説明

画像形成装置

【課題】表面画像と裏面画像が補色の関係にある場合、裏抜けが目立たないように画像を形成する。
【解決手段】表面画像データに基づいて印刷用紙の表面に印刷すると共に、裏面画像データに基づいて印刷用紙の裏面に印刷する印刷部30と、表面画像データ及び裏面画像データに基づいて、印刷用紙に印刷される表面の色と裏面の色が補色関係であるか否かを判定する判定部72と、判定部72により補色関係であると判定された場合、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減する画像処理部73と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏抜けを低減する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、印刷用紙の片面のみを印刷する片面印刷、又は印刷用紙の両面を印刷する両面印刷が可能な画像形成装置がよく知られている。
【0003】
具体的には、用紙反転経路を含む循環搬送路を有し、片面印刷が選択された場合に、印刷用紙の一方の面に印刷した後、用紙反転経路を用いることなく印刷された印刷用紙を排紙することにより片面印刷を実行し、両面印刷が選択された場合に、印刷用紙の一方の面に印刷すると共に、この一方の面に印刷された印刷用紙を、循環搬送路を搬送することで表裏反転し、他方の面に印刷を行うことにより両面印刷を実行する画像形成装置がある。
【0004】
このような両面印刷が可能な画像形成装置では、表面の画像が裏面に透けてしまういわゆる裏抜けが発生する場合があった。
【0005】
特許文献1には、裏写り補正処理した補正画像を用いて裏写りまたは敷き写りした裏面画像を推定し、この裏面画像の各画素の裏写り成分の輝度、色相および飽和度のうち1つ、若しくはこれらの組み合わせからなる統計的特徴量を用いて、裏写り領域として誤検出した領域に対して再補正処理を加えるカラー画像処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−324600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のカラー画像処理装置では、裏面画像の各画素の裏写り成分の輝度、色相および飽和度のうち1つ、若しくはこれらの組み合わせからなる統計的特徴量を用いて、裏写り領域として誤検出した領域に対して再補正処理を加えるので、表面画像と裏面画像が補色の関係にある場合、裏抜けが目立つという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、表面画像と裏面画像が補色の関係にある場合、裏抜けが目立たないように画像を形成する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置の第1の特徴は、表面画像データに基づいて印刷媒体の表面に印刷すると共に、裏面画像データに基づいて印刷媒体の裏面に印刷する画像形成手段と、前記表面画像データ及び前記裏面画像データに基づいて、前記印刷媒体に印刷される表面の色と裏面の色が補色関係であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により補色関係であると判定された場合、前記表面画像データ及び前記裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減する画像処理手段と、を備えたことにある。
【0010】
本発明に係る画像形成装置の第2の特徴は、前記画像処理手段は、前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減することにある。
【0011】
本発明に係る画像形成装置の第3の特徴は、前記画像処理手段は、前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、いずれか一方に文字データが含まれている場合、文字データを含む画像データの画像率を低減することにある。
【0012】
本発明に係る画像形成装置の第4の特徴は、前記画像処理手段は、前記表面画像データ及び前記裏面画像データに基づいて、前記画像形成手段が印刷媒体の両面に印刷する際に使用するインク量を算出し、この算出されたインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、前記表面画像データ及び前記裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減することにある。
【0013】
本発明に係る画像形成装置の第5の特徴は、前記画像処理手段は、前記表面画像データに基づいて印刷する表面の色の濃度と、前記裏面画像データに基づいて印刷する裏面の色の濃度との差が、所定の濃度差閾値以上である場合、前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、色の濃度が高い方の画像データの画像率を低減することにある。
【0014】
本発明に係る画像形成装置の第6の特徴は、前記画像処理手段は、前記表面画像データに基づいて印刷する表面、又は前記裏面画像データに基づいて印刷する裏面の色のうち、一方の面の色が濃度のインク量影響度が所定の影響度閾値より小さい有彩色であり、かつ他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高い場合に、前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減することにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る画像形成装置の第1の特徴によれば、印刷媒体に印刷される表面の色と裏面の色が補色関係である場合、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減するので、表面画像と裏面画像が補色の関係にある場合、裏抜けが目立たないように画像を形成することができる。
【0016】
本発明に係る画像形成装置の第2の特徴によれば、表面画像データ及び裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減するので、裏抜けすると目立ちやすい画像を印刷する場合に、より効率的に裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0017】
本発明に係る画像形成装置の第3の特徴によれば、表面画像データ及び裏面画像データのうち、いずれか一方に文字データが含まれている場合、文字データを含む画像データの画像率を低減するので、裏抜けすると目立ちやすい文字を印刷する場合に、より効率的に裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置の第4の特徴によれば、印刷媒体の両面に印刷する際に使用するインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減するので、使用するインクに蒸発し難い有機溶剤が含まれている場合にも、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0019】
本発明に係る画像形成装置の第5の特徴によれば、表面画像データに基づいて印刷する表面の色の濃度と、裏面画像データに基づいて印刷する裏面の色の濃度との差が、所定の濃度差閾値以上である場合、表面画像データ及び裏面画像データのうち、色の濃度が高い方の画像データの画像率を低減するので、表面の色と裏面の色が補色関係であり、かつ表面の色の濃度と裏面の色の濃度との差が大きい場合にも、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0020】
本発明に係る画像形成装置の第6の特徴によれば、一方の面の色が濃度のインク量影響度が所定の影響度閾値より小さい有彩色であり、かつ他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高い場合に、表面画像データ及び裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減するので、裏抜けし難いインクが一方の面に使用され、裏抜けしやすいインクが所定の濃度閾値より高い濃度で他方の面で使用される場合においても、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係る画像形成装置の機能構成を示した機能構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る画像形成装置における印刷処理を示したフローチャートである。
【図3】(a)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置が印刷用紙の表面に印刷するための表面画像データの一例を示した図であり、(b)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置が印刷用紙の裏面に印刷するための裏面画像データの一例を示した図であり、(c)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置が表面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の表面の一例を示した図であり、(d)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置が表面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の裏面の一例を示した図であり、(e)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置が裏面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の表面の一例を示した図であり、(f)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置が裏面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の裏面の一例を示した図である。
【図4】本発明の実施例2に係る画像形成装置において用いられるインクの浸透性について説明した図である。
【図5】本発明の実施例4に係る画像形成装置で用いられるインクそれぞれの濃度のインク量影響度を説明した図である。
【図6】本発明の実施例4に係る画像形成装置における裏抜け印刷処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1では、ネットワークを介して接続された端末からの要求に応じて印刷を行うインクジェット式の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0024】
<画像形成装置の機能構成>
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1の機能構成を示した機能構成図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施例1に係る画像形成装置1は、ネットワーク9を介して端末100と接続されている。
【0026】
端末100は、ソフトウェアを実行することにより、画像データを生成し、生成した画像データと、両面印刷又は片面印刷を指定する設定情報とを印刷ジョブとしてネットワーク9を介して画像形成装置1へ送信する。
【0027】
画像形成装置1は、画像読み取り部2と、画像形成部3と、ファックス受信部4とを備えている。
【0028】
画像読み取り部2は、画像形成部3の上部に設けられ、図示しないが、原稿を載置するコンタクトガラス、このコンタクトガラスに対して接離自在に設けられたカバー、コンタクトガラス上に載置された原稿を走査する走査ユニット、走査された画像を集束するレンズ、及び集束された画像を処理する画像処理部を備えている。
【0029】
そして、走査ユニットがコンタクトガラス上に載置された原稿を1ライン毎に走査し、画像処理部が走査された画像を処理することにより、画像形成部3が印刷するための画像データを読み取る。
【0030】
ファックス受信部4は、ファクシミリ通信可能なデバイスであり、ファクシミリ受信した画像データを画像形成部3へ供給する。
【0031】
画像形成部3は、給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50と、操作部60と、制御部70と、ネットワークインタフェース部81と、外部インタフェース部82と、画像記憶部90とを備えている。
【0032】
給紙部20は、印刷用紙が積層される給紙台を備え、この給紙台から印刷用紙を1枚づつ印刷部30へ向かって搬送経路上を搬送させる。
【0033】
印刷部30は、複数の印字ヘッドが組み込まれたC(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色のヘッドユニットを備え、印刷条件により定められる速度で印刷用紙を搬送しながら、ヘッドユニットから有機溶剤を含んだインクを吐出することにより、ライン単位で印刷用紙に印刷する。
【0034】
排紙部40は、印刷部30により印刷された印刷用紙を排紙する。
【0035】
反転部50は、印刷部30により印刷された印刷用紙の表裏を反転し、再度、搬送経路に搬送させることにより、印刷部30に印刷用紙の両面を印刷させる。
【0036】
操作部60は、画像形成装置1の上部に設けられ、表示/入力パネル61と、読み取りや印刷等を開始させるためのスタートキー、読み取りや印刷等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部70に供給する。
【0037】
操作部60の表示/入力パネル61は、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置された液晶表示パネル(いずれも図示せず)とを有している。利用者は、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、片面印刷/両面印刷設定や、通常印刷/補色印刷設定等各種の設定入力操作等を行うことができる。
【0038】
ネットワークインタフェース部81は、ネットワークカードなどの通信インタフェースであり、このネットワークインタフェース部81により画像形成装置1をネットワーク9に接続することによって、ネットワーク9に接続された端末100から画像データを受信したり、各種信号を送受信したりする。
【0039】
外部インタフェース部82は、画像読み取り部2との接続インタフェースであり、画像読み取り部2により読み取られた画像データ、及びファックス受信部4からファクシミリ受信した画像データを制御部70へ供給する。
【0040】
画像記憶部90は、受信部71が画像データを受信すると、この受信された画像データを記憶する。
【0041】
制御部70は、画像形成装置1の中枢的制御を行う。また、制御部70は、その機能上、受信部71と、判定部72と、画像処理部73とを備える。
【0042】
受信部71は、ネットワークインタフェース部81を介して端末100から送信された印刷ジョブを受信する。また、受信部71は、外部インタフェース部82を介して画像読み取り部2から送信された画像データや、ファックス受信部4からファクシミリ受信した画像データを受信する。
【0043】
判定部72は、印刷ジョブに含まれる表面画像データ及び裏面画像データに基づいて、印刷用紙に印刷される表面の色と裏面の色が補色関係であるか否かを判定する。
【0044】
画像処理部73は、判定部72により補色関係であると判定された場合、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減する。具体的には、画像処理部73は、表面画像データ及び裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減する。ここで、画像率とは、画像データにおける全画素数に対する色画素数のことをいう。
【0045】
機器制御部74は、給紙部20、印刷部30、排紙部40、及び反転部50を制御することにより、給紙部20から給紙した印刷用紙の片面又は両面に印刷を行う。
【0046】
<画像形成装置の作用>
次に、本発明の実施例1に係る画像形成装置1における作用について説明する。
【0047】
図2は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1における印刷処理を示したフローチャートである。
【0048】
図2に示すように、制御部70の受信部71が、端末100からネットワーク9を介して送信された印刷ジョブを受信すると(ステップS101)、制御部70は、カウンタiの値に“1”を代入すると共に、受信した印刷ジョブに含まれる総頁数をCに代入する(ステップS103)。
【0049】
次に、制御部70は、受信した印刷ジョブに含まれる設定情報に基づいて、片面印刷又は両面印刷を判定する(ステップS105)。具体的には、制御部70は、受信した印刷ジョブに含まれる利用者が設定した設定情報に基づいて、片面印刷が要求されているか、又は両面印刷が要求されているかを判定する。
【0050】
ステップS105において、片面印刷であると判定された場合(NOの場合)、画像処理部73は、通常の画像処理を行う(ステップS107)。具体的には、画像処理部73は、受信した印刷ジョブに含まれる画像データをRGBからCMYKへ変換するCMYK変換処理や、画像のエッジを強調するエッジ強調処理等を実行する。
【0051】
そして、機器制御部74は、ステップS107において通常の画像処理が実行された画像データに基づいて、給紙部20、印刷部30、排紙部40、及び反転部50を制御することにより、給紙部20から給紙した印刷用紙に片面印刷又は両面印刷を行う。
【0052】
一方、ステップS105において、両面印刷であると判定された場合(YESの場合)、判定部72は、表面と裏面が補色関係にあるか否かを判定する(ステップS109)。具体的には、判定部72は、受信した印刷ジョブに含まれる、印刷用紙の表面に印刷するための画像データである表面画像データと、裏面に印刷するための画像データである裏面画像データとに基づいて、印刷用紙に印刷される表面の色と裏面の色が補色関係であるか否かを判定する。
【0053】
ステップS109において、表面と裏面が補色関係にあると判定された場合(YESの場合)、画像処理部73は、裏抜け画像処理を実行する(ステップS111)。なお、裏抜け画像処理の詳細については、後述する。
【0054】
次に、機器制御部74は、給紙部20、印刷部30、排紙部40、及び反転部50を制御することにより、給紙部20から給紙した印刷用紙の両面に印刷を行う(ステップS113)。具体的には、機器制御部74は、ステップS111において裏抜け画像処理が実行された表面画像データ及び裏面画像データに基づいて、給紙部20、印刷部30、排紙部40、及び反転部50を制御することにより、給紙部20から給紙した印刷用紙の両面に印刷を行う。
【0055】
次に、制御部70は、カウンタiの値に“1”を加算した後(ステップS115)、カウンタiの値が総頁数Cを越えたか否かを判定する(ステップS117)。
【0056】
ステップS117において、カウンタiの値が総頁数Cを越えたと判定された場合(YESの場合)、制御部70は、処理を終了し、カウンタiの値が総頁数C以下であると判定された場合(NOの場合)、制御部70は、処理をステップS105へ移行する。
【0057】
≪裏抜け画像処理≫
次に、図2に示した本発明の実施例1に係る画像形成装置1のフローチャートのステップS111における裏抜け画像処理の詳細について説明する。
【0058】
図3は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1における裏抜け画像処理を説明した図である。(a)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1が印刷用紙の表面に印刷するための表面画像データの一例を示した図であり、(b)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1が印刷用紙の裏面に印刷するための裏面画像データの一例を示した図であり、(c)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1が表面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の表面の一例を示した図であり、(d)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1が表面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の裏面の一例を示した図であり、(e)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1が裏面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の表面の一例を示した図であり、(f)は、本発明の実施例1に係る画像形成装置1が裏面画像データの画像率を低減した場合における印刷用紙の裏面の一例を示した図である。
【0059】
図3(a)に示すように、表面画像データには、「文」という文字データ101が含まれており、図3(b)に示すように、裏面画像データには、ベタ画像データ102が含まれている。ここで、ベタ画像データとは、任意の色が一色で全面が塗りつぶされている画像データのことである。
【0060】
本発明の実施例1に係る画像形成装置1では、制御部70の画像処理部73が、表面画像データ及び裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減する。ここでは、表面画像データには文字データが含まれ、裏面画像データにはベタ画像データが含まれているので、表面の画像率の方が低い。そこで、画像処理部73は、表面画像データの画像率を低減する。即ち、画像処理部73は、表面画像データ及び裏面画像データのいずれか一方が文字データである場合、文字データの画像率を低減する。
【0061】
例えば、画像処理部73は、1画素おきに間引き処理を実行することにより、文字データの画像率を低減する。これにより、図3(c)に示すように、印刷用紙の表面に印刷された文字画像103は薄く印刷される。
【0062】
このように、画像処理部73が、画像率の低い方の画像データの画像率を低減することにより、印刷用紙の表面に印刷されたインクが裏面まで浸透し難くなるので、図3(d)に示すように、印刷用紙の裏面側から透けて見える表面の文字画像104は目立ちにくくなる。これにより、画像形成装置1は、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0063】
また、図3(e),(f)に示すように、画像処理部73は、ベタ画像データが含まれている裏面画像データの画像率を低減するようにしてもよい。
【0064】
この場合においても、印刷用紙の裏面に印刷されたインクが表面まで浸透し難くなるので、図3(e)に示すように、裏面のベタ画像105が目立ちにくくなるが、図3(c),(d)に示した例に比較すると、印刷用紙の裏面側から透けて見える表面の文字画像106はやや目立ち易くなる。
【0065】
そのため、表面画像データ及び裏面画像データのいずれか一方が文字データである場合、ベタ画像データの画像率を低減するより、文字データの画像率を低減する方が、より裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0066】
以上のように、本発明の実施例1に係る画像形成装置1によれば、判定部72により補色関係であると判定された場合、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減するので、裏抜けすると目立ちやすい場合に、画像率を低減印刷するので、より効率的に裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0067】
特に、本発明の実施例1に係る画像形成装置1では、表面画像データ及び裏面画像データのいずれか一方が文字データである場合、文字データの画像率を低減するので、より裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0068】
なお、本発明の実施例1に係る画像形成装置1では、図2に示した本発明の実施例1に係る画像形成装置1のフローチャートのステップS109において、判定部72が、受信した印刷ジョブに含まれる、印刷用紙の表面に印刷するための画像データである表面画像データと、裏面に印刷するための画像データである裏面画像データとに基づいて、印刷用紙に印刷される表面全体の色と裏面全体の色が補色関係であるか否かを判定したがこれに限らない。
【0069】
例えば、判定部72は、予め定められた大きさの領域毎に印刷用紙に印刷される表裏面の全範囲において表面の色と裏面の色とが補色関係にあるか否かを判定するようにしてもよいし、印刷用紙に印刷される表面の予め定められた画素の色と裏面の予め定められた画素の色とが補色関係にあるか否かを判定するようにしてもよいし、印刷用紙に印刷されるそれぞれ表裏関係にある表面及び裏面の全ての画素毎に、補色関係にあるか否かを判定し、補色関係にある画素数が予め定めた画素補色閾値以上である場合に、表面と裏面とが補色関係にあると判定するようにしてもよい。
【0070】
また、本発明の実施例1に係る画像形成装置1では、画像処理部73は、表面画像データ及び裏面画像データのいずれか一方が文字データである場合、文字データの画像率を低減するようにしたがこれに限らない。例えば、画像処理部73は、文字データの一部の画像率を低減するようにしてもよい。さらに、表面に印刷される色と裏面とに印刷される色とを比較した結果、これらが補色関係を有する領域又は画素について、表面及び裏面のうち少なくともいずれか一方の面の画像率を低減するようにしてもよい。
【実施例2】
【0071】
本発明の実施例1では、表面画像データ及び裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減する画像形成装置1を例に挙げて説明した。
【0072】
本発明の実施例2では、両面のインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、画像率を低減する画像形成装置1を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施例2に係る画像形成装置1における印刷処理は、図2に示した本発明の実施例2に係る画像形成装置1における印刷処理を示したフローチャートのステップS111の裏抜け画像処理のみが異なるので、この裏抜け画像処理について説明する。
【0073】
上述したように、画像形成装置1の印刷部30に用いられるインクには、有機溶剤が含まれ、この有機溶剤は、蒸発し難いので、印刷用紙に浸透しやすい。そのため、印刷用紙の表面及び裏面の印刷に用いられるインク量の合計が多ければ多い程、裏抜けしやすくなる。
【0074】
図4は、本発明の実施例2に係る画像形成装置1において用いられるインクの浸透性について説明した図である。濃度201は、印刷用紙の裏面にK(ブラック)のインクで印刷した場合における裏面の濃度を示しており、濃度202は、印刷用紙の裏面にK(ブラック)のインクで印刷した場合における表面の濃度を示しており、濃度203は、印刷用紙の表面に無色透明の有機溶剤を塗布し、裏面にK(ブラック)のインクで印刷した場合における表面の濃度を示している。なお、濃度の値は、例えばOD(Optical Density)値として測定することができる。
【0075】
図4に示すように、濃度202に比較して、濃度203の値の方が高くなっている。これは、有機溶剤が印刷用紙に塗布されている場合、裏面に印刷されたK(ブラック)のインクが表面まで浸透していることを示している。
【0076】
このことから、印刷用紙の表面及び裏面の印刷に用いられるインク量の合計が多ければ多い程、インクに含まれる有機溶剤の量も多くなるので、裏抜けしやすくなるということがいえる。
【0077】
そこで、本発明の実施例2に係る画像形成装置1では、両面のインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、画像率を低減する。
【0078】
具体的には、まず、制御部70の画像処理部73は、表面画像データ及び裏面画像データに基づいて、印刷部30が印刷用紙の両面に印刷する際に使用するインク量、即ち両面印刷に用いられるインク量の合計を算出する。
【0079】
そして、画像処理部73は、この算出されたインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減する。ここで、インク量閾値は、印刷された印刷用紙の裏抜け度合いに基づいて、適切な値として予め設定されている。
【0080】
以上のように、本発明の実施例2に係る画像形成装置1によれば、表面画像データ及び裏面画像データに基づいて、印刷部30が印刷用紙の両面に印刷する際に使用するインク量を算出し、この算出されたインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減するので、使用するインクに蒸発し難い有機溶剤が含まれている場合に、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【実施例3】
【0081】
本発明の実施例1では、表面画像データ及び裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減する画像形成装置1を例に挙げて説明した。
【0082】
本発明の実施例3では、表面の色の濃度と裏面の色の濃度との差が、所定の濃度差閾値以上である場合、表面画像データ及び裏面画像データのうち、濃度が高い方の画像率を低減する画像形成装置1を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施例3に係る画像形成装置1における印刷処理は、図2に示した本発明の実施例2に係る画像形成装置1における印刷処理を示したフローチャートのステップS111の裏抜け画像処理のみが異なるので、この裏抜け画像処理について説明する。
【0083】
本発明の実施例3に係る画像形成装置1では、まず、制御部70の画像処理部73が、表面画像データ及び裏面画像データに基づいて、表面の色の濃度と裏面の色の濃度との差を算出する。
【0084】
次に、画像処理部73は、この算出された濃度との差が、所定の濃度差閾値以上である場合、表面画像データ及び裏面画像データのうち、濃度が高い方の画像率を低減する。ここで、濃度差閾値印刷された印刷用紙の裏抜け度合いに基づいて、適切な値として予め設定されている。
【0085】
以上のように、本発明の実施例3に係る画像形成装置1によれば、表面の色と裏面の色が補色関係である場合に、表面の色の濃度と裏面の色の濃度との差を算出し、この算出された濃度差が、所定の濃度差閾値以上である場合、表面画像データ及び裏面画像データのうち、濃度が高い方の画像率を低減するので、表面の色と裏面の色が補色関係であり、かつ表面の色の濃度と裏面の色の濃度との差が大きい場合にも、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【実施例4】
【0086】
本発明の実施例1では、表面画像データ及び裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減する画像形成装置1を例に挙げて説明した。
【0087】
本発明の実施例4では、表面又は裏面の色のうち、一方の面の色が濃度のインク量影響度が所定の影響度閾値より小さい有彩色であり、かつ他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高い場合に、表面画像データ及び裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減する画像形成装置1を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施例2に係る画像形成装置1における印刷処理は、図2に示した本発明の実施例2に係る画像形成装置1における印刷処理を示したフローチャートのステップS111の裏抜け画像処理のみが異なるので、この裏抜け画像処理について説明する。
【0088】
上述したように、画像形成装置1の印刷部30に用いられるインクの色は、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)であるが、これらのインクの色は、それぞれ濃度のインク量影響度が異なる。ここで、濃度のインク量影響度とは、インク量を1単位増加させた場合に対する濃度の上昇度合いを示す。
【0089】
図5は、本発明の実施例4に係る画像形成装置1で用いられるインクそれぞれのインク量影響度を説明した図である。濃度301は、K(ブラック)の濃度を示しており、濃度302は、C(シアン)の濃度を示しており、濃度303は、M(マゼンダ)の濃度を示しており、濃度304は、Y(イエロー)の濃度を示している。
【0090】
図5に示すように、濃度301、濃度302、濃度303、濃度304の順に傾きが大きいので、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)の順に、濃度のインク量影響度が大きいことがわかる。このように、濃度のインク量影響度が大きいと、裏抜けしやすく、濃度のインク量影響度が小さいと、裏抜けし難い。例えば、Y(イエロー)は、K(ブラック)に比べて、同量のインク量を増加させたときの濃度の上昇が小さい。即ち、Y(イエロー)は、K(ブラック)に比べて、濃度のインク量影響度が小さいので、Y(イエロー)は、K(ブラック)より裏抜けし難いインク色であるといえる。
【0091】
そこで、本発明の実施例4に係る画像形成装置1では、一方の面の色が濃度のインク量影響度が所定の影響度閾値より小さい有彩色であり、かつ他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高い場合に、表面画像データ及び裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減する。
【0092】
図6は、本発明の実施例4に係る画像形成装置1における裏抜け印刷処理を示したフローチャートである。
【0093】
図6に示すように、まず、画像処理部73は、表面又は裏面の色のうち、一方の面の色が濃度のインク量影響度が、所定の影響度閾値より小さい有彩色であるか否かを判定する(ステップS201)。ここで、影響度閾値は、印刷された印刷用紙の裏抜け度合いに基づいて、適切な値として予め設定されている。印刷部30に用いられるインクの色は、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)であるので、例えば、Y(イエロー)のみが、濃度のインク量影響度が小さい有彩色として判定されるように影響度閾値が設定される。
【0094】
ステップS201において、一方の面の色が濃度のインク量影響度が、所定の影響度閾値より小さい有彩色であると判定された場合(YESの場合)、画像処理部73は、他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高いか否かを判定する(ステップS203)。印刷部30に用いられるインクの色は、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)であるので、濃度閾値は、印刷された印刷用紙の裏抜け度合いに基づいて、適切な値として予め設定されている。
【0095】
ステップS203において、他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高いと判定された場合(YESの場合)、画像処理部73は、表面画像データ及び裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減する(ステップS205)。
【0096】
以上のように、本発明の実施例4に係る画像形成装置1によれば、表面の色と裏面の色が補色関係である場合に、表面又は裏面の色のうち、一方の面の色が濃度のインク量影響度が影響度閾値より小さい有彩色であり、かつ他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高い場合に、表面画像データ及び裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減するので、裏抜けし難いインクと、裏抜けしやすいインクが所定の濃度閾値より高い濃度で使用される場合、即ち、非常に裏抜けしやすい環境にある場合にも、裏抜けが目立たないように印刷することができる。
【0097】
なお、本発明の実施例1〜4に係る画像形成装置1では、制御部70が、受信した印刷ジョブに含まれる利用者が設定した設定情報に基づいて、片面印刷が要求されているか、又は両面印刷が要求されているかを判定したが、これに限らず、操作部60の表示/入力パネル61から利用者が設定した設定情報に基づいて、片面印刷が要求されているか、又は両面印刷が要求されているかを判定するようにしてもよい。
【0098】
なお、本発明の実施例1〜4に係る画像形成装置1では、ネットワーク9に接続された端末100から受信した印刷ジョブに含まれる画像データに基づいて印刷を実行したがこれに限らない。例えば、画像読み取り部2により読み取られた画像データ、又はファックス受信部4からファクシミリ受信した画像データに基づいて、印刷を実行するようにしてもよい。
【0099】
また、本発明の実施例1〜4に係る画像形成装置1では、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像データ全体の画像率を低減したが、表面画像データ及び裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像データの一部を低減するようにしてもよい。
【0100】
また、本発明の実施例1〜4に係る画像形成装置1では、ライン単位で印刷を行うインクジェット方式のラインカラープリンタを例に挙げて説明したが、これに限らず、シリアルインクジェット方式、レーザ方式、又は孔版印刷方式等の画像形成装置であってもよい。
【0101】
さらに、本発明の実施例1〜4に係る画像形成装置1では、印刷部30に用いられるインクは有機溶剤が含まれるものを例に挙げて説明したが、これに限らず、印刷用紙に対して浸透する成分が含まれるインクであればよい。
【符号の説明】
【0102】
1…画像形成装置
2…画像読み取り部
3…画像形成部
4…ファックス受信部
9…ネットワーク
20…給紙部
30…印刷部
40…排紙部
50…反転部
60…操作部
61…表示/入力パネル
70…制御部
71…受信部
72…判定部
73…画像処理部
74…機器制御部
81…ネットワークインタフェース部
82…外部インタフェース部
90…画像記憶部
100…端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面画像データに基づいて印刷媒体の表面に印刷すると共に、裏面画像データに基づいて印刷媒体の裏面に印刷する画像形成手段と、
前記表面画像データ及び前記裏面画像データに基づいて、前記印刷媒体に印刷される表面の色と裏面の色が補色関係であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により補色関係であると判定された場合、前記表面画像データ及び前記裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減する画像処理手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、
前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、画像率の低い方の画像データの画像率を低減する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、
前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、いずれか一方に文字データが含まれている場合、文字データを含む画像データの画像率を低減する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、
前記表面画像データ及び前記裏面画像データに基づいて、前記画像形成手段が印刷媒体の両面に印刷する際に使用するインク量を算出し、この算出されたインク量が所定のインク量閾値以上である場合に、前記表面画像データ及び前記裏面画像データの少なくともいずれか一方の画像率を低減する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、
前記表面画像データに基づいて印刷する表面の色の濃度と、前記裏面画像データに基づいて印刷する裏面の色の濃度との差が、所定の濃度差閾値以上である場合、前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、色の濃度が高い方の画像データの画像率を低減する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、
前記表面画像データに基づいて印刷する表面、又は前記裏面画像データに基づいて印刷する裏面の色のうち、一方の面の色が濃度のインク量影響度が所定の影響度閾値より小さい有彩色であり、かつ他方の面の色の濃度が所定の濃度閾値より高い場合に、前記表面画像データ及び前記裏面画像データのうち、他方の面に対応する画像データの画像率を低減する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191485(P2012−191485A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54030(P2011−54030)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】