説明

画像形成装置

【課題】加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿に対する描画部分の加熱消去処理を原稿の読み取り機能に付随して設けた加熱器と画像形成用の定着器を用いて行うことができる場合にそれらを効率良く使い分けることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿を加熱消去する消去モードが選択された場合に(S101;Yes)、画像形成装置のADF(自動原稿搬送装置)に設けられた加熱器と、画像形成装置内の定着器のうち、加熱消去処理を早く開始できる方を、両機器の温度(S103/S106)や、定着器によって定着処理が行われるジョブの実行状況(S107)に基づいて判断する。該処理を早く開始できると判断した方で該処理を行うため、ADFまたは画像形成装置の手差しトレイに原稿をセットする指示画面に表示して(S104/S108)、ユーザに報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に画像を形成する機能と原稿を光学的に読み取る機能を備えた画像形成装置に係り、特に、加熱されると無色化する塗料で描画された原稿を加熱して描画部分を消去する機能を付加した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
描画された用紙の描画部分を消去して用紙の再利用を図るために、一定温度以上に加熱されると無色化するインクを用いて用紙に描画し、その描画済み用紙を一定温度以上に加熱することで描画部分を消去する技術は知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、インクジェットプリンタの用紙収納部(給紙機構)に収納された上記の描画済み用紙を、プリンタヘッドへの搬送経路の途中に設けた加熱器で加熱することにより用紙上の描画部分を消去し、その用紙上にプリンタヘッドで新たに描画することにより用紙を再利用する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−302954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような無色化可能なインクで描画された用紙を加熱して描画部分を消去する構成は、原稿の読み取り機能を備えた画像形成装置であればその機能に適用することも可能である。たとえば、読み取り可能にセットされる原稿を加熱するための加熱器を画像形成装置に設け、そのセットされた原稿を読み取る動作と加熱器で加熱する動作とが切り替えられるように構成するなどすれば、無色化可能なインクで描画された原稿をセットして加熱器で加熱し描画部分を消去することができる。
【0006】
また、電子写真方式の画像形成装置であれば、画像形成過程で用紙に転写されたトナー像を加熱定着させる定着器(加熱定着器)を備えているので、上記の原稿を用紙収納部から定着器へ供給し、定着器で加熱して排出することにより、定着器を利用して描画部分を加熱消去することができる。
【0007】
このように、原稿の読み取り機能に付随して別途設けた加熱器と画像形成用の既設の定着器のいずれかを用いて、無色化可能なインクで描画された原稿(用紙)の加熱消去処理が行える構成の場合は、それらを効率良く使い分けることが望ましい。
【0008】
たとえば、画像形成装置による印刷実行後の間もないときに加熱消去処理を行うのであれば、加熱器を常温から昇温するよりも既に昇温されている定着器を用いた方が処理を早く開始でき、加熱器を昇温しなくてよいため消費電力も抑えられて効率的である。このような場合に加熱器を用いると、加熱器の昇温に掛かる準備時間(待機時間)が長くなって処理の開始が遅くなると共に、消費電力も増えて非効率的である。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿に対する描画部分の加熱消去処理を原稿の読み取り機能に付随して設けた加熱器と画像形成用の定着器を用いて行うことができる場合にそれらを効率良く使い分けることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]電子写真方式によって記録紙に画像を形成する画像形成装置であって、
原稿を光学的に読み取るための読取部と、
加熱されると無色化する塗料を用いて描画された描画部分を無色化させる所定温度で加熱して消去する加熱消去処理を前記原稿に対して行うための加熱器と、
紙媒体供給部から供給され前記電子写真方式による画像形成過程でトナー像が転写された記録紙を加熱して該記録紙に前記トナー像を定着させる定着処理と、加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿が紙媒体供給部から供給された場合は該原稿に対して前記加熱消去処理を行う定着器と、
操作部と、
報知部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記操作部を通じて前記加熱消去処理の開始指示を受け付けた場合に、前記加熱器と前記定着器のうち前記加熱消去処理を早く開始できると判断した方を前記報知部を通じて報知する
ことを特徴とする画像形成装置。
【0012】
上記発明では、画像形成装置は原稿を読取部で光学的に読み取ったり、紙媒体供給部から供給され電子写真方式による画像形成過程でトナー像が転写された記録紙を定着器で加熱してこの記録紙にトナー像を定着させたりすることができる(定着処理)。読取部にセットされた加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿に対しては、加熱器で所定温度に加熱し描画部分を無色化させて消去することができる(加熱消去処理)。この原稿が紙媒体供給部から定着器に供給された場合は、定着器で加熱消去処理を行うことができる。原稿を定着器に供給する紙媒体供給部は、記録紙を定着器に供給する紙媒体供給部と同じものでもよいし(共用紙媒体供給部)、異なるものでもよい(専用紙媒体供給部)。
【0013】
また、操作部を通じて加熱消去処理の開始指示を受け付けた場合には、加熱器と定着器のうち加熱消去処理を早く開始できると判断した方を報知部を通じて報知する。この報知部による報知は、たとえば、表示部による表示や音声出力部からの音声出力などによって行うことができる。報知を受けたユーザは、加熱消去処理を早く開始できる方を把握し、それに応じて画像形成装置に対する加熱消去処理対象の原稿のセットと加熱消去処理の実行指示などを行うことができる。
【0014】
これにより、原稿の読み取り機能に付随して設けた加熱器と画像形成用の定着器のうち開始待ち時間の短い方で加熱消去処理が行えるようになり、これに伴い加熱器または定着器の準備(昇温)に要する消費電力も抑えられるようになるため、それらを効率良く使い分けられるようになる。
【0015】
[2]前記制御部が前記判断を行うために用いる判断要素は、前記加熱器の温度と、前記定着器の温度と、前記定着器によって前記定着処理が行われるジョブの実行状況と、前記加熱器が実行した前記加熱消去処理の実行履歴と、前記定着器が実行した前記加熱消去処理の実行履歴とのうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【0016】
上記発明では、加熱消去処理を早く開始できるのが加熱器であるか定着器であるかの判断は、上記の複数の判断要素のうちの少なくとも1つを用いて行う。
【0017】
温度を用いる場合は、所定温度であるか否か、あるいは、所定温度まで昇温するのに要する時間などを把握できるようになり、精度の高い判断結果を下せるようになる。定着処理が行われるジョブの実行状況を用いる場合は、実行中や実行待ちの該ジョブがあるか否かなどに基づいて、定着器が加熱器よりも加熱消去処理を早く開始できるか否かを判断することができる。加熱消去処理の実行履歴を用いる場合は、実行後間もなければ機器は余熱で温まっているので、前回の実行終了時点からの経過時間に応じて加熱消去処理を早く開始できる方を判断することができる。定着処理が行われるジョブの実行状況や加熱消去処理の実行履歴では、温度を検出するための温度検出手段などが不要であるため構成を簡素化できる。
【0018】
[3]前記加熱器の温度を検出する加熱器温度検出部と、
前記定着器の温度を検出する定着器温度検出部とを備え、
前記制御部は、前記開始指示を受け付けた時点で前記加熱器温度検出部により検出された前記加熱器の温度から前記加熱器を前記所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間と、前記開始指示を受け付けた時点で前記定着器温度検出部により検出された前記定着器の温度から前記定着器を前記所定温度まで昇温するのに要する定着器昇温時間とを算出してこれらの時間を比較することにより前記判断を行う
ことを特徴とする[2]に記載の画像形成装置。
【0019】
上記発明では、加熱消去処理を早く開始できるのが加熱器であるか定着器であるかの判断は、加熱器および定着器の双方の温度を用いて行う。すなわち、加熱器の検出温度から判明する加熱器を所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間と、定着器の検出温度から判明する定着器を所定温度まで昇温するのに要する定着器昇温時間とを比較して判断する。このように両機器の検出温度に基づいた判断を行うことで、より精度の高い判断結果が得られる。
【0020】
[4]前記加熱器の温度を検出する加熱器温度検出部を備え、
前記制御部は、前記開始指示を受け付けた時点で前記加熱器温度検出部により検出された前記加熱器の温度から前記加熱器を前記所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間と、実行中または実行待ちの前記ジョブが完了するのに要する処理時間とを算出してこれらの時間を比較することにより前記判断を行う
ことを特徴とする[2]に記載の画像形成装置。
【0021】
上記発明では、加熱消去処理を早く開始できるのが加熱器であるか定着器であるかの判断は、加熱器の温度と、定着処理が行われるジョブの実行状況とを用いて行う。すなわち、加熱器の検出温度から判明する加熱器を所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間と、実行中または実行待ちの該ジョブが完了するのに要する処理時間とを比較して判断する。
【0022】
この場合は、定着器は実行中または実行待ちの該ジョブがあればそれを優先して実行し、そのジョブを完了するのに要する処理時間が加熱器昇温時間よりも短ければ、加熱器よりも加熱消去処理を早く開始できると判断され、該ジョブの実行完了後に定着器による加熱消去処理が実行される。これにより、実行中のジョブが中断されたり、実行待ちのジョブの開始が遅れたりすることが回避される。
【0023】
[5]給紙部にセットされた原稿を前記読取部が前記読み取りを行う読取位置および前記加熱器が前記加熱を行う加熱位置を通る搬送経路を通じて搬送し排紙部へ排出する自動原稿搬送装置を備える
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0024】
上記発明では、読取処理対象の原稿は、自動原稿搬送装置により給紙部から搬送経路を通じて自動搬送され、読取位置で読取部により読み取られて排紙部へ排出される。加熱消去処理対象の原稿は、自動原稿搬送装置により給紙部から搬送経路を通じて自動搬送され、加熱位置で加熱器により加熱されて排紙部へ排出される。これにより、読取処理や加熱消去処理における処理時間を短縮できると共にユーザの作業負担を軽減することができる。
【0025】
また、原稿を搬送しながら加熱することで、加熱器は原稿の搬送方向と直交する方向に沿った一次元などの小型の加熱器(ラインヒータなど)で構成することができる。さらに、原稿を搬送しながら読み取るための搬送系と、原稿を搬送しながら加熱するための搬送系とを共用できることにより、それらを個別に設ける場合に比べて装置全体を小型および簡素に構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の画像形成装置によれば、加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿に対する描画部分の加熱消去処理を原稿の読み取り機能に付随して設けた加熱器と画像形成用の定着器を用いて行うことができる場合に、開始待ち時間の短い方で加熱消去処理が行えるようになり、これに伴い加熱器または定着器の昇温に要する消費電力も抑えられるようになるため、それらを効率良く使い分けられるようになる。また、加熱消去処理を早く開始できることでユーザの利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の機構系の構成を示している。画像形成装置10は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得し、その画像データを保存したり外部端末へ送信したりするスキャン機能、原稿を読み取り、かつその読み取りで得た画像データに基づいて原稿の複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、外部端末から受信した印刷データをラスタライズして得た画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能などを備えた、所謂、複合機として構成されている。
【0029】
また、画像形成装置10は、加熱されると無色化する塗料で描画された原稿を加熱して描画部分を無色化し消去する加熱消去処理を行う機能を備えている。以下では、加熱されると無色化する塗料を「無色化塗料」と呼ぶ場合がある。また、原稿および記録紙は紙媒体に含まれる。
【0030】
画像形成装置10は、自動原稿搬送装置20(Auto Document Feeder;ADF)と、スキャナ部30と、プリンタ部40と、操作表示部12とを備えている。画像形成装置10のベース部はプリンタ部40によって構成され、プリンタ部40の上にスキャナ部30と自動原稿搬送装置20とが配設されている。
【0031】
図2は、自動原稿搬送装置20およびスキャナ部30を拡大して示している。自動原稿搬送装置20は、原稿Mの給紙部となる原稿給紙トレイ21と、原稿Mが搬送される搬送経路22と、原稿Mを搬送経路22を通じて搬送する搬送機構23と、原稿Mの排紙部となる原稿排紙トレイ24と、搬送経路22を搬送される原稿Mを加熱するための熱源26を有する加熱器25とを備えている。図示は省略するが、原稿Mの両面読み取りを行う際に原稿を表裏反転させるための反転経路およびその反転経路に原稿を送り込む反転機構も備えている。
【0032】
自動原稿搬送装置20の底板20aにおける一方の側端部寄り(図2では左側端部寄り)には、搬送経路22における原稿Mの搬送方向と直交する方向(図2では紙面の表裏方向)に沿った細長い開口形状のスリット27が形成されている。スキャナ部30には、スリット27に対応してコンタクトガラス32が設けられており、コンタクトガラス32の上面はスリット27を介して搬送経路22に露出されている。このスリット27から露出されたコンタクトガラス32の上面は、搬送経路22を搬送される原稿Mをスキャナ部30が読み取る読取位置Sとなっている。
【0033】
原稿給紙トレイ21は、読取位置Sとは反対側となる他方側(図2では右側)に設けられ、複数枚の原稿M(原稿束)が載置可能とされている。原稿排紙トレイ24は、原稿給紙トレイ21の下方に設けられている。
【0034】
搬送経路22は、原稿排紙トレイ24から読取位置S側へ延出され、読取位置Sの上方で原稿排紙トレイ24側へUターンするように屈曲されて読取位置Sを通過し原稿排紙トレイ24へと繋がる横向きU字形状の経路とされている。この搬送経路22における原稿給紙トレイ21から原稿排紙トレイ24までの経路部分は、図示しない通路部材によって形成されている。
【0035】
原稿Mは、表面(片面原稿の場合は描画面)を上に向けて原稿給紙トレイ21に載置され、原稿給紙トレイ21から原稿排紙トレイ24へ搬送される際に、搬送経路22における屈曲部から先の経路部分では表面が下向き(裏面が上向き)にされて搬送される。
【0036】
搬送機構23は、原稿Mを搬送するための複数のローラと、各ローラを回転駆動する複数のモータ(図示省略)などで構成されている。ローラの詳細は、原稿給紙トレイ21に載置された原稿Mの表面先端部に接触回転して最上の原稿Mから1枚ずつ分離して送り出す送り出しローラ23aと、搬送経路22に沿って所定の間隔で配設され、送り出しローラ23aによって送り出された原稿Mを回転挟持して搬送経路22の下流側(原稿排紙トレイ24側)へ搬送する複数対の搬送ローラ23bと、搬送経路22の下流側に配設され、搬送ローラ23bによって搬送経路22の下流側まで搬送された原稿Mを回転挟持して原稿排紙トレイ24へ排出する1対の排出ローラ23cと、読取位置Sに対応して配設され、読取位置Sを通過する原稿Mの裏面(背面)に接触回転しつつ原稿Mを読取位置Sのコンタクトガラス32へ押圧しその表面(描画面)をコンタクトガラス32の上面に密着させる読取ローラ23dなどである。
【0037】
加熱器25は、搬送経路22における読取位置Sの下流側(読取位置Sと原稿排紙トレイ24の間)に取り付けられている。加熱器25は、通電により内蔵の熱源26が発熱する電気式のラインヒータで構成されており、熱源26を搬送経路22側(上側)へ向けて原稿Mの搬送方向と直交する方向(図2では紙面の表裏方向)に沿った向きに配置されている。自動原稿搬送装置20においては、搬送経路22における加熱器25の上面部が、加熱器25が熱源26で原稿Mを加熱する加熱位置Hとなっている。この加熱器25は、搬送経路22を搬送される原稿Mに対して加熱消去処理を行う機能を果たす。
【0038】
自動原稿搬送装置20は、原稿の片面読み取りが行われる場合には、原稿給紙トレイ21にセットされた原稿を1枚ずつ送り出して搬送し、読取位置S(および加熱位置H)を通過させてスキャナ部30により表面の読み取りが済んだ原稿を原稿排紙トレイ24へ排出するように動作する。原稿の両面読み取りが行われる場合には、自動原稿搬送装置20は、読取位置Sを通過させてスキャナ部30により表面の読み取りが済んだ原稿を図示しない反転機構によって反転経路へ送り込み、反転経路を通じて表裏反転させた原稿を再び読取位置S(および加熱位置H)を通過させてスキャナ部30により裏面の読み取りが済んだ原稿を原稿排紙トレイ24へ排出するように動作する。加熱器25による加熱消去処理が行われる場合には、自動原稿搬送装置20は、原稿給紙トレイ21にセットされた処理対象の原稿を1枚ずつ送り出して搬送し加熱位置H(および読取位置S)を通過させて原稿排紙トレイ24へ排出するように動作する。
【0039】
スキャナ部30は、自動原稿搬送装置20によって搬送される原稿を読取位置Sで光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす(読取処理)。
【0040】
スキャナ部30は上面部に、原稿が載置されるプラテンガラス31が設けられ、プラテンガラス31の側方に位置する上述の読取位置Sにコンタクトガラス32が設けられている。内部には、背面反射板を有する光源33とその照明光による原稿Mからの反射光Lを反射するミラー34とを備えた原稿照明部35と、原稿照明部35をプラテンガラス31の下面に沿って矢印Xで示す副走査方向(図2では画像形成装置10の幅方向となる左右方向)に往復移動させる図示しない移動機構と、原稿からの反射光Lを受光しその光強度に応じた電気信号(アナログ画像信号)を出力するラインイメージセンサ36と、原稿照明部35のミラー34で反射された反射光Lをラインイメージセンサ36へ導くための光路を形成する複数の反射ミラー37と、反射ミラー37によって導かれた反射光Lをラインイメージセンサ36へ集光する集光レンズ38とが設けられている。
【0041】
スキャナ部30による原稿読み取り動作は、以下のようになっている。
【0042】
プラテンガラス31上に載置された原稿を読み取る場合には、原稿照明部35が光源33を点灯させプラテンガラス31の下面に沿って副走査方向(矢印X方向)へ移動しながら原稿を照明する。この移動する原稿照明部35に走査照明された原稿の反射光Lを、ミラー34、反射ミラー37、および集光レンズ38を介してラインイメージセンサ36が受光し、原稿の画像を2次元画像として読み取る。
【0043】
自動原稿搬送装置20によって送り込まれた原稿を読み取る場合には、原稿照明部35がコンタクトガラス32の下方へ移動して停止し、光源33を点灯させて読取位置Sを搬送方向(副走査方向)へ通過移動する原稿を照明する。この移動する原稿の反射光Lを、ミラー34、反射ミラー37、および集光レンズ38を介してラインイメージセンサ36が受光しライン単位に繰り返し読み取って、原稿の画像を2次元画像として読み取る。
【0044】
またスキャナ部30は、ラインイメージセンサ36の出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換して出力するようになっている。
【0045】
図1に示すプリンタ部40は、入力された画像データに対応する画像を電子写真方式の画像形成過程(画像形成プロセス)で記録紙上に形成するレーザープリンタで構成されている。プリンタ部40は、画像形成装置10がコピー機能やプリンタ機能で動作する際に(コピージョブやプリントジョブを実行する際に)記録紙に画像を印刷して出力する機能を果たす。
【0046】
プリンタ部40は、画像形成に係る構成として、回転可能に支持された円筒状の感光体ドラム41と、帯電装置42と、レーザーユニット43と、現像装置44と、転写装置45、分離装置46、クリーニング装置47と、定着器48とを備えている。記録紙の供給・搬送・排出に係る構成として、記録紙を積載収納な複数の給紙ユニット50(給紙装置)と、記録紙が手差しされる手差しトレイ51(手差し給紙装置)と、記録紙の搬送装置52および反転装置53と、反転切替ガイド54と、排出切替ガイド55と、記録紙が排出される第1排紙トレイ56および第2排紙トレイ57とを備えている。複数の給紙ユニット50は、本例では3段設けられており、各々サイズの異なる記録紙Pが収納可能とされている。
【0047】
プリンタ部40による画像形成過程(画像形成動作)は、以下のようになっている。
【0048】
画像形成動作が開始されると、感光体ドラム41はモータなどの図示しない駆動源により一定方向(矢印A方向)へ回転駆動される。帯電装置42は、回転する感光体ドラム41の表面を一様に帯電する。
【0049】
レーザーユニット43は、画像データに応じて発光制御(オン/オフ制御)したレーザビームを帯電された感光体ドラム41の表面に照射し、ドラム表面をレーザビームで走査露光してドラム表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置44は、感光体ドラム41の表面にトナーを供給して静電潜像を顕像化しトナー像を形成する。
【0050】
このトナー像は、感光体ドラム41の回転に伴い、感光体ドラム41の表面が記録紙と接触する転写位置Tへ搬送される。
【0051】
転写装置45は、転写位置Tを通過する記録紙に対して転写電圧を印加し、感光体ドラム41の表面から記録紙へトナー像を静電吸着させて転写する。分離装置46は、トナー像が転写された記録紙に分離電圧を印加し、記録紙に発生した静電吸着力を低下させて感光体ドラム41から記録紙を分離しやすくする。クリーニング装置47は、感光体ドラム41の表面に接触する除電ローラとブレードを備え、除電ローラが感光体ドラム41に残留している電荷を除去し、ブレードが感光体ドラム41に残留しているトナー(転写残トナー)を掻き落としてクリーニングし装置内に回収する。
【0052】
トナー像が転写されて感光体ドラム41から分離された記録紙は、定着器48へ搬送される。
【0053】
定着器48は、本例では上下に対向配置されて機器本体(ケーシング)に回転可能に支持された一対の定着ローラと、定着ローラの一方を回転駆動するモータなどの図示しない駆動源とを備えている。定着ローラは、発熱する加熱ローラと、加熱ローラに圧接する加圧ローラとで構成され、駆動源により一方が回転駆動されて他方が従動回転する。
【0054】
定着器48は、トナー像の転写された記録紙が一対の定着ローラの間に案内され、その記録紙を一対の定着ローラが回転してニップ搬送しながら加熱および加圧することにより、トナー像を記録紙上に定着する(定着処理)。
【0055】
給紙ユニット50からの給紙時には、給紙ユニット50は、積載収納されている記録紙Pを送り出しローラ50aが1枚ずつ搬送装置52に送り出す。手差しトレイ51からの給紙時には、手差しトレイ51は、手差しされた記録紙を送り出しローラ51aが1枚ずつ搬送装置52に送り出す。この給紙ユニット50と手差しトレイ51には、記録紙の他に、加熱されると無色化する塗料で描画された原稿などをセットすることもできる。
【0056】
搬送装置52は、給紙ユニット50や手差しトレイ51から送り込まれた記録紙を搬送ローラが搬送して、感光体ドラム41からトナー像が転写される転写位置Tおよび定着器48を通過させ、定着器48から送り出された記録紙(印刷物)を第1排紙トレイ56または第2排紙トレイ57に排出する、あるいは、反転装置53に送り出す。
【0057】
反転切替ガイド54は、図示しないバネにより付勢されて記録紙を排紙トレイ側へ案内する図中の実線で示した非反転位置(排出位置)に保持されている。図示しないソレノイドが通電駆動されると、反転切替ガイド54は上記バネの付勢力に抗してソレノイドにより駆動され、記録紙を反転装置53側へ案内する図中の破線で示した反転位置に変位される。定着器48から送り出された記録紙は、この反転切替ガイド54の位置に応じて排紙トレイ側または反転装置53側へ案内される。
【0058】
記録紙の片面(表面)のみに画像が形成される片面印刷時には、ソレノイドが駆動されずに反転切替ガイド54は非反転位置に保持される。この場合は、定着器48から送り出された片面印刷済みの記録紙は、反転切替ガイド54によって排紙トレイ側へ案内される。
【0059】
記録紙の両面(表裏面)に画像が形成される両面印刷時には、片面(表面)に画像が形成されて定着器48から送り出される記録紙が反転切替ガイド54に至る前の所定のタイミングでソレノイドが駆動され、反転切替ガイド54は反転位置に変位される。この場合は、定着器48から送り出された片面印刷済みの記録紙は、反転切替ガイド54によって反転装置53側へ案内される。また、この記録紙が反転切替ガイド54を通過するとソレノイドが駆動解除され、反転切替ガイド54は非反転位置に戻される。
【0060】
反転装置53は、送り込まれた片面印刷済みの記録紙を搬送ローラが排出方向とは逆方向へUターンおよび途中でスイッチバックさせて搬送し、記録紙の表裏および前後(先端/後端)を反転させて搬送装置52における転写位置Tの上流側に送り出す。搬送装置52は、上記のように反転されて送り込まれた片面印刷済みの記録紙を搬送して再び転写位置Tおよび定着器48を通過させる。この再通過時に片面印刷済みの記録紙は、未印刷面である裏面に感光体ドラム41が回転接触してトナー像が転写され、そのトナー像が定着器48による定着処理で裏面に加熱定着される。
【0061】
このようにして両面に画像形成が形成された両面印刷済みの記録紙は、定着器48から送り出されると、非反転位置に戻っている反転切替ガイド54によって排紙トレイ側へ案内される。
【0062】
排出切替ガイド55は、図示しないバネにより付勢されて、通常は記録紙を第1排紙トレイ56側へ案内する図中の実線で示した第1案内位置に保持されている。図示しないソレノイドが通電駆動されると、排出切替ガイド55は上記バネの付勢力に抗してソレノイドにより駆動され、記録紙を第2排紙トレイ57側へ案内する図中の破線で示した第2案内位置に変位される。反転切替ガイド54によって排出側へ案内された印刷済の記録紙は、この排出切替ガイド55の位置に応じて第1排紙トレイ56側または第2排紙トレイ57側へ案内されて排出される。
【0063】
また、プリンタ部40の定着器48は、加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿が供給された場合はその原稿に対して加熱消去処理を行う機能を果たす。処理対象の原稿は、複数の給紙ユニット50および手差しトレイ51のいずれかにセットすることで給紙可能である。ただし、本実施の形態では手差しトレイ51から給紙されるようになっている。また、処理済みの原稿は印刷済みの記録紙と同様に第1排紙トレイ56または第2排紙トレイ57に排出される。この排出先は予め決められていてもよいし、ユーザが選択できるように構成されてもよい。
【0064】
図3は、画像形成装置10の制御系の構成を示している。
【0065】
画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を統括制御する制御部11に、操作表示部12と、通信部13と、画像記憶部14と、自動原稿搬送装置20と、スキャナ部30と、プリンタ部40とを接続して構成される。
【0066】
制御部11は、図示省略のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリなどを主要部として構成されている。ROMには各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPUが処理を実行することにより画像形成装置10としての各機能が実現される。RAMはCPUがプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリとして使用される。不揮発メモリには、電源がオフしても保存しておくべきユーザ情報や各種の設定情報、加熱消去処理および定着処理に係る情報(温度情報/昇温時間情報)などが記憶される。
【0067】
操作表示部12は、各種の操作画面や設定画面、選択画面、案内画面、指示画面などを表示する機能、およびユーザから各種の操作を受ける機能を果たす。ここでは、表示機能を担う液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)と、該液晶ディスプレイの表面に形成され、押下された座標位置を検出するタッチパネルや、テンキー、スタートボタン、各種操作スイッチなどで構成される。
【0068】
通信部13は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークと接続してネットワーク上の各種装置と通信する機能を果たす。たとえば、スキャナ部30で読み取って得た画像データを外部端末へ送信する場合や外部端末から印刷データを受信する場合に使用される。
【0069】
画像記憶部14は、スキャナ部30で読み取って得た画像データの保存などに使用される不揮発の大容量記憶装置である。ここでは、画像記憶部14は、ハードディスク装置とそのコントローラで構成される。
【0070】
自動原稿搬送装置20は、図2で説明した原稿給紙トレイ21、搬送経路22、搬送機構23、原稿排紙トレイ24、熱源26を有する加熱器25などの他に、加熱器25の熱源26の温度を検出する温度センサ28を備えている。温度センサ28により検出された温度を示す温度情報は制御部11に入力される。
【0071】
制御部11は、加熱器25で加熱消去処理を行う場合に、熱源26が所定温度でなければ熱源26をその温度に昇温するように加熱器25に通電制御を行う。所定温度は、加熱されると無色化する塗料で描画された原稿が加熱器25の熱源26上(加熱位置H)を通過する際に、熱源26がその原稿を加熱して描画部分を無色化し消去することができる温度であり、加熱消去処理における加熱温度である。この所定温度(加熱温度)を示す温度情報は、制御部11の不揮発メモリに記憶されている。
【0072】
図示は省略するが、原稿給紙トレイ21には、原稿の有無、および載置されている原稿のサイズを検出するための複数の原稿センサが設けられている。搬送経路22および反転経路(図示省略)には、各経路を搬送される原稿を検出するための複数の検出センサが所定の間隔で設けられている。原稿センサおよび検出センサが出力する信号(オン/オフ信号)は制御部11に入力される。
【0073】
制御部11は、原稿センサからの信号に基づいて、原稿給紙トレイ21上の原稿の有無、および原稿のサイズを認識し、検出センサからの信号に基づいて、搬送経路22および反転経路における原稿の搬送位置や詰まり(ジャム)を認識し、これらの認識結果に応じて自動原稿搬送装置20の原稿に対する搬送動作や表裏反転動作、および、自動原稿搬送装置20により自動搬送される原稿に対するスキャナ部30の読み取り動作などを制御する。
【0074】
スキャナ部30の構成および機能は図2で説明した通りである。スキャナ部30が備える原稿照明部35の光源33と、ラインイメージセンサ36と、原稿照明部35の移動機構(図示省略)などは、原稿の読み取り動作時に制御部11によって動作が制御される。
【0075】
プリンタ部40は、図1で説明した給紙ユニット50、手差しトレイ51、第1排紙トレイ56、第2排紙トレイ57、定着器48などの他に、定着器48の加熱ローラ(定着ローラ)の温度を検出する温度センサ49を備えている。温度センサ49により検出された温度を示す温度情報は制御部11に入力される。
【0076】
制御部11は、プリンタ部40による画像形成に伴い定着器48で定着処理を行う場合に、加熱ローラが所定の定着温度でなければ加熱ローラをその温度に昇温するように定着器48に通電制御を行う。この所定の定着温度を示す温度情報は、制御部11の不揮発メモリに記憶されている。
【0077】
制御部11は、定着器48で加熱消去処理を行う場合に、加熱ローラが所定温度でなければ加熱ローラをその温度に昇温するように定着器48に通電制御を行う。この所定温度は、上述した加熱器25で加熱消去処理を行う際の所定温度(加熱温度)と同じ温度であり、ここでは、加熱されると無色化する塗料で描画された原稿が定着器48を通過する際に、加熱ローラ(定着ローラ)がその原稿を加熱して描画部分を無色化し消去することができる温度となる。なお、加熱消去処理における所定温度(加熱温度)は、加熱器25と定着器48とで異なる温度に設定するようにしてもよい。
【0078】
加熱消去処理における所定温度(加熱温度)は、定着処理における所定の定着温度よりも低くされている。たとえば、前者は60℃などであり、後者は120℃などである。
【0079】
制御部11は、操作表示部12を通じて加熱消去処理の開始指示を受け付けた場合に、加熱器25と定着器48のうち該処理を早く開始できると判断した方を操作表示部12に表示してユーザに報知(通知)する機能を果たす。制御部11がこの判断を行うために用いる判断要素は、本実施の形態では、加熱器25(熱源26)の温度と、定着器48(加熱ローラ)の温度と、定着器48によって定着処理が行われるコピージョブやプリントジョブの実行状況となっている。
【0080】
次に、画像形成装置10による原稿の読取処理および加熱消去処理の動作を説明する。
【0081】
図4は、画像形成装置10の操作表示部12に表示される、読み取りジョブ(コピージョブ)を設定するための読取設定画面60を示している。操作表示部12への表示内容は制御部11によって制御される。
【0082】
読取設定画面60には、スキャン設定61、読込設定62、拡大縮小63、紙サイズ64に分類されてそれらの詳細な項目を選択・設定するための操作ボタンが表示される。
【0083】
スキャン設定61には、原稿の読み取りを片面(表面)のみまたは両面(表裏面)とし、その読み取った原稿における複製画像の記録紙への印刷を片面(表面)のみまたは両面(表裏面)とする4通りの組み合わせ、すなわち、片面読み取り片面印刷、片面読み取り両面印刷、両面読み取り片面印刷、両面読み取り両面印刷、を選択するための4つの操作ボタンが表示される。
【0084】
読込設定62には、加熱消去処理を行わずに原稿を読み取る通常読み取りモードを選択するための通常読込ボタン65と、原稿を読み取らずに加熱消去処理を行う消去モードを選択するための消去ボタン66とが表示される。
【0085】
このほか、読込設定62には、読み取った原稿に対する拡大縮小に関する設定を行うための操作ボタンが表示され、紙サイズ64には、読み取った原稿をコピー機能によって印刷出力する際の記録紙のサイズを選択するための操作ボタンが表示される。
【0086】
ユーザは、この読取設定画面60を通じて読み取りジョブ(コピージョブ)の各種設定を行う。また、原稿(無色化塗料で描画された原稿を含む)の読み取りを行う場合には、通常読込ボタン65を押下して通常読み取りモードを選択する。無色化塗料で描画された原稿に対する加熱消去処理を行う場合には、消去ボタン66を押下して消去モードを選択する。
【0087】
図5〜図7は、画像形成装置10が行う原稿の読取処理および加熱消去処理の動作の流れを示している。詳細には、図5がメインルーチンの流れを示しており、図6および図7がメインルーチンにおける加熱消去処理の選択判断・実行処理のサブルーチンの流れを示している。
【0088】
本動作においては、加熱消去処理を加熱器25と定着器48のいずれで行うかを判断するが(選択判断)、本実施の形態では、基本的には定着器48よりも加熱器25を優先させるようにしている。すなわち、加熱消去処理の開始指示を受けた時点で、加熱器25が所定温度であれば加熱器25で加熱消去処理を行うように判断し、加熱器25が所定温度でなければ他の条件で判断するようにしている。
【0089】
ユーザが読取設定画面60(図4参照)にて通常読み取りモードの選択操作および各種設定操作を行い、自動原稿搬送装置20の原稿給紙トレイ21に原稿をセットして操作表示部12のスタートボタンを操作する(読取処理の開始指示)、または、読取設定画面60にて消去モードの選択操作および開始操作(加熱消去処理の開始指示)を行うと、制御部11は本動作を開始する(Start)。
【0090】
制御部11は、消去モードが選択されているか否かを調べ(ステップS101)、消去モードが選択されておらずに通常読み取りモードがされている場合には(ステップS101;No)、自動原稿搬送装置20の原稿給紙トレイ21にセットされている原稿の読み取りを行う(ステップS102)。
【0091】
詳細には、自動原稿搬送装置20が原稿給紙トレイ21に載置されている1または複数枚の原稿のうちの最上の1枚を送り出し、搬送経路22を通じて原稿排紙トレイ24へ排出すると共に、その原稿が読取位置Sを通過する際にスキャナ部30がライン単位の読み取りを繰り返し行って2次元画像の画像データを取得し、その画像データを制御部11が画像記憶部14に保存する。また、両面読み取りが設定されている場合には、片面(表面)の読み取りが済んだ原稿を自動原稿搬送装置20が表裏反転させて読取位置Sを通過させ、その原稿が読取位置Sを通過する際にスキャナ部30が原稿裏面のライン単位の読み取りを繰り返し行って2次元画像の画像データを取得し、その画像データを制御部11が画像記憶部14に保存する。
【0092】
原稿給紙トレイ21にセットされている全ての原稿の読み取りを完了すると、制御部11は本動作を終了する(End)。
【0093】
消去モードが選択されている場合には(ステップS101;Yes)、制御部11は温度センサ28から入力される温度情報より加熱器25が所定温度であるか否かを確認する(ステップS103)。所定温度は、前述したように、無色化塗料で描画された原稿を加熱して描画部分を無色化し消去することができる温度であり、加熱消去処理における加熱温度である。
【0094】
加熱器25による加熱消去処理の実行後間もないときなどには、その実行時に所定温度に昇温された加熱器25は余熱によって温度が維持されている場合がある。加熱器25が所定温度である場合には(ステップS103;Yes)、制御部11は加熱器25で加熱消去処理を行う決定を下し、自動原稿搬送装置20に処理対象の原稿をセットすることを指示する画面を操作表示部12に表示して、自動原稿搬送装置20の加熱器25で加熱消去処理を行うことをその画面を通じてユーザに報知する(ステップS104)。
【0095】
図8は、上記のステップS104にて操作表示部12に表示される指示画面70の一例を示している。
【0096】
指示画面70には、加熱消去処理の対象となる原稿(消去原稿)を自動原稿搬送装置20(ADF)にセットすることを指示するメッセージ71と、その原稿をセットする様子を模式的に示したイメージ図72と、加熱消去処理を実行するための消去実行ボタン73とが表示される。
【0097】
ユーザが指示画面70によるメッセージ71に従い、加熱消去する原稿を自動原稿搬送装置20の原稿給紙トレイ21にセットし、消去実行ボタン73を押下すると(図5に戻る)、制御部11は自動原稿搬送装置20による原稿の自動搬送を開始して加熱器25による原稿の加熱消去処理を実行する(ステップS105)。また制御部11は、加熱消去処理の実行中は温度センサ28から入力される温度情報を監視して、加熱器25が所定温度を下回らないように加熱器25の通電制御を行う。
【0098】
これにより、自動原稿搬送装置20によって搬送される原稿は(図2参照)、加熱位置Hを通過する際に加熱器25の熱源26により加熱され、無色化塗料で描画された描画部分が消去されて原稿排紙トレイ24に排出される。
【0099】
原稿給紙トレイ21にセットされた全ての原稿に対する加熱消去処理が完了すると、制御部11は本動作を終了する(End)。
【0100】
加熱器25が所定温度でない場合には(ステップS103;No)、制御部11は温度センサ49から入力される温度情報より定着器48が所定温度以上であるか否かを確認する(ステップS106)。定着器48によって定着処理が行われるコピージョブやプリントジョブの実行後間もないときなどには、その実行時に所定の定着温度に昇温された定着器48は余熱によって加熱消去処理を行うための所定温度以上に維持されている場合がある。
【0101】
定着器48が所定温度以上である場合には(ステップS106;Yes)、制御部11は実行中や実行待ち(待機中)のコピー/プリントジョブがあるか否かを確認する(ステップS107)。このようなジョブがない場合には(ステップS107;No)、制御部11は定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できると判断し、手差しトレイ51に処理対象の原稿をセットすることを指示する画面を操作表示部12に表示して、プリンタ部40の定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できるので定着器48で加熱消去処理を行うことをその画面を通じてユーザに報知する(ステップS108)。
【0102】
図9は、上記のステップS108にて操作表示部12に表示される指示画面80の一例を示している。
【0103】
指示画面80には、定着器48が十分温まっているので加熱消去処理の対象となる原稿(消去原稿)を手差しトレイ51にセットすることを指示するメッセージ81と、その原稿をセットする様子を模式的に示したイメージ図82と、加熱消去処理を実行するための消去実行ボタン83とが表示される。
【0104】
ユーザが指示画面80によるメッセージ81に従い、加熱消去する原稿を手差しトレイ51にセットし、消去実行ボタン83を押下すると(図5に戻る)、制御部11は手差しトレイ51による原稿の自動給紙を開始して定着器48による原稿の加熱消去処理を実行する(ステップS109)。また制御部11は、加熱消去処理の実行中は温度センサ49から入力される温度情報を監視して、定着器48が所定温度を下回らないように定着器48の通電制御を行う。
【0105】
これにより、手差しトレイ51から給紙される原稿は(図1参照)、定着器48を通過する際に定着器48の加熱ローラにより加熱され、無色化塗料で描画された描画部分が消去されて第1排紙トレイ56(または第2排紙トレイ57)に排出される。
【0106】
手差しトレイ51にセットされた全ての原稿に対する加熱消去処理が完了すると、制御部11は本動作を終了する(End)。
【0107】
定着器48が所定温度以上でない場合には(ステップS106;No)、制御部11は加熱消去処理の選択判断・実行処理1を図6に示すサブルーチンにて行い(ステップS110)、本動作を終了する(End)。実行中や実行待ちのコピー/プリントジョブがある場合には(ステップS107;Yes)、制御部11は加熱消去処理の選択判断・実行処理2を図7に示すサブルーチンにて行い(ステップS111)、本動作を終了する(End)。
【0108】
加熱消去処理の選択判断・実行処理1では(図6参照)、制御部11は加熱器25を所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間を算出し(ステップS121)、定着器48を所定温度まで昇温するのに要する定着器昇温時間を算出する(ステップS122)。
【0109】
算出方法は、たとえば、加熱器25と定着器48の各々について、単位温度(たとえば1℃)を昇温するのに要する時間(単位温度昇温時間)を予め計算または測定によって求め、その計算値(理論値)または測定値(実測値)を示す昇温時間情報(単位温度昇温時間情報)を予め制御部11の不揮発メモリに記憶しておき、所定温度から現在の検出温度を差し引いた差分温度(必要昇温温度)に上記の単位温度昇温時間を乗算するなどして算出することができる。現在の検出温度は、加熱消去処理の開始指示を受け付けた時点での検出温度であり、図5で説明したステップS103による加熱器25の検出温度、および、ステップS106による定着器48の検出温度である。
【0110】
具体的には、加熱器25は昇温1℃当たり0.1秒掛かり、定着器48は昇温1℃当たり0.5秒掛かる場合は、加熱器25については単位温度昇温時間として0.1秒を示す情報を記憶し(加熱器単位温度昇温時間:0.1秒/℃)、定着器48については単位温度昇温時間として0.5秒を示す情報を記憶しておく(定着器単位温度昇温時間:0.5秒/℃)。
【0111】
加熱消去処理を行うための所定温度(加熱温度)が60℃であり、常温下にある画像形成装置10で加熱消去処理および定着処理が行われない状態が長く続くなどし、加熱器25および定着器48ともに検出温度が20℃である場合には、加熱器昇温時間と定着器昇温時間は以下のように算出される。
【0112】
加熱器昇温時間:(60℃−20℃)×0.1(秒/℃)=4秒
定着器昇温時間:(60℃−20℃)×0.5(秒/℃)=20秒
【0113】
制御部11は、算出した加熱器昇温時間と定着器昇温時間とを比較し、加熱器昇温時間が定着器昇温時間よりも短い場合は(ステップS123;Yes)、加熱器25の方が加熱消去処理を早く開始できると判断する。そして、図5のステップS104と同じく、自動原稿搬送装置20に処理対象の原稿をセットすることを指示する画面を操作表示部12に表示し(図8参照)、加熱器25の方が加熱消去処理を早く開始できるので加熱器25で加熱消去処理を行うことをその画面を通じてユーザに報知する(ステップS124)。
【0114】
加熱消去する原稿をユーザが自動原稿搬送装置20の原稿給紙トレイ21にセットし、加熱消去処理の実行操作(消去実行ボタン73の押下操作)を行うと、制御部11は加熱器25を所定温度に昇温する通電制御を開始する(ステップS125)。温度センサ28から入力される温度情報により加熱器25の温度を監視して(ステップS126;No)、加熱器25が所定温度に達したと判断すると(ステップS126;Yes)、制御部11は図5のステップS105と同じく、自動原稿搬送装置20による原稿の自動搬送を開始して加熱器25による原稿の加熱消去処理を実行する(ステップS127)。処理が実行完了すると本サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る(Return)。
【0115】
加熱器昇温時間が定着器昇温時間と同じかそれよりも長い場合は(ステップS123;No)、制御部11は定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できると判断する。そして、図5のステップS108と同じく、手差しトレイ51に処理対象の原稿をセットすることを指示する画面を操作表示部12に表示し(図9参照)、定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できるので定着器48で加熱消去処理を行うことをその画面を通じてユーザに報知する(ステップS128)。
【0116】
加熱消去する原稿をユーザが手差しトレイ51にセットし、加熱消去処理の実行操作(消去実行ボタン83の押下操作)を行うと、制御部11は定着器48を所定温度に昇温する通電制御を開始する(ステップS129)。温度センサ49から入力される温度情報により定着器48の温度を監視して(ステップS130;No)、定着器48が所定温度に達したと判断すると(ステップS130;Yes)、制御部11は図5のステップS109と同じく、手差しトレイ51からの原稿の自動給紙を開始して定着器48による原稿の加熱消去処理を実行する(ステップS131)。処理が実行完了すると本サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る(Return)。
【0117】
加熱消去処理の選択判断・実行処理2では(図7参照)、制御部11は、図6のステップS121と同じく、加熱器25を所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間を算出する(ステップS141)。また、実行中や実行待ちのコピー/プリントジョブを実行完了する(定着処理が完了する)のに要する処理時間を算出する(ステップS142)。
【0118】
処理時間の算出方法は、コピー/プリントジョブに含まれている印刷枚数の情報から現時点(算出時点)で残っている印刷枚数を調べ、この残り印刷枚数を画像形成装置10の印刷速度(1分間当たりの印刷可能枚数(枚/分))で除算するなどして算出することができる。たとえば、印刷速度が60枚/分で残り印刷枚数が15枚の場合には、処理時間は以下のように算出される。
【0119】
処理時間:15枚÷60枚/分=15秒(0.25分)
【0120】
制御部11は、算出した加熱器昇温時間とジョブの処理時間とを比較し、加熱器昇温時間がジョブの処理時間よりも短い場合は(ステップS143;Yes)、加熱器25の方が加熱消去処理を早く開始できると判断する。そして、図6のステップS124〜ステップS127と同じ内容のステップS144〜ステップS147を行い、本サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る(Return)。
【0121】
加熱器昇温時間がジョブの処理時間と同じかそれよりも長い場合は(ステップS143;No)、制御部11は定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できると判断する。そして、図5のステップS108および図6のステップS128と同じく、手差しトレイ51に処理対象の原稿をセットすることを指示する画面を操作表示部12に表示し(図9参照)、定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できるので定着器48で加熱消去処理を行うことをその画面を通じてユーザに報知する(ステップS148)。
【0122】
加熱消去する原稿をユーザが手差しトレイ51にセットし、加熱消去処理の実行操作(消去実行ボタン83の押下操作)を行うと、制御部11は実行中や実行待ちのコピー/プリントジョブの実行が完了するのを監視する(ステップS149;No)。該ジョブが実行完了すると(ステップS149;Yes)、制御部11は図5のステップS109および図6のステップS131と同じく、手差しトレイ51からの原稿の自動給紙を開始して定着器48による原稿の加熱消去処理を実行する(ステップS150)。処理が実行完了すると本サブルーチンを終了してメインルーチンに戻る(Return)。
【0123】
以下に、図5〜図7で説明した加熱消去処理の選択判断に用いる各種条件項目の一例と、その条件項目例における4つのケースの判断結果例を示す。
【0124】
[条件項目]
・加熱消去処理を行う温度:60℃
・加熱器単位温度昇温時間:0.1秒/℃
・定着器単位温度昇温時間:0.5秒/℃
・画像形成装置の印刷速度:60枚/分
【0125】
[ケース1]
−画像形成装置の状態−
・加熱器の温度:20℃
・定着器の温度:20℃
・実行中/実行待ちジョブ:なし
◇計算内容(図6のステップS121およびステップS122)
・加熱器昇温時間:(60℃−20℃)×0.1(秒/℃)=4秒
・定着器昇温時間:(60℃−20℃)×0.5(秒/℃)=20秒
◆判断結果⇒昇温時間の短い加熱器で加熱消去処理を実行(ステップS123;Yes)
【0126】
[ケース2]
−画像形成装置の状態−
・加熱器の温度:20℃
・定着器の温度:120℃
・実行中/実行待ちジョブ:なし
◇判断内容
・加熱器は温度NGで定着器は温度OKであり、ジョブはない
(図5のステップS103;No→ステップS106;Yes→ステップS107;No)
◆判断結果⇒即使用可能な定着器で加熱消去処理を実行
【0127】
[ケース3]
−画像形成装置の状態−
・加熱器の温度:20℃
・定着器の温度:55℃
・実行中/実行待ちジョブ:なし
◇計算内容(図6のステップS121およびステップS122)
・加熱器昇温時間:(60℃−20℃)×0.1(秒/℃)=4秒
・定着器昇温時間:(60℃−55℃)×0.5(秒/℃)=2.5秒
◆判断結果⇒昇温時間の短い定着器で加熱消去処理を実行(ステップS123;No)
【0128】
[ケース4]
−画像形成装置の状態−
・加熱器の温度:20℃
・定着器の温度:120℃
・実行中/実行待ちジョブ:実行中ジョブあり→原稿枚数3で部数10のコピージョブを実行中であり、印刷が9部まで終了していて1部が残っている(残り印刷枚数3)
◇計算内容(図7のステップS141およびステップS142)
・加熱器昇温時間:(60℃−20℃)×0.1(秒/℃)=4秒
・ジョブ処理時間:3枚÷60枚/分=3秒(0.05分)
◆判断結果⇒使用可能になるまでの時間が短い定着器で加熱消去処理を実行(ステップS143;No)
【0129】
このように、本実施の形態に係る画像形成装置10では、加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿に対する描画部分の加熱消去処理を、自動原稿搬送装置20に内蔵することで原稿の読み取り機能に付随して設けた加熱器25と、画像形成用の定着器48を用いて行うことができるため、原稿用紙の再利用を図ることができる。また、加熱器25と定着器48のうち開始待ち時間の短い方で加熱消去処理が行えるようになり、これに伴い加熱器25または定着器48の準備(昇温)に要する消費電力も抑えられるようになるため、それらを効率良く使い分けられるようになる。加熱消去処理を早く開始できることでユーザの利便性も向上する。
【0130】
また、加熱消去処理を加熱器25と定着器48のいずれで行うかの選択判断では、図6(加熱消去処理の選択判断・実行処理1)で説明したように、両機器の検出温度に基づいた判断を行うことで、より精度の高い判断結果が得られる。
【0131】
また、図7(加熱消去処理の選択判断・実行処理2)で説明したように、制御部11は実行中または実行待ちのコピー/プリントジョブがあれば定着器48にその定着処理を優先して行わせ、その定着処理を完了するのに要する処理時間が加熱器昇温時間よりも短ければ、定着器48の方が加熱消去処理を早く開始できると判断し、上記ジョブの実行完了後に定着器48による加熱消去処理を実行する。これにより、実行中のジョブが中断されたり、実行待ちのジョブの開始が遅れたりすることが回避される。
【0132】
また、画像形成装置10は自動原稿搬送装置20を備えており、原稿を自動搬送して読み取りや加熱処理を行うことができる。これにより、処理時間を短縮できると共にユーザの作業負担を軽減することができる。
【0133】
また、自動原稿搬送装置20内に加熱器25を設けて原稿を搬送しながら加熱できることにより、加熱器25は原稿の搬送方向と直交する方向に沿った一次元の小型のラインヒータなどで構成できるようになる。さらに、原稿を搬送しながら読み取るための搬送系と、原稿を搬送しながら加熱するための搬送系とを、上述した共用の搬送経路22や搬送機構23として構成できることにより、それらを個別に設ける場合に比べて装置全体を小型および簡素に構成することができる。
【0134】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0135】
たとえば、加熱消去処理を加熱器25と定着器48のいずれで行うかの選択判断では、加熱器25の温度と、定着器48の温度と、定着器48によって定着処理が行われるジョブ(コピー/プリントジョブ)の実行状況とを判断要素としているが、判断要素はこのような組み合わせやこれらの種類に限定されるものではない。判断要素の種類については、加熱器25が実行した加熱消去処理の実行履歴や、定着器48が実行した加熱消去処理の実行履歴などを用いるようにしてもよい。
【0136】
図5〜図7で説明した原稿の読取処理および加熱消去処理の動作の流れや内容は、実施の形態で説明したものに限らない。
【0137】
たとえば、図5(メインルーチン)におけるステップS106とステップS107は順序を入れ替えてもよい。また、コピー/プリントジョブを実行するために定着器48を常温(所定温度未満)などから所定の定着温度まで昇温しているときに(ウォームアップ中)、加熱消去処理の開始指示を受け付けた場合は、定着器48には昇温完了後にコピー/プリントジョブによる定着処理を行わせるようにし、加熱器25にて加熱消去処理を行うようにしてもよい。具体的には、図5において、加熱器25が所定温度でなくとも(ステップS103;No)、コピー/プリントジョブを実行するために定着器48を昇温している場合はステップS104へ移行するなどが可能である。
【0138】
定着器は定着ローラによって定着処理を行うローラ方式の構成としているが、定着ベルトによって定着処理を行うベルト方式などの他の方式による構成としてもよい。
【0139】
加熱消去処理の対象となる原稿を定着器に供給する給紙装置(紙媒体供給部)は、画像形成用の記録紙を定着器に供給する手差しトレイ51(手差し給紙装置)を共用するようにしているが、このような既存のものを共用するほかに、専用のものを別途設けるようにしてもよい。
【0140】
自動原稿搬送装置20は両面読み取りに対応した構成としているが、片面読み取りのみに対応した構成としてもよい。その場合は自動原稿搬送装置20内の反転経路や反転機構は不要となる。
【0141】
また、加熱器25は自動原稿搬送装置20内に固定的に設けるようにしているが、搬送経路22を搬送される原稿に対して接触および離間するように可動的に設け、加熱消去処理を行わないときは離間位置へ退避させるようにしてもよい。このような構成は、たとえば、加熱器25を上記原稿との接離方向に移動可能に支持して原稿と接触させる接触位置および原稿から離間させる離間位置に保持する変位機構(変位手段)などによって実現できる。
【0142】
また実施の形態では、自動原稿搬送装置20を備えた画像形成装置10を例に説明したが、本発明は自動原稿搬送装置を備えていない画像形成装置に適用することもできる。
【0143】
たとえば、スキャナ部30のプラテンガラス31(原稿台)に載置された原稿を押さえ付ける開閉型(可動型)の原稿押さえ板の内面(原稿押さえ面)に、原稿と同じ面積以上の加熱面を有する加熱器を設けるなどの構成が可能である。このような構成であれば、加熱器が所定温度に昇温した後に、プラテンガラスに載置された無色化塗料で描画された原稿を原稿押さえ板で押さえ付けることにより、原稿押さえ板に設けられた加熱器で原稿を加熱し描画部分を消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機構系の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が備える自動原稿搬送装置およびスキャナ部の構成を拡大して示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る読取設定画面を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る原稿の読取処理および加熱消去処理の動作のメインルーチンを示す流れ図である。
【図6】図5のメインルーチンにおける加熱消去処理の選択判断・実行処理1のサブルーチンを示す流れ図である。
【図7】図5のメインルーチンにおける加熱消去処理の選択判断・実行処理2のサブルーチンを示す流れ図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る原稿を自動原稿搬送装置にセットすることを指示する指示画面を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る原稿を手差しトレイにセットすることを指示する指示画面を示す図である。
【符号の説明】
【0145】
10…画像形成装置
11…制御部
12…操作表示部
13…通信部
14…画像記憶部
20…自動原稿搬送装置
20a…底板
21…原稿給紙トレイ
22…搬送経路
23…搬送機構
23a…送り出しローラ
23b…搬送ローラ
23c…排出ローラ
23d…読取ローラ
24…原稿排紙トレイ
25…加熱器
26…熱源
27…スリット
28…温度センサ
30…スキャナ部
31…プラテンガラス
32…コンタクトガラス
33…光源
34…ミラー
35…原稿照明部
36…ラインイメージセンサ
37…反射ミラー
38…集光レンズ
40…プリンタ部
41…感光体ドラム
42…帯電装置
43…レーザーユニット
44…現像装置
45…転写装置
46…分離装置
47…クリーニング装置
48…定着器
49…温度センサ
50…給紙ユニット
50a…送り出しローラ
51…手差しトレイ
51a…送り出しローラ
52…搬送装置
53…反転装置
54…反転切替ガイド
55…排出切替ガイド
56…第1排紙トレイ
57…第2排紙トレイ
60…読取設定画面
61…スキャン設定
62…読込設定
63…拡大縮小
64…紙サイズ
65…通常読込ボタン
66…消去ボタン
70…指示画面
71…メッセージ
72…イメージ図
73…消去実行ボタン
80…指示画面
81…メッセージ
82…イメージ図
83…消去実行ボタン
H…加熱位置
L…反射光
M…原稿
P…記録紙
S…読取位置
T…転写位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式によって記録紙に画像を形成する画像形成装置であって、
原稿を光学的に読み取るための読取部と、
加熱されると無色化する塗料を用いて描画された描画部分を無色化させる所定温度で加熱して消去する加熱消去処理を前記原稿に対して行うための加熱器と、
紙媒体供給部から供給され前記電子写真方式による画像形成過程でトナー像が転写された記録紙を加熱して該記録紙に前記トナー像を定着させる定着処理と、加熱されると無色化する塗料を用いて描画された原稿が紙媒体供給部から供給された場合は該原稿に対して前記加熱消去処理を行う定着器と、
操作部と、
報知部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記操作部を通じて前記加熱消去処理の開始指示を受け付けた場合に、前記加熱器と前記定着器のうち前記加熱消去処理を早く開始できると判断した方を前記報知部を通じて報知する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部が前記判断を行うために用いる判断要素は、前記加熱器の温度と、前記定着器の温度と、前記定着器によって前記定着処理が行われるジョブの実行状況と、前記加熱器が実行した前記加熱消去処理の実行履歴と、前記定着器が実行した前記加熱消去処理の実行履歴とのうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱器の温度を検出する加熱器温度検出部と、
前記定着器の温度を検出する定着器温度検出部とを備え、
前記制御部は、前記開始指示を受け付けた時点で前記加熱器温度検出部により検出された前記加熱器の温度から前記加熱器を前記所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間と、前記開始指示を受け付けた時点で前記定着器温度検出部により検出された前記定着器の温度から前記定着器を前記所定温度まで昇温するのに要する定着器昇温時間とを算出してこれらの時間を比較することにより前記判断を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱器の温度を検出する加熱器温度検出部を備え、
前記制御部は、前記開始指示を受け付けた時点で前記加熱器温度検出部により検出された前記加熱器の温度から前記加熱器を前記所定温度まで昇温するのに要する加熱器昇温時間と、実行中または実行待ちの前記ジョブが完了するのに要する処理時間とを算出してこれらの時間を比較することにより前記判断を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
給紙部にセットされた原稿を前記読取部が前記読み取りを行う読取位置および前記加熱器が前記加熱を行う加熱位置を通る搬送経路を通じて搬送し排紙部へ排出する自動原稿搬送装置を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−139856(P2010−139856A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317061(P2008−317061)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】