説明

画像形成装置

【課題】 現像ローラと感光ドラムとが接触している接触状態にある時間を正確に計測する。
【解決手段】 現像ローラ401と感光ドラム100との接触離隔工程において、現像ローラと感光ドラムが接触している接触状態と離隔している離隔状態で静電容量が異なる第1の電極部材と第2の電極部材との間の静電容量検知手段を用いて、実際に現像ローラと感光ドラムが接触している時間を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真方式を用いた画像形成装置として、像担持体とトナー担持体とが接触した状態で、像担持体上の静電潜像を現像(所謂接触現像方式)し、記録メディアに転写する画像形成装置が知られている。接触現像方式の画像形成装置では、現像を行う期間にトナー担持体を像担持体に接触させ、現像を行わない期間には、像担持体の磨耗やトナー担持体の変形等を防止するため像担持体とトナー担持体とを離隔させるものが存在する。
【0003】
このようにトナー担持体と像担持体とを接触、離隔させる場合に、像担持体とトナー担持体とが接触している接触時間を計測する方法として特許文献1がある。特許文献1では、画像形成装置本体の制御部が所定のタイミングで接触・離隔手段に対して発する、接触・離隔信号を検知して、接触時間のカウントの開始と停止を行う。
【0004】
計測した接触時間は、像担持体がトナー担持体から機械的ストレスを受けて消耗する度合いを測る指標となるため、例えば接触時間に基づいて像担持体の交換時期を決定したり、現像バイアスや帯電バイアス、転写バイアスといった種種の画像形成条件を変更することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−323090公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した従来の画像形成装置では、以下に示すような要因から、像担持体とトナー担持体との実際の接触時間を正確に計測できない場合があった。
【0007】
トナー担持体と像担持体の接触・離隔手段は、多くの部品から構成される事が多く、複数の画像形成装置間では各部の部品寸法や、接触・離隔手段を駆動する駆動モーター等のバラツキが存在する。また電子写真方式を用いた画像形成装置では、像担持体やトナー等の消耗品を容易に交換できるように、複数の部材を一体化し、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジとして構成したものもある。このようなプロセスカートリッジも多くの部品から構成されており、複数のプロセスカートリッジ間では、画像形成装置本体の接触・離隔手段がプロセスカートリッジに作用する部分の部品寸法のバラツキも存在する。
【0008】
さらに画像形成装置の使用環境(温湿度)や、特に間欠印刷を繰り返し行った場合等では、部品寸法等のバラツキに加えて、画像形成装置本体の接触・離隔手段を構成する部材のヘタリや摩耗が発生してしまうこともある。また同様に、画像形成装置本体の接触・離隔手段がプロセスカートリッジに作用する部分にもヘタリや摩耗が発生してしまう場合もある。そのため画像形成装置の使用状況により、実際にトナー担持体が像担持体に接触・離隔に要する時間が変化していってしまうことになる。
【0009】
以上のような要因から、画像形成装置本体の制御部から発せられた接触・離隔信号等に基づいた接触時間計測では、実際にトナー担持体が像担持体と接触している時間との間に差異が生じる。特にこれは近年における画像形成装置の印刷スピードのさらなる高速化、及び消耗部品(プロセスカートリッジ)の長寿命化に伴って、より顕著に現れてきやすい現象でもある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、像担持体とトナー担持体とが接触している接触状態と離隔している離隔状態との切り換え動作を行う画像形成装置において、像担持体とトナー担持体とが接触状態にある時間をより正確に計測することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本出願の発明は、静電潜像を担持する像担持体と、トナーを担持し静電潜像を現像するトナー担持体と、トナー担持体と像担持体とが接触している接触状態と、離隔している離隔状態との切り換え動作を行う切り換え手段と、第1の電極部材と、接触状態における第1の電極部材との間の静電容量が、離隔状態における第1の電極部材との間の静電容量と異なるように配置された第2の電極部材と、第1の電極部材と第2の電極部材との間の静電容量に関する値を検知する検知手段と、切り換え手段によって離隔状態から接触状態への切り換え動作を行う際に、検知手段によって検知された静電容量に関する値の変化量の絶対値が閾値を上回ったことを受けて時間のカウントを開始し、カウントを開始した次に切り換え手段によって接触状態から離隔状態への切り換え動作を行う際に、検知手段によって検知された静電容量に関する値の変化量の絶対値が再び閾値を上回ったことを受けてカウントを停止することで、像担持体とトナー担持体とが接触状態にある時間を計測する計測手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、像担持体とトナー担持体とが接触している接触状態と離隔している離隔状態との切り換え動作を行う画像形成装置において、像担持体とトナー担持体とが接触状態にある時間をより正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例における画像形成装置の構成を表す模式図
【図2】(a)本発明の第1の実施例におけるプロセスカートリッジの接触状態の模式図(b)本発明の第1の実施例におけるプロセスカートリッジの離隔状態の模式図
【図3】(a)本発明の第1の実施例におけるトナー残量と静電容量検出装置の検出結果の模式図(b)本発明の第1の実施例における現像ローラ接触時間計測の模式図
【図4】本発明の第1の実施例における現像ローラ接触時間、およびその積算値の計測シーケンス
【図5】接触時間の積算値に対する感光ドラム表面電位の推移を表す模式図
【図6】(a)接触時間の積算値に基づいて、現像バイアスおよび転写バイアスを変更する場合の画像形成条件を表す模式図(b)接触時間の積算値に基づいて、帯電バイアスを変化させる場合の画像形成条件を表す模式図
【図7】本発明の第1の実施例における、電極部材から電流を検知する場合の構成を表す模式図
【図8】(a)本発明の第2の実施例におけるプロセスカートリッジの接触状態の模式図(b)本発明の第2の実施例におけるプロセスカートリッジの離隔状態の模式図
【図9】本発明の第3の実施例における現像ローラの芯体から電流を検知する場合の構成を表す模式図
【図10】本発明の第4の実施例における電極部材から電流を検知する場合の構成を表す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0015】
ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例について説明する。図1は、実施例1における画像形成装置の概略構成図である。
【0017】
本実施例1の画像形成装置は、感光ドラムに対して帯電、露光、現像、転写およびクリーニングの一連の画像形成プロセスを実行して記録メディアに画像を形成する電子写真方式の画像形成装置である。
【0018】
ここで、上記一連の画像形成プロセスを実行する画像形成装置は、像担持体としての感光ドラム100、感光ドラム100表面を一様に帯電する帯電手段である帯電装置200、帯電された感光ドラム100を画像データに応じて露光を行い、静電潜像を形成する潜像露光装置300、感光ドラム100上に形成された静電潜像に対し、トナー担持体である現像ローラ401を接触させることでトナー像を可視像化させる現像装置400、現像装置400を感光ドラム100に対して、接触・離隔動作をさせる接触離隔部材、感光ドラム100上に形成された現像剤像を記録メディア900に転写する転写装置500、記録メディア900上にトナー像を定着する定着装置800、及び転写後の感光ドラム100表面上をクリーニングするクリーニング装置600、から構成される。
【0019】
また、本実施例1の画像形成装置は、現像装置400に内包されるトナーTのトナー残量を検知するトナー残量検知手段を具備している。トナー残量検知手段は、図2に示す検知手段としての静電容量検出装置410により、現像装置400の一部を構成するトナー担持体である現像ローラ401の導電性の芯体401aと、トナー供給部材である供給ローラ402の導電性の芯体401aとの間の静電容量に関する値を検知することによって、現像装置400内のトナー残量を検出する。また現像ローラ401と感光ドラム100とが接触している状態(以下、接触状態と称す。ここでの「接触」している状態とは、トナーを介して接触している状態も含み、トナーを介さずに現像ローラ401と感光ドラム100が接触している状態だけを表すものではない)と離隔している状態(以下、離隔状態と称す)との切り換え動作中における静電容量検出装置からの検知結果に基づき、現像ローラ401と感光ドラム100が実際に接触している時間(以下、接触時間と称す)を計測する。さらにその接触時間に基づいて、感光ドラム100の交換時期の決定、および画像形成条件の変更を行う。なお、上述した「静電容量に関する値」とは、静電容量そのものに限らず静電容量を適宜数値化した信号情報等も含めて、「静電容量に関する値」と定義する。以降では、「静電容量」そのものを検知する場合について記述するが、静電容量を適宜数値化した信号情報等を検知する場合も本発明の適用範囲である。
【0020】
(画像形成装置の全体構成)
本実施例1の画像形成装置は、感光ドラム100の周面に帯電装置200、潜像露光装置300、現像装置400、転写装置500、クリーニング装置600が順に配されている。
【0021】
感光ドラム100はRの方向に回転し画像形成を行う。感光ドラム100は導電性の芯体としてのアルミシリンダ上に絶縁層、キャリア発生層、キャリア輸送層を順次形成した感光ドラムを用いた。
【0022】
帯電装置200は、感光ドラム100に接触し、感光ドラム100に従動回転する。帯電装置200には所定の帯電バイアスが印加され、感光ドラム100を一様に帯電する。
【0023】
潜像露光装置300は、画像信号に応じて変調されたレーザー光がスキャン出力される。帯電装置200によって一様に帯電した感光ドラム100に、潜像露光装置300からレーザー光が照射されると静電潜像が形成される。
【0024】
現像装置400は、トナー容器404、現像ローラ401、供給ローラ402、現像ブレード403及びトナーTから構成される。現像ローラ401は、トナーを収容するトナー容器404の開口部に配置され、所定のタイミングで感光ドラム100に接触し、感光ドラム100と順方向に所定の周速比をもって回転し現像動作を行う。現像ローラ401は、第1の電極部材としての導電性の芯体401a上に、半導電性のウレタンゴムなどの弾性部材(不図示)を施した構成であり、トナーTを担持、及び搬送する。現像ローラ401には所定の現像バイアスが印加され、静電潜像はトナーTによって現像される。トナーTには、非磁性一成分現像剤を用いた。供給ローラ402は、現像ローラ401に接触し、現像ローラ401とカウンター方向に所定の周速比をもって回転している。供給ローラ402は、第2の電極部材としての導電性の芯体402aの表面に、発泡ウレタンなどの弾性部材(不図示)を施した構成であり、現像ローラ401にトナーTを供給する。現像ブレード403は、導電性の支持体に弾性ブレードを用いた構成であり、現像ローラ401に所定の押圧力で接触し、現像ローラ401上のトナーTの層厚を規制する。
【0025】
紙等の記録メディア900は、給紙ローラ701によって感光ドラム100での潜像の形成と同期して、転写装置500に供給、及び搬送される。転写装置500には所定の転写バイアスが印加され、感光ドラム100上のトナー像が記録メディア900上に転写される。トナー像を転写された記録メディア900は、定着装置800に搬送され、永久定着された後、画像形成装置本体外部に排出される。
【0026】
感光ドラム100上に残留した転写残トナーは、弾性ブレードからなるクリーニングブレード601を用いたクリーニング装置600によって除去され、クリーニング容器602内に貯留される。
【0027】
画像形成装置を構成する部材は、画像形成装置を繰り返し使用することによって消耗する。特に消耗頻度の高い消耗部材として感光ドラム、トナーがある。本実施例1の画像形成装置は、消耗した部材を容易に画像形成装置に着脱、交換可能とするためのプロセスカートリッジ構成をとる。
【0028】
本実施例1では、感光ドラム100、帯電装置200、クリーニング装置600、トナーT、現像装置400を一体化してプロセスカートリッジPを構成した。プロセスカートリッジPは更に、揺動中心405、現像加圧部材406、不揮発性の記憶手段であるメモリー407を備えている。
【0029】
画像形成装置本体を制御するCPUなどで構成された制御部1000は、接触状態・離隔状態の切り換え動作を制御する切り換え動作制御部1001と、接触状態にある時間(接触時間)をカウントする計測手段としての接触時間計測部1002と、から構成される。接触時間計測部1002では、後述する静電容量検出装置410から発せられる検出結果に基づき、現像ローラ401が感光ドラム100と接触している接触時間の計測を行う。
【0030】
上述したメモリー407には、画像形成動作中に接触時間計測部1002がカウントした接触時間の積算値、その閾値、及び接触時間の積算値に対する画像形成条件のテーブル等の情報が格納されている。それにより画像形成装置本体電源のON/OFFが行われた場合、もしくはプロセスカートリッジPが交換された場合でも、感光ドラム100の消耗度合いがわかり、交換時期の決定や画像形成条件の変更等を正確且つ迅速に行うことができる。
【0031】
本実施例1の画像形成装置では、感光ドラム100の帯電電圧のON/OFFや、現像ローラ401の接触・離隔等の各動作タイミングは、印刷する画像サイズに拠らず全て同一に行なわれるものとする。
【0032】
(感光ドラムと現像ローラとの接触状態、離隔状態の切り換え動作)
図2は、プロセスカートリッジPの接触状態、及び離隔状態の模式図である。現像ローラ401はトナー容器404に支持され、現像装置400の一部を構成している。現像装置400は、接触位置と離隔位置とを移動可能となっている。現像装置400には、揺動中心405が設けられており、この揺動中心405を中心に回動可能となっている。現像装置400の回動動作は、画像形成装置本体がもつ、接触状態と離隔状態との切り換え動作を行う切り換え手段としての、カム700の回転動作によって可能になっている。カム700は、接触位置と離隔位置とを移動可能になっている。感光ドラム100と現像装置400が画像形成装置に正しく装着され、且つ、カム700が接触位置にあるとき、現像装置400は接触位置をとり、現像ローラ401と感光ドラム100とが接触する接触状態となる。本実施例1では、カム700を用いて現像装置400を移動可能な構成としたが、接触位置、離隔位置を移動可能であればよく、この構成に限らない。また、感光ドラム100を移動可能な構成としてもよい。
【0033】
図2(a)は、現像ローラ401と感光ドラム100とが接触する接触状態の模式図である。この接触状態にて画像形成が行われる。現像装置400が有する現像加圧部材406は弾性部材である圧縮バネを用い、現像加圧部材406は画像形成装置がもつ力受け部411によって圧縮され、現像装置400に揺動中心405を中心としたモーメントを与える。このモーメントによって、現像ローラ401は感光ドラム100に所定の圧力をもって接触する。このときの現像装置400、及びカム700の位置が接触位置(画像形成位置)である。
【0034】
図2(b)は、現像ローラ401と感光ドラム100が非接触の状態に離隔された離隔状態の模式図である。カム700の回転によって、現像装置400は現像加圧部材406から受ける力よりも大きな力を受ける。それにより現像装置400は、揺動中心405を中心として、接触位置から離隔位置へ回動する。これにより、現像ローラ401が感光ドラム100から離隔する方向に移動し、現像ローラ401と感光ドラム100が非接触の状態に離隔される。このときの現像装置400、及びカム700の位置が離隔位置である。また図2には、プロセスカートリッジPの接触状態、及び離隔状態の模式図に加えて、感光ドラム100、及び現像装置400の電気接続の概略も示している。
【0035】
プロセスカートリッジPが画像形成装置本体に正しく装着されている時、感光ドラム100はアースに接続される。
【0036】
帯電装置200は所定の帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加装置201に接続される。現像装置400が接触位置で停止中、離隔位置で停止中、切り換え動作中、の如何に関わらず、供給ローラ402の導電性の芯体402aには静電容量検出用バイアス印加装置408が接続されている。静電容量検出用バイアス印加装置408は、芯体402aに少なくとも交流成分を有する検知用バイアスを印加する。それにより、接触位置で停止中でも、離隔位置で停止中でも切り換え動作中でも、供給ローラ402には任意に検知用バイアスを印加することができる。
【0037】
現像装置400が接触位置で停止中、離隔位置で停止中、切り換え動作中、の如何に関わらず、現像ローラ401の芯体401aには、画像形成用の現像バイアスとして所定の直流バイアスを印加する現像バイアス印加装置409と、静電容量検出装置410が接続されている。それにより、接触位置が停止中でも、接触・離隔動作中でも、現像ローラ401には任意に現像バイアスが印加でき、また静電容量の検出も可能である。
【0038】
(静電容量検出装置による、トナー残量検知および感光ドラムと現像ローラとの接触時間計測方法)
静電容量検出装置410は、供給ローラ402の芯体402aに少なくとも交流成分を含む所定の検知用バイアスを印加した際、静電誘導により現像ローラ401の芯体401aから流れる交流電流量を検知することによって、芯体401aと芯体402aとの間の静電容量に関する値を検知できる。本実施例1では、検知した交流電流量に応じて所定の基準電圧V0から電圧降下した電圧を検出電圧とし、画像形成装置本体の制御部1000に出力する回路を用いた。即ち、本実施例1での静電容量検出装置410は、芯体401aと芯体402aとの間の静電容量がより大きければ、芯体401aに誘起される交流電流量も大きくなり、結果、検出電圧はより小さい値を示すことになる。なお、ここでの基準電圧V0とは、検知用バイアスを印加していないときに、静電容量検出装置410から出力される検出電圧のことを表す。
【0039】
本実施例1では、この静電容量検出装置410を用いて、トナー容器404内のトナー残量検知を行っている。現像ローラ401と供給ローラ402との間にトナーTがより多く存在すると、芯体401aと芯体402aとの間の静電容量はより大きくなる。その結果、芯体401aから流れる交流電流量が大きくなり、検出電圧はより小さい値を示す。反対に、画像形成動作によってトナーTが消費され、現像ローラ401と供給ローラ402との間のトナー量が少なくなると、芯体401aと芯体402aとの間の静電容量は小さくなる。その結果、芯体401aから流れる交流電流量は小さくなり、検出電圧はより大きい値を示す。
【0040】
よって、芯体402aに少なくとも交流成分を含む検知用バイアスを静電容量検出用バイアス印加装置408により印加し、静電容量検出装置410によって、芯体401aに誘起された交流電流量に応じた電圧を検出することによって、トナー残量検知が可能となる。
【0041】
トナー残量検知は、プロセスカートリッジPが接触状態、離隔状態のどちらであっても基本的には可能である。しかしながら、静電容量検出装置410によって検出する検出電圧は、接触状態と、離隔状態とで異なる。これは、接触状態では離隔状態に比べ、現像ローラ401が感光ドラム100と接触することによって、感光ドラム100が持つ静電容量の一部が現像ローラ401と供給ローラ402との間の静電容量に影響を与えてしまうためである。よって、トナー残量検知をより正確に行うためには、接触状態、或いは離隔状態のどちらか一方で行うのが良い。さらに好ましくは、離隔状態で行う方が、同じ検知用バイアスを印加したときにより大きな交流電流量が得られるため、残量検知の感度が高くなり望ましい。
【0042】
図3(a)にトナー容器内のトナー残量と静電容量検出装置410によって検出した検出電圧との関係を示す。実線は、トナー残量に対する、離隔位置で検出した静電容量検出装置410の検出電圧の検出結果Vrである。一点鎖線は、トナー残量に対する、接触位置で検出した静電容量検出装置410の検出電圧の検出結果Vsである。検知用バイアスとしては、周波数50kHz、振幅200Vの正弦波の交流電圧を印加した。トナー残量は、プロセスカートリッジPが新品であるときのトナー残量を100%とし、トナーTを消費し、ベタ画像が出力できなくなったときのトナー残量を0%とした。V0は基準電圧である。
【0043】
図3(a)に示すように、離隔位置で検出した検出結果Vr、接触位置で検出した検出結果Vsとも、トナー残量が少なくなるにつれ、静電容量検出装置410の検出電圧は上昇する。これはトナーTが消費されることによって、現像ローラ401と供給ローラ402との間の静電容量が減少するためである。また、接触位置で検出した検出結果Vsは、離隔位置で検出した検出結果Vrよりも検出電圧が高い。これは、接触位置と離隔位置とで寄生容量が異なるためである。すなわち、接触状態では離隔状態に比べ、感光ドラム2の影響により、現像ローラ401と供給ローラ402との間で検出される静電容量が小さくなるためである。
【0044】
接触位置もしくは離隔位置で検出した静電容量検出装置410の検出電圧は、トナー残量と相関がある。よって、あらかじめメモリー407に静電容量検出装置410の検出電圧とトナー残量の関係を記憶させておけば、静電容量検出装置410の検出電圧からプロセスカートリッジPのトナー残量を検知することができる。本実施例1では、プロセスカートリッジPがもつメモリー407に静電容量検出装置410の検出電圧とトナー残量の関係を記憶させたが、画像形成装置本体側の別の記憶手段に記憶させておいても構わない。
【0045】
続いて、静電容量検出装置410を用いて、実際に現像ローラ401が感光ドラム100と接触している時間を計測する接触時間計測について説明する。
【0046】
図3(b)は、接触状態と離隔状態の切り換え動作中での、静電容量検出装置410の検出結果の推移である。ここでは、トナー残量50%のプロセスカートリッジPを用いて、トナーTを消費させない状態とした。また検知用バイアスとしては、周波数50kHz、振幅200Vの正弦波の交流電圧を印加した。
【0047】
まず検知用バイアスが印加されていない時は、現像ローラ401と供給ローラ402間の静電容量を検出できず、基準電圧V0と略等しい値を示している(F11)。検知用バイアスを印加すると、静電容量検出装置410の検出値は、図3(a)に示した現像装置400が離隔位置でのトナー残量50%のときの検出電圧Vr(50%)と略等しい値を示す(F12)。次にこのまま検出用バイアスを印加させた状態で、カム700を駆動させ、現像ローラ401を接触位置とする。すると静電容量検出装置410の検出値は、図3(a)に示した離隔位置でのトナー残量50%のときの検出値Vr(50%)から、接触位置でのトナー残量50%のときの検出電圧Vs(50%)へと変化する(F13)。この状態からさらに検知用バイアスを印加させたままの状態で、カム700を駆動させ、現像ローラ401を離隔位置とする。すると静電容量検出装置410の検出値は、図3(a)に示した接触位置でのトナー残量50%のときの検出値Vs(50%)から、離隔位置でのトナー残量50%のときの検出電圧Vr(50%)へと変化する(F14)。その後検知用バイアスをオフすると、現像ローラ401と供給ローラ402の間の静電容量を検出できなくなるため、基準電圧V0と略等しい値を示す(F15)。
【0048】
このように検知用バイアスを印加させたままの状態で、現像ローラ401を離隔状態と接触状態との切り換え動作を行うと、静電容量検出装置410の検出値は急激に変化する。そのため、現像ローラ401が接触状態にあるか、離隔状態にあるのかを、静電容量検出装置410を用いることで判別することができる。
【0049】
したがって、現像装置400の接触工程において、静電容量検出装置410の検出値が検出電圧Vrから検出電圧Vsへ変化した時を開始時間(時間計測スタート点)とし、現像装置400の離隔工程において、静電容量検出装置410の検出値が検出電圧Vsから検出電圧Vrへ変化した時を停止時間(時間計測終了点)とすれば、実際に現像ローラ401が感光ドラム100と接触している時間を計測することができる。
【0050】
本実施例1では、接触状態と離隔状態の切り換え動作時において、この静電容量検出装置410の検出値の変化量に基づいて、現像ローラ401と感光ドラム100の接触時間計測を行う。すなわち、離隔状態から接触状態への切り換え動作を行う際に、静電容量検出装置410の検出値の変化量の絶対値|ΔV|が閾値Vthを上回ったことを受けて、接触時間計測部1002が接触時間のカウントを開始し、カウントを開始した次に接触状態から離隔状態への切り換え動作を行う際に、|ΔV|が再び閾値Vthを上回ったことを受けてカウントを停止する。この場合、閾値Vthは、トナー残量検知で検出される検出値のバラツキより大きな値に設定することが望ましい。さらに望ましくは、トナー残量0%〜100%の間での、接触位置での検出電圧Vsと離隔位置での検出電圧Vrとの差の絶対値|Vs−Vr|の最小値程度の値に設定しておくと良い。さらに望ましくは、画像形成装置の使用環境(温度、湿度等)や検出結果のバラツキなども考慮して設定しておくのと良い。現像装置400の接触・離隔工程において、これにより、実際に現像ローラ401が感光ドラム100に接触している時間を計測することができる。なお、本実施例ではカウント開始と停止に同じ閾値Vthを用いるが、カウント開始と停止の閾値は異なるものを用いてもよい。
【0051】
これらの結果から、現像ローラ401と感光ドラム100の接触状態と離隔状態との切り換え動作を行う時に、現像ローラ401と供給ローラ402の間の静電容量を検出できる静電容量検出装置410を用いることによって、現像ローラ401と感光ドラム100が実際に接触しているかどうかを、使用環境やトナー残量によらず判別できることがわかる。またそれを利用することによって、現像ローラ401が感光ドラム100と接触している時間を計測することができる。
【0052】
即ち、現像ローラ401と感光ドラム100との接触離隔を検知するために、新たにセンサー等を設けることなく、トナー残量を検出する静電容量検出装置410のみで、現像ローラ401が感光ドラム100と接触している時間をより正確に計測することができる。
【0053】
ここで、現像装置400の接触・離隔動作は、具体的には、カム700が、切り換え動作制御部1001から発せられた接触・離隔信号を受け取り、駆動することで行われる。しかしながら、先ほど述べたように、カム700や、プロセスカートリッジP等を構成する部品寸法には少なからずバラツキが存在する。したがって、接触信号が発せられてから、実際に現像ローラ401が感光ドラム100と接触するまでの時間、及び離隔信号が発せられてから、実際に現像ローラ401が感光ドラム100から離隔するまでの時間は、複数の画像形成装置間、複数のプロセスカートリッジ間で、大きく異なる場合がある。またこれらの時間は、画像形成装置本体の使用状況によっても大きく変わってくるのも先ほど述べたとおりである。
【0054】
したがって、これら部品寸法のバラツキ等を考慮し、接触・離隔信号が発せられてから、現像ローラ401と感光ドラム100が最も速く接触・離隔する時間Tf、最も遅く接触・離隔する時間Tlを予め見積もっておき、Tfよりも前に検知用バイアスを印加し始め、Tlよりも後に検知用バイアスをオフする。これにより、確実に現像ローラ401が感光ドラム100に対して、接触状態にあるのか、離隔状態にあるのか、を判別することができる。したがって、より正確に現像ローラ401と感光ドラム100の接触時間を計測することが可能となる。
【0055】
(接触時間計測シーケンス)
図4に本実施例1での、感光ドラム100の接触時間計測シーケンスを示す。制御部1000が、接触時間計測部1002、及びプロセスカートリッジPのメモリー407を介して、図4のフローチャートに示す各処理を行うことにより、正確な接触時間およびその積算値を算出することが出来る。
【0056】
まず画像形成装置がプリントジョブを受け取ると、感光ドラム100を回転させ、画像形成動作を始める(S11)。感光ドラム100が回転を始めると、供給ローラ402に静電容量の検知用バイアスが印加される(S12)。その後、切り換え動作制御部1001が所定のタイミングで接触信号を発し、現像装置400の接触動作を開始させる(S13)。カム700により接触動作が開始され、静電容量検出装置410の検出値の変化量の絶対値|ΔV|が閾値Vthを上回ったことを受けて、接触時間計測部1002が、接触時間のカウントを開始する(S14)。次に、検知用バイアスを一度オフにする(S15)。続いて静電潜像を形成し、現像動作を行う。最後のプリントジョブの現像動作が終了すると(S16)、供給ローラ402には再び静電容量の検知用バイアスが印加される(S17)。それから切り換え動作制御部1001は、所定のタイミングで離隔信号を発し、現像装置400の離隔動作を開始させる(S18)。カム700により離隔動作が開始され、静電容量検出装置410の検出値の変化量の絶対値|ΔV|が再び閾値Vthを上回ったことを受けて、接触時間計測部1002では、接触時間のカウントを停止する(S19)。次に検知用バイアスをオフにする(S20)。その後、現像ローラ401が完全に離隔し、現像ローラ401の駆動が停止したのちに、所定のタイミングで、もう一度供給ローラ402に静電容量の検知用バイアスを印加する。その検知用バイアスにより、今度は現像装置400内のトナー残量検知を行う。トナー残量検知が終了したら、感光ドラム100を停止させ、画像形成動作を終了させる(S21)。
【0057】
画像形成動作が終了した後、制御部1000はプロセスカートリッジPのメモリー407内に記憶された現像ローラ401の接触時間の積算値情報があるかどうかを確認する(S22)。積算値情報が存在する場合には、積算値情報を読み取り、制御部1000に付随しているフラッシュメモリ(不図示)に一時保管する。
【0058】
次に、制御部1000ではメモリー407から読み取った現像ローラ401の接触時間積算値Aに、今回の画像形成動作工程中に得られた現像ローラ401の接触時間のカウント値を加算する。その後現像ローラ401の接触時間積算値Aを再びメモリー407内に上書きする(S23)。一方、メモリー407内に現像ローラ401の接触時間の積算値が存在しない場合は、今回の画像形成動作工程で得られた現像ローラ401の接触時間のカウント値を、現像ローラ401の接触時間積算値Aとして書き込む(S24)。以上により、トナー残量を検知する静電容量検知装置を用いて、新たな部材を設けることなく、接触時間およびその積算値を正確に算出することが可能となった。
【0059】
(接触時間の積算値に基づく画像形成条件変更)
前述した方法で得られた現像ローラと感光ドラムの接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件を変更する制御について説明する。
【0060】
制御部1000はメモリー407内の接触時間積算値Aに基づいて、予めメモリー407内に格納された、接触時間積算値に対する画像形成条件のテーブルを参照して、次のプリント時の画像形成条件を決定する。以下に接触時間積算値と画像形成条件の関係を説明する。
【0061】
図5に、一定の帯電バイアスで帯電した場合の、接触時間の積算値と、感光ドラム100の表面電位、及び現像バイアスと転写バイアスの推移を示す。画像形成装置を繰り返し使用することによって、感光ドラム100表面は摩耗され、一定の帯電バイアスで制御した場合、その感光ドラム100の表面電位の絶対値は徐々に上昇する。これは感光ドラム100表面の摩耗により、感光ドラム100表面の静電容量が大きくなっていくためである。そのため感光ドラム100の寿命に達するまで、一定の現像バイアスや転写バイアスで画像形成を行っていった場合、感光ドラム100の表面電位と現像バイアスや転写バイアスとの差が徐々に拡大することになる。そうすると、特に感光ドラム100の寿命間際で、濃度低下やカブリ、転写不良といった画質悪化が起こりやすい状況になる。
【0062】
したがって接触時間の積算値に応じて、現像バイアスや転写バイアスを図6(a)のように変更することによって、感光ドラム100の表面電位と現像バイアスや転写バイアスの差が拡大するのを防ぐことができる。これにより、前述のような画像不良を生じさせることなく、感光ドラム100の寿命到達まで良好な画像を得ることができる。また、トナーの帯電性を安定化するために、供給ローラ402の芯体402aに所定の直流バイアスを印加したり、現像ブレード403として金属ブレードを採用して現像ブレード403に所定の直流バイアスを印加するように構成したりする場合、芯体402aや現像ブレード403に印加する直流バイアスを、現像バイアスと連動して変更してもよい。同様にして、画像形成動作を行う際に印加する各種バイアスや、画像形成装置を構成する各種部材の周速度、タイミング等、様々な条件を変更することが可能である。
【0063】
また、接触時間の積算値に応じて、感光ドラム100の表面電位が一定となるように、帯電装置200に印加する帯電バイアスを変更しても良い。図6(b)に、接触時間積算値と、感光ドラム100の表面電位、現像バイアス、転写バイアス、帯電バイアスの推移を示す。画像形成装置を繰り返し使用することによって、感光ドラム100表面は摩耗され、図5に示したように一定の帯電バイアスで制御した場合、その感光ドラム100の表面電位は徐々に上昇する。図6(a)では、それに伴い現像バイアスと転写バイアスを変更する場合を示したが、図6(b)では感光ドラム100の表面電位が一定となるように帯電バイアスの絶対値を小さくする。このような制御を行うことでも、感光ドラム100の表面電位と現像バイアスや転写バイアスとの差が拡大するのを防ぐことができる。これにより、感光ドラム100の寿命間際で、濃度低下やカブリといった画像不良を生じさせることなく、感光ドラム100の寿命到達まで良好な画像を得ることができる。この場合には、前段落で示したような現像バイアス等他の画像形成条件を変更しなくともよい。
【0064】
以上のとおり、トナー残量を検知する静電容量検知装置を用いて正確に算出される現像ローラ401と感光ドラム100との接触時間に基づいて、画像形成条件を変更することで、感光ドラム100の寿命到達まで良好な画像を得ることができる。
【0065】
(接触時間の積算値に基づく交換時期報知)
前述した方法で得られた現像ローラと感光ドラムの接触時間の積算値に基づいて、感光ドラムの交換時期を決定する制御について説明する。
【0066】
制御部1000はメモリー407内の接触時間積算値Aと、予めメモリー407内に格納された寿命閾値Bとの比較を行う。
【0067】
接触時間積算値Aが寿命閾値Bに到達、若しくは超過した場合には、報知手段としての報知制御部1003により、オペレーションパネル(不図示)やパソコンディスプレイ(不図示)を介して、ユーザーに対し感光ドラム100の寿命到達を報知する。また、接触時間積算値Aが寿命閾値Bに到達していない場合には、プリントレディとなり、画像形成装置本体は次のプリントジョブに備える。
【0068】
尚、感光ドラム100の寿命閾値Bは、あるサイズの1ページの出力画像を得る際、現像ローラ401が感光ドラム100へ接触する時間を見積り、感光ドラム100の寿命とされるそのサイズのページ数を乗じることによって算出される。例えば、A4サイズ画像1ページの出力に要する現像ローラ401の感光ドラム100への接触時間が30秒であり、その感光ドラム100で問題無く印字可能なA4のページ数が10000ページである場合、寿命閾値Bは300000秒に設定すれば良い。
【0069】
また、報知制御部1003が感光ドラム100の寿命に到達したと判断した場合、ユーザーに対しその旨を報知すると同時に、画像形成装置本体を停止するよう制御を行っても良い。このような制御を行えば、感光ドラム100の寿命を超えて画像形成を行う時に発生する種々の弊害(例えば、出力画像の品質低下や、リーク等による画像形成装置本体の汚染・損傷等)を防止する事が出来る。
【0070】
更に、感光ドラム100の寿命閾値Bよりも小さい値である寿命予告閾値Cを定め、現像ローラ401の接触時間積算値Aが寿命予告閾値Cに到達若しくは超過した場合、感光ドラム100の寿命到達予告を出すよう制御を行っても良い。例えば、寿命予告閾値Cを寿命閾値Bの90%となるように設定した場合、感光ドラム100の寿命残が10%に達した時点で、ユーザーに対して感光ドラム100の寿命が間近であることを報知することが可能となる。そのためユーザーは、前もってプロセスカートリッジPの交換に備えることが出来る。
【0071】
以上のとおり、トナー残量を検出する静電容量検出装置410を用いて正確に算出される現像ローラ401と感光ドラム100との接触時間に基づいて感光ドラムの交換時期を決定することで、感光ドラム100の正確な交換時期をユーザーに対して報知することができる。
【0072】
(その他)
なお、静電容量検出装置410を用いて、接触時間の計測とトナー残量の検知を行っているが、接触時間を正確に計測するという効果を得る上で、トナー残量の検知を行うことは必須ではない。
【0073】
また、本実施例1の静電容量検出装置では、供給ローラの芯体402aに交流電圧を印加し、現像ローラの芯体401aから流れる電流を検知したが、感光ドラム100の芯体100aから流れる電流を検知して、接触時間を計測することも可能である。ただし、この場合、離隔状態では電流がほとんど流れないため、トナー残量検知を行う場合は、接触状態で行うことが望ましい。また、接触状態と離隔状態とで、供給ローラの芯体402aとの間の静電容量が異なるように配置された電極部材412を用いて、その電極部材412から流れる電流を検知することで接触時間を計測することも可能である。この場合、図7のように、電極部材412がトナー容器の内部にあれば、トナー残量検知を行うことも可能である。ただし、電極部材412よりも、現像ローラの芯体401aまたは感光ドラムの芯体100aから流れる電流を検知するほうが、接触、離隔する部材に流れる電流を直接検知するため接触時間を精度よく計測できる点と、新たな電極部材の追加が不要である点で望ましい。なお、本実施例では現像ローラの芯体401aを第1の電極部材とし、供給ローラの芯体402aを第2の電極部材としたが、第1、第2の順は本発明に関係ない。本実施例1では、第1、第2の電極部材のうち、一方が現像ローラの芯体401aまたは感光ドラムの芯体100a又は電極部材412で、他方が供給ローラの芯体であればよい。
【0074】
なお、本実施例1では、画像形成条件の変更や感光ドラム100の交換時期を決定するパラメータとして接触時間積算値のみを用いたが、感光ドラム100の消耗度合いに影響を与える帯電電圧印加時間等の他のパラメータなども考慮して、画像形成条件の変更や、感光ドラム100の交換時期を決定してもよい。
【0075】
本実施例では、供給ローラ402の芯体402aに検知用バイアスを印加した。これにより、接触時間計測の際に、後述の、現像ローラの芯体401aや感光ドラムの芯体100aに検知用バイアスを印加する実施例と比べて、同じ電圧を印加した際に感光ドラムに流れる電流が少なく、感光ドラムに電流痕が発生しにくい。
【実施例2】
【0076】
本発明の第2の実施例について説明する。画像形成装置本体の基本構成および動作について、実施例1と共通の部分については省略する。実施例1では、供給ローラ402の芯体402aに静電容量の検知用バイアスを印加し、現像ローラ401の芯体401aから流れる電流を検知することで、接触時間を計測したが、本実施例2では、現像ローラ401の芯体401aに検知用バイアスを印加し、供給ローラ402の芯体402aから流れる電流を検知することで、接触時間を計測する。以下、本実施例の特徴部分について示す。
図8(a)及び(b)は、本実施例におけるプロセスカートリッジPの接触状態、及び離隔状態の模式図であり、感光ドラム100、帯電装置200、及び現像装置400の電気接続の概略も示している。
【0077】
本実施例では、トナー残量検知を行う際には、現像ローラ401の芯体401aに周波数50kHz、振幅200Vの正弦波の交流電圧を印加した。この時のバイアスをトナー残量検知用バイアスとする。一方、現像ローラ401と感光ドラム100の接触時間を計測する際には、現像ローラ401の芯体401aに周波数50kHz、振幅100Vの正弦波の交流電圧を印加した。この時のバイアスを接触離隔検知用バイアスとする。
【0078】
ここで、現像ローラ401の芯体401aに、振幅や周波数の大きい交流電圧を印加させたままの状態で、現像ローラ401を感光ドラム100から離隔させると、感光ドラム100と芯体401aの間の静電容量が過渡的に変化する場合がある。このような過渡的な変化が発生すると、交流電圧が感光ドラム100にリークし、感光ドラム100表面にリーク痕を生じさせてしまう。リーク痕が生じると、感光ドラム100周期の横スジ画像等の不良画像や、画像形成装置本体の損傷を引き起こしてしまう可能性もある。よって本実施例2では、現像ローラ401の接触時間計測を行う際には、このような弊害を引き起こさないような、交流電圧の振幅および周波数を採用した。またトナー残量検知を行う際には、交流電圧の振幅や周波数が小さくなると、静電容量検出装置400によって検出される検出値が小さくなり、より正確なトナー残量検知が出来なくなる傾向にある。したがって、上述のように、接触離隔検知用バイアスの振幅および/または周波数を、トナー残量検知用バイアスよりも小さい値となるように設定することで、上記の問題を回避することができる。両者で異なる検知用バイアスを採用したとしても、現像ローラ401の接触時間計測での計測結果と、トナー残量検知での検知結果は、それぞれ独立して制御に利用されるため問題はない。
【0079】
接触時間を計測するシーケンスについては、実施例1と同様であるため省略する。
以上により、接触時間を正確に算出することが可能となる。
【0080】
また、および接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件の変更や感光ドラムの交換時期を決定する制御については実施例1と同様であるため省略する。
【0081】
また、上記接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件を変更することで、感光ドラム100の寿命到達まで良好な画像を得ることができる。また、上記接触時間の積算値に基づいて感光ドラムの交換時期を決定することで、感光ドラム100の正確な交換時期をユーザーに対して報知することができる。
【0082】
(その他)
なお、本実施例2において、静電容量検出装置410を用いて、接触時間の計測とトナー残量の検知を行っているが、接触時間を正確に計測するという効果を得る上で、トナー残量の検知を行うことは必須ではない。
【0083】
また、本実施例1の静電容量検出装置では、供給ローラの芯体402aから流れる電流を検知したが、感光ドラム100の芯体から流れる電流を検知して、静電容量に関する値を検知することも可能である。ただし、この場合、接触時間だけでなくトナー残量も検出するためには、供給ローラの芯体402aから流れる電流を検知する手段を別途設ける必要がある。
【0084】
また、接触状態と離隔状態とで、現像ローラの芯体401aとの間の静電容量が異なるように配置された電極部材412を用いて、その電極部材から流れる電流を検知して、静電容量に関する値を検知することも可能である。この場合、図7のように電極部材412がトナー容器の内部にあれば、トナー残量検知を行うことも可能である。
【0085】
なお、本実施例1では、画像形成条件の変更や感光ドラム100の交換時期を決定するパラメータとして接触時間積算値のみを用いたが、感光ドラム100の消耗度合いに影響を与える帯電電圧印加時間等の他のパラメータなども考慮して、画像形成条件の変更や、感光ドラム100の交換時期を決定してもよい。
【実施例3】
【0086】
本発明の第3の実施例について説明する。画像形成装置本体の基本構成および動作について、実施例1と2に共通の部分については省略する。静電容量に関する値を検知するための検知用バイアスを、実施例1では供給ローラ402の芯体402aに、実施例2では現像ローラ401の芯体401aに印加したが、本実施例3では、感光ドラムの芯体100aに交流電圧を印加することを特徴とする。
【0087】
本実施例3において、静電容量に関する値を検知するために交流電圧を感光ドラムの芯体100aに印加した場合、接触時間を計測するには、現像ローラの芯体401a、または供給ローラの芯体402a、または別途設けられた電極部材412(接触状態と離隔状態とで、感光ドラムの芯体100aとの静電容量が異なる位置に配置されていればよい)から流れる電流を検知することで可能となる。これらのうち、現像ローラの芯体401aから流れる電流を検知する場合の構成について、図9に示す。なお、トナー残量も検知するには、トナー容器内部において電流を検知する必要があるため、供給ローラの芯体402aまたは、トナー容器内に設けられた電極部材から流れる電流を検知することで可能となる。
【0088】
接触時間を計測するシーケンスについては、実施例1と同様であるため省略する。
【0089】
以上により、接触時間を正確に算出することが可能となる。
【0090】
また、接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件の変更や感光ドラムの交換時期を決定する制御については実施例1と同様であるため省略する。
【0091】
また、上記接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件を変更することで、感光ドラム100の寿命到達まで良好な画像を得ることができる。また、上記接触時間の積算値に基づいて感光ドラムの交換時期を決定することで、感光ドラム100の正確な交換時期をユーザーに対して報知することができる。
【実施例4】
【0092】
本発明の第4の実施例について説明する。画像形成装置本体の基本構成および動作について、実施例1、2および3に共通の部分については省略する。静電容量に関する値を検知するための交流電圧を、実施例1では供給ローラ402の芯体402aに、実施例2では現像ローラ401の芯体401aに、実施例3では感光ドラムの芯体に印加したが、本実施例4では、別途設けた電極部材412(接触状態と離隔状態とで、前述の静電容量が異なる位置に配置されていればよい)に交流電圧を印加することを特徴とする。
【0093】
本実施例4において、静電容量に関する値を検知するために検知用バイアスを導電性の電極部材412に印加した場合、接触時間を計測するには、感光ドラムの芯体、または現像ローラの芯体401a、または供給ローラの芯体402a、またはそれ以外に別途設けられた導電性の電極部材413から流れる電流を検知することで可能となる。これらのうち、別途設けられた電極部材413から流れる電流を検知する場合の構成例を図10に示す。なお、トナー残量も検知するには、電極部材412がトナー容器内部にあればよいが、トナー容器外部にある場合、トナー容器内部において電流を検知する必要があるため、供給ローラの芯体402aまたは、トナー容器内に設けられた電極部材413から流れる電流を検知することで可能となる。
【0094】
接触時間を計測するシーケンスについては、実施例1と同様であるため省略する。
【0095】
上記構成により、接触時間を正確に算出することが可能となる。
【0096】
また、接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件の変更や感光ドラムの交換時期を決定する制御については実施例1と同様であるため省略する。
【0097】
また、上記接触時間の積算値に基づいて、画像形成条件を変更することで、感光ドラム100の寿命到達まで良好な画像を得ることができる。また、上記接触時間の積算値に基づいて感光ドラムの交換時期を決定することで、感光ドラム100の正確な交換時期をユーザーに対して報知することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 感光ドラム
400 現像装置
401 現像ローラ
402 供給ローラ
408 静電容量検出用バイアス印加装置
410 静電容量検出装置
700 カム
1000 制御部
1001 切り換え動作制御部
1002 接触時間計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、
トナーを担持し前記静電潜像を現像するトナー担持体と、
前記トナー担持体と前記像担持体とが接触している接触状態と、離隔している離隔状態との切り換え動作を行う切り換え手段と、
第1の電極部材と、
前記接触状態における前記第1の電極部材との間の静電容量が、前記離隔状態における前記第1の電極部材との間の静電容量と異なるように配置された第2の電極部材と、
前記第1の電極部材と前記第2の電極部材との間の静電容量に関する値を検知する検知手段と、
前記切り換え手段によって前記離隔状態から前記接触状態への前記切り換え動作を行う際に、前記検知手段によって検知された前記静電容量に関する値の変化量の絶対値が閾値を上回ったことを受けて時間のカウントを開始し、前記カウントを開始した次に前記切り換え手段によって前記接触状態から前記離隔状態への前記切り換え動作を行う際に、前記検知手段によって検知された前記静電容量に関する値の変化量の絶対値が再び閾値を上回ったことを受けて前記カウントを停止することで、前記像担持体と前記トナー担持体とが前記接触状態にある時間を計測する計測手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の電極部材と前記第2の電極部材のうち一方が、前記像担持体の芯体または前記トナー担持体の芯体である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー担持体にトナーを供給するトナー供給部材を有し、
前記第1の電極部材と前記第2の電極部材のうち一方が、前記像担持体の芯体または前記トナー担持体の芯体であり、他方が前記トナー供給部材の芯体である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナーを収容し開口部を有するトナー容器と、
前記接触状態または前記離隔状態において前記検知手段によって検知された前記静電容量に関する値に基づいて前記トナー容器内のトナー残量に関する情報を検知するトナー残量検知手段と、をさらに有し、
前記一方は前記開口部に配置された前記トナー担持体の芯体であり、
前記トナー供給部材は前記トナー容器の内部に設けられている請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記トナー供給部材の芯体に交流成分を有する電圧を印加し、前記トナー担持体の芯体から流れる電流を検知することで前記静電容量に関する値を検知する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記トナー担持体の芯体に交流成分を有する電圧を印加し、前記トナー供給部材の芯体から流れる電流を検知することで前記静電容量に関する値を検知し、
前記交流成分の振幅と周波数のうち少なくとも一方は、前記接触状態にある時間を計測する時の方が、前記トナー残量に関する情報を検知する時よりも小さい請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記計測手段によって計測された前記時間の積算値を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記積算値に基づいて、前記像担持体の交換時期に関する情報を報知する報知手段と、を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記計測手段によって計測された前記時間の積算値を算出する算出手段を有し、
前記算出手段によって算出された前記積算値に基づいて、画像形成条件を変更する請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−221459(P2011−221459A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93356(P2010−93356)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】