説明

画像形成装置

【課題】トナー担持体の絶縁性外周面上でトナーをフレア状態にする現像装置を用いても、現像電界が経時的に変化することによる画質の経時変化を抑制する。
【解決手段】内側電極及び外側電極を備えたトナー担持ローラにおける絶縁性の外周面にトナーを担持させ、内側電極及び外側電極に対して互いに異なる電圧を印加することにより、内側電極及び外側電極それぞれに対向するトナー担持ローラ外周面部分でトナーをホッピングさせるための電界(フレア電界)をトナー担持ローラ外周面の外側に形成する現像装置において、トナー担持ローラの外周面にトナーを供給するトナー供給ローラの表面とトナー担持ローラの外周面との電位差が放電開始電圧以上となるような電圧をトナー供給ローラに印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー担持体の外周面に担持されたトナーを現像領域内に送り込むことで潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて画像を形成する、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる電圧が印加される複数の電極を備えたトナー担持体を有する現像装置が知られている。
例えば、トナー担持体上のトナーを感光体等の潜像担持体に直接接触させないで、トナーを潜像担持体上の潜像に供給して現像を行う現像装置がある。そして、この現像装置の一例としては、トナー担持体上のトナーをクラウド化させることによってトナーを潜像担持体上に供給する方式を採用するものがある。この方式に使用されるトナー担持体は、外周面に沿って複数種類の電極が所定のピッチで配置され、その複数種類の電極の外周面側を保護層で覆ったものである。この複数種類の電極に対し、時間的に変化する互いに異なる電圧をそれぞれ印加して、時間的に変化する電界を互いに近接する複数種類の電極間に形成すると、この電界によりトナー担持体上のトナーを互いに近接する複数種類の電極間で飛翔(ホッピング)させることができる(このようにトナーが飛翔する現象を、以下「フレア」と呼ぶ。)。これにより、トナー担持体の外周面近傍の空間でトナーがクラウド化した状況となる。
【0003】
この方式の現像装置において、トナーがトナー担持体の外周面に付着することなくホッピングするためには、トナー担持体の外周面において、互いに近接する複数種類の電極間に形成される電界(以下「フレア電界」という。)からトナーが受ける力F1と、トナーとトナー担持体の外周面との間の付着力F2との大小関係が重要となってくる。F1よりF2の方が大きいと、トナーはトナー担持体外周面との付着力から逃れることができず、ホッピングしない。F2よりF1の方が大きければ、トナーはホッピングすることができ、このときのF2とF1との差が大きいほど、安定したフレア状態を実現できる。F1を大きくすればこの差を大きくできるので安定したフレア状態を実現できるが、F1を大きくするためにはトナー担持体の外周面上に形成されるフレア電界を大きくすることが必要となる。
【0004】
特許文献1には、フレア電界を形成するための2種類の電極がローラ状のトナー担持体における同心円上に設けられている現像装置が開示されている。この現像装置で使用するトナー担持体は、2種類の櫛歯状の電極を、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯部分の間に入り込むように外周面に沿って配置したものである。そして、各種類の電極に上述した電圧をそれぞれ印加することにより、櫛歯部分間でトナーを飛翔させ、フレア状態を実現することができる。
【0005】
また、特許文献2には、フレア電界を形成するために3種類の電極を備えたローラ状のトナー担持体が開示されている。このトナー担持体は、3種類の電極のうちの2種類の電極は同心円上に設けられているが、残りの1種類の電極は上記2種類の電極よりも外周面側に配置されている。このトナー担持体を用いた現像装置でも、各種類の電極に互いに位相が異なる3相の電圧をそれぞれ印加することにより、各種電極間でトナーを飛翔させ、フレア状態を実現することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにトナーをホッピングさせるトナー担持体の外周面は、一般に絶縁層を被覆するなどして絶縁性の表面とする必要がある。その主な理由は、トナー担持体外周面に沿って形成されているフレア電界を形成するための電極に何らかの導電性部材(トナー層厚を規制するための規制ブレードなど)が接触して、その導電性部材を通じたリークが生じないようにするためである。
ところが、本発明者らの研究により、このようにトナー担持体の外周面を絶縁性の表面にしなければならない関係で、次のような問題が生じることが判明した。
【0007】
すなわち、トナー担持体の外周面を絶縁性のものとした場合、トナーがホッピングしてトナー担持体外周面に繰り返し接触することで、トナー担持体の絶縁性外周面がトナーとの摩擦帯電によりトナーの帯電極性とは逆の極性にチャージアップされる。そのため、トナー担持体の表面電位の絶対値は、現像を繰り返すことにより徐々に大きくなっていく。この結果、現像領域に形成される現像電界の大きさが徐々に変化することにより、画質が経時変化するという問題が生じる。
この問題は、トナーをホッピングさせない一般的な一成分現像方式においても生じ得る問題であるが、一般的な一成分現像方式では、トナー担持体外周面を、必ずしも絶縁性のものとする必要はない。したがって、トナー担持体の表面層を、例えば絶縁層の抵抗値よりも低い中抵抗層で構成することも可能であり、この構成によれば、特に不具合を生じさせることなく、チャージアップにより生じたトナー担持体外周面の電荷を、これに接触する何らかの導電性部材(トナー層厚を規制するための規制ブレードなど)へ逃がすことができる。すなわち、一般的な一成分現像方式であれば、トナー担持体の表面層を中抵抗層で構成するという簡易な手法により、上述したチャージアップによる問題を解消できるのである。
しかしながら、トナーをフレア状態にする現像方式の場合、トナー担持体の表面層を中抵抗層で構成すると、これを絶縁層で構成する場合に比べて、トナー担持体外周面上に生じるフレア電界の大きさが小さくなってしまい、トナーをホッピングさせることが困難となる。これは、トナー担持体の表面層を中抵抗層で構成すると、表面層内を電界が移動し、移動した電荷によってフレア電界の強度が弱くなるものと考えられる。また、大きなフレア電界を形成しようとして、表面層を中抵抗層で構成したトナー担持体の複数種類の電極に対し、より大きなバイアスを印加すると、電極間の絶縁性が破壊されて電極間リークが生じ、フレア電界自体が形成できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、トナー担持体の絶縁性外周面上でトナーをフレア状態にする現像装置を用いても、現像電界が経時的に変化することによる画質の経時変化を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、潜像担持体と、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備えたトナー担持体における絶縁性の外周面にトナーを担持させ、該複数種類の電極部材に対して互いに異なる電圧を印加することにより、該複数種類の電極部材それぞれに対向するトナー担持体外周面部分で上記トナーをホッピングさせるための電界を該トナー担持体外周面の外側に形成し、該トナー担持体の外周面を移動させることにより現像領域内にホッピングした状態のトナーを送り込み、上記潜像担持体上の潜像にトナーを供給して該潜像を現像する現像装置とを有し、該潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記現像装置は、上記トナー担持体の外周面にトナーを供給するトナー供給部材を有しており、該トナー供給部材の表面と該トナー担持体の外周面との電位差が放電開始電圧以上となるような電圧を、該トナー供給部材に印加する電圧供給手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記トナー担持体の外周面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える絶縁性材料で形成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、上記トナー供給部材の表面層は、表面に多数の微細孔が分散しているスポンジ層であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記トナー供給部材の表面と上記トナー担持体の外周面との接触部分で速度差が生じるように該トナー供給部材を表面移動させる駆動手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記トナー担持体は、上記複数種類の電極部材をトナー担持体外周面法線方向に平行な方向で互いに異なる位置に配置し、該複数種類の電極部材間に絶縁層を介在させた構成を有することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記現像装置を複数設け、各現像装置により互いに異なる色のトナーで各色に対応する潜像をそれぞれ現像し、これにより得られる各色画像が互いに重なり合ったカラー画像を形成する構成を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、トナー供給部材の表面とトナー担持体の外周面との間で放電を生じさせることができる。この放電により、トナーがホッピングしてトナー担持体外周面に繰り返し接触することによりチャージアップされたトナー担持体の絶縁性外周面の電荷を除去(あるいは消去若しくは中和)することができる。
したがって、本発明によれば、トナー担持体の絶縁性外周面上でトナーをフレア状態にする現像装置を用いても、現像電界が経時的に変化することによる画質の経時変化を抑制することが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】同画像形成装置における現像装置を示す概略構成図である。
【図3】同現像装置のトナー担持ローラの電極配置を説明するためにトナー担持ローラを回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図である。
【図4】同トナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図5】同トナー担持ローラの内側電極及び外側電極にそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフである。
【図6】内側電極及び外側電極へ印加する内側電圧と外側電圧の他の例を示すグラフである。
【図7】内側電極及び外側電極へ印加する内側電圧と外側電圧の更に他の例を示すグラフである。
【図8】内側電極及び外側電極への給電構成を、ローラ軸に沿って切断したときの模式図である。
【図9】同給電構成を模式的に示す斜視図である。
【図10】実施例1において、チャージアップされた状態における、内側電極に対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V1’、外側電極に対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V2’、トナー供給ローラに印加される供給電圧VKを示すグラフである。
【図11】実施例1において、トナー供給ローラに印加される供給電圧を交流電圧とした例のグラフである。
【図12】実施例2において、チャージアップされた状態における、内側電極に対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V1’、外側電極に対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V2’、トナー供給ローラに印加される供給電圧VKを示すグラフである。
【図13】変形例1におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図14】同トナー担持ローラにおける電気力線の概略を図示した説明図である。
【図15】変形例2におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図16】同トナー担持ローラにおける電気力線の概略を図示した説明図である。
【図17】同トナー担持ローラにおける外側電極層をトナー担持ローラの外周面側から見たときの模式図である。
【図18】変形例3におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図19】同トナー担持ローラにおける外側電極層をトナー担持ローラの外周面側から見たときの模式図である。
【図20】(a)〜(c)はトナー担持ローラの製造手順を示す説明図である。
【図21】変形例4におけるトナー担持ローラを、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
【図22】同トナー担持ローラにおける外側電極層をトナー担持ローラの外周面側から見たときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を電子写真方式の画像形成装置に適用した一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の主要部を示す概略構成図である。
この画像形成装置は、複数の現像装置を有し、潜像担持体としてのベルト状の感光体1上に各色のトナー像を重ねて多色画像を形成する画像形成装置である。ベルト状の感光体1は、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で複数のローラに張架しながら、図示しない駆動部により図中時計回り方向に回転駆動される。この感光体1における図中左側の張架面(以下「左側張架面」という。)はほぼ鉛直方向に延在する姿勢になっている。
【0013】
感光体1の左側張架面の図中左側方には、感光体1と対向するよう、複数色、例えばマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の画像をそれぞれ形成するための複数の画像形成手段として4つのプロセスユニット6M,6C,6Y,6Kが鉛直方向に並ぶように配設されている。これら4つのプロセスユニット6M,6C,6Y,6Kは、それぞれ、現像装置4M,4C,4Y,4Kと、感光体1を一様帯電せしめる帯電装置2M,2C,2Y,2Kと、図示しない除電器とを1つのユニットとして図示しない共通の保持体に保持している。そして、画像形成装置の筺体に対して現像装置4M,4C,4Y,4K、帯電装置2M,2C,2Y,2K及び除電器がそれぞれ一体的にプロセスユニット6M,6C,6Y,6Kとして着脱され、ユーザーによる交換が可能となっている。
【0014】
プロセスユニット6M,6C,6Y,6Kにおける帯電装置2M,C,Y,Kと現像装置4M,4C,4Y,4Kとの間から、図示しない潜像形成手段としての光書込装置による各色の露光ビーム3M,3C,3Y,3Kが感光体1へ照射される。また、本画像形成装置は、さらに、図示しない転写手段、クリーニング手段、給紙装置、定着装置などを備えている。
【0015】
感光体1は、図1中矢印方向に回転駆動され、マゼンタのプロセスユニット6Mでマゼンタの帯電装置2Mにより一様に帯電されて、次いで図示しない光書込装置によりマゼンタの画像データで変調された露光ビーム3Mによって露光されることで静電潜像が形成される。この静電潜像がマゼンタの現像装置4Mにより現像されてマゼンタのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電される。
次いで、感光体1は、シアンのプロセスユニット6Cで、シアンの帯電装置2Cにより一様に帯電された後、図示しない光書込装置によりシアンの画像データで変調された露光ビーム3Cによって露光されることでシアンの静電潜像が形成される。この静電潜像がシアンの現像装置4Cにより現像されて上記マゼンタのトナー像と重なるシアンのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電される。
さらに、感光体1は、イエローのプロセスユニット6Yで、イエローの帯電装置2Yにより一様に帯電された後、図示しない光書込装置によりイエローの画像データで変調された露光ビーム3Yによって露光されることでイエローの静電潜像が形成される。この静電潜像がイエローの現像装置4Yにより現像されて上記マゼンタのトナー像及び上記シアンのトナー像と重なるイエローのトナー像となる。その後、感光体1は図示しない除電器により除電される。
最後に感光体1は、ブラックのプロセスユニット6Kで、ブラックの帯電装置2Kにより一様に帯電された後、図示しない光書込装置によりブラックの画像データで変調された露光ビーム3Kによって露光されることでブラックの静電潜像が形成される。この静電潜像がブラックの現像装置4Kにより現像されて、上記マゼンタのトナー像、上記シアンのトナー像及び上記イエローのトナー像と重なるブラックのトナー像となることでフルカラー画像が形成される。
【0016】
一方、給紙装置(不図示)から記録紙等の記録材が給送され、この記録材には、転写バイアスが印加される転写手段としての転写ローラにより感光体1上のフルカラー画像が転写される。フルカラー画像が転写された記録材は、定着装置(不図示)によりフルカラー画像が定着され、外部へ排出される。感光体1は、フルカラー画像転写後にクリーニング手段(不図示)により残留トナー等が除去される。
【0017】
このような構成の画像形成装置では、同一の感光体1上に4色の書き込みを行うので、4つの感光体を用いて各感光体上のトナー像を転写により重ね合わせる一般的なタンデム方式の画像形成装置と比較すると、各トナー像間における位置ズレがほとんど発生せず、高画質のフルカラー画像を得ることができる。
なお、本発明は、一般的なタンデム方式の画像形成装置に適用することはできるし、他の画像形成装置にも適用できる。
【0018】
次に、本実施形態の画像形成装置に採用される現像装置について説明する。
なお、現像装置4M,4C,4Y,4Kは、収容されるトナーが異なる以外は、同じ構成、動作であるので、以下添え字M,C,Y,Kを省略して説明を行う。
【0019】
図2は、本実施形態に係る現像装置4の概略構成図である。
現像装置4は、トナー担持体としてのトナー担持ローラ41と、トナー担持ローラ41へトナーを供給するトナー供給部材としてのトナー供給ローラ42と、トナーの層厚を規制するトナー規制部材としての規制ブレード43と、入口シール44と、図中時計回り方向に回転駆動される第1搬送スクリュー45と、図中反時計回りに回転駆動される第2搬送スクリュー46とを有している。第2搬送スクリュー46は、その回転駆動によってトナーを図中手前側から図中奥側へと搬送する。図中奥側の端部付近まで搬送されたトナーは、第1搬送スクリュー45側へ進入し、今度は第1搬送スクリュー45の回転駆動によって図中奥側から図中手前側へと搬送される。第1搬送スクリュー45により搬送されている途中のトナーの一部は、トナー供給ローラ42側へと移動し、トナー供給ローラ42の表面に担持される。トナー供給ローラ42の表面に担持されたトナーは、図中反時計回り方向のトナー供給ローラ42の回転駆動に伴って、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との接触位置(以下「トナー供給位置」という。)へと搬送される。
【0020】
このトナー供給位置では、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面とが互いに逆方向(カウンター方向)へ移動している。したがって、トナー供給位置へと搬送されてきたトナー供給ローラ42上のトナーは、トナー担持ローラ41の外周面に擦りつけられ、トナー担持ローラ41の外周面へと移動する。このとき、トナーは、トナー担持ローラ41の外周面との摩擦により正規極性(本実施形態ではマイナス極性)側に帯電する。
【0021】
トナーが供給されたトナー担持ローラ41は、現像装置4のケーシングに設けられた開口から外周面の一部を露出させている。この露出箇所は、感光体1に対して数十〜数百[μm]の間隙を介して対向している。このようにトナー担持ローラ41と感光体1とが対向している領域が、本画像形成装置における現像領域となっている。
【0022】
トナー担持ローラ41の表面上に供給されたトナーは、後述する理由により、トナー担持ローラ41の表面上でホッピングしながら、トナー担持ローラ41の回転に伴って、トナー供給位置から現像位置に向けて搬送される。現像領域まで搬送されたトナーは、トナー担持ローラ41と感光体1上の静電潜像との間の現像電界によって、感光体表面上の静電潜像部分に付着し、これにより現像が行われる。現像に寄与しなかったトナーは、ホッピングしながらトナー担持ローラ41の回転によってさらに搬送され、トナー供給位置へと運ばれる。そして、トナー供給位置へ進入する際に、トナー供給ローラ42によりトナー担持ローラ41上から掻き取られることで、現像装置4のケーシング内部に戻され、再利用される。
【0023】
次に、本実施形態におけるトナー担持ローラ41の具体的構成について説明する。
図3は、本実施形態におけるトナー担持ローラ41の電極配置を説明するためにトナー担持ローラ41を回転軸に対して直交する方向から見たときの模式図である。なお、説明の都合上、表面層56や絶縁層55は図示していない。
図4は、本実施形態におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
本実施形態のトナー担持ローラ41は、中空状のローラ部材で構成されており、その最内周に位置する最内周電極部材又は内周側電極部材としての内側電極53aと、最外周側に位置していて内側電極53aへ印加される電圧(内側電圧)とは異なる電圧(外側電圧)が印加される最外周電極部材としての櫛歯状の外側電極54aとを備えている。また、内側電極53aと外側電極54aとの間にはこれらの間を絶縁するための絶縁層55が設けられている。また、外側電極54aの外周面側を覆う表面層56も設けられている。すなわち、本実施形態のトナー担持ローラ41は、内周側から順に、内側電極53a、絶縁層55、外側電極54a、表面層56の4層構造となっている。
【0024】
内側電極53aは、トナー担持ローラ41の基体としても機能しており、SUSやアルミニウム等の導電性材料を円筒状に成型した金属ローラである。このほか、内側電極53aの構成としては、ポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)等からなる樹脂ローラの表面にアルミニウムや銅などの金属層等からなる導電層を形成したものが挙げられる。この導電層の形成方法としては、金属メッキ、蒸着等により形成する方法や、ローラ表面に金属膜を接着する方法などが考えられる。
【0025】
内側電極53aの外周面側は絶縁層55に覆われている。本実施形態において、この絶縁層55は、ポリカーボネートやアルキッドメラミン等で形成されている。また、本実施形態において、絶縁層55の厚みは、3[μm]以上50[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さくなると、内側電極53aと外側電極54aとの間の絶縁性が十分に保てなくなり、内側電極53aと外側電極54aとの間でリークが発生してしまう可能性が高くなる。一方、50[μm]よりも大きくなると、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られる電界が表面層56よりも外側に形成されにくくなり、表面層56の外側に強いフレア電界(外部電界)を形成することが困難となる。本実施形態では、メラミン樹脂からなる絶縁層55の厚みを20[μm]としている。絶縁層55はスプレー法やディップ法等によって内側電極53a上に均一な膜厚で形成することができる。
【0026】
絶縁層55の上には外側電極54aが形成される。本実施形態において、この外側電極54aは、アルミニウム、銅、銀などの金属で形成されている。櫛歯状の外側電極54aの形成方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、絶縁層55の上にメッキや蒸着によって金属膜を形成し、フォトレジスト・エッチングによって櫛歯状の電極を形成するという方法が挙げられる。また、インクジェット方式やスクリーン印刷によって導電ペーストを絶縁層55の上に付着させて櫛歯状の電極を形成するという方法も考えられる。
【0027】
外側電極54a及び絶縁層55の外周面側は、絶縁性の表面層56により覆われている。トナーは、表面層56上でホッピングを繰り返す際、この表面層56との接触摩擦によって帯電する。トナーに正規帯電極性(本実施形態ではマイナス極性)を与えるため、本実施形態では、表面層56の材料として、シリコーン、ナイロン(登録商標)、ウレタン、アルキッドメラミン、ポリカーボネート等が使用される。本実施形態ではポリカーボネートを採用している。また、表面層56は、外側電極54aを保護する役割も持ち合わせているので、表面層56の膜厚としては、3[μm]以上40[μm]以下の範囲内が好ましい。3[μm]よりも小さいと、経時使用による膜削れ等で外側電極54aが露出し、トナー担持ローラ41上に担持されたトナーやトナー担持ローラ41に接触するその他の部材を通じてリークしてしまうおそれがある。一方、40[μm]よりも大きいと、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られる電界が表面層56よりも外側に形成されにくくなり、表面層56の外側に強いフレア電界を形成することが困難となる。本実施形態では、表面層の膜厚は20[μm]としている。表面層56は、絶縁層55と同様にスプレー法やディッピング法等によって形成することができる。
【0028】
本実施形態では、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られる電界、より詳しくは、内側電極53aの外側電極54aとは対向していない部分(外側電極54aの櫛歯間に位置する内側電極53aの部分)と外側電極54aの櫛歯部分との間で作られる電界が、表面層56の外側に形成されることで、トナー担持ローラ41上のトナーをホッピングさせ、これによりトナーをクラウド化させる。このとき、トナー担持ローラ41上のトナーは、内側電極53aに絶縁層55を介して対向した表面層部分と、これに隣接する外側電極54aに対向した表面層部分との間を、飛翔しながら往復移動するように、ホッピングすることになる。
【0029】
トナーを安定してクラウド化させるためには、相応する大きさのフレア電界を形成することが重要となるが、このような大きなフレア電界を形成するためには内側電極53aと外側電極54aとの間に大きな電位差を形成する必要がある。しかし、このような大きな電位差を安定して形成するためには、内側電極53aと外側電極54aとの間を安定かつ有効に絶縁し、リークを防止することが重要である。
【0030】
ここで、フレア電界を形成するための2種類の電極をそれぞれ櫛歯状に形成して同心円上に配置し、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように構成した場合、その櫛歯状電極の形成品質が悪いと、2種類の電極間の絶縁性が著しく低下し、リークが起きやすい。具体的には、例えば、エッチングで電極形成する場合には除去すべき金属膜の一部が残存していたり、インクジェット法やスクリーン印刷法で電極形成する場合には電極間に導電ペーストが付着してしまったりする事態が起こり得る。このような事態が生じると、2種類の電極間でリークが起きやすいなり、適正なフレア電界を形成することができなくなる。また、この構成においては、ローラの樹脂表面上に櫛歯状電極を高い品質で形成したとしても、2種類の櫛歯状電極を形成した後にその外周面側を絶縁材で覆うことにより電極間に絶縁材を充填して電極間の絶縁性を得るため、電極間にはローラの樹脂表面と絶縁材との界面が形成され、この界面を通じたリークが生じやすく、比較的大きな電圧を印加すると電極間の絶縁性が著しく低下する。
【0031】
本実施形態によれば、内側電極53aの上に絶縁層55を設け、その絶縁層上に櫛歯状の外側電極54aを形成した構成であるため、これらの電極間にリークの原因となり得るような界面は存在しない。また、トナー担持ローラ41の製造段階において、リークの原因となり得る導電材が電極間に介在する可能性も非常に少なくできる。したがって、本実施形態によれば、内側電極53aと外側電極54aとの間を安定かつ有効に絶縁することができ、比較的大きな電圧を印加する場合でもリークを効果的に防止することができる。
なお、本発明は、フレア電界を形成するための2種類の電極をそれぞれ櫛歯状に形成して同心円上に配置し、互いの櫛歯部分が相手の櫛歯間に入り込むように構成した例においても適用可能である。
【0032】
また、本実施形態において、外側電極54aの電極幅(各櫛歯部分の幅)は、10[μm]以上120[μm]以下であるのが好ましい。10[μm]よりも小さいと、細すぎて電極が途中で断線してしまうおそれがある。一方、120[μm]より大きいと、外側電極54aの被給電部54bからの距離が遠い箇所の電圧が低くなり、その箇所でトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。本実施形態の被給電部54bは、図3に示すように、トナー担持ローラ41の外周面上における軸方向両端に設けられている。よって、本実施形態では、外側電極54aの電極幅が120[μm]より大きいと、トナー担持ローラ41の軸方向中央部におけるフレア電界が軸方向両端部のフレア電界よりも相対的に低くなり、軸方向中央部に担持されているトナーを安定かつ有効にホッピングさせることが困難となる。
【0033】
また、本実施形態では、外側電極54aの電極ピッチ(櫛歯部分間の距離)は、電極幅と同じか広いのが好ましい。電極幅よりも小さいと、内側電極53aからの電気力線の多くが表面層56の外側に出る前に外側電極54aへ収束してしまい、表面層56の外側に形成されるフレア電界が弱くなってしまうからである。一方、電極ピッチが大きいと、電極間中央のフレア電界が弱くなってしまう。本実施形態において、電極ピッチは、電極幅以上であって電極幅の5倍以下の範囲内であるのが好ましい。
本実施形態では、電極幅及び電極ピッチをいずれも80[μm]に設定している。
【0034】
また、本実施形態では、外側電極54aの電極ピッチを、トナー担持ローラ41の周方向にわたって一定となるように設定されている。電極ピッチを一定とすることで、内側電極53aと外側電極54aとの間で作られるフレア電界がトナー担持ローラ41上の周方向にわたってほぼ均一となる。よって、現像位置で周方向に均一なトナーのホッピングを実現することが可能となり、均一な現像が可能となる。
【0035】
次に、内側電極53a及び外側電極54aに印加する電圧について説明する。
トナー担持ローラ41上の内側電極53a及び外側電極54aには、それぞれパルス電源51A,51Bから第1電圧である内側電圧及び第2電圧である外側電圧が印加される。パルス電源51A,51Bが印加する内側電圧及び外側電圧は、矩形波が最も適している。ただし、これに限らず、例えばサイン波で三角波でもよい。また、本実施形態では、フレア用電極を形成するための電極が内側電極53a及び外側電極54aの2相構成であり、各電極53a,54aには互いに位相差πをもった電圧がそれぞれ印加される。
【0036】
図5は、内側電極53a及び外側電極54aにそれぞれ印加する内側電圧と外側電圧の一例を示すグラフである。
本実施形態において、各電圧は矩形波であり、内側電極53aと外側電極54aにそれぞれ印加される内側電圧と外側電圧は、互いに位相がπだけズレた同じ大きさ(ピークトゥピーク電圧Vpp)の電圧である。よって、内側電極53aと外側電極54aとの間には、常にVppだけの電位差が生じる。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界のうち表面層56の外側に形成されるフレア電界によって表面層56上をトナーがホッピングする。本実施形態において、Vppは100[V]以上2000[V]以下の範囲内であるのが好ましい。Vppが100[V]より小さいと、十分なフレア電界を表面層56上に形成できず、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となる。一方、Vppが2000[V]より大きいと、経時使用により電極間でリークが発生する可能性が高くなる。本実施形態では、Vppを500[V]に設定している。
また、本実施形態において、内側電圧と外側電圧の中心値V0は、画像部電位(静電潜像部分の電位)と非画像部電位(地肌部分の電位)との間に設定され、現像条件によって適宜変動する。
【0037】
本実施形態において、内側電圧と外側電圧の周波数fは、0.1[kHz]以上10[kHz]以下であるのが好ましい。0.1[kHz]より小さいと、トナーのホッピングが現像速度に追いつかなくなるおそれがある。一方、10[kHz]より大きいと、トナーの移動が電界の切り替わりに追従できなくなり、トナーを安定してホッピングさせるのが困難となる。本実施形態では、周波数fを500[Hz]に設定している。
【0038】
図6は、内側電極53a及び外側電極54aへ印加する内側電圧と外側電圧の他の例を示すグラフである。
この例では、内側電極53aについては、図5に示したものと同様の内側電圧が印加されるが、外側電極54aについては、直流電圧が印加される。この場合、電極間の電位差はVpp/2となる。よって、この例におけるVppの好適な範囲は、200[V]以上4000[V]以下である。この例によれば、内側電極53aと外側電極54aとの位相差を考慮する必要がなく、電源コストが安くなる。
【0039】
図7は、内側電極53a及び外側電極54aへ印加する内側電圧と外側電圧の更に他の例を示すグラフである。
この例では、外側電極54aについては、図5に示したものと同様の内側電圧が印加されるが、内側電極53aについては、直流電圧が印加される。この場合も、電極間の電位差はVpp/2となる。よって、この例におけるVppの好適な範囲は、200[V]以上4000[V]以下である。この例も、内側電極53aと外側電極54aとの位相差を考慮する必要がなく、電源コストが安くなる。
【0040】
図8は、本実施形態における内側電極53a及び外側電極54aへの給電構成を、ローラ軸に沿って切断したときの模式図である。
図9は、同給電構成を模式的に示す斜視図である。
本実施形態における内側電極53a及び外側電極54aへの給電構成において、内側電極53aは、トナー担持ローラ41のローラ軸と一体化されており、そのローラ軸端面が被給電部53bとなる。ローラ軸端面で構成される被給電部53bには、パルス電源51Aに接続された給電ブラシ57が当接している。一方、トナー担持ローラ41の外周面両端部分には表面層56が設けられておらず、トナー担持ローラ41の外周面における外側電極54aの両端部分は露出しており、この露出面が被給電部54bとなる。その露出面で構成される被給電部54bには、パルス電源51Bに接続された給電コロ58が当接している。この給電コロ58は、回転自在に支持されており、トナー担持ローラ41の回転に伴い、被給電部54bに当接したまま連れ回り回転する。
【0041】
なお、本実施形態では、外側電極54aに外側電圧を印加するための給電コロ58が2つ設けられているが、1つであっても3つ以上であってもよい。外側電極54aに外側電圧を印加するための給電コロが複数あれば、一部の給電コロで接触不良による給電不良が生じても、他の給電コロにより給電を行うことができるので、安定した給電を行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態のように、トナー担持ローラ41の外周面に外側電極54aの一部分を露出させ、その露出部分を被給電部54bとして、これに給電コロ58を当接させて給電する方式を採用する場合、その被給電部54bは、トナー担持ローラ41上における現像幅(感光体上において静電潜像が形成され得る領域と対向し得る領域幅)よりも軸方向外側に位置することが望まれる。なぜなら、被給電部54bが現像幅内に位置すると、トナー担持ローラ41と被給電部54bとの間で押しつぶされたトナーが現像に寄与することになり、その部分で現像不良が発生するからである。より好ましくは、被給電部54bは、トナー担持ローラ41上におけるトナー供給幅(トナー供給ローラ42からトナーが供給される領域幅)よりも軸方向外側に位置することが望まれる。なぜなら、被給電部54bがトナー供給幅内に位置すると、トナー担持ローラ41と被給電部54bとの間に多量のトナーが介在し、給電不良が起きやすくなるからである。本実施形態では、被給電部54bがトナー担持ローラ41上におけるトナー供給幅よりも軸方向外側に位置するように構成している。更に、本実施形態では、トナー供給幅内のトナーが被給電部54bに付着しないように、ローラ両端部に位置する各被給電部54bの軸方向中央側に図示しないトナーシールが設けられている。
【0043】
なお、本実施形態では、給電部材として、被給電部54bに連れ回り回転する給電コロ58を用いているが、これに限らず、例えば、導電性ブラシや導電性板バネなどを用いてもよい。なお、導電性ブラシや、導電性板バネなどのように被給電部54bに対して摺動する給電部材を用いる場合、被給電部54bとの接点部分の摩耗を抑制するために導電性グリスなど充填するとよい。
また、本実施形態では、内側電極53aの被給電部がローラ軸端面である場合について説明したが、これに限らず、例えばローラ軸の周面やローラ本体部の端面を被給電部としてもよい。
【0044】
次に、本発明の特徴部分であるトナー担持ローラ41に対するトナーの供給構成について説明する。
トナー供給位置において、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との接触圧を高く設定すれば、トナーをトナー担持ローラ41の外周面へ擦りつける力が大きくなり、トナー帯電量の絶対値を大きくすることができる。しかし、接触圧を高く設定すれば、トナーに対する機械的ストレスが高まり、トナーの寿命が短くなる。一方で、接触圧を低く設定すれば、トナーに対する機械的ストレスが低下して、十分なトナー寿命を得ることができるが、トナーの帯電量が不足して、トナー担持ローラ41上で安定してフレア状態にすることが困難となる。そして、接触圧を調整するだけでは、安定してフレアにするのに必要なトナー帯電量の確保と、十分なトナー寿命の確保とを、両立させることが難しい。
【0045】
本実施形態においては、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面とを、十分なトナー寿命を確保できる程度の低い接触圧で接触させる構成とし、不足するトナー帯電量については、次の構成により補うこととしている。
すなわち、図2に示すように、トナー供給ローラ42に対して電圧供給手段としての電源47を接続し、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との電位差が放電開始電圧以上となるような電圧を、トナー供給ローラ42に印加する構成を採用している。この構成により、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との間、より詳しくは、トナー供給位置に対してトナー担持ローラ41の外周面移動方向下流側に隣接する微小空隙において、放電を生じさせることができる。この放電により、トナー担持ローラ41に担持されたトナーの正規帯電極性の電荷を効率よく付与することができ、安定してフレアにするのに必要なトナー帯電量を安定して確保することができる。
【0046】
ここで、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との電位差が放電開始電圧未満となるような電圧をトナー供給ローラ42に印加する場合であっても、トナー供給ローラ42に全く電圧を印加しない場合に比べれば、トナー帯電量を増やすことが可能である。これは、トナー供給ローラ42に接触するトナーに対してトナー供給ローラ42に印加された電圧による電荷注入がなされることが主な理由であると考えられる。しかし、本発明者らの研究により、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との電位差が放電開始電圧以上である場合、放電開始電圧未満である場合に比べて、これを境にトナーの帯電効率が格段に変化することが判明した。これは、電荷注入による帯電よりも放電による帯電の方が、帯電効率が高いことに起因するものと考えられる。
【0047】
また、本実施形態のように、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との電位差が放電開始電圧以上となるような電圧をトナー供給ローラ42に印加する構成を採用すると、次の効果も得られる。
すなわち、トナー担持ローラ41の絶縁性の外周面は、トナーとの摩擦帯電により、トナーの正規帯電極性(マイナス極性)とは逆の極性にチャージアップされ、トナー担持ローラ41の表面電位の絶対値が経時的に大きくなる。そのため、初期の時点と経時の時点とで現像電界の大きさが変化し、画質が経時変化することがある。本実施形態のようにトナーをフレアにする現像方式では、上述したとおり、トナー担持ローラ41の表面層を中抵抗層で構成してトナー担持ローラ41上のチャージアップされた電荷(プラス極性の電荷)を規制ブレード43等を介して逃がすことができない。本実施形態の構成によれば、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との間、より詳しくは、トナー供給位置に対してトナー担持ローラ41の外周面移動方向上流側に隣接する微小空隙において、放電を生じさせることができる。この放電により、トナー供給位置から現像領域を通過して再びトナー供給位置に到達する間にチャージアップされたトナー担持ローラ41上の電荷(プラス極性の電荷)は、除去(あるいは消去若しくは中和)される。したがって、本実施形態によれば、現像電界が経時的に変化するのを防止でき、画質の経時変化を抑制することもできる。
【0048】
特に、本実施形態のトナー供給ローラ42は、表面に多数の微細孔が分散しているスポンジ層を表面層としたスポンジローラで構成されている。トナー供給ローラ42としてこのようなスポンジローラを採用した場合、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面とが接触部分の全域にわたって、多数の微細孔による微小空隙が存在することになる。その結果、トナー供給位置においても、その接触域全体にわたって放電を生じさせることができる。これにより、トナー供給ローラ42として表面が平坦なローラを採用する場合に比べて、トナーの帯電効率を向上させ、かつ、チャージアップされたトナー担持ローラ41上の電荷の除去効率も向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との接触部分(トナー供給位置)で速度差が生じるように、トナー供給ローラ42が回転駆動している。なお、本実施形態では、トナー供給位置においてトナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面とが互いに逆方向(カウンター方向)に移動するようにして速度差を設けているが、これらを連れ回り方向に移動する構成において速度差を設けるようにしてもよい。いずれにしても、このような速度差があることで、放電ムラに起因する不具合、すなわち、トナー担持ローラ41上におけるトナー帯電量分布のムラやトナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷の除電ムラ等による画像濃度ムラを軽減することができる。
【0050】
〔実施例1〕
次に、上記実施形態における画像形成装置の一実施例(以下、本実施例を「実施例1」という。)について説明する。
図10は、トナー供給位置から現像領域を通過して再びトナー供給位置に到達する間にチャージアップされた状態における、内側電極53aに対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V1’、外側電極54aに対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V2’、トナー供給ローラ42に印加される供給電圧VKを示すグラフである。
本実施例1において、内側電極53aに印加される内側電圧V1及び外側電極54aに印加される外側電圧V2は、その外形は図5に示したようなもので、いずれも、中心値V0が−300V、Vppが500V(−50V、−550V)、周波数fが1kHzであり、位相が互いにπだけズレている。ただし、トナー供給位置から現像領域を通過して再びトナー供給位置に到達する間に約+100V程度チャージアップされるので、内側電極53aに対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V1’、及び、外側電極54aに対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V2’は、図10に示すようになる。
なお、トナー供給ローラ42に印加される電圧は、直流電圧で、−1000Vである。
【0051】
本実施例1におけるその他の前提条件は主に次のとおりである。
・感光体径φ:60[mm]
・感光体線速:300[mm/s]
・トナー担持ローラ径φ:16[mm]
・トナー担持ローラ線速:300[mm/s]
・トナー担持ローラ回転方向:感光体回転方向に対して連れ回り方向
・現像ギャップ:300[μm]
・トナー供給ローラ径φ:14[mm]
・トナー供給ローラ線速:195[mm/s]
・トナー供給ローラ回転方向:トナー担持ローラ回転方向に対してカウンター方向
・トナー供給ローラ材料:ウレタンスポンジ
・トナー供給ローラのトナー担持ローラへの食込量:0.5[mm]
・規制ブレード材料:りん青銅
・規制ブレードの当接圧:6[gf/cm]
【0052】
上記条件において現像を行う場合、トナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷(多くても+100V程度)を加味すると、内側電極53a及び外側電極54aとトナー供給ローラ42との間では、少なくとも550V程度の電位差が確保されるため、常に放電開始電圧以上の電位差が生じる。その結果、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との間、より詳しくは、トナー供給位置に対してトナー担持ローラ41の外周面移動方向下流側に隣接する微小空隙や、トナー供給ローラ42の表面に形成されている多数の微細孔による微小空隙において、放電を生じさせることができる。この放電により、トナー担持ローラ41に担持されたトナーの正規帯電極性の電荷を効率よく付与でき、安定してフレアにするのに必要なトナー帯電量を安定して確保することができる。また、トナー供給位置に対してトナー担持ローラ41の外周面移動方向上流側に隣接する微小空隙や、トナー供給ローラ42の表面に形成されている多数の微細孔による微小空隙において生じる放電により、トナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷が除去され、現像電界が経時的に変化するのを防止でき、画質の経時変化を抑制することもできる。
【0053】
なお、本発明者らの実験により、本実施例1の条件によれば、比較例の条件と比べて、トナー帯電量が格段に増加し、かつ、トナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷が除去されることが確認されている。
比較例として用いた条件は、トナー供給ローラ42に印加する電圧が、直流電圧で、−300Vである点を除いて、上記実施例1の条件と同じである。この条件においては、内側電極53a及び外側電極54aとトナー供給ローラ42との電位差が常に放電開始電圧未満であり、放電は発生しない。
【0054】
この実験においては、トナー帯電量の確認方法として、ベタ画像を100枚連続プリントした後、トナー担持ローラ41上の現像領域に存在するトナーを吸引し、吸引したトナーの電荷量をエレクトロメータにて計測して平均電荷量(Q/M)を算出する方法を用いた。そして、本実施例1及び比較例における平均電荷量(Q/M)を比較したところ、本実施例1のトナー帯電量の絶対値は比較例よりも高くなっていることが確認された。
また、トナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷量の確認方法としては、ベタ画像を100枚連続プリントし、すべてのトナーが現像されて無い状態にしたトナー担持ローラ41上の現像領域部分の表面電位を表面電位計にて計測する方法を用いた。そして、1枚目から100枚目の電位上昇具合をモニタしたところ、比較例では表面電位が徐々に上昇するのに対し、本実施例1では表面電位の上昇が無いのが確認された。
【0055】
なお、本実施例1では、トナー供給ローラ42に対して直流電圧を印加した例について説明したが、内側電極53a及び外側電極54aとトナー供給ローラ42との間で常に放電開始電圧以上の電位差が生じるような交流電圧を印加すれば、同様の効果が得られる。ただし、交流電圧を印加する場合、トナー担持ローラ42の表面電位に対してトナー供給ローラ42の表面電位がプラス側に位置する状態で、これらの間の電位差が放電開始電圧以上となると、これにより生じる放電では、トナーに対して正規帯電極性(マイナス極性)とは逆極性の電荷を付与してしまうことになり、トナーの帯電効率が落ちる結果を招く。よって、トナー担持ローラ42の表面電位に対してトナー供給ローラ42の表面電位がプラス側に位置する状態が存在しないように、又は、その状態が存在してもその状態における電位差が放電開始電圧以上とならないように、トナー供給ローラ42へ印加する交流電圧を設定するのが好ましい。例えば、図11に示すように、トナー供給ローラ42に対し、最大値が−100V、最小値が−1000Vであるような交流電圧を印加すれば、トナー担持ローラ42の表面電位に対してトナー供給ローラ42の表面電位がプラス側に位置する状態が存在するが、その状態での電位差が放電開始電圧以上とならないので、本実施例1と同様の効果が得られる。
【0056】
〔実施例2〕
次に、上記実施形態における画像形成装置の他の実施例(以下、本実施例を「実施例2」という。)について説明する。
図12は、トナー供給位置から現像領域を通過して再びトナー供給位置に到達する間にチャージアップされた状態における、内側電極53aに対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V1’、外側電極54aに対向するトナー担持ローラ表面部分の電位V2’、トナー供給ローラ42に印加される供給電圧VK"を示すグラフである。
本実施例2においては、トナー供給ローラ42に対して内側電圧V1と同じ交流電圧(供給電圧VK")を印加する点を除いては、上記実施例1の条件と同じである。すなわち、本実施例2においては、トナー供給ローラ42に対し、最大値が−50V、最小値が−550Vである交流電圧が印加される。
【0057】
本実施例2では、トナー担持ローラ41の表面電位に対してトナー供給ローラ42の表面電位がマイナス側に位置する状態と、トナー担持ローラ41の表面電位に対してトナー供給ローラ42の表面電位がプラス側に位置する状態とが存在する。そして、前者の状態においては、トナー担持ローラ41の表面電位(+50V)とトナー供給ローラ42の表面電位(−550V)との電位差(約600V)は、放電開始電圧以上となるので、これらの間で放電が発生する。一方、後者の状態においては、トナー担持ローラ41の表面電位(−450V)とトナー供給ローラ42の表面電位(−50V)との電位差(約400V)は、放電開始電圧未満となるので、これらの間では放電が発生しない。
【0058】
このように、本実施例2においても、トナー担持ローラ42の表面電位に対してトナー供給ローラ42の表面電位がプラス側に位置する状態では放電が生じないので、トナーの帯電効率が落ちるようなことはなく、上記実施例1と同様の効果が得られる。
しかも、本実施例2によれば、トナー供給ローラ42の電源として内側電極又は外側電極用のパルス電源51A,51Bを利用することができ、独立した電源47を用いる場合よりも、構成の簡素化、省スペース化の点で、有利である。
【0059】
〔変形例1〕
次に、外側電極54aの変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
通常、各外側電極54a上の大部分のトナーが、フレア電界により、各外側電極54aにそれぞれ隣接する2つの外側電極間部分(外側電極54aとは対向していない内側電極53aが対向する部分。以下「内側電極対向部」という。)のいずれかへ移動でき、かつ、各内側電極対向部上の大部分のトナーが、フレア電界により、各内側電極対向部にそれぞれ隣接する2つの外側電極54a上のいずれかへ移動できるように、フレア電界の強さに応じて、外側電極54aの幅(トナー担持ローラ表面移動方向長さ)や内側電極対向部の幅を設定する。
【0060】
ここで、外側電極54aの幅及び内側電極対向部の幅が均等であり(厳密には製造誤差による多少の不均等が生じている。)、内側電極53a及び外側電極54aそれぞれが均等な電位となるのであれば、トナー担持ローラ41上でムラの少ないフレア電界が形成できる。このような場合、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーに他の外力が作用しない限り、トナー担持ローラ41上のトナーは、内側電極53a及び外側電極54aが対向する外周面全域にわたってほぼ均一に分散した状態で、ホッピングすることができる。
しかし、内側電極53a及び外側電極54aそれぞれが均等な電位にならず、それぞれの電極53a,54a内で例えばトナー担持ローラ41の表面移動方向に製造誤差による電位勾配が生じるなどにより、トナー担持ローラ41の表面移動方向において偏ったフレア電界が形成される場合が生じ得る。この場合、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーは、その電位勾配に応じて外側電極54a及び内側電極対向部をホッピングしながら渡り歩くように、トナー担持ローラ41の表面移動方向に偏るように移動する。その結果、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在し、トナー担持ローラ41上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じてしまう。
また、トナー担持ローラ41の表面近傍に生じる気流などがトナーに作用して、トナーをトナー担持ローラ41の表面移動方向方向上流側又は下流側へ移動させる外力が発生する場合もある。例えばトナー担持ローラ41の表面移動方向方向下流側への外力が発生した場合、フレア電界と外力の作用を受けて、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーの多くがホッピング時にトナー担持ローラ表面移動方向方向下流側へ移動する。そのため、多くのトナーが外側電極54a及び内側電極対向部をホッピングしながらトナー担持ローラ表面移動方向方向下流側へ渡り歩くように、トナー担持ローラ41の表面移動方向に偏るように移動する。その結果、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在し、トナー担持ローラ41上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じてしまう。
上記のようなムラは、画像濃度ムラを引き起こす原因となる。
【0061】
図13は、本変形例1におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図14は、電気力線の概略を図示した説明図である。
本変形例1において、外側電極54aの幅Xは均等となるように製造されるが、内側電極対向部の幅は、トナー担持ローラ41の表面移動方向において短い幅Y1と長い幅Y2とが交互に存在するように製造されている。内側電極対向部の幅において、短い幅Y1と長い幅Y2との差(Y2−Y1)は、内側電極対向部の幅を均等に製造しようとするときの製造誤差の範囲を超える差である。このような構成においては、電位勾配や気流などが原因でトナーをトナー担持ローラ表面移動方向方向上流側又は下流側へ移動させる力が発生した場合でも、以下に説明するように、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。
【0062】
すなわち、上記のような力が発生すると、トナー担持ローラ41上でホッピングするトナーの多くが、その力の向きにトナー担持ローラ表面移動方向に沿って移動しようとする。ここで、1つの外側電極54aに着目したとき、図14に示すように、これに隣接する2つの内側電極対向部との間で作られる各フレア電界(表面層56の外側に形成される電界)の強さは、その内側電極対向部の幅によって相対的に変わってくる。すなわち、短い幅Y1の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界よりも、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界の方が強くなる。そして、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界は、内側電極53a及び外側電極54aに印加される電圧が同じであれば、内側電極対向部の幅を均等とした場合に比べて強い電界となる。したがって、上記のような力が発生した場合でも、外側電極54a上からその力の方向に隣接する長い幅Y2の内側電極対向部へホッピングした多くのトナーを、再び元の外側電極54a上へ戻すことが可能となる。その結果、外側電極54a上からその力の方向に隣接する長い幅Y2の内側電極対向部へ移動したトナーのうち、更にその力の方向に隣接する外側電極54aへ渡り歩くことが少なくなる。
【0063】
このように、本変形例1においては、長い幅Y2の内側電極対向部が、上記のような力の作用を受けてその力の向きに移動しようとするトナーの移動を妨げる障壁の役割を果たし、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。よって、トナー担持ローラ41上にトナー量の大きなムラ(低周波のムラ)が生じるのを抑制でき、画像濃度ムラを抑制できる。
なお、本変形例1においては、短い幅Y1の内側電極対向部とこれに隣接する外側電極54aとの間付近に存在するトナーの量よりも、長い幅Y2の内側電極対向部とこれに隣接する外側電極54aとの間付近に存在するトナーの量の方が多くなるので、微視的にみればトナー担持ローラ41上でトナー量のムラが生じる。しかし、このようなムラはその周期が非常に短い高周波のムラであるため、画像濃度に影響が出にくく、画像濃度に影響が出たとしても人間が感知できるようなムラにはならないので、実質的に画質に影響しない。
【0064】
本変形例1において、内側電極対向部の長い幅Y2は、内側電極対向部の短い幅Y1の2倍〜5倍に設定するのが好ましい。2倍未満の場合、長い幅Y2の内側電極対向部との間に形成されるフレア電界を十分に強い電界とすることができず、上記障壁としての役割を十分に果たすことができず、画像濃度ムラの抑制効果が低いものとなってしまう。一方、5倍を越える場合、その長い幅Y2の内側電極対向部の中央部に存在するトナーが隣接する外側電極54a上に移動できず、トナーを効率的にクラウド化させることが困難となる。なお、内側電極対向部の短い幅Y1は、外側電極54aの電極幅と同程度とするのが好ましい。
本変形例1においては、外側電極54aの電極幅を40[μm]、内側電極対向部の短い幅Y1を40[μm]、内側電極対向部の長い幅Y2を120[μm]に設定している。
【0065】
なお、本変形例1においては、外側電極54aの幅Xを均等とし、内側電極対向部の幅を不均等とする場合について説明したが、逆に、外側電極54aの幅Xを不均等とし、内側電極対向部の幅を均等とする場合でも、同様の効果が得られる。
また、本変形例1においては、内側電極対向部の幅を、トナー担持ローラ41の表面移動方向において短い幅Y1と長い幅Y2とが交互に存在するように不均等としているが、不均等の方法は限られない。例えば、短い幅Y1が2つ以上続いた後に1つの長い幅Y2が存在するというように不均等としてもよい。また、幅の種類が3種類以上となるようにしてもよい。
【0066】
〔変形例2〕
次に、外側電極54aの他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図15は、本変形例2におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図16は、電気力線の概略を図示した説明図である。
本変形例2においては、内側電極53aの外周面側に絶縁層55を設けた後、その絶縁層55の全体に、アルミニウム、銅、銀などを主成分とした外側電極層を設ける。この外側電極層は、アルミニウム、銅、銀などに絶縁性粒子54cを分散させたもので、その金属部分が外側電極54aとなる。絶縁性粒子54cの平均粒径は、外側電極層の層厚よりも大きい。これにより、図16に示すように、内側電極53aからの電気力線が絶縁性粒子54cを通じて表面層56の外側へ出るようになり、表面層56の外側にフレア電界を効率よく形成できる。絶縁性粒子54cとしては、ポリエステル、エポキシ等の樹脂やガラスビーズなどの電気的絶縁物が挙げられる。また、絶縁層55上に外側電極層を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、絶縁性粒子54cを分散させた導電ペーストをスクリーン印刷によって絶縁層55の上に直接形成する方法が挙げられる。外側電極層の層厚は、数[μm]〜数十[μm]が望ましい。本変形例2では5[μm]に設定している。
【0067】
図17は、外側電極層をトナー担持ローラ41の外周面側から見たときの模式図である。
本変形例2においては、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率を変化させることで、形成される外側電極54aの表面積を制御することができ、フレア電界の強さが制御可能である。本変形例2においては、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.2以上0.8以下の範囲内であれば、トナーを十分にクラウド化させることができる。外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.8よりも大きい場合には、外側電極層の大半を絶縁性粒子54cが占めることによって、フロート電極が多数存在してしまう。すなわち、外側電極層へ印加された電圧は、絶縁性粒子54cによって分断されていない外側電極54aを通じて外側電極層全体に行き渡ることになるが、外側電極層の大半を絶縁性粒子54cが占めると、外側電極54aの多くの部分が絶縁性粒子54cにより分断されて電気的にフロート状態になる。なお、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.8以下であってもフロート電極は存在する可能性はあるが、少数ならばフレア電界の形成に大きな影響はない。一方、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率が0.2よりも小さい場合には、内側電極53aからの電気力線の多くが表面層56の外側に出る前に外側電極54aへ収束してしまい、表面層56の外側に形成されるフレア電界が弱くなってしまう。本変形例2では、外側電極層全体に対する絶縁性粒子54cの体積比率を0.4に設定している。
【0068】
本変形例2によれば、外側電極54aの広さが不均等となり、また絶縁性粒子54cの粒子間距離(上記変形例1における内側電極対向部の幅に相当)も不均等となる。その結果、上記変形例1と同様に、トナー担持ローラ41上に局部的に強いフレア電界を分散形成することができる。これにより、電位勾配や気流などが原因でトナーを特定方向へ移動させる力が発生した場合であっても、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。しかも、上記変形例1では、トナー担持ローラ41の表面移動方向に沿った方向への力にしか対応できないが、本変形例2によれば、トナー担持ローラ41の軸方向に沿った方向など、他の方向の力にも対応できる点で、上記変形例1よりも有利である。
【0069】
〔変形例3〕
次に、外側電極54aの更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
図18は、本変形例3におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図19は、外側電極層をトナー担持ローラ41の外周面側から見たときの模式図である。
本変形例3においても、上記変形例2と同様に、内側電極53aの外周面側に絶縁層55を設けた後(図20(a))、その絶縁層55の全体に外側電極層を設ける。ただし、本変形例3における外側電極層は、導電性ウレタン樹脂54aと絶縁性のメラミン樹脂54dとからなる層である。具体的には、導電性ウレタン樹脂発泡原料を調整し、これを成形型に注入して加熱硬化発泡させた後(図20(b))、発泡により形成されたセル(穴)にメラミン樹脂をローラコータを用いて塗工する(図20(c))。これにより、絶縁層55上に導電性ウレタン樹脂54aと絶縁性のメラミン樹脂54dとがランダムに分散した状態の外側電極層が形成される。なお、この導電性ウレタン樹脂部分54aが外側電極となる。また、メラミン樹脂に代えて、ウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ベークライト、ポリカーボネート、PET、POM、PPEなども使用可能である。外側電極層の層厚は、0.01[mm]以上0.3[mm]以下の範囲内が好ましい。0.01[mm]未満では成形型の精度が問題となるし、0.3[mm]よりも大きいと発泡によって生じる空気層が外側電極層内に閉じ込められてしまうためである。本変形例3では外側電極層の層厚を0.1[mm]に設定した。なお、発泡後のセル径に関しては、上記変形例2における絶縁性粒子54cの場合と同様に、外側電極層の層厚以上とする必要がある。
【0070】
本変形例3においても、導電性ウレタン樹脂54a(外側電極)の広さが不均等となり、またメラミン樹脂部分54d(上記変形例1における内側電極対向部に相当)の広さも不均等となる。その結果、上記変形例1や上記変形例2と同様に、トナー担持ローラ41上に局部的に強いフレア電界を分散形成することができる。これにより、電位勾配や気流などが原因でトナーを特定方向へ移動させる力が発生した場合であっても、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。しかも、上記変形例2と同様、トナー担持ローラ41の軸方向に沿った方向など、他の方向の力にも対応できる点で、上記変形例1よりも有利である。
【0071】
〔変形例4〕
次に、外側電極54aの更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
図21は、本変形例4におけるトナー担持ローラ41を、その回転軸に対して直交する面に沿って切断したときの断面を模式的に表した部分断面図である。
図22は、外側電極層をトナー担持ローラ41の外周面側から見たときの模式図である。
本変形例4においても、上記変形例2や上記変形例3と同様に、内側電極53aの外周面側に絶縁層55を設けた後、その絶縁層55の全体に外側電極層を設ける。ただし、本変形例4における外側電極層は、樹脂バインダー54e中に金属フィラー54aを分散させた層である。金属フィラー54aは互いに融着した状態となっている。具体的には、樹脂バインダー中に金属フィラーが分散したペースト材料を絶縁層55上にスプレーにより塗工することで、絶縁層55上に金属フィラー54aが樹脂バインダー54e中にランダムに分散した状態の外側電極層が形成される。なお、この金属フィラー部分が外側電極となる。絶縁層55上に塗工するペースト材料は、有機樹脂溶液に、金、銀、白金、パラジウム、鉛、タングステン、ニッケル等の1種以上からなる金属粒子をフィラーとして分散させたものであれば利用可能である。また、金属フィラー54aとしては、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化けい素、酸化ほう素、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化チタン等の金属酸化物を用いてもよい。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などがよい。また、溶剤としては、イソプロピルアルコールなどが使用される。増粘剤として、セルロースなどを含有させてもよい。上記ペースト材料中のバインダー樹脂54eの量は、40%〜60%が良い。あまり多いと金属フィラーが融着しないので電気抵抗が大きくなり過ぎてしまうし、少なすぎるとバインダー樹脂54eの占有面積が狭くなりすぎて、表面層56の外側に形成されるフレア電界が弱くなってしまう。本変形例4では、50%に設定した。外側電極層の層厚は、上記変形例3と同様、0.01[mm]以上0.3[mm]以下の範囲内が好ましい。本変形例4では、外側電極層の層厚を0.1[mm]に設定した。
【0072】
本変形例4においても、金属フィラー54a(外側電極)の広さが不均等となり、また樹脂バインダー54e(上記変形例1における内側電極対向部に相当)の広さも不均等となる。その結果、上記変形例1〜8と同様に、トナー担持ローラ41上に局部的に強いフレア電界を分散形成することができる。これにより、電位勾配や気流などが原因でトナーを特定方向へ移動させる力が発生した場合であっても、トナー担持ローラ41上でトナーが大きく偏在することを抑制できる。しかも、上記変形例2や上記変形例3と同様、トナー担持ローラ41の軸方向に沿った方向など、他の方向の力にも対応できる点で、上記変形例1よりも有利である。
【0073】
なお、上記変形例2〜4において、絶縁性の材料部分と導電性の材料部分とを逆にした構成であっても、同様の効果が得られる。
【0074】
以上、本実施形態(各変形例を含む。以下同じ。)に係る画像形成装置は、潜像担持体としての感光体1と、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材である内側電極53a及び外側電極54aを備えたトナー担持体としてのトナー担持ローラ41における絶縁性の外周面にトナーを担持させ、内側電極53a及び外側電極54aに対して互いに異なる電圧(内側電圧及び外側電圧)を印加することにより、内側電極53a及び外側電極54aそれぞれに対向するトナー担持ローラ外周面部分でトナーをホッピングさせるための電界(フレア電界)をトナー担持ローラ外周面の外側に形成し、トナー担持ローラ41の外周面を移動させることにより現像領域内にホッピングした状態のトナーを送り込み、感光体1上の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置4M,4C,4Y,4Kとを有し、静電潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて記録材上に画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置の現像装置4M,4C,4Y,4Kは、表面にトナーを担持した状態で表面移動して、その表面と接触するトナー担持ローラ41の外周面にトナーを供給するトナー供給部材としてのトナー供給ローラ42を有しており、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との電位差が放電開始電圧以上となるような電圧を、トナー供給ローラ42に印加する電圧供給手段としての電源47あるいは電源51A,52Aが設けられている。これにより、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面とを、十分なトナー寿命を確保できる程度の低い接触圧で接触させる構成としつつも、放電を生じさせることで、不足分のトナー帯電量を補い、安定してフレア状態にするのに必要なトナー帯電量を安定して確保することができる。また、放電を生じさせることで、トナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷が効率よく除去され、現像電界が経時的に変化するのを防止でき、画質の経時変化を抑制することもできる。
また、本実施形態によれば、トナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷を効率よく除去できることから、トナー担持ローラ41の外周面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える絶縁性材料で形成することができる。したがって、トナーの摩擦帯電効率も高まり、安定してフレア状態にするのに必要なトナー帯電量をより安定して確保することができる。
また、本実施形態によれば、トナー供給ローラ42の表面層が、表面に多数の微細孔が分散しているスポンジ層であるので、トナー供給ローラ42として表面が平坦なローラを採用する場合に比べて、トナーの帯電効率を向上させ、かつ、チャージアップされたトナー担持ローラ41上の電荷の除去効率も向上させることができる。
また、本実施形態によれば、トナー供給ローラ42の表面とトナー担持ローラ41の外周面との接触部分(トナー供給位置)で速度差が生じるようにトナー供給ローラ42を表面移動させる駆動手段を有する。これにより、放電ムラに起因する不具合、すなわち、トナー担持ローラ41上におけるトナー帯電量分布のムラやトナー担持ローラ41上のチャージアップ電荷の除電ムラ等による画像濃度ムラを軽減することができる。
また、本実施形態によれば、トナー担持ローラ41の構成として、内側電極53a及び外側電極54aをトナー担持ローラ外周面法線方向に平行な方向で互いに異なる位置に配置し、これらの電極間に絶縁層55を介在させた構成を採用している。これにより、トナー担持ローラ41上に設けられる電極53a,54aが絶縁層55で互いに分断されるため、これらの電極間をつなぐような界面が存在したり、これらの電極間にトナーが介在したりするようなことがない。よって、トナー担持ローラ41上に設けられる電極53a,54a間で界面やトナーを通じたリークが生じることがなく、安定したフレア電界の形成が可能となる。
【符号の説明】
【0075】
4M,4C,4Y,4K 現像装置
41 トナー担持ローラ
42 トナー供給ローラ
43 規制ブレード
47 電源
51A,51B パルス電源
53a 内側電極
53b 被給電部
54a 外側電極
54b 被給電部
54c 絶縁性粒子
55 絶縁層
56 表層
57 給電ブラシ
58 給電コロ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2007−133388号公報
【特許文献2】特開2008−116599号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、
互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極部材を備えたトナー担持体における絶縁性の外周面にトナーを担持させ、該複数種類の電極部材に対して互いに異なる電圧を印加することにより、該複数種類の電極部材それぞれに対向するトナー担持体外周面部分で上記トナーをホッピングさせるための電界を該トナー担持体外周面の外側に形成し、該トナー担持体の外周面を移動させることにより現像領域内にホッピングした状態のトナーを送り込み、上記潜像担持体上の潜像にトナーを供給して該潜像を現像する現像装置とを有し、
該潜像を現像して得られる画像を最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記現像装置は、上記トナー担持体の外周面にトナーを供給するトナー供給部材を有しており、
該トナー供給部材の表面と該トナー担持体の外周面との電位差が放電開始電圧以上となるような電圧を、該トナー供給部材に印加する電圧供給手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記トナー担持体の外周面を、トナーとの摩擦によってトナーに対して正規帯電極性の電荷を与える絶縁性材料で形成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
上記トナー供給部材の表面層は、表面に多数の微細孔が分散しているスポンジ層であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記トナー供給部材の表面と上記トナー担持体の外周面との接触部分で速度差が生じるように該トナー供給部材を表面移動させる駆動手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記トナー担持体は、上記複数種類の電極部材をトナー担持体外周面法線方向に平行な方向で互いに異なる位置に配置し、該複数種類の電極部材間に絶縁層を介在させた構成を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記現像装置を複数設け、各現像装置により互いに異なる色のトナーで各色に対応する潜像をそれぞれ現像し、これにより得られる各色画像が互いに重なり合ったカラー画像を形成する構成を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−191208(P2010−191208A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35747(P2009−35747)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】