説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置としての生産性の低下を抑制しつつ、中間転写体上の転写残トナーの回収不足を抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体1と、中間転写体6と、1次転写手段5と、2次転写手段7と、中間転写体6上のトナーを中間転写体6から静電的に転移させて静電的に保持する保持手段101と、保持手段101にバイアスを印加する電源15と、を有し、保持手段101が、電源15からバイアスが印加されることで、保持したトナーを中間転写体6へ静電的に転移させる転移工程を、複数の画像形成工程を経て繰り返し行うことが可能な画像形成装置Aは、電源15より保持手段101に所定の電圧を印加した際の出力電流値又は所定の電流を流した際の出力電圧値を検知する検知手段17を有し、一の転移工程における検知手段17の検知結果に基づいて、それ以降の少なくとも一の転移工程を行うタイミングを決定する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、複写機、ファクシミリなどの電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置において、カラー画像形成装置がモノクロ画像形成装置に置き換わる形で普及してきている。そして、カラー画像形成装置にもモノクロ画像形成装置並みの画像形成速度が要求されている。
【0003】
電子写真方式のカラー画像形成装置の高速化を実現する構成として、タンデム型と呼ばれる構成が提案され、又実現化されている。タンデム型の画像形成装置は、中間転写方式のものと直接転写方式のものとに大別される。
【0004】
中間転写方式を採用したタンデム型の画像形成装置では、複数色のトナーとして、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーによるトナー像が、像担持体としての複数の電子写真感光体(感光体)上にそれぞれ形成される。各像担持体上に形成された各色のトナー像は、1次転写手段により中間転写体上に順次に重ね合わせて転写(1次転写)される。次いで、中間転写体上に形成された多重トナー像は、2次転写手段により一括して紙などの転写材上に転写(2次転写)される。最後に、転写材上に転写されたトナー像は、熱、圧力などによって転写材上に定着させられて、カラー画像が形成される。感光体としては、一般的に、ドラム状の感光体、即ち、感光ドラムが用いられる。又、中間転写体としては、一般的に、無端ベルト状の中間転写体、即ち、中間転写ベルトが用いられる。
【0005】
2次転写時に転写材に転写されずに中間転写体上に残存したトナー(2次転写残トナー)は、中間転写体のクリーニング手段により除去され、回収される。
【0006】
中間転写体のクリーニング手段としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものが提案されている。即ち、中間転写体上に残存した2次転写残トナーに対して所定の電荷を付与する帯電手段を設ける。所定の電荷を付与された2次転写残トナーは、その直後の画像形成部において中間転写体から感光体に転写され、感光体のクリーニング手段により回収される。
【0007】
又、例えば、特許文献2に記載されているようなものが提案されている。即ち、2次転写残トナーを静電的に一時的に回収し、保持する保持手段を有し、保持手段上に一時的に回収された2次転写残トナーを再度中間転写体に転移させ(吐き出させ)る。そして、中間転写体に吐き出された2次転写残トナーを、その直後の画像形成部において中間転写体から感光体に転写させて、その感光体のクリーニング手段により回収する。
【0008】
上記いずれの構成も、中間転写体のクリーニング手段に廃トナーを収納する機構を省略することが可能となり、交換ユニット数の削減が達成されるため、ユーザビリティの向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−44007号公報
【特許文献2】特開平9−197750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のような中間転写体上のトナーを保持手段により一時的に回収し、その後中間転写体に吐き出させる方法を用いる場合、トナーの回収量、吐き出し量の長期にわたる安定性が不十分である場合がある。
【0011】
例えば、保持手段としてソリッドゴムからなるローラを使用した場合では、回収できるトナー量はローラの表面積に依存してしまう。ローラの表層にトナーが蓄積し、所定の電位に達してしまうと、それ以上のトナーの回収ができなくなる。所定の電位に達してしまう目安としては、ローラの外周を覆うトナー層の層厚が大変分かり易い。トナー層が増すに従って、ローラ上のトナー間で発生する放電作用によりトナーの電荷量が変化し、ローラに印加されたバイアスに対する静電的な力を維持できなくなってしまう。その結果、期待しないタイミングでローラからトナーが脱落し、場合によっては画像を汚してしまい、又、場合によっては脱落トナーが画像形成装置内に飛散し、ユーザーの手を汚してしまったり画像不具合の原因となったりしてしまう場合がある。
【0012】
保持手段として発泡性弾性ローラを使用した場合では、発泡性弾性ローラの発泡セルの中にトナーが詰まってしまう。発泡性弾性ローラの発泡セルに詰まったトナーは、吐き出し工程により中間転写体上に静電的に吐き出されるが、発泡セルへの回収工程を繰り返すことにより目詰まりを起こしてしまい、静電気力では吐き出しきれない状態となってしまう。その結果、発泡弾性ローラによるトナーの回収量も徐々に減少してしまう。予め設定された所定の周期(タイミング)で吐き出し工程を行う場合、トナーの回収能力に応じて吐き出し工程を行うことができないため、転写残トナーの回収不足による画像欠陥を引き起こしてしまう場合がある。一方、吐き出し工程の周期を短縮し、頻度を上げてしまうと、画像形成装置としての生産性の低下を引き起こしてしまい、ユーザーにとって不利益となってしまう。
【0013】
従って、本発明の目的は、画像形成装置としての生産性の低下を抑制しつつ、中間転写体上の転写残トナーの回収不足を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する移動可能な像担持体と、前記像担持体上のトナー像の転写を受ける移動可能な中間転写体と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体に転写させる1次転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を転写材に転写させる2次転写手段と、前記中間転写体上のトナーを前記中間転写体から静電的に転移させて静電的に保持する保持手段と、前記保持手段にバイアスを印加する電源と、を有し、前記保持手段が、前記電源からバイアスが印加されることで、保持したトナーを前記中間転写体へ静電的に転移させる転移工程を、複数の画像形成工程を経て繰り返し行うことが可能な画像形成装置において、前記電源より前記保持手段に所定の電圧を印加した際の出力電流値又は所定の電流を流した際の出力電圧値を検知する検知手段を有し、一の前記転移工程における前記検知手段の検知結果に基づいて、それ以降の少なくとも一の転移工程を行うタイミングを決定することを特徴とした画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像形成装置としての生産性の低下を抑制しつつ、中間転写体上の転写残トナーの回収不足を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例におけるベルトクリーニング装置の概略構成図である。
【図3】本発明に従うベルトクリーニング装置の回収工程を説明するための説明図である。
【図4】本発明に従うベルトクリーニング装置の吐き出し工程を説明するための説明図である。
【図5】回収ローラの使用に伴う状態とトナー回収量との関係の概念図である。
【図6】本発明の一実施例におけるベルトクリーニング装置の概略構成図である。
【図7】回収ローラの状態と検出される電流値との関係の一例を示すグラフ図である。
【図8】回収ローラの使用に伴う状態とトナー回収量との関係の概念図である。
【図9】回収ローラの状態と検出される電流値との関係の一例を示すグラフ図である。
【図10】回収ローラの状態と検出される電流値との関係の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0018】
実施例1
1.画像形成装置の全体構成
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施例の全体構成を示す。本実施例の画像形成装置Aは、フルカラー画像の形成が可能な電子写真方式のレーザービームプリンタである。特に、本実施例の画像形成装置Aは、中間転写方式を採用したタンデム型の画像形成装置である。
【0019】
本実施例の画像形成装置Aは、複数の画像形成部として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)Sa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、4個の画像形成部Sa〜Sdは、略水平方向に並設されている。
【0020】
本実施例では、各画像形成部の構成及び動作は共通する部分が多いため、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部に関連する要素であることを示すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して総括的に説明する。
【0021】
画像形成部Sは、像担持体としてのドラム型の感光体、即ち、感光ドラム1を備えている。この感光ドラム1は、駆動手段(図示せず)によって、図1の矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の表面の移動方向(回転方向)に従って順に、次の各手段が設けられている。先ず、感光ドラム1の表面を均一に帯電する帯電手段としての帯電装置2である。次に、画像情報に基づいてレーザービームを照射して感光ドラム1上に静電潜像(静電像)を形成する露光手段としてのスキャナ部3である。次に、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として現像する現像手段としての現像装置4である。次に、感光ドラム1上のトナー像を後述の中間転写体に転写させる1次転写手段(第1の転写手段)としての、ローラ状の接触帯電部材で構成された1次転写部材5である。次に、1次転写後の感光ドラム1の表面に残った転写残トナー(1次転写残トナー)を除去する像担持体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置9である。
【0022】
又、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdの各感光ドラム1a〜1dに対向して、トナー像を一時的に担持して、図1の矢印R2方向(時計方向)に回転(周回移動)する、移動可能な無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト6が設けられている。1次転写部材5は、中間転写ベルト6の内周面側において、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdの各感光ドラム1a〜1dのそれぞれに対向して設けられている。又、中間転写ベルト6の外周面側には、中間転写ベルト6上のトナー像を転写材Pに転写させる2次転写手段(第2の転写手段)としての、ローラ状の接触帯電部材で構成された2次転写部材7が配置されている。更に、詳しくは後述するように、中間転写ベルト6の外周面側には、2次転写後の中間転写ベルト6の表面に残った転写残トナー(2次転写残トナー)を除去する中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置10が配設されている。
【0023】
又、画像形成装置Aには、転写材Pに転写されたトナー像を転写材Pに定着させる定着手段としての定着装置8、転写材Pを収納するためのカセット11、転写材Pを給送、搬送するための給送ローラ12、搬送ローラ対13などが設けられている。
【0024】
尚、本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電装置2、現像装置4及び感光体クリーニング装置9とは、一体的にカートリッジ化され、画像形成装置Aの本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジBを形成している。
【0025】
感光ドラム1は、本実施例では、直径30mmのアルミニウム製のシリンダの外周面に、有機光導電体層(OPC感光体)を塗布して構成されている。感光ドラム1は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部が支持部材によって回転自在に支持されており、一方の端部に駆動モータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、図1の矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。
【0026】
帯電装置2は、本実施例では、ローラ状に形成された導電性ローラ(帯電ローラ)である。帯電装置2は、このローラを感光ドラム1の表面に当接させると共に、このローラに1次帯電電圧印加手段としての1次帯電電源(図示せず)によって帯電バイアスが印加されることにより、感光ドラム1の表面を一様に帯電させる。本実施例では、感光ドラム1は、負極性に帯電させられる。
【0027】
スキャナ部3は、レーザー光学ユニットである。スキャナ部3は、駆動回路(図示せず)によって画像信号に応じたレーザー光Lの点灯が制御され、帯電済みの感光ドラム1の表面をそのレーザー光Lで選択的に露光し、感光ドラム1上に静電潜像を形成する。
【0028】
現像装置4は、現像剤を収容する現像容器、現像容器内のトナーを感光ドラム1に供給する現像剤担持体としての現像ローラ41などを有する。本実施例では、現像装置4は、現像剤として、トナーである非磁性1成分現像剤を用いる。第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdの各現像装置4a、4b、4c、4dは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーを収納している。又、本実施例では、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、そのほとんどが負極性に帯電している。感光ドラム1上の静電潜像の現像時には、現像電圧印加手段としての現像電源(図示せず)から現像装置4の現像ローラ41aに電圧を供給することによって、現像ローラ41aと、静電潜像が形成された感光ドラム1と、の間に現像バイアスを印加する。これにより、静電潜像は、トナーが付着させられて、トナー像として現像される。本実施例では、感光ドラム1上の静電潜像を反転現像方式にて現像する。つまり、一様に帯電させた後に露光によって電荷を減衰させた感光ドラム1上の露光部に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させることで、感光ドラム1上の静電潜像を現像する。
【0029】
1次転写部材5は、本実施例では、ローラ状に形成された導電性ローラ(1次転写ローラ)である。本実施例では、1次転写部材5は、ステンレス鋼(SUS)などの金属からなる外径6mmのシャフトの周囲に、外径12mmとなるように発泡性弾性ローラが形成されたものである。この発泡性弾性ローラは、106〜109Ωの電気抵抗を有する。1次転写部材5は、中間転写ベルト6を挟んで感光ドラム1に加圧され、中間転写ベルト6と感光ドラム1とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)N1を形成する。1次転写時には、1次転写部材5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写電源16(図4)より、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の1次転写バイアスが印加される。これにより、感光ドラム1上のトナー像は中間転写ベルト6上に転写(1次転写)される。
【0030】
中間転写ベルト6は、本実施例では、107〜1014Ω・cmの体積固有抵抗率を持たせた、厚さ50〜150μm程度の無端のフィルム状部材で構成されている。
【0031】
尚、上記体積抵抗率は、JIS法K6911に準拠した測定プローブを用い、ADVANTEST社製高抵抗計R8340にて、温度は25℃、相対湿度は50%として、50〜100Vを印加して得た値である。
【0032】
中間転写ベルト6は、複数の支持部材としての駆動ローラ61、2次転写対向ローラ62及びテンションローラ63に掛け回されている。駆動ローラ61は、中間転写ベルト6を図1の矢印R2方向(時計回り)に回転(周回移動)させる。2次転写対向ローラ62、テンションローラ63は、中間転写ベルト6の回転に伴って従動して回転する。テンションローラ63は、中間転写ベルト6の搬送性の安定のために、中間転写ベルト6に適度なテンションを加える。2次転写対向ローラ62は、2次転写部材7の対向部材(対向極,対向ローラ)としての機能を有している。又、テンションローラ63は、後述するベルトクリーニング装置10が備える保持手段としての回収ローラ101の対向部材(対向極,対向ローラ)としての機能を有している。
【0033】
2次転写部材7は、1次転写部材5と同様の構成、物性を有するものである。2次転写部材7は、転写材Pを介して中間転写ベルト6に加圧され、中間転写ベルト6との接触部に2次転写部(2次転写ニップ)N2を形成する。2次転写時には、2次転写部材7には、2次転写電圧印加手段としての2次転写電源(図示せず)より、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の2次転写バイアスが印加される。これにより、中間転写ベルト6上のトナー像は転写材P上に転写(2次転写)される。
【0034】
感光体クリーニング装置9は、本実施例では、クリーニング部材として、弾性体であるゴム材料で形成された板状の部材、即ち、クリーニングブレードを有する。クリーニングブレードは、感光ドラム1の表面に当接している。感光体クリーニング装置9は、このクリーニングブレードによって感光ドラム1上の1次転写残トナーを感光ドラム1の表面から除去する。感光ドラム1の表面から除去されたトナーは、感光体クリーニング装置9の容器に回収される。又、後述するように、感光体クリーニング装置9は、中間転写ベルト6から感光ドラム1へと逆転写された2次転写残トナーを回収することができる。
【0035】
ベルトクリーニング装置10は、2次転写残トナーをはじめとする中間転写ベルト6上のトナーを中間転写ベルト6の表面から除去するためのものである。ベルトクリーニング装置10は、中間転写ベルト6の表面の移動方向(回転方向)において、2次転写部N2よりも下流、且つ、第1の画像形成部Saの1次転写部N1aよりも上流において、中間転写ベルト6の表面を清掃する。ベルトクリーニング装置10は、中間転写ベルト6上のトナーを一時的に回収し、保持する保持手段としての回収ローラ101を有する。回収ローラ101は、例えば、1次転写部材5又は2次転写部材7と同様の構成、物性を有する発泡性弾性ローラで構成することができる。ベルトクリーニング装置10についての詳細は後述する。
【0036】
画像形成時には、感光ドラム1の表面は帯電装置2によって一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム1は、スキャナ部3からのレーザー光Lによって走査露光されて、その表面に静電潜像が形成される。次いで、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像に応じて、現像装置4からトナーが感光ドラム1上に転移させられ、感光ドラム1には静電潜像がトナーで現像されたトナー像が形成される。感光ドラム1の表面に形成されたトナー像は、1次転写部N1において、中間転写ベルト6の表面に転写(1次転写)される。
【0037】
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のような帯電、露光、現像、1次転写の各工程が、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdにおいて行われる。そして、中間転写ベルト6には、各1次転写部N1a〜N1dにおいて各色のトナー像が順次に重ね合わせて転写された多重トナー像が形成される。
【0038】
一方、画像形成装置Aの本体の下部に装着されたカセット11に収納された転写材Pが、給送ローラ12によって1枚ずつ分離給送されると共に、搬送ローラ対13により2次転写部N2へと搬送される。そして、中間転写ベルト6上に形成された多重トナー像は、2次転写部N2において転写材Pに一括して転写(2次転写)される。
【0039】
トナー像が転写された転写材Pは、加熱ローラ81及び加圧ローラ82のローラ対を有する定着装置8へと搬送される。転写材Pは、定着装置8を通過することで、その上にトナー像が熱定着される。その後、転写材Pは、排出ローラ対14によって画像形成装置Aの上部に排出される。
【0040】
2.中間転写ベルトのクリーニング態様
次に、中間転写ベルト6のクリーニング態様について説明する。
【0041】
本実施例の目的は、必要以上の吐き出し工程の実施による画像形成装置Aとしての生産性の低下を抑制しつつ、中間転写ベルト6上の転写残トナーの回収不足による画像欠陥の発生を抑制することである。
【0042】
本実施例では、概略、ベルトクリーニング装置10の回収ローラ101のトナーの回収能力或いは吐き出し能力を検知し、その検知結果に基づいて吐き出し工程のタイミング或いは頻度を決定する。以下、更に詳しく説明する。
【0043】
本実施例では、中間転写ベルト6上の2次転写残トナーのクリーニング工程の概略は、次の通りである。先ず、回収ローラ101が中間転写ベルト6上の2次転写残トナーを回収し、一時的に保持した状態を維持する。そして、概略、回収ローラ101内のトナー量が回収能力(或いは保持能力)の最大値(回収保持許容量)に達する時点で、トナーを回収ローラ101から中間転写ベルト6に吐き出す。その後、中間転写ベルト6に吐き出したトナーを、中間転写ベルト6の移動方向において最上流の画像形成部Saの感光ドラム1aに逆転写させ(2次回収)、その画像形成部Saの感光体クリーニング装置9aにて回収する。
【0044】
図2は、ベルトクリーニング装置10の概略構成を示す。
【0045】
ベルトクリーニング装置10は、中間転写ベルト6の表面に付着したトナーを一時的に回収し、保持するための保持手段としての、回収ローラ101を有する。回収ローラ101は、中間転写ベルト6から静電的に転移されたトナーを静電的に保持可能である。
【0046】
回収ローラ101には、クリーニング電圧印加手段としてのクリーニング電源15により、正極性、負極性のいずれのバイアスも切り替えて印加できるようになっている。即ち、本実施例では、クリーニング電源15は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性である正極性の電圧を出力する第1の電圧出力部151と、トナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の電圧を出力する第2の電圧出力部152と、を有している。クリーニング電源15から回収ローラ101に印加するバイアスの極性などは、画像形成装置Aに設けられた制御部18の制御により切替えられる。
【0047】
又、第1〜第4の画像形成部Sa〜Sdのうち少なくとも1つ、本実施例では少なくとも第1の画像形成部Saにおいて、1次転写部材5には、1次転写電源16(図4)より、正極性、負極性のいずれのバイアスも切り替えて印加できるようになっている。即ち、当該1次転写電源16は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性である正極性の電圧を出力する第1の電圧出力部161と、トナーの正規の帯電極性と同極性である負極性の電圧を出力する第2の電圧出力部162と、を有している。1次転写電源16の出力するバイアスの極性などは、画像形成装置Aに設けられた制御部18の制御により切り替えられる。
【0048】
制御部18は、制御部18に内蔵されるか又は制御部18に接続された記憶手段19に記憶されたプログラム、データに従い、各種の制御を行う。本実施例に関連して、制御部18は、特に、電源15、16の電圧出力のON/OFF又は出力電圧の極性や値の切り替えなどを制御する。本実施例では、電源15、16などの制御手段は、画像形成装置Aの全体の動作を統括制御する制御部18が兼ねるが、これらのうちいずれか又は幾つかを制御する別個の制御手段が設けられていてもよい。記憶手段19としては、電子的なメモリなど利用可能な任意のものを用いることができる。
【0049】
本実施例では、回収ローラ101に印加するバイアスの条件、即ち、正極性のバイアス、負極性のバイアスのいずれを印加するかなどは、トナーの回収工程(回収動作)、吐き出し工程(転移工程,吐き出し動作)のいずれを実行するかにより切り替えられる。
【0050】
図3は、中間転写ベルト6上のトナーTNを回収ローラ101で回収し、保持する動作(回収工程)を示す。
【0051】
本実施例では、中間転写ベルト6上の2次転写残トナーは主に負極性に帯電している。そのため、図3に示すように、中間転写ベルト6上のトナーを回収ローラ101に回収する時には、回収ローラ101にトナーの極性とは逆極性である正極性のバイアスを印加する。これにより、中間転写ベルト6上のトナーを静電的に回収ローラ101に回収し、保持することができる。この時、回収ローラ101と中間転写ベルト6との間には、正規の帯電極性に帯電したトナーを中間転写ベルト6から回収ローラ101に向けて移動させる方向の電界が形成される。本工程は、回収ローラ101の回収能力が飽和するまで続けられる。回収能力の飽和に関しては後述する。
【0052】
図4は、回収ローラ101から中間転写ベルト6上にトナーTNを吐き出す場合の動作(吐き出し工程)を示す。
【0053】
図4に示すように、回収ローラ101に回収され、保持されたトナーを中間転写ベルト6上に転写させる吐き出し工程時には、トナーと同極性である負極性のバイアスを回収ローラ101に印加する。これにより、回収ローラ101から中間転写体ベルト6へ静電的にトナーを吐き出させることができる。この時、回収ローラ101と中間転写ベルト6との間には、正規の帯電極性に帯電したトナーを回収ローラ101から中間転写ベルト6に向けて移動させる方向の電界が形成される。
【0054】
中間転写ベルト6上に吐き出されたトナーは、中間転写ベルト6の回転に伴い中間転写ベルト6の移動方向において最上流の第1の画像形成部Sa(本実施例ではイエローの画像形成部)の1次転写部N1aへと搬送される。中間転写ベルト6上のトナーがその1次転写部N1aを通過する直前に、第1の画像形成部Saの1次転写部材5aに、1次転写電源16によりトナーと同極性である負極性のバイアスが印加される。この時、感光ドラム1aと中間転写ベルト6との間の1次転写部N1aには、正規の帯電極性に帯電したトナーを中間転写ベルト6から感光ドラム1aに向けて移動させる方向の電界が形成される。これにより、負極性に帯電している中間転写ベルト6上のトナーが感光ドラム1aに転写される。感光ドラム1a上に転写されたトナーは、感光体クリーニング装置9aにより回収される。これにより、中間転写ベルト6上のトナーのクリーニング工程の終了となる。尚、上述のように、1次転写部材5aのバイアスの制御も、回収ローラ101のバイアスの制御と同様、画像形成装置Aの制御部18にて制御される。又、本実施例では、第1の画像形成部Saの感光ドラム1aに中間転写ベルト6からトナーを回収するが、これに限定されるものではなく、任意の画像形成部Sにおいて同様にして中間転写ベルト6からトナーを回収することができる。
【0055】
ここで、回収ローラ101は、本実施例では、金属の芯金を発泡弾性体で覆った発泡性弾性ローラで構成される。特に、本実施例では、回収ローラ101は、芯金上に、次のような発泡弾性層を有する発泡性弾性ローラである。即ち、芯金上に、105〜1010(Ω/cm2)に電気抵抗値が調整され、発泡径が50〜300μmの発泡セルを有する発泡弾性体であるシリコーンゴム系或いはウレタンゴム系の材料から成る発泡弾性層を有する。発泡弾性体の発泡径の大きさは、選択する材料、画像形成装置Aの画像形成速度などに応じて最適なものを選択すれば良い。
【0056】
回収ローラ101は、中間転写ベルト6を挟んでテンションローラ63に加圧されている。
【0057】
回収ローラ101は、駆動回転させても、中間転写ベルト6に対して従動回転させてもよい。回収ローラ101を駆動回転させる場合は、対向部にて中間転写ベルト6の移動方向に対して順方向及び逆方向のどちらに移動するように駆動回転させてもよい。但し、回収ローラ101の耐磨耗性などを考慮すると、回収ローラ101は、対向部にて中間転写ベルト6の移動方向に対して順方向に移動するように駆動回転させることが好ましい。本実施例では、回収ローラ101は、対向部にて中間転写ベルト6の移動方向に対して順方向に移動するように回転する。又、回収ローラ101は、中間転写ベルト6の移動速度(周速度)に対して0〜100%の周速度が設けられた回転速度(周速度)になるように、その回転が制御されてよい。
【0058】
又、回収ローラ101によるトナーの回収工程時、吐き出し工程時には、好ましくは、回収ローラ101には500V〜3kV(絶対値)のバイアスが印加される。印加されるバイアス値は、回収ローラ101に使用されている材料、画像形成装置Aが使用される環境(温度、湿度)などによって異なる。
【0059】
更に、中間転写ベルト6から感光ドラム1へのトナーの逆転写時には、好ましくは、1次転写部材5には、500V〜3kV(絶対値)のバイアスが印加される。印加されるバイアス値は、1次転写部材5に使用されている材料、画像形成装置Aが使用される環境(温度、湿度)などによって異なる。
【0060】
尚、回収ローラ101の長手方向(回転軸線方向)の長さは、中間転写ベルト6の移動方向と略直交する方向の長さと同等である。
【0061】
3.吐き出し工程のタイミング
次に、回収ローラ101からのトナーの吐き出し工程のタイミングの制御について説明する。
【0062】
図5は、画像形成装置Aの使用状況に伴う回収ローラ101の状態を模式的に表した図である。同図の横軸は画像形成装置Aの使用状況であり、縦軸は回収ローラ101の状態、即ち、発泡性弾性ローラ内のトナーの状態を表したものである。
【0063】
初期状態はトナーの無い状態(状態1)から始まる。使用に伴い、回収ローラ101にはその外周面からトナーが回収、保持されてゆき(状態2)、回収能力の限界(状態3)に達する。この回収能力の限界に達した点を飽和状態(飽和点)という。飽和状態においては、それ以上のトナーの回収は困難であるため、トナーの吐き出し工程が行われる。使用初期の時点ではトナーの吐き出しにより回収ローラ101内のトナーは殆ど全て吐き出されるが(状態4)、使用に伴って回収ローラ101内に残存するトナー量が増えてゆく(状態5〜7)。従って、回収ローラ101の回収可能量は、使用に伴い徐々に減少する。
【0064】
回収ローラ101による回収工程は、毎画像工程後に行われる。しかしながら、吐き出し工程を行うタイミングでは、本実施例では最上流の第1の画像形成部Saへのトナーの回収が行われることより通常の画像形成を行うことができない。そのため、吐き出し工程は、所定のタイミングに行われる。この所定のタイミングとは、本実施例では、後述するように回収ローラ101のトナーの回収能力或いは吐き出し能力応じて画像形成装置Aの制御部18で設定される間隔である。通常、画像形成の100〜1000枚間隔で吐き出し工程を行うことで回収ローラ101のクリーニングが達成される。
【0065】
ここで、本実施例では、回収ローラ101のトナーの回収能力を、回収ローラ101のインピーダンス変化により判断する。特に、本実施例では、回収ローラ101のインピーダンス変化を、所定の電圧を印加した際に回収ローラ101に流れる電流値の変化により検知する。
【0066】
図6に示すように、本実施例では、回収ローラ101にバイアスを印加するクリーニング電源15には、回収ローラ101のインピーダンスの変化を検知するための検知手段として電流検出装置17が接続されている。そして、この電流検出装置17の検出結果に係る信号が制御部18に入力されるようになっている。本実施例では、回収ローラ101がトナーを中間転写ベルト6に吐き出す場合のインピーダンス変化を検出することを目的としている。そのため、トナーと同極性である負極性のバイアスを出力する側の回路、即ち、第2の電圧出力部152側の回路に電流検出装置17を設けている。
【0067】
回収ローラ101に所定の電圧を印加した時の電流値(I)には、次のような関係が成り立つ。即ち、初期状態(図5の状態1)、即ち、トナーを回収していない状態の電流値をI(状態1)、飽和状態(図5の状態3)、即ち、トナーが十分に回収された状態の電流値をI(状態3)とすると、次式の関係が成り立つ。
I(状態1)>I(状態3)
【0068】
つまり、初期状態では、回収ローラ101内にトナーが詰まっていないため、回収ローラ101のインピーダンスが小さく、電流が流れる。一方、飽和状態では、回収ローラ101内にトナーが十分に詰まっており、回収ローラ101にトナーを加えたインピーダンスとなるため、電流が流れなくなる。
【0069】
図7は、回収ローラ101中に残存するトナー量(図5中の状態4,5,6,7)と、検出される電流値との関係の一例を表した図である。同図は、回収ローラ101の状態3(トナーが飽和状態に詰まっており、最も電流が流れない状態)の電流値I(状態3)を基準に、それからの電流変化を表したものである。
【0070】
一例として、吐き出し工程時に回収ローラ101に所定の電圧を印加した場合の、時間の経過に伴う回収ローラ101に流れる電流値のプロファイル(以下、「電流プロファイル」という。)は、図7に示すようになる。同図に示すように、回収ローラ101の状態に応じて、吐き出し工程時に所定の電圧を印加した際に安定する電流値が異なる。
【0071】
吐き出し工程の開始時には、回収ローラ101が回転しながらトナーが吐き出されるので、回収ローラ101の1周分は徐々にインピーダンスが変化する。そのため、それに伴って電流値が変化する。従って、回収ローラ101の1周分の電流プロファイルの傾きは、回収ローラ101の状態によって異なるものである。
【0072】
そして、回収ローラ101の周回が過ぎると、吐き出されるトナーが減ることにより、電流値としては安定した領域となる。
【0073】
尚、図7では、回収ローラ101の1周分を境界条件として電流プロファイルの変化を示しているが、この回収ローラ101の周回は1回に限るものではなく、複数回の周回の場合もある。
【0074】
つまり、一定時間経過後(本実施例では回収ローラ101の1周後であるとして説明する。)は、トナーを吐き出しきった部分であるため、電流値が一定となる。
【0075】
このように、吐き出し工程時に回収ローラ101に流れる電流値Iをその安定領域(変動が収束した時点)において検出することにより、回収ローラ101のトナーの吐き出し量或いはその後のトナーの回収量を推測することが可能である。
【0076】
図5は、回収ローラ101からのトナーの吐き出し工程を行う周期(間隔)Tが一定の場合の模式図である。
【0077】
図8は、電流検出装置17によって検出された電流値(検出電流値)によりトナーの吐き出し工程を行う周期(間隔)Tを調整する本実施例の制御を示した図である。
【0078】
図8中のT1を基準周期とする。図7に示したように、例えば、図8中の状態4、状態5においては、検出電流値は、それぞれ電流値I(状態4)、電流値I(状態5)となる。そして、図8中の周期Tは、典型的には、T1>T2>T3>T4の関係となる。即ち、使用に伴って回収ローラ101内に残存するトナー量が増えてゆくにつれて、回収ローラ101の回収可能量は徐々に減少するため、それに応じてトナーの吐き出し工程の周期Tも徐々に短くなるように設定される。
【0079】
本実施例では、画像形成装置Aの制御部18に内蔵されるか又は制御部18に接続された記憶手段19に、予め用意された、検出電流値Iに対してトナーの吐き出し工程を行う周期Tを関係付けたテーブルを記憶している。そして、制御部18は、その記憶手段19に記憶されたテーブルに従って、電流検出装置17から得られた検出電流値Iの情報からトナーの吐き出し工程を行う周期Tを決定(調整)する。これにより、トナーの吐き出しタイミングを回収ローラ101の状態に応じて最適化することが可能となる。
【0080】
このように、本実施例では、所定の電圧を印加した際に回収ローラ101に流れる電流値を電流検出装置17により検出する。即ち、回収ローラ101に担持されたトナー量に応じて変化する回収ローラ101のインピーダンスに係る情報を検出する。そして、その検出結果に応じて回収ローラ101からのトナーの吐き出し工程の周期を可変とする。
【0081】
つまり、本実施例によれば、回収ローラ101が回収可能なトナー量を推測し、推測した回収可能量に応じたタイミングで回収ローラ101からのトナーの吐き出し工程のタイミング或いは頻度を決定する。これにより、回収不能状態で回収ローラ101が回収工程を行うことによるクリーニング不良、或いは必要以上に頻繁な吐き出し工程による画像形成装置としての生産性の低下を抑制することができる。
【0082】
以上説明したように、本実施例によれば、回収ローラ101のトナーの回収可能量を検出し、次回の吐き出し工程のタイミングを適正に判断する。これにより、回収ローラ101が飽和状態で回収工程を行うことを抑制することが可能となり、良好な中間転写ベルト6のクリーニング性能を維持することができる。又、回収ローラ101の能力を最大限利用することが可能となるため、回収ローラ101が飽和状態に至る以前にトナーの吐き出し工程が行われることによる画像形成動作の中断といった画像形成装置としての生産性の低下を抑制することが可能となる。つまり、本実施例によれば、中間転写ベルト上のトナーを一時的に回収し、保持する回収ローラ101の、使用状況などによるトナーの回収能力或いは吐き出し能力の変化を検知する。そして、検知したその回収能力、吐き出し能力に応じて吐き出し工程を実施する。そのため、中間転写ベルト6のクリーニングを長期に亘って安定して行うことが可能となる。
【0083】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0084】
図9は、回収ローラ101中に残存するトナー量と、検出される電流値との関係の一例を表した図である。
【0085】
実施例1の図7に示す関係においては、回収ローラ101の1周後には、回収ローラ101から吐き出されるトナーが殆ど無い状態となっているものとして説明した。
【0086】
しかし、画像形成装置A或いは回収ローラ101の構成や使用状況によっては、回収ローラ101の1周後以降も徐々にトナーが吐き出される場合がある。本実施例では、その場合に回収ローラ101のトナーの回収能力を検知する手段について説明する。
【0087】
図9は、図5の状態3から状態4に至るトナーの吐き出し工程の場合の電流プロファイルを例として示したものである。
【0088】
本実施例では、回収ローラ101が回収したトナーを吐き出す際には、回収ローラ101の1周目乃至2周目までに殆どのトナーが吐き出される。この工程を「初期段階」、その工程以降を「後期段階」と称することにする。
【0089】
初期段階においては、所定の電圧を印加した際に回収ローラ101に流れる電流値は、図9中の電流プロファイルAとなる。電流プロファイルAは傾きa(第1の傾き)の直線である。同様に、後期段階では傾きb(第2の傾き)を持った電流プロファイルBとなる。電流プロファイルBは最終的には回収ローラ101がトナーを吐き出しきった状態となるため、回収ローラ101中に残存したトナー量に応じた電流値に収束するプロファイルを示すことになる。
【0090】
本実施例では、上述のような電流プロファイルの傾きの変化を利用して、電流値I(状態4)(即ち、吐き出し工程時に回収ローラ101に流れる電流値Iの変動が収束した時点)を算出する。
【0091】
例えば、画像形成装置Aの画像形成速度が100mm/secであり、中間転写ベルト6の回転速度(周速度)、回収ローラ101の回転速度(周速度)も同様に100mm/secであるとする。又、回収ローラ101は直径12mmの発泡性弾性ローラであるものとする。この場合、回収ローラ101の1周の距離は、約37.7mmであり、1周に要する時間は0.377sec(377msec)である。
【0092】
図10は、吐き出し工程時に、電流検出装置17が50msec間隔で電流値をサンプリングした場合の、各サンプリング時(S(0)、S(1)、S(2)....)の検出電流値(I(0)、I(1)、I(2)...)を表した図である。
【0093】
画像形成装置Aの制御部18において、次式に示すように、検出電流値の差分値を演算にて求める。
I(n+1)−I(n):n=0,1,2...
【0094】
初期段階の差分値より電流プロファイルAの傾きaが算出され、後期段階の差分値より電流プロファイルBの傾きbが算出される。算出された傾きa、bより、図10中の変化点となる電流値I(状態4)が求められる。
【0095】
求められた電流値I(状態4)に応じて、回収ローラ101の吐き出しタイミングを、実施例1で説明したのと同様の方法により算出し、吐き出し工程を実行する。
【0096】
以上説明したように、本実施例によれば、後期段階において回収ローラ101からのトナーの吐き出しが徐々に継続される場合においても、回収ローラ101の回収可能量を求めることが可能となる。そして、回収ローラ101からのトナーの吐き出し工程のタイミングを適切に判断し、中間転写ベルト6のクリーニング不良による画像欠陥発生を抑制し、又吐き出し工程の頻度を適性化することが可能となる。
【0097】
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0098】
本実施例では、図8の状態1、即ち、回収ローラ101の初期状態における検出電流値I(状態1)を基準にして、各吐き出し工程時における検出電流値との比で、次の吐き出し工程のタイミングを決定する。
【0099】
実施例1、2においては、吐き出し工程のタイミングを、所定の電圧を印加した際に回収ローラ101に流れる電流値により決定していた。
【0100】
これに対して、本実施例では、初期状態、即ち、トナーを回収していない状態の回収ローラ101で検出される電流値である初期値と、各吐き出し工程時に検出される電流値と、により決定する。
【0101】
尚、上記初期値は、画像形成装置Aが新品であるために回収ローラ101が未使用状態であるか、又は、回収ローラ101を交換した直後であるために回収ローラ101が未使用状態であるときに検出される電流値である。いずれも回収ローラ101としては未使用状態、即ち、トナーが一切回収されていない状態である。本実施例では、この初期値は、画像形成装置Aの制御部18に内蔵されるか又は制御部18に接続された記憶手段19に記憶保持される。
【0102】
図8の状態1、3、4、5を例として更に説明する。
【0103】
状態1及び状態4は、本実施例では、いずれも回収ローラ101中にトナーが無い状態を示している。電流値で示すと、次式が成り立つ。
I(状態1)=I(状態4)
【0104】
尚、状態4は画像形成工程を経ているものの、吐き出し工程により回収ローラ101中のトナーが全て吐き出された状態であるものとする。
【0105】
一方、状態3は、回収ローラ101がトナーで飽和状態になっている状態である。従って、回収ローラ101のトナーの回収可能量は下記の(1)式となる。
I(状態3)−I(状態1) ・・・(1)
【0106】
(1)式の値を、初期状態における回収ローラ101のトナーの回収可能量を表すI(F)とする。即ち、下記の(1a)式となる。
I(状態3)−I(状態1)=I(F) ・・・(1a)
【0107】
吐き出し工程の周期Tの基準値を基準周期T1とする。この基準周期T1は、画像形成装置Aの構成、使用状況、回収ローラ101の特性など、状態1から状態3となる条件に応じて予め画像形成装置Aの制御部18に内蔵されるか又は制御部18に接続された記憶手段19に設定することが可能である。
【0108】
状態4以降の吐き出し工程のタイミングT2、T3は、それぞれ下記の式(2)、(3)から求める。
T2=〔(I状態(3)−I(状態4))/I(F)〕×T1 ・・・(2)
T3=〔1−(I(状態5)−I(状態4))/I(F)〕×T1 ・・・(3)
【0109】
(2)式では、本実施例においては、
I(状態3)−I(状態4)=I(F) ・・・(2a)
であるため、結局、次の関係、
T2=T1
となる。
【0110】
即ち、状態4においては、回収ローラ101中に残存するトナーがないため、回収能力は初期状態のままであることを意味している。その結果、次回の吐き出しタイミングは基準周期T1で良いということになる。
【0111】
一方、(3)式では、状態5において回収ローラ101中に残存するトナーがあるため、状態4以降の回収ローラ101のトナーの回収可能量は、下記の式(4)となる。
回収可能量(状態4〜状態5)
=〔1−(I(状態5)−I(状態4))/I(F)〕 ・・・(4)
【0112】
(4)式の値は、次の関係、
0<(4)式<1
の間の数値を取る。そのため、(3)式より、吐き出し工程のタイミングは、基準周期T1より短くなる。
【0113】
(2)式、(3)式の関係式を用いることにより、状態6以降の吐き出し工程のタイミングT4、T5、.....を算出し、算出された周期Tに応じて適切なタイミングで吐き出し工程を実行することが可能となる。
【0114】
尚、以上では、初期状態の回収ローラ101で検出される電流値である初期値が記憶保持されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、初期状態の回収ローラ101で検出される電流値である初期値以外にも、状態3において検出される電流値を記憶保存する方式を採用してもよい。即ち、一の吐き出し工程における検出電流値を、回収ローラ101の初期状態での検出電流値又は回収ローラ101にトナーが飽和した時点での検出電流値と比較することで、吐き出し工程のタイミングを決定することができる。回収ローラ101の初期状態での検出電流値と比較することは、上記式(1a)にて表される初期の回収ローラ101の回収可能量を基準としてその後各状態における回収ローラ101の回収可能量を予測することに相当する。又、回収ローラ101にトナーが飽和した時点での検出電流値と比較することは、上記式(2a)で表される初期の回収ローラ101の吐き出し可能量を基準としてその後の各状態における回収ローラ101の吐き出し可能量を予測することに相当する。
【0115】
尚、上記初期値や状態3における検出電流値の記憶手段としては、例えば、制御部18内にNVRAMなどの記憶保持手段を設けることが好ましい。
【0116】
又、上記初期値の設定方法としては、回収ローラ101の新旧を画像形成装置Aが自己判断するか操作者が画像形成装置Aに指示することによって、初期状態の回収ローラ101に対する検出電流値を記憶するようにすることができる。或いは、回収ローラ101の交換時に、操作者が画像形成装置Aのオペレーションパネルなどから設定することで記憶するようにしても良い。いずれの手段でも同様の効果が得られる。
【0117】
又、回収ローラ101の各状態における検出電流値は、実施例1、2のいずれの方法によっても求めることができる。
【0118】
以上説明したように、本実施例によれば、回収ローラ101の初期状態における検出電流値を記憶保存することで、その後の回収ローラ101内のトナーの吐き出し工程のタイミングを的確に判断することが可能となる。その結果、中間転写ベルト5のクリーニング不良を抑制し、又吐き出し工程の頻度を必要以上に増やすことを抑制することが可能となる。
【0119】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0120】
例えば、上記実施例では、一の吐き出し工程時における検出電流値に基づいて、その次の吐き出し工程までの間隔(周期)を決定するが、検出電流値は直近の吐き出し工程のタイミングの決定に使用することに限定されるものではない。例えば、直近の吐き出し工程はより以前に決定されたタイミングで行うが、直近の吐き出し工程の次の吐き出し工程を当該検出電流値に基づいて決定するようになっていてもよい。一の吐き出し工程における検出電流値に基づいて、それ以降の少なくとも一の吐き出し工程のタイミングを決定するようになっていればよい。
【0121】
又、上記実施例では、回収ローラ101に所定の電圧を印加した際のクリーニング電源15の出力電流値を電流検出装置17によって検知するが、これに限定されるものではない。回収ローラ101のインピーダンスの変化を検知できればよいので、回収ローラ101に所定の電流を流した際のクリーニング電源15の出力電圧値を電圧検出装置によって検知するようになっていてもよい。電流を検知する場合とは検出値の増減関係(大小関係)は異なるが、上記実施例の原理を適用し、回収ローラ101に担持されたトナー量に応じて変化する電圧値を検出することで、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0122】
又、上記各実施例は、画像形成装置Aとして、水平方向に複数の感光体を並設した方式(インライン方式)を例として説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、1つの感光体に対して1色ずつ順次に形成したトナー像を中間転写体に順次に転写する方式(4パス方式)の画像形成装置に適用することも可能である。
【0123】
又、上記各実施例ではベルトクリーニング装置は、中間転写ベルトからトナーを一時的に回収し、保持する保持手段として発泡性弾性ローラを有するものとして説明したが、これに限定されるものではない。保持手段としては、例えば、ブラシ状部材などを用いても良く、本発明を適用することで上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0124】
1 感光ドラム(像担持体)
6 中間転写ベルト(中間転写体)
9 感光体クリーニング装置
10 ベルトクリーニング装置
15 クリーニング電源
16 1次転写電源
18 制御部
19 記憶手段
101 回収ローラ(保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する移動可能な像担持体と、前記像担持体上のトナー像の転写を受ける移動可能な中間転写体と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体に転写させる1次転写手段と、前記中間転写体上のトナー像を転写材に転写させる2次転写手段と、前記中間転写体上のトナーを前記中間転写体から静電的に転移させて静電的に保持する保持手段と、前記保持手段にバイアスを印加する電源と、を有し、前記保持手段が、前記電源からバイアスが印加されることで、保持したトナーを前記中間転写体へ静電的に転移させる転移工程を、複数の画像形成工程を経て繰り返し行うことが可能な画像形成装置において、
前記電源より前記保持手段に所定の電圧を印加した際の出力電流値又は所定の電流を流した際の出力電圧値を検知する検知手段を有し、一の前記転移工程における前記検知手段の検知結果に基づいて、それ以降の少なくとも一の転移工程を行うタイミングを決定することを特徴とした画像形成装置。
【請求項2】
一の前記転移工程における前記検知手段の検知結果として、前記検知手段により検知される前記出力電圧値又は前記出力電流値の変動が収束した時点における前記出力電圧値又は前記出力電流値に基づいて、前記タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変動が収束した時点を、当該変動の傾きが第1の傾きから第2の傾きに変化する変化点とすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
一の前記転移工程における前記検知手段の検知結果を、前記保持手段にトナーが回収されていない時点での前記検知手段の検知結果又は前記保持手段にトナーが飽和した時点での前記検知手段の検知結果と比較することで、前記タイミングを決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
一の前記転移工程における前記検知結果に基づいて、その次に行う前記転移工程のタイミングを決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−197513(P2010−197513A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40001(P2009−40001)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】