説明

画像形成装置

【課題】ノイズ等を原因とする過電流の誤検出を確実に検出し、更には、清掃対象の汚れの状態等によりモータMの負荷にバラツキが生じても確実に清掃を行う。
【解決手段】画像形成装置は、回転軸71と、回転軸71に取り付けられるとともに清掃部材73を備え回転軸71の回転により移動する移動体72と、回転軸71を回転させるモータMと、モータMの回転を制御する制御部8と、モータMに流れる電流を検出する電流検出部77と、時間を計時する計時部83と、を有し、電流検出部77がモータMに過電流が流れたことを検出した際、モータMの駆動開始から過電流を検出するまでのモータ駆動時間が、設定時間から所定時間を引いた時間よりも短い場合、制御部8は、モータMの回転を停止し、一定時間モータMを逆回転させ、その後、再度、モータMの回転を正回転させる誤検出確認動作を1回又は複数回繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより回転軸を回転させることで、移動体を移動させ、部材のクリーニングを行うプリンタ、複写機、複合機、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、モータ等を利用して、トナーやトナーとともに含まれる外添剤(例えば、シリカ)等による粉塵等から生ずる汚れを自動的に取り除く機構が備えられることがある。例えば、感光体ドラムの帯電をワイヤのコロナ放電により行う画像形成装置の場合、ワイヤに印加される電圧により、静電力が働き、シリカ等の粉塵がワイヤに固着する場合がある。このワイヤへの固着物を、モータ等により自動的に取り除くのである。
【0003】
このような、ワイヤの清掃をモータ等により行う画像形成装置が特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、記録紙に画像記録を行う画像形成装置のコロナ放電装置において、上記コロナ放電装置のチャージワイヤを清掃する清掃手段と、この清掃手段を移動させるモータと、このモータに流れる過電流を検出する過電流検出手段と、上記配清掃手段の移動開殆と同時に計時を開始する計時手段と、上記過電流検出手段の過電流検出時と計時時間から上記清掃手段の途中停止の異常を検知する異常検知手段と、異常検知により上記異常が記録画像に影響しない記録紙サイズの画像記録を可能にして上記異常が記録画像に影響する記録紙サイズの画像記録を不能にする制御手段と、を備えたワイヤクリーナ装置が記載されている。これらの構成により、清掃途中の異常停止による異常な記録画像の発生を防止する(特許文献1:請求項1、図10等参照)。
【特許文献1】特開平1−116659号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、帯電装置のワイヤや、露光装置としてのレーザユニットのガラス部分のクリーニングをモータ等の駆動を利用して自動的に行う場合、モータを一定時間駆動させて清掃部材を備える移動体を移動させて、クリーニングを行うことがある。
【0005】
しかし、清掃の対象物の汚れの状態等によりモータの負荷が変化し、この負荷のバラツキから、清掃部材を一定距離移動させるために要する時間も変化する。そうすると、単にモータを一定時間駆動させただけでは、終点まで移動体が移動しきらずに、途中で清掃が終わってしまう場合があるという問題がある。
【0006】
更に、移動体の移動の終点にストッパ等を設け、移動体が停止したときにモータに流れる過電流を検出して清掃が完了したことを検出する場合がある。しかし、画像形成装置は、帯電装置や転写装置等の高電圧を発するノイズ発生源を有し、又、印刷する用紙の帯びた静電気によるノイズ等、各種のノイズにより、清掃が完了していないのに過電流を検出する場合があるという問題がある。
【0007】
尚、特許文献1記載の発明をみると、移動開始から過電流を検出するまでの清掃手段の移動時間と移動速度から、異常停止の影響を受けない用紙サイズを選択して、異常な記録画像の発生を防止しようとするにすぎず(特開平1−116659号公報、第2頁、左欄第1〜3行等参照)、ノイズ等による過電流の誤検出を全く考慮していない。即ち、過電流を検出した時点でモータの回転方向が逆転され、負荷が大きいために生じた過電流であるのか、ノイズによる過電流なのか、故障による過電流であるのか、更には、モータを回転させ続けてもよいのか等を正確に判断できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ノイズ等を原因とする過電流の誤検出を確実に検出し、更には、清掃対象の汚れの状態等によりモータの負荷にバラツキが生じても確実に清掃を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するために、請求項1に記載の画像形成装置は、螺旋状に突条又は溝が設けられ、回転可能に支持される回転軸と、前記回転軸に取り付けられるとともに清掃部材を備え、前記回転軸の回転により前記清掃部材を清掃対象に接触させて移動する移動体と、正逆回転自在であり、前記回転軸を回転させるためのモータと、前記モータの回転を制御し、清掃の際、前記移動体を所定位置まで移動させるために、設定時間を目安としてモータの回転を制御する制御部と、前記モータに流れる電流を検出する電流検出部と、時間を計時するための計時部と、を有し、前記電流検出部が前記モータに過電流が流れたことを検出した際に、前記モータの駆動開始から過電流を検出するまでのモータ駆動時間が、前記設定時間から所定時間を引いた時間よりも短い場合、前記制御部は、前記モータの回転を停止し、一定時間前記モータを逆回転させ、その後、再度、前記モータの回転を正回転させる誤検出確認動作を1回又は複数回繰り返すこととした。
【0010】
この構成によれば、過電流検出の際に、前記モータの駆動開始から過電流を検出するまでのモータ駆動時間が、前記設定時間から所定時間を引いた時間よりも短い場合、制御部は、モータの回転を停止し、一定時間モータを逆回転させ、その後、再度モータの回転を正回転させる誤検出確認動作を1回又は複数回繰り返すから、ノイズ等による過電流の誤検出を確実に検出することができる。又、従来のように、清掃時に常に設定時間中だけモータを動かすものではなく、誤差の範囲としての所定時間を設けてモータを動作させるから、確実に清掃動作を完了させることができる。従って、移動体を所定位置まで移動させることなく清掃動作が終了することを確実に防ぐことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記誤検出確認動作時に、前記電流検出部により前記モータに過電流が流れたことを検出した場合、前記制御部は、前記モータを逆回転させて前記移動体を待機位置まで退避させることとした。
【0012】
この構成によれば、誤検出動作確認時に再度過電流が検出された場合は、負荷が異常に大きい等の問題発生が考えられるが、この場合、移動体を待機位置まで退避させるので、少なくとも、画像形成動作を妨げないようにすることができる。又、異常トルクが発生したために過電流を流し続けることによってモータが高温になることを防ぐことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の発明において、前記誤検出確認動作時に、正回転方向と逆回転方向の両方で前記モータに過電流が流れたことを検出した場合、前記制御部は、前記モータの回転を停止させることとした。
【0014】
この構成によれば、正回転方向と逆回転方向の両方で過電流が流れたことを検出した場合、移動体を移動させるための機構に故障等の発生が考えられ、過電流をモータに長時間流し続けることを防ぐことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の発明において、前記電流検出部が前記設定時間を経過しても、前記モータに過電流が流れたことを検出できない場合、前記制御部は過電流が検出されるまで、前記モータの回転を継続することとした。
【0016】
この構成によれば、設定時間から所定時間経過しても、モータに過電流が流れたことを検出できない場合、負荷が大きいため、移動体の移動速度が低下していると考えられるので、過電流が検出されるまでモータを回転させることによって、移動体を所定位置まで移動させることができ、清掃動作が途中で終了してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の発明において、前記電流検出部が、前記モータの駆動開始から前記設定時間の2倍の時間を経過しても前記モータに過電流が流れたことを検出できない場合、前記制御部は、前記モータの回転を停止することとした。
【0018】
この構成によれば、設定時間から2倍の時間が経過後も過電流を検出できない場合、電流検出部の故障や負荷が大きい状態と考えられ、モータに過電流が流れ続ける可能性があるが、制御部は、この時、モータの駆動を停止させるので、モータが高温になることを防ぐことができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の発明において、装置の状態を表示するための表示部を備え、前記誤検出確認動作時に、前記電流検出部により前記モータに過電流が流れたことが検出された場合、前記表示部は、警告メッセージを表示することとした。
【0020】
この構成によれば、表示部は、警告メッセージを表示するので、清掃部材による清掃が十分に行えない場合では、使用者は、画像形成に影響が出ることを認識することができ、又、モータに必要以上に過電流が流れる場合は、清掃機構の点検の必要性を使用者に認識させることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の発明において、トナー像を形成するため、像担持体としての感光体ドラムと、形成すべき画像の画像データに基づき前記感光体ドラムの走査・露光をレーザ光で行う露光装置を備え、前記露光装置は、前記感光体ドラムへのレーザ光の出射部分に透光性の板状部材が取り付けられ、前記移動体の前記清掃部材は前記板状部材に接触され、前記清掃対象は、前記板状部材であることとした。
【0022】
この構成によれば、露光装置の板状部材の清掃をノイズ等に影響されることなく、確実に行うので、高品質の画像形成が維持される。又、移動体を移動させるための構成に異常があった場合にも、その異常を確実に検出できるから、露光装置の修理、復旧を速やかに行うことができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の発明において、トナー像を形成するため、像担持体としての感光体ドラムと、前記感光体ドラムを帯電させるための帯電装置を備え、前記帯電装置は、前記感光体ドラムの軸線方向に沿って張られる放電ワイヤを備え、前記移動体の前記清掃部材は前記放電ワイヤに接触され、前記清掃対象は、前記放電ワイヤであることとした。
【0024】
この構成によれば、清掃部材が、帯電装置のワイヤクリーニングをノイズ等に影響されることなく確実に行うので、高品質の画像形成が維持される。又、移動体を移動させるための構成に異常があった場合にも、その異常を確実に検出できるから、帯電装置の修理、復旧を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
上述したように、清掃を行うためのモータに流れる過電流の誤検出を確実に認識するので、清掃動作を確実に完了させることができる。又、負荷が大きい場合や故障の場合を検出し、かつ、モータに過電流が流れ続けることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1〜6に基づき、本発明の実施形態について説明する。但し、本実施形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0027】
まず、図1及び2に基づき、本実施形態に係るプリンタ1(画像形成装置に相当)について、構造、動作の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の構成を示す正面模型的断面図である。図2(a)は、本発明の実施形態に係る画像形成ユニット40の拡大模型的断面図である。(b)は、本発明の実施形態に係るレーザユニットの模式図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、正面左側上部に操作パネル1a(図1において破線で図示、表示部に相当)を有し、いわゆるタンデム型であり、中間転写ベルト51を用いてフルカラーの画像をシートに形成する。そして、画像形成のため、シート供給部1b、シート搬送路2、定着部3、画像形成部4、中間転写部5を主な構成として有する。
【0029】
前記操作パネル1aは、プリンタ1の状態を表示するとともに使用者の操作・入力を受け付け、例えば、液晶表示部や各種キー(不図示)を有する。そして、エラー発生時、この操作パネル1aの液晶表示部に、エラー発生等の警告メッセージを表示することができる。例えば、本発明に関し、誤検出確認動作時に、電流検出部66、77により各モータMに過電流が流れたことが検出された場合、表示部は、警告メッセージを表示する。尚、過電流とは、例えば、各モータMの定格電流より多い電流であるが、どれほどの大きさの電流が流れると過電流とみなすかは、適宜設定される。
【0030】
前記シート供給部1bは本体内下部に配され、その内部にプリンタ用紙、ラベルシート、OHPシート等、各種、各サイズのシートが収容される。シート供給部1bは、画像形成を行う旨がプリンタ1に入力されると、1枚ずつシートをシート搬送路2に送り出す。
【0031】
前記シート搬送路2は、プリンタ1の内部左側を垂直上方にシートをシート供給部1bから排出トレイ21まで搬送する通路である(図1に搬送方向を破線矢印で図示。)。シート搬送路2には、シートの搬送方向を案内するためのガイド板22や、モータ、ギア75等からなる駆動機構(不図示)に接続され回転駆動する搬送ローラ対23が設けられる。又、シートを2次転写部24(2次転写ローラ56と駆動ローラ52のニップ)にタイミングを合わせて進入させるレジストローラ対25が、2次転写ローラ56の下方に設けられる。尚、前記2次転写部24は、画像形成部4で形成され、重畳して1次転写された中間転写ベルト51上のトナー像をシートに2次転写する部分である。
【0032】
前記定着部3は、2次転写部24の上方に配され、2次転写されたトナー像をシートに定着させる。また、定着部3は、シート上のトナー像に接する加熱ローラ31と、加熱ローラ31に圧接して配置される加圧ローラ32とを有し、加熱ローラ31と加圧ローラ32のニップに2次転写後のシートを進入させてトナー像をシートに定着させる。そして、定着の完了後のシートは排出トレイ21に排出され、画像形成が完了する。
【0033】
画像形成部4は、シート供給部1bの上方かつ、中間転写ベルト51の下方に設けられる。画像形成部4は、図1の左側から、ブラック用の画像形成ユニット40K、イエロー用の画像形成ユニット40Y、マゼンタ用の画像形成ユニット40M、シアン用の画像形成ユニット40Cの順で並列された複数の画像形成ユニット40と、その下方に設けられたレーザユニット41(露光装置に相当)で構成される。具体的に、画像形成ユニット40K、40Y、40M、40Cは、ベルトクリーニング装置55と2次転写部24との間で、中間転写ベルト51に近接して並列配置される。尚、各画像形成ユニット40K、40Y、40M、40Cの配置の順番は変更可能である。又、各画像形成ユニット40及びレーザユニット41の詳細は後述する。
【0034】
前記中間転写部5は、中間転写ベルト51と、中間転写ベルト51を張架し周回させるための駆動ローラ52、2本の従動ローラ53、4本の1次転写ローラ54、ベルトクリーニング装置55等で構成される。中間転写体としての中間転写ベルト51は、複数のローラに周回可能に張架され、その両端を互いに重ね合わせて接合してエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる(=無端状ベルト)。
【0035】
駆動ローラ52は、2次転写ローラ56に対向して配されるローラで、中間転写部5のうち、図1の最左方に配される。この駆動ローラ52には、モータM・ギア75等から構成される駆動機構(不図示)が接続され、駆動ローラ52は回転駆動する。この駆動ローラ52により、中間転写ベルト51は、図1では時計回りに周回駆動する。一方、2次転写ローラ56は駆動ローラ52に圧接し、2次転写時には、所定の電圧が印加され、その結果、中間転写ベルト51からシートにトナー像が転写される。
【0036】
図2も参照して、1次転写ローラ54は、感光体ドラム42に対向して配され、感光体ドラム42と1次転写ローラ54の間に中間転写ベルト51が挟まれる。1次転写ローラ54は、感光体ドラム42に向けて中間転写ベルト51に圧接する。そして、1次転写ローラ54は、所定の電圧(電流)を印加され、感光体ドラム42から中間転写ベルト51にトナーが引き付けられ、画像形成ユニット40K〜40Cで形成されたトナー像が中間転写ベルト51表面に所定のタイミングで重畳して1次転写される。これにより、4色のトナー像が重ね合わされたフルカラーのトナー像を形成することができる。尚、ベルトクリーニング装置55は、図1においてシアン用画像形成ユニット40Cの右側に設けられ、2次転写後に中間転写ベルト51表面に残留するトナー等を除去し、回収する。
【0037】
次に、図2に基づき、各画像形成ユニット40及びレーザユニット41の構成、動作の概略について説明する。図2(a)は本発明の実施形態に係る1つの画像形成ユニット40の部分拡大図であり、(b)は、レーザユニット41の構成の概略図である。
【0038】
まず、図2(a)に基づき、各画像形成ユニット40について説明するが、各画像形成ユニット40K〜40Cは構造が共通するので、特に説明する場合を除き、「K」、「Y」、「M」、「C」の記号は省略し、1つの画像形成ユニット40について説明する。又、図2中の破線矢印は、各回転部材の回転方向を示す。
【0039】
各画像形成ユニット40は、像担持体としての感光体ドラム42と、帯電装置43、現像装置44、ドラムクリーニング装置45等で構成される。そして、各画像形成ユニット40では、外部コンピュータ(不図示)から受信した文字や図形、模様等の画像データに基づいて、色ごとに感光体ドラム42上静電潜像が形成され、この静電潜像を現像装置44により可視像(トナー像)に現像する。
【0040】
像担持体としての感光体ドラム42は、アルミニウム等で構成される導電性基体の外周面に、アモルファスシリコン等の感光層を設けた円筒状の部材であり、その表面に帯電したトナーのトナー像を担持する。
【0041】
帯電装置43は、感光体ドラム42の表面を均一に帯電させる。本実施形態の帯電装置43は、放電ワイヤW1を電極として高電圧印加部43b(図5参照)により高電圧を印加して放電するコロナ放電装置を使用するが、ローラ、ブラシ等によるものでも良い。そして、本実施形態の帯電装置43には、ワイヤWへの固着物をクリーニングするためのワイヤ清掃機構6が設けられるが、詳細は後述する。
【0042】
現像装置44は、トナーを収容するとともに、所定の電位に帯電させ、後述するレーザユニット41により走査・露光されることで静電潜像が形成された感光体ドラム42にトナーを供給する。このトナーの供給により、静電潜像は、トナー像として現像される。ドラムクリーニング装置45は、感光体ドラム42から中間転写ベルト51に転写されずに残留した現像剤を清掃する。
【0043】
次に、図1及び図2(b)に基づき、レーザユニット41の構成について説明する。
【0044】
各画像形成ユニット40の下方に、露光装置として箱型のレーザユニット41が配される。レーザユニット41は、帯電された感光体ドラム42の周面に、形成すべき画像の画像データに基づき、レーザ光LBを感光体ドラム42に対し照射し、感光体ドラム42の周面を走査・露光して、形成すべき画像の静電潜像を形成する。
【0045】
図2(b)に示すように、レーザユニット41内部には、レーザ光LBを出射する半導体レーザ装置46(レーザダイオード)と、そのレーザ光LBを反射させるため平面反射面を複数持ち高速回転するポリゴンミラー47と、fθレンズ48、レーザ光LBを適宜反射させるためのミラー(不図示)等が設けられる(尚、図2(b)では1色分の構成のみを図示。例えば、4色の場合、ポリゴンミラー47は共有され、その他の半導体レーザ装置46、fθレンズ48、ミラー等は各色分備えられる。)。これらの構成により、レーザ光LBがレーザユニット41から各感光体ドラム42に照射され、画像データに併せた静電潜像が感光体ドラム42上に形成される。
【0046】
尚、図1に示すように、レーザユニット41からのレーザ光LBの出射部分に、レーザユニット41内へのトナー等の粉塵の侵入防止等のため、ガラス板49(透光性の板状部材に相当)が色ごとに計4枚設けられる。即ち、レーザ光LBは、このガラス板49の通過後、感光体ドラム42の露光を行う。又、図1に示すように、回転軸71等で構成されるガラス板49を清掃するためのガラス板清掃機構7が設けられる(詳細は後述)。
【0047】
ここで、本発明は、レーザユニット41のガラス板49や、帯電装置43のワイヤWのクリーニングにおいて、モータを用いて自動的にクリーニングを行うものであり、このクリーニングを的確に行える点に特徴を有するので、以下に、レーザユニット41と帯電装置43の清掃機構について詳細に説明する。
【0048】
まず、図3に基づき、レーザユニット41のガラス板清掃機構7について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るガラス板清掃機構7を説明するための斜視図である。
【0049】
まず、ガラス板49の清掃の必要性について述べる。本実施形態のプリンタ1では、ガラス板49からレーザ光LBが射出されるが、このガラス板49が汚れていると、感光体ドラム42に到達するレーザ光LBが少なくなり、或いは、汚れによりレーザ光LBが乱反射してしまう。そうすると、形成される画像に影響を与えてしまい、形成される画像の品質が低下してしまう。例えば、レーザユニット41の上方に設けられる各画像形成ユニット40からレーザユニット41にトナーが降り落ちてしまうことが、ガラス板49の汚れの要因の1つである。又、トナーだけではなくプリンタ1内には、何らかの粉塵等が舞っており、その粉塵がガラス板49上に載ってしまう場合もある。そのため、レーザユニット41のガラス板49は清掃する必要がある。
【0050】
そこで、本実施形態のプリンタ1は、ガラス板49を清掃するため、回転軸71、移動体72、清掃部材73、クリーニングモータM1等で構成されるガラス板清掃機構7を有する。尚、ガラス板49の清掃は、操作パネル1aへの指示入力によって行われてもよいし、一定枚数(例えば、数百枚〜数千枚)の画像形成が行われるごとに行われてもよい。
【0051】
図3に示すように、レーザユニット41の上面には、ガラス板49の長手方向と平行な方向に螺旋状に突条71a(溝でもよい)が設けられた回転軸71が2本設けられる。この回転軸71は、軸受部74に回転可能に支持される。そして、この回転軸71には、回転軸71の軸線方向と垂直な方向に延びる2本の翼を有するような形状の移動体72が取り付けられる。
【0052】
そして、この移動体72のそれぞれの翼状の部分の下面には、スポンジ等の清掃部材73が取り付けられ(計2枚、図3では不可視、図1参照)、各清掃部材73は、ガラス板49に接触する。言い換えると、回転軸71や移動体72の取付位置は、清掃部材73がガラス板49に接触するように調整される。尚、清掃部材73は、本実施形態では、スポンジを用いるが、ガラス板49の表面上のトナー等の粉塵を清掃でき、ガラス板49を傷つけないものであればよく、例えば、ブラシや、フェルトのような不織布や、樹脂製のブレードであってもよい。
【0053】
この回転軸71と移動体72と清掃部材73の組み合わせが、本実施形態のガラス板清掃機構7には2つ設けられる。これにより、各色の感光体ドラム42にレーザ光LBを照射するために計4枚設けられるガラス板49の全ての清掃を行うことができる。
【0054】
一方、レーザユニット41の側面には、回転軸71を回転させるための駆動源として、1つのクリーニングモータM1が設けられる。クリーニングモータM1は、正逆回転自在のものが採用され、本実施形態では、寿命やコスト的に有利な直流のブラシレスモータを用いるが、交流モータであってもよいし、使用するモータの種類に特段の制限はない。そして、クリーニングモータM1は、レーザユニット41の側面に複数配されるギア75の1つのギア75aに接続される。尚、ギア75は、回転軸71に駆動力を伝達するために複数設けられている。
【0055】
そして、各回転軸71の端部は、各軸受部74に差し込まれ支持されるが、この各軸受部74の外周面は歯面が設けられ、複数のギア75の内のギア75b、とギア75cに接続される。これにより、クリーニングモータM1が回転すると、各回転軸71に駆動が伝達され、回転する。この各回転軸71の回転により、各移動体72が清掃部材73を清掃対象に接触させてガラス板49の長手方向に沿って移動する(図3に移動方向を白抜き矢印で図示)。そうすると、各移動体72の移動によって、各清掃部材73は、各ガラス板49を拭き取るようにして、各ガラス板49の表面上の粉塵や固着物を取り除く。
【0056】
又、ガラス板49の清掃時、移動体72は、図3に示すように、ガラス板49の一端部側に寄った待機位置から、ガラス板49の長手方向に沿って進み、ガラス板49の他端部に設けられるストッパ(不図示)まで到達する。これにより清掃動作が完了する。尚、ストッパ到達後、クリーニングモータM1の回転を逆回転させ、移動体72を再び待機位置まで戻して(往復させ)、これを1回の清掃動作としてもよい。このようにして、移動体72の移動によりレーザユニット41のガラス板49の清掃が行われる。
【0057】
尚、本実施形態のガラス板清掃機構7では、トランジスタ等によりクリーニングモータM1への電力供給のスイッチングを行う駆動回路部76と、モータMに流れる電流を検出するための電流検出部77が設けられるが、詳細は後述する。
【0058】
次に、図4に基づき、帯電装置43のワイヤ清掃機構6について説明する。図4(a)は、本発明の実施形態に係る帯電装置43内部の側面図であり、(b)は、移動体62の構成を示すための拡大断面図である。
【0059】
まず、ワイヤWの清掃の必要性について述べると、本実施形態のプリンタ1では、帯電装置43には、放電ワイヤW1等の高電圧が印加されるワイヤWが備えられる。ワイヤWは、高電圧の印加時、電界が形成され、ワイヤWは吸引力(静電力)を有する。そうすると、トナーに含まれるシリカ等の粉塵を引き寄せてしまう。又、粉塵がそのままワイヤWに固着してしまうこともある。このようなワイヤWの吸着物は、感光体ドラム42の帯電を妨げ、形成される画像の濃度にムラが出る等、画像の品質を低下させてしまう。そのため、帯電装置43のワイヤWは定期的に清掃する必要がある。
【0060】
そこで、本実施形態のプリンタ1は、ワイヤWの清掃のため、回転軸61、移動体62、清掃部材63、64、ワイヤクリーニングモータM2等で構成されるワイヤ清掃機構6を有する。尚、ワイヤWの清掃は、操作パネル1bへの指示入力によって行われてもよく、一定枚数(例えば、数百枚〜数千枚)の画像形成が行われるごとになされてもよい。
【0061】
本実施形態の帯電装置43は、ケースの感光体ドラム42に対向する面が開口し、その開口部内には、感光体ドラム42の軸線方向と略平行に張られる放電ワイヤW1とグリッド電極用のグリッドワイヤW2が設けられ、この各ワイヤWに高電圧を印加して、その近傍の空気をコロナ放電によりイオン化させ感光体ドラム42を帯電させる。
【0062】
まず、図4(a)に示すように、回転軸61は、放電ワイヤW1やグリッドワイヤW2と略平行かつ回転可能に帯電装置43のフレーム43aに支持される。そして、この回転軸61には螺旋状に突条61a(溝でもよい)が設けられる。又、この回転軸61に、放電ワイヤW1とグリッドワイヤW2とを各別に挟持して清掃する二つの清掃部材63、64を備えた移動体62が取り付けられる。具体的には、図4(b)に示すように、回転軸61が挿通する移動体62の通路62aの内側に、突部62bが2つ設けられ、この突部62bと突条61a部分の噛み合いで、回転軸61の回転により移動体62が移動する。
【0063】
この移動体62に取り付けられる清掃部材63、64は、放電ワイヤW1やグリッドワイヤW2を傷つけないように、スポンジ等を用いることができる。この清掃部材63、64が移動体62の移動により、放電ワイヤW1やグリッドワイヤW2の固着物を摺擦しつつ取り除く。そして、回転軸61と移動体62と清掃部材63、64のセットが、各画像形成ユニット40の各帯電装置43に設けられ、各帯電装置43の全てのワイヤWの清掃を行うことができる。言い換えると、ワイヤ清掃機構6は、本実施形態のプリンタ1では計4つ設けられる。
【0064】
一方、帯電装置43の側面には、回転軸61を回転させるための駆動源として、ワイヤクリーニングモータM2が設けられる。ワイヤクリーニングモータM2も、正逆回転自在であり、使用するモータMの種類に特段の制限はない点は、ガラス板清掃機構7と同様である。そして、ワイヤクリーニングモータM2は、例えば、帯電装置43のフレーム43aから突き出る回転軸61の一端部61bに設けられる歯面と接続される。これにより、ワイヤクリーニングモータM2が回転すると、回転軸61が回転する。この回転軸61の回転により、移動体62が清掃部材63、64を清掃対象に接触させて放電ワイヤW1が張られている方向に沿って移動する。
【0065】
又、放電ワイヤW1等の清掃時、移動体62は、放電ワイヤW1の一端部側に寄った待機位置から、放電ワイヤW1の長手方向に沿って進み、回転軸61の他端部側に到達する。この動作により、各ワイヤWの清掃動作は完了する。尚、その後、ワイヤクリーニングモータM2の回転を逆回転させ、移動体62を往復させて、再び待機位置まで戻した段階で、各ワイヤWの清掃動作を完了としてもよい。このようにして、移動体62の移動により放電ワイヤW1等の清掃が行われる。
【0066】
尚、本実施形態の清掃機構では、トランジスタ等によりワイヤクリーニングモータM2への電力供給のスイッチングを行う駆動回路部65と、モータMに流れる電流を検出するための電流検出部66が設けられるが、詳細は後述する。
【0067】
次に、図5に基づき、本発明の実施形態に係るプリンタ1のハードウェア構成について説明する。図5は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の一例を示すブロック図である。
【0068】
図5に示すように、プリンタ1は、1又は複数の端末100(例えば、パーソナルコンピュータ等、図5では、便宜上1台のみ図示)とネットワーク等により接続され、プリンタ1は、端末100からの画像データ等の送信を受けて、画像形成を行う。
【0069】
そして、このプリンタ1の画像形成動作を制御するために、制御部8が設けられる。図5に示すように、制御部8は、プリンタ1を構成する例えば、画像形成部4や中間転写部5等の各部と接続され、その制御を行う。又、本発明に関して言えば、制御部8は、クリーニングモータM1やワイヤクリーニングモータM2の回転を制御し、清掃の際、移動体62、72を所定位置まで移動させるために、設定時間を目安として各モータMの回転を制御する。そして、実際に制御を行うための構成として、制御部8には、CPU81、記憶部82、計時部83等が設けられる。
【0070】
前記CPU81は、中央演算処理装置であり、制御プログラムや制御データに基づき、プリンタ1の各部に制御信号を発し、演算等を行う。例えば、本発明に関しては、清掃時の各モータMの駆動時間と設定時間と所定時間の比較等の各種演算を行う。
【0071】
記憶部82は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュROM等で構成される。ROM、HDD、フラッシュROMは、不揮発性のメモリであり、制御プログラムや制御データ、画像データ等を記憶する。RAMは、揮発性のメモリであり、CPU81が演算等を行うために、制御プログラム、制御データ、画像データ等を展開し、記憶するメモリである。例えば、本発明に関し、設定時間や所定時間等の時間データや、清掃動作プログラムを記憶する。
【0072】
前記計時部83は、いわゆるタイマであって、プリンタ1の制御に必要となる時間をカウントする。例えば、本発明に関して言えば、レーザユニット41の清掃機構の移動体72や、帯電装置43のワイヤ清掃機構6の移動体62の移動開始からクリーニングモータM1やワイヤクリーニングモータM2に過電流が流れるまでの時間の計時を行う。
【0073】
そして、図5に示すように、本実施形態の画像形成部4のレーザユニット41には、上述したように、クリーニングモータM1が設けられる。又、レーザユニット41には、クリーニングモータM1に流れる電流を検出し、制御部8に出力する電流検出部77と、制御部8からのクリーニング指示を受けて、クリーニングモータM1の電力供給のスイッチング(クリーニングモータM1の回転のON/OFF)を行う駆動回路部76が設けられる。
【0074】
一方、本実施形態の画像形成部4の各帯電装置43には、上述したように、ワイヤクリーニングモータM2が設けられる。そして、帯電装置43にも、ワイヤクリーニングモータM2に流れる電流を検出し、制御部8に出力する電流検出部66と、制御部8からのクリーニング指示を受けて、ワイヤクリーニングモータM2の電力供給のスイッチング(クリーニングモータM1の回転のON/OFF)を行う駆動回路部65が設けられる。
【0075】
電流検出部66、77は、例えば、クリーニングモータM1やワイヤクリーニングモータM2(以下、「各モータM」と略す。)に設けられる抵抗(不図示)や、各モータMでの端子間の電圧を検出し、その検出した電圧値を各モータMの有する抵抗値から、電流量を計算して検出することができる。そして、各電流検出部66、77は、制御部8のCPU81と接続され、その検出した電流値の情報を制御部8に送信する。この各電流検出部66、77からの出力を受けて、制御部8は、クリーニングモータM1やワイヤクリーニングモータM2に過電流が流れたことも検出する。
【0076】
ここで、ガラス板49やワイヤWのクリーニング時の基本的な制御について述べる。画像形成枚数が、前回の清掃時から一定枚数に到った場合等、制御部8は、ガラス板49やワイヤWの清掃を行うため、駆動回路部65、76にクリーニングモータM1やワイヤクリーニングモータM2を駆動させるように指示を出す。そして、各モータMの駆動と同時に、計時部83で計時を開始する。
【0077】
通常、ガラス板49やワイヤWの清掃においては、移動体62、72は、移動されるが移動体62、72がガラス板49やワイヤWの一端から他端に到った場合(所定位置に達した場合)、移動体62、72はストッパやフレーム43a等に当たって止まるので、各モータMはロック状態となる。そして、各モータMに流れる電流量とトルクは比例関係にあるため、各モータMには、過電流が流れることになる。この過電流を各電流検出部66、77が検出することにより、制御部8は、移動体62、72が所定位置に達したことを検出する。尚、移動体62、72を往復させる場合は、その後、制御部8は、駆動回路部65、76に、各モータMを逆回転させる指示を出し、再度過電流を検出すれば、移動体62、72は待機位置まで戻ってきたとして、クリーニングモータM1やワイヤクリーニングモータM2を停止させる。
【0078】
尚、所定位置とは、移動体62、72が待機位置から移動し、片道における終点の位置である。例えば、レーザユニット41で言えば、ガラス板49の一端側が待機位置ならば、他端が所定位置に相当する。又、帯電装置43で言えば、各ワイヤWの一端側が待機位置ならば、他端が所定位置に相当する。
【0079】
このように、移動体62、72が所定位置にまで達したか否かの判断は、本実施形態のプリンタ1では、各モータMに流れる過電流を検出することにより行うが、ノイズ等で過電流を誤検出することがある。この誤検出を所定位置にまで達したと制御部8が判断すれば、清掃が最後まで行われることなく終了してしまうことになる。又、各清掃機構6、7の故障によって各モータMに異常トルクが発生して過電流が検出されることもあり、この場合は、各モータMの発熱を回避するため、電力の供給を止めた方がよい。そして、本発明は、これらの判断を確実になすことができる点に特徴があるので、以下述べる。
【0080】
そこで、図6に基づき、本実施形態のプリンタ1の清掃時の制御について説明する。図6は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の清掃時の制御の一例を示すフローチャートである。尚、図6では、レーザユニット41のガラス板49の清掃時について説明するが、帯電装置43のワイヤWの清掃についても同様に適用できる。
【0081】
まず、図6におけるスタートは、制御部8がガラス板49の清掃開始の指示を駆動回路部76に発した時点である。
【0082】
このクリーニングモータM1の駆動開始時に、計時部83は時間の計測を開始する(ステップ♯1)。そして、駆動回路部76は、制御部8からの指示を受けて、クリーニングモータM1を駆動させ、移動体72は所定位置に向けて移動する(ステップ♯2)。このクリーニングモータM1の回転により、ガラス板49の一端から他端に向けて、移動体72は所定位置方向に移動し、ガラス板49の清掃がなされる(ステップ♯3)(この時の回転方向を「正回転」とする。)。この時、制御部8は、クリーニングモータM1の駆動時間が設定時間の2倍を超えていないかの確認を行う(ステップ♯4)。
【0083】
そして、制御部8は、クリーニングモータM1の駆動時間が設定時間の2倍を超えていない場合(ステップ♯4のYes)、制御部8は、電流検出部77によって過電流が検出されたかを確認する(ステップ♯5)。もし、過電流が検出されなければ(ステップ♯5のNo)、クリーニングモータM1の駆動を継続する(ステップ♯2へ)。もし、過電流が検出されれば(ステップ♯5のYes)、クリーニングモータM1の駆動開始から、過電流を検出するまでの時間(=クリーニングモータM1の駆動時間)が、設定時間から所定時間を引いた時間よりも短いかを確認する(ステップ♯6)。
【0084】
ここで、設定時間とは、移動体72が待機位置から所定位置までに要する目安となる移動時間である。この移動時間は、待機位置から所定位置までの距離を、理想的な移動体72の移動速度で割ることで求めることができる。ここで、所定時間をあくまで目安とするのは、ガラス板49の汚れの程度や移動体72や清掃部材73の取付具合等によって、クリーニングモータM1の負荷が変動するためである。即ち、ガラス板49の清掃時、同じ時間だけクリーニングモータM1を回転させたとしても、移動体72の移動距離は常に同じになるとは限らないため、ガラス板49の一端から他端まで移動体72が移動する目安の時間を設定時間としているのである。
【0085】
そして、所定時間とは、設定時間との誤差の許容範囲となる時間である。例えば、2〜3秒程度に設定される。もし、クリーニングモータM1の駆動時間が、設定時間から所定時間を引いた時間よりも短ければ(ステップ♯6のYes)、クリーニングモータM1の駆動開始から、過電流を検出するまでの時間が短すぎるため、移動体72は、所定位置まで到達しておらず、清掃は終了していないとみなせる。即ち、設定時間をT1、所定時間をT2、クリーニングモータM1の駆動時間tとすると、ステップ♯6では、
T1 − T2 > t
となっているかの確認を行っていることになる。
【0086】
ステップ♯6がYesの場合、帯電装置43や転写ローラの高電圧や搬送されるシートの摩擦等の何らかのノイズを電流検出部77が誤検出したか、負荷が大きいか、若しくは、清掃機構の故障発生等が考えられる。これらを明らかにするため、制御部8は、駆動回路部76にクリーニングを逆回転させる指示を出し、これを受けて、クリーニングモータM1は、逆回転される(ステップ♯7)。この逆回転の時間は、2〜7秒、より好ましくは、3〜6秒、より好ましくは、5秒程度逆回転させる。
【0087】
その後、制御部8は、クリーニングモータM1を再び正回転させる(ステップ♯8)。そして、その時、制御部8は、電流検出部77により同じ位置で過電流が検出されないかの確認を行う(ステップ♯9)。即ち、ステップ♯7〜9が、過電流の誤検出確認動作となる。尚、より正確な確認のため、ステップ♯7〜9を複数回(例えば、3回)行ってもよい。まとめると、電流検出部77がクリーニングモータM1に過電流が流れたことを検出した際に、クリーニングモータM1の駆動開始から過電流を検出するまでのクリーニングモータM1駆動時間が、設定時間から所定時間を引いた時間よりも短い場合、制御部8は、クリーニングモータM1の回転を停止し、一定時間クリーニングモータM1を逆回転させ、その後、再度、クリーニングモータM1の回転を正回転させる誤検出確認動作を1回又は複数回繰り返す。
【0088】
もし、再び過電流が検出されなければ(ステップ♯9のYes)、制御部8は、ノイズ等の過電流の誤検出と判断し(ステップ♯10)、そのまま、クリーニングモータM1を正回転させ、移動体72を所定位置に向けて移動させる(ステップ♯2へ)。
【0089】
もし、過電流が検出されれば(ステップ♯9のNo)、制御部8は、逆回転時にも過電流が検出されたかを確認する(ステップ♯11)。つまり、正回転時、逆回転時の両方で過電流が検出されれば、クリーニングモータM1が移動できないか、負荷が異常に大きいか、清掃機構に何らかの故障が生じた可能性もある。又、いずれの方向に回転させても、モータMには過電流が流れ続けることになり、モータMの加熱が懸念される。
【0090】
そこで、誤検出確認動作時における正回転時、逆回転時の両方で過電流が検出されれば(ステップ♯11のYes)、制御部8は、駆動回路部76に指示して、モータMの駆動を停止させる(ステップ♯12)。そして、例えば、制御部8は、操作パネル1aの液晶表示部やプリンタ1に接続される端末100にインストールされているプリンタドライバソフトを駆使して、「エラー発生、サービスマンを呼んで下さい。」等の警告メッセージを表示させる(ステップ♯14)。そして、清掃時の制御は終了する(エンド)。
【0091】
一方、逆回転時に過電流が検出されなければ(ステップ♯11のNo)、少なくとも画像形成可能とするため、制御部8は、クリーニングモータM1を逆回転させ、移動体72を待機位置まで退避させる(ステップ♯13)。即ち、誤検出確認動作時に、電流検出部77によりクリーニングモータM1に過電流が流れたことが検出された場合、制御部8は、クリーニングモータM1を逆回転させて移動体72を待機位置まで退避させる。そして、制御部8は、液晶表示部等に、「クリーニングが完了していません。清掃機構に不具合が発生した可能性があります。サービスマンを呼んで下さい。」等の警告メッセージを表示させる(ステップ♯14)。そして、清掃時の制御は終了することになる(エンド)。
【0092】
ステップ♯6に戻り説明する。もし、クリーニングモータM1の駆動時間が、設定時間から所定時間を引いた時間よりも短くなければ(ステップ♯6のNo)、クリーニングモータM1を停止し(ステップ♯15)、制御部8は、正常に清掃が行われたと判断する(ステップ♯16)。言い換えると、クリーニングモータM1の駆動時間が誤差の範囲内であると認められた場合である。即ち、設定時間をT1、所定時間をT2、クリーニングモータM1の駆動時間tとすると、ステップ♯6のNoでは、
T1 − T2 < t
という関係が成立している。そして、清掃時の制御は終了することになる(エンド)。
【0093】
更に、ステップ♯4に戻ると、過電流を検出しないまま、クリーニングモータM1の駆動時間が設定時間の2倍(設定時間の整数倍としてもよいし、任意のクリーニングモータM1の最大許容駆動時間としてもよい。)を超えている場合は(ステップ♯4のNo)、過電流を検出するまでの時間が長すぎるので、制御部8は、電流検出部77が故障しているか、クリーニングモータM1の負荷が大きいと判断し(ステップ♯17)、クリーニングモータM1を停止させ(ステップ♯18)、「清掃機構に異常があります。サービスマンを呼んで下さい」等の警告メッセージを液晶表示部等に表示させる(ステップ♯14)。このように、制御部8は、クリーニングモータM1の駆動時間が設定時間の2倍を超えるまでは、クリーニングモータM1を駆動させ、清掃を完遂させる。即ち、電流検出部77が設定時間を経過しても、クリーニングモータM1に過電流が流れたことを検出できない場合、制御部8は、過電流が検出されるまで、クリーニングモータM1の回転を継続するが、電流検出部77が、モータMの駆動開始から設定時間の例えば2倍の時間を経過しても、クリーニングモータM1に過電流が流れたことを検出できない場合、制御部8は、クリーニングモータM1の回転を停止する。
【0094】
尚、一回の清掃動作で、移動体72を往復させる場合には、待機位置と所定位置を入れ替えて、同様の制御を行えばよい。又、帯電装置43のワイヤWのクリーニングに当てはめる場合には、図6の説明において、「ガラス板49」を「放電ワイヤW1及びグリッドワイヤW2」と、「駆動回路部76」を「駆動回路部65」と、「クリーニングモータM1」を「ワイヤクリーニングモータM2」と、「移動体72」を「移動体62」と、「電流検出部77」を「電流検出部66」と、「清掃部材73」を「清掃部材63、64」と「ガラス板清掃機構7」を「ワイヤ清掃機構6」と、読み替えればよい。
【0095】
このようにして、本構成によれば、誤検出確認動作を1回又は複数回繰り返すから、ノイズ等による過電流の誤検出を確実に検出することができる。又、従来のように、清掃時に常に設定時間中だけモータMを動かすものではなく、誤差の範囲としての所定時間を設けて各モータMを動作させるから、確実に清掃動作を完了させることができる。従って、移動体62、72を所定位置まで移動させることなく清掃動作が終了することを確実に防ぐことができる。
【0096】
又、誤検出動作確認時に再度過電流が検出された場合は、負荷が異常に大きい等の問題発生が考えられるが、この場合、移動体62、72を待機位置まで退避させるので、少なくとも、画像形成動作を妨げないようにすることができる。又、異常トルクが発生したために過電流を流し続けることによって各モータMが高温になることを防ぐことができる。又、正回転方向と逆回転方向の両方で過電流が流れたことを検出した場合、移動体62、72を移動させるための機構に故障等の発生が考えられ、過電流を各モータMに長時間流し続けることを防ぐことができる。
【0097】
又、設定時間から所定時間経過しても、各モータMに過電流が流れたことを検出できない場合、負荷が大きいため、移動体62、72の移動速度が低下していると考えられるので、過電流が検出されるまで各モータMを回転させることによって、移動体62、72を所定位置まで移動させることができ、清掃動作が途中で終了してしまうことを防ぐことができる。しかし、設定時間から2倍の時間が経過後も過電流を検出できない場合、電流検出部66、77の故障や負荷が大きい状態と考えられ、各モータMに過電流が流れ続ける可能性があるが、制御部8は、この時、各モータMの駆動を停止させるので、各モータMが高温になることを防ぐことができる。
【0098】
又、操作パネル1a(表示部)は、警告メッセージを表示するので、清掃部材63、64、73による清掃が十分に行えない場合では、使用者は、画像形成に影響が出ることを認識することができ、又、各モータMに必要以上に過電流が流れる場合は、清掃機構の点検の必要性を使用者に認識させることができる。具体的には、レーザユニット41(露光装置)のガラス板49(板状部材)の清掃をノイズ等に影響されることなく、確実に行うので、高品質の画像形成が維持される。又、帯電装置43でもワイヤWの清掃をノイズ等に影響されることなく確実に行うので、高品質の画像形成が維持される。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、モータを用いて、例えば、帯電装置やレーザユニットの清掃を自動的に行う画像形成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施形態に係るプリンタの構成を示す正面模型的断面図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る画像形成ユニットの拡大模型的断面図である。(b)は、実施形態に係るレーザユニットの模式図である。
【図3】実施形態に係るガラス板清掃機構を説明するための斜視図である。
【図4】(a)は、実施形態に係る帯電装置内部の側面図であり、(b)は、移動体の構成を示すための拡大断面図である。
【図5】実施形態に係るプリンタの一例を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係るプリンタの清掃時の制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ(画像形成装置) 1a 操作パネル(表示部)
4 画像形成部 41 レーザユニット(露光装置)
42 感光体ドラム 43 帯電装置
49 ガラス板(板状部材) 61、71 回転軸
61a、71a 突条 62、72 移動体
63、64、73 清掃部材 66、77 電流検出部
8 制御部 83 計時部
M モータ M1 クリーニングモータ
M2 ワイヤクリーニングモータ W1 放電ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に突条又は溝が設けられ、回転可能に支持される回転軸と、
前記回転軸に取り付けられるとともに清掃部材を備え、前記回転軸の回転により前記清掃部材を清掃対象に接触させて移動する移動体と、
正逆回転自在であり、前記回転軸を回転させるためのモータと、
前記モータの回転を制御し、清掃の際、前記移動体を所定位置まで移動させるために、設定時間を目安としてモータの回転を制御する制御部と、
前記モータに流れる電流を検出する電流検出部と、
時間を計時するための計時部と、を有し、
前記電流検出部が前記モータに過電流が流れたことを検出した際に、前記モータの駆動開始から過電流を検出するまでのモータ駆動時間が、前記設定時間から所定時間を引いた時間よりも短い場合、前記制御部は、前記モータの回転を停止し、一定時間前記モータを逆回転させ、その後、再度、前記モータの回転を正回転させる誤検出確認動作を1回又は複数回繰り返すことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記誤検出確認動作時に、前記電流検出部により前記モータに過電流が流れたことを検出した場合、前記制御部は、前記モータを逆回転させて前記移動体を待機位置まで退避させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記誤検出確認動作時に、正回転方向と逆回転方向の両方で前記モータに過電流が流れたことを検出した場合、前記制御部は、前記モータの回転を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電流検出部が前記設定時間を経過しても、前記モータに過電流が流れたことを検出できない場合、前記制御部は、過電流が検出されるまで、前記モータの回転を継続することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電流検出部が、前記モータの駆動開始から前記設定時間の2倍の時間を経過しても前記モータに過電流が流れたことを検出できない場合、前記制御部は、前記モータの回転を停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
装置の状態を表示するための表示部を備え、
前記誤検出確認動作時に、前記電流検出部により前記モータに過電流が流れたことが検出された場合、前記表示部は、警告メッセージを表示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
トナー像を形成するため、像担持体としての感光体ドラムと、形成すべき画像の画像データに基づき前記感光体ドラムの走査・露光をレーザ光で行う露光装置を備え、
前記露光装置は、前記感光体ドラムへのレーザ光の出射部分に透光性の板状部材が取り付けられ、前記移動体の前記清掃部材は前記板状部材に接触され、前記清掃対象は、前記板状部材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像を形成するため、像担持体としての感光体ドラムと、前記感光体ドラムを帯電させるための帯電装置を備え、
前記帯電装置は、前記感光体ドラムの軸線方向に沿って張られる放電ワイヤを備え、前記移動体の前記清掃部材は前記放電ワイヤに接触され、前記清掃対象は、前記放電ワイヤであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−139816(P2009−139816A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318260(P2007−318260)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】