画像形成装置
【課題】転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、転写不良の発生を抑制する。
【解決手段】非画像領域D1が一次転写位置を通過する間に、電流を供給しないときの基準検出電圧値Vtr0、第1電流値I1を供給したときの第1検出電圧値Vtr1、第2電流値I2を供給したときの第2検出電圧値Vtr2、第3電流値I3を供給したときの第3検出電圧値Vtr3を取得する。第1電流値I1〜第3電流値I3と、第1検出電圧値Vtr1〜第3検出電圧値Vtr3から基準検出電圧値Vtr0を引いて得られた第1電圧値〜第3電圧値とを用いてSN比、傾き量を求め、環境条件に基づいて求まる基本転写電流値と、環境条件、SN比、傾き量に基づいて求まる補正値とを乗算し、画像領域D2が一次転写位置を通過する際に供給する転写電流値Itrを決定する。
【解決手段】非画像領域D1が一次転写位置を通過する間に、電流を供給しないときの基準検出電圧値Vtr0、第1電流値I1を供給したときの第1検出電圧値Vtr1、第2電流値I2を供給したときの第2検出電圧値Vtr2、第3電流値I3を供給したときの第3検出電圧値Vtr3を取得する。第1電流値I1〜第3電流値I3と、第1検出電圧値Vtr1〜第3検出電圧値Vtr3から基準検出電圧値Vtr0を引いて得られた第1電圧値〜第3電圧値とを用いてSN比、傾き量を求め、環境条件に基づいて求まる基本転写電流値と、環境条件、SN比、傾き量に基づいて求まる補正値とを乗算し、画像領域D2が一次転写位置を通過する際に供給する転写電流値Itrを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電された感光体を露光した後にトナーで現像することで形成されたトナー像を、中間転写体あるいは用紙等の被転写体に転写する画像形成装置が知られている。ここで、転写においては、被転写体を感光体と転写部材とで挟み、感光体と転写部材との間に転写バイアスを印加することで、感光体上のトナー像を被転写体に転移させる接触転写方式が広く用いられている。
【0003】
公報記載の従来技術として、トナー像の形成を行っていない非画像形成時に、感光体ドラムを帯電した状態で感光体と転写ロールとの間に定電流を供給し、このときに両者間に発生する電圧の大きさに応じて、画像形成時に供給する転写電流の大きさを決定する技術が存在する(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−241444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、転写不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、画像を保持する像保持体と、前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像が転写される被転写体と、前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置される接触部材と、前記接触部材に前記像保持体から前記被転写体に前記画像を転写するための転写電流を供給する転写電源と、前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、前記転写電源によって前記接触部材にそれぞれ電流値が異なるN(Nは3以上の整数)段階の電流が供給されたときにN段階の電流値のそれぞれに対応して前記電圧検出部で検出されたN個の検出電圧値を取得し、当該N段階の電流値と当該N個の検出電圧値とに基づいて、前記像保持体に保持された前記画像を前記被転写体に転写するための転写電流値を設定する設定部とを含む画像形成装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記像保持体を帯電する帯電部と、帯電された当該像保持体を露光して静電潜像を形成する露光部と、当該像保持体に形成された当該静電潜像をトナーで現像して画像とする現像部とをさらに備え、前記設定部は、前記帯電部によって帯電され且つ前記露光部による露光および前記現像部による現像が行われない前記像保持体上の非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間に前記N段階の電流値の供給および前記N個の検出電圧値の取得を行い、当該帯電部によって帯電され且つ当該露光部による露光および当該現像部による現像が行われる当該像保持体上の画像領域が当該接触部材との対向部に到達するまでに前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3記載の発明は、前記設定部は、前記像保持体上の前記非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間であって前記転写電源によって前記接触部材に電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出された基準検出電圧値をさらに取得し、前記N段階の電流値と前記N個の検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られたN個の電圧値とに基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置である。
請求項4記載の発明は、前記設定部は、前記N段階の電流値と前記N個の電圧値との線形性に基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置である。
請求項5記載の発明は、前記接触部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【0008】
請求項6記載の発明は、画像を保持する像保持体と、前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された画像が転写される被転写体と、前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像を当該被転写体に転写するための転写電流が供給される転写部材と、前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、前記転写部材に供給される電流値の変化と当該電流値の変化に応じて前記電圧検出部で検出される電圧値の変化との相関関係に基づいて、前記転写電流の大きさを決定する決定部とを含む画像形成装置である。
【0009】
請求項7記載の発明は、前記決定部は、前記転写部材に第1電流値が供給されたときに前記電圧検出部で検出される第1検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値とは大きさが異なる第2電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第2検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値および当該第2電流値とは大きさが異なる第3電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第3検出電圧値とを取得し、当該第1電流値、当該第2電流値、当該第3電流値、当該第1検出電圧値、当該第2検出電圧値および当該第3検出電圧値に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置である。
請求項8記載の発明は、前記決定部は、前記転写部材に転写電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出される基準検出電圧値をさらに取得し、前記第1電流値、前記第2電流値および前記第3電流値と、前記第1検出電圧値、前記第2検出電圧値および前記第3検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られた第1電圧値、第2電圧値および第3電圧値とに基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置である。
請求項9記載の発明は、前記決定部は、前記第1電流値、前記第2電流値、前記第3電流値、前記第1電圧値、前記第2電圧値および前記第3電圧値を用いて、電流−電圧特性における傾きと当該傾きに対するSN比とを計算し、得られた当該傾きおよび当該SN比に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置である。
請求項10記載の発明は、環境条件を検知する環境検知部をさらに含み、前記決定部は、前記環境検知部による検知結果に基づいて前記転写電流の基本転写電流値を決定し、前記環境検知部による検知結果、前記傾きおよび前記SN比に基づいて決められた補正値にて当該基本転写電流値を補正することで当該転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
請求項11記載の発明は、前記転写部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、本構成を有していない場合と比較して転写不良の発生を抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、実際の画像形成動作により近い条件で転写電流値を設定することが可能になる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流値の設定における像保持体の帯電電位の影響を低減することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、設定される転写電流値のずれをより小さくすることができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流を供給した際に接触部材に発生する電圧の時間依存性をより少なくすることができる。
請求項6記載の発明によれば、転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、本構成を有していない場合と比較して転写不良の発生を抑制することができる。
請求項7記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、より少ない電流−電圧特性の測定数で転写不良の発生を抑制することができる。
請求項8記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流の大きさの設定における被転写体の電位の影響を低減することができる。
請求項9記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、より簡易な手順で転写電流の大きさを決定することができる。
請求項10記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、決定される転写電流の大きさのずれをより小さくすることができる。
請求項11記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流を供給した際に転写部材に発生する電圧の時間依存性をより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の概略構成を示した図である。
【図2】実施の形態1の画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。
【図3】一次転写ロールに印加した入力電圧値とそのときに一次転写ロールに流れる出力電流値との関係を示す図である。
【図4】転写制御部の機能ブロック図である。
【図5】基準値記憶部、基本転写電流値記憶部、補正値記憶部のそれぞれに記憶されるデータの内容を説明するための図である。
【図6】一次転写電流値の設定プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図7】一次転写電流値の設定プロセスを説明するためのフローチャート(つづき)である。
【図8】実施の形態1の画像形成動作における一次転写電流値の設定および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】SN比および傾き量の計算手順を示すフローチャートである。
【図10】状態が異なる2つの一次転写ロールにおける一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を示す図である。
【図11】実施の形態2の画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。
【図12】実施の形態2の画像形成動作における一次転写電流値の設定および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置の概略構成を示している。この画像形成装置は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11、矢印B方向に回転し感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を順次一次転写して保持させる中間転写ベルト20を備えている。また、この画像形成装置は、中間転写ベルト20上に転写された重ねトナー像を用紙Pに一括して二次転写させる二次転写装置30、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置50をさらに備えている。
【0013】
感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11の回転方向Aに沿って、感光体ドラム11を帯電する帯電部の一例としての帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11に露光して静電潜像を書き込む露光部の一例としての露光装置13と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像部の一例としての現像器14Y、14M、14C、14Kを回転可能に取り付けた回転式現像装置14と、感光体ドラム11上に保持されたトナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写ロール15と、転写後の感光体ドラム11上の残留物を除去するドラムクリーナ16とが設けられている。なお、本実施の形態では、負極性に帯電するトナーが使用されている。
【0014】
また、被転写体の一例としての中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20を回転駆動する駆動ロール21、中間転写ベルト20の位置決めや平坦な一次転写面の形成に用いられるアイドルロール22、中間転写ベルト20の搬送方向に略直交する方向の蛇行を規制する補正ロール23、および後述する二次転写装置30を構成するバックアップロール24に掛け渡されている。中間転写ベルト20は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、塩化ビニル等の樹脂または各種ゴム等に導電剤としてカーボンブラックを適量含有させたものからなり、その体積抵抗率が106〜1015Ω・cmとなるように形成され、その厚みは例えば0.06〜0.1mmとなるように設定される。
【0015】
二次転写装置30は、中間転写ベルト20のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール31と、中間転写ベルト20の裏面側に配置されて二次転写ロール31の対向電極をなすバックアップロール24とを備えている。ここで、バックアップロール24は、その体積抵抗率が103〜1010Ω・cmの範囲内に設定されている。また、二次転写ロール31は、例えば、表面にカーボンを分散した発泡ウレタンゴム、ロール表面にフッ素コートを施したものを使用し、その体積抵抗率は103〜1010Ω・cmの範囲内に設定される。
【0016】
そして、中間転写ベルト20を挟んで駆動ロール21と対向する部位には、転写後の中間転写ベルト20上の残留物を除去するベルトクリーナ25が配設されている。なお、二次転写ロール31及びベルトクリーナ25は、中間転写ベルト20と接離自在に配設されており、複数色からなるトナー像が形成される場合には、最終色前のトナー像が二次転写ロール31、ベルトクリーナ25を通過するまで、これらは中間転写ベルト20から離間している。
【0017】
また、用紙搬送系は、用紙Pを収容する用紙トレイ40、この用紙トレイ40に集積された用紙Pを予め決められたタイミングで取り出して送り出すピックアップロール41、ピックアップロール41にて繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール42を備えている。また、搬送ロール42の下流側には、タイミングを合わせて二次転写装置30に用紙Pを送り込むレジストレーションロール(レジロール)43が配設されている。
【0018】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の画像形成動作について説明する。画像形成動作の開始が指示されると、まず、感光体ドラム11および中間転写ベルト20が回転を開始する。そして、帯電装置12により感光体ドラム11が負の電位に帯電され、次いで露光装置13により画像に対応した静電潜像が書き込まれ、対応する現像器14Y、14M、14C、14Kのいずれかによって、この静電潜像が負極性に帯電したトナーで反転現像される。例えば、この感光体ドラム11上に書き込まれた静電潜像がイエローに対応したものであれば、この静電潜像はイエロー現像器14Yで現像され、感光体ドラム11上にはイエローのトナー像が形成される。そして、感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、感光体ドラム11と中間転写ベルト20とが接する一次転写位置において、感光体ドラム11と一次転写ロール15との間に形成される一次転写電界の作用で、感光体ドラム11から中間転写ベルト20に一次転写される。一方、一次転写後に感光体ドラム11上に残留したトナーはドラムクリーナ16によって除去される。
【0019】
ここで、単色画像を形成する際には、中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像を直ちに用紙Pに二次転写するが、複数色のトナー像を重ね合わせたカラー画像を形成する場合には、感光体ドラム11上でのトナー像の形成並びに感光体ドラム11上に形成されたトナー像の一次転写の工程が色数分だけ繰り返される。例えば、4色のトナー像を重ね合わせたフルカラー画像を形成する場合、感光体ドラム11上には順次イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のトナー像が形成され、これら各色のトナー像は順次中間転写ベルト20に一次転写される。一方、中間転写ベルト20は、一次転写されたトナー像を保持したまま感光体ドラム11と同期して回転し、中間転写ベルト20上にはその一回転毎にマゼンタ、シアンおよび黒のトナー像が転写され、重ねられる。
【0020】
このようにして中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写位置へと搬送される。一方、用紙Pは、図示しないレジロール43にて予め決められたタイミングで二次転写位置へと供給され、中間転写ベルト20(バックアップロール24)に対して二次転写ロール31が用紙Pをニップする。すると、二次転写位置では、二次転写ロール31とバックアップロール24との間に形成される二次転写電界の作用で、中間転写ベルト20上のトナー像が用紙Pに二次転写される。その後、トナー像が転写された用紙Pは、定着装置50へと搬送されて用紙P上のトナー像が定着され、外部に排出される。一方、二次転写位置を通過した中間転写ベルト20上に残留したトナーはベルトクリーナ25によって除去される。
【0021】
次に、図1に示す画像形成装置における一次転写バイアスの設定手法について詳細に説明する。図2は、図1に示す画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。
像保持体の一例としての感光体ドラム11は、例えば円筒状のアルミニウムで構成される基材11aと、この基材11aの外周面に形成される有機系の感光層11bとを有している。また、帯電装置12は、感光体ドラム11に対して回転可能に圧接配置され、感光体ドラム11の回転に伴って従動回転する帯電ロール12aと、この帯電ロール12aに予め定められた大きさの帯電バイアス(本実施の形態では負極性)を印加する帯電電源12bとを備えている。
【0022】
接触部材あるいは転写部材の一例としての一次転写ロール15は、例えばステンレス製の導電性芯材の外周にゴム製の導電性発泡弾性体を被覆して構成されている。そして、一次転写ロール15では、この導電性発泡弾性体に、イオン伝導性を有する物質(例えばNBRゴム(ニトリルゴム))を混入させることで、抵抗調整を行っている。ここで、一次転写ロール15については、初期状態における体積抵抗率が105〜109Ω・cmの範囲内に設定され、硬度(アスカC硬度)が30°〜50°の範囲内にあるものを用いることが好ましい。なお、一次転写ロール15に対し、イオン伝導性を有する物質に加えて、電子伝導性を有する物質(例えばカーボンブラック)等を混入させて抵抗調整を行うようにしてもかまわない。
【0023】
一次転写ロール15には、出力電流値を調整可能な転写電源の一例としての電流源61が接続されており、その一方で感光体ドラム11の基材11aは接地されている。電流源61は、定電流制御を行うことにより一次転写ロール15に正極性の一次転写バイアス(一次転写電流)を供給する。そして、電流源61から一次転写ロール15、中間転写ベルト20および感光体ドラム11を通して一次転写電流が流れることにより、感光体ドラム11と中間転写ベルト20との間に転写電界を形成し、感光体ドラム11上のトナー像を中間転写ベルト20に転写する。また、電流源61と感光体ドラム11との間には、電流源61と感光体ドラム11との間に発生する電圧値を測定する電圧検出部の一例としての電圧計62が接続されている。そして、本実施の形態では、この電圧計62による電圧測定結果に基づいて、上述した画像形成動作において電流源61より供給する一次転写電流値を設定する転写制御部70が設けられている。
【0024】
本実施の形態のように中間転写ベルト20(中間転写体)を用いた画像形成装置では、中間転写ベルト20の環境条件による抵抗値の変動や面内での抵抗値のばらつきが少ないことにより、回転中の中間転写ベルト20の抵抗値の変動が抑制されやすくなっている。また、感光層11bの帯電電位が制御されているために、感光体ドラム11の抵抗値の変動も抑制されやすくなっている。さらに、イオン伝導性物質を混入させて構成した一次転写ロール15は、電子伝導性物質を混入させて構成した場合と比較して、周方向の抵抗値のばらつきや通電ドリフトと呼ばれる出力電圧の時間依存性が抑制されやすくなっており、また、ロット間の抵抗値の差も少ない。このように、本実施の形態では、感光体ドラム11、中間転写ベルト20および一次転写ロール15を含む一次転写部の抵抗値が安定しやすいことから、一次転写バイアスを定電流制御にて供給している。
【0025】
ただし、イオン伝導性物質を混入させて構成した一次転写ロール15は、電子伝導性物質を混入させて構成したものと比較して、環境条件の変動に対する抵抗値の変化量が大きく、また、経時的な抵抗値の変化量も大きい。ここで、前者はイオン伝導性物質の特性に起因するものであり、後者は経時的に一次転写ロール15からイオン伝導性物質が抜けていくことにより、一次転写ロール15が徐々に高抵抗化していくことに起因するものである。
【0026】
また、イオン伝導性物質を混入させた構成した一次転写ロール15では、使用時間の増加とともに抵抗値が増大していくだけではなく、一次転写ロール15に対する入力電流と出力電圧との関係が、使用時間の増加とともに一次関数的な関係すなわち線形性を有する状態から徐々にずれていき、非線形性を有する状態へと移行していく。
【0027】
ここで、図3は、一次転写ロール15に印加した入力電圧値とそのときに一次転写ロール15に流れる出力電流値との関係を示す図である。ここで、図3(a)は画像形成装置に取り付けられた新品の一次転写ロール15における入力電圧値と出力電流値との関係を示しており、図3(b)は画像形成装置において画像形成動作に100時間使用してから予め決められた時間だけ放置した後に再び取り付けられた一次転写ロール15における入力電圧値と出力電流値との関係を示している。なお、サンプルS1は画像形成動作を開始する前の測定結果を、サンプルS2は画像形成動作を1時間連続して行った後(一次転写ロール15に1時間連続して通電を行った後:以下も同様)の測定結果を、サンプル3は画像形成動作を2時間連続して行った後の測定結果を、サンプルS4は画像形成動作を3時間連続して行った後の測定結果を、サンプルS5は画像形成動作後に長期間放置した後の測定結果を、それぞれ示している。また、図3(a)、(b)に示すサンプルS1〜S5は、すべて同じ環境条件下で測定を行っている。
【0028】
図3(a)に示すように、新品の一次転写ロール15においては、サンプルS1〜S5のそれぞれにおいて入力電圧値と出力電流値とが一次関数的な挙動を示しており、しかも、サンプルS1〜S5のそれぞれの傾きも大きくは変わっていない。
これに対し、図3(b)に示すように、長期間使用した一次転写ロール15においては、画像形成動作を開始する前のサンプルS1では入力電圧値と出力電流値とが一次関数的な挙動を示すものの、画像形成動作を実行した後のサンプルS2〜S4では、それぞれ、入力電圧値が低い領域と入力電圧値が高い領域とで入力電圧値に対する出力電流値の傾きに変化が生じ、且つ、画像形成動作の実行時間が長くなるほど両者の傾きの違いが大きくなっていくことがわかる。具体的に説明すると、画像形成動作に伴う一次転写バイアスの供給時間すなわち一次転写ロール15への通電時間が長くなるほど、一次転写ロール15の抵抗値が上昇していき、且つ、入力電圧値と出力電流値との関係が、徐々に線形から非線形な状態へと移行していく。また、画像形成動作後にさらに長期間放置したサンプルS5においても、このような特性の改善はみられない。
【0029】
したがって、新品の一次転写ロール15と長期間使用した一次転写ロール15とに同じ大きさの一次転写電流値を供給したとしても、一次転写ロール15に発生する電圧値は異なる大きさとなってしまう。また、長期間使用した一次転写ロール15にあっては、同じ一次転写電流値を供給したとしても、それまでの通電時間に応じて、一次転写ロール15に発生する電圧値が異なる大きさになってしまう。その結果、一次転写ロール15に同じ大きさの一次転写電流値を供給しても、一次転写部において感光体ドラム11と中間転写ベルト20との間に発生する一次転写電界の大きさに違いが生じてしまうことになる。
【0030】
ここで、例えば一次転写ロール15の電流−電圧特性が線形性の関係を有しているものとして一次転写電流値の設定を行った場合を想定する。このとき、一次転写ロール15の実際の電流−電圧特性が非線形性の関係を有しており、一次転写ロール15の実際の抵抗値が想定していた抵抗値よりも高くなっていた場合には、一次転写部における転写電界が小さくなりすぎることに伴い、転写不足による転写不良が発生してしまう。一方、一次転写ロール15の実際の電流−電圧特性が非線形性の関係を有しており、一次転写ロール15の実際の抵抗値が想定していた抵抗値よりも低くなっていた場合には、一次転写部における転写電界が大きくなりすぎることに伴い、放電による転写不良が発生してしまう。
【0031】
そこで、本実施の形態では、画像形成動作の実行中に一次転写部における電流−電圧特性を測定するとともに、測定された電流−電圧特性から得られた傾き量すなわち一次転写部の抵抗値の平均値と、測定した電流−電圧特性の線形性からのずれ(非線形性)とに基づいて、一次転写部に供給する一次転写電流値の設定を行っている。
【0032】
図4は、上述した転写制御部70の機能ブロック図を示している。
転写制御部70は、電流源61より出力する一次転写電流値を設定する決定部の一例としての設定部71を備えている。この設定部71には、画像形成装置の内部に設けられた温度センサ81からの温度検出結果および湿度センサ82からの湿度検出結果が入力されるようになっている。なお、本実施の形態では、これら温度センサ81および湿度センサ82が、環境検知部の一例として機能している。さらに、設定部71には、ユーザからの指示の受け付けおよびユーザに対する情報の提示等を行うためのユーザインタフェース(UI)63が接続されている。
また、転写制御部70は、設定部71による一次転写電流値の設定において異常発生の判断に使用される基準値を記憶する基準値記憶部72と、設定部71による一次転写電流値の設定に使用される基本転写電流値を記憶する基本転写電流値記憶部73と、設定部71による一次転写電流値の設定において基本転写電流値の補正に用いられる補正値を記憶する補正値記憶部74とをさらに備えている。
【0033】
図5は、図4に示す基準値記憶部72、基本転写電流値記憶部73、補正値記憶部74のそれぞれに記憶されるデータの内容を説明するための図である。ここで、図5(a)は基準値記憶部72の記憶内容を、図5(b)は基本転写電流値記憶部73の記憶内容を、図5(c)は補正値記憶部74の記憶内容を、それぞれ示している。
【0034】
基準値記憶部72は、図5(a)に示すように、基準値として、画像形成装置に一次転写ロール15が取り付けられた後の最初の画像形成動作において取得される第1基準値η1と、画像形成動作が行われる毎に取得される第2基準値η2とを記憶している。なお、第1基準値η1については、次に一次転写ロール15が交換されるまでの間同じ値が記憶されることとなるが、第2基準値η2については、画像形成動作が行われるたび新たな値が記憶されることになる。ここで、第1基準値η1および第2基準値η2は、品質工学で用いられるSN比(出力における有効成分(シグナル:S)とノイズ成分(ノイズ:N)との比:N/S)に対応するものであり、本実施の形態においては一次転写電流値の設定プロセスにおいて使用されるパラメータの一つであるが、その詳細については後述する。
【0035】
また、基本転写電流値記憶部73は、図5(b)に示すように、温度と湿度との組み合わせによって決められた環境条件a、b、c、…と各環境条件に対応する基本転写電流値I0(より具体的には、環境条件aのときにI0=Ia、環境条件bのときにI0=Ib、環境条件cのときにI0=Ic、…)とを対応付けて記憶している。ここで、基本電流値I0は、一次転写電流値の設定プロセスにおいて使用されるパラメータの一つであるが、その詳細については後述する。
【0036】
さらに、補正値記憶部74は、図5(c)に示すように、上述した環境条件毎に、画像形成動作の実行に伴って取得されたSN比ηおよび傾き量Sの組み合わせに応じて決められた補正値Kを記憶している。より具体的に説明すると、補正値記憶部74は、上述した環境条件a、b、c、…、において、SN比ηの値ηa、ηb、ηc、…および傾き量Sの値Sa、Sb、Sc、…のそれぞれの組み合わせについて補正値K(例えば環境条件aにおいて、SN比がηaで傾き量SがSaの場合に補正値K=Kaa)をテーブル化して記憶している。ここでいう傾き量Sは、品質工学で用いられる感度に対応するものであり、SN比ηとともに一次転写電流値の設定プロセスにおいて使用されるパラメータの一つであるが、その詳細については後述する。
【0037】
次に、図6および図7に示すフローチャートを参照しながら、一次転写部における一次転写電流値Itrの設定プロセスについて説明する。なお、本実施の形態では、一次転写電流値Itrの設定が、画像形成動作の実行中において感光体ドラム11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に一次転写する前に毎回行われる。したがって、例えば黒のトナー像のみを中間転写ベルト20に一次転写するモノクロモードでは、用紙P1枚分の画像に対し1回だけ一次転写電流値Itrの設定動作が行われるが、例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のトナー像を順次一次転写するフルカラーモードでは、用紙1枚分の画像に対し、色毎に合計4回一次転写電流値Itrの設定動作が行われることになる。
【0038】
画像形成動作が開始されるのに伴い、回転する感光体ドラム11に対し帯電装置12による帯電動作が開始される(ステップ101)。また、画像形成動作の開始に伴い、転写制御部70の設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを0に設定させる(ステップ102)。
そして、帯電装置12による感光体ドラム11の帯電領域が、感光体ドラム11および中間転写ベルト20が接する一次転写位置を通過した状態で、設定部71は、電圧計62から基準検出電圧値Vtr0を取得する(ステップ103)。次に、設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを第1電流値I1(I1≠0)に設定させ(ステップ104)、第1電流値I1が供給された状態で、電圧計62から第1検出電圧値Vtr1を取得する(ステップ105)。続いて、設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを第1電流値I1とは異なる大きさの第2電流値I2(I2≠0、I2≠I1)に設定させ(ステップ106)、第2電流値I2が供給された状態で、電圧計62から第2検出電圧値Vtr2を取得する(ステップ107)。さらに、設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを第1電流値I1および第2電流値I2とは異なる大きさの第3電流値I3(I3≠0、I3≠I1、I3≠I2)に設定させ(ステップ108)、第3電流値I3が供給された状態で、電圧計62から第3検出電圧値Vtr3を取得する(ステップ109)。なお、ステップ102からステップ109は、帯電は行われているが露光および現像は行われないことで、トナー像が形成され得ない感光体ドラム11上の領域(非画像領域と呼ぶ:後述する図8参照)が一次転写位置を通過する間に行われる。また、このようにして得られる基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3には、それぞれ、感光体ドラム11の帯電電位の影響分が含まれている。
【0039】
次に、設定部71は、第1検出電圧値Vtr1から基準検出電圧値Vtr0を差し引いた第1電圧値V1と、第2検出電圧値Vtr2から基準検出電圧値Vtr0を差し引いた第2電圧値V2と、第3検出電圧値Vtr3から基準検出電圧値Vtr0を差し引いた第3電圧値V3とを求める(ステップ110)。ここで、第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3は、それぞれ、感光体ドラム11の帯電電位の影響が除去された値になる。そして、上述した第1電流値I1、第2電流値I2、第3電流値I3、第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3を用いて、SN比ηおよび傾き量Sを計算し取得する(ステップ111)。なお、SN比ηおよび傾き量Sの具体的な計算手法については後述する。
【0040】
次いで、設定部71は、ステップ111で取得した今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第1基準値η1との差が、予め決められた第1許容値Δη1より小さいか否かを判断する(ステップ112)。
ステップ112において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1より小さいと判断した場合、設定部71は、続いて、今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第2基準値η2との差が、予め決められた第2許容値Δη2より小さいか否かを判断する(ステップ113)。
ステップ113において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値Δη2よりも小さいと判断した場合、設定部71は、温度センサ81による温度検知結果および湿度センサ82による湿度検知結果を含む環境情報を取得する(ステップ114)。
【0041】
そして、設定部71は、ステップ114で取得した環境情報に基づき、基本転写電流値記憶部73より、この環境情報に対応付けられた値を取り出して基本転写電流値I0を決定する(ステップ115)。続いて、設定部71は、ステップ111で得た今回のSN比ηおよび傾き量Sと、ステップ114で取得した環境情報とに基づき、補正値記憶部74より、環境情報と今回のSN比ηおよび傾き量Sとに対応付けられた値を取り出して補正値Kを決定する(ステップ116)。その後、設定部71は、ステップ115で決定した基本転写電流値I0とステップ116で決定した補正値Kとを乗算することで、トナー像の一次転写に用いる一次転写電流値Itrの計算を行う(ステップ117)。続いて、設定部71は、ステップ117で求められた一次転写電流値Itrを電流源61に設定させ(ステップ118)、感光体ドラム11に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写動作を実行させる(ステップ119)。なお、ステップ119は、帯電、露光および現像によってトナー像が形成され得る感光体ドラム11上の領域(画像領域と呼ぶ:後述する図8参照)が一次転写位置を通過する間に行われる。
【0042】
そして、設定部71は、基準値記憶部72に記憶される第2基準値η2の値を、ステップ111で取得した今回のSN比ηに更新して記憶させる処理を行う(ステップ120)。なお、一次転写ロール15を交換した後に初めて行われる画像形成動作であった場合、設定部71は、基準値記憶部72に記憶される第1基準値η1の値を、ステップ111で取得した今回のSN比ηに更新して記憶させる処理も行う。その後、設定部71は、続いて一次転写を行うべき画像があるか否かすなわち次画像があるか否かを判断し(ステップ121)、次画像があると判断した場合にはステップ102に戻って処理を続ける。一方、ステップ121において次画像がないと判断した場合には一連の処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ112において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1以上であると判断した場合、設定部71は、画像形成装置の本体制御部(図示せず)に信号を出力して画像形成動作(より具体的には露光および現像によるトナー像の形成動作)を一時停止させ(ステップ122)、今回のSN比ηおよび傾き量Sの再取得を実行させる(ステップ123)。なお、今回のSN比ηおよび傾き量Sは、上述したステップ101〜ステップ111を行わせることで再取得される。
【0044】
次いで、設定部71は、ステップ123で再取得された今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第1基準値η1との差が、予め決められた第1許容値Δη1より小さいか否かを再び判断する(ステップ124)。そして、ステップ124において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1より小さいと判断した場合、設定部71は、本体制御部に画像形成動作を再開させるための信号を出力するとともに、ステップ113に戻って処理を続行する。
【0045】
他方、ステップ113において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値η2以上であると判断した場合、設定部71は、画像形成装置の本体制御部(図示せず)に信号を出力して画像形成動作(より具体的には露光および現像によるトナー像の形成動作)を一時停止させ(ステップ125)、今回のSN比ηおよび傾き量Sの再取得を実行させる(ステップ126)。なお、今回のSN比ηおよび傾き量Sは、上述したステップ101〜ステップ111を行わせることで再取得される。
【0046】
次いで、設定部71は、ステップ126で再取得された今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第2基準値η2との差が、予め決められた第2許容値Δη2より小さいか否かを再び判断する(ステップ127)。そして、ステップ127において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値Δη2より小さいと判断した場合、設定部71は、本体制御部に画像形成動作を再開させるための信号を出力するとともに、ステップ114に戻って処理を続行する。
【0047】
これに対し、上記ステップ124において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1以上であると再び判断した場合、および、上記ステップ127において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値η2以上であると再び判断した場合、設定部71は、UI63に信号を出力して、UI63に一次転写ロール15に異常が発生したことを表示させ(ステップ128)、一連の処理を終了する。
【0048】
図8は、本実施の形態の画像形成動作における一次転写電流値の設定および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。より具体的に説明すると、図8は、中間転写ベルト20上での非画像領域D1および画像領域D2と、帯電装置12による感光体ドラム11の帯電動作と、電流源61によって供給される一次転写電流値と、電圧計62によって測定される一次転写電圧の測定値との関係を示している。ここで、非画像領域D1は、帯電装置12によって帯電は行われるが露光装置13による露光および現像装置14による現像が行われない感光体ドラム11上の領域と一次転写位置で対向する中間転写ベルト20上の領域をいう。また、画像領域D2は、帯電装置12による帯電、露光装置13による露光および現像装置14による現像が行われることで、トナー像が形成され得る感光体ドラム11上の領域と一次転写位置で対向する中間転写ベルト20上の領域をいう。なお、図8は、用紙P4枚分のモノクロ画像を中間転写ベルト20に一次転写する場合を例示している。
【0049】
本実施の形態では、1枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、1枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr1と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0050】
また、1枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向下流側且つ2枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、再び基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、2枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr2と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0051】
さらに、2枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向下流側且つ3枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、再び基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、3枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr3と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0052】
さらにまた、3枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向下流側且つ4枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、再び基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、4枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr4と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0053】
なお、本実施の形態では、第1電流値I1〜第3電流値I3がN段階(この例ではN=3)の電流値に対応しており、第1検出電圧値Vtr1〜第3検出電圧値Vtr3がN個(この例ではN=3)の検出電圧値に対応している。また、本実施の形態では、第1電圧値V1〜第3電圧値V3がN個(この例ではN=3)の電圧値に対応している。
【0054】
上述した、各画像領域D2に対応するステップ102〜118の処理は、各画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側に隣接する非画像領域D1が一次転写位置を通過する非画像領域通過期間T1内で完了する。また、ステップ119の処理すなわち一次転写電流値Itr1、Itr2、Itr3、Itr4の供給は、それぞれに対応する画像領域D2が一次転写位置を通過する画像領域通過期間T2にわたって行われる。
【0055】
なお、図8においては、説明を簡略化するため、各非画像領域通過期間T1にて測定される基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3がそれぞれ同じ大きさであり、その結果、各画像領域通過期間T2において一次転写部に供給される一次転写電流値Itr1、Itr2、Itr3およびItr4が同じ大きさに設定される場合を例とした。ただし、実際には、基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3が非画像領域D1毎に異なっていたり、あるいは、経時的に変化したりすることにより、一次転写電流値Itr1、Itr2、Itr3およびItr4がそれぞれ異なる値に設定されることがある。これは、図3(b)に示したような一次転写ロール15の抵抗値の変動による影響に起因するものである。
【0056】
では続いて、画像領域D2が一次転写位置を通過する際に供給される一次転写電流値Itrを設定するために用いられる、図6のステップ111に示すSN比および傾き量Sの計算手順について説明を行う。
図9は、上述したステップ111におけるSN比ηおよび傾き量Sの計算手順を示すフローチャートである。なお、図9に示す処理は、転写制御部70に設けられた設定部71で実行される。また、図9では、計算手順を一般化するために、測定段階数をN(Nは3以上の整数)として示しているが、本実施の形態では、上述したように第1電流値I1〜第3電流値I3を用いて第1電圧値V1〜第3電圧値V3を得ていることから、N=3として計算が行われる。
【0057】
この処理では、まず、3つの出力値である第1電圧値V1、第2電圧値V2、…、第N電圧値VNのそれぞれを2乗して得られた値の総和である全2乗和STを求める(ステップ201)。また、各入力値である第1電流値I1、第2電流値I2、…、第N電流値INのそれぞれを2乗して得られた値の総和である有効除数rを求める(ステップ202)。
【0058】
次に、第1電圧値V1と第1電流値I1との積、第2電圧値V2と第2電流値I2との積、…、第N電圧値VNと第N電流値INとの積を総和して2乗した値を、ステップ202で得られた有効除数rおよび各測定条件における測定回数n(この例ではn=1)の乗算結果にて除することで、1次式の係数の変動Sβを求める(ステップ203)。続いて、ステップ201で得られた全2乗和STからステップ203で得られた1次式の係数の変動Sβを差し引くことで、誤差変動Seを求める(ステップ204)。そして、ステップ204で得られた誤差変動Seを、測定段階数Nから1を減じたN−1で除することで、誤差分散Veを得る(ステップ205)。
【0059】
引き続いて、ステップ203で得られた1次式の係数の変動Sβからステップ205で得られた誤差分散Veを差し引いて得られた値を、ステップ202で得られた有効除数rおよび各測定条件における測定回数n(この例ではn=1)の乗算結果にて除し、その除算結果をさらに誤差分散Veにて除した結果の常用対数をとることでSN比ηを得る(ステップ206)。また、ステップ203で得られた1次式の係数の変動Sβからステップ205で得られた誤差分散Veを差し引いて得られた値を、ステップ202で得られた有効除数rおよび各測定条件における測定回数n(この例ではn=1)の乗算結果にて除した結果の常用対数をとることで傾き量Sを得て(ステップ207)、処理を完了する。ここで、傾き量Sは、一次転写電流値を横軸に、一次転写電圧値を縦軸にそれぞれとった直交座標系において、原点(一次転写電流値Itr=0、一次転写電圧値V=0)を通る一次関数の傾き(V=S×Itr)に対応している。
【0060】
図10は、状態が異なる2つの一次転写ロール15における一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を示す図である。また図10は、各一次転写ロール15を用いた場合に得られるSN比ηと傾き量Sとの関係も示している。図10において、白抜きされた正方形「◇」は新品の一次転写ロール15を用いて画像形成動作を3時間連続して行った後の測定結果(図3(a)のサンプルS4参照)であり、黒く塗りつぶされた正方形「◆」は画像形成動作に使用した後に長時間放置された一次転写ロール15を用いて画像形成動作を3時間連続して行った後の測定結果(図3(b)のサンプルS4参照)である。なお、ここでは、第1電流値I1、第2電流値I2、第3電流値I3を、それぞれ、10μA、20μA、30μAとした。また、図10における縦軸は、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr1、第3検出電圧値Vtr3から、それぞれ基準検出電圧値Vtr0を差し引いて得られた第1電圧値V1、第2電圧値V2、第3電圧値V3に対応している。
【0061】
なお、この例では、新品の一次転写ロール15を用いた場合と長期使用品の一次転写ロール15を用いた場合とで、計算によって得られた傾き量Sが同じ値になったものと仮定する。このとき、新品の一次転写ロール15では、傾き量Sの直線上に各一次転写電流値における一次転写電圧値が近づいた状態でプロットされる。これに対し、長期使用品の一次転写ロール15では、新品の一次転写ロール15の場合と比較して、傾き量Sの直線から各一次転写電流値における一次転写電圧値が遠ざかった状態でプロットされる。例えば図10においては、一次転写電流値が少ない領域(Itr=Itr1=10μAの領域)では、傾き量Sの直線と比較して一次転写電流値に対して発生する一次転写電圧値が大きくなり(一次転写ロール15の抵抗値が大きくなったことを意味する)、一次転写電流値が多い領域(Itr=Itr3=30μA)では、傾き量Sの直線と比較して一次転写電流値に対して発生する一次転写電圧値が小さくなる(一次転写ロール15の抵抗値が小さくなったことを意味する)。すなわち、新品の一次転写ロール15を用いた場合に比べて、長期使用品の一次転写ロール15を用いた場合においては、一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を一次関数で表現した直線からのずれが大きくなることから、結果としてSN比ηが低下することになる。
このように、本実施の形態では、品質工学の手法を用いて、一次転写ロール15における一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を、抵抗値に対応する傾き量Sと抵抗値の電流依存性すなわち非線形性に対応するSN比ηとを用いて把握している。
【0062】
本実施の形態では、図6および図7を用いて説明したように、画像形成動作中の一次転写で用いる一次転写電流値Itrを、基本転写電流値I0と補正値Kとの積で求めている。ここで、基本転写電流値I0は、温度センサ81および湿度センサ82によって測定された環境条件に基づいて決められるものであり、例えば低温低湿度環境下の場合よりも高温高湿度環境下の場合の方がより大きな値をとる。これは、一次転写ロール15の抵抗値が、低温低湿度環境下よりも高温高湿度環境下において低下するためである。また、補正値Kは、環境条件毎に、上述したSN比ηと傾き量Sとの関係に基づいて決められるものである。これは、SN比ηが同じであっても傾き量Sが異なっている場合および傾き量Sが同じであってもSN比ηが異なっている場合において、それぞれ、一次転写ロール15の抵抗値が異なった値を取り、しかも、その度合いが環境条件によって変わるためである。
【0063】
また、本実施の形態では、図6および図7を用いて説明したように、画像形成装置に一次転写ロール15が取り付けられた後の最初の画像形成動作において取得されたSN比である第1基準値η1と今回の画像形成動作中に取得された今回のSN比ηとの差が第1許容値Δη1以上となった場合、および、前回の画像形成動作において取得されたSN比である第2基準値η2と今回の画像形成動作中に取得された今回のSN比ηとの差が第2許容値Δη2以上となった場合に、ユーザに警告を提示するようにした。今回取得されたSN比ηが第1基準値η1あるいは第2基準値η2から大きくずれているような場合には、SN比ηに大きな変動が生じたことすなわち一次転写ロール15に何らかの不具合が生じていることが予想され、その後の画像形成動作において転写不良等が生ずる懸念があるためである。そこで、一次転写電流値Itrの設定プロセスにおいてSN比ηに基づく判断を行うことで、画像形成動作実行中の一次転写ロール15の状態を監視している。
【0064】
<実施の形態2>
実施の形態1では、1つの感光体ドラム11に回転式現像装置14を用いてイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の画像を順次形成し、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト20上で重ね合わせる所謂4サイクル型の画像形成装置を例に説明を行った。これに対し、本実施の形態は、画像形成装置の基本構成は実施の形態1とほぼ同様であるものの、中間転写ベルト20に対し4つの感光体ドラム11を並べて配置した所謂タンデム型の画像形成装置に適用した場合について説明を行う。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
図11は、本実施の形態が適用される画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。なお、本実施の形態では、中間転写ベルト20の移動方向Bの上流側から順に、イエローの画像を形成するイエロー感光体ドラム11Y、マゼンタの画像を形成するマゼンタ感光体ドラム11M、シアンの画像を形成するシアン感光体ドラム11Cおよび黒の画像を形成する黒感光体ドラム11Kが並べて配置されている。なお、これらは、実施の形態1で説明した感光体ドラム11と同じ構成を有している。また、イエロー感光体ドラム11Y、マゼンタ感光体ドラム11M、シアン感光体ドラム11Cおよび黒感光体ドラム11Kには、それぞれ、中間転写ベルト20を挟んでイエロー一次転写ロール15Y、マゼンタ一次転写ロール15M、シアン一次転写ロール15Cおよび黒一次転写ロール15Kが対向し且つ接触して配置されている。ここで、各一次転写ロール15Y、15M、15Cおよび15Kは、実施の形態1と同様に、例えばステンレス製の導電性芯材の外周にNBRゴム等のイオン伝導性物質を含有するゴム製の導電性発泡弾性体を被覆して構成される。なお、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kには、実施の形態1と同様、それぞれに帯電装置、露光装置、現像装置、ドラムクリーナ等が設けられるが、図11には、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kに対応して設けられた帯電装置12Y、12C、12M、12Kを示している。
【0066】
また、イエロー一次転写ロール15Yにはイエロー電流源61Yが、マゼンタ一次転写ロール15Mにはマゼンタ電流源61Mが、シアン一次転写ロール15Cにはシアン電流源61Cが、黒一次転写ロール15Kには黒電流源61Kが、それぞれ接続されている。なお、これらは、それぞれの出力電流値を調整する機能を有している。さらに、イエロー電流源61Yとイエロー感光体ドラム11Yとの間にはイエロー電圧計62Yが、マゼンタ電流源61Mとマゼンタ感光体ドラム11Mとの間にはマゼンタ電圧計62Mが、シアン電流源61Cとシアン感光体ドラム11Cとの間にはシアン電圧計62Cが、黒電流源61Kと黒感光体ドラム11Kとの間には黒電圧計62Kが、それぞれ接続されている。なお、これらは、それぞれにおける一次転写電圧値を測定する機能を有している。そして、各色用の電流源61Y、61M、61C、61K、および、各色用の電圧計62Y、62M、62C、62Kは、転写制御部70に接続されている。
【0067】
図12は、本実施の形態の画像形成動作における一次転写電流値および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。より具体的に説明すると、図12は、中間転写ベルト20での非画像領域D1および画像領域D2と、各帯電装置12Y、12M、12C、12Kによる各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの帯電動作と、各電流源61Y、61M、61C、61Kによって供給される一次転写電流値と、各電圧計62Y、62M、62C、62Kによって測定される一次転写電圧値との関係を示している。なお、図12は、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像および黒画像を含む用紙P1枚分のフルカラー画像を中間転写ベルト20(図11参照)に一次転写する場合を例示している。
【0068】
ここで、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各色の一次転写部における動作自体は、実施の形態1で説明したものと同じである。すなわち、1枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、それぞれ、基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、1枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、それぞれこの画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する各一次転写電流値Itr(図中にはItr1(Y)、Itr1(M)、Itr1(C)、Itr1(K)と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜119参照)。
【0069】
ただし、本実施の形態では、1つの中間転写ベルト20に対し4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kを並べて対向配置し、中間転写ベルト20が一回転する間に中間転写ベルト20にイエロー、マゼンタ、シアン、黒の順にトナー像を順次一次転写して重ねる構成を採用している。このため、イエロー画像の一次転写においてはイエロー感光体ドラム11Yの帯電電位が影響する一方、マゼンタ画像の一次転写においてはマゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位に加えてイエロー感光体ドラム11Yの帯電電位がさらに影響を及ぼすことになる。また、シアン画像の一次転写においてはシアン感光体ドラム11Cの帯電電位に加えてイエロー感光体ドラム11Y、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位がさらに影響を及ぼすことになり、黒画像の一次転写においては黒感光体ドラム11Kの帯電電位に加えてイエロー感光体ドラム11Y、マゼンタ感光体ドラム11Mおよびシアン感光体ドラム11Cの帯電電位がさらに影響を及ぼすことになる。
【0070】
そこで、本実施の形態では、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの帯電領域が、中間転写ベルト20上の非画像領域D1を順次通過していくように各色の帯電バイアスを供給するように制御を行った。これに伴い、イエローの一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域上の非画像領域D1と対向した中間転写ベルト20がイエローの一次転写位置を通過している間に、イエローの基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3の測定が行われる。また、マゼンタの一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域且つマゼンタ感光体ドラム11Mの帯電領域と対向した中間転写ベルト20上の非画像領域D1がマゼンタの一次転写位置を通過している間に、マゼンタの基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3の測定が行われる。さらに、シアンの一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電領域且つシアン感光体ドラム11Cの帯電領域と対向した中間転写ベルト20上の非画像領域D1がシアンの一次転写位置を通過している間に、シアンの基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3の測定が行われる。そして、黒の一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電領域、シアン感光体ドラム11Cの帯電領域且つ黒感光体ドラム11Kの帯電領域と対向した中間転写ベルト20上の非画像領域D1が黒の一次転写位置を通過している間に、黒の基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtrの測定が行われる。
【0071】
このため、イエローの一次転写電流値Itr(Y)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、イエロー感光体ドラム11Yの帯電電位の影響はより少なくなる。また、マゼンタの一次転写電流値Itr(M)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位およびイエロー感光体ドラム11Yの帯電電位の影響はより少なくなる。さらに、シアンの一次転写電流値Itr(C)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、シアン感光体ドラム11Cの帯電電位、イエロー感光体ドラム11Yの帯電電位およびマゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位の影響はより少なくなる。さらにまた、黒の一次転写電流値Itr(K)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、黒感光体ドラム11Kの帯電電位、イエロー感光体ドラム11Yの帯電電位、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位およびシアン感光体ドラム11Cおよびの帯電電位の影響はより少なくなる。このため、各色の一次転写電流値を決定する際のずれが抑制されることになる。
【0072】
なお、本実施の形態では、中間転写ベルト20の移動方向Bの上流側から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の画像形成ユニットを配置するようにしていたが、配置順については変更してかまわない。
【0073】
また、実施の形態1、2では、品質工学の手法を用いて、一次転写部の抵抗値(傾き量S)および抵抗値の非線形性(SN比η)を決定するようにしていたが、上述した第1電流値I1、第2電流値I2、第3電流値I3、第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3の関係に基づいて、入力電流値と出力電圧値との関係を表すm次(mは2以上の整数)の近似式を作成し、得られた近似式に基づいて一次転写電流値Itrを決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
11…感光体ドラム、11a…基材、12…帯電装置、13…露光装置、14…回転式現像装置、15…一次転写ロール、20…中間転写ベルト、30…二次転写装置、61…電流源、62…電圧計、63…UI、70…転写制御部、71…設定部、72…基準値記憶部、73…基本転写電流値記憶部、74…補正値記憶部、81…温度センサ、82…湿度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電された感光体を露光した後にトナーで現像することで形成されたトナー像を、中間転写体あるいは用紙等の被転写体に転写する画像形成装置が知られている。ここで、転写においては、被転写体を感光体と転写部材とで挟み、感光体と転写部材との間に転写バイアスを印加することで、感光体上のトナー像を被転写体に転移させる接触転写方式が広く用いられている。
【0003】
公報記載の従来技術として、トナー像の形成を行っていない非画像形成時に、感光体ドラムを帯電した状態で感光体と転写ロールとの間に定電流を供給し、このときに両者間に発生する電圧の大きさに応じて、画像形成時に供給する転写電流の大きさを決定する技術が存在する(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−241444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、転写不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、画像を保持する像保持体と、前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像が転写される被転写体と、前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置される接触部材と、前記接触部材に前記像保持体から前記被転写体に前記画像を転写するための転写電流を供給する転写電源と、前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、前記転写電源によって前記接触部材にそれぞれ電流値が異なるN(Nは3以上の整数)段階の電流が供給されたときにN段階の電流値のそれぞれに対応して前記電圧検出部で検出されたN個の検出電圧値を取得し、当該N段階の電流値と当該N個の検出電圧値とに基づいて、前記像保持体に保持された前記画像を前記被転写体に転写するための転写電流値を設定する設定部とを含む画像形成装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記像保持体を帯電する帯電部と、帯電された当該像保持体を露光して静電潜像を形成する露光部と、当該像保持体に形成された当該静電潜像をトナーで現像して画像とする現像部とをさらに備え、前記設定部は、前記帯電部によって帯電され且つ前記露光部による露光および前記現像部による現像が行われない前記像保持体上の非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間に前記N段階の電流値の供給および前記N個の検出電圧値の取得を行い、当該帯電部によって帯電され且つ当該露光部による露光および当該現像部による現像が行われる当該像保持体上の画像領域が当該接触部材との対向部に到達するまでに前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3記載の発明は、前記設定部は、前記像保持体上の前記非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間であって前記転写電源によって前記接触部材に電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出された基準検出電圧値をさらに取得し、前記N段階の電流値と前記N個の検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られたN個の電圧値とに基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置である。
請求項4記載の発明は、前記設定部は、前記N段階の電流値と前記N個の電圧値との線形性に基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置である。
請求項5記載の発明は、前記接触部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【0008】
請求項6記載の発明は、画像を保持する像保持体と、前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された画像が転写される被転写体と、前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像を当該被転写体に転写するための転写電流が供給される転写部材と、前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、前記転写部材に供給される電流値の変化と当該電流値の変化に応じて前記電圧検出部で検出される電圧値の変化との相関関係に基づいて、前記転写電流の大きさを決定する決定部とを含む画像形成装置である。
【0009】
請求項7記載の発明は、前記決定部は、前記転写部材に第1電流値が供給されたときに前記電圧検出部で検出される第1検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値とは大きさが異なる第2電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第2検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値および当該第2電流値とは大きさが異なる第3電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第3検出電圧値とを取得し、当該第1電流値、当該第2電流値、当該第3電流値、当該第1検出電圧値、当該第2検出電圧値および当該第3検出電圧値に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置である。
請求項8記載の発明は、前記決定部は、前記転写部材に転写電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出される基準検出電圧値をさらに取得し、前記第1電流値、前記第2電流値および前記第3電流値と、前記第1検出電圧値、前記第2検出電圧値および前記第3検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られた第1電圧値、第2電圧値および第3電圧値とに基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置である。
請求項9記載の発明は、前記決定部は、前記第1電流値、前記第2電流値、前記第3電流値、前記第1電圧値、前記第2電圧値および前記第3電圧値を用いて、電流−電圧特性における傾きと当該傾きに対するSN比とを計算し、得られた当該傾きおよび当該SN比に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置である。
請求項10記載の発明は、環境条件を検知する環境検知部をさらに含み、前記決定部は、前記環境検知部による検知結果に基づいて前記転写電流の基本転写電流値を決定し、前記環境検知部による検知結果、前記傾きおよび前記SN比に基づいて決められた補正値にて当該基本転写電流値を補正することで当該転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
請求項11記載の発明は、前記転写部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、本構成を有していない場合と比較して転写不良の発生を抑制することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、実際の画像形成動作により近い条件で転写電流値を設定することが可能になる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流値の設定における像保持体の帯電電位の影響を低減することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、設定される転写電流値のずれをより小さくすることができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流を供給した際に接触部材に発生する電圧の時間依存性をより少なくすることができる。
請求項6記載の発明によれば、転写における電流−電圧特性が非線形な挙動を示す場合であっても、本構成を有していない場合と比較して転写不良の発生を抑制することができる。
請求項7記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、より少ない電流−電圧特性の測定数で転写不良の発生を抑制することができる。
請求項8記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流の大きさの設定における被転写体の電位の影響を低減することができる。
請求項9記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、より簡易な手順で転写電流の大きさを決定することができる。
請求項10記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、決定される転写電流の大きさのずれをより小さくすることができる。
請求項11記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、転写電流を供給した際に転写部材に発生する電圧の時間依存性をより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の概略構成を示した図である。
【図2】実施の形態1の画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。
【図3】一次転写ロールに印加した入力電圧値とそのときに一次転写ロールに流れる出力電流値との関係を示す図である。
【図4】転写制御部の機能ブロック図である。
【図5】基準値記憶部、基本転写電流値記憶部、補正値記憶部のそれぞれに記憶されるデータの内容を説明するための図である。
【図6】一次転写電流値の設定プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図7】一次転写電流値の設定プロセスを説明するためのフローチャート(つづき)である。
【図8】実施の形態1の画像形成動作における一次転写電流値の設定および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】SN比および傾き量の計算手順を示すフローチャートである。
【図10】状態が異なる2つの一次転写ロールにおける一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を示す図である。
【図11】実施の形態2の画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。
【図12】実施の形態2の画像形成動作における一次転写電流値の設定および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置の概略構成を示している。この画像形成装置は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11、矢印B方向に回転し感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を順次一次転写して保持させる中間転写ベルト20を備えている。また、この画像形成装置は、中間転写ベルト20上に転写された重ねトナー像を用紙Pに一括して二次転写させる二次転写装置30、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置50をさらに備えている。
【0013】
感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11の回転方向Aに沿って、感光体ドラム11を帯電する帯電部の一例としての帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11に露光して静電潜像を書き込む露光部の一例としての露光装置13と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像部の一例としての現像器14Y、14M、14C、14Kを回転可能に取り付けた回転式現像装置14と、感光体ドラム11上に保持されたトナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写ロール15と、転写後の感光体ドラム11上の残留物を除去するドラムクリーナ16とが設けられている。なお、本実施の形態では、負極性に帯電するトナーが使用されている。
【0014】
また、被転写体の一例としての中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20を回転駆動する駆動ロール21、中間転写ベルト20の位置決めや平坦な一次転写面の形成に用いられるアイドルロール22、中間転写ベルト20の搬送方向に略直交する方向の蛇行を規制する補正ロール23、および後述する二次転写装置30を構成するバックアップロール24に掛け渡されている。中間転写ベルト20は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、塩化ビニル等の樹脂または各種ゴム等に導電剤としてカーボンブラックを適量含有させたものからなり、その体積抵抗率が106〜1015Ω・cmとなるように形成され、その厚みは例えば0.06〜0.1mmとなるように設定される。
【0015】
二次転写装置30は、中間転写ベルト20のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール31と、中間転写ベルト20の裏面側に配置されて二次転写ロール31の対向電極をなすバックアップロール24とを備えている。ここで、バックアップロール24は、その体積抵抗率が103〜1010Ω・cmの範囲内に設定されている。また、二次転写ロール31は、例えば、表面にカーボンを分散した発泡ウレタンゴム、ロール表面にフッ素コートを施したものを使用し、その体積抵抗率は103〜1010Ω・cmの範囲内に設定される。
【0016】
そして、中間転写ベルト20を挟んで駆動ロール21と対向する部位には、転写後の中間転写ベルト20上の残留物を除去するベルトクリーナ25が配設されている。なお、二次転写ロール31及びベルトクリーナ25は、中間転写ベルト20と接離自在に配設されており、複数色からなるトナー像が形成される場合には、最終色前のトナー像が二次転写ロール31、ベルトクリーナ25を通過するまで、これらは中間転写ベルト20から離間している。
【0017】
また、用紙搬送系は、用紙Pを収容する用紙トレイ40、この用紙トレイ40に集積された用紙Pを予め決められたタイミングで取り出して送り出すピックアップロール41、ピックアップロール41にて繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール42を備えている。また、搬送ロール42の下流側には、タイミングを合わせて二次転写装置30に用紙Pを送り込むレジストレーションロール(レジロール)43が配設されている。
【0018】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の画像形成動作について説明する。画像形成動作の開始が指示されると、まず、感光体ドラム11および中間転写ベルト20が回転を開始する。そして、帯電装置12により感光体ドラム11が負の電位に帯電され、次いで露光装置13により画像に対応した静電潜像が書き込まれ、対応する現像器14Y、14M、14C、14Kのいずれかによって、この静電潜像が負極性に帯電したトナーで反転現像される。例えば、この感光体ドラム11上に書き込まれた静電潜像がイエローに対応したものであれば、この静電潜像はイエロー現像器14Yで現像され、感光体ドラム11上にはイエローのトナー像が形成される。そして、感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、感光体ドラム11と中間転写ベルト20とが接する一次転写位置において、感光体ドラム11と一次転写ロール15との間に形成される一次転写電界の作用で、感光体ドラム11から中間転写ベルト20に一次転写される。一方、一次転写後に感光体ドラム11上に残留したトナーはドラムクリーナ16によって除去される。
【0019】
ここで、単色画像を形成する際には、中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像を直ちに用紙Pに二次転写するが、複数色のトナー像を重ね合わせたカラー画像を形成する場合には、感光体ドラム11上でのトナー像の形成並びに感光体ドラム11上に形成されたトナー像の一次転写の工程が色数分だけ繰り返される。例えば、4色のトナー像を重ね合わせたフルカラー画像を形成する場合、感光体ドラム11上には順次イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のトナー像が形成され、これら各色のトナー像は順次中間転写ベルト20に一次転写される。一方、中間転写ベルト20は、一次転写されたトナー像を保持したまま感光体ドラム11と同期して回転し、中間転写ベルト20上にはその一回転毎にマゼンタ、シアンおよび黒のトナー像が転写され、重ねられる。
【0020】
このようにして中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写位置へと搬送される。一方、用紙Pは、図示しないレジロール43にて予め決められたタイミングで二次転写位置へと供給され、中間転写ベルト20(バックアップロール24)に対して二次転写ロール31が用紙Pをニップする。すると、二次転写位置では、二次転写ロール31とバックアップロール24との間に形成される二次転写電界の作用で、中間転写ベルト20上のトナー像が用紙Pに二次転写される。その後、トナー像が転写された用紙Pは、定着装置50へと搬送されて用紙P上のトナー像が定着され、外部に排出される。一方、二次転写位置を通過した中間転写ベルト20上に残留したトナーはベルトクリーナ25によって除去される。
【0021】
次に、図1に示す画像形成装置における一次転写バイアスの設定手法について詳細に説明する。図2は、図1に示す画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。
像保持体の一例としての感光体ドラム11は、例えば円筒状のアルミニウムで構成される基材11aと、この基材11aの外周面に形成される有機系の感光層11bとを有している。また、帯電装置12は、感光体ドラム11に対して回転可能に圧接配置され、感光体ドラム11の回転に伴って従動回転する帯電ロール12aと、この帯電ロール12aに予め定められた大きさの帯電バイアス(本実施の形態では負極性)を印加する帯電電源12bとを備えている。
【0022】
接触部材あるいは転写部材の一例としての一次転写ロール15は、例えばステンレス製の導電性芯材の外周にゴム製の導電性発泡弾性体を被覆して構成されている。そして、一次転写ロール15では、この導電性発泡弾性体に、イオン伝導性を有する物質(例えばNBRゴム(ニトリルゴム))を混入させることで、抵抗調整を行っている。ここで、一次転写ロール15については、初期状態における体積抵抗率が105〜109Ω・cmの範囲内に設定され、硬度(アスカC硬度)が30°〜50°の範囲内にあるものを用いることが好ましい。なお、一次転写ロール15に対し、イオン伝導性を有する物質に加えて、電子伝導性を有する物質(例えばカーボンブラック)等を混入させて抵抗調整を行うようにしてもかまわない。
【0023】
一次転写ロール15には、出力電流値を調整可能な転写電源の一例としての電流源61が接続されており、その一方で感光体ドラム11の基材11aは接地されている。電流源61は、定電流制御を行うことにより一次転写ロール15に正極性の一次転写バイアス(一次転写電流)を供給する。そして、電流源61から一次転写ロール15、中間転写ベルト20および感光体ドラム11を通して一次転写電流が流れることにより、感光体ドラム11と中間転写ベルト20との間に転写電界を形成し、感光体ドラム11上のトナー像を中間転写ベルト20に転写する。また、電流源61と感光体ドラム11との間には、電流源61と感光体ドラム11との間に発生する電圧値を測定する電圧検出部の一例としての電圧計62が接続されている。そして、本実施の形態では、この電圧計62による電圧測定結果に基づいて、上述した画像形成動作において電流源61より供給する一次転写電流値を設定する転写制御部70が設けられている。
【0024】
本実施の形態のように中間転写ベルト20(中間転写体)を用いた画像形成装置では、中間転写ベルト20の環境条件による抵抗値の変動や面内での抵抗値のばらつきが少ないことにより、回転中の中間転写ベルト20の抵抗値の変動が抑制されやすくなっている。また、感光層11bの帯電電位が制御されているために、感光体ドラム11の抵抗値の変動も抑制されやすくなっている。さらに、イオン伝導性物質を混入させて構成した一次転写ロール15は、電子伝導性物質を混入させて構成した場合と比較して、周方向の抵抗値のばらつきや通電ドリフトと呼ばれる出力電圧の時間依存性が抑制されやすくなっており、また、ロット間の抵抗値の差も少ない。このように、本実施の形態では、感光体ドラム11、中間転写ベルト20および一次転写ロール15を含む一次転写部の抵抗値が安定しやすいことから、一次転写バイアスを定電流制御にて供給している。
【0025】
ただし、イオン伝導性物質を混入させて構成した一次転写ロール15は、電子伝導性物質を混入させて構成したものと比較して、環境条件の変動に対する抵抗値の変化量が大きく、また、経時的な抵抗値の変化量も大きい。ここで、前者はイオン伝導性物質の特性に起因するものであり、後者は経時的に一次転写ロール15からイオン伝導性物質が抜けていくことにより、一次転写ロール15が徐々に高抵抗化していくことに起因するものである。
【0026】
また、イオン伝導性物質を混入させた構成した一次転写ロール15では、使用時間の増加とともに抵抗値が増大していくだけではなく、一次転写ロール15に対する入力電流と出力電圧との関係が、使用時間の増加とともに一次関数的な関係すなわち線形性を有する状態から徐々にずれていき、非線形性を有する状態へと移行していく。
【0027】
ここで、図3は、一次転写ロール15に印加した入力電圧値とそのときに一次転写ロール15に流れる出力電流値との関係を示す図である。ここで、図3(a)は画像形成装置に取り付けられた新品の一次転写ロール15における入力電圧値と出力電流値との関係を示しており、図3(b)は画像形成装置において画像形成動作に100時間使用してから予め決められた時間だけ放置した後に再び取り付けられた一次転写ロール15における入力電圧値と出力電流値との関係を示している。なお、サンプルS1は画像形成動作を開始する前の測定結果を、サンプルS2は画像形成動作を1時間連続して行った後(一次転写ロール15に1時間連続して通電を行った後:以下も同様)の測定結果を、サンプル3は画像形成動作を2時間連続して行った後の測定結果を、サンプルS4は画像形成動作を3時間連続して行った後の測定結果を、サンプルS5は画像形成動作後に長期間放置した後の測定結果を、それぞれ示している。また、図3(a)、(b)に示すサンプルS1〜S5は、すべて同じ環境条件下で測定を行っている。
【0028】
図3(a)に示すように、新品の一次転写ロール15においては、サンプルS1〜S5のそれぞれにおいて入力電圧値と出力電流値とが一次関数的な挙動を示しており、しかも、サンプルS1〜S5のそれぞれの傾きも大きくは変わっていない。
これに対し、図3(b)に示すように、長期間使用した一次転写ロール15においては、画像形成動作を開始する前のサンプルS1では入力電圧値と出力電流値とが一次関数的な挙動を示すものの、画像形成動作を実行した後のサンプルS2〜S4では、それぞれ、入力電圧値が低い領域と入力電圧値が高い領域とで入力電圧値に対する出力電流値の傾きに変化が生じ、且つ、画像形成動作の実行時間が長くなるほど両者の傾きの違いが大きくなっていくことがわかる。具体的に説明すると、画像形成動作に伴う一次転写バイアスの供給時間すなわち一次転写ロール15への通電時間が長くなるほど、一次転写ロール15の抵抗値が上昇していき、且つ、入力電圧値と出力電流値との関係が、徐々に線形から非線形な状態へと移行していく。また、画像形成動作後にさらに長期間放置したサンプルS5においても、このような特性の改善はみられない。
【0029】
したがって、新品の一次転写ロール15と長期間使用した一次転写ロール15とに同じ大きさの一次転写電流値を供給したとしても、一次転写ロール15に発生する電圧値は異なる大きさとなってしまう。また、長期間使用した一次転写ロール15にあっては、同じ一次転写電流値を供給したとしても、それまでの通電時間に応じて、一次転写ロール15に発生する電圧値が異なる大きさになってしまう。その結果、一次転写ロール15に同じ大きさの一次転写電流値を供給しても、一次転写部において感光体ドラム11と中間転写ベルト20との間に発生する一次転写電界の大きさに違いが生じてしまうことになる。
【0030】
ここで、例えば一次転写ロール15の電流−電圧特性が線形性の関係を有しているものとして一次転写電流値の設定を行った場合を想定する。このとき、一次転写ロール15の実際の電流−電圧特性が非線形性の関係を有しており、一次転写ロール15の実際の抵抗値が想定していた抵抗値よりも高くなっていた場合には、一次転写部における転写電界が小さくなりすぎることに伴い、転写不足による転写不良が発生してしまう。一方、一次転写ロール15の実際の電流−電圧特性が非線形性の関係を有しており、一次転写ロール15の実際の抵抗値が想定していた抵抗値よりも低くなっていた場合には、一次転写部における転写電界が大きくなりすぎることに伴い、放電による転写不良が発生してしまう。
【0031】
そこで、本実施の形態では、画像形成動作の実行中に一次転写部における電流−電圧特性を測定するとともに、測定された電流−電圧特性から得られた傾き量すなわち一次転写部の抵抗値の平均値と、測定した電流−電圧特性の線形性からのずれ(非線形性)とに基づいて、一次転写部に供給する一次転写電流値の設定を行っている。
【0032】
図4は、上述した転写制御部70の機能ブロック図を示している。
転写制御部70は、電流源61より出力する一次転写電流値を設定する決定部の一例としての設定部71を備えている。この設定部71には、画像形成装置の内部に設けられた温度センサ81からの温度検出結果および湿度センサ82からの湿度検出結果が入力されるようになっている。なお、本実施の形態では、これら温度センサ81および湿度センサ82が、環境検知部の一例として機能している。さらに、設定部71には、ユーザからの指示の受け付けおよびユーザに対する情報の提示等を行うためのユーザインタフェース(UI)63が接続されている。
また、転写制御部70は、設定部71による一次転写電流値の設定において異常発生の判断に使用される基準値を記憶する基準値記憶部72と、設定部71による一次転写電流値の設定に使用される基本転写電流値を記憶する基本転写電流値記憶部73と、設定部71による一次転写電流値の設定において基本転写電流値の補正に用いられる補正値を記憶する補正値記憶部74とをさらに備えている。
【0033】
図5は、図4に示す基準値記憶部72、基本転写電流値記憶部73、補正値記憶部74のそれぞれに記憶されるデータの内容を説明するための図である。ここで、図5(a)は基準値記憶部72の記憶内容を、図5(b)は基本転写電流値記憶部73の記憶内容を、図5(c)は補正値記憶部74の記憶内容を、それぞれ示している。
【0034】
基準値記憶部72は、図5(a)に示すように、基準値として、画像形成装置に一次転写ロール15が取り付けられた後の最初の画像形成動作において取得される第1基準値η1と、画像形成動作が行われる毎に取得される第2基準値η2とを記憶している。なお、第1基準値η1については、次に一次転写ロール15が交換されるまでの間同じ値が記憶されることとなるが、第2基準値η2については、画像形成動作が行われるたび新たな値が記憶されることになる。ここで、第1基準値η1および第2基準値η2は、品質工学で用いられるSN比(出力における有効成分(シグナル:S)とノイズ成分(ノイズ:N)との比:N/S)に対応するものであり、本実施の形態においては一次転写電流値の設定プロセスにおいて使用されるパラメータの一つであるが、その詳細については後述する。
【0035】
また、基本転写電流値記憶部73は、図5(b)に示すように、温度と湿度との組み合わせによって決められた環境条件a、b、c、…と各環境条件に対応する基本転写電流値I0(より具体的には、環境条件aのときにI0=Ia、環境条件bのときにI0=Ib、環境条件cのときにI0=Ic、…)とを対応付けて記憶している。ここで、基本電流値I0は、一次転写電流値の設定プロセスにおいて使用されるパラメータの一つであるが、その詳細については後述する。
【0036】
さらに、補正値記憶部74は、図5(c)に示すように、上述した環境条件毎に、画像形成動作の実行に伴って取得されたSN比ηおよび傾き量Sの組み合わせに応じて決められた補正値Kを記憶している。より具体的に説明すると、補正値記憶部74は、上述した環境条件a、b、c、…、において、SN比ηの値ηa、ηb、ηc、…および傾き量Sの値Sa、Sb、Sc、…のそれぞれの組み合わせについて補正値K(例えば環境条件aにおいて、SN比がηaで傾き量SがSaの場合に補正値K=Kaa)をテーブル化して記憶している。ここでいう傾き量Sは、品質工学で用いられる感度に対応するものであり、SN比ηとともに一次転写電流値の設定プロセスにおいて使用されるパラメータの一つであるが、その詳細については後述する。
【0037】
次に、図6および図7に示すフローチャートを参照しながら、一次転写部における一次転写電流値Itrの設定プロセスについて説明する。なお、本実施の形態では、一次転写電流値Itrの設定が、画像形成動作の実行中において感光体ドラム11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に一次転写する前に毎回行われる。したがって、例えば黒のトナー像のみを中間転写ベルト20に一次転写するモノクロモードでは、用紙P1枚分の画像に対し1回だけ一次転写電流値Itrの設定動作が行われるが、例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のトナー像を順次一次転写するフルカラーモードでは、用紙1枚分の画像に対し、色毎に合計4回一次転写電流値Itrの設定動作が行われることになる。
【0038】
画像形成動作が開始されるのに伴い、回転する感光体ドラム11に対し帯電装置12による帯電動作が開始される(ステップ101)。また、画像形成動作の開始に伴い、転写制御部70の設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを0に設定させる(ステップ102)。
そして、帯電装置12による感光体ドラム11の帯電領域が、感光体ドラム11および中間転写ベルト20が接する一次転写位置を通過した状態で、設定部71は、電圧計62から基準検出電圧値Vtr0を取得する(ステップ103)。次に、設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを第1電流値I1(I1≠0)に設定させ(ステップ104)、第1電流値I1が供給された状態で、電圧計62から第1検出電圧値Vtr1を取得する(ステップ105)。続いて、設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを第1電流値I1とは異なる大きさの第2電流値I2(I2≠0、I2≠I1)に設定させ(ステップ106)、第2電流値I2が供給された状態で、電圧計62から第2検出電圧値Vtr2を取得する(ステップ107)。さらに、設定部71は、電流源61より供給する一次転写電流値Itrを第1電流値I1および第2電流値I2とは異なる大きさの第3電流値I3(I3≠0、I3≠I1、I3≠I2)に設定させ(ステップ108)、第3電流値I3が供給された状態で、電圧計62から第3検出電圧値Vtr3を取得する(ステップ109)。なお、ステップ102からステップ109は、帯電は行われているが露光および現像は行われないことで、トナー像が形成され得ない感光体ドラム11上の領域(非画像領域と呼ぶ:後述する図8参照)が一次転写位置を通過する間に行われる。また、このようにして得られる基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3には、それぞれ、感光体ドラム11の帯電電位の影響分が含まれている。
【0039】
次に、設定部71は、第1検出電圧値Vtr1から基準検出電圧値Vtr0を差し引いた第1電圧値V1と、第2検出電圧値Vtr2から基準検出電圧値Vtr0を差し引いた第2電圧値V2と、第3検出電圧値Vtr3から基準検出電圧値Vtr0を差し引いた第3電圧値V3とを求める(ステップ110)。ここで、第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3は、それぞれ、感光体ドラム11の帯電電位の影響が除去された値になる。そして、上述した第1電流値I1、第2電流値I2、第3電流値I3、第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3を用いて、SN比ηおよび傾き量Sを計算し取得する(ステップ111)。なお、SN比ηおよび傾き量Sの具体的な計算手法については後述する。
【0040】
次いで、設定部71は、ステップ111で取得した今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第1基準値η1との差が、予め決められた第1許容値Δη1より小さいか否かを判断する(ステップ112)。
ステップ112において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1より小さいと判断した場合、設定部71は、続いて、今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第2基準値η2との差が、予め決められた第2許容値Δη2より小さいか否かを判断する(ステップ113)。
ステップ113において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値Δη2よりも小さいと判断した場合、設定部71は、温度センサ81による温度検知結果および湿度センサ82による湿度検知結果を含む環境情報を取得する(ステップ114)。
【0041】
そして、設定部71は、ステップ114で取得した環境情報に基づき、基本転写電流値記憶部73より、この環境情報に対応付けられた値を取り出して基本転写電流値I0を決定する(ステップ115)。続いて、設定部71は、ステップ111で得た今回のSN比ηおよび傾き量Sと、ステップ114で取得した環境情報とに基づき、補正値記憶部74より、環境情報と今回のSN比ηおよび傾き量Sとに対応付けられた値を取り出して補正値Kを決定する(ステップ116)。その後、設定部71は、ステップ115で決定した基本転写電流値I0とステップ116で決定した補正値Kとを乗算することで、トナー像の一次転写に用いる一次転写電流値Itrの計算を行う(ステップ117)。続いて、設定部71は、ステップ117で求められた一次転写電流値Itrを電流源61に設定させ(ステップ118)、感光体ドラム11に形成されたトナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写動作を実行させる(ステップ119)。なお、ステップ119は、帯電、露光および現像によってトナー像が形成され得る感光体ドラム11上の領域(画像領域と呼ぶ:後述する図8参照)が一次転写位置を通過する間に行われる。
【0042】
そして、設定部71は、基準値記憶部72に記憶される第2基準値η2の値を、ステップ111で取得した今回のSN比ηに更新して記憶させる処理を行う(ステップ120)。なお、一次転写ロール15を交換した後に初めて行われる画像形成動作であった場合、設定部71は、基準値記憶部72に記憶される第1基準値η1の値を、ステップ111で取得した今回のSN比ηに更新して記憶させる処理も行う。その後、設定部71は、続いて一次転写を行うべき画像があるか否かすなわち次画像があるか否かを判断し(ステップ121)、次画像があると判断した場合にはステップ102に戻って処理を続ける。一方、ステップ121において次画像がないと判断した場合には一連の処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ112において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1以上であると判断した場合、設定部71は、画像形成装置の本体制御部(図示せず)に信号を出力して画像形成動作(より具体的には露光および現像によるトナー像の形成動作)を一時停止させ(ステップ122)、今回のSN比ηおよび傾き量Sの再取得を実行させる(ステップ123)。なお、今回のSN比ηおよび傾き量Sは、上述したステップ101〜ステップ111を行わせることで再取得される。
【0044】
次いで、設定部71は、ステップ123で再取得された今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第1基準値η1との差が、予め決められた第1許容値Δη1より小さいか否かを再び判断する(ステップ124)。そして、ステップ124において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1より小さいと判断した場合、設定部71は、本体制御部に画像形成動作を再開させるための信号を出力するとともに、ステップ113に戻って処理を続行する。
【0045】
他方、ステップ113において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値η2以上であると判断した場合、設定部71は、画像形成装置の本体制御部(図示せず)に信号を出力して画像形成動作(より具体的には露光および現像によるトナー像の形成動作)を一時停止させ(ステップ125)、今回のSN比ηおよび傾き量Sの再取得を実行させる(ステップ126)。なお、今回のSN比ηおよび傾き量Sは、上述したステップ101〜ステップ111を行わせることで再取得される。
【0046】
次いで、設定部71は、ステップ126で再取得された今回のSN比ηと基準値記憶部72から読み出した第2基準値η2との差が、予め決められた第2許容値Δη2より小さいか否かを再び判断する(ステップ127)。そして、ステップ127において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値Δη2より小さいと判断した場合、設定部71は、本体制御部に画像形成動作を再開させるための信号を出力するとともに、ステップ114に戻って処理を続行する。
【0047】
これに対し、上記ステップ124において今回のSN比ηと第1基準値η1との差が第1許容値Δη1以上であると再び判断した場合、および、上記ステップ127において今回のSN比ηと第2基準値η2との差が第2許容値η2以上であると再び判断した場合、設定部71は、UI63に信号を出力して、UI63に一次転写ロール15に異常が発生したことを表示させ(ステップ128)、一連の処理を終了する。
【0048】
図8は、本実施の形態の画像形成動作における一次転写電流値の設定および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。より具体的に説明すると、図8は、中間転写ベルト20上での非画像領域D1および画像領域D2と、帯電装置12による感光体ドラム11の帯電動作と、電流源61によって供給される一次転写電流値と、電圧計62によって測定される一次転写電圧の測定値との関係を示している。ここで、非画像領域D1は、帯電装置12によって帯電は行われるが露光装置13による露光および現像装置14による現像が行われない感光体ドラム11上の領域と一次転写位置で対向する中間転写ベルト20上の領域をいう。また、画像領域D2は、帯電装置12による帯電、露光装置13による露光および現像装置14による現像が行われることで、トナー像が形成され得る感光体ドラム11上の領域と一次転写位置で対向する中間転写ベルト20上の領域をいう。なお、図8は、用紙P4枚分のモノクロ画像を中間転写ベルト20に一次転写する場合を例示している。
【0049】
本実施の形態では、1枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、1枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr1と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0050】
また、1枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向下流側且つ2枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、再び基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、2枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr2と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0051】
さらに、2枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向下流側且つ3枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、再び基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、3枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr3と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0052】
さらにまた、3枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向下流側且つ4枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、再び基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、4枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、この画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する一次転写電流値Itr(図中ではItr4と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜118参照)。
【0053】
なお、本実施の形態では、第1電流値I1〜第3電流値I3がN段階(この例ではN=3)の電流値に対応しており、第1検出電圧値Vtr1〜第3検出電圧値Vtr3がN個(この例ではN=3)の検出電圧値に対応している。また、本実施の形態では、第1電圧値V1〜第3電圧値V3がN個(この例ではN=3)の電圧値に対応している。
【0054】
上述した、各画像領域D2に対応するステップ102〜118の処理は、各画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側に隣接する非画像領域D1が一次転写位置を通過する非画像領域通過期間T1内で完了する。また、ステップ119の処理すなわち一次転写電流値Itr1、Itr2、Itr3、Itr4の供給は、それぞれに対応する画像領域D2が一次転写位置を通過する画像領域通過期間T2にわたって行われる。
【0055】
なお、図8においては、説明を簡略化するため、各非画像領域通過期間T1にて測定される基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3がそれぞれ同じ大きさであり、その結果、各画像領域通過期間T2において一次転写部に供給される一次転写電流値Itr1、Itr2、Itr3およびItr4が同じ大きさに設定される場合を例とした。ただし、実際には、基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3が非画像領域D1毎に異なっていたり、あるいは、経時的に変化したりすることにより、一次転写電流値Itr1、Itr2、Itr3およびItr4がそれぞれ異なる値に設定されることがある。これは、図3(b)に示したような一次転写ロール15の抵抗値の変動による影響に起因するものである。
【0056】
では続いて、画像領域D2が一次転写位置を通過する際に供給される一次転写電流値Itrを設定するために用いられる、図6のステップ111に示すSN比および傾き量Sの計算手順について説明を行う。
図9は、上述したステップ111におけるSN比ηおよび傾き量Sの計算手順を示すフローチャートである。なお、図9に示す処理は、転写制御部70に設けられた設定部71で実行される。また、図9では、計算手順を一般化するために、測定段階数をN(Nは3以上の整数)として示しているが、本実施の形態では、上述したように第1電流値I1〜第3電流値I3を用いて第1電圧値V1〜第3電圧値V3を得ていることから、N=3として計算が行われる。
【0057】
この処理では、まず、3つの出力値である第1電圧値V1、第2電圧値V2、…、第N電圧値VNのそれぞれを2乗して得られた値の総和である全2乗和STを求める(ステップ201)。また、各入力値である第1電流値I1、第2電流値I2、…、第N電流値INのそれぞれを2乗して得られた値の総和である有効除数rを求める(ステップ202)。
【0058】
次に、第1電圧値V1と第1電流値I1との積、第2電圧値V2と第2電流値I2との積、…、第N電圧値VNと第N電流値INとの積を総和して2乗した値を、ステップ202で得られた有効除数rおよび各測定条件における測定回数n(この例ではn=1)の乗算結果にて除することで、1次式の係数の変動Sβを求める(ステップ203)。続いて、ステップ201で得られた全2乗和STからステップ203で得られた1次式の係数の変動Sβを差し引くことで、誤差変動Seを求める(ステップ204)。そして、ステップ204で得られた誤差変動Seを、測定段階数Nから1を減じたN−1で除することで、誤差分散Veを得る(ステップ205)。
【0059】
引き続いて、ステップ203で得られた1次式の係数の変動Sβからステップ205で得られた誤差分散Veを差し引いて得られた値を、ステップ202で得られた有効除数rおよび各測定条件における測定回数n(この例ではn=1)の乗算結果にて除し、その除算結果をさらに誤差分散Veにて除した結果の常用対数をとることでSN比ηを得る(ステップ206)。また、ステップ203で得られた1次式の係数の変動Sβからステップ205で得られた誤差分散Veを差し引いて得られた値を、ステップ202で得られた有効除数rおよび各測定条件における測定回数n(この例ではn=1)の乗算結果にて除した結果の常用対数をとることで傾き量Sを得て(ステップ207)、処理を完了する。ここで、傾き量Sは、一次転写電流値を横軸に、一次転写電圧値を縦軸にそれぞれとった直交座標系において、原点(一次転写電流値Itr=0、一次転写電圧値V=0)を通る一次関数の傾き(V=S×Itr)に対応している。
【0060】
図10は、状態が異なる2つの一次転写ロール15における一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を示す図である。また図10は、各一次転写ロール15を用いた場合に得られるSN比ηと傾き量Sとの関係も示している。図10において、白抜きされた正方形「◇」は新品の一次転写ロール15を用いて画像形成動作を3時間連続して行った後の測定結果(図3(a)のサンプルS4参照)であり、黒く塗りつぶされた正方形「◆」は画像形成動作に使用した後に長時間放置された一次転写ロール15を用いて画像形成動作を3時間連続して行った後の測定結果(図3(b)のサンプルS4参照)である。なお、ここでは、第1電流値I1、第2電流値I2、第3電流値I3を、それぞれ、10μA、20μA、30μAとした。また、図10における縦軸は、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr1、第3検出電圧値Vtr3から、それぞれ基準検出電圧値Vtr0を差し引いて得られた第1電圧値V1、第2電圧値V2、第3電圧値V3に対応している。
【0061】
なお、この例では、新品の一次転写ロール15を用いた場合と長期使用品の一次転写ロール15を用いた場合とで、計算によって得られた傾き量Sが同じ値になったものと仮定する。このとき、新品の一次転写ロール15では、傾き量Sの直線上に各一次転写電流値における一次転写電圧値が近づいた状態でプロットされる。これに対し、長期使用品の一次転写ロール15では、新品の一次転写ロール15の場合と比較して、傾き量Sの直線から各一次転写電流値における一次転写電圧値が遠ざかった状態でプロットされる。例えば図10においては、一次転写電流値が少ない領域(Itr=Itr1=10μAの領域)では、傾き量Sの直線と比較して一次転写電流値に対して発生する一次転写電圧値が大きくなり(一次転写ロール15の抵抗値が大きくなったことを意味する)、一次転写電流値が多い領域(Itr=Itr3=30μA)では、傾き量Sの直線と比較して一次転写電流値に対して発生する一次転写電圧値が小さくなる(一次転写ロール15の抵抗値が小さくなったことを意味する)。すなわち、新品の一次転写ロール15を用いた場合に比べて、長期使用品の一次転写ロール15を用いた場合においては、一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を一次関数で表現した直線からのずれが大きくなることから、結果としてSN比ηが低下することになる。
このように、本実施の形態では、品質工学の手法を用いて、一次転写ロール15における一次転写電流値と一次転写電圧値との関係を、抵抗値に対応する傾き量Sと抵抗値の電流依存性すなわち非線形性に対応するSN比ηとを用いて把握している。
【0062】
本実施の形態では、図6および図7を用いて説明したように、画像形成動作中の一次転写で用いる一次転写電流値Itrを、基本転写電流値I0と補正値Kとの積で求めている。ここで、基本転写電流値I0は、温度センサ81および湿度センサ82によって測定された環境条件に基づいて決められるものであり、例えば低温低湿度環境下の場合よりも高温高湿度環境下の場合の方がより大きな値をとる。これは、一次転写ロール15の抵抗値が、低温低湿度環境下よりも高温高湿度環境下において低下するためである。また、補正値Kは、環境条件毎に、上述したSN比ηと傾き量Sとの関係に基づいて決められるものである。これは、SN比ηが同じであっても傾き量Sが異なっている場合および傾き量Sが同じであってもSN比ηが異なっている場合において、それぞれ、一次転写ロール15の抵抗値が異なった値を取り、しかも、その度合いが環境条件によって変わるためである。
【0063】
また、本実施の形態では、図6および図7を用いて説明したように、画像形成装置に一次転写ロール15が取り付けられた後の最初の画像形成動作において取得されたSN比である第1基準値η1と今回の画像形成動作中に取得された今回のSN比ηとの差が第1許容値Δη1以上となった場合、および、前回の画像形成動作において取得されたSN比である第2基準値η2と今回の画像形成動作中に取得された今回のSN比ηとの差が第2許容値Δη2以上となった場合に、ユーザに警告を提示するようにした。今回取得されたSN比ηが第1基準値η1あるいは第2基準値η2から大きくずれているような場合には、SN比ηに大きな変動が生じたことすなわち一次転写ロール15に何らかの不具合が生じていることが予想され、その後の画像形成動作において転写不良等が生ずる懸念があるためである。そこで、一次転写電流値Itrの設定プロセスにおいてSN比ηに基づく判断を行うことで、画像形成動作実行中の一次転写ロール15の状態を監視している。
【0064】
<実施の形態2>
実施の形態1では、1つの感光体ドラム11に回転式現像装置14を用いてイエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の画像を順次形成し、感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト20上で重ね合わせる所謂4サイクル型の画像形成装置を例に説明を行った。これに対し、本実施の形態は、画像形成装置の基本構成は実施の形態1とほぼ同様であるものの、中間転写ベルト20に対し4つの感光体ドラム11を並べて配置した所謂タンデム型の画像形成装置に適用した場合について説明を行う。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
図11は、本実施の形態が適用される画像形成装置における一次転写系の構成を説明するための図である。なお、本実施の形態では、中間転写ベルト20の移動方向Bの上流側から順に、イエローの画像を形成するイエロー感光体ドラム11Y、マゼンタの画像を形成するマゼンタ感光体ドラム11M、シアンの画像を形成するシアン感光体ドラム11Cおよび黒の画像を形成する黒感光体ドラム11Kが並べて配置されている。なお、これらは、実施の形態1で説明した感光体ドラム11と同じ構成を有している。また、イエロー感光体ドラム11Y、マゼンタ感光体ドラム11M、シアン感光体ドラム11Cおよび黒感光体ドラム11Kには、それぞれ、中間転写ベルト20を挟んでイエロー一次転写ロール15Y、マゼンタ一次転写ロール15M、シアン一次転写ロール15Cおよび黒一次転写ロール15Kが対向し且つ接触して配置されている。ここで、各一次転写ロール15Y、15M、15Cおよび15Kは、実施の形態1と同様に、例えばステンレス製の導電性芯材の外周にNBRゴム等のイオン伝導性物質を含有するゴム製の導電性発泡弾性体を被覆して構成される。なお、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kには、実施の形態1と同様、それぞれに帯電装置、露光装置、現像装置、ドラムクリーナ等が設けられるが、図11には、各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kに対応して設けられた帯電装置12Y、12C、12M、12Kを示している。
【0066】
また、イエロー一次転写ロール15Yにはイエロー電流源61Yが、マゼンタ一次転写ロール15Mにはマゼンタ電流源61Mが、シアン一次転写ロール15Cにはシアン電流源61Cが、黒一次転写ロール15Kには黒電流源61Kが、それぞれ接続されている。なお、これらは、それぞれの出力電流値を調整する機能を有している。さらに、イエロー電流源61Yとイエロー感光体ドラム11Yとの間にはイエロー電圧計62Yが、マゼンタ電流源61Mとマゼンタ感光体ドラム11Mとの間にはマゼンタ電圧計62Mが、シアン電流源61Cとシアン感光体ドラム11Cとの間にはシアン電圧計62Cが、黒電流源61Kと黒感光体ドラム11Kとの間には黒電圧計62Kが、それぞれ接続されている。なお、これらは、それぞれにおける一次転写電圧値を測定する機能を有している。そして、各色用の電流源61Y、61M、61C、61K、および、各色用の電圧計62Y、62M、62C、62Kは、転写制御部70に接続されている。
【0067】
図12は、本実施の形態の画像形成動作における一次転写電流値および一次転写動作を説明するためのタイミングチャートである。より具体的に説明すると、図12は、中間転写ベルト20での非画像領域D1および画像領域D2と、各帯電装置12Y、12M、12C、12Kによる各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの帯電動作と、各電流源61Y、61M、61C、61Kによって供給される一次転写電流値と、各電圧計62Y、62M、62C、62Kによって測定される一次転写電圧値との関係を示している。なお、図12は、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像および黒画像を含む用紙P1枚分のフルカラー画像を中間転写ベルト20(図11参照)に一次転写する場合を例示している。
【0068】
ここで、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各色の一次転写部における動作自体は、実施の形態1で説明したものと同じである。すなわち、1枚目の用紙Pに形成する画像に対応する画像領域D2よりも中間転写ベルト20の移動方向上流側となる非画像領域D1において、それぞれ、基準検出電圧値Vtr0の取得動作(ステップ102、103参照)、第1検出電圧値Vtr1の取得動作(ステップ104、105参照)、第2検出電圧値Vtr2の取得動作(ステップ106、107参照)、および第3検出電圧値Vtr3の取得動作(ステップ108、109参照)が行われる。そして、1枚目の用紙Pに対応する画像領域D2が一次転写位置に到達するまでの間に、それぞれこの画像領域D2が一次転写位置を通過する間に供給する各一次転写電流値Itr(図中にはItr1(Y)、Itr1(M)、Itr1(C)、Itr1(K)と記す)の決定および設定が行われる(ステップ110〜119参照)。
【0069】
ただし、本実施の形態では、1つの中間転写ベルト20に対し4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kを並べて対向配置し、中間転写ベルト20が一回転する間に中間転写ベルト20にイエロー、マゼンタ、シアン、黒の順にトナー像を順次一次転写して重ねる構成を採用している。このため、イエロー画像の一次転写においてはイエロー感光体ドラム11Yの帯電電位が影響する一方、マゼンタ画像の一次転写においてはマゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位に加えてイエロー感光体ドラム11Yの帯電電位がさらに影響を及ぼすことになる。また、シアン画像の一次転写においてはシアン感光体ドラム11Cの帯電電位に加えてイエロー感光体ドラム11Y、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位がさらに影響を及ぼすことになり、黒画像の一次転写においては黒感光体ドラム11Kの帯電電位に加えてイエロー感光体ドラム11Y、マゼンタ感光体ドラム11Mおよびシアン感光体ドラム11Cの帯電電位がさらに影響を及ぼすことになる。
【0070】
そこで、本実施の形態では、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各感光体ドラム11Y、11M、11C、11Kの帯電領域が、中間転写ベルト20上の非画像領域D1を順次通過していくように各色の帯電バイアスを供給するように制御を行った。これに伴い、イエローの一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域上の非画像領域D1と対向した中間転写ベルト20がイエローの一次転写位置を通過している間に、イエローの基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3の測定が行われる。また、マゼンタの一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域且つマゼンタ感光体ドラム11Mの帯電領域と対向した中間転写ベルト20上の非画像領域D1がマゼンタの一次転写位置を通過している間に、マゼンタの基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3の測定が行われる。さらに、シアンの一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電領域且つシアン感光体ドラム11Cの帯電領域と対向した中間転写ベルト20上の非画像領域D1がシアンの一次転写位置を通過している間に、シアンの基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtr3の測定が行われる。そして、黒の一次転写部では、イエロー感光体ドラム11Yの帯電領域、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電領域、シアン感光体ドラム11Cの帯電領域且つ黒感光体ドラム11Kの帯電領域と対向した中間転写ベルト20上の非画像領域D1が黒の一次転写位置を通過している間に、黒の基準検出電圧値Vtr0、第1検出電圧値Vtr1、第2検出電圧値Vtr2および第3検出電圧値Vtrの測定が行われる。
【0071】
このため、イエローの一次転写電流値Itr(Y)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、イエロー感光体ドラム11Yの帯電電位の影響はより少なくなる。また、マゼンタの一次転写電流値Itr(M)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位およびイエロー感光体ドラム11Yの帯電電位の影響はより少なくなる。さらに、シアンの一次転写電流値Itr(C)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、シアン感光体ドラム11Cの帯電電位、イエロー感光体ドラム11Yの帯電電位およびマゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位の影響はより少なくなる。さらにまた、黒の一次転写電流値Itr(K)の決定に用いられる第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3において、黒感光体ドラム11Kの帯電電位、イエロー感光体ドラム11Yの帯電電位、マゼンタ感光体ドラム11Mの帯電電位およびシアン感光体ドラム11Cおよびの帯電電位の影響はより少なくなる。このため、各色の一次転写電流値を決定する際のずれが抑制されることになる。
【0072】
なお、本実施の形態では、中間転写ベルト20の移動方向Bの上流側から順に、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の画像形成ユニットを配置するようにしていたが、配置順については変更してかまわない。
【0073】
また、実施の形態1、2では、品質工学の手法を用いて、一次転写部の抵抗値(傾き量S)および抵抗値の非線形性(SN比η)を決定するようにしていたが、上述した第1電流値I1、第2電流値I2、第3電流値I3、第1電圧値V1、第2電圧値V2および第3電圧値V3の関係に基づいて、入力電流値と出力電圧値との関係を表すm次(mは2以上の整数)の近似式を作成し、得られた近似式に基づいて一次転写電流値Itrを決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
11…感光体ドラム、11a…基材、12…帯電装置、13…露光装置、14…回転式現像装置、15…一次転写ロール、20…中間転写ベルト、30…二次転写装置、61…電流源、62…電圧計、63…UI、70…転写制御部、71…設定部、72…基準値記憶部、73…基本転写電流値記憶部、74…補正値記憶部、81…温度センサ、82…湿度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を保持する像保持体と、
前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像が転写される被転写体と、
前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置される接触部材と、
前記接触部材に前記像保持体から前記被転写体に前記画像を転写するための転写電流を供給する転写電源と、
前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、
前記転写電源によって前記接触部材にそれぞれ電流値が異なるN(Nは3以上の整数)段階の電流が供給されたときにN段階の電流値のそれぞれに対応して前記電圧検出部で検出されたN個の検出電圧値を取得し、当該N段階の電流値と当該N個の検出電圧値とに基づいて、前記像保持体に保持された前記画像を前記被転写体に転写するための転写電流値を設定する設定部と
を含む画像形成装置。
【請求項2】
前記像保持体を帯電する帯電部と、帯電された当該像保持体を露光して静電潜像を形成する露光部と、当該像保持体に形成された当該静電潜像をトナーで現像して画像とする現像部とをさらに備え、
前記設定部は、前記帯電部によって帯電され且つ前記露光部による露光および前記現像部による現像が行われない前記像保持体上の非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間に前記N段階の電流値の供給および前記N個の検出電圧値の取得を行い、当該帯電部によって帯電され且つ当該露光部による露光および当該現像部による現像が行われる当該像保持体上の画像領域が当該接触部材との対向部に到達するまでに前記転写電流値を設定すること
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記像保持体上の前記非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間であって前記転写電源によって前記接触部材に電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出された基準検出電圧値をさらに取得し、前記N段階の電流値と前記N個の検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られたN個の電圧値とに基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記N段階の電流値と前記N個の電圧値との線形性に基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記接触部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像を保持する像保持体と、
前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された画像が転写される被転写体と、
前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像を当該被転写体に転写するための転写電流が供給される転写部材と、
前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、
前記転写部材に供給される電流値の変化と当該電流値の変化に応じて前記電圧検出部で検出される電圧値の変化との相関関係に基づいて、前記転写電流の大きさを決定する決定部と
を含む画像形成装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記転写部材に第1電流値が供給されたときに前記電圧検出部で検出される第1検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値とは大きさが異なる第2電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第2検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値および当該第2電流値とは大きさが異なる第3電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第3検出電圧値とを取得し、当該第1電流値、当該第2電流値、当該第3電流値、当該第1検出電圧値、当該第2検出電圧値および当該第3検出電圧値に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記転写部材に転写電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出される基準検出電圧値をさらに取得し、前記第1電流値、前記第2電流値および前記第3電流値と、前記第1検出電圧値、前記第2検出電圧値および前記第3検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られた第1電圧値、第2電圧値および第3電圧値とに基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記第1電流値、前記第2電流値、前記第3電流値、前記第1電圧値、前記第2電圧値および前記第3電圧値を用いて、電流−電圧特性における傾きと当該傾きに対するSN比とを計算し、得られた当該傾きおよび当該SN比に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
環境条件を検知する環境検知部をさらに含み、
前記決定部は、前記環境検知部による検知結果に基づいて前記転写電流の基本転写電流値を決定し、前記環境検知部による検知結果、前記傾きおよび前記SN比に基づいて決められた補正値にて当該基本転写電流値を補正することで当該転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記転写部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項1】
画像を保持する像保持体と、
前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像が転写される被転写体と、
前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置される接触部材と、
前記接触部材に前記像保持体から前記被転写体に前記画像を転写するための転写電流を供給する転写電源と、
前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、
前記転写電源によって前記接触部材にそれぞれ電流値が異なるN(Nは3以上の整数)段階の電流が供給されたときにN段階の電流値のそれぞれに対応して前記電圧検出部で検出されたN個の検出電圧値を取得し、当該N段階の電流値と当該N個の検出電圧値とに基づいて、前記像保持体に保持された前記画像を前記被転写体に転写するための転写電流値を設定する設定部と
を含む画像形成装置。
【請求項2】
前記像保持体を帯電する帯電部と、帯電された当該像保持体を露光して静電潜像を形成する露光部と、当該像保持体に形成された当該静電潜像をトナーで現像して画像とする現像部とをさらに備え、
前記設定部は、前記帯電部によって帯電され且つ前記露光部による露光および前記現像部による現像が行われない前記像保持体上の非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間に前記N段階の電流値の供給および前記N個の検出電圧値の取得を行い、当該帯電部によって帯電され且つ当該露光部による露光および当該現像部による現像が行われる当該像保持体上の画像領域が当該接触部材との対向部に到達するまでに前記転写電流値を設定すること
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記像保持体上の前記非画像領域が前記接触部材との対向部を通過している間であって前記転写電源によって前記接触部材に電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出された基準検出電圧値をさらに取得し、前記N段階の電流値と前記N個の検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られたN個の電圧値とに基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記N段階の電流値と前記N個の電圧値との線形性に基づいて前記転写電流値を設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記接触部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像を保持する像保持体と、
前記像保持体に接触配置され、当該像保持体に保持された画像が転写される被転写体と、
前記被転写体を挟んで前記像保持体と対向する位置で当該被転写体に接触配置され、当該像保持体に保持された前記画像を当該被転写体に転写するための転写電流が供給される転写部材と、
前記像保持体と前記被転写体との間に生じる電圧を検出する電圧検出部と、
前記転写部材に供給される電流値の変化と当該電流値の変化に応じて前記電圧検出部で検出される電圧値の変化との相関関係に基づいて、前記転写電流の大きさを決定する決定部と
を含む画像形成装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記転写部材に第1電流値が供給されたときに前記電圧検出部で検出される第1検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値とは大きさが異なる第2電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第2検出電圧値と、当該転写部材に当該第1電流値および当該第2電流値とは大きさが異なる第3電流値が供給されたときに当該電圧検出部で検出される第3検出電圧値とを取得し、当該第1電流値、当該第2電流値、当該第3電流値、当該第1検出電圧値、当該第2検出電圧値および当該第3検出電圧値に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記転写部材に転写電流が供給されないときに前記電圧検出部で検出される基準検出電圧値をさらに取得し、前記第1電流値、前記第2電流値および前記第3電流値と、前記第1検出電圧値、前記第2検出電圧値および前記第3検出電圧値から当該基準検出電圧値をそれぞれ差し引いて得られた第1電圧値、第2電圧値および第3電圧値とに基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記第1電流値、前記第2電流値、前記第3電流値、前記第1電圧値、前記第2電圧値および前記第3電圧値を用いて、電流−電圧特性における傾きと当該傾きに対するSN比とを計算し、得られた当該傾きおよび当該SN比に基づいて、前記転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
環境条件を検知する環境検知部をさらに含み、
前記決定部は、前記環境検知部による検知結果に基づいて前記転写電流の基本転写電流値を決定し、前記環境検知部による検知結果、前記傾きおよび前記SN比に基づいて決められた補正値にて当該基本転写電流値を補正することで当該転写電流の大きさを決定することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記転写部材は、イオン伝導性物質を含有することを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−224116(P2010−224116A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69919(P2009−69919)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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