説明

画像形成装置

【課題】廃液タンク内の同じ場所に廃液が排出されて廃液の堆積物が成長して廃液タンクの寿命が短くなる。
【解決手段】サブ側板260に取り付けたスライドカバー255にてスライダ部材254を摺動可能に保持し、スライダ部材254に第1廃液タンク100を取り付けて装置本体の前後方向に移動可能に設け、キャップ82aを昇降させるときに回転する中間ギヤ239と一体に中間ギヤ251を設け、中間ギヤ251に噛み合うカムピン253付きの中間ギヤ252を設け、中間ギヤ252のカムピン253をスライダ部材254の摺動溝254a内に摺動可能に嵌め合わせることで、キャップ82aが密閉位置と開放位置との間で移動することに連動して第1廃液タンク100が移動して、第1廃液タンク100の前回の空吐出時の位置と今回の空吐出時の位置を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドの維持回復動作で生じる廃液を収容する廃液タンクを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0004】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)においては、記録ヘッドは、インクをノズルから用紙に吐出させて記録を行なう関係上、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより吐出不良の状態となり、記録不良を起こすという問題を抱えていることから、記録ヘッドの性能を維持回復する維持回復機構を備えている。
【0005】
例えば、記録ヘッドのノズルを密封するキャップ(キャッピング手段、キャップ部材などとも称する。)を備え、装置の非稼動時には記録ヘッドのキャッピングを行うことで、ノズル内のインクの乾燥、増粘を抑えることができるようにしている。また、記録動作の前後やその最中において、記録動作に寄与しないインク滴の吐出を行い、ノズル内で乾燥、増粘したインクを排出して、吐出性能の回復や維持を図るようにしている。
【0006】
このようなノズルの吐出性維持のための画像形成に寄与しないインク滴の吐出は予備吐出或いは空吐出と称され、専用の空吐出受けに吐出し、あるいは、キャップに対して吐出することが行われる。
【0007】
ところで、空吐出されたインクは滴量が小さく乾燥しやすいため増粘インク(高粘度インク)が形成されやすい。そして、空吐出位置に増粘インクによる堆積物が形成され、記録ヘッドの高さまで成長した場合には、インクが記録ヘッドに付着することによってインクの吐出不良や記録ヘッドに付着したインクが記録媒体に付着して記録媒体を汚してしまう不具合が生じる。
【0008】
また、記録ヘッドを吸引キャップ(キャップ部材)で覆い、その吸引キャップで記録ヘッドからインクを吸引する維持回復機能(機構)を有している。
【0009】
この維持回復機能によって吸引されたインクの廃液は、吸収部材を有する廃液収容容器(廃液タンク)に排出される。ヘッドから吸引されたインクは比較的粘度は低いものの、顔料インクには顔料などの固形分が含まれるため、インク滴下領域にインクの乾燥に伴う堆積が発生する。特に、高温低湿環境など乾燥速度が比較的速い環境では、柱のようなインク堆積が発生する。
【0010】
そのため、廃液タンク内のスペースを有効利用する前に廃液が溢れる可能性があるため、廃液タンク自体の寿命が短くなる。この場合、廃液タンクが製品寿命を満たすためには、廃液タンクの高さを高くすればよいが、画像形成装置が大きくなるため、大きくするにも限界がある。
【0011】
そこで、例えば、特許文献1に記載されているように昇華性材質(樟脳など)と弾性部材(バネなど)を用いてインクの廃棄部とインクが通る経路の出口との位置を相対的に変化させるものがある。
【0012】
また、特許文献2に記載されているように空吐出を、タンク上に設置された可動部材に吐出し、可動部材が移動することによって可動部材に付着したインクを掻き落とし、空吐出位置から離れた場所に排出するものがある。
【0013】
また、特許文献3に記載されているように廃液収容容器内のインク排出位置の底部に溶剤を貯留するスペースがあり、堆積を防止するものがある。
【0014】
【特許文献1】特開2006-247880号公報
【特許文献2】特開2005-199598号公報
【特許文献3】特開2007-144904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の画像形成装置や廃液収容容器(廃液タンク)では、次のような課題がある。
特許文献1に記載のように、昇華性材質(樟脳など)と弾性部材(バネなど)を用いてインクの廃棄部とインクが通る経路の出口との位置を相対的に変化させる構成にあっては、長期間使用されない場合は昇華性材質が昇華してしまい、その結果堆積位置を分散させることが困難になる。
【0016】
また、特許文献2に記載のように、空吐出を、タンク上に設置された可動部材に吐出し、可動部材が移動することによって可動部材に付着したインクを掻き落とし、空吐出位置から離れた場所に排出する構成にあっては、可動部材に付着したインクは同一箇所に排出されるため、可動部材までインクが堆積し、インクで固着してしまい可動部材が移動できなくなるおそれがある。
【0017】
また、特許文献3に記載のように、廃液収容容器内のインク排出位置の底部に溶剤を貯留するスペースがあり、堆積を防止する構成にあっては、画像形成装置の輸送時や設置時に溶剤が機内に流れ込むという問題がある。
【0018】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、画像形成装置の高さ方向を大きくすることなく、廃液タンクの寿命を伸ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
インクの液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面を密閉する密閉位置と前記ノズル面を開放する開放位置との間で移動可能なキャップ部材と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出で生じるインクの廃液を収容する移動可能な廃液タンクと、
前記キャップ部材の移動に連動して前記廃液タンクを移動させる手段と、を備え、
前記廃液タンクは、前記記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する
構成とした。
【0020】
ここで、前記キャップ部材が密閉位置にあるときの前記廃液タンクの位置を第1の位置とするとき、前記キャップ部材が開放位置に移動した後再度密閉位置に移動したときに前記廃液タンクが前記第1の位置と異なる第2の位置になる構成とできる。
【0021】
また、前記キャップ部材が密閉位置及び開放位置を含めて3段階以上の位置で停止可能である構成とできる。
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、
インクの液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面を払拭する払拭位置と前記ノズル面から退避した非払拭位置との間で移動可能なワイパ部材と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出で生じるインクの廃液を収容する移動可能な廃液タンクと、
前記ワイパ部材の移動に連動して前記廃液タンクを移動させる手段と、を備え、
前記廃液タンクは、前記記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する
構成とした。
【0023】
ここで、前記ワイパ部材が払拭位置にあるときの前記廃液タンクの位置を第1の位置とするとき、前記ワイパ部材が非払拭位置に移動した後再度払拭位置に移動したときに前記廃液タンクが前記第1の位置と異なる第2の位置になる構成とできる。
【0024】
また、前記ワイパ部材が前記払拭位置及び非払拭位置を含めて3段階以上の位置で停止可能である構成とできる。
【0025】
本発明に係る画像形成装置は、
インクの液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
用紙を搬送する搬送手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出で生じるインクの廃液を収容する移動可能な廃液タンクと、
前記搬送手段の動作に連動して前記廃液タンクを移動させる手段と、を備え、
ている
前記廃液タンクは、前記記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する
構成とした。
【0026】
これらの本発明に係る画像形成装置においては、前記記録ヘッドから空吐出を行っているときに前記廃液タンクの位置を変化させる構成とできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る画像形成装置によれば、キャップ部材、ワイパ部材、搬送手段の移動に連動して廃液タンクが移動し、廃液タンクは、記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する構成としたので、廃液タンクに対する廃液の排出位置が変化して、画像形成装置の高さ方向を大きくすることなく、廃液タンクの寿命を伸ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0029】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0030】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0031】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット5によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0032】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0033】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0034】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。なお、搬送ローラ51及びテンションローラ53はサブ側板260、261にして回転可能に支持されている。
【0035】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0036】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0037】
さらに、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングする(払拭する、清掃する)ためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
【0038】
また、この維持回復機構81の下方側には維持回復動作のうちの空吐出受け84に対する空吐出及びワイパ部材83の清掃によって空吐出受け84から生じる廃液を収容するための、交換されないが、後述するように移動可能に設けられた本発明における廃液タンクである第1廃液タンク100を、維持回復機構81の側方側(装置本体前面側)にはカートリッジ装填部4の下側に装置本体の前面側から交換可能な第2廃液タンク101を、それぞれ備えている。インクカートリッジ10及び第2廃液タンク101は、装置本体の前面の共通のカバーを開くことで、装置本体前面側から交換することができるため、低コスト化を図れる。
【0039】
また、図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0040】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0041】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0042】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0043】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0044】
次に、この画像形成装置における維持回復機構81について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同維持回復機構の模式的概略構成図、図4は同じく要部平面説明図である。
この維持回復機構81は、維持装置フレーム211に、キャップホルダ212に保持されたキャップ82a、82bと、弾性体を含むワイパ部材(ワイピング部材、払拭部材)83と、ワイパクリーナ86とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。
【0045】
キャップ82は、記録ヘッド34のノズル面と対向する側に開口を有する箱型の部材である。このキャップ82はその開口上面部に弾性部分を有しており、前記弾性部分を記録ヘッド34のノズル面に当接し、密着させることでノズルの開口を封止(キャッピング、密閉)することができる。また、キャップ82内には多孔質のスポンジ状部材である図示しない吸収部材が配設されている。これにより、吸収部材の持つ毛管力により、キャップ82内でインクを均一な状態で保持すると同時に、後述する吸引ポンプ220によりキャップ82a内のインクを排出する際に排出する負圧をキャップ全体に伝播させることができる。
【0046】
そして、ワイパ部材83と吸引用となるキャップ82aとの間には筒状の空吐出受け84が配置され、この空吐出受け84のワイパ部材83側上端部はワイパ部材83に付着したインクを掻き落して除去する第2ワイパ清掃手段としてワイパクリーナ部85が形成されている。ワイパ部材83のクリーニングを行うときにはワイパクリーナ86でワイパ部材83をワイパクリーナ部85に押し付けた状態でワイパ部材83を下降させることにより、ワイパ部材83に付着したインクを空吐出受け84側に掻き落す。
【0047】
また、印字領域に最も近い側のキャップ82aにはチューブ部材である弾性部材からなる可撓性吸引チューブ219を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)220を接続し、キャップ82aのみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下単に「吸引用キャップ」という。)とし、キャップ82bは単なる保湿用キャップとしている。したがって、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34を吸引用キャップ82aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
【0048】
吸引ポンプ220は、吸引チューブ219に対して複数の加圧部材による加圧と移動を繰り返すことによってチューブ210に吸引力を発生させる。この吸引ポンプ220より下流側で吸引チューブ219は第2廃液タンク101に図示しないニードル部を介して接続されている。
【0049】
吸引チューブ219は、シリコンチューブでも良いが、吸引チューブ219内にインクを一時貯留することから、チューブ壁面からの水蒸気透過が起こりにくい材質で形成することが好ましい。そこで、ここでは、熱可塑性エラストマーからなるチューブを使用している。使用する熱塑性エラストマーとしては、例えばポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0050】
また、吸引チューブ219に用いる熱可塑性エラストマーの硬度は、JIS−A規格でおよそ50度のものを使用することで、ポンピングでの送液を可能にする弾性力を得ることができて、モータへの与えるポンプ駆動負荷を小さくすることができる。
【0051】
また、吸引チューブ219に用いる熱可塑性エラストマーの水蒸気透過性は、15g/m・day以下にすることで、保持するインクがチューブ219内で水分蒸発する速度を遅くして、チュー219内にインクを一時貯留させることができる。
【0052】
一方、キャップ82a、82b、ワイパ部材83などの下方にはフレーム211に回転自在に支持したカム軸221を配置し、このカム軸221には、キャップホルダ212を昇降させるためのキャップカム222と、ワイパ部材83を昇降させるためのワイパカム224、空吐出受け84内で空吐出される液滴がかかる回転体としてのコロ226と、ワイパクリーナ86を揺動させるためのクリーナカム228と、キャリッジロック87を昇降させるためのキャリッジロックカム229をそれぞれ設けている。
【0053】
そして、吸引ポンプ220及びカム軸221を回転駆動するために、維持回復用モータ231の回転をモータ軸231aに設けたモータギヤ232に、吸引ポンプ220のポンプ軸220aに設けたポンプギヤ233を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ233と一体の中間ギヤ234に中間ギヤ235を介して一方向クラッチ237付きの中間ギヤ236を噛み合わせ、この中間ギヤ236と同軸の中間ギヤ238に中間ギヤ239を介してカム軸221に固定したカムギヤ240を噛み合わせている。なお、クラッチ237付きの中間ギヤ236、238の回転軸である中間軸241はフレーム211にて回転可能に保持している。
【0054】
この維持回復機構81においては、記録ヘッド34のノズルを形成した面(ノズル面)に付着したインクや不純物を取り除くときには、モータ231を駆動して、ワイパカム224を介してワイパ部材83を上昇させる。この状態で、キャリッジ33を主走査方向に移動させることにより、ワイパ部材83によって記録ヘッド34のノズル面をワイピングして、不純物などを払拭する。
【0055】
また、記録ヘッド34のノズルを外気に露呈した状態のまま放置すると、内部のインクが乾燥して増粘、固着し、インク吐出性能が低下してしまうことから、これを防ぐために、記録ヘッド34のノズル面をキャップ82で覆うときには、モータ231を回転させ、キャップカム213を介してキャップ82を上昇させ、記録ヘッド34のノズル面をキャッピングする。
【0056】
また、記録動作の前後やその最中において、空吐出受け88、キャップ82aに対して記録動作に寄与しないインク滴の吐出(予備吐出)を行ってノズル吐出性能維持を図る。
【0057】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第1実施形態における廃液タンクを含む維持回復機構について図5ないし図8を参照にして説明する。なお、図5は同維持回復機構の模式的説明図、図6は同じく斜視説明図、図7は同じく側面説明図、図8は同じく維持回復機構を保持する側板側の側面説明図である。
【0058】
上述したように、この画像形成装置においては、キャップ82a、82bの下方にはフレーム211に回転自在に支持したカム軸221を配置し、このカム軸221には、キャップホルダ212を昇降させるためのキャップカム222、空吐出受け84内で空吐出される液滴がかかる回転体としてのコロ226、キャリッジロック87を昇降させるためのキャリッジロックカム229をそれぞれ設けている。
【0059】
そして、吸引ポンプ220及びカム軸221を回転駆動するために、維持回復用モータ231の回転をモータ軸231aに設けたモータギヤ232に、吸引ポンプ220のポンプ軸220aに設けたポンプギヤ233を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ233と一体の中間ギヤ234に中間ギヤ235を介して一方向クラッチ237付きの中間ギヤ236を噛み合わせ、この中間ギヤ236と同軸の中間ギヤ238に中間ギヤ239を介してカム軸221に固定したカムギヤ240を噛み合わせている。なお、クラッチ237付きの中間ギヤ236、238の回転軸である中間軸241はフレーム211にて回転可能に保持している。
【0060】
一方、維持回復機構81のフレーム211と図2では図示を省略した搬送ローラ52や従動ローラ53を回転自在に支持している部材であるサブ側板260にスライドカバー255を取り付け、このスライドカバー255に形成した図示しないガイド溝とスライダ部材254に設けた図示しないピン部材とによって、スライドカバー255にスライダ部材254を摺動可能に保持している。このスライダ部材254の移動方向は副走査方向に沿う方向(装置本体の前後方向)である。
【0061】
そして、このスライダ部材254の係止部254bに第1廃液タンク100を係止保持することで、第1廃液タンク100を装置本体の前後方向(前面と背面との間の方向:図6の矢示B、C方向)に移動可能に設けている。
【0062】
また、第1廃液タンク100をキャップ82aの移動に応じて移動させる手段として、キャップ82aを昇降させるときに回転する中間ギヤ239と一体に中間ギヤ251を設け、この中間ギヤ251に噛み合うカムピン253付きの中間ギヤ252を設けている。この中間ギヤ252は支軸256にてサブ側板260に回転可能に保持され、中間ギヤ252のカムピン253を、スライダ部材254の摺動溝254a内に摺動可能に嵌め合わせている。
【0063】
ここで、キャップ82aを昇降させるカム軸221の回転数とカムピン253付き中間ギヤ252との回転数が異なるように、カムギヤ240、中間ギヤ239、中間ギヤ251、カムピン253付き中間ギヤ252の歯数を選択している。
【0064】
このように構成したので、モータ231を駆動して中間ギヤ239及びカムギヤ240を介してカム軸221を回転させてキャップ82aを移動(昇降)させるとき、中間ギヤ239が矢示A方向に回転することによって、中間ギヤ252のカムピン253がスライダ部材254の摺動溝254a内を摺動し、これによって、スライダ部材254はスライダカバー255の図示しないガイド溝に沿って矢示B、C方向に往復移動し、スライダ部材254に保持した第1廃液タンク100も同方向に往復移動する。
【0065】
つまり、この維持回復機構81においては、維持回復用モータ231が正転することによって、モータ軸231a、モータギヤ232、中間ギヤ234、ポンプギヤ233、中間ギヤ234、中間ギヤ235、236までが回転し、吸引ポンプ220の軸220aが回転することで吸引ポンプ220が作動して、キャップ82a内を吸引する。その他のギヤ238以降は一方向クラッチ237によって回転が遮断されるので回転(作動)しない。
【0066】
一方、維持回復用モータ231が逆転することによって、一方向クラッチ237が連結されるので、維持回復用モータ231の回転が、モータ軸231a、モータギヤ232、中間ギヤ234、ポンプギヤ233、中間ギヤ234、中間ギヤ235、236、238、239を経てカムギヤ240に伝達され、カム軸221が回転する。同時に、維持回復用モータ231の回転が、モータ軸231a、モータギヤ232、中間ギヤ234、ポンプギヤ233、中間ギヤ234、中間ギヤ235、236、238、239(251)、カムピン付きの中間ギヤ252、の順に伝達され、第1廃液タンク100が移動する。
【0067】
このとき、吸引ポンプ220はポンプ軸220aの逆転では作動しない構造となっている。このカム軸221の回転によってキャップカム222A、222Bがそれぞれ所定のタイミングで上昇、下降し、キャップ82aが記録ヘッド34のノズル面を密閉または開放する位置へと移動する。なお、ここでは、キャップ82aの「移動」を「上昇」、「下降」で説明しているが、これに限定するものではなく、記録ヘッドを密閉する位置と開放する位置との間を移動するものであれば特に限定されるものではない。
【0068】
したがって、例えば、カム軸221の1回転(キャップ82aの1昇降動作)で中間ギヤ252が1/4回転するように歯数設定を行った場合、キャップ82aが密閉位置にあるときにスライダ部材254が図9(a)の位置にあるとき、キャップ82aを密閉位置から開放位置に移動した後再度密閉位置に移動すると、スライダ部材254は図9(b)の位置に移動し、更にキャップ82aを密閉位置から開放位置に移動した後再度密閉位置に移動すると、スライダ部材254は図9(c)の位置に移動し、更にキャップ82aを密閉位置から開放位置に移動した後再度密閉位置に移動すると、スライダ部材254は図9(d)の位置に移動し、更にキャップ82aを密閉位置から開放位置に移動した後再度密閉位置に移動すると、スライダ部材254は図9(a)の位置に移動することになる。
【0069】
このようなスライダ部材254の移動によってスライダ部材254に保持されている第1廃液タンク100も移動することになる。したがって、図10に示すように、キャップ82aの昇降動作(昇降に限らず、移動であればよい。)によって第1廃液タンク100が矢示B、C方向に移動して位置が変化するので、記録ヘッド34からの画像形成に寄与しない液滴501による廃液の排出位置が変化し、この結果、廃液の堆積物の堆積位置を分散することができる。
【0070】
つまり、この画像形成装置では、印字データが画像形成装置に入力されると、記録ヘッド34を密閉している(密閉位置にある)キャップ82aが開放位置に移動し、キャッピング時(密閉時)に記録ヘッド34のノズルで増粘したインクを排出するために、空吐出受け84に空吐出動作を実施した後に印字動作を実行する。
【0071】
このとき、キャップ82aの移動に連動して第1廃液タンク100が所定量移動するので、印字前の空吐出動作による廃液が排出される前に、キャップ82aが密閉位置から開放位置(記録ヘッド34から離間した位置)に移動するときに第1廃液タンク100を移動させることができるため、図11に示すように、空吐出受け84から第1廃液タンク100n対する廃液となる液滴501の排出位置が相対的に変化することになり、第1廃液タンク100内における廃液(増粘インク)500の堆積位置を分散させることができる。これに対して、第1廃液タンク100が移動しないときには図12に示すように増粘インク500が同じ位置に堆積して成長することになる。
【0072】
また、記録ヘッド34からの空吐出動作は、印字前だけでなく、記録ヘッド34のノズルに付着した増粘インクなどを取り除くためにヘッド吸引を実施し、ノズル面をワイパ部材83でワイピングした後にも実施する。
【0073】
このときも、ヘッド吸引時はキャップ82aが記録ヘッド34を密閉する位置にあり、ワイピング前にキャップ82aが記録ヘッド34に対して開放位置に移動することで、空吐出直前に第1廃液タンク100を移動させることができるため、増粘インクの堆積位置を分散させることができる。
【0074】
また、この実施形態のように、第1廃液タンク100を移動させるために、チュービングポンプ220側の動力ではなく、キャップ82aを昇降させるカム軸221側の動力を用いることが好ましい。
【0075】
つまり、第1廃液タンク100は廃液が排出されるため、第1廃液タンク100の重量が次第に重くなって移動負荷が増大する。この移動負荷の増大により、チュービングポンプ220の吸引能力が変化するおそれがある。また、チュービングポンプ220自体の負荷も大きいため、これに第1廃液タンクの移動負荷が加わると、維持回復用モータ231にかかる負荷もさらに大きくなる。一方、第1廃液タンク100を移動させるための専用モータ(駆動源)を用いる手段もあるが、制御の自由度は高くなるものの、コストが高くなるという不都合がある。
【0076】
このように、キャップ部材の移動に連動して廃液タンクが移動し、廃液タンクは、記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する構成とすることで、廃液タンクに対する廃液の排出位置が変化して、堆積物の成長を低減することができ、画像形成装置の高さ方向を大きくすることなく、廃液タンクの寿命を伸ばすことができる。
【0077】
ここで、カムギヤ240とカムピン付き中間ギヤ252の回転数の関係について説明する。
前述したように、カムギヤ240とカムピン付き中間ギヤ252は回転数が異なる構成としている。
【0078】
つまり、この画像形成装置では、印字前の状態から、印字動作が終了した場合、記録ヘッド34のノズル面を乾燥させないために、キャップ82aは記録ヘッド34を密閉する密閉位置で停止する。そのため、印字などの動作を実施した場合には、キャップカム222A、222Bの回転数が必ずn回転(n:整数)となる。
【0079】
このとき、カムギヤ240とカムピン253付き中間ギヤ252の回転数が同じであると、画像形成装置が停止した場合に、第1廃液タンク100は同じ位置に停止することになり、前述した図12に示すように第1廃液タンク100が停止しているのと実質的に同じになって堆積を効率よく分散させることができない。
【0080】
そこで、前述したように、カムギヤ240とカムピン付き中間ギヤ252は回転数が異なる構成とすることで、キャップ82aの移動に連動して第1廃液タンク100を移動するときに、第1廃液タンク100の停止位置が変化するようにできる。
【0081】
これにより、キャップ82aが密閉位置にあるときの第1廃液タンク100の位置を第1の位置とするとき、キャップ82aが開放位置に移動した後再度密閉位置に移動したときには第1廃液タンク100は第1の位置と異なる第2の位置に移動する。そして、カムギヤ240とカムピン付き中間ギヤ252の回転数の関係により、第2の位置が次回にキャップ82aが移動するときの第1の位置となって、密閉位置→開放位置→密閉位置への移動により新たな第2の位置に移動する(前述した図9参照)。
【0082】
ここで、印字動作、メンテナンス動作などでキャップ82aの密閉位置から開放位置までの往復動作が1回とは限らないため、カムギヤ240の回転数とカムピン253付き中間ギヤ252の回転数の最小公倍数が大きいほうが好ましい。
【0083】
例えば、カムギヤ240、中間ギヤ239、中間ギヤ251、カムピン253付き中間ギヤ252の歯数をそれぞれ52、35、15、43とすると、カムギヤ240が1回転すると、カムピン253付き中間ギヤ252は、(52/35)×(15/43)=156/301、回転することになる。この場合、カムギヤ240が301回の周期で第1廃液タンク100の位置が同じ位置に来ることになり、最小公倍数が大きい方が小さい場合よりも第1廃液タンク100が同じ位置になる周期が長くなり、それだけ廃液の排出位置を分散することができる。
【0084】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第2実施形態について図13及び図14をも参照して説明する。なお、図13は同実施形態の説明に供する説明図、図14は同実施形態の説明に供するフロー図である。
この実施形態では、図13に示すように、キャップ82aの停止位置として、記録ヘッド34のノズル面を密閉する密閉位置とノズル面を開放する開放位置との間に1(又は複数)の中間位置を設けて、3段階以上の停止位置を設定している。
【0085】
なお、図13では廃液となる液滴501が直接記録ヘッド34から排出されるような図示をしているが、これはキャップ82aと記録ヘッド34との位置関係を説明するためであり、前述したように記録ヘッド34から空吐出受け84に向けて空吐出が行われ、廃液となる液滴501がすべて直接第1廃液タンク100に排出されることを意味するものではない(以下の実施形態でも同様であるので、説明は省略する。)。
【0086】
そして、図14に示すように、空吐出動作を行うとき、記録ヘッド34を空吐出位置に移動させた後、前回のキャップ82aの位置を判別して、前回の空吐出動作においてキャップ82aが開放位置のときに実施された場合には今回の空吐出動作はキャップ82aを中間位置に移動して実施し、前回の空吐出動作においてキャップ82aが中間位置のときに実施された場合には今回の空吐出動作はキャップ82aを開放位置に移動して実施する。
【0087】
このようにすることで、キャップ82aの停止位置が密閉位置と開放位置しかない場合に比べて、例えばレイアウト上の制約によって2つの位置で効率よく廃液の排出位置を分散できない場合でも、増粘インクの堆積位置を分散させることができるようになる。
【0088】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第3実施形態について図15をも参照して説明する。なお、図15は同実施形態の説明に供する説明図である。
この実施形態は、前記第2実施形態と同様に、キャップ82aの停止位置として、記録ヘッド34のノズル面を密閉する密閉位置とノズル面を開放する開放位置との間に1(又は複数)の中間位置を設けて、3段階以上の停止位置を設定し、記録ヘッド34の空吐出中に、キャップ82aを開放位置から中間位置に移動させるようにしたもので、このように構成しても、前記第2実施形態と同様に、廃液の排出位置を分散させて増粘インクの堆積位置を分散させることができる。
【0089】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第4実施形態について図16をも参照して説明する。なお、図16は同実施形態の説明に供する説明図である。
前述した第1実施形態における記録ヘッド34のノズル面をワイピングするワイパ部材83は、図16に示すように、記録ヘッド34のノズル面を払拭する清掃位置(払拭位置)とノズル面から退避した退避位置(非払拭位置)との間で移動する。
【0090】
このワイパ部材83は、キャップ82aを移動させるカム軸221によって移動するので、前述した第1実施形態で説明したように、カム軸240の前段に設けた中間ギヤ239からの駆動力が伝達されるカムピン付き中間ギヤ252で移動される第1廃液タンク100は、ワイパ部材83の払拭位置と退避位置との間の移動に連動して移動することになる。つまり、前述したキャップ82aの移動に連動して第1廃液タンク100を移動させる手段は、同時に、ワイパ部材83の移動に連動して第1廃液タンク100を移動させる手段を構成していることになる。
【0091】
このように、ワイパ部材83の移動に連動して第1廃液タンク100が移動することにより、空吐出による廃液の排出位置が変化することになる。つまり、ワイピング動作は、記録ヘッド34のノズル孔に付着した増粘インクなどを取り除くためにヘッド吸引を実施した後に実施されるものであり、空吐出直前に第1廃液タンク101を移動させることで、増粘インクによる堆積物の堆積位置を分散させることができる。
【0092】
なお、この例では、ワイパ部材83が昇降する例で説明しているが、これに限定するものではなく、記録ヘッド34に対して払拭位置と非払拭位置との間を移動するものであれば、同様に適用できる。
【0093】
このように、ワイパ部材の移動に連動して廃液タンクが移動し、廃液タンクは、記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する構成とすることで、廃液タンクに対する廃液の排出位置が変化して、堆積物の成長を低減することができ、画像形成装置の高さ方向を大きくすることなく、廃液タンクの寿命を伸ばすことができる。
【0094】
なお、この画像形成装置では、ワイパ部材83とキャップ82aが同じ駆動源(モータ220)とカム軸221で移動される構成であるため、前記第1実施形態での説明がそのまま妥当するが、ワイパ部材83とキャップ82aとを異なる駆動源で駆動する構成であっても、同様に適用することができる。
【0095】
つまり、例えば、カム軸240とカムピン付き中間ギヤ253の回転数を異ならせて所要の関係に設定することで、ワイパ部材83が払拭位置にあるときに第1廃液タンク100が第1の位置にあり、この状態からワイパ部材83が非払拭位置に移動した後再度払拭位置に移動したときには第1廃液タンク100は第1の位置と異なる第2の位置に移動した状態になるようにすることも、ワイパ部材83が非払拭位置にあるときに第1廃液タンク100が第1の位置にあり、この状態からワイパ部材83が払拭位置に移動した後再度非払拭位置に移動したときには第1廃液タンク100は第1の位置と異なる第2の位置に移動した状態になるようにすることもできる。
【0096】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第5実施形態について図17及び図18をも参照して説明する。なお、図17は同実施形態の説明に供する説明図、図18は同実施形態の説明に供するフロー図である。
この実施形態では、図17に示すように、ワイパ部材83の停止位置として、記録ヘッド34のノズル面を払拭する払拭位置(清掃位置)とノズル面から退避する非払拭位置(退避位置)との間に1(又は複数)の中間位置を設けて、3段階以上の停止位置を設定している。
【0097】
そして、図18に示すように、空吐出動作を行うとき、記録ヘッド34を空吐出位置に移動させた後、前回のワイパ部材83の位置を判別して、前回の空吐出動作においてワイパ部材83が退避位置のときに実施された場合には今回の空吐出動作はワイパ部材83を中間位置に移動して実施し、前回の空吐出動作においてワイパ部材83が中間位置のときに実施された場合には今回の空吐出動作はワイパ部材83を退避位置(非払拭位置)に移動して実施する。
【0098】
このようにすることで、ワイパ部材83の停止位置が払拭置と非払拭位置しかない場合に比べて、例えばレイアウト上の制約によって2つの位置で効率よく廃液の排出位置を分散できない場合でも、増粘インクの堆積位置を分散させることができるようになる。
【0099】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第6実施形態について図19をも参照して説明する。なお、図19は同実施形態の説明に供する説明図である。
この実施形態は、前記第2実施形態と同様に、ワイパ部材83の停止位置として、記録ヘッド34のノズル面を払拭する払拭位置(清掃位置)とノズル面から退避する非払拭位置(退避位置)との間に1(又は複数)の中間位置を設けて、3段階以上の停止位置を設けて、記録ヘッド34の空吐出中に、ワイパ部材83を非払拭位置から中間位置に移動させるようにしたもので、このように構成しても、前記第2実施形態と同様に、廃液の排出位置を分散させて増粘インクの堆積位置を分散させることができる。
【0100】
次に、この画像形成装置に適用した本発明の第7実施形態について図20を参照して説明する。なお、図20は同実施形態の説明に供する説明図である。
この実施形態では、搬送ベルト51を移動させる図示しない副走査モータ(駆動源)にて回転駆動される搬送ローラ52の軸52aに中間ギヤ281を設け、この中間ギヤ282から中間ギヤ283を介して、前記各実施形態で説明したカムピン253付き中間ギヤ252の順に駆動力が伝達される構成としている。
【0101】
したがって、用紙を搬送する搬送手段である搬送ベルト51の移動(副走査動作)に連動して第1廃液収容容器100が移動し、廃液の排出位置が変化する。
【0102】
副走査動作(搬送手段の移動)に連動して第1廃液タンク100が移動することで、維持回復機構81の動作と独立して第1廃液タンク100を移動させることができるので、維持回復動作中でも自由に第1廃液タンク100を移動させることができるようになる。
【0103】
なお、本発明に係る画像形成装置は、インクジェットプリンタ以外にも、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などにも適用することができる。さらに、インク以外の液体(記録液)、例えばレジスト、医療分野におけるDNA試料などを吐出させる画像形成装置などにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の概略を示す構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】維持回復機構の概略模式的側面説明図である。
【図4】同じく要部平面説明図である。
【図5】同画像形成装置に適用した本発明の第1実施形態における維持回復機構の模式的説明図である。
【図6】同じく斜視説明図である。
【図7】同じく側面説明図である。
【図8】同じく維持回復機構を保持する側板側の側面説明図である。
【図9】同じく動作説明に供する説明図である。
【図10】同じくキャップの移動と第1廃液タンクの移動の説明に供する説明図である。
【図11】同じく作用説明に供する説明図である。
【図12】第1廃液タンクが移動しない場合の説明に供する説明図である。
【図13】同画像形成装置に適用した本発明の第2実施形態の説明に供する説明図である。
【図14】同実施形態の説明に供するフロー図である。
【図15】同画像形成装置に適用した本発明の第3実施形態の説明に供する説明図である。
【図16】同画像形成装置に適用した本発明の第4実施形態の説明に供する説明図である。
【図17】同画像形成装置に適用した本発明の第5実施形態の説明に供する説明図である。
【図18】同実施形態の説明に供するフロー図である。
【図19】同画像形成装置に適用した本発明の第6実施形態の説明に供する説明図である。
【図20】同画像形成装置に適用した本発明の第7実施形態の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0105】
33…キャリッジ
34、34a、34b…記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35…サブタンク
51…搬送ベルト(搬送手段)
81…維持回復機構
82a…吸引及び保湿用キャップ
82b…保湿用キャップ
83…ワイパ部材
84…空吐出受け
100…第1廃液タンク(廃液タンク)
231…維持回復用モータ
239…中間ギヤ
240…カム軸
251…中間ギヤ
252…中間ギヤ
253…カムピン
254…スライダ部材
255…スライダカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面を密閉する密閉位置と前記ノズル面を開放する開放位置との間で移動可能なキャップ部材と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出で生じるインクの廃液を収容する移動可能な廃液タンクと、
前記キャップ部材の移動に連動して前記廃液タンクを移動させる手段と、を備え、
前記廃液タンクは、前記記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記キャップ部材が密閉位置にあるときの前記廃液タンクの位置を第1の位置とするとき、前記キャップ部材が開放位置に移動した後再度密閉位置に移動したときに前記廃液タンクが前記第1の位置と異なる第2の位置になることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記キャップ部材が密閉位置及び開放位置を含めて3段階以上の位置で停止可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
インクの液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面を払拭する払拭位置と前記ノズル面から退避した非払拭位置との間で移動可能なワイパ部材と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出で生じるインクの廃液を収容する移動可能な廃液タンクと、
前記ワイパ部材の移動に連動して前記廃液タンクを移動させる手段と、を備え、
前記廃液タンクは、前記記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記ワイパ部材が払拭位置にあるときの前記廃液タンクの位置を第1の位置とするとき、前記ワイパ部材が非払拭位置に移動した後再度払拭位置に移動したときに前記廃液タンクが前記第1の位置と異なる第2の位置になることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ワイパ部材が前記払拭位置及び非払拭位置を含めて3段階以上の位置で停止可能であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
インクの液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
用紙を搬送する搬送手段と、
前記記録ヘッドから画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出で生じるインクの廃液を収容する移動可能な廃液タンクと、
前記搬送手段の動作に連動して前記廃液タンクを移動させる手段と、を備え、
ている
前記廃液タンクは、前記記録ヘッドから前回空吐出したときの位置と今回空吐出するときの位置が変化する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドから空吐出を行っているときに前記廃液タンクの位置を変化させることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−155411(P2010−155411A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335725(P2008−335725)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】