説明

画像形成装置

【課題】表面凹凸が大きいエンボス紙などを用紙に用いる場合でも有色トナー画像の転写不良を防ぐ画像形成装置を提供する。
【解決手段】一次転写ロール31Tとのニップ位置より搬送方向下流側の中間転写ベルト12表面近傍、かつ中間転写ベルト12裏側に接地された金属ロール33が設けられた箇所にコロナ放電器39が設けられ、透明トナー画像20の上にY〜Kの4色画像が転写されるまでの間に透明トナー画像20の帯電量を調整する。中間転写ベルト12表面側からマイナス帯電の透明トナー15Tに対して、マイナス放電を照射させることにより、透明トナー層20Aの電位が均一化され動きにくくなる。有色トナー層21Aを重ねて用紙Pへ転写すると、透明トナー層20Aと有色トナー層21Aとの層間で切断されやすくなるので用紙Pへの転写性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に中間転写ベルトを介してトナー画像を用紙上に転写する機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等の画像形成装置は、感光体ドラムの表面を所定の電位に一様に帯電した後、当該感光体ドラムの表面に画像露光を施して、画像情報に対応した静電潜像を形成し、この静電潜像を現像器によってトナー現像、可視像化することにより、形成したトナー像を記録用紙上に転写・定着し、画像を形成するように構成されている。
【0003】
上記の画像形成装置において、例えばイエロー、マゼンタ、シアンの順に、感光体上にトナー像を形成してから、一括してこの重ね合わせトナー像を記録紙上に転写する方式、即ち、一括転写方式のカラー画像形成装置が提案されている。
【0004】
具体的には、感光体の周囲に、帯電器、露光部、各色に対応した複数の例えばシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの現像器、転写器、およびクリーニング装置を配置し、感光体上に1回転ごとに各色のトナー像を順次重ねて形成し、この感光体上に形成された各色のトナー像を1回の転写工程で記録紙上に転写しカラー像を形成するカラー画像形成装置が提案されている。
【0005】
あるいは感光体ドラムの周囲に、帯電器、露光光学系および現像器からなる記録部を複数組配置し、感光体ドラムが1回転する間に各色のトナー像を感光体ドラム上に形成して、この各色のトナー像を1回の転写工程で記録紙上に転写するカラー画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記の重ね合わせトナー像を一括転写する方式のカラー画像形成装置においては、第1回目の現像工程で形成されたトナー像、即ち、感光体表面に接しており、感光体との密着度合いが最も強いトナー像は記録紙への転写効率が他の色に比較して劣っている。
【0007】
つまり感光体の表面に、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像の順に積層された重ね合わせトナー像は、転写工程においては感光体上とは逆に、C,M,Yの順に積層された形で記録紙に転写される。しかし記録紙上における最上層のYトナー像は、感光体から転写される際に一部転写され切れずに感光体側に残ってしまうため、M,Cのトナー像に比較して望ましい厚みを持ったものとはならない。この結果、Yトナー層における、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の色成分の透過率、反射率(B成分は吸収し、R,G成分は反射する)が、本来あるべき数値と異なってしまい、原稿に忠実な色の再現が行われないという問題があった。これに対して第1回目の現像動作を行う現像器では透明トナーを用いることで、記録紙への転写工程で転写しきれないトナー層を透明トナーからなる層とし、有色トナー層の転写性を改善したカラー画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかし上記の構成では、表面凹凸が大きいエンボス紙などを用紙に用いる場合、転写に必要な電位差が大きいため凹部で転写不良が発生する虞がある。
【0009】
そこで本発明では、互いに接触している透明トナー層とカラートナー層との性質(トナー層の表面エネルギー)を異なる状態にすることにより、用紙への転写時に透明トナー層とカラートナー層との界面で切断しやすくする構成とした。
【0010】
これによって透明トナー層は用紙に転写されず中間転写体側に残留するが、カラートナー層の用紙への転写性を向上することができる。よってエンボス紙などの大きな凹凸のある用紙に対してカラートナーの転写不良発生を防止することができる。
【特許文献1】特開昭63−273883号公報
【特許文献2】特開平08−106195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事実を考慮し、表面凹凸が大きいエンボス紙などを用紙に用いる場合でも有色トナー画像の転写不良を防ぐ画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の画像形成装置は、感光体表面上に画像露光することで露光静電画像として形成され、複数の現像器によりトナー画像が現像されたトナー画像が転写される中間転写体と、前記中間転写体上にて、透明トナーにより形成された透明トナー画像層の上に有色トナーにより形成された有色トナー層が形成される透明トナーモードとを備え、前記透明トナー画像層の付着力は前記有色トナー層の付着力よりも低いことを特徴とする。
【0013】
上記構成の発明では、中間転写体上において透明トナー層の上に形成された有色トナー層の付着力が透明トナー層よりも高いため、中間転写体から用紙に転写される際に透明トナー層と分離し、凹凸のある用紙であっても優れた転写性を示す。
【0014】
請求項2に記載の画像形成装置は、前記透明トナーは、前記有色トナーよりも帯電量が低いことを特徴とする。
【0015】
上記構成の発明では、透明トナーの帯電量が低いため、総電気量で決まる転写可能トナー量が増え、転写するトナー粒子の個数を増やすことができる。このため転写残留トナーにおける透明トナーの比率を高くし、有色トナーの残留比率を低くすることができる。
【0016】
請求項3に記載の画像形成装置は、前記透明トナーモードを選択することにより、画像形成時に前記中間転写体へ転写される前記有色トナー量を少なくすることを特徴とする。
【0017】
上記構成の発明では、有色トナーの量を少なくすることで、用紙へ転写する際の有色トナー層への転写電界が十分作用し、有色トナーの残留を抑えることができる。
【0018】
請求項4に記載の画像形成装置は、前記有色トナー層が黒色トナーを含む複数の有色トナー層から構成されるとき、前記透明トナーモードを選択することにより、前記有色トナー層における前記黒色トナーの割合を高くすることを特徴とする。
【0019】
上記構成の発明では、有色トナーの混色で得られる灰色を黒色トナーで代用することにより、有色トナーの全体量を減らすことができる。これにより用紙へ転写する際の有色トナー層への転写電界が十分作用し、有色トナーの残留を抑えることができる。
【0020】
請求項5に記載の画像形成装置は、前記有色トナー層が形成されるよりも搬送方向上流側において、前記感光体上あるいは前記中間転写体上に形成された前記透明トナー層の帯電量を調整する帯電調整手段が設けられたことを特徴とする。
【0021】
上記構成の発明では、透明トナー層の帯電量を調整する帯電調整手段を設けたことにより中間転写体上での透明トナー界面の性質を有色トナーと異なるものとし、また透明トナー層に対してマイナス放電を照射させることにより、電位が均一化され動きにくくなるため、有色トナー層を重ねて用紙へ転写すると、透明トナー層と有色トナー層との層間で切断されやすくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成としたので、表面凹凸が大きいエンボス紙などを用紙に用いる場合でも有色トナー画像の転写不良を防ぐ画像形成装置とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<画像形成装置概要>
図1〜図3には本発明の第1形態に係る画像形成装置が示されている。
【0024】
図1は本発明の第1形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、画像形成装置10は表面にトナー画像を転写される中間転写ベルト12と、中間転写ベルト12の表面にトナー画像を形成する画像形成部30Y〜30K、およびその搬送方向上流側には透明トナー画像を形成する画像形成部30Tとが設けられ、その主要部が構成されている。
【0026】
画像形成部30T〜30Kは表面に静電潜像を形成する感光体ドラム32、感光体ドラム32に接触し帯電させる一次帯電用の帯電ロール34、感光体ドラム32上に静電潜像を形成する光走査装置36、静電潜像をトナーで現像する現像ユニット38から構成されている。トナーカートリッジ14Y〜14Kからは現像ユニット38Y〜38Kにそれぞれトナー15Y〜15Kを供給し、また透明トナーカートリッジ14Tからは現像ユニット38Tに透明トナー15Tを供給することで、画像形成で消費された各色トナー15Y〜15K、および透明トナー15Tを補充する。
【0027】
記録紙Pはトレイ16に収容され用紙搬送経路(図中黒矢印)に沿って搬送され、ニップ位置12Aにて二次転写ロール17に押圧された中間転写ベルト12からトナー画像を転写される。
【0028】
一方、局所的な深い凹部をもつエンボス紙など、凹部で転写不良が発生しやすい紙が用紙Pとして使用される際には、画像形成装置10に設定された透明トナーモードが選択され、画像形成部30Tにおいて帯電ロール34Tにて表面電位を印加された感光体ドラム32Tの表面には、有色トナー15で画像が形成されるべき位置範囲に光が照射され、これに応じた静電潜像が形成される。
【0029】
この静電潜像は、現像ユニット38T上の透明トナー15Tを感光体ドラム32T上に形成された静電潜像に転写する(トナー現像する)ことにより、感光体ドラム32T上の所望の位置、すなわち各色の画像形成部30Y〜30Kにてカラー画像が形成される場所に対応する箇所に透明トナー画像20が形成される。
【0030】
感光体ドラム32Tと中間転写ベルト12を挟んで対向する位置に設けられた一次転写ロール31Tと、回転する感光体ドラム32Tと当接しながら図中白矢印のように駆動される中間転写ベルト12とのニップ位置において透明トナー画像20が感光体ドラム32Tから中間転写ベルト12に転写される。
【0031】
ここで、画像形成部30Tは他4色の画像形成部30よりも搬送方向上流側に設けられているため中間転写ベルト12表面に直接、透明トナー画像20が形成される。換言すれば透明トナー画像20の上にY〜Kの4色画像が形成される。
【0032】
図2、図3に示すように感光体ドラム32Tの表面に透明トナー画像20が形成されてから、中間転写ベルト12に転写された透明トナー画像20の上にY〜Kの4色画像が転写されるまでの間には帯電調整手段であるコロナ放電器39が設けられている。
【0033】
具体的には図2に示すように現像ユニット38Tと一次転写ロール31Tの間で感光体ドラム32Tの表面近傍、あるいは図3に示すように一次転写ロール31Tとのニップ位置より搬送方向下流側の中間転写ベルト12表面近傍、かつ中間転写ベルト12裏側に接地された金属ロール33が設けられた箇所にコロナ放電器39が設けられ、透明トナー画像20の上にY〜Kの4色画像が転写されるまでの間に透明トナー画像20の帯電量を調整する。
【0034】
一方、各画像形成部30Y〜30Kにおいて、帯電ロール34にて表面電位を印加された感光体ドラム32の表面には、露光装置としての光走査装置36によって入力画像に対応し変調された光が照射され、入力画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0035】
この静電潜像は、現像ユニット38上のトナー15を感光体ドラム32上に形成された静電潜像に転写する(トナー現像する)ことにより、感光体ドラム32上に各色のトナー画像が形成される。
【0036】
次いで感光体ドラム32上に形成されたトナー像はそれぞれ回転する感光体ドラム32と当接しながら図中白矢印のように駆動される中間転写ベルト12に転写され、Y〜Kの各色画像の転写位置を合わせることで最終的に4色のカラー画像が、中間転写ベルト12上の透明トナー画像20が形成された箇所に形成される。
【0037】
上記のカラー画像は転写ロール18にてニップ位置12Aで中間転写ベルト12とニップされた記録紙P上に転写され、搬送経路に沿って搬送された記録紙Pは定着器50にて熱溶着されたトナー画像が定着される。画像が形成された記録紙Pは機外に排紙され画像として出力される。
【0038】
画像の転写後の中間転写ベルト12の搬送方向下流側には中間転写ベルト12上を清掃するベルトクリーナ部70が設けられている。
【0039】
ベルトクリーナ部70は略コの字型断面をした箱形の部材であり、開口部70Aにて対向ロール13に巻き掛けられた中間転写ベルト12と接し、対向ロール13との間で中間転写ベルト12を挟む形で常時当接しながら表面を清掃するブレード72が設けられている。
【0040】
このブレード72が中間転写ベルト12上に残る、記録紙Pに転写し切れなかった残トナーなどをクリーニングする。ベルトクリーナ部70の内部下方には回収オーガが設けられ、ブレード72が掻き落としベルトクリーナ部70に回収した残トナーを図示しない回収部に向けて排出する。
【0041】
本発明において使用するトナーは透明トナー、有色トナーとも以下の条件によるものとする。(各トナーの製造方法は、特開平10−26842号公報[0019]〜[0067]項記載のトナー製造方法参照。)
上記の製造方法により作成した各色のトナー粒子は体積平均粒径、粒度分布がほぼ同じであり、コールターカウンター(コールター社製)で測定した体積平均粒径が3〜7umであることが好ましく、粒度分布指標(GSD)は1.23であった。
【0042】
トナーの形状は形状係数で表わし、光学顕微鏡(ミクロフォトFXA;ニコン社製)で得た該トナーの拡大写真を、イメージアナライザーLuzex3(NIRECO社製)により画像解析を行って次式により算出した値である。
【0043】
トナー形状係数は、トナーの投影面積と、それに外接する円の面積の比で表わしており、真球の場合100となり、形状が崩れるにつれ増加する。形状係数は、トナー粒子複数個に対して計算され、その平均値を代表値とする。本発明では、形状係数138以下のトナーを用いた。形状係数134以下のトナーを用いることがより好ましい。
【0044】
トナーの表面性は表面性指標値で表わし、BET法で測定た窒素吸着による比表面積値と粒度分布を加味した比表面積計算値から次式により算出した値である。
C={6Σ(n×R)}/{ρΣ(n×R)}
【0045】
ただし、n=コールターカウンターにおけるチャネル内の粒子数、R=コールターカウンターにおけるチャネル粒径、ρ=トナー密度である。本発明では、表面性指標9以下のトナーを用いた。好ましくは表面性指標5.1以下である。
【0046】
また、該トナーに平均粒径10〜150nmの、シリカおよびチタニア等の無機微粒子(外添剤)を適宜量外添し、平均粒径35μmのフェライトビーズからなるキャリアと混合し現像剤とした。
【0047】
トナーの平均帯電量は−15〜―60μC/gであり好ましくは−35〜―45μC/gである。
【0048】
尚、トナーとしては、本製造法により作成したトナー以外にも懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合法、混練粉砕法等により形成されたものを使用しても良いのは勿論である。
【0049】
<作用効果>
本発明は上記構成としたので、以下のような優れた効果を有する。
【0050】
すなわち、図2、図3に示すように透明トナー画像層20Aの上に有色トナー層21Aを重ねる工程の、搬送方向上流の中間転写ベルト12上または感光体ドラム32T上において、透明トナー画像層20Aの帯電量を調整する帯電調整手段であるところのコロナ放電器39が設けられたことにより、コロナ放電器39で透明トナー画像層20A界面の帯電量(エネルギーレベル、ポテンシャル)を変化させることができる。
【0051】
これにより図7に示すように、中間転写ベルト12上において破線で示した透明トナー画像層20Aと有色トナー層21Aとの界面の性質(界面表面性、界面吸着力など)を、透明トナー15Tの帯電量で異ならせることができる。
【0052】
例えば図3では中間転写ベルト12の表面側からマイナス帯電の透明トナー15T(透明トナー画像層20A)に対してマイナス放電を照射させることにより、トナー層の電位が均一化され動きにくくなる。この上に有色トナー層21Aを重ねて用紙Pへ転写すると、透明トナー画像層20Aと有色トナー層21Aとの層間で切断され易くなる。
【0053】
これにより、接触している透明トナー画像層20Aと有色トナー層21Aとの付着力を異なる状態にすることができるので、用紙Pへの転写時に透明トナー画像層20Aと有色トナー層21Aとの間で切断しやすくなる。透明トナー画像層20Aは一部が中間転写ベルト12上に残留するが、有色トナー層21Aは用紙P側に転写され、転写抜けが発生することはない。
【0054】
厚いエンボス紙を用紙Pとして用いた場合は、エンボス紙の凹凸などの転写電界が弱い箇所では所定量のトナーが転写不良となり、中間転写ベルト12側に残留してしまうが、上記のように透明トナー画像層20Aと有色トナー層21Aとの付着力、吸着力を断ち、トナー層間で切断しやすくすることで、一層目の透明トナー画像層20Aが犠牲となり、有色トナー層21Aの転写残留を減らすことができる。
【0055】
また、コロナ放電器39は画像形成部30T(透明トナーエンジン)にのみ設けてもよいし、あるいは全色の画像形成部30に設けた場合は、画像形成部30T(透明トナーエンジン)のコロナ放電器39の出力を他の色の画像形成部30のコロナ放電器39と変えることによって、透明トナー15Tの帯電量(エネルギーレベル)を他色のトナーと変えることもできる。
【0056】
あるいは現像ユニット38内において、透明トナー15Tと有色トナー15とで、現像剤中のトナー帯電量が異なる設定としてもよい。すなわち現像ユニット38内の仕込み設定において透明トナー15Tの帯電量(エネルギーレベル)を有色トナー15と変え、現像ユニット38T中での透明トナー15Tの帯電量を下げることにより、透明トナー15T間の電気的な結合を弱め、透明トナー画像層20A中で切断し易くすることができる。
【0057】
また転写できるトナーの量は帯電しているトナーの総電気量の合計であるため、透明トナー15Tの帯電量を減らせば、電気量あたりの透明トナー15Tの量を増やすことができ、中間転写ベルト12に残留するトナー中の透明トナー15Tの比率を上げる、つまり有色トナー15の転写不良を減らすことができる。
【0058】
さらに、同様にして現像剤中のトナー粒径、トナー形状、トナー帯電量、外添剤量のいずれかを変えることによって、中間転写ベルト12上でのトナー付着力を異ならせるようにしてもよい。
【0059】
<第2形態>
上記の第1形態で採用したように透明トナー15Tの帯電量を減らす代わりに、通常時よりも中間転写ベルト12上の有色トナー15の量を少なくしてもよい。
【0060】
すなわち局所的な深い凹部をもつエンボス紙など、凹部で転写不良が発生しやすい紙が用紙Pとして使用され、透明トナーモードが選択された際には、有色トナー層21Aを形成する有色トナー17の量、および総電荷量を下げることにより、有色トナー層21Aには用紙Pへの転写電界が十分に作用し、有色トナー層21Aの中間転写ベルト12への転写残留を抑えて、透明トナー画像層20Aとの界面で切断されやすくなる。
【0061】
具体的には、例えば有色トナー17のうち例えばYMC3色のトナーをK1色に置き換えることで有色トナー17の量を減らしてもよい。
【0062】
図8(A)に示すように、YMC3色の有色トナー17すなわちY1、M1、C1の合成色で再現される色を、図8(B)に示すようにY2、M2、C2に黒であるK2を加えることで置き換えることができる。
【0063】
これは等量の有色トナー17であるY3、M3、C3(破線で示した部分)で再現される色(灰色)を黒トナーの添加で代用し、破線で示した分の有色トナー17、すなわち、この「墨入れ」によってY3、M3、C3を削減することが可能となる。
【0064】
Y3+M3+C3=K2×3とすれば、再現すべき色によっては有色トナー17の量を最大1/3まで減らすことができる。「墨入れ」を行った場合は通常の画像形成時と比較して色味が異なり、色再現性、特に彩度に関してYMC3色をKで置き換えるため、必然的に各色のダイナミックレンジ(色域)が狭くなる虞がある。
【0065】
しかしエンボス紙など表面凹凸の多い用紙Pで、特にカラー画像の色再現性や色域よりも用紙の風合いを重要視する傾向があるため、用紙P表面で大きな凹みでの転写不良が改善できれば、大きな問題とはならない。
【0066】
<実験結果>
図4、図5には本発明の第1、第2実施形態に係る画像形成装置で作成されたトナー画像の、2種類のエンボス紙における画質評価結果が示されている。
【0067】
実験条件は、以下の通り。
【0068】
22℃、55%RH環境下で5色または4色タンデム形式のエンジン(画像形成部)構成機を用いて、エンボス紙への転写性を評価した。エンボス紙として一般的に広く用いられているレザック66シロ130k(151gsm)、レザック66シロ215k(250gsm)で評価を行い、単色(M)、2次色(RGB)、3次色(Y+M+C)をそれぞれ画像濃度10〜100%まで10%きざみに変化させた階調パターンチャートを用いた。また透明トナー層は任意の画像構造、トナー量で全面に形成されている。
【0069】
トナーは透明トナー、有色トナーともに形状係数132、平均粒径5.8um、平均帯電量35〜45μC/gの重合トナーを用いた。
【0070】
評価結果の○は全階調/全色で転写不良なし(エンボス紙凹部での白抜け目視許容レベル)、△は3次色で凹み部に転写不良発生するも実用上問題なし、×は転写不良発生(エンボス紙凹部で1〜3次色の白抜け発生)のため実用にならず。図5のグラフでは○を転写性0、△を転写性1、×を転写性2として縦軸で表した。
【0071】
比較例1はYMCK4色トナーによる画像形成であり、透明トナー15Tによる画像は形成していない。結果はエンボス紙に対して転写不良が発生しているため問題がある。
【0072】
比較例2は比較例1の構成に、1色目として透明トナー15Tを加えた5色構成であり、透明トナー15Tは透明トナー画像層20Aを形成している。しかし透明トナー15Tと有色トナー17との間で帯電量その他の条件に差を設けず、透明トナー画像層20Aと有色トナー層21Aとの界面で両者が切断されやすい構成にはなっていない。その結果、透明トナー層を用いない比較例1に比べて151gsmのエンボス紙転写性は改善するが、十分な効果を得るには至っていない。
【0073】
上記の各比較例に対して本願発明の各実施形態に係る実験結果は以下の通りである。
【0074】
(1)実施例1は1色目に透明トナー15Tを含む5色構成において、有色トナー17は平均帯電量35〜45μC/g、形状係数132、平均粒径5.8μmであるのに対して透明トナー15Tは平均帯電量25〜35μC/g、形状係数120(略球形形状)、平均粒径6.5μmとした。これは比較例2との比較となる。
【0075】
その結果、有色トナー17と透明トナー15Tの粒径、形状、帯電量が異なるため付着力に差が生じ、用紙Pへの転写時に両者の界面で切断が生じやすくなる。特に有色トナー17の平均帯電量35〜45μC/gに対して透明トナー15Tの平均帯電量は25〜35μC/gで小さく、透明トナー画像層20Aで切断が起こりやすいので、有色トナー画像21が犠牲になることなく、エンボス紙の深い凹部まで転写可能となる。
【0076】
(2)実施例2は1色目に透明トナー15Tを含む5色構成において、実施例1の構成に加えて、さらに有色トナー17の多重色量を上限200%とした。200%を越える分はYMC3色をK1色等量に置換する、いわゆる墨入れ補正を行った。
【0077】
その結果、有色トナー層21A中の有色トナー17の総量が低減したため、総電荷量も少なくなり、有色トナー層21Aには用紙Pへの転写電界が十分に作用するため透明トナー層20Aとの界面で切断されやすくなることで中間転写ベルト12側への転写残留を抑え、エンボス紙の深い凹部へも転写される。しかし坪量の大きいエンボス紙(250gsm)の凹部では転写電界も弱く、軽微な転写不良が発生した。
【0078】
(3)実施例3は1色目に透明トナー15Tを含む5色構成において、図3に示すように画像形成部30T(透明トナーエンジン)の搬送方向下流側かつ、画像形成部30(有色トナーエンジン)の上流側で、中間転写ベルト12裏面に対向し接地された金属ロール33を設けた位置に、コロナ放電器39(60μmワイヤー径、印加電圧DC−4kV、ACピークtoピーク3kV、AC周波数2kHz正弦波)が配置されている構成で評価を行った。
【0079】
その結果、透明トナー層20Aの界面の帯電量(エネルギーレベル、ポテンシャル)を変化させることによって、中間転写ベルト12上での両トナー界面の性質を異ならせることができた。中間転写ベルト12表面側からマイナス帯電の透明トナー15Tに対して、マイナス放電を照射させることにより、透明トナー層20Aの電位が均一化され動きにくくなる。その上に有色トナー層21Aを重ねて用紙Pへ転写すると、透明トナー層20Aと有色トナー層21Aとの層間で切断されやすくなる。これにより用紙Pへの転写性を改善することができた。また坪量の大きい厚紙エンボス紙(250gsm)などにも対応でき用紙汎用性を広げることができた。
【0080】
<その他>
以上、本発明の実施例について記述したが、本発明は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0081】
すなわち本実施形態ではYMCKの4色トナーを用いたカラー画像に透明トナーを加えた5色エンジンのタンデム構成を採用した画像形成装置を例に挙げたが、これに限定せず単色モノクロ画像形成装置や2色、3色または6色以上の画像形成装置に応用することもできる。
【0082】
あるいはタンデム式に限らず1基の感光体を用いるロータリ式、サイクル式エンジンを備えた画像形成装置に応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す概念図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成部を示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成部の変形例を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるエンボス紙への転写性を示す表である。
【図5】本発明の実施形態におけるエンボス紙への転写性を示すグラフである。
【図6】本発明における有色トナー/透明トナーの分離と転写を示す側面図である。
【図7】本発明における有色トナー/透明トナーの層構造と界面性質決定要因を示す側面図である。
【図8】本発明における有色トナーYMCをKで置き換えた際のトナー消費量を示す概念図である。
【符号の説明】
【0084】
10 画像形成装置
12A ニップ位置
12 中間転写ベルト(中間転写体)
12C 背景部
13 対向ロール
14 トナーカートリッジ
15T 透明トナー
17 有色トナー
20 透明トナー画像
20A 透明トナー層
21 有色トナー画像
21A 有色トナー層
30 画像形成部
31 一次転写ロール
32 感光体ドラム(感光体)
33 金属ロール
34 帯電ロール
36 光走査装置
38 現像ユニット
39 コロナ放電器(帯電調整手段)
50 定着器
70 ベルトクリーナ部
72 ブレード
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体表面上に画像露光することで露光静電画像として形成され、複数の現像器によりトナー画像が現像されたトナー画像が転写される中間転写体と、
前記中間転写体上にて、透明トナーにより形成された透明トナー画像層の上に有色トナーにより形成された有色トナー層が形成される透明トナーモードとを備え、
前記透明トナー画像層の付着力は前記有色トナー層の付着力よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記透明トナーは、前記有色トナーよりも帯電量が低いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記透明トナーモードを選択することにより、画像形成時に前記中間転写体へ転写される前記有色トナー量を少なくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記有色トナー層が黒色トナーを含む複数の有色トナー層から構成されるとき、
前記透明トナーモードを選択することにより、前記有色トナー層における前記黒色トナーの割合を高くすることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記有色トナー層が形成されるよりも搬送方向上流側において、
前記感光体上あるいは前記中間転写体上に形成された前記透明トナー層の帯電量を調整する帯電調整手段が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−25713(P2009−25713A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190862(P2007−190862)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】