画像形成装置
【課題】転写ニップにシート状部材が進入する際に発生するトナー像担持ベルトの速度変動を抑制する画像形成装置を提供する。
【解決手段】突入検知部25は、ロータリーエンコーダからの回転情報に基づいて入口ローラ4の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値とを比較し、入口ローラ4の線速が閾値を超えたら、突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。駆動制御部28は、突入信号に基づき、用紙先端本ニップ部突入時にアクチュエータ32を駆動させてテンション制御領域T2のテンションを弱める。
【解決手段】突入検知部25は、ロータリーエンコーダからの回転情報に基づいて入口ローラ4の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値とを比較し、入口ローラ4の線速が閾値を超えたら、突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。駆動制御部28は、突入信号に基づき、用紙先端本ニップ部突入時にアクチュエータ32を駆動させてテンション制御領域T2のテンションを弱める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単葉のシート状部材へ記録する電子写真方式、静電記録方式、イオノグラフィー、磁気記録方式等の画像形成方式を採用した複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。詳しくは、中間転写ベルト等のトナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写して最終画像を得る画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像形成装置において、感光体ドラム上のトナー像を、一次転写部でトナー像担持ベルトである中間転写ベルト上に一次転写し、この中間転写ベルト上の4色のトナー像を二次転写ニップでシート状部材に二次転写する中間転写方式が多く採用されている。この中間転写ベルト方式の画像形成装置においては、薄紙や厚紙、はがき、封筒などさまざまな種類のシート状部材が使用可能で汎用性が高いという利点を有する。
【0003】
また、中間転写ベルト方式の画像形成装置としては、二次転写ニップを形成する張架ローラ(以下、二次転写対向ローラと呼ぶ)との接触位置が中間転写ベルトの移動方向下流端となる中間転写ベルトの張架面(以下、二次転写ニップ上流側張架面とよぶ)にシート状部材が接触した後に、シート状部材が二次転写ニップに進入するように中間転写ベルトやシート状部材の搬送部材を配置したものがある。詳しくは、例えば、特許文献1に記載のように、二次転写ニップに向けて搬送されるシート状部材の搬送方向と二次転写ニップ上流側張架面とが平行ではなく角度を持ったレイアウトであり、搬送されてきたシート状部材はその先端が二次転写ニップ上流側張架面に接触し、中間転写ベルトの表面移動によって二次転写ニップへと案内される構成である。このようにシート状部材の先端を上流側張架面に接触させて二次転写ニップにシート状部材を案内することによって、シート状部材を安定的に二次転写ニップに進入させることができる。
【0004】
ところが、ある程度以上の厚さを有するシート状部材が二次転写ニップに突入する際には、それまで一定速度で駆動されていた中間転写ベルトの速度が短時間の間変動し、一次転写部で画像に乱れが生じるという不具合が発生していた。
【0005】
詳しく説明すると、図23に示すように、シート状部材の先端が二次転写ニップへ進入することにより、二次転写ニップがシート状部材Sの厚さ分だけ押し広げられる。二次転写ニップがシート状部材Sの厚さ分だけ押し広げられると二次転写対向ローラ116の駆動に突発的に負荷が加わり、二次転写対向ローラ116の回転が一時的に遅くなる。これにより、二次転写対向ローラ116で送られるベルト量よりも二次転写ニップ上流側張架面の上流端が巻き付いている駆動ローラ114から送り出されるベルト量の方が多くなる。その結果、二次転写ニップ上流側張架面が弛み気味となる。一方、二次転写対向ローラ116が送るベルト量よりも駆動ローラ114の駆動力により従動ローラ115が送り出すベルト量の方が多くなる。その結果、中間転写ベルト110の二次転写対向ローラ116と従動ローラ115との間の張架面(以下、二次転写ニップ下流側張架面とよぶ)は、ベルト移動方向と反対側に引っ張られる。すると、従動ローラ115が、ベルト移動方向と反対側に引っ張られ減速し、中間転写ベルトの従動ローラ115と駆動ローラ114との間の領域(以下、一次転写領域という)がベルト移動方向と反対側に引っ張られ、一次転写ニップにおける中間転写ベルトの速度が減速する。従って、この減速が生じているときに、感光体ドラム104から中間転写ベルト110に一次転写部で画像の転写が行われると上記速度変動のため画像に乱れが生じてしまう。
【0006】
また、高画質化のために、トナー像をシート状部材へ転写する際、画像転写と画像定着とを同時に行なう転写定着装置を有する画像形成装置がある。この場合も、ある程度以上の厚さを有するシート状部材が転写定着部に突入する際に、それまで一定速度で駆動されていた中間転写ベルトの速度が短時間の間減速し、一次転写部などで画像に乱れが生じるという不具合が発生し得る。
【0007】
このような不具合は、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入する前に、その突入によって中間転写ベルトに速度変動が発生するタイミングを予測し、シート状部材の突入時に中間転写ベルトの速度を上げることで速度変動を打ち消すフィードフォワード制御によって回避可能であり、従来、以下の画像形成装置が知られている。
【0008】
特許文献1には、レジストローラクラッチング開始から、シート状部材が二次転写ニップへ突入するまでの時間を予め計測しておき、レジストローラクラッチング開始を起点にその計測された時間をフィードフォワード制御のタイミングとして用いた画像形成装置が開示されている。
【0009】
また、このような不具合は、中間転写ベルト110の二次転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られることを抑制することでも、回避可能であり、従来、以下の画像形成装置が知られている。
【0010】
特許文献2には、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入する際、張り気味となる中間転写ベルトの二次転写ニップ下流側張架面にベルトを内側に屈曲させるように外側からバネにより付勢するテンションローラを設け、このテンションローラにより中間転写ベルトの二次転写ニップ下流側張架面のテンション力を調節する画像形成装置が開示されている。具体的には、中間転写ベルト110の二次転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られ、二次転写ニップ下流側張架面のテンションが増加すると、テンションローラが外側に変位して、二次転写ニップ下流側張架面のテンションを減少させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、レジストローラクラッチングを開始して、レジストローラに駆動力が伝達されるまでのクラッチング時間がばらついてしまい、レジストローラクラッチング開始からシート状部材が二次転写ニップへ突入するまでの時間に大きなばらつきが生じる。そのため、予め得た計測時間に対して誤差が生じ、正確なフィードフォワード制御のタイミングを得ることは困難であった。また、クラッチング時間が安定していたとしても、実際には、シート状部材の突入タイミングは毎回ばらつくため、事前に計測した値を用いて正確なフィードフォワード制御を行うことは難しく精度の点で問題があった。
【0012】
また、紙の腰、二次転写加圧力、二次転写ローラ硬度などの変化によって、シート状部材の先端が二次転写ニップへ進入したときの速度変動波形が異なってくる。よって、フィードフォワード制御の場合、想定している打消し対象の変動波形と実際の変動波形とが異なってしまい、ベルト速度変動を悪化させるおそれがある。
【0013】
また、特許文献2に記載の画像形成装置では、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入したとき、二次転写ニップ下流側張架面は、所定のテンションによってベルトが張った状態である。よって、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入したときは、二次転写ニップ下流側張架面のテンションが増加してから、テンションローラが変位して二次転写ニップ下流側張架面のテンションが弱められ、突入前のテンションに戻す。よって、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入直後は、二次転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られる力が働き、その張力が、二次転写ニップ下流側張架面よりも下流側の張架面に及んでしまう。その結果、一次転写部などで画像に乱れを十分に抑制することができなかった。
【0014】
また、これまでトナー像担持ベルトが中間転写ベルトである中間転写方式の画像形成装置について説明したが、トナー像担持ベルトが感光体ベルトであり感光体ベルト上のトナー像を転写部でシート状部材に直接転写する直接転写方式の画像形成装置であっても、上記転写部で同様の問題が生じ得る。そして、感光体ベルトに速度変動が生じると、潜像を形成する露光光の照射タイミングと感光体ベルト表面が露光位置を通過するタイミングにズレが生じ、感光体ベルト上に形成される潜像の位置ズレが生じる。
【0015】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、転写ニップにシート状部材が進入する際に発生するトナー像担持ベルトの速度変動を抑制する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架ローラによって張架され、表面にトナー像を担持して無端移動するトナー像担持ベルトと、前記複数の張架ローラのうちの一つと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向し、前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写する転写ニップを形成する転写ローラとを有する画像形成装置において、前記トナー像担持ベルトが前記複数の張架ローラに張架されることによって形成される複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向下流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことを検知する突入検知手段と、前記複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ下流側張架面の張力を制御する張力制御手段とを有し、前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、シート状部材転写ニップ突入時に前記転写ニップ下流側張架面の張力を、前記シート状部材が前記転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記突入検知手段は、前記転写ローラと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向する張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、該回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部とによって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記突入検知手段は、前記転写ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記転写ニップ上流側張架面の前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が巻き付いている張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記突入検知手段は、前記転写ニップ上流側張架面の変位量を計測する変位情報取得手段と、前記変位情報取得手段によって計測された前記変位量を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、前記張力制御手段は、前記トナー像担持ベルトの前記転写ニップ下流側張架面に対して屈曲させるように付勢する張架ローラと、前記張架ローラの軸を回転自在に支持する軸受部と、前記軸受部を前記転写ニップ下流側張架面に対して直交する方向に移動させるアクチュエータとによって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、前記転写ニップへ通紙するシート状部材が、厚紙のとき、前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、前記転写ニップ下流側張架面の張力を弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかの画像形成装置において、前記トナー像担持ベルトは、トナー像担持体上に担持されたトナー像を転写され、転写されたトナー像を転写ニップでシート状部材に転写する中間転写ベルトであることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8いずれかの画像形成装置において、上記転写ニップ近傍に設けられ、前記トナー像担持ベルトまたはシート状部材を加熱する加熱手段を有し、前記転写ニップで前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写すると同時に定着するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シート状部材が転写ニップに突入時の転写ニップ下流側張架面の張力を、シート状部材が転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うので、シート状部材が転写ニップに突入時、転写ニップ下流側張架面を弛ませることができる。従って、転写ニップにシート状部材が突入して、転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られても、弛んだ状態のベルトが元の張架された状態に戻るだけである。その結果、転写ニップ下流側張架面よりもベルト移動方向下流側の張架ローラが、転写ニップ下流側張架面によりベルト移動方向と反対側へ引っ張られるのを抑制することができる。その結果、上記下流側の張架ローラにより、この下流側の張架ローラよりも下流側のベルト張架面がベルト移動方向と反対側へ引っ張られるのを抑制することができる。よって、転写ニップ下流側張架面よりも下流側のベルト張架面の速度変動を抑制することができる。その結果、転写ニップ下流側張架面よりも下流側のベルト張架面に一次転写部または露光位置を設ければ、トナー像担持ベルトの速度変動による画像の劣化を抑制することができる。
また、シート状部材転写ニップ突入時の転写ニップ下流側張架面の張力を、シート状部材が転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うので、特許文献2に記載のように、シート状部材転写ニップ突入時と突入前とで、張力が同じになるものに比べて、転写ニップ突入直後のベルトの速度変動を抑制することができる。
また、シート状部材転写ニップ到達直前のタイミングである転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことを張力制御のトリガにするので、シート状部材がレジストローラを通過してから数秒後をトリガにするものに比べて、制御タイミングのばらつきを小さくすることができる。なお、転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことの検知は、転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入すると、転写ニップ上流側張架面が変位するので、変位センサなどで転写ニップ上流側張架面の変位を検知することで容易に検知できる。
また、シート状部材が転写ニップ到達直前のタイミングをトリガにするので、シート状部材が転写ニップに突入したタイミングをトリガにするものに比べてトリガ信号を出力してから張力制御が開始されるまでに時間がかかっても、転写ニップにシート状部材が突入したときに、確実に転写ニップ下流側張架面の張力を弱める制御を行うことができる。
また、転写ニップ下流側張架面の張力を制御することによってベルトの速度変動を抑えるので、制御タイミングなどが想定と異なっていても、転写ニップ下流側張架面の張力が弱まれば、確実にベルトの速度変動が抑制される。よって、フィードフォワード制御のように、制御タイミングなどが想定と異なった場合に、ベルト速度変動を悪化させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】駆動ローラと従動ローラの速度変動を示す図。
【図3】位置ズレが発生したトナー像が転写された転写紙を模式的に示す説明図。
【図4】(a)用紙がプレニップ部に突入した際の力の伝達を示した図。(b)は、用紙がプレニップ部に突入した際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図、(c)は、用紙がプレニップ部に突入した際の速度変動を説明するグラフ。
【図5】(a)用紙が本ニップ部に突入した際の力の伝達を示した図。(b)は、用紙が本ニップ部に突入した際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図。(c)は、用紙が本ニップ部に突入した際の速度変動を説明するグラフ。
【図6】用紙本ニップ突入によって駆動ローラと入口ローラとが共に減速するメカニズムの説明図。
【図7】(a)は、中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際の力の伝達を示した図。(b)は、中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図。(c)は、中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際のことによる速度変動を説明するグラフ。
【図8】従動ローラ7および駆動ローラ3の速度変動とテンションローラ6の変位との関係について調べたデータ。
【図9】実施例1の画像形成装置の概略構成図。
【図10】(a)は、アクチュエータ駆動OFF時のテンションローラ付近の拡大構成図。(b)は、アクチュエータ駆動ON時のテンションローラ付近の拡大構成図。
【図11】実施例1における画像形成装置における制御ブロック図
【図12】実施例1のベルトテンション制御フロー図。
【図13】実施例1のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図14】実施例2の画像形成装置の概略構成図。
【図15】実施例2のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図16】実施例3の画像形成装置の概略構成図。
【図17】実施例3のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図18】実施例4の画像形成装置の概略構成図。
【図19】実施例4のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図20】実施例5の画像形成装置の概略構成図。
【図21】実施例5の画像形成装置の他の例示す概略構成図。
【図22】検証試験の結果を示す図。
【図23】シート状部材が二次転写ニップに進入した際に中間転写ベルトの張架状態が変化した状態を示す模式図。
【図24】実施例6の画像形成装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本画像形成装置を示す要部構成図である。同図において、本画像形成装置は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット100Y,C,M,Kを備えている。また、機内で記録シートを搬送するための複数のガイド板等からなる用紙搬送路、レジストローラ対9、定着装置15、光書込ユニット(不図示)、転写ユニット50、なども備えている。
【0021】
図示しない光書込ユニットは、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有しており、外部のパーソナルコンピュータ等から送られている画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動する。そして、プロセスユニット100Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kを光走査する。具体的には、プロセスユニット100Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kは、図示しない駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。光書込ユニットは、駆動中の感光体1Y,C,M,Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体1Y,C,M,Kには、Y,C,M,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
【0022】
4つのプロセスユニット100Y,C,M,Kを、後述する中間転写ベルト2に対してその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。各色のプロセスユニット100Y,C,M,Kは、それぞれ、潜像担持体たる感光体1Y,C,M,Kと、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部本体に対して着脱可能になっている。そして、互いに使用するトナーの色が異なる点以外は同様の構成になっている。Y用のプロセスユニット100Yを例にすると、これは、トナー像担持体たる感光体1Yの他、これの表面に形成された静電潜像をYトナー像に現像するための現像装置101Y、ドラム状の感光体1Yを一様帯電せしめるための帯電装置103Y、ドラムクリーニング装置102Y等を有している。
【0023】
帯電装置103Yは、回転駆動される感光体1Yの周面をトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめる。このようにして一様帯電せしめられた感光体1Yの周面には、上述した光書込装置による光走査で静電潜像が形成される。感光体1Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0024】
現像装置101Yは、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)を用いて、感光体1Y上の静電潜像を現像する。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用していもよい。
【0025】
現像によって感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述するY用の一次転写ニップで中間転写ベルト2のおもて面に転写される。このようにしてYトナー像を転写した後の感光体1Y上に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置102Yによって感光体1Y表面から除去される。このクリーニングに先立って、感光体1Yの表面は図示しない除電ランプによる光照射を受けて除電される。
【0026】
Y用のプロセスユニット100Yについて説明したが、M,C,K用のプロセスユニットにおいても、同様にして感光体1M,C,Kの表面にM,C,Kトナー像が形成される。
【0027】
4つのプロセスユニット100Y,C,M,Kの下方には、転写ユニット50が配設されている。この転写ユニット50は、トナー像担持ベルトたる中間転写ベルト2を有している。中間転写ベルト2は、駆動ローラ3、二次転写対向ローラ5、テンションローラ6、従動ローラ7、入口ローラ4などの張架ローラによって張架されている。この中間転写ベルト2を、感光体1Y,C,M,Kに当接させながら、駆動ローラ3の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体1Y,C,M,Kと中間転写ベルト2とが当接するY,C,M,K用の一次転写ニップが形成されている。
【0028】
Y,C,M,K用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ104Y,C,M,Kによって中間転写ベルト2を感光体1Y,C,M,Kに向けて押圧している。これら一次転写ローラ104Y,C,M,Kには、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,C,M,K用の一次転写ニップには、感光体1Y,C,M,K上のトナー像を中間転写ベルト2に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。
【0029】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト2のおもて面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト2のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0030】
中間転写ベルト2の図中下方には、当接部材たる二次転写ローラ8が配設されており、中間転写ベルト2における二次転写対向ローラ5に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して二次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト2のおもて面と、二次転写ローラ8とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ8の軸中心は、二次転写対向ローラ5の軸中心よりも、用紙搬送方向上流側に位置している。二次転写ローラ8は、不図示のモータにより図中反時計回りに回転駆動させてもよいし、中間転写ベルト2に対して連れ回る構成でもよい。
【0031】
ベルトループ内の二次転写対向ローラ5には、図示しない電源によってトナーと同極性の二次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ外の二次転写ローラ8は接地されている。これにより、二次転写ニップ内に二次転写電界が形成されている。
【0032】
二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対9が配設されている。画像形成に並行して、給紙ローラ18を回転し、給紙カセット20からシート状部材たる用紙19を繰り出し、分離ローラ217で1枚ずつ分離して用紙搬送経路に入れ、搬送ローラ16で搬送してレジストローラ9に突き当てて止める。または、手差し部上の用紙を繰り出し、用紙搬送経路に入れ、同じくレジストローラ9に突き当てて止める。
【0033】
レジストローラ間に挟み込んだ用紙19を中間転写ベルト2上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト2上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によってシート状部材たる用紙に一括二次転写され、用紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0034】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト2のおもて面には、二次転写ニップで用紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト2に当接する不図示のベルトクリーニング装置によってクリーニングされる。
【0035】
二次転写ニップを通過した用紙19は、中間転写ベルト2と搬送ベルト11との搬送力により定着装置15に向けて送られる。定着装置15は、定着ローラ13と加熱ローラ14とで張架された定着ベルト13aに対して加圧ローラ12を圧接して構成する。定着ベルト13aは加熱ローラ14内の図示しないIHコイルによって加熱され、画像定着に必要な温度まで加熱される。一方、加圧ローラ12にも内部に図示しないヒーターを内蔵しており、待機時の予備加熱に使用している。用紙上の未定着画像は、定着ベルト13aと加圧ローラ12とのニップ部において熱と圧力を与えられ、用紙19に定着される。なお、定着装置15のヒーターはIHコイルを用いたものでなくてもよく、熱ローラ対で構成された方式であっても良い。
【0036】
定着装置15で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、図示しない排紙トレイに排出される。または、図示しない両面反転機構により再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録、定着して後、排紙トレイに排出する。
【0037】
中間転写ベルト2に当接して二次転写ニップを形成している二次転写ローラ8は、金属製の芯金とこれの周面に被覆されたゴム等の弾性部材とを具備している。二次転写ニップでは、中間転写ベルト2における二次転写対向ローラ5に対する掛け回し箇所が、二次転写ローラ8の表面の弾性部材に食い込んでいる。これにより、幅広い二次転写ニップが形成されている。
【0038】
二次転写ローラ8の回転軸は、保持体としての揺動アーム10に固定された不図示の軸受によって回転自在に受けられている。そして、この揺動アーム10は、揺動軸10aを中心にして揺動するように支持されており、自らの揺動に伴って二次転写ローラ8の回転軸と、二次転写対向ローラ5の回転軸との距離を変化させる。
【0039】
揺動アーム10には、付勢手段としての付勢コイルバネ10bが固定されている。この付勢コイルバネ10bにより、揺動アーム10には揺動軸10aを中心にした図中反時計回り方向の付勢力が付与されて、二次転写ローラ8が中間転写ベルト2に押圧されている。
【0040】
揺動アーム10における揺動軸10aとは反対側の端部には、偏心カム10cのカム面が当接するカム当接面10dが設けられている。この偏心カム10cが図示しないカムモータによって回転駆動されると、付勢コイルバネ10bの付勢力に反して揺動アーム10を押し下げるように、揺動アーム10を図中時計回りに少しずつ回転させていく。すると、二次転写ローラ8と二次転写対向ローラ5との軸間距離が徐々に大きくなっていく。そして、それに伴って二次転写ニップのサイズが徐々に小さくなっていき、やがて二次転写ローラ8が中間転写ベルト2から離間する。
【0041】
このように本画像形成装置においては、二次転写ローラ8を付勢コイルバネ10bによる付勢力に反して移動させることで、二次転写対向ローラ5の回転軸と、二次転写ローラ8との距離、ひいては上記軸間距離を調整する。かかる構成では、偏心カム10c、カムモータ、これを駆動する制御部等が、距離調整手段として機能している。
【0042】
次に、従来の画像形成装置の中間転写ベルト2の課題について説明する。
用紙19が二次転写ニップに突入する際、中間転写ベルト2の感光体1Y,C,M,Kに当接する領域(以下、一次転写領域という)を張架する駆動ローラ3、従動ローラ7は、図2に示すような速度変動が発生する。このような現象は特に厚紙通紙時(ここでは連量220[kg]紙、坪量256[g/m2]紙以上を想定している)により顕著に見られる現象である。
【0043】
それに対して、感光体1Y,C,M,Kは用紙先端二次転写ニップ突入時においてもほぼ同速で回転駆動されるので、感光体1Y,C,M,Kと中間転写ベルト2との間で速度差が発生する。この速度差によって、一次転写ニップにおいて転写位置ずれが発生する。
【0044】
図3は、単色の画像形成を行った場合に、位置ズレが発生したトナー像が最終画像として転写された用紙19を模式的に示す説明図である。
用紙先端の二次転写ニップ突入時に発生した一次転写ニップにおける転写位置ずれを含むトナー像は、一次転写ニップから二次転写ニップまでの距離をLとすると、用紙先端からLの位置で用紙19に転写または転写・定着される。このため、排紙される用紙19上の最終画像は図3に示すように、用紙先端からLの位置に正常な画像の部分I1よりも色が薄い部分I2や色が濃い部分I3という局所的な濃度ムラをもった画像となる。
なお、複数色の画像形成を行った場合は、各色で一次転写ニップから二次転写ニップまでの距離が異なるため、各色で紙先端から濃度ムラまでの距離Lが異なる画像となって出力される。
このように、用紙突入時に発生する一次転写部における転写位置ずれを防ぐには、用紙突入時における駆動ローラ3、従動ローラ7の速度変動を抑制する必要がある。この駆動ローラ3、従動ローラ7の速度変動がどのようなメカニズムで発生するのかについて以下に述べる。
【0045】
本画像形成装置は、図1に示すように、二次転写ローラ8の軸中心は、二次転写対向ローラ5の軸中心よりも、用紙搬送方向上流側に位置している。このため、中間転写ベルト2の外周面が二次転写ローラ8と当接するニップは、次の2つニップ部を有する。すなわち、中間転写ベルト2の内周面が二次転写対向ローラ5と接触している二次転写ニップ(以下、本ニップ部という)と、二次転写ニップよりも用紙搬送方向上流側にあり、中間転写ベルト2の内周面が二次転写対向ローラ5と接触していないニップ部(以下、プレニップ部という)とを有している。
このように、本実施形態の画像形成装置は、本ニップ部、プレニップ部を有する構成であるため、駆動ローラ3、従動ローラ7の速度変動は、大きく分けて以下の3つの変動から成り立っている。
【0046】
(1)用紙19の先端がプレニップ部に突入することによる速度変動
図4は、用紙19がプレニップ部に突入した際に生じる速度変動の説明図である。
用紙先端がプレニップ部に突入すると、中間転写ベルト2の転写ニップ上流側張架面である二次転写対向ローラ5と入口ローラ4との張架領域(以下、プレニップ領域T3という)が内側に押される。中間転写ベルト2のプレニップ領域が、内側に押されると、プレニップ領域T3の用紙先端との当接部より中間転写ベルト移動方向上流側の部分が、図4(b)に示すように、ベルト移動方向へ引っ張れる。その結果、図4(b)に示すように、入口ローラ4には、ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2が働き、入口ローラ4に回転方向と同方向のトルクE2が働く。その結果、入口ローラ4が加速する。また、図4(a)の矢印F(2)に示すように、ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2は、中間転写ベルト2を介して駆動ローラ3に伝達され、駆動ローラ3に回転方向と同方向のトルクがかかり、図4(c)で、太線で示すように、駆動ローラ3が加速される。そして、最終的には、図4(a)の矢印F(2)に示すように、ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2が中間転写ベルト2を介して従動ローラ7にまで伝達される。その結果、図4(c)の太線で示すように、従動ローラ7が加速される。
【0047】
また、中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の用紙先端との当接部より中間転写ベルト移動方向下流側の部分が、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張られる。その結果、図4(b)に示すように、二次転写対向ローラ5には、ベルト移動方向と逆方向に引っ張る力I1が働き、二次転写対向ローラ5には、回転方向と逆方向のトルクE1がかかる。これにより、二次転写対向ローラ5が減速する。また、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1は、図4(a)の矢印F(1)に示すように、中間転写ベルト2を介して、テンションローラ6、従動ローラ7へ伝達される。伝達経路を考えれば、ベルト移動方向と同方向へ引っ張る力I2が、従動ローラ7へ伝達され、従動ローラ7が加速する前に、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1により従動ローラ7が減速するはずである。しかし、図4(c)を見ると、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1による従動ローラ7の減速が生じていない。これは、この実験においては、二次転写ローラ8を別のモータで駆動させたため、二次転写ローラ8の回転駆動力によってベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1を消滅させてしまったためと考えられる。
【0048】
図4(b)に示すように、駆動ローラ3がベルト移動方向に引っ張られる力I2により加速することで、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が加速される。その結果、図3に示すように正常な画像の部分I1よりも色が薄い部分I2が生じるのである。
【0049】
(2)用紙19の先端が本ニップ部に突入することによる速度変動
図5は、用紙先端が二次転写ニップたる本ニップ部に突入した際に生じる速度変動の説明図である。
用紙19先端が本ニップ部に突入することによる速度変動は、用紙19の先端が本ニップ部に突入する際に用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げることによって二次転写対向ローラ5が減速する現象である。
ここで、二次転写対向ローラ5が減速するメカニズムについて図6を用いて説明する。
図6に示すように、用紙19の先端が、本ニップ部へ進入するためには、用紙19の先端が、二次転写ローラ8を用紙19の厚さ相当分押し下げる必要がある。二次転写ローラ8は、上述したように、付勢コイルバネ10bにより図中矢印A方向に付勢されている。二次転写ローラ8を押し下げるには、用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げる力(図中の矢印B)が、付勢コイルバネ10bの付勢力を上回る必要がある。用紙19の先端の押し下げる力Bは、用紙先端を図中右側へ搬送する搬送力であり、その搬送力は、二次転写対向ローラ5の回転駆動力Cである。すなわち、用紙19の先端が二次転写ローラ8に当接したとき、二次転写対向ローラ5には、ベルトを搬送するためのトルクに他に、用紙先端が二次転写ローラ8を押し下げるのに必要なトルクが生じる。その結果、図5(b)に示すように二次転写対向ローラ5の回転負荷(図中矢印D1)が増加し、二次転写対向ローラ5が減速する。なお、本実験においては、二次転写ローラ8を回転駆動させている。このため、二次転写ローラ8の回転駆動力も用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げる力として働き、二次転写対向ローラ5のみで二次転写ローラ8を押し下げるものに比べて、二次転写対向ローラ5にかかるトルクは、減少されている。
【0050】
一方、入口ローラ4についても、二次転写対向ローラ5と同様、減速が生じる。これは、用紙19の先端が本ニップ部に突入すると、用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げるまで、用紙19が前に進まないので、中間転写ベルト2と用紙間の摩擦力によるベルト走行負荷J2が生じる。この走行負荷により、入口ローラ4に回転方向と逆方向のトルクD2が働き、入口ローラ4も同様に減速する。このベルト走行負荷J2は、図5(a)の矢印F(3)に示すように、中間転写ベルト2を介して駆動ローラ3へ伝達される。しかし、駆動ローラ3に伝達されたベルト走行負荷は、駆動ローラ3を回転駆動させるモータの駆動力により打ち消され、駆動ローラ3よりベルト移動方向上流の従動ローラ7へ伝達されることはない。
【0051】
二次転写対向ローラ5が減速すると、中間転写ベルト2の転写ニップ下流側張架面たる二次転写対向ローラ5と従動ローラ7の張架領域(以下、テンション制御領域T2という)がベルト移動方向と逆方向へ引っ張られ、図5(a)の矢印F(4)に示すように、テンションローラ6、従動ローラ7にベルト移動方方向と逆方向の力J1が伝達される。従動ローラ7に、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力J1が伝達されると、図5(c)の太線に示すように、従動ローラ7が減速する。従動ローラ7が減速することにより、中間転写ベルト2の一次転写領域T1がベルト移動方向と逆方向へ引っ張られ、駆動ローラ3の回転方向と逆方向のトルクがかかる。その結果、図5(c)の太線に示すように駆動ローラ3が減速する。このように、従動ローラ7、駆動ローラ3が減速する結果、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が減速し、図3に示すように正常な画像の部分I1よりも色が濃い部分I3が生じるのである。
【0052】
(3)用紙先端本ニップ突入後における中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の戻りによる速度変動
図7は、用紙先端本ニップ突入後における中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の戻りによる変動の説明図である。
これは、図7(b)に示すように、用紙先端が二次転写ローラ8を押し下げて、本ニップ部へ突入すると、これまで用紙19の先端によって、内側へ押し込まれていた中間転写ベルト2のプレニップ領域T3が元に戻る。その結果、上記(1)プレニップ部突入による速度変動とは逆の現象が発生する。すなわち、プレニップ領域T3の用紙先端がベルトを押していた位置よりも、ベルト移動方向下流側では、ベルト移動方向と同方向にベルトを押し込むような力G1が発生する。一方、プレニップ領域T3の用紙先端がベルトを押していた位置よりも、ベルト移動方向上流側では、ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込むような力G2が発生するのである。ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込む力G2は、図7(a)の矢印F(6)に示すように、中間転写ベルト2を介して、入口ローラ4、駆動ローラ3に伝達される。入口ローラ4にベルト移動方向と逆方向に押し込む力G2が生じることで、入口ローラ4に、図7(b)に示すように、入口ローラ回転方向と逆方向のトルクH1が生じ、入口ローラ4が減速する。同様に、駆動ローラ3に、駆動ローラ回転方向と逆方向のトルクが生じ、図7(c)の太線で示すように、駆動ローラ3の速度が低下する。
【0053】
一方、ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込む力G1は、図7(a)の矢印F(5)に示すように、中間転写ベルト2を介して二次転写対向ローラ5、テンションローラ6、従動ローラ7に伝達される。二次転写対向ローラ5に、ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込む力G1が伝達されると、図7(b)に示すように、二次転写対向ローラ5の回転方向と同方向のトルクH2が生じ、二次転写対向ローラ5が加速する。同様に、従動ローラ7に、従動ローラ7回転方向と同方向のトルクが生じ、図7(c)の太線で示すように、従動ローラ7の速度が増加する。
【0054】
なお、図7(c)を見ると、中間転写ベルト2の戻りによる速度変動後も、駆動ローラ3、従動ローラ7は、速度変動している。これは、上記(1)〜(3)の駆動ローラ3の速度変動によって、駆動モータの駆動力が伝達される駆動ローラ3の軸にねじれ振動が生じ、そのねじれ振動によって中間転写ベルト2の戻りによる速度変動後も、駆動ローラ3、従動ローラ7は、速度変動が生じたと考えられる。
【0055】
図8は、従動ローラ7および駆動ローラ3の速度変動とテンションローラ6の変位との関係について調べたデータである。
図8に示すように、従動ローラ7の線速が落ち込み始める、つまり上記(2)の本ニップ部突入変動の開始とほぼ同時にテンションローラ6は急激にベルト外側方向に変位し始めることがわかる。これは、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションの増大によりテンションローラ6がベルト外側に押し下げられていることを意味している。仮に、テンションローラ6がない場合は、テンションローラ6がベルト外側に押し下がることによるテンションの緩和がないので、用紙先端本ニップ部突入時に発生する負荷トルクがほぼ損失なく従動ローラ7に伝播することになり、従動ローラ7の減速は大きくなる。逆に、用紙先端本ニップ部突入時に中間転写ベルト2のテンション制御領域T2のベルトテンションが弱い状態であれば、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2に、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力J1(図5(b)参照)が働いても、その力が従動ローラ7、駆動ローラ3に伝播し難くすることができる。その結果、従動ローラ7、駆動ローラ3の速度低下を抑制でき、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度低下を抑制することができる。よって、図3に示すように正常な画像の部分I1よりも色が濃い部分I3が生じるのを抑制することができる。
そこで、本発明は、用紙先端本ニップ部突入時に、テンションローラ6を外部からの力によってより急激にベルト外側方向へ変位させ、テンション制御領域T2のベルトテンションを弱める制御(以下、ベルトテンション制御という)を行なう。以下、本発明の各実施例を用いて、具体的に説明する。
【0056】
[実施例1]
図9は、実施例1の画像形成装置の概略構成図である。
図9に示すように、入口ローラ4には、回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24が搭載されている。また、テンションローラ6を中間転写ベルト2の表面に対して直交する方向に移動させるアクチュエータ32と、アクチュエータ32を駆動制御する駆動制御部28と有している。また、二次転写部下流側には、用紙先端の通過を検知する用紙先端検知手段たるフォトセンサ38が設置されている。
【0057】
図10は、テンションローラ6付近の拡大構成図である。
図10(a)に示すように、テンションローラ6の軸が軸受部34に回転自在に支持されている。軸受部34は、テンションバネ36により、中間転写ベルト2側へ付勢されている。アクチュエータ32は、電磁ソレノイド32aと、プランジャー32bとを有している。プランジャー32bの先端には、一端が装置本体に回転自在に支持されたレバー33が当接している。レバー33の他端側は、軸受部34に設けられたピン35により支持されている。
駆動制御部28から電磁ソレノイド32aに所定の電圧が印加されると、プランジャー32bが、図中下側へ移動し、図10(b)に示すように、レバー33が、図中時計回りに回転して、ピン35を図中下側へ押し込む。その結果、軸受部34が、テンションバネ36の付勢力に抗って、ベルト外側に変位し、テンションローラ6の中間転写ベルト2への押圧力が弱められる。
【0058】
図11は、実施例1の画像形成装置における制御ブロック図である。突入検知部25は、メモリ27とマイクロプロセッサ26とを備えている。マイクロプロセッサ26は、メモリ27に記憶されたプログラムに基づいて、様々な処理を行うものである。突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、突入検知部25が受信したロータリーエンコーダ24の検知信号に基づいて、入口ローラ4の線速を演算するよう設定されている。また、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、入口ローラ4の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、閾値を超えたら突入検知信号を駆動制御部28へ出力するように設定されている。すなわち、実施例1においては、回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24と、突入検知部25とで、突入検知手段を構成している。
【0059】
駆動制御部28は、マイクロプロセッサ29と、制御プログラムなどが格納されたメモリ30と、アクチュエータ駆動回路31とを備えている。また、メモリ30には、あらかじめ実験などで調べたテンションローラ6が所定量変位するときの電圧値が格納されている。駆動制御部28は、突入検知部25から、突入信号を受信したら、メモリ30に格納していた上記電圧値をアクチュエータ32へ出力する。すると、レバー33が、図10(b)に示すように、図中時計回りに回転して、ピン35を図中下側へ押し込む。その結果、軸受部34が、テンションバネ36の付勢力に抗って、ベルト外側に変位し、テンションローラ6の中間転写ベルト2への押圧力が弱められる。
二次転写ニップ(本ニップ部)下流側に設置したフォトセンサ38により用紙先端の通過を検知すると、マイクロプロセッサ29はアクチュエータ駆動回路31に電源をOFFにする指令を出す。すると、レバー33が軸受部34をベルト外周面から離間させる力が無くなり、テンションローラ6はテンションバネ36の付勢力により所定の押圧力でベルトにテンションを与える。すなわち、実施例1では、駆動制御部28、アクチュエータ32などで、張力制御手段を構成している。
【0060】
図12は、実施例1のベルトテンション制御フローであり、図13は、実施例1のタイミングチャートである。なお、図13に示す従動ローラ7の線速は、ベルトテンション制御を行っていない従来の従動ローラ7の線速である。
画像形成装置の不図示の操作部のスタートボタンをユーザーが押すことにより画像形成動作がスタートする。画像形成動作がスタートすると、厚紙モードか否かの判別が行われる(S1)。厚紙モードか否かの判別は、厚紙を用いる場合にはスタートボタンを押す前にユーザーが厚紙であることを不図示の操作部を操作して入力する。厚紙であることが、入力されると、フラグが立ち、フラグが立っているか否かで、厚紙モードか否かの判別が行われる。また、レジストローラ対9よりも搬送方向上流側で用紙19の紙厚を検知する紙厚検知センサを配置し、紙厚検知センサの検知結果に基づいて厚紙モードか否かの判別を行っても良い。厚紙モードではないと判別された場合(S1のNO)は、ベルトテンション制御を行わない。中間転写ベルト2の速度変動は、厚紙通紙時に顕著に発生するものであり、普通紙などの通紙時に無視できるほどの変動であるので、ベルトテンション制御を行なわない。
【0061】
一方、厚紙モードと判別された場合(S1のYES)は、突入検知部25で、用紙先端が、プレニップ部に突入したか否かを検知する(S2)。図13に示すように、用紙先端がプレニップ部に突入すると、入口ローラ4の速度が増加する。よって、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、入口ローラ4の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、入口ローラ4の線速が閾値を超えたか否かを監視している。そして、入口ローラ4の線速が閾値を超えたら、用紙先端がプレニップ部に突入した(S2のYES)ので、突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。
【0062】
図13に示すように、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。このため、駆動制御部28は、突入信号を受信してから、アクチュエータ32を駆動させるまでに時間がかかった(演算処理による遅れ、電気的、機械的時定数による遅れ等による)としても、Ts[sec]の範囲内であれば対応できる。よって、従動ローラ7の減速開始時(用紙先端本ニップ部突入時)にアクチュエータ32を駆動(S3)させてテンションローラ6をベルト外側方向に所定の変位量駆動できる。その結果、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるときに、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2のベルトテンションを弱めることができる。その結果、テンション制御領域T2が、従動ローラ7をベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力を低減でき、従動ローラ7の速度低下を抑制することができる。従動ローラ7の速度低下を抑制することができる結果、従動ローラ7が駆動ローラ3をベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力が低減され、駆動ローラ3の速度低下が抑制される。その結果、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度低下が抑制され、濃度低下を抑制することができる。
【0063】
用紙先端が本ニップ部を通過して、フォトセンサ38が用紙の先端を検知したら(S4のYES)、駆動制御部28は、アクチュエータ32の駆動を停止する(S25)。これにより、テンションローラ6はテンションバネ36の付勢力により所定の押圧力で中間転写ベルト2にテンションを与える。
【0064】
このように実施例1においては、プレニップ突入を検知し、そのタイミングをトリガーにして、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2のベルトテンションを弱める制御を行う。これにより、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
【0065】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。
図14は、実施例2の画像形成装置の概略構成図である。
図14に示すように、実施例2においては、二次転写対向ローラ5に回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24を搭載して、二次転写対向ローラ5の回転速度情報に基づいて、テンション制御領域T2のベルトテンションを制御するものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0066】
図15は、実施例2におけるベルトテンション制御のタイミングチャートである。
上述したように、用紙先端がプレニップ部に突入したとき、二次転写対向ローラ5は、減速する。よって、突入検知部25のメモリ27に通常の線速よりも低めに設定した閾値を格納しておく。そして、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、二次転写対向ローラ5の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、二次転写対向ローラの線速が、閾値を下回ったら突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。後の動作は実施例1と同様である。
【0067】
実施例2においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
【0068】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。
図16は、実施例3の画像形成装置の概略構成図である。
図16に示すように、実施例3においては、二次転写ローラ8に回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24を搭載して、二次転写ローラ8の回転速度情報に基づいて、テンション制御領域T2のベルトテンションを制御するものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0069】
図17は、実施例3におけるベルトテンション制御のタイミングチャートである。図17に示すように、二次転写ローラ8は、二次転写対向ローラ5と同様に用紙先端がプレニップ部に突入時したときは減速する。よって、突入検知部25のメモリ27に通常の線速よりも低めに設定した閾値を格納しておく。そして、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、二次転写ローラ8の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、二次転写ローラ8の線速が、閾値を下回ったら突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。後の動作は実施例1と同様である。
【0070】
実施例3においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向に引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ及び駆動ローラに伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域の速度変動を抑制することができる。
【0071】
[実施例4]
次に、実施例4について説明する。
図18は、実施例4の画像形成装置の概略構成図である。
図18に示すように、実施例4においては、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と入口ローラ4との間の領域であるプレニップ領域T3の変位を検知する変位情報取得手段たる変位センサ37が設けられている。変位センサ37は、中間転写ベルト2の内側に配置され、中間転写ベルト2の内側の面との距離を計測する距離センサである。変位センサ37としては、圧電式変位センサ、光学式変位センサ等を用いることができる。変位センサ37は、突入検知部25に接続されている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0072】
図19は、実施例3におけるベルトテンション制御のタイミングチャートである。上述したように、用紙先端がプレニップ部に突入すると、中間転写ベルト2のプレニップ領域T3は内側に押し込まれる。その結果、変位センサ37と中間転写ベルト2との間の距離は小さくなる。よって、突入検知部25のメモリ27に通常の距離の値よりも低めに設定した閾値を格納しておく。そして、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、変位センサ37と中間転写ベルト2との間の距離と、あらかじめメモリ27に格納された距離の閾値との比較を行ない、距離が、閾値を下回ったら突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。後の動作は実施例1と同様である。
【0073】
実施例4においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域の速度変動を抑制することができる。
【0074】
[実施例5]
次に、実施例5について説明する。
図20は、実施例5の画像形成装置の概略構成図である。
実施例5は、中間転写ベルト上のトナー像を二次転写ニップで用紙19へ転写すると同時に定着も行うものである。
図20に示すように、二次転写ニップ近傍であり二次転写ニップよりもシート状部材搬送方向上流側に加熱手段たる加熱装置21が設けられている。加熱装置21によって用紙19をトナーが定着するのに十分な温度まで加熱し、二次転写ニップにおいて転写と定着を同時に行う構成となっている。
【0075】
図21は、実施例5の変形例である。この変形例においては、加熱装置21によって中間転写ベルト2を加熱し、中間転写ベルト2上のトナーを溶融して、二次転写ニップにおいて転写と定着とを同時に行う構成となっている。
【0076】
図20、図21に示した実施例5においても、実施例1と同様に、入口ローラ4にロータリーエンコーダ24を搭載して、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、テンション制御領域T2のベルトテンションを制御する。
【0077】
実施例5においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
【0078】
また、上記においては、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションを制御しているが、実施例2〜実施例4した構成で、プレニップ部突入を検知してもよい。
【0079】
[実施例6]
次に、実施例6について説明する。
図24は、実施例6の画像形成装置の概略構成図である。
実施例6は、トナー像担持ベルトたる感光体ベルト1上のトナー像を転写ニップで用紙19に直接転写する直接転写方式の画像形成装置である。
図24に示すように、感光体ベルト1の駆動ローラ3と従動ローラ7と張架領域には、帯電装置103、現像装置からなる作像ユニット100Y,100C,100M,100Kが対向している。この画像形成装置は、帯電、露光、現像工程を色毎に複数回繰り返すことで、感光体ベルトの同一領域上に複数色のトナー像を重ね合わせて形成し、転写ニップで感光体ベルト状の重ね合わせトナー像を用紙19に一括転写するものである。
【0080】
実施例6においても、厚紙の先端が本ニップ部に突入するときに、二次転写対向ローラ5が減速し、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間の領域をベルト移動方向と逆方向へ二次転写対向ローラ5が引っ張る。その結果、従動ローラ7、駆動ローラ3が減速し、感光体ベルト1の駆動ローラ3と従動ローラ7と張架領域が減速し、露光光の照射タイミングと感光体ベルト表面が露光位置を通過するタイミングとにズレが生じ、感光体ベルト上に形成される潜像の位置ズレが生じる。
【0081】
そこで、実施例6においても、実施例1と同様に、入口ローラ4にロータリーエンコーダ24を搭載して、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間に配置されたテンションローラ6の軸受部をベルト外周面に対して直交する方向に移動させ、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションを制御する。
【0082】
実施例6においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間の領域を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域の速度変動を抑制することができる。
【0083】
また、上記においては、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションを制御しているが、実施例2〜実施例4した構成で、プレニップ部突入を検知してもよい。
【0084】
次に、本発明者らが行なった検証試験について説明する。
検証試験は、まず、図1に示した中間転写方式における画像形成装置とほぼ同じ特性を有するベルト搬送試験機を試作し、さらにそれを再現するシミュレーションモデルを構築した。次に、このシミュレーションモデルを用いて、テンションローラ変位を制御した時にどの程度の抑制効果があるのかを検証する試験である。
図22は、検証試験の結果を示す図である。図22(a)は、テンションローラ変位制御を行なわない場合のテンションローラ変位と、テンションローラ変位制御を行った場合のテンションローラの変位とを示す図である。図22(b)は、テンションローラ変位制御を行なわない場合の従動ローラ線速変動と、テンションローラ変位制御を行った場合の従動ローラ線速変動とを示す図である。なお、プレニップ部突入による速度変動の部分で、従動ローラ線速変動が落ち込んでいるのは、図1の画像形成装置と異なり、二次転写ローラが従動であることやレイアウトの差であり、抑制効果を検証するのに影響はない。
用紙先端がプレニップ部に突入したのをトリガーにして、本ニップ突入による速度変動の開始点で、図22(a)に示すようなテンションローラ変位制御を行った場合、図22(b)に示すように、従動ローラ線速変動は、変位制御を行なわない場合に比べて約40[%]程度低減できていることがわかる。本ニップ突入時における従動ローラの速度低下をより抑制するためには、テンションローラを同じ時間に対してより大きく変位させればよいが、それは実際に搭載するアクチュエータの性能を見極めて決めればよい。
【0085】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、複数の張架ローラによって張架され、表面にトナー像を担持して無端移動するトナー像担持ベルトたる中間転写ベルト2と、複数の張架ローラのうちの一つである二次転写対向ローラ5を挟んで対向し、中間転写ベルト上のトナー像をシート状部材たる用紙19に転写する転写ニップたる本ニップ部を形成する転写ローラたる二次転写ローラ8とを有する。また、中間転写ベルト2が複数の張架ローラに張架されることによって形成される複数の張架面のうち、中間転写ベルト2の移動方向下流側端部が本ニップ部となる張架面である転写ニップ上流側張架面たるプレニップ領域T3に用紙19が突入したことを検知する突入検知手段と、複数の張架面のうち、中間転写ベルトの移動方向上流側端部が本ニップ部となる張架面である転写ニップ下流側張架面たるテンション制御領域T2の張力を制御する張力制御手段とを有している。そして、突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、用紙19が本ニップ部に突入時にテンション制御領域T2の張力を弱める制御を行うよう張力制御手段を構成した。
このように構成することで、用紙19が本ニップ部に突入したときに二次転写対向ローラ5が減速して、テンション制御領域T2をベルト2の移動方向と逆方向に引っ張る力が働いても、その力がテンション制御領域T2よりも下流側の張架ローラである従動ローラ7に及ぶのを抑制することができる。これにより、テンション制御領域T2よりもベルト移動方向下流側の張架面に一次転写ニップを形成すれば、中間転写ベルト2の速度変動による画像の劣化を抑制することができる。
また、プレニップ領域T3に用紙19が突入したことをトリガにして、テンション制御領域T2の張力を制御することで、トリガ信号を出力してから張力制御が開始されるまでに時間がかかったとしても、本ニップ部に用紙19が突入したときに、確実にテンション制御領域T2の張力を弱める制御を行うことができる。これにより、用紙19が本ニップ部に突入したことをトリガにした場合に比べて、確実に中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
また、プレニップ領域に用紙19が突入したことをトリガにすることで、用紙19が本ニップ部到達直前のタイミングをトリガにすることができる。これにより、用紙19がレジストローラ9を通過してから数秒後をトリガにするものに比べて、制御タイミングのばらつきを小さくすることができる。
【0086】
また、上記突入検知手段は、二次転写対向ローラ5の回転情報を取得する回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24と、ロータリーエンコーダ24により取得した回転情報を用いて用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部25とによって構成されている。上述したように、用紙先端がプレニップ領域T3に突入する際には、二次転写対向ローラ5の回転状態に変動が生じる。したがって、ロータリーエンコーダ24によって、二次転写対向ローラ5の回転状態の変動を検知することにより、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0087】
また、二次転写ローラ8の回転情報をロータリーエンコーダ24で検知して、二次転写ローラ8の回転情報を用いて、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知するようにしてもよい。上述したように、用紙19がプレニップ領域T3に突入する際には、二次転写ローラ8の回転状態に変動が生じる。したがって、ロータリーエンコーダ24によって、二次転写ローラ8の回転状態の変動を検知することでも、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0088】
さらに、プレニップ領域T3の中間転写ベルト移動方向上流側端部が巻き付いている張架ローラたる入口ローラ4の回転情報をロータリーエンコーダ24で検知して、入口ローラ4の回転情報を用いて、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知するようにしてもよい。上述したように、用紙19がプレニップ領域T3に突入する際には、入口ローラ4の回転状態に変動が生じる。したがって、ロータリーエンコーダ24によって、入口ローラ4の回転状態の変動を検知することでも、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0089】
また、プレニップ領域T3の変位量を計測する変位情報取得手段たる変位センサ37と、変位センサ37によって計測された変位量を用いて用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知するようにしてもよい。上述したように、用紙19がプレニップ領域T3に突入する際には、プレニップ領域T3が変位する。したがって、変位センサ37によって、プレニップ領域の変位量を検知することでも、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0090】
また、張力制御手段は、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2に対して屈曲させるように付勢する張架ローラたるテンションローラ6と、テンションローラ6の軸を回転自在に支持する軸受部34と、軸受部34をテンション制御領域T2に対して直交する方向に移動させるアクチュエータ32とによって構成される。
かかる構成を有することで、テンションローラを移動させて、テンション制御領域T2のテンションを制御することができる。
【0091】
また、転写ニップへ通紙する用紙19が、厚紙のとき、突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、テンション制御領域T2の張力を弱める制御を行う。これにより、中間転写ベルト2の速度変動が顕著に発生する、厚紙通紙時にベルトテンション制御を行ない、普通紙などの通紙時など中間転写ベルト2の速度変動が無視できるほどの変動であるときは、ベルトテンション制御を行なわないようにすることができる。
【0092】
また、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2の張力を弱める制御を行うことにより、一次転写時の転写位置ずれの発生を抑制することができる。
【0093】
また、二次転写ニップ近傍に設けられ、中間転写ベルト2または用紙19を加熱する加熱手段である加熱装置21を有し、二次転写ニップで中間転写ベルト2上のトナー像を用紙19に転写すると同時に定着するように構成した画像形成装置であっても、上述した各効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1Y,C,M,K:感光体
2:中間転写ベルト
3:駆動ローラ
4:入口ローラ
5:二次転写対向ローラ
6:テンションローラ
7:従動ローラ
8:二次転写ローラ
9:レジストローラ
10:揺動アーム
11:搬送ベルト
15:定着装置
19:用紙
21:加熱装置
24:ロータリーエンコーダ
25:突入検知部
26,29:マイクロプロセッサ
27,30:メモリ
28:駆動制御部
31:アクチュエータ駆動回路
32:アクチュエータ
33:レバー
34:軸受部
35:ピン
36:テンションバネ
37:変位センサ
38:フォトセンサ
50:転写ユニット
T1:一次転写領域
T2:テンション制御領域
T3:プレニップ領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2005−107118号公報
【特許文献2】特開2005−338884号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、単葉のシート状部材へ記録する電子写真方式、静電記録方式、イオノグラフィー、磁気記録方式等の画像形成方式を採用した複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。詳しくは、中間転写ベルト等のトナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写して最終画像を得る画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像形成装置において、感光体ドラム上のトナー像を、一次転写部でトナー像担持ベルトである中間転写ベルト上に一次転写し、この中間転写ベルト上の4色のトナー像を二次転写ニップでシート状部材に二次転写する中間転写方式が多く採用されている。この中間転写ベルト方式の画像形成装置においては、薄紙や厚紙、はがき、封筒などさまざまな種類のシート状部材が使用可能で汎用性が高いという利点を有する。
【0003】
また、中間転写ベルト方式の画像形成装置としては、二次転写ニップを形成する張架ローラ(以下、二次転写対向ローラと呼ぶ)との接触位置が中間転写ベルトの移動方向下流端となる中間転写ベルトの張架面(以下、二次転写ニップ上流側張架面とよぶ)にシート状部材が接触した後に、シート状部材が二次転写ニップに進入するように中間転写ベルトやシート状部材の搬送部材を配置したものがある。詳しくは、例えば、特許文献1に記載のように、二次転写ニップに向けて搬送されるシート状部材の搬送方向と二次転写ニップ上流側張架面とが平行ではなく角度を持ったレイアウトであり、搬送されてきたシート状部材はその先端が二次転写ニップ上流側張架面に接触し、中間転写ベルトの表面移動によって二次転写ニップへと案内される構成である。このようにシート状部材の先端を上流側張架面に接触させて二次転写ニップにシート状部材を案内することによって、シート状部材を安定的に二次転写ニップに進入させることができる。
【0004】
ところが、ある程度以上の厚さを有するシート状部材が二次転写ニップに突入する際には、それまで一定速度で駆動されていた中間転写ベルトの速度が短時間の間変動し、一次転写部で画像に乱れが生じるという不具合が発生していた。
【0005】
詳しく説明すると、図23に示すように、シート状部材の先端が二次転写ニップへ進入することにより、二次転写ニップがシート状部材Sの厚さ分だけ押し広げられる。二次転写ニップがシート状部材Sの厚さ分だけ押し広げられると二次転写対向ローラ116の駆動に突発的に負荷が加わり、二次転写対向ローラ116の回転が一時的に遅くなる。これにより、二次転写対向ローラ116で送られるベルト量よりも二次転写ニップ上流側張架面の上流端が巻き付いている駆動ローラ114から送り出されるベルト量の方が多くなる。その結果、二次転写ニップ上流側張架面が弛み気味となる。一方、二次転写対向ローラ116が送るベルト量よりも駆動ローラ114の駆動力により従動ローラ115が送り出すベルト量の方が多くなる。その結果、中間転写ベルト110の二次転写対向ローラ116と従動ローラ115との間の張架面(以下、二次転写ニップ下流側張架面とよぶ)は、ベルト移動方向と反対側に引っ張られる。すると、従動ローラ115が、ベルト移動方向と反対側に引っ張られ減速し、中間転写ベルトの従動ローラ115と駆動ローラ114との間の領域(以下、一次転写領域という)がベルト移動方向と反対側に引っ張られ、一次転写ニップにおける中間転写ベルトの速度が減速する。従って、この減速が生じているときに、感光体ドラム104から中間転写ベルト110に一次転写部で画像の転写が行われると上記速度変動のため画像に乱れが生じてしまう。
【0006】
また、高画質化のために、トナー像をシート状部材へ転写する際、画像転写と画像定着とを同時に行なう転写定着装置を有する画像形成装置がある。この場合も、ある程度以上の厚さを有するシート状部材が転写定着部に突入する際に、それまで一定速度で駆動されていた中間転写ベルトの速度が短時間の間減速し、一次転写部などで画像に乱れが生じるという不具合が発生し得る。
【0007】
このような不具合は、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入する前に、その突入によって中間転写ベルトに速度変動が発生するタイミングを予測し、シート状部材の突入時に中間転写ベルトの速度を上げることで速度変動を打ち消すフィードフォワード制御によって回避可能であり、従来、以下の画像形成装置が知られている。
【0008】
特許文献1には、レジストローラクラッチング開始から、シート状部材が二次転写ニップへ突入するまでの時間を予め計測しておき、レジストローラクラッチング開始を起点にその計測された時間をフィードフォワード制御のタイミングとして用いた画像形成装置が開示されている。
【0009】
また、このような不具合は、中間転写ベルト110の二次転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られることを抑制することでも、回避可能であり、従来、以下の画像形成装置が知られている。
【0010】
特許文献2には、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入する際、張り気味となる中間転写ベルトの二次転写ニップ下流側張架面にベルトを内側に屈曲させるように外側からバネにより付勢するテンションローラを設け、このテンションローラにより中間転写ベルトの二次転写ニップ下流側張架面のテンション力を調節する画像形成装置が開示されている。具体的には、中間転写ベルト110の二次転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られ、二次転写ニップ下流側張架面のテンションが増加すると、テンションローラが外側に変位して、二次転写ニップ下流側張架面のテンションを減少させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、レジストローラクラッチングを開始して、レジストローラに駆動力が伝達されるまでのクラッチング時間がばらついてしまい、レジストローラクラッチング開始からシート状部材が二次転写ニップへ突入するまでの時間に大きなばらつきが生じる。そのため、予め得た計測時間に対して誤差が生じ、正確なフィードフォワード制御のタイミングを得ることは困難であった。また、クラッチング時間が安定していたとしても、実際には、シート状部材の突入タイミングは毎回ばらつくため、事前に計測した値を用いて正確なフィードフォワード制御を行うことは難しく精度の点で問題があった。
【0012】
また、紙の腰、二次転写加圧力、二次転写ローラ硬度などの変化によって、シート状部材の先端が二次転写ニップへ進入したときの速度変動波形が異なってくる。よって、フィードフォワード制御の場合、想定している打消し対象の変動波形と実際の変動波形とが異なってしまい、ベルト速度変動を悪化させるおそれがある。
【0013】
また、特許文献2に記載の画像形成装置では、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入したとき、二次転写ニップ下流側張架面は、所定のテンションによってベルトが張った状態である。よって、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入したときは、二次転写ニップ下流側張架面のテンションが増加してから、テンションローラが変位して二次転写ニップ下流側張架面のテンションが弱められ、突入前のテンションに戻す。よって、シート状部材が二次転写ニップや転写定着部などに突入直後は、二次転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られる力が働き、その張力が、二次転写ニップ下流側張架面よりも下流側の張架面に及んでしまう。その結果、一次転写部などで画像に乱れを十分に抑制することができなかった。
【0014】
また、これまでトナー像担持ベルトが中間転写ベルトである中間転写方式の画像形成装置について説明したが、トナー像担持ベルトが感光体ベルトであり感光体ベルト上のトナー像を転写部でシート状部材に直接転写する直接転写方式の画像形成装置であっても、上記転写部で同様の問題が生じ得る。そして、感光体ベルトに速度変動が生じると、潜像を形成する露光光の照射タイミングと感光体ベルト表面が露光位置を通過するタイミングにズレが生じ、感光体ベルト上に形成される潜像の位置ズレが生じる。
【0015】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、転写ニップにシート状部材が進入する際に発生するトナー像担持ベルトの速度変動を抑制する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の張架ローラによって張架され、表面にトナー像を担持して無端移動するトナー像担持ベルトと、前記複数の張架ローラのうちの一つと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向し、前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写する転写ニップを形成する転写ローラとを有する画像形成装置において、前記トナー像担持ベルトが前記複数の張架ローラに張架されることによって形成される複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向下流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことを検知する突入検知手段と、前記複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ下流側張架面の張力を制御する張力制御手段とを有し、前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、シート状部材転写ニップ突入時に前記転写ニップ下流側張架面の張力を、前記シート状部材が前記転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記突入検知手段は、前記転写ローラと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向する張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、該回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部とによって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記突入検知手段は、前記転写ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記転写ニップ上流側張架面の前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が巻き付いている張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記突入検知手段は、前記転写ニップ上流側張架面の変位量を計測する変位情報取得手段と、前記変位情報取得手段によって計測された前記変位量を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、前記張力制御手段は、前記トナー像担持ベルトの前記転写ニップ下流側張架面に対して屈曲させるように付勢する張架ローラと、前記張架ローラの軸を回転自在に支持する軸受部と、前記軸受部を前記転写ニップ下流側張架面に対して直交する方向に移動させるアクチュエータとによって構成されることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、前記転写ニップへ通紙するシート状部材が、厚紙のとき、前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、前記転写ニップ下流側張架面の張力を弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかの画像形成装置において、前記トナー像担持ベルトは、トナー像担持体上に担持されたトナー像を転写され、転写されたトナー像を転写ニップでシート状部材に転写する中間転写ベルトであることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8いずれかの画像形成装置において、上記転写ニップ近傍に設けられ、前記トナー像担持ベルトまたはシート状部材を加熱する加熱手段を有し、前記転写ニップで前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写すると同時に定着するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シート状部材が転写ニップに突入時の転写ニップ下流側張架面の張力を、シート状部材が転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うので、シート状部材が転写ニップに突入時、転写ニップ下流側張架面を弛ませることができる。従って、転写ニップにシート状部材が突入して、転写ニップ下流側張架面がベルト移動方向と反対側に引っ張られても、弛んだ状態のベルトが元の張架された状態に戻るだけである。その結果、転写ニップ下流側張架面よりもベルト移動方向下流側の張架ローラが、転写ニップ下流側張架面によりベルト移動方向と反対側へ引っ張られるのを抑制することができる。その結果、上記下流側の張架ローラにより、この下流側の張架ローラよりも下流側のベルト張架面がベルト移動方向と反対側へ引っ張られるのを抑制することができる。よって、転写ニップ下流側張架面よりも下流側のベルト張架面の速度変動を抑制することができる。その結果、転写ニップ下流側張架面よりも下流側のベルト張架面に一次転写部または露光位置を設ければ、トナー像担持ベルトの速度変動による画像の劣化を抑制することができる。
また、シート状部材転写ニップ突入時の転写ニップ下流側張架面の張力を、シート状部材が転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うので、特許文献2に記載のように、シート状部材転写ニップ突入時と突入前とで、張力が同じになるものに比べて、転写ニップ突入直後のベルトの速度変動を抑制することができる。
また、シート状部材転写ニップ到達直前のタイミングである転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことを張力制御のトリガにするので、シート状部材がレジストローラを通過してから数秒後をトリガにするものに比べて、制御タイミングのばらつきを小さくすることができる。なお、転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことの検知は、転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入すると、転写ニップ上流側張架面が変位するので、変位センサなどで転写ニップ上流側張架面の変位を検知することで容易に検知できる。
また、シート状部材が転写ニップ到達直前のタイミングをトリガにするので、シート状部材が転写ニップに突入したタイミングをトリガにするものに比べてトリガ信号を出力してから張力制御が開始されるまでに時間がかかっても、転写ニップにシート状部材が突入したときに、確実に転写ニップ下流側張架面の張力を弱める制御を行うことができる。
また、転写ニップ下流側張架面の張力を制御することによってベルトの速度変動を抑えるので、制御タイミングなどが想定と異なっていても、転写ニップ下流側張架面の張力が弱まれば、確実にベルトの速度変動が抑制される。よって、フィードフォワード制御のように、制御タイミングなどが想定と異なった場合に、ベルト速度変動を悪化させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】駆動ローラと従動ローラの速度変動を示す図。
【図3】位置ズレが発生したトナー像が転写された転写紙を模式的に示す説明図。
【図4】(a)用紙がプレニップ部に突入した際の力の伝達を示した図。(b)は、用紙がプレニップ部に突入した際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図、(c)は、用紙がプレニップ部に突入した際の速度変動を説明するグラフ。
【図5】(a)用紙が本ニップ部に突入した際の力の伝達を示した図。(b)は、用紙が本ニップ部に突入した際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図。(c)は、用紙が本ニップ部に突入した際の速度変動を説明するグラフ。
【図6】用紙本ニップ突入によって駆動ローラと入口ローラとが共に減速するメカニズムの説明図。
【図7】(a)は、中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際の力の伝達を示した図。(b)は、中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際の二次転写ニップ近傍の拡大説明図。(c)は、中間転写ベルトのプレニップ領域が戻る際のことによる速度変動を説明するグラフ。
【図8】従動ローラ7および駆動ローラ3の速度変動とテンションローラ6の変位との関係について調べたデータ。
【図9】実施例1の画像形成装置の概略構成図。
【図10】(a)は、アクチュエータ駆動OFF時のテンションローラ付近の拡大構成図。(b)は、アクチュエータ駆動ON時のテンションローラ付近の拡大構成図。
【図11】実施例1における画像形成装置における制御ブロック図
【図12】実施例1のベルトテンション制御フロー図。
【図13】実施例1のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図14】実施例2の画像形成装置の概略構成図。
【図15】実施例2のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図16】実施例3の画像形成装置の概略構成図。
【図17】実施例3のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図18】実施例4の画像形成装置の概略構成図。
【図19】実施例4のベルトテンション制御のタイミングチャート。
【図20】実施例5の画像形成装置の概略構成図。
【図21】実施例5の画像形成装置の他の例示す概略構成図。
【図22】検証試験の結果を示す図。
【図23】シート状部材が二次転写ニップに進入した際に中間転写ベルトの張架状態が変化した状態を示す模式図。
【図24】実施例6の画像形成装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本画像形成装置を示す要部構成図である。同図において、本画像形成装置は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット100Y,C,M,Kを備えている。また、機内で記録シートを搬送するための複数のガイド板等からなる用紙搬送路、レジストローラ対9、定着装置15、光書込ユニット(不図示)、転写ユニット50、なども備えている。
【0021】
図示しない光書込ユニットは、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有しており、外部のパーソナルコンピュータ等から送られている画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動する。そして、プロセスユニット100Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kを光走査する。具体的には、プロセスユニット100Y,C,M,Kの感光体1Y,C,M,Kは、図示しない駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。光書込ユニットは、駆動中の感光体1Y,C,M,Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体1Y,C,M,Kには、Y,C,M,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
【0022】
4つのプロセスユニット100Y,C,M,Kを、後述する中間転写ベルト2に対してその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。各色のプロセスユニット100Y,C,M,Kは、それぞれ、潜像担持体たる感光体1Y,C,M,Kと、その周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ部本体に対して着脱可能になっている。そして、互いに使用するトナーの色が異なる点以外は同様の構成になっている。Y用のプロセスユニット100Yを例にすると、これは、トナー像担持体たる感光体1Yの他、これの表面に形成された静電潜像をYトナー像に現像するための現像装置101Y、ドラム状の感光体1Yを一様帯電せしめるための帯電装置103Y、ドラムクリーニング装置102Y等を有している。
【0023】
帯電装置103Yは、回転駆動される感光体1Yの周面をトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめる。このようにして一様帯電せしめられた感光体1Yの周面には、上述した光書込装置による光走査で静電潜像が形成される。感光体1Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0024】
現像装置101Yは、図示しない磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)を用いて、感光体1Y上の静電潜像を現像する。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用していもよい。
【0025】
現像によって感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述するY用の一次転写ニップで中間転写ベルト2のおもて面に転写される。このようにしてYトナー像を転写した後の感光体1Y上に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置102Yによって感光体1Y表面から除去される。このクリーニングに先立って、感光体1Yの表面は図示しない除電ランプによる光照射を受けて除電される。
【0026】
Y用のプロセスユニット100Yについて説明したが、M,C,K用のプロセスユニットにおいても、同様にして感光体1M,C,Kの表面にM,C,Kトナー像が形成される。
【0027】
4つのプロセスユニット100Y,C,M,Kの下方には、転写ユニット50が配設されている。この転写ユニット50は、トナー像担持ベルトたる中間転写ベルト2を有している。中間転写ベルト2は、駆動ローラ3、二次転写対向ローラ5、テンションローラ6、従動ローラ7、入口ローラ4などの張架ローラによって張架されている。この中間転写ベルト2を、感光体1Y,C,M,Kに当接させながら、駆動ローラ3の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体1Y,C,M,Kと中間転写ベルト2とが当接するY,C,M,K用の一次転写ニップが形成されている。
【0028】
Y,C,M,K用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ104Y,C,M,Kによって中間転写ベルト2を感光体1Y,C,M,Kに向けて押圧している。これら一次転写ローラ104Y,C,M,Kには、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,C,M,K用の一次転写ニップには、感光体1Y,C,M,K上のトナー像を中間転写ベルト2に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。
【0029】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト2のおもて面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト2のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0030】
中間転写ベルト2の図中下方には、当接部材たる二次転写ローラ8が配設されており、中間転写ベルト2における二次転写対向ローラ5に対する掛け回し箇所にベルトおもて面から当接して二次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト2のおもて面と、二次転写ローラ8とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ8の軸中心は、二次転写対向ローラ5の軸中心よりも、用紙搬送方向上流側に位置している。二次転写ローラ8は、不図示のモータにより図中反時計回りに回転駆動させてもよいし、中間転写ベルト2に対して連れ回る構成でもよい。
【0031】
ベルトループ内の二次転写対向ローラ5には、図示しない電源によってトナーと同極性の二次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ外の二次転写ローラ8は接地されている。これにより、二次転写ニップ内に二次転写電界が形成されている。
【0032】
二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対9が配設されている。画像形成に並行して、給紙ローラ18を回転し、給紙カセット20からシート状部材たる用紙19を繰り出し、分離ローラ217で1枚ずつ分離して用紙搬送経路に入れ、搬送ローラ16で搬送してレジストローラ9に突き当てて止める。または、手差し部上の用紙を繰り出し、用紙搬送経路に入れ、同じくレジストローラ9に突き当てて止める。
【0033】
レジストローラ間に挟み込んだ用紙19を中間転写ベルト2上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト2上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によってシート状部材たる用紙に一括二次転写され、用紙の白色と相まってフルカラー画像となる。
【0034】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト2のおもて面には、二次転写ニップで用紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト2に当接する不図示のベルトクリーニング装置によってクリーニングされる。
【0035】
二次転写ニップを通過した用紙19は、中間転写ベルト2と搬送ベルト11との搬送力により定着装置15に向けて送られる。定着装置15は、定着ローラ13と加熱ローラ14とで張架された定着ベルト13aに対して加圧ローラ12を圧接して構成する。定着ベルト13aは加熱ローラ14内の図示しないIHコイルによって加熱され、画像定着に必要な温度まで加熱される。一方、加圧ローラ12にも内部に図示しないヒーターを内蔵しており、待機時の予備加熱に使用している。用紙上の未定着画像は、定着ベルト13aと加圧ローラ12とのニップ部において熱と圧力を与えられ、用紙19に定着される。なお、定着装置15のヒーターはIHコイルを用いたものでなくてもよく、熱ローラ対で構成された方式であっても良い。
【0036】
定着装置15で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、図示しない排紙トレイに排出される。または、図示しない両面反転機構により再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録、定着して後、排紙トレイに排出する。
【0037】
中間転写ベルト2に当接して二次転写ニップを形成している二次転写ローラ8は、金属製の芯金とこれの周面に被覆されたゴム等の弾性部材とを具備している。二次転写ニップでは、中間転写ベルト2における二次転写対向ローラ5に対する掛け回し箇所が、二次転写ローラ8の表面の弾性部材に食い込んでいる。これにより、幅広い二次転写ニップが形成されている。
【0038】
二次転写ローラ8の回転軸は、保持体としての揺動アーム10に固定された不図示の軸受によって回転自在に受けられている。そして、この揺動アーム10は、揺動軸10aを中心にして揺動するように支持されており、自らの揺動に伴って二次転写ローラ8の回転軸と、二次転写対向ローラ5の回転軸との距離を変化させる。
【0039】
揺動アーム10には、付勢手段としての付勢コイルバネ10bが固定されている。この付勢コイルバネ10bにより、揺動アーム10には揺動軸10aを中心にした図中反時計回り方向の付勢力が付与されて、二次転写ローラ8が中間転写ベルト2に押圧されている。
【0040】
揺動アーム10における揺動軸10aとは反対側の端部には、偏心カム10cのカム面が当接するカム当接面10dが設けられている。この偏心カム10cが図示しないカムモータによって回転駆動されると、付勢コイルバネ10bの付勢力に反して揺動アーム10を押し下げるように、揺動アーム10を図中時計回りに少しずつ回転させていく。すると、二次転写ローラ8と二次転写対向ローラ5との軸間距離が徐々に大きくなっていく。そして、それに伴って二次転写ニップのサイズが徐々に小さくなっていき、やがて二次転写ローラ8が中間転写ベルト2から離間する。
【0041】
このように本画像形成装置においては、二次転写ローラ8を付勢コイルバネ10bによる付勢力に反して移動させることで、二次転写対向ローラ5の回転軸と、二次転写ローラ8との距離、ひいては上記軸間距離を調整する。かかる構成では、偏心カム10c、カムモータ、これを駆動する制御部等が、距離調整手段として機能している。
【0042】
次に、従来の画像形成装置の中間転写ベルト2の課題について説明する。
用紙19が二次転写ニップに突入する際、中間転写ベルト2の感光体1Y,C,M,Kに当接する領域(以下、一次転写領域という)を張架する駆動ローラ3、従動ローラ7は、図2に示すような速度変動が発生する。このような現象は特に厚紙通紙時(ここでは連量220[kg]紙、坪量256[g/m2]紙以上を想定している)により顕著に見られる現象である。
【0043】
それに対して、感光体1Y,C,M,Kは用紙先端二次転写ニップ突入時においてもほぼ同速で回転駆動されるので、感光体1Y,C,M,Kと中間転写ベルト2との間で速度差が発生する。この速度差によって、一次転写ニップにおいて転写位置ずれが発生する。
【0044】
図3は、単色の画像形成を行った場合に、位置ズレが発生したトナー像が最終画像として転写された用紙19を模式的に示す説明図である。
用紙先端の二次転写ニップ突入時に発生した一次転写ニップにおける転写位置ずれを含むトナー像は、一次転写ニップから二次転写ニップまでの距離をLとすると、用紙先端からLの位置で用紙19に転写または転写・定着される。このため、排紙される用紙19上の最終画像は図3に示すように、用紙先端からLの位置に正常な画像の部分I1よりも色が薄い部分I2や色が濃い部分I3という局所的な濃度ムラをもった画像となる。
なお、複数色の画像形成を行った場合は、各色で一次転写ニップから二次転写ニップまでの距離が異なるため、各色で紙先端から濃度ムラまでの距離Lが異なる画像となって出力される。
このように、用紙突入時に発生する一次転写部における転写位置ずれを防ぐには、用紙突入時における駆動ローラ3、従動ローラ7の速度変動を抑制する必要がある。この駆動ローラ3、従動ローラ7の速度変動がどのようなメカニズムで発生するのかについて以下に述べる。
【0045】
本画像形成装置は、図1に示すように、二次転写ローラ8の軸中心は、二次転写対向ローラ5の軸中心よりも、用紙搬送方向上流側に位置している。このため、中間転写ベルト2の外周面が二次転写ローラ8と当接するニップは、次の2つニップ部を有する。すなわち、中間転写ベルト2の内周面が二次転写対向ローラ5と接触している二次転写ニップ(以下、本ニップ部という)と、二次転写ニップよりも用紙搬送方向上流側にあり、中間転写ベルト2の内周面が二次転写対向ローラ5と接触していないニップ部(以下、プレニップ部という)とを有している。
このように、本実施形態の画像形成装置は、本ニップ部、プレニップ部を有する構成であるため、駆動ローラ3、従動ローラ7の速度変動は、大きく分けて以下の3つの変動から成り立っている。
【0046】
(1)用紙19の先端がプレニップ部に突入することによる速度変動
図4は、用紙19がプレニップ部に突入した際に生じる速度変動の説明図である。
用紙先端がプレニップ部に突入すると、中間転写ベルト2の転写ニップ上流側張架面である二次転写対向ローラ5と入口ローラ4との張架領域(以下、プレニップ領域T3という)が内側に押される。中間転写ベルト2のプレニップ領域が、内側に押されると、プレニップ領域T3の用紙先端との当接部より中間転写ベルト移動方向上流側の部分が、図4(b)に示すように、ベルト移動方向へ引っ張れる。その結果、図4(b)に示すように、入口ローラ4には、ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2が働き、入口ローラ4に回転方向と同方向のトルクE2が働く。その結果、入口ローラ4が加速する。また、図4(a)の矢印F(2)に示すように、ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2は、中間転写ベルト2を介して駆動ローラ3に伝達され、駆動ローラ3に回転方向と同方向のトルクがかかり、図4(c)で、太線で示すように、駆動ローラ3が加速される。そして、最終的には、図4(a)の矢印F(2)に示すように、ベルト移動方向と同方向に引っ張る力I2が中間転写ベルト2を介して従動ローラ7にまで伝達される。その結果、図4(c)の太線で示すように、従動ローラ7が加速される。
【0047】
また、中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の用紙先端との当接部より中間転写ベルト移動方向下流側の部分が、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張られる。その結果、図4(b)に示すように、二次転写対向ローラ5には、ベルト移動方向と逆方向に引っ張る力I1が働き、二次転写対向ローラ5には、回転方向と逆方向のトルクE1がかかる。これにより、二次転写対向ローラ5が減速する。また、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1は、図4(a)の矢印F(1)に示すように、中間転写ベルト2を介して、テンションローラ6、従動ローラ7へ伝達される。伝達経路を考えれば、ベルト移動方向と同方向へ引っ張る力I2が、従動ローラ7へ伝達され、従動ローラ7が加速する前に、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1により従動ローラ7が減速するはずである。しかし、図4(c)を見ると、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1による従動ローラ7の減速が生じていない。これは、この実験においては、二次転写ローラ8を別のモータで駆動させたため、二次転写ローラ8の回転駆動力によってベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力I1を消滅させてしまったためと考えられる。
【0048】
図4(b)に示すように、駆動ローラ3がベルト移動方向に引っ張られる力I2により加速することで、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が加速される。その結果、図3に示すように正常な画像の部分I1よりも色が薄い部分I2が生じるのである。
【0049】
(2)用紙19の先端が本ニップ部に突入することによる速度変動
図5は、用紙先端が二次転写ニップたる本ニップ部に突入した際に生じる速度変動の説明図である。
用紙19先端が本ニップ部に突入することによる速度変動は、用紙19の先端が本ニップ部に突入する際に用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げることによって二次転写対向ローラ5が減速する現象である。
ここで、二次転写対向ローラ5が減速するメカニズムについて図6を用いて説明する。
図6に示すように、用紙19の先端が、本ニップ部へ進入するためには、用紙19の先端が、二次転写ローラ8を用紙19の厚さ相当分押し下げる必要がある。二次転写ローラ8は、上述したように、付勢コイルバネ10bにより図中矢印A方向に付勢されている。二次転写ローラ8を押し下げるには、用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げる力(図中の矢印B)が、付勢コイルバネ10bの付勢力を上回る必要がある。用紙19の先端の押し下げる力Bは、用紙先端を図中右側へ搬送する搬送力であり、その搬送力は、二次転写対向ローラ5の回転駆動力Cである。すなわち、用紙19の先端が二次転写ローラ8に当接したとき、二次転写対向ローラ5には、ベルトを搬送するためのトルクに他に、用紙先端が二次転写ローラ8を押し下げるのに必要なトルクが生じる。その結果、図5(b)に示すように二次転写対向ローラ5の回転負荷(図中矢印D1)が増加し、二次転写対向ローラ5が減速する。なお、本実験においては、二次転写ローラ8を回転駆動させている。このため、二次転写ローラ8の回転駆動力も用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げる力として働き、二次転写対向ローラ5のみで二次転写ローラ8を押し下げるものに比べて、二次転写対向ローラ5にかかるトルクは、減少されている。
【0050】
一方、入口ローラ4についても、二次転写対向ローラ5と同様、減速が生じる。これは、用紙19の先端が本ニップ部に突入すると、用紙19の先端が二次転写ローラ8を押し下げるまで、用紙19が前に進まないので、中間転写ベルト2と用紙間の摩擦力によるベルト走行負荷J2が生じる。この走行負荷により、入口ローラ4に回転方向と逆方向のトルクD2が働き、入口ローラ4も同様に減速する。このベルト走行負荷J2は、図5(a)の矢印F(3)に示すように、中間転写ベルト2を介して駆動ローラ3へ伝達される。しかし、駆動ローラ3に伝達されたベルト走行負荷は、駆動ローラ3を回転駆動させるモータの駆動力により打ち消され、駆動ローラ3よりベルト移動方向上流の従動ローラ7へ伝達されることはない。
【0051】
二次転写対向ローラ5が減速すると、中間転写ベルト2の転写ニップ下流側張架面たる二次転写対向ローラ5と従動ローラ7の張架領域(以下、テンション制御領域T2という)がベルト移動方向と逆方向へ引っ張られ、図5(a)の矢印F(4)に示すように、テンションローラ6、従動ローラ7にベルト移動方方向と逆方向の力J1が伝達される。従動ローラ7に、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力J1が伝達されると、図5(c)の太線に示すように、従動ローラ7が減速する。従動ローラ7が減速することにより、中間転写ベルト2の一次転写領域T1がベルト移動方向と逆方向へ引っ張られ、駆動ローラ3の回転方向と逆方向のトルクがかかる。その結果、図5(c)の太線に示すように駆動ローラ3が減速する。このように、従動ローラ7、駆動ローラ3が減速する結果、中間転写ベルト2の一次転写領域T1が減速し、図3に示すように正常な画像の部分I1よりも色が濃い部分I3が生じるのである。
【0052】
(3)用紙先端本ニップ突入後における中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の戻りによる速度変動
図7は、用紙先端本ニップ突入後における中間転写ベルト2のプレニップ領域T3の戻りによる変動の説明図である。
これは、図7(b)に示すように、用紙先端が二次転写ローラ8を押し下げて、本ニップ部へ突入すると、これまで用紙19の先端によって、内側へ押し込まれていた中間転写ベルト2のプレニップ領域T3が元に戻る。その結果、上記(1)プレニップ部突入による速度変動とは逆の現象が発生する。すなわち、プレニップ領域T3の用紙先端がベルトを押していた位置よりも、ベルト移動方向下流側では、ベルト移動方向と同方向にベルトを押し込むような力G1が発生する。一方、プレニップ領域T3の用紙先端がベルトを押していた位置よりも、ベルト移動方向上流側では、ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込むような力G2が発生するのである。ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込む力G2は、図7(a)の矢印F(6)に示すように、中間転写ベルト2を介して、入口ローラ4、駆動ローラ3に伝達される。入口ローラ4にベルト移動方向と逆方向に押し込む力G2が生じることで、入口ローラ4に、図7(b)に示すように、入口ローラ回転方向と逆方向のトルクH1が生じ、入口ローラ4が減速する。同様に、駆動ローラ3に、駆動ローラ回転方向と逆方向のトルクが生じ、図7(c)の太線で示すように、駆動ローラ3の速度が低下する。
【0053】
一方、ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込む力G1は、図7(a)の矢印F(5)に示すように、中間転写ベルト2を介して二次転写対向ローラ5、テンションローラ6、従動ローラ7に伝達される。二次転写対向ローラ5に、ベルト移動方向と逆方向にベルトを押し込む力G1が伝達されると、図7(b)に示すように、二次転写対向ローラ5の回転方向と同方向のトルクH2が生じ、二次転写対向ローラ5が加速する。同様に、従動ローラ7に、従動ローラ7回転方向と同方向のトルクが生じ、図7(c)の太線で示すように、従動ローラ7の速度が増加する。
【0054】
なお、図7(c)を見ると、中間転写ベルト2の戻りによる速度変動後も、駆動ローラ3、従動ローラ7は、速度変動している。これは、上記(1)〜(3)の駆動ローラ3の速度変動によって、駆動モータの駆動力が伝達される駆動ローラ3の軸にねじれ振動が生じ、そのねじれ振動によって中間転写ベルト2の戻りによる速度変動後も、駆動ローラ3、従動ローラ7は、速度変動が生じたと考えられる。
【0055】
図8は、従動ローラ7および駆動ローラ3の速度変動とテンションローラ6の変位との関係について調べたデータである。
図8に示すように、従動ローラ7の線速が落ち込み始める、つまり上記(2)の本ニップ部突入変動の開始とほぼ同時にテンションローラ6は急激にベルト外側方向に変位し始めることがわかる。これは、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションの増大によりテンションローラ6がベルト外側に押し下げられていることを意味している。仮に、テンションローラ6がない場合は、テンションローラ6がベルト外側に押し下がることによるテンションの緩和がないので、用紙先端本ニップ部突入時に発生する負荷トルクがほぼ損失なく従動ローラ7に伝播することになり、従動ローラ7の減速は大きくなる。逆に、用紙先端本ニップ部突入時に中間転写ベルト2のテンション制御領域T2のベルトテンションが弱い状態であれば、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2に、ベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力J1(図5(b)参照)が働いても、その力が従動ローラ7、駆動ローラ3に伝播し難くすることができる。その結果、従動ローラ7、駆動ローラ3の速度低下を抑制でき、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度低下を抑制することができる。よって、図3に示すように正常な画像の部分I1よりも色が濃い部分I3が生じるのを抑制することができる。
そこで、本発明は、用紙先端本ニップ部突入時に、テンションローラ6を外部からの力によってより急激にベルト外側方向へ変位させ、テンション制御領域T2のベルトテンションを弱める制御(以下、ベルトテンション制御という)を行なう。以下、本発明の各実施例を用いて、具体的に説明する。
【0056】
[実施例1]
図9は、実施例1の画像形成装置の概略構成図である。
図9に示すように、入口ローラ4には、回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24が搭載されている。また、テンションローラ6を中間転写ベルト2の表面に対して直交する方向に移動させるアクチュエータ32と、アクチュエータ32を駆動制御する駆動制御部28と有している。また、二次転写部下流側には、用紙先端の通過を検知する用紙先端検知手段たるフォトセンサ38が設置されている。
【0057】
図10は、テンションローラ6付近の拡大構成図である。
図10(a)に示すように、テンションローラ6の軸が軸受部34に回転自在に支持されている。軸受部34は、テンションバネ36により、中間転写ベルト2側へ付勢されている。アクチュエータ32は、電磁ソレノイド32aと、プランジャー32bとを有している。プランジャー32bの先端には、一端が装置本体に回転自在に支持されたレバー33が当接している。レバー33の他端側は、軸受部34に設けられたピン35により支持されている。
駆動制御部28から電磁ソレノイド32aに所定の電圧が印加されると、プランジャー32bが、図中下側へ移動し、図10(b)に示すように、レバー33が、図中時計回りに回転して、ピン35を図中下側へ押し込む。その結果、軸受部34が、テンションバネ36の付勢力に抗って、ベルト外側に変位し、テンションローラ6の中間転写ベルト2への押圧力が弱められる。
【0058】
図11は、実施例1の画像形成装置における制御ブロック図である。突入検知部25は、メモリ27とマイクロプロセッサ26とを備えている。マイクロプロセッサ26は、メモリ27に記憶されたプログラムに基づいて、様々な処理を行うものである。突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、突入検知部25が受信したロータリーエンコーダ24の検知信号に基づいて、入口ローラ4の線速を演算するよう設定されている。また、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、入口ローラ4の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、閾値を超えたら突入検知信号を駆動制御部28へ出力するように設定されている。すなわち、実施例1においては、回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24と、突入検知部25とで、突入検知手段を構成している。
【0059】
駆動制御部28は、マイクロプロセッサ29と、制御プログラムなどが格納されたメモリ30と、アクチュエータ駆動回路31とを備えている。また、メモリ30には、あらかじめ実験などで調べたテンションローラ6が所定量変位するときの電圧値が格納されている。駆動制御部28は、突入検知部25から、突入信号を受信したら、メモリ30に格納していた上記電圧値をアクチュエータ32へ出力する。すると、レバー33が、図10(b)に示すように、図中時計回りに回転して、ピン35を図中下側へ押し込む。その結果、軸受部34が、テンションバネ36の付勢力に抗って、ベルト外側に変位し、テンションローラ6の中間転写ベルト2への押圧力が弱められる。
二次転写ニップ(本ニップ部)下流側に設置したフォトセンサ38により用紙先端の通過を検知すると、マイクロプロセッサ29はアクチュエータ駆動回路31に電源をOFFにする指令を出す。すると、レバー33が軸受部34をベルト外周面から離間させる力が無くなり、テンションローラ6はテンションバネ36の付勢力により所定の押圧力でベルトにテンションを与える。すなわち、実施例1では、駆動制御部28、アクチュエータ32などで、張力制御手段を構成している。
【0060】
図12は、実施例1のベルトテンション制御フローであり、図13は、実施例1のタイミングチャートである。なお、図13に示す従動ローラ7の線速は、ベルトテンション制御を行っていない従来の従動ローラ7の線速である。
画像形成装置の不図示の操作部のスタートボタンをユーザーが押すことにより画像形成動作がスタートする。画像形成動作がスタートすると、厚紙モードか否かの判別が行われる(S1)。厚紙モードか否かの判別は、厚紙を用いる場合にはスタートボタンを押す前にユーザーが厚紙であることを不図示の操作部を操作して入力する。厚紙であることが、入力されると、フラグが立ち、フラグが立っているか否かで、厚紙モードか否かの判別が行われる。また、レジストローラ対9よりも搬送方向上流側で用紙19の紙厚を検知する紙厚検知センサを配置し、紙厚検知センサの検知結果に基づいて厚紙モードか否かの判別を行っても良い。厚紙モードではないと判別された場合(S1のNO)は、ベルトテンション制御を行わない。中間転写ベルト2の速度変動は、厚紙通紙時に顕著に発生するものであり、普通紙などの通紙時に無視できるほどの変動であるので、ベルトテンション制御を行なわない。
【0061】
一方、厚紙モードと判別された場合(S1のYES)は、突入検知部25で、用紙先端が、プレニップ部に突入したか否かを検知する(S2)。図13に示すように、用紙先端がプレニップ部に突入すると、入口ローラ4の速度が増加する。よって、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、入口ローラ4の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、入口ローラ4の線速が閾値を超えたか否かを監視している。そして、入口ローラ4の線速が閾値を超えたら、用紙先端がプレニップ部に突入した(S2のYES)ので、突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。
【0062】
図13に示すように、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。このため、駆動制御部28は、突入信号を受信してから、アクチュエータ32を駆動させるまでに時間がかかった(演算処理による遅れ、電気的、機械的時定数による遅れ等による)としても、Ts[sec]の範囲内であれば対応できる。よって、従動ローラ7の減速開始時(用紙先端本ニップ部突入時)にアクチュエータ32を駆動(S3)させてテンションローラ6をベルト外側方向に所定の変位量駆動できる。その結果、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるときに、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2のベルトテンションを弱めることができる。その結果、テンション制御領域T2が、従動ローラ7をベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力を低減でき、従動ローラ7の速度低下を抑制することができる。従動ローラ7の速度低下を抑制することができる結果、従動ローラ7が駆動ローラ3をベルト移動方向と逆方向へ引っ張る力が低減され、駆動ローラ3の速度低下が抑制される。その結果、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度低下が抑制され、濃度低下を抑制することができる。
【0063】
用紙先端が本ニップ部を通過して、フォトセンサ38が用紙の先端を検知したら(S4のYES)、駆動制御部28は、アクチュエータ32の駆動を停止する(S25)。これにより、テンションローラ6はテンションバネ36の付勢力により所定の押圧力で中間転写ベルト2にテンションを与える。
【0064】
このように実施例1においては、プレニップ突入を検知し、そのタイミングをトリガーにして、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2のベルトテンションを弱める制御を行う。これにより、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
【0065】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。
図14は、実施例2の画像形成装置の概略構成図である。
図14に示すように、実施例2においては、二次転写対向ローラ5に回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24を搭載して、二次転写対向ローラ5の回転速度情報に基づいて、テンション制御領域T2のベルトテンションを制御するものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0066】
図15は、実施例2におけるベルトテンション制御のタイミングチャートである。
上述したように、用紙先端がプレニップ部に突入したとき、二次転写対向ローラ5は、減速する。よって、突入検知部25のメモリ27に通常の線速よりも低めに設定した閾値を格納しておく。そして、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、二次転写対向ローラ5の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、二次転写対向ローラの線速が、閾値を下回ったら突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。後の動作は実施例1と同様である。
【0067】
実施例2においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
【0068】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。
図16は、実施例3の画像形成装置の概略構成図である。
図16に示すように、実施例3においては、二次転写ローラ8に回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24を搭載して、二次転写ローラ8の回転速度情報に基づいて、テンション制御領域T2のベルトテンションを制御するものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0069】
図17は、実施例3におけるベルトテンション制御のタイミングチャートである。図17に示すように、二次転写ローラ8は、二次転写対向ローラ5と同様に用紙先端がプレニップ部に突入時したときは減速する。よって、突入検知部25のメモリ27に通常の線速よりも低めに設定した閾値を格納しておく。そして、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、二次転写ローラ8の線速と、あらかじめメモリ27に格納された線速の閾値との比較を行ない、二次転写ローラ8の線速が、閾値を下回ったら突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。後の動作は実施例1と同様である。
【0070】
実施例3においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向に引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ及び駆動ローラに伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域の速度変動を抑制することができる。
【0071】
[実施例4]
次に、実施例4について説明する。
図18は、実施例4の画像形成装置の概略構成図である。
図18に示すように、実施例4においては、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と入口ローラ4との間の領域であるプレニップ領域T3の変位を検知する変位情報取得手段たる変位センサ37が設けられている。変位センサ37は、中間転写ベルト2の内側に配置され、中間転写ベルト2の内側の面との距離を計測する距離センサである。変位センサ37としては、圧電式変位センサ、光学式変位センサ等を用いることができる。変位センサ37は、突入検知部25に接続されている。その他の構成は実施例1と同様である。
【0072】
図19は、実施例3におけるベルトテンション制御のタイミングチャートである。上述したように、用紙先端がプレニップ部に突入すると、中間転写ベルト2のプレニップ領域T3は内側に押し込まれる。その結果、変位センサ37と中間転写ベルト2との間の距離は小さくなる。よって、突入検知部25のメモリ27に通常の距離の値よりも低めに設定した閾値を格納しておく。そして、突入検知部25は、マイクロプロセッサ26で、変位センサ37と中間転写ベルト2との間の距離と、あらかじめメモリ27に格納された距離の閾値との比較を行ない、距離が、閾値を下回ったら突入検知信号を駆動制御部28へ出力する。後の動作は実施例1と同様である。
【0073】
実施例4においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域の速度変動を抑制することができる。
【0074】
[実施例5]
次に、実施例5について説明する。
図20は、実施例5の画像形成装置の概略構成図である。
実施例5は、中間転写ベルト上のトナー像を二次転写ニップで用紙19へ転写すると同時に定着も行うものである。
図20に示すように、二次転写ニップ近傍であり二次転写ニップよりもシート状部材搬送方向上流側に加熱手段たる加熱装置21が設けられている。加熱装置21によって用紙19をトナーが定着するのに十分な温度まで加熱し、二次転写ニップにおいて転写と定着を同時に行う構成となっている。
【0075】
図21は、実施例5の変形例である。この変形例においては、加熱装置21によって中間転写ベルト2を加熱し、中間転写ベルト2上のトナーを溶融して、二次転写ニップにおいて転写と定着とを同時に行う構成となっている。
【0076】
図20、図21に示した実施例5においても、実施例1と同様に、入口ローラ4にロータリーエンコーダ24を搭載して、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、テンション制御領域T2のベルトテンションを制御する。
【0077】
実施例5においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
【0078】
また、上記においては、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションを制御しているが、実施例2〜実施例4した構成で、プレニップ部突入を検知してもよい。
【0079】
[実施例6]
次に、実施例6について説明する。
図24は、実施例6の画像形成装置の概略構成図である。
実施例6は、トナー像担持ベルトたる感光体ベルト1上のトナー像を転写ニップで用紙19に直接転写する直接転写方式の画像形成装置である。
図24に示すように、感光体ベルト1の駆動ローラ3と従動ローラ7と張架領域には、帯電装置103、現像装置からなる作像ユニット100Y,100C,100M,100Kが対向している。この画像形成装置は、帯電、露光、現像工程を色毎に複数回繰り返すことで、感光体ベルトの同一領域上に複数色のトナー像を重ね合わせて形成し、転写ニップで感光体ベルト状の重ね合わせトナー像を用紙19に一括転写するものである。
【0080】
実施例6においても、厚紙の先端が本ニップ部に突入するときに、二次転写対向ローラ5が減速し、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間の領域をベルト移動方向と逆方向へ二次転写対向ローラ5が引っ張る。その結果、従動ローラ7、駆動ローラ3が減速し、感光体ベルト1の駆動ローラ3と従動ローラ7と張架領域が減速し、露光光の照射タイミングと感光体ベルト表面が露光位置を通過するタイミングとにズレが生じ、感光体ベルト上に形成される潜像の位置ズレが生じる。
【0081】
そこで、実施例6においても、実施例1と同様に、入口ローラ4にロータリーエンコーダ24を搭載して、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間に配置されたテンションローラ6の軸受部をベルト外周面に対して直交する方向に移動させ、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションを制御する。
【0082】
実施例6においても、実施例1同様、突入検知信号は、従動ローラ7の線速が落ち込み始めるよりもTs[sec]早く駆動制御部28へ出力される。よって、用紙先端が本ニップ部に突入して、中間転写ベルト2の二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間の領域を、二次転写対向ローラ5がベルト移動方向と逆方向へに引っ張るときに、この領域のベルトテンションを確実に弱めることができる。これにより、本ニップ突入時に発生するベルト移動方向と逆方向のトルクが、従動ローラ7及び駆動ローラ3に伝播するのを抑制することができ、中間転写ベルト2の一次転写領域の速度変動を抑制することができる。
【0083】
また、上記においては、入口ローラ4の回転速度情報に基づいて、二次転写対向ローラ5と従動ローラ7との間のベルトテンションを制御しているが、実施例2〜実施例4した構成で、プレニップ部突入を検知してもよい。
【0084】
次に、本発明者らが行なった検証試験について説明する。
検証試験は、まず、図1に示した中間転写方式における画像形成装置とほぼ同じ特性を有するベルト搬送試験機を試作し、さらにそれを再現するシミュレーションモデルを構築した。次に、このシミュレーションモデルを用いて、テンションローラ変位を制御した時にどの程度の抑制効果があるのかを検証する試験である。
図22は、検証試験の結果を示す図である。図22(a)は、テンションローラ変位制御を行なわない場合のテンションローラ変位と、テンションローラ変位制御を行った場合のテンションローラの変位とを示す図である。図22(b)は、テンションローラ変位制御を行なわない場合の従動ローラ線速変動と、テンションローラ変位制御を行った場合の従動ローラ線速変動とを示す図である。なお、プレニップ部突入による速度変動の部分で、従動ローラ線速変動が落ち込んでいるのは、図1の画像形成装置と異なり、二次転写ローラが従動であることやレイアウトの差であり、抑制効果を検証するのに影響はない。
用紙先端がプレニップ部に突入したのをトリガーにして、本ニップ突入による速度変動の開始点で、図22(a)に示すようなテンションローラ変位制御を行った場合、図22(b)に示すように、従動ローラ線速変動は、変位制御を行なわない場合に比べて約40[%]程度低減できていることがわかる。本ニップ突入時における従動ローラの速度低下をより抑制するためには、テンションローラを同じ時間に対してより大きく変位させればよいが、それは実際に搭載するアクチュエータの性能を見極めて決めればよい。
【0085】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、複数の張架ローラによって張架され、表面にトナー像を担持して無端移動するトナー像担持ベルトたる中間転写ベルト2と、複数の張架ローラのうちの一つである二次転写対向ローラ5を挟んで対向し、中間転写ベルト上のトナー像をシート状部材たる用紙19に転写する転写ニップたる本ニップ部を形成する転写ローラたる二次転写ローラ8とを有する。また、中間転写ベルト2が複数の張架ローラに張架されることによって形成される複数の張架面のうち、中間転写ベルト2の移動方向下流側端部が本ニップ部となる張架面である転写ニップ上流側張架面たるプレニップ領域T3に用紙19が突入したことを検知する突入検知手段と、複数の張架面のうち、中間転写ベルトの移動方向上流側端部が本ニップ部となる張架面である転写ニップ下流側張架面たるテンション制御領域T2の張力を制御する張力制御手段とを有している。そして、突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、用紙19が本ニップ部に突入時にテンション制御領域T2の張力を弱める制御を行うよう張力制御手段を構成した。
このように構成することで、用紙19が本ニップ部に突入したときに二次転写対向ローラ5が減速して、テンション制御領域T2をベルト2の移動方向と逆方向に引っ張る力が働いても、その力がテンション制御領域T2よりも下流側の張架ローラである従動ローラ7に及ぶのを抑制することができる。これにより、テンション制御領域T2よりもベルト移動方向下流側の張架面に一次転写ニップを形成すれば、中間転写ベルト2の速度変動による画像の劣化を抑制することができる。
また、プレニップ領域T3に用紙19が突入したことをトリガにして、テンション制御領域T2の張力を制御することで、トリガ信号を出力してから張力制御が開始されるまでに時間がかかったとしても、本ニップ部に用紙19が突入したときに、確実にテンション制御領域T2の張力を弱める制御を行うことができる。これにより、用紙19が本ニップ部に突入したことをトリガにした場合に比べて、確実に中間転写ベルト2の一次転写領域T1の速度変動を抑制することができる。
また、プレニップ領域に用紙19が突入したことをトリガにすることで、用紙19が本ニップ部到達直前のタイミングをトリガにすることができる。これにより、用紙19がレジストローラ9を通過してから数秒後をトリガにするものに比べて、制御タイミングのばらつきを小さくすることができる。
【0086】
また、上記突入検知手段は、二次転写対向ローラ5の回転情報を取得する回転情報取得手段たるロータリーエンコーダ24と、ロータリーエンコーダ24により取得した回転情報を用いて用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部25とによって構成されている。上述したように、用紙先端がプレニップ領域T3に突入する際には、二次転写対向ローラ5の回転状態に変動が生じる。したがって、ロータリーエンコーダ24によって、二次転写対向ローラ5の回転状態の変動を検知することにより、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0087】
また、二次転写ローラ8の回転情報をロータリーエンコーダ24で検知して、二次転写ローラ8の回転情報を用いて、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知するようにしてもよい。上述したように、用紙19がプレニップ領域T3に突入する際には、二次転写ローラ8の回転状態に変動が生じる。したがって、ロータリーエンコーダ24によって、二次転写ローラ8の回転状態の変動を検知することでも、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0088】
さらに、プレニップ領域T3の中間転写ベルト移動方向上流側端部が巻き付いている張架ローラたる入口ローラ4の回転情報をロータリーエンコーダ24で検知して、入口ローラ4の回転情報を用いて、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知するようにしてもよい。上述したように、用紙19がプレニップ領域T3に突入する際には、入口ローラ4の回転状態に変動が生じる。したがって、ロータリーエンコーダ24によって、入口ローラ4の回転状態の変動を検知することでも、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0089】
また、プレニップ領域T3の変位量を計測する変位情報取得手段たる変位センサ37と、変位センサ37によって計測された変位量を用いて用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知するようにしてもよい。上述したように、用紙19がプレニップ領域T3に突入する際には、プレニップ領域T3が変位する。したがって、変位センサ37によって、プレニップ領域の変位量を検知することでも、用紙19がプレニップ領域T3へ突入したことを検知することができる。
【0090】
また、張力制御手段は、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2に対して屈曲させるように付勢する張架ローラたるテンションローラ6と、テンションローラ6の軸を回転自在に支持する軸受部34と、軸受部34をテンション制御領域T2に対して直交する方向に移動させるアクチュエータ32とによって構成される。
かかる構成を有することで、テンションローラを移動させて、テンション制御領域T2のテンションを制御することができる。
【0091】
また、転写ニップへ通紙する用紙19が、厚紙のとき、突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、テンション制御領域T2の張力を弱める制御を行う。これにより、中間転写ベルト2の速度変動が顕著に発生する、厚紙通紙時にベルトテンション制御を行ない、普通紙などの通紙時など中間転写ベルト2の速度変動が無視できるほどの変動であるときは、ベルトテンション制御を行なわないようにすることができる。
【0092】
また、中間転写ベルト2のテンション制御領域T2の張力を弱める制御を行うことにより、一次転写時の転写位置ずれの発生を抑制することができる。
【0093】
また、二次転写ニップ近傍に設けられ、中間転写ベルト2または用紙19を加熱する加熱手段である加熱装置21を有し、二次転写ニップで中間転写ベルト2上のトナー像を用紙19に転写すると同時に定着するように構成した画像形成装置であっても、上述した各効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1Y,C,M,K:感光体
2:中間転写ベルト
3:駆動ローラ
4:入口ローラ
5:二次転写対向ローラ
6:テンションローラ
7:従動ローラ
8:二次転写ローラ
9:レジストローラ
10:揺動アーム
11:搬送ベルト
15:定着装置
19:用紙
21:加熱装置
24:ロータリーエンコーダ
25:突入検知部
26,29:マイクロプロセッサ
27,30:メモリ
28:駆動制御部
31:アクチュエータ駆動回路
32:アクチュエータ
33:レバー
34:軸受部
35:ピン
36:テンションバネ
37:変位センサ
38:フォトセンサ
50:転写ユニット
T1:一次転写領域
T2:テンション制御領域
T3:プレニップ領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【特許文献1】特開2005−107118号公報
【特許文献2】特開2005−338884号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の張架ローラによって張架され、表面にトナー像を担持して無端移動するトナー像担持ベルトと、
前記複数の張架ローラのうちの一つと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向し、前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写する転写ニップを形成する転写ローラとを有する画像形成装置において、
前記トナー像担持ベルトが前記複数の張架ローラに張架されることによって形成される複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向下流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことを検知する突入検知手段と、
前記複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ下流側張架面の張力を制御する張力制御手段とを有し、
前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、シート状部材転写ニップ突入時に前記転写ニップ下流側張架面の張力を、前記シート状部材が前記転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記突入検知手段は、
前記転写ローラと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向する張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、
該回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部とによって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
前記突入検知手段は、
前記転写ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、
前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1の画像形成装置において、
前記転写ニップ上流側張架面の前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が巻き付いている張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、
前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1の画像形成装置において、
前記突入検知手段は、
前記転写ニップ上流側張架面の変位量を計測する変位情報取得手段と、
前記変位情報取得手段によって計測された前記変位量を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、
前記張力制御手段は、
前記トナー像担持ベルトの前記転写ニップ下流側張架面に対して屈曲させるように付勢する張架ローラと、
前記張架ローラの軸を回転自在に支持する軸受部と、
前記軸受部を前記転写ニップ下流側張架面に対して直交する方向に移動させるアクチュエータとによって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、
前記転写ニップへ通紙するシート状部材が、厚紙のとき、前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、前記転写ニップ下流側張架面の張力を弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかの画像形成装置において、
前記トナー像担持ベルトは、トナー像担持体上に担持されたトナー像を転写され、転写されたトナー像を転写ニップでシート状部材に転写する中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの画像形成装置において、
上記転写ニップ近傍に設けられ、前記トナー像担持ベルトまたはシート状部材を加熱する加熱手段を有し、前記転写ニップで前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写すると同時に定着するように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
複数の張架ローラによって張架され、表面にトナー像を担持して無端移動するトナー像担持ベルトと、
前記複数の張架ローラのうちの一つと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向し、前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写する転写ニップを形成する転写ローラとを有する画像形成装置において、
前記トナー像担持ベルトが前記複数の張架ローラに張架されることによって形成される複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向下流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ上流側張架面にシート状部材が突入したことを検知する突入検知手段と、
前記複数の張架面のうち、前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が前記転写ニップとなる張架面である転写ニップ下流側張架面の張力を制御する張力制御手段とを有し、
前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、シート状部材転写ニップ突入時に前記転写ニップ下流側張架面の張力を、前記シート状部材が前記転写ニップに突入する前の張力よりも弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記突入検知手段は、
前記転写ローラと前記トナー像担持ベルトを挟んで対向する張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、
該回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部とによって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
前記突入検知手段は、
前記転写ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、
前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1の画像形成装置において、
前記転写ニップ上流側張架面の前記トナー像担持ベルトの移動方向上流側端部が巻き付いている張架ローラの回転情報を取得する回転情報取得手段と、
前記回転情報取得手段により取得した前記回転情報を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1の画像形成装置において、
前記突入検知手段は、
前記転写ニップ上流側張架面の変位量を計測する変位情報取得手段と、
前記変位情報取得手段によって計測された前記変位量を用いてシート状部材が前記転写ニップ上流側張架面へ突入したことを検知し突入検知信号を出力する突入検知部と、によって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかの画像形成装置において、
前記張力制御手段は、
前記トナー像担持ベルトの前記転写ニップ下流側張架面に対して屈曲させるように付勢する張架ローラと、
前記張架ローラの軸を回転自在に支持する軸受部と、
前記軸受部を前記転写ニップ下流側張架面に対して直交する方向に移動させるアクチュエータとによって構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの画像形成装置において、
前記転写ニップへ通紙するシート状部材が、厚紙のとき、前記突入検知手段が出力した突入検知信号をトリガとして、前記転写ニップ下流側張架面の張力を弱める制御を行うよう張力制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかの画像形成装置において、
前記トナー像担持ベルトは、トナー像担持体上に担持されたトナー像を転写され、転写されたトナー像を転写ニップでシート状部材に転写する中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかの画像形成装置において、
上記転写ニップ近傍に設けられ、前記トナー像担持ベルトまたはシート状部材を加熱する加熱手段を有し、前記転写ニップで前記トナー像担持ベルト上のトナー像をシート状部材に転写すると同時に定着するように構成したことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−197616(P2010−197616A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41361(P2009−41361)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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