説明

画像形成装置

【課題】ミスト拭取部材によってスケールを痛めることなくロータリー型エンコーダスケールのインクミストミスト付着による読取誤動作を防止する。
【解決手段】用紙送り機構に連動して回転する回転軸に取り付けられたロータリー型エンコーダスケールと、前記ロータリー型エンコーダスケールを読み取ることにより、前記回転軸の回転量を検出し、前記用紙送り位置を算出する読み取り演算部とを有する画像形成装置であって、装置内にインクミストの発生が予測され、ロータリー型エンコーダスケールを回転し、ロータリー型エンコーダスケールにインクミストの付着が予測された場合に、ロータリー型エンコーダスケールを回転し、ロータリー型エンコーダスケールに付着したインクミストを遠心力により飛散させて除去し、または薄膜状に変形させて無害化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙送りの位置を検出するロータリー型エンコーダスケールを有する画像形成装置に関し、詳しくはインクミストの付着によるロータリー型エンコーダスケールの誤読み取りを防止する対策を施した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、画像形成用のプリントヘッドから、インクの液滴を吐出し、記録紙などにインクを塗布することで画像形成を行う。
また、インクジェット方式の画像形成装置は、主走査方向と副走査方向にそれぞれエンコーダスケールを有し、またそれぞれにエンコーダセンサを配置することで、画像形成における主走査制御、副走査制御、さらには用紙の送り制御を行うようになっている。
さらに、インクジェット方式の画像形成装置は、画像形成用のプリントヘッドから、インクなどの液滴を吐出した際、液滴よりもはるかに微細なインクミストを同時に発生することが知られている。
【0003】
なお、ここで、液滴とミストについて以下に説明する。
まず、液滴とは、画像形成に有効なインクであると同時に装置により制御可能なインクである。ことを指している。
また、ミストとは、画像形成に無効なインクである。と同時に、装置により制御不可能なインクであることを指している。
また、液滴とは、画像形成用プリントヘッドより、意図的に生成されるインクである。が、ミストとは、画像形成用プリントヘッドまたはその他の装置により、意図せずに生成される不要なインクである。と考えられる。
しかし、上記のようなインクミストが画像形成装置の内部、特に主走査/副走査の制御を司るエンコーダスケール部やエンコーダセンサ部に直接付着または固着し、エンコーダの読取誤動作を引き起こす問題があった。
そこで従来は、上記問題を解決するために、ロータリー型エンコーダスケールの表面または表裏面に接触するミスト拭取部材を取り付けた構成を有する画像形成装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術では、直接ロータリー型エンコーダスケールに接触することにより、ミスト拭取部材自体がスケールを痛め、エンコーダ読取誤動作を引き起こすという問題があった。
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、ロータリー型エンコーダスケールに直接接触することなく、インクミストを除去または無害化することができ、ロータリー型エンコーダスケールの誤読み取りを防止することができることにより、ミスト拭取部材によってスケールを痛めることなく、読取誤動作を防止できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため請求項1の本発明は、用紙送り機構に連動して回転する回転軸に取り付けられたロータリー型エンコーダスケールと、前記ロータリー型エンコーダスケールを読み取ることにより、前記回転軸の回転量を検出し、前記用紙送り位置を算出する読み取り演算部とを有する画像形成装置であって、装置内のインクミストの発生を検知するインクミスト検知手段と、前記インクミスト検知手段によってインクミストの発生が検知された場合に、前記ロータリー型エンコーダスケールを回転し、前記ロータリー型エンコーダスケールに付着したインクミストを遠心力により飛散させて除去し、または変形させて無害化する制御手段とを有することを特徴とする。
また本発明は、上記請求項1に加えて、前記ロータリー型エンコーダスケールに付着したインクミストにインク溶解剤を供給する供給手段を有し、前記供給手段によるインク溶解剤の供給後、前記制御手段による動作を実行することを特徴とする。
また本発明は、上記請求項1に加えて、前記制御手段による動作によって変位したインクミストがロータリー型エンコーダスケールに再度付着するのを防止するインクミスト吸着手段をロータリー型エンコーダスケールに設けたことを特徴とする。
本発明において「付着」とは液化状態での付着だけでなく固化状態での付着をも含むものとする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ロータリー型エンコーダスケールに直接接触することなく、インクミストを除去または無害化することができ、ロータリー型エンコーダスケールの誤読み取りを防止することができる。また、ミスト拭取部材によってスケールを痛めることなく、読取誤動作を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタのメカ機構の構成を示す側面図である。
【図2】図1に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールを示す断面図である。
【図3】図2に示すロータリー型エンコーダスケールのスケール部を示す正面図である。
【図4】図3に示すスケール部に、インクミストが付着した状態を示す正面図である。
【図5】図1に示すインクジェットプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】図2に示すロータリー型エンコーダスケールにインクミストが付着し、遠心力で変形した状態を示す断面図である。
【図7】図1に示す実施の形態において、透過型エンコーダセンサの発光した光へのインクミストの影響を示す断面図である。
【図8】図2に示すロータリー型エンコーダスケール上にインクミスト吸着用の吸着部を設けた例を示す断面図である。
【図9】図2に示すロータリー型エンコーダスケールの内径部にインクミストが付着し、遠心力で変形した状態を示す断面図である。
【図10】図1に示す実施の形態におけるインクミストの付着と固着の関係を説明する説明図である。
【図11】図1に示す実施の形態において、吸着部を有するロータリー型エンコーダスケールと、固着インクミストの除去メンテナンス開口部とを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図12】図1に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図13】図1に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図14】図1に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図15】図1に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図16】図1に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図17】図1に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのセンサ信号波形例を示す説明図である。
【図18】図21に示すセンサ信号波形を用いた判定動作を示すタイミングチャートである。
【図19】本発明の他の実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの一例を示す側面斜視図である。
【図20】本発明の他の実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの他の例を示す斜視図である。
【図21】図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の例を示す斜視図である。
【図22】図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの応用例を示す斜視図である。
【図23】19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの他の応用例を示す斜視図である。
【図24】図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の応用例を示す斜視図である。
【図25】図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の応用例を示す斜視図である。
【図26】図21に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の例を示す斜視図である。
【図27】図19に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図28】図19に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図29】図19に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図30】図19に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【図31】図19に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
本実施の形態は、PC等の上位装置とプリンタを接続したプリンタシステムであって、上位装置側に搭載されたプログラムにより、本発明の特徴となる処理動作を実行するものである。ただし、以下に説明する構成及び動作は本発明を説明するための具体例であって、本発明を限定するものではないものとする。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタのメカ機構の構成を示す側面図である。
まず、図1に沿って本例のメカ機構の構成を説明する。
インクジェットヘッドキャリッジ軸1は、インクジェットヘッドキャリッジ3を支持する軸棒である。キャリッジ3は同軸1上をスライドして移動する。
インクジェットヘッドキャリッジ3は、インクジェットヘッド8を搭載した箱型ユニットである。
インクジェットヘッドノズル面7は、インクジェットヘッド8のうち、実際にインクを吐出するノズルが配列されている面である。
インクジェットヘッド8は、インクを吐出するノズルが搭載されている画像形成用のヘッドである。
【0010】
搬送ベルト軸兼ロータリー型エンコーダスケール軸70は、搬送ベルトとロータリー型エンコーダスケールへ動力を伝えるための動力軸である。副走査方向への動力軸でもある。
搬送ベルト21は、画像形成材である。用紙を載せて副走査方向へ搬送するベルトである。
搬送ベルトローラA27は、搬送ベルトを回転させるための、動力系ベルトローラであり、搬送ベルトローラB28は、搬送ベルトを回転させるために、支えているベルトローラである。
搬送制御モータ31は、副走査制御モータであり、画像形成材(用紙)の搬送方向(副走査方向)の制御を行う動力系のモータであり、モータベルト32は、モータ31の動力を駆動用プーリー33へ伝えるための動力伝達ベルトである。
駆動用プーリー33は、モータ31の動力を搬送ベルトローラA27へ伝えるための駆動用プーリーである。
ロータリー型エンコーダスケール34は、副走査方向(搬送方向)の回転状態をセンサで確認するための円盤形状のスケールである。
主走査エンコーダスケール42は、主走査方向(キャリッジ走査方向)の位置状態をセンサで確認するためのスケールである。
主走査エンコーダセンサ43は、主走査方向(キャリッジ走査方向)のスケールをカウントするためのセンサである。
副走査エンコーダセンサ71は、副走査方向(搬送方向)のスケールをカウントするためのセンサである。
【0011】
以上のような構成では、ロータリー型エンコーダスケール軸70の駆動により、用紙の送り(副走査方向)機構が駆動し、これに連動してロ−タリー型エンコーダスケール34が回転するので、その回転量を副走査エンコーダセンサ71で測定することにより、送りの位置を算出する構成となっている。
なお、図1に示す例では、主走査のエンコーダスケール42およびエンコーダセンサ43を有し、主走査方向のキャリッジの位置検出を行なっているが、本実施の形態における技術的な特徴となる部分は、副走査方向(送り制御用)のロ−タリー型エンコーダスケール34であり、以下の説明では、このロ−タリー型エンコーダスケール34のインクミスト対策について、詳細な説明を行なう。
また、本実施の形態における技術的な特徴であるロ−タリー型エンコーダスケールを回転させてインクミストを除去する動作の際には、ロ−タリー型エンコーダスケールの回転に合わせて、用紙の送り機構も動作することになるが、実際の用紙送りは図示しない紙引き込み用のクラッチ機構を断にすることで、紙は静止した状態となり、送り機構だけが空回りするような動作となる。
【0012】
図2は、図1に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールを示す断面図である。
エンコーダスケール34は、透明な樹脂にて構成されている。図2の外周に黒色で示している環状部分は、エンコーダスケールのスケール部341である。スケール部341の一部を拡大すると図3に示すような白黒のストライプパターンになっている。
【0013】
図3は、図2に示すロータリー型エンコーダスケールのスケール部を示す正面図である。
図示のような透過型光学式エンコーダのスケール部である場合、白の部分は光を透過し、黒の部分は光を遮光する。透過型光学式エンコーダセンサでは、光の透過と遮光をHレベル/Lレベルの信号に変換し、信号の位相変化を用いて、ロータリー型エンコーダスケールの回転状況を把握して、画像形成の紙送り制御に必要な副走査方向の位置や速度を得ている。
【0014】
図4は、図3に示すスケール部に、インクミストが付着した状態を示す正面図である。
図3に示す白黒のパターンに対して、白い部分に黒丸があり、これがインクミスト342を表している。透過型光学式エンコーダセンサでは、光の透過と遮光をHレベル/Lレベルの信号に変換しているため、透過されるべき部分が遮光されるとHレベル/Lレベルの信号変換が正しく行われなくなる。この結果、インクミストにより副走査方向制御に異常が生じることになる。
【0015】
図5は、図1に示すインクジェットプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。
CPU310は、中央演算処理装置であり、システム全体の制御をつかさどるものである。ASIC320は、インクジェットプリンタ固有の制御を行うためのLSIである。
メモリ330は、インクジェットプリンタ固有の制御を行うためのプログラムが可能されている。
インクジェットヘッド吐出回路350は、インクジェットヘッドからインクを吐出するための回路である。
主走査エンコーダセンサ43は、主走査方向のエンコーダスケールを検出するためのセンサである。
副走査エンコーダセンサ71は、副走査方向のエンコーダスケールを検出するためのセンサである。
主走査制御モータ370は、主走査方向の動作制御に使用する制御モータである。
副走査制御モータ390は、副走査方向の動作制御に使用する制御モータである。
表示部付操作部340は、インクジェットプリンタの機能制御および機能設定をユーザ操作するための入力装置である。また表示部は、機能制御/機能設定に必要な表示を行う。
後述する図12〜図17のフローチャートは、メモリ330にその制御プログラムが可能されており、同プログラムに基づき、上記図5に示す制御系によって制御が実行されるものである。
【0016】
図6は、図2に示すロータリー型エンコーダスケールにインクミストが付着し、遠心力で変形した状態を示す断面図であり、図6(A)は、ロータリー型エンコーダ34とインクミスト342が分離した状態を示し、図6(B)は、ロータリー型エンコーダ34にインクミスト342が付着した状態を示し、図6(C)は、ロータリー型エンコーダスケールから付着インクミストが遠心力で分離除去された状態を示し、図6(D)は、ロータリー型エンコーダスケール上の付着インクミストが遠心力で薄く延ばされた状態を示している。
本実施の形態においては、スケール部341に付着したインクミストは遠心力で完全に飛散し、スケール部341より完全に分離除去される状態が最も好ましい除去状態である。しかし、完全に除去できずとも、例えば液滴の一部が飛散したりして、インクミストを薄く延ばすことができれば、除去に近い効果を得る(すなわち、スケールの読み取りにとって無害な状態とする)ことが可能である。そこで、本発明ではこの状態を、無害化というものとする。なお無害化の一例としては、Hレベル/Lレベルの信号変換が行うことができる閾値以上の受光量が透過される様に、インクミストを薄く延ばすものが挙げられる。
また、本実施の形態の説明においては、インクミストを薄く延ばす事で除去に近い効果を得ることが可能なことは明白であるため、除去することを目的とする全ての説明において、除去という言葉には、インクミストを薄く延ばすことによって目的を達成することが含まれているものとする。
【0017】
図7は、透過型エンコーダセンサの発光した光へのインクミストの影響を示す断面図である。
ここで、インクミストがロータリー型エンコーダのスケール部に付着することで、なぜ透過型光学式エンコーダセンサの読取誤動作が起こるのかを図7を用いて説明する。
図中の左側がインクミストが付着した状態、右側が付着後に除去処理によりインクミストが薄く延ばされた状態である。
透過型光学式エンコーダセンサは発光部から出た光を受光部が受け取る事で、発光部から受光部の間に物体が存在するか、しないかを判断している。本来、光が完全に透過可能なエンコーダスケール部にインクミストが付着すると受光部に到達する光を遮光してしまい、センサは読取誤動作を起こする。ただし、この遮光は、インクミストの厚みとも関係性があり、インクミストが十分に薄く延ばされた場合には、遮光される光量が少なくて済み、センサ受光部は正常な読取動作を行う事が可能となる。
【0018】
図8は、図2に示すロータリー型エンコーダスケール上にインクミスト吸着用の吸着部を設けた例を示す断面図である。
図示のように、スケール部341の内周部に、吸着部343が環状に設けられている。
この吸着部343は、インクミストを吸着することを目的としており、好適な構造体としては、吸湿性/吸水性のある繊維、スポンジ、高吸水性ポリマー等が挙げられる。
また、その構造体としての繊維に採用される材質としては、以下6種類が好適な材質として挙げられる。次に、吸湿性/吸水性の一般的な特性について示す。
・ 綿 吸湿性/吸水性=大
・ レーヨン 吸湿性/吸水性=大
・ ナイロン 吸湿性/吸水性=小
・ ポリエステル 吸湿性/吸水性=小
・ アクリル 吸湿性/吸水性=小
・ ポリウレタン 吸湿性/吸水性=小
【0019】
なお、スポンジとは多孔質体をさす。構造体してのスポンジに採用される好適な材質としては、上記の繊維材質のうち、綿以外の、多孔質体への加工が容易である化学物質系(レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等)が考えられる。
構造体としての高吸水性ポリマー(SAP)として、好適な材質としては、ポリアクリル酸系ポリマーが挙げられ、より代表的な例としては紙おむつの吸水材として用いられているポリアクリル酸ナトリウム系が挙げられる。
【0020】
上記のように、本例においては、ロータリー型エンコーダスケ―ルを回転させることで生み出される遠心力を用いて、付着したインクミストを除去することを想定している。
ところで、付着したインクミストを遠心力により除去するためには、インクミストとエンコーダスケールの材質間の摩擦係数が低い事が求められる。インクミストについては、画像形成に最適な発色を維持するため、摩擦係数を下げる目的で組成を変更することは難しい。そのため、エンコーダスケールの材質に、低摩擦係数および高撥水性能が求められるが、これは従来からエンコーダスケールに一般的に採用されているPET(ポリエチレンテレフタレート)材により実現可能な特性であると考えられる。また、PET材は、透明度が高く、全光線透過率が90%のガラス材と同等であるため、インクミストが完全に除去できず、薄く延ばした状態でも十分に除去に近い透過度を確保するという前提条件を満足するために必要な特性を有する材質であると考えられる。
遠心力を利用した場合、インクは内径から外径に向かって移動することになる。スリット上面に付着したインクがスリット外に除去されることは意図した処理である。しかし、スリットよりも内径に付着したインクミストがスリット上に移動するのは避けたいため、スリット部よりも内径にある付着インクミストがスリット部に進入するのを防ぐため、スリット部との境界にあたる内径部分にインクミスト吸着部を設けることで、意図せずスリットにインクミストが再付着することを防止できるようにしている。なお、ここで言うスリットは、ロータリーエンコーダの外周部にあるスケール部に存在するスケールパターンの意である。
【0021】
図9(A)〜(F)は、図8に示す内径部にインクミスト吸着部を設けたロータリー型エンコーダスケールの内径部にインクミストが付着し、遠心力で変位した状態を示す断面図である。上述のように、本例のロータリー型エンコーダスケールは、外周側のスケール部にスリット(図示せず)を有する構造となっている。
【0022】
スケール部341の境界から内径部上に吸着部343を設けることの効果について図9を用いて説明する。
図9(A)(B)は、本実施の形態が理想とするインクミスト342の除去現象を示している。黒半円が付着インクミストである。スケール部341に付着したインクミスト342は、ロータリー型エンコーダスケールの回転に産み出される遠心力により、スリット外へ除去される。
図7(C)(D)は、本実施の形態により想定されるインクミストの除去動作の副作用を示す図である。内径部にはインクミストの付着があり、スリット部245にはインクミストの付着は無いが、ロータリー型エンコーダスケールの回転によって生じる遠心力により、内径上からスリット上にインクミストが移動してしまい、除去処理によってスケール部341にインクミストを逆に付着させてしまうことになる。
図9(E)(F)は、図9(C)(D)にある副作用を解消するための構成である。スケール部341の境界から内径部上に吸着部343を配置することが特徴となっている。この吸着部343を配することにより、ロータリー型エンコーダスケールの回転によって生じる遠心力により、内径上からスケール部341上にインクミストが移動することを防ぎ、スケール部341上のインクミスト342を除去することが可能となっている。
なお、図9の例では、吸着部343を片面上面のみに形成したものを説明したが、インクミストは両面に付着することが想定されるため、両面に吸着部を構成することがより好ましい構成として挙げられる。
【0023】
図10は、図1に示す実施の形態におけるインクミストの付着と固着の関係を説明する説明図である。
以下、本実施の形態において想定するインクミストの狭義の付着と固着の説明を行う。
本実施の形態では、ロータリー型エンコーダスケールに撥水性の高いものを用いていれば、付着(=液化状態)のインクミストならば完全に除去可能であると考えられる。それに対して、インクミストが乾燥し、固着(=固化状態)に変化したものについては完全除去が困難であると考えられる。
上記特許文献1の従来技術においては、ロータリー型エンコーダスケールについたインクミストを拭き取るとしているが、既にインクミストが固着した状態で同動作を行うとロータリー型エンコーダスケールそのものを痛める可能性がある。ロータリー型エンコーダスケールのうち特にスケール部を損傷した場合、センサによる正常な読取制御を実施することが不可能となり、ロータリー型エンコーダスケールの修理交換が必要となる。
このような拭取処理によるロータリー型エンコーダスケールの損傷を防ぐためには、まずインクミストの固着状態と付着状態に戻す必要がある。そこで本実施の形態においては、インクミストを固着状態から付着状態に戻すため、インク溶解剤の吹き付けを使用することとした。インクを付着状態に戻す事ができれば、上述した本例におけるインクミストの除去方法を再度利用することが可能となる。
【0024】
図11(A)は、図1に示す実施の形態において、吸着部を有するロータリー型エンコーダスケールと、固着インクミストの除去メンテナンス(インク溶解剤の吹き付け)用に設けた開口部とを重ね合わせて配置した状態を示す断面図であり、図11(B)〜図11(D)は、除去メンテナンス時の動作を示している。
図示のように、除去メンテナンス用の開口部346は、ロータリー型エンコーダスケール34の外周に沿った円弧形状に形成されており、スケール部341とその外周側を露出させるような形状を有し、吸着部343を露出させない形状に形成されている。
除去メンテナンス開口部346に吸着部343を露出させない構造には次のような意味がある。
除去メンテナンス開口部346を開口させ、固着インクミストを除去する際には、インクミスト溶解剤をロータリー型エンコーダスケール34のスケール部341に吹付する。
その際、固着したインクミストを付着状態(液化状態)に戻したい部分は、スケール部341のみである。吸着部343には、スケール部341へインクミストを付着させないよう吸着したインクミストが固着状態となっていることが想定させる。しかし、吸着部343にまでインクミスト溶解剤を吹付した場合、吸着部343から液化状態となったインクが垂れるおそれがあるため、吸着部343にはインクミスト溶解剤がかからないよう、開口部346を設ける必要があるためである。なお、本例において、メンテナンス開口部346を通してインク溶解剤を吹き付ける構成が本発明におけるインク溶解剤供給手段の一例である。
また、上図11は、開口部の構造以外に、インクミスト溶解剤を吹付する前に行うべき処理についても説明が可能である。
すなわち、図11は、4つの状態遷移となっているが、まずはじめの状態図11(A)は、固着インクミストがどこにあるのかわからない状態を指している。次の図11(B)では、ロータリー型エンコーダスケール部341の左斜め下に固着インクミストが検出された状態を指している。固着インクは、ロータリー型エンコーダスケールの最外周部に黒点として図示される。
次の図11(C)では、ロータリー型エンコーダスケールが8分割されている。これは実際に8分割されている訳ではなく、ソフト制御しやすくするために8分割したものである。2つめの状態遷移で検出された黒点は、左下の45°のブロック内に存在している。
実際に除去メンテナンス開口部346を用いて、インクミスト溶解剤を使用する場合、全体からみて微細なミストの黒点部分のみを狙って溶解剤を使用するのは不可能である。よって、図11では開口部346もロータリー型エンコーダスケールの1/8サイズに合わせたサイズとなっている。3つめの状態遷移図(C)では、黒点が存在する全ブロックが開口部346とはずれた位置となっているため、4つめの図11(D)では、ロータリー型エンコーダスケールを回転させ、黒点が存在する全ブロックを開口部に重ねる位置に移動させている。
【0025】
次に本実施の形態における動作について説明する。
図12は、図1に示す実施の形態における印刷終了後の付着インクミストの除去制御の処理動作を示すフローチャートである。
画像形成装置は、印刷を終了した時点で、印刷時に消費したインク量に比例したインクミストが画像形成装置本体内部に浮遊する状態となっている。
画像形成装置本体内部のインクミスト状態を予測し(S1201)、発生量過多といえる状態であると判断した場合(S1202)、浮遊するインクミストの量が減少し、本体装置内部に付着状態となるまでの待ち時間を置いたのちに(S1203)、インクミストの除去制御1を実行する(S1204)。
ここで、インクミスト状態の予測と発生量過多と判断する条件について、より詳しく説明する。
まず、前段の処理でインク消費量から、インクミストの発生量(予測値)を算出できる。
済であると考えることができる。
これに対して、ロータリー型エンコーダのスケール部に付着するインクミスト量(予測値)が算出される。
なお、ロータリー型エンコーダのスケール部にインクミストが付着したとしても、常に除去を試みなければならない訳ではなく、除去が必要なロータリー型エンコーダのスリット部に付着するインクミスト量(閾値)を画像形成装置は予め規定値として保有している。
そして、除去を実施するか否かは
ロータリー型エンコーダのスケール部に付着するインクミスト量(予測値) ≧ 除去が必要なロータリー型エンコーダのスケール部に付着するインクミスト量(閾値)
が成り立つか否かで判断する。
上記(予測値)が(閾値)を超える場合は、ロータリー型エンコーダのスケール部に付着するインクミスト量(予測値) から逆算できるインクミストの発生量(予測値)も発生量過多=S1202のYESの条件となり、インクミストの回収制御1の実行へ進む。また、(予測値)が(閾値)を超えない場合は、発生量過多でないNOの判断となる。
そして、付着インクミストの除去制御1を実行した後、エンコーダの読取テストを実施して、インクミストの除去失敗による読取エラーが無い事を確認する。
そして、読取エラーが無い場合には、特に警告表示もなく、印刷時の付着インクミスト除去制御を完了させる。
また、読取エラーがある場合には、固着インクミストがあることを表す警告表示をし、印刷時の付着インクミスト除去制御を完了させます。固着インクミストありの警告表示について、ユーザにそのままの用語で警告する必要はなく、表示部付制御部では、よりわかりやすい表現にて警告表示を行う(S1207)。
【0026】
図13は、図1に示す実施の形態におけるメンテナンス時の付着インクミストの除去制御の処理動作を示すフローチャートである。
画像形成装置は、インクジェットヘッドの状態を画像形成に好適な状態を維持するため、メンテナンス動作を行う。同メンテナンスには、インクジェットヘッドからインクを吐出する動作が含まれるものがある。メンテナンス中にインクジェットからインクを吐出する動作の代表例としては、主にヘッドのノズルと言われるインク吐出口にインクが固着して、目詰まりが発生を予防したり解消したりする動作が挙げられる。
メンテナンス時にインクジェットヘッドからインクを吐出すると、
「画像形成物=紙などにインクを定着させないことから、インクがインクのまま存在し、インクミストが生じやすい」
「インクジェットヘッドが常に移動している画像形成中と比較して、インクジェットヘッド位置を固定した状態でインクが消費されるため、特定の空間にインクミストが集中して発生する」
というような状態が生じやすくなる。
よって、メンテナンス開始後にインクジェットヘッドからインク吐出を伴うメンテナンスかをすぐに判定し(S1301)、YESならば付着インクミストの抑制制御1を実行する(S1302)。
メンテナンス終了後と同時に付着インクミストの抑制制御1は終了となる(S1303)が、以降の処理は、図12に記載の処理と同じく画像形成装置本体内部のインクミスト状態が、発生量過多であるか否かを基準とした処理となる(S1305〜S1309)。
【0027】
図14は、図1に示す実施の形態における付着インクミストの除去制御1の処理動作を示すフローチャートである。
まず、本例におけるロータリー型エンコーダスケールは、インクミストに対して十分な撥水性を持っているものとする。そして、付着インクミストの除去制御1では、ロータリー型エンコーダスケールを回転させ、スケール上に付着したインクミストを遠心力を用いてスケール外に飛ばして除去を実施する。
ところで、スケールに付着したインクミストを遠心力だけで飛散させるには、ロータリー型エンコーダスケールとインクミストとの間に生じる摩擦係数から、必要な遠心力を生み出すための回転速度と、全てのスケール部のインクミストがスケール外に移動するまでの回転時間とを事前に算出し、除去制御時に同回転速度と回転時間を満足したか否かを判定する必要がある。この判定処理は、図14のS1402における「・・・必要な分回転したか?」の判断処理に相当する。
上記条件を満足した場合には、付着インクミストの除去が完了したと考えることができるため、次のステップS1403では、ロータリー型エンコーダスケールの回転を停止し、付着インクミストの除去制御1が完了したものとして次の処理へ進むこととなる。
なお、もともとロータリー型エンコーダスケールは通常の画像形成装置が行う印刷動作においても回転しているため、印刷時にもロータリー型エンコーダスケール上のインクミストに遠心力は働いている。しかし、前述するように遠心力だけでインクミストを飛ばすには一定以上の回転速度と回転時間が必要であるが、印刷動作中に発生する回転速度/回転時間では十分な遠心力を発生させることができない。特に、ロータリー型エンコーダスケールが回転している状態は、印刷時には紙を搬送する速度と一致しており、円滑に紙搬送を行うために必要な回転速度は、インクミストの除去を行うために必要な回転速度よりも低速であると考えられる。よって、図14に示すようにインクミスト除去専用の制御で、通常の画像形成装置が行う印刷動作では発生しない高速回転を行うことが、本実施の形態における重要な点である。
【0028】
図15は、図1に示す実施の形態におけるインクミストの抑制制御1の処理動作を示すフローチャートである。
まず、本例におけるロータリー型エンコーダスケールは、インクミストに対して十分な撥水性を持っているものとする。
また、図15のフローチャートでは、図14とは異なり、ロータリー型エンコーダスケールを回転させ、スケール上に付着したインクミストを遠心力を用いてスケール外に飛ばして除去を実施することは想定していない。
すなわち、このフローチャートでロータリー型エンコーダスケールを回転させている理由は、「インクミストは、動作しているものより静止しているものに付着しやすい」、また「本体内に動作中の駆動部がなく気流が発生していない領域のほうが、浮遊しているインクミストが定着しやすいと考えられるため、ロータリー型エンコーダスケールを回転させることでスケース周囲に僅かながらの気流を発生させ、スケール以外にインクミストを付着させる」というメカニズムを利用して、ロータリー型エンコーダスケールへのインクミスト付着を抑制するためである。
なお、スケールにインクミストの付着を抑制するだけならば、除去制御で発生するような大きな遠心力を生み出す必要はなく、除去制御よりも低速で付着を抑制する効果だけを生み出す速度で、ロータリー型エンコーダスケールを回転させればよい(S1501〜3)。
また、インク吐出を伴うメンテナンスが終了した場合(S1502)、付着を抑制する制御の必要性がなくなるため、ロータリー型エンコーダスケールの回転を停止し(S1503)、付着インクミストの抑制制御1が完了したものとして次の処理へ進むこととなる。
【0029】
図16は、図1に示す実施の形態における固着インクミストの除去制御の処理動作を示す。
この処理は、図12、図13にある警告表示=固着インクミストありの表示(S1207、S1309)を受け、同状態を解消するための処理となっている。
前述した警告表示状態においては、ロータリー型エンコーダスケール上にセンサの読取誤動作を引き起こすような固着インクミストが発生している。インクミストは固着してしまうと、付着状態を目標とした除去制御では問題の解消ができない。
このため、図16のフローチャートではユーザ操作により、インクミスト除去モードとして固着インクミストの除去を実行する(S1601)。
このインクミスト除去モードが実行されると、モード内処理としてインクミスト固着部を特定するための検出処理を実行する(S1602)。
この検出処理により、検出された固着部は、制御のために等分割されたロータリー型エンコーダスケールのブロック単位で除去処理を行うことになる。
仮に図11に示したように、ロータリー型エンコーダスケールを制御上8等分割(8ブロック化)し、そのうち1ブロックに固着インクミストが存在した場合には、除去回数は1回処理、2ブロックに固着インクミストが存在した場合には、除去回数は2回処理となる。これに対して1ブロックあたりの処理にかかる処理時間を計算し、表示部付操作部にその内容をユーザに向けて表示する(S1603)。
このタイミングでユーザ確認表示を実施し、プログラムが判定した除去回数、除去時間での実行を許可するか否かをユーザに確認する(S1604)。ユーザが許可の応答をしたところで実際の除去処理に移行する(S1605)。
まず、除去処理を行うロータリー型エンコーダスケールのブロックは確定しているため、エンコーダを回転して除去メンテナンス開口部346へインクミスト固着部を移動する(S1606)。
除去メンテナンス部のカバーを開口する。カバーの開口については自動/手動のどちらの制御としてもかまわない。
開口後に固着インクミストを付着(液化状態)へと戻すためにインク溶解剤の吹付処理を実施する。
同吹付処理が完了した後、ユーザに表示部付操作部から吹付OKの確認入力を実行させる(S1607)。
同処理の後、除去メンテナンス部のカバーを閉口する。カバーの開口については自動/手動のどちらの制御としてもかまわない(S1607)。
表示部付操作部では、固着インクミストを付着(液化状態)へと戻すために必要な時間のカウントダウンを開始する。残時間が0となったところで、付着インクミストの除去制御1へと移行する(S1613)。
付着インクミストの除去制御1を実行した後、エンコーダの読取テストを実施して、インクミストの除去失敗による読取エラーが無い事を確認する(S1614)。
読取エラーが無い場合には、固着インクミストの除去が完了した旨を表示し、処理を完了する(S1615)。
読取エラーがある場合には、固着インクミストの除去ができなかった旨を表示し、処理を完了する(S1616)。
【0030】
図17は、図1に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのセンサ信号波形例を示す説明図であり、上段がエンコーダスケール、下段はエンコーダスケールを読んだ際にエンコーダセンサから出力される読取信号波形を示している。
読取信号は一般的にエンコーダと同期した1つ目の信号とそれに対して90度位相がずれた2つ目の信号により表現される。図17では、光を通す透過部が白く記載され、信号レベルはL、光を通さない遮光部が黒く記載され、信号レベルはHとなっている。
図17(A)は、エンコーダスケール部に異物が存在していませんが、図17(B)は丸い黒点が存在している。これがインクミストであり、光を遮光するとした場合、読取信号は、図17(B)の下段に示したような波形となる。この波形では、読取信号の一部が変化せず、黒点の影響で信号レベルが一定周期で変化せず信号レベルHが連続している部分が存在している。
インクミストの付着や固着の検知は、インクミストがある部分(=黒点)のセンサ読取信号が、上図のように一定周期で変化しない事を用い、『一定周期で変化しない=インクミストがある』として検知を行う。
センサ読取信号の変化を一定にするには、ロータリー型エンコーダスケールを一定速度(=等速度)で回転させ、エンコーダセンサで連続的に信号読取を行う。
【0031】
図18は、図17に示すセンサ信号波形を用いた判定動作を示すタイミングチャートであり、ロータリー型エンコーダスケールのセンサ読取信号波形の正常時/異常時(=エラー検出時)に対する動作を示している。
エンコーダスケールにインクミスト(=黒点)がある場合には、読取信号波形に図17で説明したような信号異常が図18においても発生する。インクミスト(=黒点)の存在する場所がロータリー型エンコーダスケールを8等分割したうちのブロック1の一部にある場合、ブロック1に対してエンコーダセンサ読取をかけた際に読取エラーが発生する。同エラーが発生したということは、同ブロック内のいずれかにインクミストが付着/固着している可能性があるため、このインクミストをあとで除去するため、ブロック1で読取信号エラーが発生したことを、ブロック1読取信号エラーログに×(エラー)が発生したことを記録する。図12、図13、図16にある「エンコーダの読取エラー確認」は同制御による読取確認を利用する。
なお、図16の<検出処理>インクミスト固着部判定は、上記の読取信号エラーログを利用して判定を実施する。
また、図18において、左側は、インクミストの付着/固着状態を表しているが、右側は、インクミストが除去され、状態が変化したことを表している。除去処理後に再度エンコーダセンサを用いて読取処理を実施し、同読取処理で読取エラーが発生しない事を確認した後、読取エラーログを○(正常)に更新し、次処理として必要な処理を行う。インクミストの除去が完了している場合は、図18にあるようにロータリー型エンコーダスケールのブロック1からインクミスト(=黒点)が消滅することになる。
以上が本発明の実施の形態によるロータリー型エンコーダスケールのインクミスト除去に関する説明である。
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
上記の実施の形態は、ロータリー型エンコーダスケールに付着したインクミストの除去に関するものであったが、以下の実施の形態は、装置内に浮遊して充満したインクミストをロータリー型エンコーダスケールにファンを設けて回収し、インクミストの付着を抑制するようにしたものである。
この種の従来技術としては、たとえば特開2006−255995号公報に開示されるものがあげられる。この公報には、エンコーダスケールへのインクミストの付着を防止する目的で、エンコーダスケールに気流形成用のファンと、インクミスト回収用の吸着部材を設置する構成が開示されている(段落0018、0046)。
しかし、画像形成装置本体内部およびエンコーダスケールにインクミストが付着するという問題の全てが解消できている訳ではない。
これに対して本実施の形態では、気流形成用のファンを吸着部材とするのではなく、ファンはあくまで気流形成機能のみを有するものとし、インクミスト回収用の吸着部材は、ファンの作り出す気流を全て取り込み可能な形状および配置とすることで、従来技術よりも高確率にミスト回収を可能とするものである。
したがって、インクミスト回収機構としては、本実施の形態で説明する構造のほうがより優れており、より効率的にインクミストを回収し、インクミスト付着により引き起こされる問題を解決できる。
以下具体的な構成及び動作を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施の形態を適用する画像形成装置の基本構成は上述した実施の形態図1〜図5と共通であるので、重複する説明は省略し、共通する要素には同一符号を用いて、本実施の形態で特徴となる部分を中心に説明する。
【0033】
図19は、本実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの一例を示す斜視図である。
本例は、図2に示すロータリー型エンコーダスケール34上に気流形成上のファン400を追加したものである。このファン400は、エンコーダスケールの中央から放射状に伸びる三角形のフィンを有して構成されるものである。このファン400には順方向/逆方向があり、ファン400の回転により生み出される気流も順方向/逆方向が存在する。
図19では、ファン400を向かって反時計方向に回転した場合、気流はファンに直進して進み、エンコーダスケールにぶつかった後に放射上に拡散して進む。
また、ファン400を向かって時計方向に回転した場合、気流はファンの円周周囲から取り込み、回転軸付近に進んだ気流は、回転軸に沿った方向へ方向転換して進む。
なお、図19では、実線の矢印がファンの回転方向、破線の矢印が気流の進行方向を示している。
【0034】
図20は、本実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの他の例を示す斜視図である。
これは、表面にファン400を形成し、内径にフィルタ410を形成したロータリー型エンコーダスケールの例である。図19に示すエンコーダスケールに対して、内径を気流が通過可能なフィルタとしたものである。フィルタ410は、インクミスト回収を目的とした吸着部材で構成されている。
本例では、ファン400に向かって反時計方向に回転した場合、気流は図面手前から図面奥の方向に対して進む。また、時計方向に回転した場合、気流は図面奥から図面手前の方向に対して進む。
図19と図20の顕著な違いは、回転により生み出される気流の方向が異なること、フィルタの有り無しにより、インクミスト回収機能がエンコーダスケールそのものに備わっているか否かが異なること、である。
図20では、実線の矢印がファンの回転方向、破線の矢印が気流の進行方向を示している。
また、図20では、フィルタ410を斜線にて示している。
【0035】
図21は、図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに応用例を示す斜視図である。これは、表面にファン400を形成し、内径に通気口420を形成したロータリー型エンコーダスケールをファンとして構成した例である。
すなわちこれは、図11に示すエンコーダスケールに対して内径を気流が通過可能な通気口としたものである。通気口には、インクミスト回収を目的とした吸着部材であるフィルタ410は構成されていない。
なお、図21では、実線の矢印がファンの回転方向、破線の矢印が気流の進行方向を示している。
【0036】
図22は、図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールの他の応用例を示す斜視図である。これは、表面にファン400を形成し、内径にフィルタ410を形成した、気流形成用ファン500の例である。
すなわちこの例は、図20に示すロータリー型エンコーダスケールから、外周のエンコーダスケールを取り除いて気流形成用のファン500として構成したものである。
図22では、実線の矢印がファン500の回転方向、破線の矢印が気流の進行方向を示している。
また、フィルタ410を斜線にて表示している。また、気流形成に関する働きと、インクミスト回収に関する働きは、図20と同等である。
【0037】
図23は、図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の応用例を示す斜視図である。
これは、図21に示すロータリー型エンコーダスケールから外周のエンコーダスケールを取り除いた気流形成用のファン510の例である。
図23では、実線の矢印がファンの回転方向、破線の矢印が気流の進行方向を示している。また、気流形成に関する働きは、図21と同等である。
【0038】
図24は、図19に示す実施の形態におけるインクミストの吸着部材で形成された、インクミスト回収用フィルタの例を示す斜視図である。
これは、インクミスト回収を目的とした吸着部材で形成された、インクミスト回収用フィルタ520である。このフィルタ520はファンにより気流が形成される部分に配置し、インクミスト回収を可能とする。
図24では、破線の矢印が気流の進行方向を示している。また、図24では、フィルタ部を斜線にて示している。
【0039】
図25は、図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の応用例を示す斜視図である。
これは、インクミスト回収を目的として底面部を吸着部材で形成された、凹型インクミスト回収用フィルタ530の例である。
このフィルタ530は、ファンにより気流が形成される部分に配置し、インクミスト回収を可能とする。
フィルタ機能を有する部分は、底面部の斜線部のみである。円周部については、気流が拡散しないよう、通気性のあるフィルタを用いず、非通気性の物体で形成されている。
図25では、破線の矢印が気流の進行方向を示している。
【0040】
図26は、図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の応用例を示す斜視図である。これは、インクミスト回収を目的とした吸着部材で形成された、円筒型インクミスト回収用フィルタ540の例である。
このフィルタ540はファンにより気流が形成される部分に配置し、インクミスト回収を可能とするものである。なお、フィルタ機能を有する部分は、円筒の斜線部である。
また、図26では、破線の矢印が気流の進行方向を示している。
【0041】
図27は、図19に示す実施の形態におけるロータリー型エンコーダスケールのさらに他の例を示す斜視図である。これは、 内径にフィルタを形成した、ロータリー型エンコーダスケールの例を示している。
本実施の形態では、インクミスト回収用フィルタが通気性を有するものであり、気流形成用ファンが形成するインクミストを含む気流が必ずフィルタを通過するように、気流形成用ファンとインク回収用フィルタの位置と形状を実施例として採用する。また、本実施の形態による実施例は、上記従来技術のように、気流の下流にフィルタが存在しなければならないような制約もなく、フィルタが気流の上流下流のどちらであっても効果を発揮する構成となっている。
【0042】
たとえば、図19に示したロータリー型エンコーダスケールは、ファンが作り出す気流経路である図19の図面手前に図24に示すフィルタ520を配置することで、インクミスト回収装置としても効果をあげることが可能である。
さらに、図19の図面手前に図26に示すフィルタ540を結合して設置することで、インクミスト回収装置として効果をあげることもできる。
また、図20に示すロータリー型エンコーダスケールはファンが作り出す気流経路にフィルタが最初から配置されており、フィルタの追加をしなくてもインクミスト回収装置として効果をあげることが可能である。
【0043】
また、図21に示すロータリー型エンコーダスケールは、ファンが作り出す気流経路である図19の図面手前に図24にあるフィルタ520を配置することでインクミスト回収装置としても効果をあげることが可能である。
また、図19の図面手前に図17にあるフィルタを結合して配置することで、エンコーダシートのスケール側に気流漏れを生じることがなくなるため、図20と図24の組合せよりもスケールへのインクミスト付着を更に削減した状態でインクミスト回収装置としての効果をあげることが可能である。
【0044】
また、図27に示す内径にフィルタを形成したロータリー型エンコーダスケール34は、図27と平行して、図22〜図23に示すようなファンを配置することで、インクミスト回収装置としても効果をあげることが可能である。
また、図21に示すロータリー型エンコーダスケールは、ファンが作り出す気流経路にフィルタが最初から配置されており、フィルタの追加をしなくてもインクミスト回収装置として効果をあげることが可能である。
【0045】
また、図22に示すロータリー型エンコーダスケールは、ファンが作り出す気流経路である、図23の図面手前に図24にあるフィルタを配置することで、インクミスト回収装置としても効果をあげることが可能である。
また、図19の図面手前に図25にあるフィルタ530を結合して配置することで、インクミスト回収装置としての効果をあげることが可能である。
【0046】
次に本実施の形態における動作について説明する。
図28は、図19に示す実施の形態における印刷終了後のインクミスト回収制御の処理動作を示すフローチャートである。
まず、画像形成装置は、印刷を終了した時点で、印刷時に消費したインク量に比例したインクミストが画像形成装置本体内部に浮遊する状態となっている。
画像形成装置本体内部のインクミスト状態の発生量を予測し(S2801)、発生量過多といえる状態であると判断した場合(S2802)、インクミストの回収制御1を実行する(S2803)。
ここで発生量過多と判断する条件について、より詳しく説明する。
まず、前段の処理でインク消費量からインクミストの発生量(予測値)は算出する。
これに対して、インクミストの回収制御を開始すべき閾値として、インクミスト回収が必要な発生量(閾値)を画像形成装置は予め規定値として保有しているものとする。
そこで、発生量過多か否かの判定式は、
インクミストの発生量(予測値) ≧ インクミスト回収が必要な発生量(閾値)
となり、この式を満たすか否かで判定する。
(予測値)が(閾値)を超える場合は、発生量過多=YESの条件となり、インクミストの回収制御1の実行へ進む。また、(予測値)が(閾値)を超えない場合は、発生量過多でないNOの条件となる。
インクミストの回収制御1が完了した後、インクミストの回収が全て完了したものとして制御を完了させる。
【0047】
図29は、図19に示す実施の形態における、メンテナンス時のインクミスト回収制御の処理動作を示すフローチャートである。
画像形成装置は、インクジェットヘッドの状態を画像形成に好適な状態を維持するため、メンテナンス動作を行う。このメンテナンスには、インクジェットヘッドからインクを吐出する動作が含まれる。また、このメンテナンス中にインクジェットからインクを吐出する動作の代表例として、主にヘッドのノズルと言われるインク吐出口にインクが固着して、目詰まりが発生を予防したり解消したりする動作が挙げられる。
【0048】
メンテナンス時にインクジェットヘッドからインクを吐出すると、
「画像形成物=紙などにインクを定着させないことから、インクがインクのまま存在し、インクミストが生じやすい」、「インクジェットヘッドが常に移動している画像形成中と比較して、インクジェットヘッド位置を固定した状態でインクが消費されるため、特定の空間にインクミストが集中して発生する」というような状態が生じやすくなる。
よって、メンテナンス開始後にインクジェットヘッドからインク吐出を伴うメンテナンスか否かをすぐに判定し(S2901)、YESならばインクミストの回収制御2を実行する(S2902)。
メンテナンス終了後と同時にインクミスト回収制御2は終了となるが、その後には、インクミスト回収制御1を実行する(S2904)。インクミスト回収制御1がインクミスト回収制御2の後に実施される理由は、回収制御2の完了直後は、図28で説明したインクミスト状態が画像形成装置の印刷終了直後と同じであると考えられるためである。
この回収制御1を実行することで、メンテナンス時のインクミスト回収制御が全て完了する。
【0049】
図30は、図19に示す実施の形態における空気循環によるインクミスト回収制御の処理動作を示すフローチャートである。
まず、画像形成装置内部の空気量は、一定であると定義される。
インクミストは、画像形成装置内部の空気中に偏在しているものと考えられる。ただし、インクミストが空気中に偏在して存在しているとしても、画像形成装置内部の空気を循環させることができ、全ての空気についてインクミスト回収フィルタを通過させることが出来るとするならば、インクミストはフィルタで回収可能であると考えることができる。
よって、このフローチャートでは、「回収ファンを回転」(S3001)→「気流発生」(S3002)→「フィルタでミスト回収」(S3003)→「画像形成装置内部の空気循環完了」(S3005)の順で処理することが重要であると言える。
【0050】
一義的には、フィルタのインクミスト回収率が空気の透過回数1に対して100%であれば、画像形成装置内部の空気循環は一回転であればいいことになる。しかし、フィルタのインクミスト回収率は、100%未満と想定されるため、インクミスト回収率をあげるには、空気の循環回数を一巡より多くに上げる必要がある。また、空気循環のための流路構造が画像形成装置本来の構造が優先されているため、空気のよどみを生む箇所を含めて空気を一巡させるために、空気の循環回数を一巡以上にあげる必要があると考えられる。
例えば、画像形成装置本体内部の空気が2,000[ml]=ミリリットルあると仮定する。気流形成用のファンが一定の回転条件において、一回転により生み出せる気体流量が20[ml]だとする。循環のためのロスが一切無いと考えた場合、ファンを100回転させることで2,000[ml]の空気を画像形成装置本体内部で一巡させることが出来ると考えられる。
上記の基本的な計算に、上記に記載した、フィルタや空気循環上のロスを勘案し、循環完了とするファンの条件を決定する。
そして、必要な空気循環が完了した時点で(S3004)、回収ファンの回転を停止し、インクミスト回収制御1を完了する(S3005)。
【0051】
図31は、図19に示す実施の形態における処理動作を示すフローチャートである。
図30の処理が、画像形成装置内部の空気量を一定とみなし、空気を一巡以上循環させることを目指していたのに対し、本動作は循環回数については特に問題としていない。
本動作は、インクジェットヘッドからインク吐出を伴うメンテナンス中、インクミスト回収ファンを回し続けて、逐次インクミストを回収することが重要であると考えている。
よって、このフローチャートでは、「回収ファンを回転」(S3101)→「気流発生」(S3102)→「フィルタでミスト回収」(S3103)→「メンテナンス自体が終わればミスト回収も終了」(S3104、S3105)という動作となっている。
【0052】
以上のような実施の形態により、画像形成装置内のインクミストを有効に回収でき、インクミストによる様々な弊害を防止することができる効果がある。
なお本実施の形態で説明した画像形成装置は、プリンタを上位装置(PC)によって制御するプリンタシステムとしても利用できるものであり、上述した各処理動作を実行するプログラムとしても本発明を構成し得るものである。
【符号の説明】
【0053】
1…インクジェットヘッドキャリッジ軸
3…インクジェットヘッドキャリッジ
8…インクジェットヘッド
21…搬送ベルト
31…搬送制御モータ
32…モータベルト
33…駆動用プーリー
34…副走査ロータリー型エンコーダスケール
70…ロータリー型エンコーダスケール軸
71…副走査エンコーダセンサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2007−50561号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙送り機構に連動して回転する回転軸に取り付けられたロータリー型エンコーダスケールと、
前記ロータリー型エンコーダスケールを読み取ることにより、前記回転軸の回転量を検出し、前記用紙送り位置を算出する読み取り演算部と、
を有する画像形成装置であって、
装置内のインクミストの発生を検知するインクミスト検知手段と、
前記インクミスト検知手段によってインクミストの発生が検知された場合に、前記ロータリー型エンコーダスケールを回転し、前記ロータリー型エンコーダスケールに付着したインクミストを遠心力により飛散させて除去し、または変形させて無害化する制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ロータリー型エンコーダスケールに付着したインクミストにインク溶解剤を供給する供給手段を有し、前記供給手段によるインク溶解剤の供給後、前記制御手段による動作を実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段による動作によって変位したインクミストがロータリー型エンコーダスケールに再度付着するのを防止するインクミスト吸着手段をロータリー型エンコーダスケールに設けたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−189612(P2011−189612A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57325(P2010−57325)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】