説明

画像形成装置

【課題】胴内用紙排出型の画像形成装置において、用紙排出空間の四隅のうち一箇所に支持構造を持たない隅部を構成することに起因する輸送時等の装置の歪みを防止する。
【解決手段】画像形成装置1は、胴内用紙排出部16の内底部に、用紙排出方向に沿ってスライド移動が可能な排紙トレイ20を備え、この排紙トレイ20が、下流側へ移動後に開放部を有する右側面の箇所で上方に向かって回転可能な回動部22と、この回動部22で上方へ回転させることによりスキャナーユニット8と係合してこれを支持する支持部23とを備える。これにより、胴内用紙排出部16の内底部に常設された排紙トレイ20を用いて、追加部材を別途用意することなく、胴内用紙排出部16の四隅のうちの一箇所である支持構造を持たない隅部で、スキャナーユニット8を支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタに代表される画像形成装置であって、特に、上方及び下方に構造物を有する形で本体に内蔵され、本体正面及び左右いずれか一方の側面に開放部を有するとともに、四隅のうち、開放部を有する正面及び側面が交差する一箇所に上方構造物を支持するための支持構造を持たない用紙排出空間が設けられた、所謂胴内用紙排出型の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタといった画像形成装置は、用紙を収容して供給する用紙供給部や、画像を形成する画像形成部、用紙に画像を転写する転写部、用紙に未定着の画像を定着させる定着部、画像が転写、定着された用紙を排出する用紙排出部など、様々な構成要素を備えている。
【0003】
画像形成装置のうち複写機や、複写機・ファクシミリ・プリンタの機能を兼ね備えた所謂複合機は、その下部に用紙供給部を配置し、上下方向中央部付近に画像形成部や転写部、定着部を配置し、装置側面から外側に突出した形で用紙排出部を配置する構成が従来一般的である。装置本体の上部には原稿に描かれた画像を読み取るスキャナーユニット(画像読取部)が配置され、さらに最上部に複数枚の原稿を一枚ずつ分離して自動的にスキャナーユニットに対して搬送する自動原稿搬送装置を備えている機種も存在する。
【0004】
しかしながら、上記構成の画像形成装置は、用紙排出部を装置側面から外側に突出した形で備えているので、装置の設置占有面積が広くなってしまう。これにより、狭いスペースには、画像形成装置を設置できないといった問題が発生した。そこで、スキャナーユニットと画像形成部等との間に、本体に内蔵する形で用紙排出空間を構成した、所謂胴内用紙排出型の画像形成装置が開発され、コンパクト化が進められた。
【0005】
胴内用紙排出型の画像形成装置は、装置本体の外側に突出する部分がないので、その省スペース性が注目されている。しかしながら、この用紙排出部は、用紙排出や排出した用紙の取り出しに係る利便性を考慮して、本体正面及び左右いずれか一方の側面に開放部を有するとともに、四隅のうち、開放部を有する正面及び側面が交差する一箇所に上方構造物を支持するための支持構造を持たない用紙排出空間として形成されていることが多い。これにより、装置の輸送時、用紙排出空間の、上方構造物に対する支持構造を持たない隅部の箇所に負荷が掛かり、装置本体に歪みが発生することが問題として懸念されている。
【0006】
そこで、このような問題を解決すべく、胴内用紙排出型の画像形成装置において、用紙排出空間の、上方構造物に対する支持構造を持たない隅部の箇所を、装置の輸送時など一時的に支持する方法が提案され、その例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置は、開放部を有する側面の箇所に、着脱が自在な支持部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3810949号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された画像形成装置は、胴内用紙排出空間の開放部を有する側面の箇所において、その内底部から上方構造物であるスキャナ部に架け渡す形で、着脱自在な支持部材を装着し、四隅のうちスキャナ部に対する支持構造を持たない隅部の箇所を支持している。しかしながら、この画像形成装置では、支持部材を、本来の画像形成動作には必要のない追加部材として別途用意しなければならないので、部品コストが高くなる可能性がある。また、支持部材は、普段使用しないので保管場所に困る恐れがあるとともに、紛失して次回の画像形成装置の輸送時に使用できなくなる恐れがある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、上方及び下方に構造物を有する形で本体に用紙排出空間が内蔵された、所謂胴内用紙排出型の画像形成装置において、普段の画像形成時には必要のない追加部材をできるだけ別途用意することなく、低コスト化が図られ、用紙排出空間の四隅のうち一箇所に支持構造を持たない隅部を構成することに起因する輸送時等の装置の歪みを防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、上方及び下方に構造物を有する形で本体に内蔵され、本体正面及び左右いずれか一方の側面に開放部を有するとともに、四隅のうち、前記正面及び側面が交差する一箇所に上方構造物を支持するための支持構造を持たない用紙排出空間が設けられた画像形成装置において、前記用紙排出空間の内底部に、用紙排出方向に沿って移動が可能な排紙トレイを備え、この排紙トレイが、下流側への移動後に前記開放部を有する側面の箇所で上方に向かって回転可能な回動部と、この回動部で上方へ回転させることにより前記上方構造物と係合してこれを支持する支持部とを備えることとした。
【0011】
また、上記構成の画像形成装置において、前記支持部は、ねじを使用して前記上方構造物と締結せしめられることとした。
【0012】
また、上記構成の画像形成装置において、前記排紙トレイは、用紙排出方向下流端の箇所であって、前記支持部に対応する箇所に、用紙排出面に対して収納/展開両様の姿勢をとり得る、排出した用紙の前記用紙排出空間からの落下を防止するエンドフェンスを備え、前記回動部で上方へ回転させることにより、展開姿勢にあるこのエンドフェンスが前記上方構造物と係合することとした。
【0013】
また、上記構成の画像形成装置において、前記上方構造物は、前記排紙トレイの前記支持部と係合する箇所に緩衝部材を備えることとした。
【0014】
また、上記構成の画像形成装置において、前記上方構造物が、その内部で移動自在な移動体を備えたスキャナーユニットであり、前記支持部は、前記スキャナーユニットのフレームとともに移動体にも係合し、スキャナーユニットの下方からの支持と、移動体の移動の阻止とを行うこととした。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、上方及び下方に構造物を有する形で本体に内蔵され、本体正面及び左右いずれか一方の側面に開放部を有するとともに、四隅のうち、前記正面及び側面が交差する一箇所に上方構造物を支持するための支持構造を持たない用紙排出空間が設けられた画像形成装置において、前記用紙排出空間の内底部に、用紙排出方向に沿って移動が可能な排紙トレイを備え、この排紙トレイが、下流側への移動後に前記開放部を有する側面の箇所で上方に向かって回転可能な回動部と、この回動部で上方へ回転させることにより前記上方構造物と係合してこれを支持する支持部とを備えることとしたので、用紙排出空間の内底部に常設された排紙トレイを用いて、用紙排出空間の四隅のうちの一箇所である支持構造を持たない隅部で、上方構造物を支持することができる。そして、排紙トレイは、用紙排出部に常設される部材であるので、装置本体から取り外すことがなく、保管場所に困ったり、紛失したりすることがない。したがって、画像形成装置において、普段の画像形成時には必要のない追加部材を別途用意することなく、低コスト化が図ることが可能である。そして、用紙排出や排出した用紙の取り出しに係る利便性を考慮して、用紙排出空間の四隅のうち一箇所に支持構造を持たない隅部を構成することに起因する輸送時等の装置の歪みを防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0016】
また、前記支持部は、ねじを使用して前記上方構造物と締結せしめられることとしたので、より確実に、強固に上方構造物を支持することが可能である。したがって、輸送時等における装置の歪みを防止する効果が、さらに高められた画像形成装置を提供することができる。
【0017】
また、前記排紙トレイは、用紙排出方向下流端の箇所であって、前記支持部に対応する箇所に、用紙排出面に対して収納/展開両様の姿勢をとり得る、排出した用紙の前記用紙排出空間からの落下を防止するエンドフェンスを備え、前記回動部で上方へ回転させることにより、展開姿勢にあるこのエンドフェンスが前記上方構造物と係合することとしたので、ねじなどの締結部材を用いることなく、エンドフェンスを利用して上方構造物を支持することが可能になる。これにより、さらに低コスト化が図られた構成で、輸送時等における装置の歪みを防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【0018】
また、前記上方構造物は、前記排紙トレイの前記支持部と係合する箇所に緩衝部材を備えることとしたので、排紙トレイを用いて上方構造物を支持しているとき、衝撃が加わることに起因する支持部等の破損を防止することが可能である。したがって、輸送時等における装置の歪みを防止する効果が一層向上した画像形成装置を提供することができる。
【0019】
また、前記上方構造物が、その内部で移動自在な移動体を備えたスキャナーユニットであり、前記支持部は、前記スキャナーユニットのフレームとともに移動体にも係合し、スキャナーユニットの下方からの支持と、移動体の移動の阻止とを行うこととしたので、画像形成装置の輸送時、移動体が意図せず移動して、移動体自体や装置内壁面等に衝撃が加わるのを防止することが可能になる。そして、移動体の移動を阻止する部材を別途用意する必要がない。したがって、さらに低コスト化が図られ、輸送時等における装置の歪みの防止に加えて、移動体の破損も防止することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の斜視図である。
【図3】図1に示す胴内用紙排出部周辺の垂直断面部分拡大正面図である。
【図4】図3に示す胴内用紙排出部の排紙トレイの上面図である。
【図5】図2と同様の画像形成装置の斜視図にして、排紙トレイをスライド移動させた状態を示すものである。
【図6】図3と同様の胴内用紙排出部周辺の垂直断面部分拡大正面図にして、排紙トレイを上方に回転させた状態を示すものである。
【図7】図6に示す画像形成装置の斜視図である。
【図8】図7に示す画像形成装置の右側面図である。
【図9】図8の支持部の箇所を示す垂直断面部分拡大正面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の斜視図にして、排紙トレイの回転途中の状態を示すものである。
【図11】図10の延長トレイの、展開途中の状態にあるエンドフェンスを示す部分拡大正面図である。
【図12】図11と同様のエンドフェンスを示す部分拡大正面図にして、展開が完了した状態を示すものである。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の垂直断面部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図1〜図13に基づき説明する。
【0022】
最初に、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置について、図1及び図2を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は画像形成装置の正面側から見た斜視図である。なお、図1において、実線矢印は用紙の搬送経路及び搬送方向を、一点鎖線矢印はレーザ光Lを示す。また、図2以下の画像形成装置の斜視図では、画像形成装置本体上方の原稿搬送装置、下部の給紙カセット部、及び画像形成装置の詳細な内部構造物の描画を省略している。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には、給紙部である給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3は、その内部に、印刷前のカットペーパー等の用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは、図1において給紙カセット3の左上方に向けて、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3は、本体2の正面側から水平に引き出すことが可能である。
【0024】
本体2の内部であって、給紙カセット3の左方には、第1用紙搬送部4が備えられている。第1用紙搬送部4は、本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、第1用紙搬送部4は、給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に転写部12まで搬送する。
【0025】
給紙カセット3の上方であって、第1用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には、手差し給紙部5が備えられている。手差し給紙部5には、給紙カセット3に入っていないサイズの用紙や、厚紙、OHPシートのように1枚ずつ手で送り込みたいものが載置される。
【0026】
手差し給紙部5の左方には、第2用紙搬送部6が備えられている。第2用紙搬送部6は、給紙カセット3のすぐ上方にあって、手差し給紙部5から第1用紙搬送部4まで略水平に延び、第1用紙搬送部4に合流している。そして、第2用紙搬送部6は、手差し給紙部5から送り出された用紙などを受け取り、略水平に第1用紙搬送部4まで搬送する。
【0027】
一方、図1及び図2に示すように、画像形成装置1の本体2の上面には原稿搬送装置7が、その下方にはスキャナーユニット8が備えられている。ユーザーが原稿の複写を行う場合には、原稿搬送装置7に、文字や図形、模様等の画像が描かれた原稿を積載する。原稿搬送装置7では1枚ずつ分離して原稿が送り出され、スキャナーユニット8によってその画像データが読み取られる。
【0028】
原稿画像の読み取り、すなわち印刷の開始は、本体2の上部であって、スキャナーユニット8の正面側に備えられた操作パネル9(図2参照)を用いて実行される。ユーザーは、この操作パネル9から、使用する用紙サイズや拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件などを入力して設定することが可能である。
【0029】
原稿の画像データの情報は、第2用紙搬送部6の上方であって、本体2の中央部に配置された露光装置10に送られる。露光装置10により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが、画像形成部11に向かって照射される。
【0030】
第1用紙搬送部4の上方であって、露光装置10の左方には、画像形成部11及び転写部12が備えられている。画像形成部11では、露光装置10によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナーは、露光装置10の上方に備えられたトナーコンテナ13から画像形成部11に補給される。画像形成部11で形成されたトナー像は、第1用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた印刷前の用紙Pに、転写部12にて転写される。
【0031】
転写部12の上方には、定着部14が備えられている。転写部12にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着部14へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0032】
定着部14の上方には、分岐部15が備えられている。定着部14から排出された用紙Pは、両面印刷を行わない場合、分岐部15から画像形成装置1の胴内に設けられた胴内用紙排出部16に排出される。
【0033】
分岐部15から胴内用紙排出部16に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分は、スイッチバック部17としての機能を果たす。両面印刷を行う場合には、このスイッチバック部17において、定着部14から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、分岐部15を通過し、定着部14の左方、及び転写部12の左方に設けられた両面印刷用用紙搬送路18を通して下方に送られ、再度第1用紙搬送部4を経て転写部12へと送られる。
【0034】
続いて、画像形成装置1の胴内用紙排出部16の詳細な構成について、図1及び図2に加えて、図3及び図4を用いて説明する。図3は胴内用紙排出部周辺の垂直断面部分拡大正面図、図4は胴内用紙排出部の排紙トレイの上面図である。
【0035】
胴内用紙排出部16は、図1及び図2に示すように、上方及び下方に構造物を有する形、すなわち上方のスキャナーユニット8と、下方の画像形成部11や露光装置10などとの間の本体2に内蔵され、用紙排出空間が構成されている。そして、胴内用紙排出部16は、本体2の正面及び右側面に開放部を有し、四隅のうち、正面及び右側面が交差する右手前側の一箇所に、上方構造物であるスキャナーユニット8を支持するための支持構造を備えていない。これにより、胴内用紙排出部16に排出された用紙の取り出しが容易であるとともに、比較的サイズの大きな用紙が折れ曲がることなく排出できる。
【0036】
上記の胴内用紙排出部16は、その内底部である用紙排出面に、排紙トレイ20を備えている。排紙トレイ20は、平板形状をなし、胴内用紙排出部16の内底部の一部として構成されている。排紙トレイ20は、図3及び図4に示すように、リンク部材21、回動部22、及び支持部23を備えている。
【0037】
リンク部材21は、排紙トレイ20の用紙排出方向上流端であって、その前方及び後方各々に設けられている。リンク部材21は、排紙トレイ20同様、用紙排出方向、すなわち図3における左右方向に沿い、排紙トレイ20のさらに上流側に向かって延びている。
【0038】
リンク部材21は、その下流端の箇所である回動部22で排紙トレイ20と連結している。回動部22は、前後方向に略水平に延びる軸部22aを備え、その軸線を中心として、リンク部材21に対して排紙トレイ20を揺動自在に支持している。これにより、排紙トレイ20は、軸部22aの箇所を中心とし、下流側を上方に持ち上げるようにして回転させることが可能である。
【0039】
また、リンク部材21は、その上流端の箇所に、スライド軸21aを備えている。2個のリンク部材21のうち、前方のリンク部材21のスライド軸21aはさらに前方に向かって、後方のリンク部材21のスライド軸21aはさらに後方に向かって略水平に延びている。前方及び後方2個のスライド軸21aは、胴内用紙排出部16の内底部の対応する各々の箇所に設けられた、内底部の用紙排出方向に沿って延びる図示しないスライドガイドに係合している。これにより、リンク部材21及び排紙トレイ20は、用紙排出方向に沿って移動可能である。
【0040】
支持部23は、排紙トレイ20の用紙排出方向下流部に設けられている。支持部23は、貫通孔24と、エンドフェンス25とを備えている。
【0041】
貫通孔24は、前後方向に並べて2箇所設けられ、排紙トレイ20の表面から裏面まで貫通している。貫通孔24には、排紙トレイ20の支持部23とスキャナーユニット8とを係合させるためのねじ26(図8参照)が取り付けられる。
【0042】
エンドフェンス25は、用紙排出方向と直角をなす用紙幅方向のほぼ中央部に設けられている。エンドフェンス25は、用紙排出方向の一端であって、前方及び後方各々の側面に、ほぼ水平に外側に向かって延びる軸部25aを備えている。そして、エンドフェンス25は、軸部25aの箇所で、前後方向に向かって延びるその軸線を中心として、用紙排出方向に沿う垂直面内で揺動可能にして排紙トレイ20に支持されている。
【0043】
エンドフェンス25は、使用しないとき、対応する排紙トレイ20下流部の用紙排出面に設けられた凹部20aに、用紙排出方向上流側に向かって倒す形で倒伏状態にして収納姿勢をとっている。このとき、エンドフェンス25は、排紙トレイ20の用紙排出面から上方に突出することはない。そして、収納姿勢にあるエンドフェンス25の上流部を下流側に向かって持ち上げるようにして、ほぼ垂直になるように起立させることにより展開姿勢をとる。このようにして、エンドフェンス25は、用紙排出面に対して収納/展開両様の姿勢をとり得るものであって、排出した用紙の用紙排出空間からの落下を防止する。
【0044】
次に、排紙トレイ20によるスキャナーユニット8の支持方法について、図2〜図4に加えて、図5〜図9を用いて説明する。図5は図2と同様の画像形成装置の斜視図にして、排紙トレイをスライド移動させた状態を示すもの、図6は図3と同様の胴内用紙排出部周辺の垂直断面部分拡大正面図にして、排紙トレイを上方に回転させた状態を示すもの、図7は図6に示す画像形成装置の斜視図、図8は同じく画像形成装置の右側面図、図9は支持部の箇所を示す垂直断面部分拡大正面図である。
【0045】
画像形成装置1の通常の印刷動作時、排紙トレイ20は、図2及び図3に示す収縮状態で使用される。胴内用紙排出部16に排出された用紙が、胴内用紙排出部16の右側面から落下しそうである場合、図3の二点鎖線で示すようにエンドフェンス25を用紙排出面に対して展開姿勢にしてそれに対応する。
【0046】
続いて、排紙トレイ20によってスキャナーユニット8を支持する場合には、排紙トレイ20の回動部22が本体2右側面の箇所に到達するまで、図5に示すように排紙トレイ20を用紙排出方向下流側にスライド移動させる。そして、排紙トレイ20の回動部22が本体2右側面の箇所に到達すると、図6及び図7に示すように、その回動部22の軸部22aの軸線を中心とし、下流側を上方に持ち上げるようにして、排紙トレイ20を上方に向かって回転させる。
【0047】
排紙トレイ20を回動部22で回転させると、支持部23がスキャナーユニット8の箇所に到達する。そして、図8に示すように、支持部23の2箇所の貫通孔24(図4参照)にねじ26を通して締結する。これにより、支持部23がスキャナーユニット8と係合し、これを支持することができる。
【0048】
ここで、スキャナーユニット8は、図9に示すように、排紙トレイ20の支持部23との係合箇所に、緩衝部材であるダンパー8aを備えている。ダンパー8aは、スキャナーユニット8のフレーム8bと、スキャナーユニット8内の、ねじ26が締結された連結体8cとの間に配置され、連結体8cを下方から支持している。
【0049】
上記のように、上方及び下方に構造物を有する形、すなわち上方のスキャナーユニット8と、下方の画像形成部11や露光装置10などとの間の本体2に内蔵され、本体2の正面及び右側面に開放部を有するとともに、四隅のうち、正面及び右側面が交差する一箇所に上方構造物を支持するための支持構造を持たない用紙排出空間である胴内用紙排出部16が設けられた画像形成装置1において、胴内用紙排出部16の内底部に、用紙排出方向に沿ってスライド移動が可能な排紙トレイ20を備え、この排紙トレイ20が、下流側への移動後に開放部を有する右側面の箇所で上方に向かって回転可能な回動部22と、この回動部22で上方へ回転させることによりスキャナーユニット8と係合してこれを支持する支持部23とを備えているので、胴内用紙排出部16の内底部に常設された排紙トレイ20を用いて、胴内用紙排出部16の四隅のうちの一箇所である支持構造を持たない隅部で、スキャナーユニット8を支持することができる。そして、排紙トレイ20は、胴内用紙排出部16に常設される部材であるので、本体2から取り外すことがなく、保管場所に困ったり、紛失したりすることがない。したがって、画像形成装置1において、普段の画像形成時には必要のない追加部材を別途用意することなく、低コスト化が図ることが可能である。そして、用紙排出や排出した用紙の取り出しに係る利便性を考慮して、胴内用紙排出部16の四隅のうち一箇所に支持構造を持たない隅部を構成することに起因する輸送時等の装置の歪みを防止することが可能な画像形成装置1を提供することができる。
【0050】
また、支持部23は、ねじ26を使用してスキャナーユニット8と締結せしめられるので、より確実に、強固にスキャナーユニット8を支持することが可能である。したがって、輸送時等における装置の歪みを防止する効果が、さらに高められた画像形成装置1を提供することができる。
【0051】
そして、スキャナーユニット8は、排紙トレイ20の支持部23と係合する箇所に緩衝部材であるダンパー8aを備えているので、排紙トレイ20を用いてスキャナーユニット8を支持しているとき、衝撃が加わることに起因する支持部23等の破損を防止することが可能である。したがって、輸送時等における装置の歪みを防止する効果が一層向上した画像形成装置1を提供することができる。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の詳細な構成について、図10〜図12を用いて説明する。図10は画像形成装置の斜視図にして、排紙トレイの回転途中の状態を示すもの、図11は排紙トレイの、展開途中の状態にあるエンドフェンスを示す部分拡大正面図、図12は図11と同様のエンドフェンスを示す部分拡大正面図にして、展開が完了した状態を示すものである。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1〜図9を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成については図面の記載、及びその説明を省略するものとする。
【0053】
第2の実施形態に係る画像形成装置1において、スキャナーユニット8は、図10に示すように、その右側面の箇所に係合孔8dを備えている。係合孔8dは、回動部22で回転させた排紙トレイ20の、支持部23のエンドフェンス25に対応する箇所に設けられている。そして、係合孔8dは、展開姿勢にしたエンドフェンス25が挿入可能な形状、大きさをなしている。
【0054】
ここで、エンドフェンス25は、前述のように、その前後方向に延びる軸部25aの軸線を中心として、用紙排出方向に沿う垂直面内で揺動可能であり、排紙トレイ20の用紙排出面に対して収納/展開両様の姿勢をとり得る(図11参照)。
【0055】
円筒形状の軸部25aの外周面には、展開姿勢にしたときの上側及び下側(図12においては左右両側)に、用紙排出方向に延びる互いに平行をなす平面部25bが設けられている。一方、排紙トレイ20の凹部20aに設けられた軸部25aに対応する軸受20bは、軸部25aを回転自在に支持する円形部20cと、この円形部20cから用紙排出方向上流側、すなわち図11及び図12において下方に向かって延びる長方形状をなす回転阻止部20dとを備えている。回転阻止部20dは、エンドフェンス25を展開姿勢にしたときの軸部25aが挿入可能な形状、大きさをなしている(図12参照)。
【0056】
上記構成により、エンドフェンス25は、展開姿勢にしたとき、用紙排出方向上流側、すなわち図12において下方に移動させることで、軸部25aまわりの回転を阻止することができる。そして、排紙トレイ20の支持部23において、エンドフェンス25を用いてスキャナーユニット8を支持することができる。
【0057】
このようにして、用紙排出方向下流端の箇所であって、排紙トレイ20の支持部23に対応する箇所に、用紙排出面に対して収納/展開両様の姿勢をとり得る、排出した用紙の胴内用紙排出部16からの落下を防止するエンドフェンス25を備え、回動部22で上方へ回転させることにより、展開姿勢にあるこのエンドフェンス25がスキャナーユニット8と係合するので、ねじなどの締結部材を用いることなく、エンドフェンス25を利用してスキャナーユニット8を支持することが可能になる。これにより、さらに低コスト化が図られた構成で、輸送時等における装置の歪みを防止することが可能な画像形成装置1を提供することができる。
【0058】
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の詳細な構成について、図13を用いて説明する。図13は、画像形成装置の垂直断面部分拡大正面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1〜図9を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成については図面の記載、及びその説明を省略するものとする。
【0059】
ここで、スキャナーユニット8は、その上面の図示しないプラテンガラス上に載置された原稿面に対して光ビームを走査するため、図13に示す移動体8eを備えている。移動体8eは、ワイヤー駆動により、スキャナーユニット8の内部で、その左右方向に移動が自在である。
【0060】
第3の実施形態に係る画像形成装置1では、排紙トレイ20の支持部23の貫通孔24(図4参照)に、係止ピン27が挿入される。スキャナーユニット8は、支持部23の貫通孔24に対応する箇所に貫通孔8fを備え、係止ピン27が内部の移動体8eにまで届くようになっている。そして、係止ピン27は、スキャナーユニット8のフレームとともに移動体8eにも係合して、締結される。そして、排紙トレイ20の支持部23において、係止ピン27を使用し、スキャナーユニット8の下方からの支持と、移動体8eの移動の阻止とを行う。
【0061】
このようにして、胴内用紙排出部16の上方構造物であるスキャナーユニット8が、その内部で移動自在な移動体8eを備え、排紙トレイ20の支持部23は、スキャナーユニット8のフレームとともに移動体8eに係合し、スキャナーユニット8の下方からの支持と、移動体8eの移動の阻止とを行うので、画像形成装置1の輸送時、移動体8eが意図せず移動して、移動体8e自体や装置内壁面等に衝撃が加わるのを防止することが可能になる。そして、移動体8eの移動を阻止する部材を別途用意する必要がない。したがって、さらに低コスト化が図られ、輸送時等における装置の歪みの防止に加えて、移動体8eの破損も防止することが可能な画像形成装置1を提供することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0063】
例えば、胴内用紙排出部16を備えた画像形成装置1は、上記実施形態ではブラックトナーのみを使用したモノクロ印刷用の画像形成装置であるが、このような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを備え、複数色を重ね合わせて画像形成することが可能なタンデム方式、或いはロータリーラック方式のカラー印刷用画像形成装置であっても構わない。
【0064】
また、上記第1の実施形態で適用した緩衝部材であるダンパー8aは、第2及び第3の実施形態で適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、複写機やプリンタに代表される画像形成装置であって、本体上部に設けられたスキャナーユニットのすぐ下方に空間を形成して配置された所謂胴内排出型の用紙排出部を備えた画像形成装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
2 本体
8 スキャナーユニット(上方構造物)
8a ダンパー(緩衝部材)
8e 移動体
16 胴内用紙排出部(用紙排出空間)
20 排紙トレイ
22 回動部
23 支持部
25 エンドフェンス
26 ねじ
27 係止ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方及び下方に構造物を有する形で本体に内蔵され、本体正面及び左右いずれか一方の側面に開放部を有するとともに、四隅のうち、前記正面及び側面が交差する一箇所に上方構造物を支持するための支持構造を持たない用紙排出空間が設けられた画像形成装置において、
前記用紙排出空間の内底部に、用紙排出方向に沿って移動が可能な排紙トレイを備え、この排紙トレイが、下流側への移動後に前記開放部を有する側面の箇所で上方に向かって回転可能な回動部と、この回動部で上方へ回転させることにより前記上方構造物と係合してこれを支持する支持部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記支持部は、ねじを使用して前記上方構造物と締結せしめられることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記排紙トレイは、用紙排出方向下流端の箇所であって、前記支持部に対応する箇所に、用紙排出面に対して収納/展開両様の姿勢をとり得る、排出した用紙の前記用紙排出空間からの落下を防止するエンドフェンスを備え、前記回動部で上方へ回転させることにより、展開姿勢にあるこのエンドフェンスが前記上方構造物と係合することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記上方構造物は、前記排紙トレイの前記支持部と係合する箇所に緩衝部材を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記上方構造物が、その内部で移動自在な移動体を備えたスキャナーユニットであり、前記支持部は、前記スキャナーユニットのフレームとともに移動体にも係合し、スキャナーユニットの下方からの支持と、移動体の移動の阻止とを行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−266724(P2010−266724A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118476(P2009−118476)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】