、加熱手段がケーシング部材を加熱することによって発生する上昇気流によって、ケーシング部材の像保持体と直面しない通気口の外部と内部で気圧差が生じ、この通気口から排出され易くなる。よって、ケーシング部材内面に付着した放電生成物は像保持体側に滞留する前にこの通気口から排出される。
【0018】
請求項4に記載の発明において、画像形成が行われないときまたは省エネモードのときは、像保持体が停止しているため、ケーシング部材に直面する像保持体表面が昇華した放電生成物によって暴露され易い。しかしながら、本件発明によれば、このような場合のみ清掃部材が動作するため、本件発明を適用する場合と比べて低消費電力でケーシング部材の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0019】
請求項5に記載の発明において、清掃部材は必要最低限の滑走時間で放電生成物を除去するため、低消費電力かつ低騒音でケーシング部材の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0020】
請求項6に記載の発明において、画像形成が行われないときまたは省エネモードのときは、像保持体が停止しているため、ケーシング部材に直面する像保持体表面が昇華した放電生成物によって暴露されやすい。しかしながら、本件発明によれば、このような場合のみ加熱手段がケーシング部材を加熱するため、本件発明を適用する場合と比べて低消費電力でケーシング部材の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、清掃部材が掻き落とせずに昇華した放電生成物は、換気用ファンによって画像形成装置の外部に排出される。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、清掃部材が掻き落とせずに昇華した放電生成物は、多孔質な不織布または発泡体で形成された清掃部材に吸着し易くなる。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、清掃部材が含有する研磨材は、ケーシング部材の長手方向に移動する清掃部材とケーシング部材の内面との間に働く摩擦力を増加させるため、ケーシング部材の内面に付着した放電生成物が除去され易くなる。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、清掃部材が除去または吸着した放電生成物(オゾン(O)や窒素酸化物(NOx))は、清掃部材が含有する分解剤および触媒によって無害な窒素(N)や二酸化炭素(CO)等に還元される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
1.第1の実施形態
第1の実施形態では、像保持体に対向配置されたコロナ放電電極を囲むケーシング部材と、ケーシング部材の内面を清掃する清掃部材と、清掃部材をケーシング部材の長手方向に移動させる移動手段とを備える画像形成装置の一例について説明する。
【0026】
(第1の実施形態の構成)
図1は画像形成部の一例を示す断面図であり、図2は帯電装置の一例を示す断面図(A)、帯電装置の一例を示す側面図(B)である。画像形成装置の画像形成部は、図1に示すように、像保持体1、像保持体1を帯電する帯電装置2、帯電した像保持体1に像光を露光する露光装置3、露光装置3により像保持体1に形成された静電潜像を現像剤により現像する現像装置4、像保持体1に現像されたトナー像を転写材Pに転写する転写装置5、像保持体1の帯電電荷を除電する除電装置6、および像保持体1に残存するトナーをクリーニングブレードで清掃する清掃装置7から構成される。像保持体1、帯電装置2および除電装置6以外の装置は、公知の装置である。
【0027】
像保持体1は、最下層から順に導電層、電荷発生層、電荷輸送層、および保護層(オーバーコート層)を備えた感光体ドラムである。導電層は、アルミニウムなどの金属材料で円筒状に形成される。導電層に積層される電荷発生層は、バインダ樹脂にアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の電荷生成材料を分散して形成される。電荷発生層に積層される電荷輸送層は、ポリカーボネート樹脂に芳香族アミン系の電荷輸送材料を分散して形成される。電荷輸送層に積層される最表面のオーバーコート層は、熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等の透明性を有する硬質材料で形成される。オーバーコート層は、鉛筆硬度試験(JIS K5400)において硬度がH以上、より好ましくは6H以上である。なお、像保持体1の形状は、ドラム形状でなくベルト形状でもよい。
【0028】
帯電装置2は、放電電極10、ケーシング部材の一例である放電シールド12を備えたコロトロン放電装置である。放電電極10は、タングステン、ステンレス等の金属材料の細線で形成された放電ワイヤであり、像保持体1と所定の間隙を介して長手方向に橋架される。放電シールド12は、アルミニウムなどの金属材料で断面コ字形状に形成されて放電電極10の周囲を囲む。放電電極10および放電シールド12は、公知の高圧電源回路に接続される。なお、帯電装置2は、グリッド電極を有するスコロトロン放電装置でもよく、放電電極10は、ワイヤ電極でなく針電極でもよい。また、除電装置6は、本発明に係る帯電装置2と同様の構成のコロナ放電装置である。
【0029】
また、本発明に係る帯電装置2は、図2に示すように、清掃部材8、移動手段9を備えている。清掃部材8は、放電シールド12の内面形状に合わせて形成された多孔質な不織布または発泡体である。清掃部材8が不織布で形成される場合には、耐熱性を有するスチールウール、アラミド繊維、グラスウール、ロックウール等で形成される。一方、清掃部材8が発泡体で形成される場合には、例えば、高密度ポリエチレン、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、より好ましくはポリカーボネート、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、さらに好ましくは硬質のポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂を発泡させて形成される。この態様によれば、不織布または発泡体は多孔性を有するため、清掃部材8は昇華した放電生成物を吸着し易くなる。
【0030】
また、清掃部材8は、アルミナまたは炭化ケイ素を主成分とする研磨材を含有することが好ましい。アルミナは、高融点、高強度、高硬度、および電気絶縁抵抗が大きい特性を有しており、鉄鋼などの鉄系材質の研磨に好適である。一方、炭化ケイ素は、高耐熱、高硬度という特性を有しており、特にアルミニウムや銅などの非鉄金属系の研磨に好適である。よって、放電シールド12が鉄系材質の場合はアルミナが好ましく、放電シールド12が非鉄金属の場合は炭化ケイ素が好ましい。この態様によれば、清掃部材8が含有する研磨材は、放電シールド12の長手方向に移動する清掃部材8と放電シールド12の内面との間に働く摩擦力を増加させるため、放電シールド12の内面に付着した放電生成物が除去され易くなる。
【0031】
また、清掃部材8は炭素質物、シリカ、アルミナ、または酸化第2鉄を主成分とする分解剤および酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化第1鉄、または二酸化マンガンを主成分とする触媒を含有することが好ましい。炭素質物としては、活性炭、グラファイト、フラーレン煤、カーボンブラックなどが好適である。この態様によれば、清掃部材が除去または吸着した放電生成物(オゾン(O)や窒素酸化物(NOx))は、清掃部材が含有する分解剤および触媒によって無害な窒素(N)や二酸化炭素(CO)等に還元される。また、これらの分解剤は、稼働している画像形成装置内の平均的な温度(約40℃〜60℃)において、数秒で放電生成物を分解可能である。
【0032】
さらに、清掃部材8は、放電シールド12の内面形状よりも数ミリ程度大きく形成されると好適である。放電シールド12の内面形状よりも大きく形成された清掃部材8は、放電シールド12内部に圧入され、清掃部材8が放電シールド12の内面に圧接する態様となる。また、清掃部材8は放電シールド12の内面に対向する面が凹凸形状を有することが好ましい。この態様によれば、清掃部材8と放電シールド12の摩擦力が大きくなるため、放電シールド12の内面に付着した放電生成物を掻き落とし易くなる。なお、清掃部材8の図2(A)における断面形状は、放電ワイヤ10を貫通する貫通溝を設けた直方体形状でもよい。この態様によれば、清掃部材8は、放電ワイヤ10と放電シールド12の両方を同時に清掃することができる。また、清掃部材8は、自身を放電シールド12の長手方向に移動させる移動手段9を上部に連結する。
【0033】
移動手段9は、図2(B)に示すように、電動モータ9a、ねじ軸9b、およびナット9cで構成される。電動モータ9aは、パルス幅変調(PWM)によって回転速度、回転数、正転/逆転が制御可能な公知のステッピングモータである。ねじ軸9bは、電動モータ9aの出力軸のギアと係合する公知のボールねじであり、放電シールド12の長手方向に橋架される。ナット9cは、ねじ軸9bに螺合してねじ軸9bの軸方向へ直線移動自在である。また、ナット9cは、清掃部材8にボルト等で連結する。移動手段9は、電動モータ9aを正転/逆転させることによってねじ軸9bを回転させ、ナット9cに連結する清掃部材8を放電シールド12の長手方向に所定の時間往復滑走させる。また、所定の時間に画像形成が再開された場合、省エネモードが解除された場合、または所定の時間が経過した場合は、放電シールド12の長手方向の端部の停止位置に清掃部材8を移動させて終了する。なお、帯電装置2が像保持体1に対してコロナ放電した累積時間を記憶手段に記憶し、累積時間から放電生成物の除去に必要な清掃部材8の滑走時間を換算して、移動手段9の回転速度や回転数を算出する駆動制御手段を備える態様でもよい。この態様によれば、低消費電力かつ低騒音で放電シールド12の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0034】
(第1の実施形態の動作)
画像形成装置が画像形成を行うとき、帯電装置2は、像保持体1に対してコロナ放電により帯電させる。この際、帯電装置2の放電電極10には高圧電源回路により高電圧が印可される。そして、放電電極10の表面から電子が飛び出すと、空気中の酸素分子や窒素分子に衝突して分子内の電子を電離させ、電子と正イオンが生成される。すると電子の数は2倍になり、さらに電子が酸素分子等に衝突して電子と正イオンの数が加速度的に増え、なだれ現象がおきる。衝突によって多くの電子が励起され、電子が高いエネルギー準位に上がった後、電子が低いエネルギー準位に落ちると、エネルギー差に相当する波長の放射光が放出され、斑点状やブラシ状のコロナが発生する。この際、酸素イオンや窒素イオンは、他の分子と結合してオゾン(O)や窒素酸化物(NOx)等の放電生成物となり、放電電極10、グリッド電極11、および放電シールド12に付着して蓄積する。一方、移動手段9は、清掃部材8を放電シールド12の長手方向の左右に所定の時間(約20〜30分)往復滑走させる。清掃部材8は放電シールド12の内面に圧接するため、清掃部材8と放電シールド12の内面との間に働く摩擦力によって、放電シールド12の内面に付着した放電生成物を掻き落とす。所定の時間(約20〜30分)経過後、移動手段9は、放電シールド12の端部に清掃部材8を移動して停止させる。
【0035】
(第1の実施形態の優位性)
第1の実施形態によれば、放電シールド12の内面を清掃する清掃部材8が、移動手段9によって放電シールド12の長手方向に移動するため、放電シールド12の長手方向に移動する清掃部材8と放電シールド12の内面との間に働く摩擦力によって、放電シールド12の内面に付着した放電生成物が掻き落とされる。よって、放電シールド12の内面に付着した放電生成物は、昇華して像保持体1周囲に滞留する前に除去される。
【0036】
2.第2の実施形態
第2の実施形態では、第1の実施形態において、特にケーシング部材の外面において長手方向に延在する、または、長手方向の端部に配置された加熱手段を備える画像形成装置の一例について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、その内容を援用する。
【0037】
(第2の実施形態の構成および優位性)
図3は加熱手段の一例を示す上面図(A)および上面図(B)である。帯電装置2のケーシング部材の一例である放電シールド12は、図3に示すように、放電シールド12の外面において長手方向に延在する、または、長手方向の端部に配置された加熱手段14を備える。加熱手段14は、画像形成装置の主電源から電力が供給され、電気抵抗によりジュール熱を発生する抵抗加熱部材である。抵抗加熱部材の材料は、例えば、鉄−クロム−アルミ系合金、ニッケル−クロム系合金、白金、モリブデン、タンタル、またはタングステン等の高融点金属材料、炭化ケイ素、カーボン等の非金属材料である。鉄−クロム−アルミ系合金の場合は、電気抵抗が大きく、温度係数が小さく安定する。ニッケル−クロム系合金の場合は、電気抵抗が大きく、温度係数が小さく安定し、高温でも強度が高い。また、高融点金属材料の場合は、上記合金系よりも高温域で使用する際に好適となる。なお、帯電装置2が放電シールド12の外面において加熱手段14を備える場合には、放電シールド12は、熱伝導が良好なアルミニウム、鉄、銅などの金属材料で形成されると好適である。
【0038】
加熱手段14が、図3(A)に示すように、放電シールド12の外面において長手方向に延在する場合には、加熱手段14から発生した熱は、放電シールド12の長手方向全体に伝導される。放電シールド12全体に伝導された熱は、放電シールド12の内面に付着した放電生成物の昇華を促進する。昇華した放電生成物は、放電シールド12の長手方向に移動する不織布や発泡体などで形成された清掃部材8によって吸着されるため、放電シールド12の内面に付着した放電生成物は、昇華して像保持体1周囲に滞留する前に除去される。一方、加熱手段14が、図3(B)に示すように、放電シールド12の外面において長手方向に延在する場合には、加熱手段14から発生した熱は、放電シールド12の長手方向の端部に伝導される。この端部に伝導された熱は、この端部の内面において停止している清掃部材8に伝導される。加熱された清掃部材8が、放電シールド12の内面に付着した放電生成物の昇華を促進しながら滑走するため、放電生成物は低消費電力で除去される。
【0039】
3.第3の実施形態
第3の実施形態では、第2の実施形態において、特にケーシング部材の像保持体と直面しない部位においてケーシング部材の長手方向に延在する通気口を備える画像形成装置の一例について説明する。なお、第2の実施形態と同様の構成については、その内容を援用する。
【0040】
(第3の実施形態の構成)
帯電装置2のケーシング部材の一例である放電シールド12は、図3に示すように、像保持体1と直面しない部位において、清掃部材8を放電シールド12の長手方向に延在する通気口13を備える。通気口13が放電シールド12に設けられる位置は、帯電装置2が像保持体1に対して配置される位置(上部、上側部、側部など)に応じて適宜最適な位置が決定される。帯電装置2が像保持体1の上部に配置される場合には、通気口13の位置は、図1に示すように、放電シールド12の像保持体1と直面しない部位である側面S1に設けると好適である。この場合、図3に示す加熱手段14の放射熱により、放電シールド12の背部において上昇気流が発生し、放電シールド12の外部の気圧が内部より低下することによって、通気口13から放電シールド12外部へ流出する気流が生成される。この態様によれば、放電シールド12外部へ流出する気流が進む方向(鉛直方向)に通気口13が設けられるため、清掃部材8によって除去しきれずに昇華した放電生成物は、像保持体1周囲に滞留することなく、通気口13から排出される。
【0041】
一方、帯電装置2が像保持体1の上側部に配置される場合には、通気口13の位置は、図1に示すように、放電シールド12の像保持体1と直面しない部位である側面S1、より好ましくは角C1または角C2である。通気口13が角C1または角C2に設けられる態様によれば、通気口13から放電シールド12外部へ流出する気流が進む方向(鉛直上方)に通気口13が設けられるため、清掃部材8によって除去しきれずに昇華した放電生成物は、像保持体1周囲に滞留することなく、通気口13から排出される。
【0042】
また、帯電装置2が像保持体1の側部または下側部に配置される場合には、通気口13の位置は、図1に示すように、放電シールド12の像保持体1と直面しない部位である側面S1、より好ましくは角C1または角C2、さらに好ましくは側面S2または側面S3である。通気口13が角C1または角C2、さらに側面S2または側面S3に設けられる態様になるに従って、通気口13から放電シールド12外部へ流出する気流が進む方向(鉛直上方)に通気口13が設けられるようになるため、清掃部材8によって除去しきれずに昇華した放電生成物は、像保持体1周囲に滞留することなく、通気口13から排出される。なお、帯電装置2が像保持体1の下部に配置される場合は本発明の適用外である。
【0043】
また、通気口13は、清掃部材8を放電シールド12の長手方向に移動させるためにも利用される。すなわち、通気口13は、図2に示すように、ねじ軸9bと清掃部材8とを連結するナット9cの通行路として機能する。このため、通気口13の長手方向における幅は、放電シールド12の清掃領域や像保持体1の帯電領域に対応する幅が好適である。また、第2の実施形態に係る加熱手段14は、図3に示すように、通気口13の周囲に設けると好適である。この態様によれば、通気口13が設けられる放電シールド12の外部において上昇気流が発生するため、放電シールド12の外部と内部との間で気圧差が生じて、通気口13から放電シールド12外部へ流出する気流が生成され易くなる。なお、通気口13は、放電シールド12の長手方向に平行な通気口を複数本設ける態様でもよい。
【0044】
(第3の実施形態の優位性)
第3の実施形態によれば、清掃部材8によって除去されずに昇華した放電生成物は、加熱手段14が放電シールド12を加熱することによって発生する上昇気流によって、放電シールド12の像保持体と直面しない通気口13の外部と内部で気圧差が生じ、この通気口13から排出され易くなる。よって、放電シールド12内面に付着した放電生成物は像保持体側に滞留する前にこの通気口13から排出される。
【0045】
4.第4の実施形態
第4の実施形態では、第1〜第3の実施形態において、特に画像形成が行われないときまたは省エネモードのときに、清掃部材をケーシング部材の長手方向に往復滑走させる駆動制御手段を備える一例について説明する。なお、第1〜第3の実施形態と同様の構成については、その内容を援用する。
【0046】
(第4の実施形態の構成および動作)
図4は駆動制御部の一例を示すブロック図である。画像形成装置は、図4に示すように、主電源19、主制御部18、放電用電源17、および駆動制御部21(駆動制御手段)を備えている。画像形成装置は、一般家庭やオフィス等に供給される交流電圧100Vの商用電源20に接続される。主電源19は、商用電源20を接続するトランス、トランスによって昇圧された交流電圧を平滑して直流電圧にする平滑回路を備えた公知の電源回路である。主電源19は、商用電源20の交流電圧を所定の直流電圧(5V、12V、24V等)に変圧し、主制御部18、放電用電源17、および駆動制御部21に電力を供給する。
【0047】
主制御部18は、中央演算処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、クロック発振器、入出力端子等を備えた公知のマイクロコンピュータ(マイコン)である。主制御部18は、放電用電源17、駆動制御部21に接続する。主制御部18のCPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出し、プログラムを順次実行して放電用電源17、駆動制御部21の動作を制御する。具体的には、主制御部18は、画像形成を行うときに、放電用電源17に印加電圧を指示して帯電装置2にコロナ放電させる。一方、主制御部18は、画像形成を行わないときに、駆動制御部21に移動手段9の電動モータ9aの回転速度を指示して、清掃部材8を放電シールド12の長手方向に往復滑走させる。
【0048】
ここで、「画像形成が行われないとき」とは、図1に示す像保持体1が駆動していないときを意味する。具体的には、画像形成が行われなくなってから所定の時間経過後や、省エネモードに入った直後などを指す。画像形成が行われないときは、像保持体1が停止しているため、帯電装置2に直面する像保持体1表面が昇華した放電生成物によって暴露されやすいが、この態様によれば、画像形成が行われないときに、清掃部材8が放電シールド12の長手方向に往復滑走するため、余分な電力が消費されずに像保持体1の劣化が抑制される。
【0049】
放電用電源17は、交流電圧、直流電圧を重畳可能な公知の高圧電源回路である。放電用電源17は、直流電圧発生部と交流電圧発生部から構成される。直流電圧発生部は、主制御部18によって通電のON/OFFがスイッチングされるトランジスタ、トランジスタの通電によって供給される交流電圧を昇圧するトランス、トランスによって昇圧された交流電圧を平滑して直流電圧にする平滑回路、および平滑された直流電圧を所望の電圧値に調節する可変抵抗器から構成される。一方、交流電圧発生部は、主制御部18によって通電のON/OFFがスイッチングされるトランジスタ、トランジスタの通電によって供給されるパルス信号から正弦波を発振させる正弦波発振回路、正弦波を増幅する増幅回路、および増幅した電圧を昇圧するトランスから構成される。直流電圧発生部と交流電圧発生部が生成した直流電圧と交流電圧は、重畳されて帯電装置2の放電電極10、放電シールド12に印加される。
【0050】
駆動制御部21は、電動モータ9aのコイルへの通電を制御する公知のマイコン、トランジスタなどで構成される。また、駆動制御部21は主制御部18を接続し、画像形成が行われなくなってから数十分後または省エネモードに入った直後などに主制御部18から駆動信号を入力する。その後、駆動制御部21は、電動モータ9aを所定の時間正転/逆転させて、清掃部材8を放電シールド12の長手方向に往復滑走させる。例えば、駆動制御部21は、画像形成が行われなくなってから5分後または省エネモードに入った直後から20分の間、清掃部材8を放電シールド12の長手方向に往復滑走させる。また、20分の間に画像形成が再開された場合、省エネモードが解除された場合、または20分が経過した場合は、駆動制御部21は、放電シールド12の長手方向の端部に清掃部材8を移動させて終了する。なお、駆動制御部21は、帯電装置2が像保持体1に対してコロナ放電した累積時間をマイコン内のRAM(記憶手段)に記憶し、この累積時間から放電生成物の除去に必要な清掃部材8の滑走時間を換算して、移動手段9の回転速度や回転数を算出する態様が好ましい。この態様によれば、清掃部材8は必要最低限の滑走時間で放電生成物を除去するため、低消費電力かつ低騒音で放電シールド12の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0051】
(第4の実施形態の優位性)
第4の実施形態において、画像形成が行われないときまたは省エネモードのときは、像保持体1が停止しているため、放電シールド12に直面する像保持体1表面が昇華した放電生成物によって暴露され易い。しかしながら、この態様によれば、このような場合のみ清掃部材8が動作するため、低消費電力かつ低騒音で放電シールド12の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0052】
5.第5の実施形態
第5の実施形態では、第1〜第4の実施形態において、特に画像形成が行われないときまたは省エネモードのときに、加熱手段を加熱させる加熱制御手段を備える一例について説明する。なお、第1〜第4の実施形態と同様の構成については、その内容を援用する。
【0053】
(第5の実施形態の構成および動作)
画像形成装置は、図4に示すように、加熱制御部15(加熱制御手段)を備える。加熱制御部15は、加熱手段14の目標温度をPID(比例・積分・微分)制御する公知のマイコンである。加熱制御部15は、主制御部18、画像形成装置内の雰囲気温度を検出するサーミスタ、および半導体リレーを接続する。加熱制御部15は、画像形成が行われているときに、主制御部18から目標温度の信号を入力する。そして、加熱制御部15は、サーミスタが検知した画像形成装置内の測定温度の電圧値をアナログデジタル(A−D)変換して入力し、測定温度と目標温度とから加熱手段14の温度をPID制御する。また、加熱制御部15は、所定の時間だけ加熱手段14を目標温度に維持した後に加熱を終了する。例えば、加熱制御部15は、画像形成が行われなくなった5分後、または省エネモードに入った直後などに、サーミスタから画像形成装置内の雰囲気温度40℃を入力して目標温度60℃(40℃+20℃)になるまで加熱手段14を加熱する。そして、加熱制御部15は、20分経過後に加熱手段14の加熱を終了する。
【0054】
(第5の実施形態の優位性)
以下、第5の実施形態の優位性について述べる。この態様によれば、画像形成が行われないときまたは省エネモードのときは、像保持体1が停止しているため、放電シールド12に直面する像保持体1表面が昇華した放電生成物によって暴露されやすいが、この態様によれば、このような場合のみ加熱手段14が放電シールド12を加熱するため、低消費電力で放電シールド12の内面に付着した放電生成物が除去される。
【0055】
6.第6の実施形態
第6の実施形態では、第1〜第5の実施形態において、特に換気用ファンと、換気用ファンを清掃部材の滑走と同時に駆動させる換気制御手段を備える画像形成装置の一例について説明する。なお、第1〜第5の実施形態と同様の構成については、その内容を援用する。
【0056】
(第6の実施形態の構成および優位性)
画像形成装置は、図4に示すように、換気装置16(換気制御手段)を備える。換気装置16は、駆動回路、電動モータ、および換気用ファンで構成される。駆動回路は、電動モータのコイルの通電を制御する公知のマイコン等で構成される。電動モータは、駆動回路に接続する公知のDCブラシレスモータである。換気用ファンは、電動モータによって回転する公知の換気用ファンであり、画像形成装置の内部と外部の空気を換気する。換気装置16は、主制御部18に接続しており、主制御部18から信号を入力して換気用ファンを駆動させる。主制御部18は、清掃部材8を駆動させる駆動制御部21と換気装置16に同時に開始信号を出力し、換気装置16は、換気用ファンを駆動制御部21による清掃部材8の滑走と同時に駆動させる。また、主制御部18は、駆動制御部21と換気装置16に終了信号を出力して同時に駆動を停止する。この態様によれば、清掃部材8によって除去されずに浮遊する放電生成物は、換気用ファンによって画像形成装置の外部に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはこれらの複合機といった画像形成装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態に係る画像形成部の一例を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る帯電装置の一例を示す断面図(A)、帯電装置の一例を示すの側面図(B)である。
【図3】第2の実施形態に係る加熱手段の一例を示す上面図(A)および上面図(B)である。
【図4】第4の実施形態に係る駆動制御部の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
1…像保持体、2…帯電装置、8…清掃部材、9…移動手段、12…放電シールド(ケーシング部材)、13…通気口、14…加熱手段、15…加熱制御部(加熱制御手段)、16…換気装置(換気制御手段)、21…駆動制御部(駆動制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体に対向配置されたコロナ放電電極を囲むケーシング部材と、
前記ケーシング部材の内面を清掃する清掃部材と、
前記清掃部材を前記ケーシング部材の長手方向に移動させる移動手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ケーシング部材の外面において長手方向に延在する、または、長手方向の端部に配置された加熱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ケーシング部材の前記像保持体と直面しない部位においてケーシング部材の長手方向に延在する通気口を備えることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成が行われないときまたは省エネモードのときに、前記清掃部材を前記ケーシング部材の長手方向に往復滑走させる駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記像保持体に対してコロナ放電した累積時間を記憶手段に記憶し、前記累積時間から清掃部材の滑走時間を換算することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成が行われないときまたは省エネモードのときに、前記加熱手段を加熱させる加熱制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
換気用ファンと、前記換気用ファンを前記清掃部材の滑走と同時に駆動させる換気制御手段とを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記清掃部材は多孔質な不織布または発泡体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記清掃部材はアルミナまたは炭化ケイ素を主成分とする研磨材を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記清掃部材は炭素質物、シリカ、アルミナ、または酸化第2鉄を主成分とする分解剤および酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化第1鉄、または二酸化マンガンを主成分とする触媒を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−109696(P2009−109696A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281307(P2007−281307)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】