説明

画像情報処理装置、撮像装置、画像情報処理方法およびプログラム

【課題】立体視コンテンツのシーンの切替えにおいて奥行値を滑らかに遷移させる。
【解決手段】チャプタ#iの終端部分の奥行値711とチャプタ#(i+1)の開始部分の奥行値714との間で急激な変化がある場合には、チャプタ#iとチャプタ#(i+1)の切替えの際に全体の奥行値を一旦ゼロ(無限遠)に補正する。その際、例えば0.5秒以上の期間をかけて奥行値を遷移させる。チャプタ#iの終端部分における元々の奥行値721から終端フレームの奥行値722がゼロになるように順次遷移させる。同様に、チャプタ#(i+1)の開始フレームの奥行値723をゼロとして、開始部分における元々の奥行値724まで順次遷移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像情報処理装置に関し、特に立体視表示のための奥行値を含む画像情報を取り扱う画像情報処理装置、撮像装置、および、これらにおける処理方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンテンツを表示するための表示装置として、平面視(2次元)コンテンツの表示のみならず、立体視(3次元)コンテンツを表示可能な表示装置が提案されている。このような表示装置では、両眼間に生じる視差(disparity)を利用しているため、両眼の輻輳角と焦点距離に矛盾が生じている場合や、視差の値が適切でない場合などには視聴者に違和感を与えるおそれがある。
【0003】
そこで、立体視コンテンツの生体影響度を算出し、視聴者の耐性レベルに応じて、表示対象となる立体視コンテンツの表示状態を制御する表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この従来技術では、コンテンツメタ情報にコンテンツのデプスマップの情報を格納し、その最大奥行き量が大きければ、デプスマップの値を標準値よりも小さくなるように変更して表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−246725号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、奥行き量を調整することにより、視聴者に与える影響を抑制している。しかしながら、この従来技術では、視聴者の耐性レベルと立体視コンテンツとの一般的な関係(いわゆる3D酔いの危険度)から表示を変更しており、コンテンツの時間的遷移については考慮されていない。
【0006】
立体視コンテンツには、一般にシーンの切替えが含まれており、その切替えの際に奥行値が急激に変化して視聴者に不快感を与えるおそれがある。これは、立体視コンテンツにおいて立体映像間の切替えだけでなく、立体映像と平面映像との切替えにおいても同様に問題となる。また、静止画のスライドショーを表示する場合においても、動画と同様の問題がある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、立体視コンテンツのシーンの切替えにおいて奥行値を滑らかに遷移させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の側面は、コンテンツにおけるシーンの切替えを検出するシーン切替検出部と、立体視表示のための奥行値の変化が上記シーンの切替えの前後において所定の表示速度により遷移するように上記奥行値を補正する奥行値補正部とを具備する画像情報処理装置、その画像情報処理方法およびプログラムである。これにより、立体視表示のための奥行値をシーンの切替えの前後において滑らかに遷移させるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記奥行値補正部は、上記コンテンツにおける何れかの領域に対応する奥行値の変化が上記シーンの切替の前後において所定の表示速度により遷移するように上記奥行値を補正してもよい。これにより、コンテンツにおける何れかの領域に対応する奥行値をシーンの切替えの前後において滑らかに遷移させるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記奥行値補正部は、上記シーンの切替えの前後において画像全体の奥行値を望遠側に補正してもよい。これにより、シーンの切替えの前後において画像全体の奥行値を望遠側に遷移させるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記奥行値補正部は、上記シーンの切替えの前の奥行値から上記シーンの切替の後の奥行値に所定の表示速度により遷移するように上記奥行値を補正してもよい。これにより、シーンの切替えの前の奥行値から上記シーンの切替の後の奥行値に滑らかに遷移させるという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記奥行値補正部は、上記シーンの切替前の所定の区間、上記シーンの切替後の所定の区間または上記シーンの切替えの前後に跨った所定の区間の何れかにおいて奥行値を遷移させてもよい。
【0013】
また、この第1の側面において、上記シーン切替検出部は、上記シーンの切替えとして立体視画像と平面視画像の切替えを検出してもよい。これにより、立体視画像と平面視画像の切替えの前後において滑らかに遷移させるという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記シーン切替検出部は、上記シーンの切替えとして動画と静止画の切替えを検出してもよい。これにより、動画と静止画の切替えの前後において滑らかに遷移させるという作用をもたらす。
【0015】
また、本発明の第2の側面は、コンテンツを構成する画像データを立体視表示するための奥行値について一定の値を固定奥行値として設定する固定奥行値設定部と、上記画像データの何れかの領域を選択して当該領域に対応する奥行値を基準奥行値として特定する基準奥行値特定部と、上記画像データの各領域に対応する奥行値について上記基準奥行値が上記固定奥行値となる比率によって補正を行う奥行値補正部とを具備する画像情報処理装置、その画像情報処理方法およびプログラムである。これにより、特定の領域の奥行値を一定値に維持させるという作用をもたらす。
【0016】
また、本発明の第3の側面は、画像を撮像して撮像画像および立体視表示のための奥行値を供給する撮像画像供給部と、上記撮像画像におけるシーンの切替えを検出するシーン切替検出部と、上記奥行値の変化が上記シーンの切替えの前後において所定の表示速度により遷移するように上記奥行値を補正する奥行値補正部とを具備する撮像装置、その撮像処理方法およびプログラムである。これにより、立体視表示のための奥行値をシーンの切替えの前後において滑らかに遷移させるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、立体視コンテンツのシーンの切替えにおいて奥行値を滑らかに遷移させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における撮像装置300の全体構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるコンテンツ記録ユニット200の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における奥行マップ220の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における奥行値と距離との関係例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における映像データ210と奥行マップ220との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態による奥行値の補正の第1の態様を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態による奥行値の補正の第1の態様のチャプタ全体を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における奥行値補正機構の第1の機能構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における奥行値補正の第1の態様による処理の流れを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態による奥行値の補正の第2の態様を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における奥行値補正機構の第2の機能構成例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態における奥行値補正の第2の態様による第1の処理の流れを示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における奥行値補正の第2の態様による第2の処理の流れを示す図である。
【図14】本発明の実施の形態における奥行値補正の第2の態様による第3の処理の流れを示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態における静止画データと動画データの関係を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態による奥行値の補正の第3の態様を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態における奥行値補正機構の第3の機能構成例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態における奥行値補正の第3の態様による処理の流れを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態による奥行値の補正の第3の態様の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(シーン切替の際に奥行値を望遠側にする例)
2.第2の実施の形態(シーン切替の際に主画像領域の奥行値を遷移させる例)
3.第3の実施の形態(スライドショーの静止画切替の際に奥行値を補正する例)
4.変形例
【0020】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置300の全体構成例]
図1は、本発明の実施の形態における撮像装置300の全体構成例を示す図である。この撮像装置300は、レンズ部310と、このレンズ部310を操作するモーター315および316と、モータードライバ319とを備える。また、この撮像装置300は、撮像素子321と、アナログ処理部322と、A/D変換器323と、デジタル処理部324と、これらのタイミングを生成するタイミング生成器325と、カメラ制御部329とを備える。また、この撮像装置300は、映像符号化部331と、奥行情報設定部332と、ファイル生成部333と、ファイル復号部334と、映像復号部335と、奥行情報出力部336とを備える。また、この撮像装置300は、メモリ337と、そのメモリコントローラ338と、システム制御部339とを備えている。このシステム制御部339には、操作受付部390からの信号線が接続されている。さらに、撮像装置300は、エラー訂正部341と、データ変復調部342と、磁界変調ドライバ343と、磁界ヘッド344と、サーボ回路345と、モーター346と、光ピックアップ347と、ドライブ制御部349と、表示部350とを備えている。また、この撮像装置300には、映像を記録する記録媒体として、例えば光ディスク370が装着される。
【0021】
レンズ部310は、被写体からの光を受光するものであり、ズームレンズ311およびフォーカスレンズ312を含む。ズームレンズ311およびフォーカスレンズ312にはそれぞれモーター315および316が接続されており、これらモーター315および316の駆動によってズームレンズ311およびフォーカスレンズ312が移動できるようになっている。また、モーター315および316にはモータードライバ319が接続されており、このモータードライバ319によってモーター315および316が制御される。
【0022】
撮像素子321は、レンズ部310によって受光された光を静電気に変換して蓄える素子であり、例えば、CCDやCMOSセンサー等が利用される。アナログ処理部322は、撮像素子321からのアナログ信号におけるノイズを相関二重サンプリング(CDS)により取り除き、自動利得制御(AGC)によりアナログ信号の高低部分を補正する。A/D変換器323は、アナログ処理部322からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル処理部324は、ホワイトバランスやガンマ変換等の処理を行う。
【0023】
デジタル処理部324からの出力信号は映像符号化部331の映像信号入力となる。また、このデジタル処理部324で検出された情報はカメラ制御部329に伝えられる。カメラ制御部329は、デジタル処理部324で検出された情報に基づいて、モータードライバ319およびタイミング生成器325に対する制御を行う。タイミング生成器325は、撮像素子321、アナログ処理部322、A/D変換器323およびデジタル処理部324に対するタイミング信号を生成する。なお、ここまでに説明したレンズ部310、撮像素子321などは、特許請求の範囲に記載の撮像画像供給部の一例である。
【0024】
映像符号化部331は、映像信号の符号化を行う。奥行情報設定部332は、映像信号に対応する奥行情報を設定する。ファイル生成部333は、符号化された映像信号および奥行情報を多重化して映像ファイル(多重化データ)を生成する。ファイル復号部334は、映像ファイルを復号して映像信号および奥行情報を出力する。映像復号部335は、映像信号を復号して表示部350に出力する。奥行情報出力部336は、奥行情報を復号して表示部350に出力する。
【0025】
メモリ337は、映像ファイル等を保持するメモリである。メモリコントローラ338は、ファイル生成部333やエラー訂正部341から供給された映像ファイル(多重化データ)をメモリ337に書き込み、また、メモリ337から多重化データを読み出してエラー訂正部341やファイル復号部334に供給する。
【0026】
システム制御部339は、上述のようなメモリコントローラ338の動作やファイル生成部333およびファイル復号部334の動作を制御する。また、システム制御部339は、ドライブ制御部349と接続してディスクドライブの動作を要求する。また、システム制御部339は、カメラ制御部329と接続して、オートフォーカスおよびズームの状態として、オートフォーカスがピントを合わせている動作途中か否かや、焦点距離などを得ることができる。
【0027】
さらに、システム制御部339には操作受付部390が接続されており、ユーザからの操作入力を把握することができる。この操作受付部390としては、例えば、ズーム関係のボタンや記録関係のボタンが設けられる。システム制御部339は、カメラ制御部329と接続しており、ユーザからの操作入力に応じてズーム等の制御が行われる。
【0028】
エラー訂正部341は、メモリコントローラ338からの多重化データにインターリーブおよびエラー訂正のための符号を付加してデータ変復調部342に供給する。また、エラー訂正部341は、データ変復調部342からの復調信号に対してデ・インターリーブおよびエラー訂正処理を行って多重化データをメモリコントローラ338に供給する。
【0029】
データ変復調部342は、光ディスク370に記録するための所定の変調を施した後、磁界変調ドライバ343に出力すると同時に、光ピックアップ347を駆動するための信号を出力する。また、データ変復調部342は、光ピックアップ347からの信号に所定の復調処理を施して、エラー訂正部341に復調信号として出力する。
【0030】
磁界変調ドライバ343は、記録時には入力された信号に応じて磁界ヘッド344を駆動して光ディスク370に磁界を印加する。光ピックアップ347は、記録時には記録用のレーザービームを光ディスク370に照射して、光ディスク370に信号を記録する。また、光ピックアップ347は、再生時には再生用のレーザービームを光ディスク370に照射して、光ディスク370から反射されたビーム量から電気信号に光電変換して、再生信号を取得する。これらの動作は、システム制御部339からの要求に応じて、ドライブ制御部349が、サーボ回路345に要求を出してディスクドライブ全体の制御を行う。サーボ回路345は、光ピックアップ347のディスク径方向の移動のサーボ、トラッキングサーボ、フォーカスサーボを制御し、また、モーター346のスピンドルサーボを制御する。これにより、光ディスク370は、映像ファイル(多重化データ)の記録または再生を行う。
【0031】
なお、上述の構成例では、磁界変調を行う光磁気ディスクを想定しているが、相変化ディスクの場合でも基本的な構成は同様である。また、光ディスク370に代えて、ハードディスクなどの磁気ディスクや、SSD(Solid State Drive)などの半導体ディスクを利用してもよい。
【0032】
表示部350は、映像復号部335からの映像信号および奥行情報出力部336からの奥行情報に基づき、両眼間に生じる視差を利用して立体視画像を表示するものである。この表示部350が立体視表示を行う際の方式には特に限定されないが、この表示部350は例えばマイクロポール方式のディスプレイにより実現される。また、ここでは、映像信号と奥行情報に基づいて立体視表示を行う表示部を想定したが、これに限定されるものではない。一般に、奥行情報から左右視差のオフセット値に変換することは可能であるため、左右視差方式(サイドバイサイド方式)の表示部にも適用可能である。
【0033】
[コンテンツ記録ユニット200の構成例]
図2は、本発明の実施の形態におけるコンテンツ記録ユニット200の構成例を示す図である。このコンテンツ記録ユニット200は、上述の映像ファイルの記録単位である。コンテンツ記録ユニット200は、映像データ#1乃至N(210−1乃至210−N)(以下、単に「映像データ210」とも称する。)および奥行マップ#1乃至N(220−1乃至220−N)(以下、単に「奥行マップ220」とも称する。)を保持する。
【0034】
映像データ210および奥行マップ220は、例えばGOP(Group Of Pictures)を単位として、それぞれ対応付けられる。すなわち、第1番目のGOPを記録する映像データ210−1には奥行マップ220−1が対応し、第2番目のGOPを記録する映像データ210−2には奥行マップ220−2が対応する。GOPはMPEG(Moving Pictures Experts Group)規格における動画のフレーム群である。多くの場合、1GOPには15フレームが含まれる。フレームレートとして29.97フレーム/秒を想定すると、1GOPは約0.5秒に相当する。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態における奥行マップ220の例を示す図である。奥行マップ220は、フレーム画像の各画素に対応して奥行値を保持するものである。すなわち、奥行マップ220は、2次元のXY平面上の各画素のそれぞれについて奥行値を保持する。奥行値は、例えば8ビット幅により「0」から「255」の範囲の値を有し、視聴者から見て近距離に存在するほど大きな値を有するものとする。この図の例では、手前に存在する人物領域に対応する奥行値は「255」を示し、背景領域に対応する奥行値は「0」を示している。なお、奥行マップ220は、一般に、デプスマップ(depth map)または深度マップとも呼称される。
【0036】
図4は、本発明の実施の形態における奥行値と距離との関係例を示す図である。図4(a)から分かるように、レンズから被写体までの距離が0.5[m]以下であれば奥行値は「255」を示し、距離が5.0[m]を超える場合には奥行値は「0」を示す。距離が0.5[m]より大きく、5.0[m]以下である場合には、図4(a)のように「0」から「255」の範囲の値を有する。
【0037】
また、図4(b)から分かるように、奥行値は距離の対数値と線形関係にあるように設定している。これは、遠くよりも近くの方がより精細に知覚可能であるという人間の感覚を考慮したものである。
【0038】
撮像装置300において奥行値を設定する場合、まずワイド端で絞り開放の状態にしてレンズ被写界深度を最も浅く制御し、レンズ焦点を無限遠(5.0[m]超え)に設定する。これにより、画面内領域の合焦する映像領域を把握し、その領域を背景領域として奥行値「0」を割り当てる。次に、ワイド端で絞り開放の状態にしてレンズ被写界深度を最も浅く制御したまま、レンズ焦点を近距離(0.5[m])に設定する。これにより、画面内領域の合焦する映像領域を把握し、その領域を最近距離点として奥行値「255」を割り当てる。そして、ワイド端で絞り開放の状態にしてレンズ被写界深度を最も浅く制御したまま、レンズ焦点を近距離(0.5[m])から無限遠(5.0[m]超え)まで順次変化させて、レンズ位置制御により距離測定を行う。これに同期して順次画面内領域の合焦する映像領域を記憶していく。このようにして、図4(a)の対応関係が割り当てられる。
【0039】
このような初期設定がされた後は、被写体の輪郭認識や動きベクトル検出解析に基づいて、各画素に対応する奥行値を生成することが可能となる。奥行値は、撮像の際にリアルタイムに生成されてもよく、また、カメラ情報から事後的に生成されてもよい。カメラ情報は、撮影時の設定条件などの情報としてデジタルカメラ内部から得られるものである。例えば、F値、露出時間、露光補正値、AGCゲイン値、フラッシュの有無、レンズ焦点距離、ホワイトバランス、被写体距離、手ぶれ補正、顔メタ情報、デジタルズーム倍率、エフェクト撮影、ベンダー名などの情報を含む。このカメラ情報は、例えばAVCHD規格であれば、モディファイドデジタルビデオパック(MDP:Modified Digital Video Pack)にストリームファイルとして記録することが可能である。顔メタ情報によって顔の存在する座標が分かる場合、その座標位置における距離としてカメラ情報の被写体距離を利用することができる。得られた距離は、図4(a)の対応表から奥行値に変換することができる。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態における映像データ210と奥行マップ220との関係を示す図である。図5(a)は映像データ210の一例を示している。この例では、撮像装置の近傍に人物が映っており、その背後に背景が映っている。
【0041】
図5(b)は図5(a)の映像データ210に対応する奥行マップ220の一例を示している。人物の領域の奥行値221は、十六進数で「B4」、すなわち十進数で「180」を示している。これは、撮像装置から1.0[m]の距離に人物が位置していることを意味する。背景領域の奥行値222は、「0」を示している。これは、撮像装置から無限遠(5.0[m]超え)に背景が位置していることを意味する。奥行マップ220に含まれる各奥行値は、映像データ210の各画素に対応している。
【0042】
[奥行値の補正の第1の態様]
図6は、本発明の実施の形態による奥行値の補正の第1の態様を示す図である。図6(a)のように、チャプタの切替えの際に、フレーム内の領域の奥行値が急激に変化する場合を想定する。ここでは、チャプタ#iの終端部分における特定の領域の奥行値711が、チャプタ#(i+1)の開始部分において奥行値714に変化している。この場合、特定の領域の奥行値が急激に変化するため、視聴者に違和感を与えるおそれがある。なお、この場合の特定の領域は、人物などに該当するフレーム内の一部の領域が想定されるが、フレーム全体であってもよい。
【0043】
本発明の実施の形態では、奥行値の補正の第1の態様として、図6(b)のようにチャプタの切替えの際に全体の奥行値を一旦ゼロ(無限遠)に補正する。これにより、チャプタの切替えの際における奥行値の急激な変化を抑制することができる。ただし、奥行値をゼロにする補正自体を急激に行うと、補正による新たな違和感を生じてしまうおそれがある。そこで、奥行値を補正する際には、例えば0.5秒以上の期間をかけて所定の表示速度により奥行値を遷移させることが望ましい。図6(b)の例では、チャプタ#iの終端部分における元々の奥行値721から終端フレームの奥行値722がゼロになるように、所定の表示速度により順次遷移させている。同様に、チャプタ#(i+1)の開始フレームの奥行値723をゼロとして、開始部分における元々の奥行値724まで順次遷移させている。
【0044】
図7は、本発明の実施の形態による奥行値の補正の第1の態様のチャプタ全体を示す図である。ここでは、kフレームからなるチャプタ#jを想定している。このチャプタ#jでは、開始部分のnフレームと終端部分のnフレームにおいてそれぞれ奥行値が補正されている。
【0045】
チャプタ#jの開始部分のnフレームでは奥行値がゼロから順次増加している。この例では、奥行値がゼロから(1/n)ずつ増加し、第(n+1)フレーム目において補正が施されない値に収束するものとしている。すなわち、第(n+1)フレーム目の奥行値をAとすると、第iフレーム目(iは1からnの範囲の整数)の奥行値はA×((i−1)/n)となる。
【0046】
また、チャプタ#jの終端部分のnフレームでは奥行値がゼロに向かって順次減少している。この例では、奥行値が(1/n)ずつ減少し、第kフレーム目においてゼロに収束するものとしている。すなわち、第(k−n)フレーム目の奥行値をBとすると、第iフレーム目(iは(k−(n−1))からkの範囲の整数)の奥行値はB×((k−i)/n)となる。
【0047】
[奥行値の補正の第1の態様の機能構成]
図8は、本発明の実施の形態における奥行値補正機構の第1の機能構成例を示す図である。この奥行値補正機構は、シーンの切替えの前後において奥行値をゼロ(望遠側)に滑らかに遷移させるものである。撮像装置300においては、撮像された際の奥行値を奥行情報設定部332により補正した上で奥行マップ220を設定してもよく、また、補正されていない奥行マップ220の奥行値を奥行情報出力部336により補正して表示部350に出力してもよい。したがって、撮像装置300においては、奥行情報設定部332または奥行情報出力部336に、奥行値補正機構を設けることができる。また、この奥行値補正機構は、撮像装置のみならず、映像ファイルを扱う画像情報処理装置においても実現することができる。
【0048】
この奥行値補正機構は、コンテンツ供給部110と、コンテンツ読出し管理部120と、遷移フレーム数設定部130と、コンテンツ先読み管理部140と、奥行値補正部150とを備えている。
【0049】
コンテンツ供給部110は、撮像されたコンテンツを供給するものである。撮像装置300においては撮像素子321乃至カメラ制御部329などによってコンテンツが供給される。画像情報処理装置の場合には、コンテンツを記憶する記憶部からの(図示しない)読出し部によってコンテンツが供給される。
【0050】
コンテンツ読出し管理部120は、コンテンツ供給部110から供給されるコンテンツを1フレームずつ読み出していく管理を行うものである。このコンテンツ読出し管理部120は、現フレーム番号保持部121と、現フレーム奥行値保持部122とを備える。現フレーム番号保持部121は、コンテンツ供給部110から読み出された現在のフレームのフレーム番号を保持するものである。現フレーム奥行値保持部122は、コンテンツ供給部110から読み出された現在のフレームに対応する奥行値を保持するものである。
【0051】
遷移フレーム数設定部130は、シーンの切替えの前後において補正対象となるフレームの数を予め設定するものである。図7の例では、シーンの切替えの前後において、それぞれnフレームずつが遷移フレーム数として設定される。
【0052】
コンテンツ先読み管理部140は、コンテンツ読出し管理部120による読出しに先立って、コンテンツにおける現在のフレームよりも先の(未来の)フレームを先読みする管理を行うものである。このコンテンツ先読み管理部140は、シーン切替検出部141と、最終フレーム番号生成部142とを備える。シーン切替検出部141は、先読みされたコンテンツの中からシーン切替の位置を検出するものである。シーン切替としては、例えばチャプタの切替が想定される。最終フレーム番号生成部142は、シーン切替検出部141によって検出されたシーン切替位置に基づいて、現在のシーンの最終フレーム番号を生成するものである。図7の例では、第kフレーム目が最終フレームとなる。
【0053】
奥行値補正部150は、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値を補正するものである。図7の例では、奥行値は次式のように補正される。
補正後奥行値=補正前奥行値×m/n
ただし、nは遷移フレーム数設定部130に保持された遷移フレーム数であり、mはシーン切替の開始部分または終端部分の何れであるかに応じて以下のように設定される。
シーン開始nフレームの場合; m=現フレーム番号−1
シーン終端nフレームの場合; m=最終フレーム番号−現フレーム番号
なお、現フレーム番号は現フレーム番号保持部121から供給され、最終フレーム番号は最終フレーム番号生成部142から供給される。
【0054】
[奥行値の補正の第1の態様の動作例]
【0055】
図9は、本発明の実施の形態における奥行値補正の第1の態様による処理の流れを示す図である。ここでは、シーン切替の一例として、チャプタの切替えを検出する例について説明する。
【0056】
まず、コンテンツ読出し管理部120において、現フレームの更新が行われる(ステップS911)。すなわち、現フレーム番号保持部121に保持される現フレーム番号が更新されるとともに、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が更新される。
【0057】
現フレームがチャプタの開始nフレームであれば(ステップS913)、変数mに「現フレーム番号−1」が設定される(ステップS914)。一方、現フレームがチャプタの終端nフレームであれば(ステップS916)、変数mには「最終フレーム番号−現フレーム番号」が設定される(ステップS917)。
【0058】
そして、現フレームがチャプタの開始nフレームまたは終端nフレームであれば、奥行値補正部150によって、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が「m/n」倍に補正される(ステップS918)。
【0059】
その後、現フレームの映像データおよび奥行値に基づいて表示部350に立体視画像が表示される(ステップS919)。現フレームがチャプタの開始nフレームまたは終端nフレームであれば上述のように補正された奥行値が用いられ、それ以外のフレームについては補正されない奥行値が用いられる。なお、ここでは表示部350を有する撮像装置300を想定して動作を説明したが、後に表示することを前提として奥行値を補正して記憶しておくようにしても構わない。
【0060】
このように、本発明の実施の形態の第1の態様によれば、シーン切替の前後において奥行値をゼロ(望遠側)に滑らかに遷移させることができ、奥行値の急激な変化による違和感を解消することができる。
【0061】
<2.第2の実施の形態>
[奥行値の補正の第2の態様]
図10は、本発明の実施の形態による奥行値の補正の第2の態様を示す図である。上述の第1の態様では奥行値を一旦ゼロに遷移させていたが、この第2の態様ではシーン切替の前後において奥行値を所定の表示速度により直接遷移させることを想定する。
【0062】
図10(a)は、チャプタの終端部分においてのみ奥行値を遷移させる例である。すなわち、この例では、チャプタの終端部分において奥行値731(a)から奥行値732に遷移させ、チャプタの開始部分においては奥行値733(c)から奥行値734まで一定の値を維持させている。
【0063】
図10(b)は、チャプタの開始部分においてのみ奥行値を遷移させる例である。すなわち、この例では、チャプタの終端部分において奥行値741から奥行値742までは一定の値(a)を維持し、チャプタの開始部分において奥行値743から奥行値744(c)に遷移させている。
【0064】
図10(c)は、チャプタの開始部分および終端部分の両者において奥行値を遷移させる例である。すなわち、この例では、チャプタの終端部分において奥行値751(a)から奥行値752に遷移させ、チャプタの開始部分においても奥行値753(b)から奥行値754に遷移させている。
【0065】
このように、奥行値を直接遷移させる場合には、チャプタの切替前後の何れの区間において遷移させてもよい。
【0066】
[奥行値の補正の第2の態様の機能構成]
図11は、本発明の実施の形態における奥行値補正機構の第2の機能構成例を示す図である。この奥行値補正機構は、奥行値が急激に変化している場合にその変化を滑らかに遷移させるものである。以下では、シーン切替の一例として、チャプタの切替えを検出する例について説明する。
【0067】
この奥行値補正機構の第2の機能構成は、コンテンツ供給部110と、コンテンツ読出し管理部120と、遷移フレーム数設定部130と、コンテンツ先読み管理部140と、奥行値補正部150とを備える点は、図8により説明した第1の機能構成と同様である。この奥行値補正機構の第2の機能構成は、第1の機能構成に加えて開始奥行値保持部160を備える。また、コンテンツ先読み管理部140においてさらに目標奥行値生成部143を備える。
【0068】
開始奥行値保持部160は、奥行値を遷移させる際の開始フレームの奥行値を保持するものである。図10(a)の例では、チャプタ#iの奥行値731が開始フレームの奥行値となる。図10(b)の例ではチャプタ#(i+1)の奥行値743が開始フレームの奥行値となる。また、図10(c)の例では、チャプタ#iの奥行値751およびチャプタ#(i+1)の奥行値753が開始フレームの奥行値となる。開始フレームは、シーン切替検出部141によって検出されたシーン切替位置および遷移フレーム数設定部130によって設定された遷移フレーム数に基づいて定められる。
【0069】
目標奥行値生成部143は、奥行値を補正する際の目標奥行値を生成するものである。図10(a)の例では、チャプタ#iの奥行値732が目標奥行値となる。図10(b)の例では、チャプタ#(i+1)の奥行値744が目標奥行値となる。また、図10(c)の例では、チャプタ#iの奥行値752およびチャプタ#(i+1)の奥行値754が目標奥行値となる。目標奥行値に該当するフレームは、シーン切替検出部141によって検出されたシーン切替位置および遷移フレーム数設定部130によって設定された遷移フレーム数に基づいて定められる。なお、図10(b)の例における奥行値744および図10(c)の例における奥行値754は、現フレームの奥行値とほぼ同等であると考えることができるため、現フレームの奥行値により代用することが可能である。また、目標奥行値は任意に定めることが可能である。例えば、次のチャプタ全体のダイナミックレンジに応じて目標奥行値を設定してもよい。
【0070】
この奥行値補正機構の第2の機能構成において、奥行値補正部150は以下のように奥行値を補正する。図10(a)のように切替前のチャプタにおいて遷移を行う場合には、チャプタの終了nフレームについて次式1により奥行値を補正する。
補正後奥行値=目標奥行値+(目標奥行値−補正前奥行値)×m/n (式1)
ただし、
m=最終フレーム番号−現フレーム番号
である。
【0071】
図10(b)のように切替後のチャプタにおいて遷移を行う場合には、チャプタの開始nフレームについて次式2により奥行値を補正する。
補正後奥行値=開始奥行値+(補正前奥行値−開始奥行値)×m/n (式2)
ただし、
m=現フレーム番号−1
である。
【0072】
図10(c)のように切替の前後のチャプタに亘って遷移を行う場合には、チャプタの開始nフレームについて上述の式2により奥行値を補正する。また、チャプタの終了nフレームについて上述の式1により奥行値を補正する。
【0073】
[奥行値の補正の第2の態様の動作例]
図12は、本発明の実施の形態における奥行値補正の第2の態様による第1の処理の流れを示す図である。この第1の処理は、図10(a)のように切替前のチャプタにおいて遷移を行う場合の例を示している。
【0074】
まず、コンテンツ読出し管理部120において、現フレームの更新が行われる(ステップS921)。すなわち、現フレーム番号保持部121に保持される現フレーム番号が更新されるとともに、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が更新される。また、目標奥行値生成部143において、遷移の際の目標奥行値が生成され、設定される(ステップS922)。この場合の目標奥行値は、図10(a)における奥行値732である。
【0075】
現フレームがチャプタの終端nフレームであれば(ステップS926)、変数mには「最終フレーム番号−現フレーム番号」が設定される(ステップS927)。そして、奥行値補正部150によって、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が上述の式1により補正される(ステップS928)。
【0076】
その後、現フレームの映像データおよび奥行値に基づいて表示部350に立体視画像が表示される(ステップS929)。現フレームがチャプタの終端nフレームであれば上述のように補正された奥行値が用いられ、それ以外のフレームについては補正されない奥行値が用いられる。なお、ここでは表示部350を有する撮像装置300を想定して動作を説明したが、後に表示することを前提として奥行値を補正して記憶しておくようにしても構わない。
【0077】
図13は、本発明の実施の形態における奥行値補正の第2の態様による第2の処理の流れを示す図である。この第2の処理は、図10(b)のように切替後のチャプタにおいて遷移を行う場合の例を示している。
【0078】
まず、コンテンツ読出し管理部120において、現フレームの更新が行われる(ステップS931)。すなわち、現フレーム番号保持部121に保持される現フレーム番号が更新されるとともに、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が更新される。
【0079】
現フレームがチャプタの開始nフレームであれば(ステップS933)、変数mに「現フレーム番号−1」が設定される(ステップS934)。そして、奥行値補正部150によって、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が上述の式2により補正される(ステップS935)。
【0080】
その後、現フレームの映像データおよび奥行値に基づいて表示部350に立体視画像が表示される(ステップS939)。現フレームがチャプタの開始nフレームであれば上述のように補正された奥行値が用いられ、それ以外のフレームについては補正されない奥行値が用いられる。なお、ここでは表示部350を有する撮像装置300を想定して動作を説明したが、後に表示することを前提として奥行値を補正して記憶しておくようにしても構わない。
【0081】
図14は、本発明の実施の形態における奥行値補正の第2の態様による第3の処理の流れを示す図である。この第3の処理は、図10(c)のように切替前後のチャプタに亘って遷移を行う場合の例を示している。
【0082】
まず、コンテンツ読出し管理部120において、現フレームの更新が行われる(ステップS941)。すなわち、現フレーム番号保持部121に保持される現フレーム番号が更新されるとともに、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が更新される。また、目標奥行値生成部143において、遷移の際の目標奥行値が生成され、設定される(ステップS942)。この場合の目標奥行値は、図10(c)における奥行値752である。奥行値752は、例えばチャプタ#iの終端部分の奥行値とチャプタ#(i+1)の開始部分の奥行値の平均値(b)を用いることができる。
【0083】
現フレームがチャプタの開始nフレームであれば(ステップS943)、変数mに「現フレーム番号−1」が設定される(ステップS944)。そして、奥行値補正部150によって、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が上述の式2により補正される(ステップS945)。
【0084】
一方、現フレームがチャプタの終端nフレームであれば(ステップS946)、変数mには「最終フレーム番号−現フレーム番号」が設定される(ステップS947)。そして、奥行値補正部150によって、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が上述の式1により補正される(ステップS948)。
【0085】
その後、現フレームの映像データおよび奥行値に基づいて表示部350に立体視画像が表示される(ステップS949)。現フレームがチャプタの開始nフレームまたは終端nフレームであれば上述のように補正された奥行値が用いられ、それ以外のフレームについては補正されない奥行値が用いられる。なお、ここでは表示部350を有する撮像装置300を想定して動作を説明したが、後に表示することを前提として奥行値を補正して記憶しておくようにしても構わない。
【0086】
このように、本発明の実施の形態の第2の態様によれば、シーン切替の前後において奥行値を滑らかに遷移させることができ、奥行値の急激な変化による違和感を解消することができる。
【0087】
<3.第3の実施の形態>
[静止画データと動画データの関係]
図15は、本発明の第3の実施の形態における静止画データと動画データの関係を示す図である。この第3の実施の形態では、静止画データをスライドショー形式により立体視表示することを想定している。ここでは、静止画データの各々をnフレームずつ分配することにより、動画データを生成している。すなわち、静止画データAをnフレーム配置し、その後、静止画データBをnフレーム配置し、さらに静止画データCをnフレーム配置する、という要領で動画データの各フレームが配置される。静止画データは、図3により説明したフレーム画像と同様に、画像データと奥行値とを有しており、立体視表示に対応している。
【0088】
このような静止画データに基づく動画データにおいても、一般の動画の場合と同様に奥行値が急激に変化することによる違和感を伴うおそれがある。特に、スライドショー形式の場合、静止画データの切替の際に奥行値が急激に変化する可能性が高い。
【0089】
[奥行値の補正の第3の態様]
図16は、本発明の実施の形態による奥行値の補正の第3の態様を示す図である。図16(a)のように、静止画の切替えの際に、静止画内の領域の奥行値が急激に変化する場合を想定する。ここでは、静止画Aの終端部分における特定の領域の奥行値811(d)が、静止画Bの開始部分において奥行値812(e)に変化している。この場合、特定の領域の奥行値が急激に変化するため、視聴者に違和感を与えるおそれがある。なお、この場合の特定の領域は、人物などに該当するフレーム内の一部の領域が想定されるが、フレーム全体であってもよい。
本発明の実施の形態では、奥行値の補正の第3の態様として、図16(b)のように静止画の特定の領域の奥行値が一定値(K)になるように補正する。これにより、チャプタの切替えの際における奥行値の急激な変化を抑制することができる。
【0090】
[奥行値の補正の第3の態様の機能構成]
図17は、本発明の実施の形態における奥行値補正機構の第3の機能構成例を示す図である。この奥行値補正機構は、スライドショー形式の静止画データを含む動画データにおいて、特定の領域の奥行値を一定値に維持させるものである。以下では、シーン切替の一例として、チャプタの切替えを検出する例について説明する。
【0091】
この奥行値補正機構の第3の機能構成は、コンテンツ供給部110と、コンテンツ読出し管理部120と、奥行値補正部150とを備える点は、図8により説明した第1の機能構成と同様である。この奥行値補正機構の第3の機能構成は、第1の機能構成において遷移フレーム数設定部130およびコンテンツ先読み管理部140を取り除き、固定奥行値設定部170をさらに備える。また、コンテンツ読出し管理部120において、基準奥行値特定部123をさらに備える。
【0092】
基準奥行値特定部123は、コンテンツ供給部110から供給された静止画について、基準となる奥行値(基準奥行値)を特定するものである。この基準奥行値を特定するためには、静止画における何らかの特徴量を抽出して、その特徴量に基づいて基準奥行値を特定することが考えられる。例えば、静止画において顔を抽出して、その中から最も注目すべき優先顔を選択し、その優先顔の奥行値を基準奥行値として特定することが考えられる。優先顔としては、最も中央に近い顔や、最も大きい顔を選択することができる。また、例えば、最も近距離に位置する奥行値を特定するようにしてもよい。
【0093】
固定奥行値設定部170は、静止画の特定の領域の奥行値として固定させようとする一定値を設定するものである。この固定奥行値設定部170に設定された一定値を固定奥行値と称する。図16(b)の例の場合、一定値Kが固定奥行値として設定されることになる。
【0094】
これにより、奥行値補正部150は、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値を次式のように補正する。
補正後奥行値=補正前奥行値×K/y
ただし、Kは固定奥行値設定部170に設定された固定奥行値であり、yは基準奥行値特定部123により特定された基準奥行値である。
【0095】
[奥行値の補正の第3の態様の動作例]
図18は、本発明の実施の形態における奥行値補正の第3の態様による処理の流れを示す図である。ここでは、シーン切替の一例として、チャプタの切替えを検出する例について説明する。
【0096】
まず、コンテンツ読出し管理部120において、現フレームの更新が行われる(ステップS951)。すなわち、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が更新される。また、基準奥行値特定部123において、現フレームの静止画から奥行値が特定される(ステップS952)。ここでは、一例として、優先顔を検出し、その優先顔の基準奥行値yを特定することを想定する。
【0097】
そして、奥行値補正部150によって、現フレーム奥行値保持部122に保持される奥行値が「K/y」倍に補正される(ステップS958)。ここで、Kは固定奥行値設定部170に設定された固定奥行値であり、yは基準奥行値特定部123により特定された基準奥行値である。
【0098】
その後、現フレームの映像データおよび奥行値に基づいて表示部350に立体視画像が表示される(ステップS959)。なお、ここでは表示部350を有する撮像装置300を想定して動作を説明したが、後に表示することを前提として奥行値を補正して記憶しておくようにしても構わない。
【0099】
このように、本発明の実施の形態の第3の態様によれば、スライドショー形式の静止画データを含む動画データにおいて、特定の領域の奥行値を一定値に維持させることができ、奥行値の急激な変化による違和感を解消することができる。
【0100】
<4.変形例>
[スライドショーの変形例]
図19は、本発明の実施の形態による奥行値の補正の第3の態様の変形例を示す図である。上述の第3の態様では奥行値を一定値に維持させていたが、この変形例では第2の態様と同様に、シーン切替の前後において奥行値を遷移させることを想定する。
【0101】
図19(a)は、静止画の終端部分においてのみ奥行値を遷移させる例である。すなわち、この例では、静止画Aの終端部分において奥行値831から奥行値832に遷移させ、静止画Bの開始部分においては奥行値833から奥行値834まで一定の値を維持させている。
【0102】
図19(b)は、静止画の開始部分においてのみ奥行値を遷移させる例である。すなわち、この例では、静止画Aの終端部分において奥行値841から奥行値842までは一定の値を維持し、静止画Bの開始部分において奥行値843から奥行値844に遷移させている。
【0103】
図19(c)は、静止画の開始部分および終端部分の両者において奥行値を遷移させる例である。すなわち、この例では、静止画Aの終端部分において奥行値851から奥行値852に遷移させ、静止画Bの開始部分においても奥行値853から奥行値854に遷移させている。
【0104】
このように、奥行値を遷移させる場合には、静止画の切替前後の何れの区間において遷移させてもよい。
【0105】
このような奥行値の遷移を実現するためには、図11により説明した機能構成および図12乃至14により説明した処理を利用することができる。すなわち、スライドショー形式の動画データは、各フレームは静止画データから構成されているものの、全体として見れば一般の動画データと違いはない。したがって、上述の本発明の第2の実施の形態を利用することができる。同様に、本発明の第2の実施の形態を利用して、静止画の切替えの際に全体の奥行値を一旦ゼロ(無限遠)に補正するようにしてもよい。
【0106】
また、ここでは、立体視画像のシーン切替に着目して説明したが、立体視画像から平面視画像への切替えもしくは平面視画像から立体視画像への切替えについても同様に適用できることはいうまでもない。また、静止画に基づくスライドショー形式の動画データと通常の動画データとを混在させた動画データにおいて、静止画と動画を切り替える場合についても同様に適用できることはいうまでもない。
【0107】
このように、本発明の実施の形態によれば、立体視コンテンツのシーンの切替えにおいて奥行値を滑らかに遷移させることができる。
【0108】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、上述のように特許請求の範囲における発明特定事項とそれぞれ対応関係を有する。ただし、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【0109】
また、本発明の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、光ディスク、ハードディスク、半導体ディスクのほかに、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。また、図2において、映像音声ストリームとして記録されるMPEG圧縮のGOPにそれぞれ対応する映像奥行きマップ値について説明した。これは、例えば光ディスクのプログラムストリーム、Blu−Ray規格やAVCHD規格で用いられるTSストリーム、MPEG2ストリーム、H.264/AVCストリーム、MP4ストリーム等それぞれの映像音声圧縮ストリームとその将来の拡張規格において用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
110 コンテンツ供給部
120 コンテンツ読出し管理部
121 現フレーム番号保持部
122 現フレーム奥行値保持部
123 基準奥行値特定部
130 遷移フレーム数設定部
140 コンテンツ先読み管理部
141 シーン切替検出部
142 最終フレーム番号生成部
143 目標奥行値生成部
150 奥行値補正部
160 開始奥行値保持部
170 固定奥行値設定部
200 コンテンツ記録ユニット
210 映像データ
220 奥行マップ
300 撮像装置
310 レンズ部
311 ズームレンズ
312 フォーカスレンズ
315、316、346 モーター
319 モータードライバ
321 撮像素子
322 アナログ処理部
323 A/D変換器
324 デジタル処理部
325 タイミング生成器
329 カメラ制御部
331 映像符号化部
332 奥行情報設定部
333 ファイル生成部
334 ファイル復号部
335 映像復号部
336 奥行情報出力部
337 メモリ
338 メモリコントローラ
339 システム制御部
341 エラー訂正部
342 データ変復調部
343 磁界変調ドライバ
344 磁界ヘッド
345 サーボ回路
347 光ピックアップ
349 ドライブ制御部
350 表示部
370 光ディスク
390 操作受付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツにおけるシーンの切替えを検出するシーン切替検出部と、
立体視表示のための奥行値の変化が前記シーンの切替えの前後において所定の表示速度により遷移するように前記奥行値を補正する奥行値補正部と
を具備する画像情報処理装置。
【請求項2】
前記奥行値補正部は、前記コンテンツにおける何れかの領域に対応する奥行値の変化が前記シーンの切替の前後において所定の表示速度により遷移するように前記奥行値を補正する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項3】
前記奥行値補正部は、前記シーンの切替えの前後において画像全体の奥行値を望遠側に補正する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項4】
前記奥行値補正部は、前記シーンの切替えの前の奥行値から前記シーンの切替の後の奥行値に所定の表示速度により遷移するように前記奥行値を補正する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項5】
前記奥行値補正部は、前記シーンの切替前の所定の区間において奥行値を遷移させるよう補正する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項6】
前記奥行値補正部は、前記シーンの切替後の所定の区間において奥行値を遷移させるよう補正する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項7】
前記奥行値補正部は、前記シーンの切替えの前後に跨った所定の区間において奥行値を遷移させるよう補正する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項8】
前記シーン切替検出部は、前記シーンの切替えとして立体視画像と平面視画像の切替えを検出する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項9】
前記シーン切替検出部は、前記シーンの切替えとして動画と静止画の切替えを検出する請求項1記載の画像情報処理装置。
【請求項10】
コンテンツを構成する画像データを立体視表示するための奥行値について一定の値を固定奥行値として設定する固定奥行値設定部と、
前記画像データの何れかの領域を選択して当該領域に対応する奥行値を基準奥行値として特定する基準奥行値特定部と、
前記画像データの各領域に対応する奥行値について前記基準奥行値が前記固定奥行値となる比率によって補正を行う奥行値補正部と
を具備する画像情報処理装置。
【請求項11】
画像を撮像して撮像画像および立体視表示のための奥行値を供給する撮像画像供給部と、
前記撮像画像におけるシーンの切替えを検出するシーン切替検出部と、
前記奥行値の変化が前記シーンの切替えの前後において所定の表示速度により遷移するように前記奥行値を補正する奥行値補正部と
を具備する撮像装置。
【請求項12】
コンテンツにおけるシーンの切替えを検出するシーン切替検出手順と、
立体視表示のための奥行値の変化が前記シーンの切替えの前後において所定の表示速度により遷移するように前記奥行値を補正する奥行値補正手順と
を具備する画像情報処理方法。
【請求項13】
コンテンツにおけるシーンの切替えを検出するシーン切替検出手順と、
立体視表示のための奥行値の変化が前記シーンの切替えの前後において所定の表示速度により遷移するように前記奥行値を補正する奥行値補正手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−258723(P2010−258723A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105755(P2009−105755)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】