説明

画像生成装置及び方法、プログラム、並びに記録媒体

【課題】本来投影したい画像より低解像度の投影画像を投影する投影装置を利用して、本来投影したい画像と同等の画質の投影像を投影面に投影する。
【解決手段】画像処理装置11は、複数の位相画像Qが投影面13に投影される場合に、複数の位相画像Qのそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、入力画像Wの所定の画素とを対応付け、対応する領域の画素値と入力画像Wの画素の画素値との差異が最小となる位相画像Qの画素の画素値を演算する。本発明は、例えば、画像処理装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像生成装置及び方法、プログラム、並びに記録媒体に関し、特に、本来投影したい画像より低解像度であり、互いに所定のずらし量だけずれて重なり合うように投影面に投影されることでその画像と同等の画質の投影像が映し出されるようになる位相画像を生成する画像生成装置及び方法、プログラム、並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
本来投影したい画像(以下、入力画像と称する)より低解像度の投影画像を投影する投影装置を利用して、入力画像と同じ解像度の投影像を投影面に映し出す方法として、ウォビュレーション(Wobulation)と呼ばれる方法(例えば、非特許文献1参照)がある。
【0003】
例えば図1下左から1番目に示す入力画像から、図1下左から2番目および3番目に示すような入力画像の解像度の1/2のサブ画像が生成され、そのサブ画像が、互いにサブ画像の半画素分ずれて重なる位置に、人間の視覚の時間積分効果を得ることができる時間間隔で投影される。
【0004】
その結果、図1上の右に示すように、入力画像の2倍の解像度の投影像を視覚させることができる。
【0005】
ウォビュレーション法では、サブ画像が視覚の時間積分効果を得ることができる時間間隔で投影されたが、複数の投影装置を利用して同時に投影し同様の効果を得るディスプレイシステムも考えられている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
図2は、このディスプレイシステムによる表示例を示している。
【非特許文献1】"Wobulation: Doubling the Addressed Resolution of Projection Displays", Will Allen (Digital Projection and Imaging, Hewlett-Packard, Corvallis, Oregon, USA) and Robert Ulichney (HP Labs, Cambridge, Massachusetts, USA) in the Proceedings of SID 2005
【非特許文献2】Yang, Ruigang, David Gotz, Justin Hensley, Herman Towles and Mike Brown. "PixelFlex: A Reconfigurable Multi-Projector Display System." IEEE Visualization 2001. San Diego, CA (October 21-26, 2001).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばウォビュレーション法では、サブ画像の画素の画素値は、入力画像の対応する所定の1つの画素の画素値に一義的に決定される。
【0008】
例えば、第1のサブ画像の第2行第2列の画素の画素値は、入力画像の第3行第3列の画素の画素値とされ、第2のサブ画像の第1行第1列の画素の画素値は、入力画像の第2行第2列の画素値とされている。
【0009】
したがってサブ画像の画素が重なり合って形成される投影像の領域の例えば輝度値は、その領域が対応する入力画像の画素の輝度値とは必ずしも一致しないので、ウォビュレーション法で映し出される投影像は、入力画像と同じ解像度を有するものの滲んでいるような像となり、入力画像と同じ画質とはならない。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、入力画像より低解像度であり、互いに所定のずらし量だけずれて重なり合うように投影面に投影されることで入力画像と同等の画質の投影像が映し出されるようになる位相画像を生成することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面の画像生成装置は、入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成装置において、前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算する。
【0012】
本発明の一側面の画像生成装置には、前記複数の位相画像を、前記投影面に投影する投影手段をさらに設けることができる。
【0013】
本発明の一側面の画像生成方法またはプログラムは、入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成方法または画像処理をコンピュータに実行させるプログラムであり、前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算するステップを含む。
【0014】
本発明の一側面においては、複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とが対応付けられ、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値が演算される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、入力画像より低解像度であり、互いに所定のずらし量だけずれて重なり合うように投影面に投影されることで入力画像と同等の画質の投影像が映し出されるようになる位相画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0017】
本発明の一側面の画像生成装置(例えば、図3の画像処理装置11)は、
入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成装置において、
前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算する。
【0018】
本発明の一側面の画像生成装置には、
前記複数の位相画像を、前記投影面に投影する投影手段(例えば、図3の投影装置12A乃至12D)をさらに設けることができる。
【0019】
本発明の一側面の画像生成方法またはプログラムは、
入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成方法または画像処理をコンピュータに実行させるプログラムであり、
前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算するステップ(例えば、図6のステップS2)
を含む。
【0020】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について説明する。
【0021】
図3は、入力画像より低解像度の投影画像を投影する投影装置を複数台利用して、入力画像と同等の解像度でかつ入力画像と同等の画質の投影像が投影面に映し出されるようにすることができる画像投影システム1の構成例を示している。
【0022】
画像投影システム1は、画像処理装置11、4個の投影装置12A,12B,12C,12D、及び投影面13から構成される。
【0023】
画像処理装置11には、各投影装置12A,12B,12C,12D(以下、個々に区別する必要がない場合、単に、投影装置12と称する)が投影する投影画像の2倍の解像度を有する入力画像Wが入力される。
【0024】
画像処理装置11は、後述するように、解像度が入力画像Wの1/2の4個の投影画像(以下、位相画像と称する)を生成し、対応する投影装置12に供給する。
【0025】
ここで、解像度とは、画像を表現する格子の細かさを単位長さ当りで示したものである。したがって、解像度が1/2になると、画素ピッチは2倍、画素の大きさは4倍となる。
【0026】
各投影装置12は、透過型液晶プロジェクタ、反射型液晶プロジェクタ、DLP(Digital Light Processing)プロジェクタ等から構成され、画像処理装置11から供給された位相画像を、4個の位相画像がそれぞれ縦横方向に位相画像の半画素分互いにずれて(すなわち、画素ピッチをdとした場合の画素の縦横の大きさの半分のずらし量d/2だけずれて)重なり合うように投影面13に投影する。
【0027】
4個の位相画像を模式的に表した図4に示すように、投影装置12Aは、位相画像Q1を所定の位置に投影し、投影装置12Bは、位相画像Q2を、位相画像Q1に対して右方向にずらし量d/2だけずれて映し出されるように投影し、投影装置12Cは、位相画像Q3を、位相画像Q2に対して下方向にずらし量d/2だけずれて映し出されるように投影し、投影装置12Dは、位相画像Q4を、位相画像Q3に対して左方向にずらし量d/2だけずれて映し出されるように投影する。
【0028】
図5は、画像処理装置11の構成例を示している。
【0029】
入力部21は、画像処理装置11に供給された入力画像Wを、画像処理部22に供給する。
【0030】
画像処理部22は、各投影装置12によりそれぞれ縦横方向に位相画像Qの半画素分ずれて重なり合うように投影されることで入力画像Wと同等の解像度でかつ入力画像Wと同等の画質の投影像が映し出されるようになる4個の位相画像Q1乃至Q4を生成し(その詳細は後述する)、分配部23に供給する。
【0031】
分配部23は、画像処理部22から供給された4個の位相画像Q1乃至Q4を、投影装置12に分配する。すなわち分配部23は、位相画像Q1を投影装置12Aに供給し、位相画像Q2を投影装置12Bに供給し、位相画像Q3を投影装置12Cに供給し、位相画像Q4を投影装置12Dに供給する。
【0032】
次に、図6のフローチャートを参照して、図5の画像投影システム1による画像投影処理について説明する。
【0033】
ステップS1において、画像処理装置11に入力画像Wが供給されると、画像処理装置11の入力部21は、画像処理装置11に供給された入力画像Wを入力し、画像処理部22に供給する。
【0034】
ステップS2において、画像処理部22は、後述の位相画像生成処理を行うことにより入力画像Wから4個の位相画像Qを生成し、分配部23に供給する。
【0035】
ステップS3において、分配部23は、画像処理部22から供給された位相画像Qを対応する投影装置12に分配する。
【0036】
ステップS4において、各投影装置12は、画像処理装置11(の分配部23)から供給された位相画像Qを、4個の位相画像Qがそれぞれ縦横方向に位相画像Qの半画素分互いにずれて重なり合うように投影面13に投影する。
【0037】
次に、ステップS2における画像処理部22の位相画像生成処理について説明する。はじめにその原理を、図7を参照して説明する。
【0038】
解像度が所定の画像W'の1/2である4個の投影画像Q'1乃至Q'4(以下、個々に区別する必要がない場合、投影画像Q'と称する)を、それぞれ縦横方向に投影画像Q'の半画素分互いにずれて重なり合うように投影すると、すなわち投影画像Q'に合わせて描かれている基準線が互いに合致するように投影すると、その結果得られる投影像Zには、4個の投影画像Q'のそれぞれの所定の画素Pが重なり合って形成される領域R1乃至領域R16(図中、投影像Zにおいて影付されている領域)が形成される。
【0039】
この投影像Zの領域R1乃至領域R16の輝度値vR1乃至vR16は、重なり合う4個の投影画像Q'の画素Pの輝度値vPにより決定される。
【0040】
例えば領域R1は、投影画像Q'1の画素Pa、投影画像Q'2の画素Pb、投影画像Q'3の画素Pg、および投影画像Q'4の画素Pfが重なり合って形成されるので、領域R1の輝度値vR1は、画素Paの輝度値vPa、画素Pbの輝度値vPb、画素Pgの輝度値vPg、および画素Pfの輝度値vPfが加算された結果得られる値となる。
【0041】
領域R6は、投影画像Q'1の画素Pm、投影画像Q'2の画素Pl、投影画像Q'3の画素Pg、および投影画像Q'4の画素Phが重なり合って形成されるので、領域R6の輝度値vR6は、画素Pmの輝度値vPm、画素Plの輝度値vPl、画素Pgの輝度値vPg、および画素Phの輝度値vPhが加算された結果得られる値となる。
【0042】
またこの領域Rの大きさは、投影画像Q'がそれぞれ縦横方向に半画素分ずれて重なり合うように投影されていることから、投影画像Q'の画素Pの1/4の大きさとなる。すなわち投影画像Q'の2倍の解像度を有する画像W'の画素Iの大きさとなる。
【0043】
従って以上のことから、各投影画像Q'の画素Pの輝度値vPを、領域R1乃至R16の輝度値vR1乃至vR16が、画像W'の画素I1乃至I16の輝度値vI1乃至vI16となるようにすれば、4個の投影画像Q'を、それぞれ縦横方向に投影画像Q'の半画素分ずれて重なり合うように投影することにより、画像W'と同等の解像度でかつ画像W’と同等の画質の投影像Zを映し出すことができる。
【0044】
本発明は、この原理を利用するものであり、画像処理部22では、4個の位相画像Qの画素が重なり合うことで形成される重ね合わせ領域(図7の例では、領域R1乃至R16)の輝度値が、対応する入力画像Wの画素の輝度値と同等の輝度値となるように、各位相画像Qの画素の輝度値が決定されて、各位相画像が生成される。
【0045】
この位相画像Qの生成処理についてより具体的に説明する。
【0046】
図7の例において、領域Rの輝度値vRが、それぞれ所定の、投影画像Q'1の画素Pの輝度値vP、投影画像Q'2の画素Pの輝度値vP、投影画像Q'3の画素Pの輝度値vP、および投影画像Q'4の画素Pの輝度値vPが加算された結果得られる値であるという、領域Rの輝度値vRと、投影画像Q'の画素Pの輝度値vPとの関係は、図8に示すように、領域Rの輝度値vRのベクトル、投影画像Q'の画素Pの輝度値vPのベクトル、および16行25列の所定の行列Mからなる関係式で表すことができる。
【0047】
例えば行列Mの第1行目に注目すると、領域R1の輝度値vR1=vPa+vPb+vPg+vPfとなり、上述した関係に一致する。
【0048】
そこで領域R1乃至R16のそれぞれを、画像W'の所定の画素Iに対応付け、この関係式における領域R1乃至R16の輝度値vRを、図9に示すように、対応する画像W'の画素Iの輝度値vIにし、投影画像Q'1乃至Q'4の画素Pの輝度値vPについて解けば、領域Rの輝度値vRのそれぞれが、画像W'の対応する画素Iの輝度値vIとなるような投影画像Q'の画素Pの輝度値vPを得ることができる。
【0049】
この関係式から投影画像Q'の画素Pの輝度値vPを解くには、投影画像Q'の画素Pの輝度値vPのベクトルを、画像W'の輝度値vIのベクトルで表す関係式が必要となるが、その関係式で必要となる行列Mの逆行列は、例えば行列Mを、式(1)に示すように、特異値分解と呼ばれる手法で、正規直交ベクトルを列ベクトルに持つ行列U及びVと、正の対角要素を持つ対角行列Dとの積に分解することで、式(2)に示すように、行列U,V、及び対角行列D'を用いて求めることができる。
【0050】
【数1】

【0051】
式(2)中、対角行列D'は、対角行列Dの対角要素のそれぞれの逆数をその対角要素とする行列である。なお、対角行列Dの対角要素が0の場合は、その対角要素に対応する対角行列D'の対角要素も0とするものとする。
【0052】
かかる一般化逆行列M-1を、図9の関係式の両辺に左から掛けることで、図10に示すように、投影画像Q'の輝度値vPのベクトルを、画像W'の画素Iの輝度値vIのベクトルで表す関係式を得ることができる。
【0053】
この関係式よれば、例えば、図7の例において画像W'の16個の画素I1乃至I16の中央の4個の画素I6,I7,I10,I11に対応する、投影像Zの領域R6,R7,R10,R11の形成にかかる投影画像Q'1の画素Pmの輝度値vPmは、画像W'の画素Iの輝度値vIのベクトルと、一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVm(その要素はm1,m2,…,m16)との内積であることから、式(3)で求めることができる。
【0054】
【数2】

【0055】
なお一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVmの要素は、0.04, -0.08, -0.08, 0.04, -0.08, 0.16, 0.16, -0.08, -0.08, 0.16, 0.16, -0.08, 0.04, -0.08, -0.08, 0.04となり、それらを、画像W'の各画素Iに対応付けて図示すると、図11に示すようになる。
【0056】
すなわちこの方法を利用し、本発明では、入力画像Wから読み出した所定の16個の画素の輝度値と、一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVmとの内積を求めることにより、読み出した16個の画素(図7の例では、画素I1乃至I16)の中央の4個の画素(画素I6,I7,I10,I11)に対応する4個の領域(領域R6,R7,R10,R11)の形成にかかる位相画像Qの画素(以下、適宜、対応画素と称する)(画素Pm)の輝度値が求められる。
【0057】
ところで図10に示した関係式によれば、投影画像Q'1の画素Pm以外の投影画像Q'の画素Pの輝度値vPについても、画素Pmと同様に、一般化逆行列M-1の所定の行の行ベクトルと、画像W'の画素Iの輝度値vIのベクトルとの内積を求めることにより得ることはできるが、本発明では、計算を簡単にするために、一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVmのみを利用して対応画素の輝度値を求めるものとする。
【0058】
具体的には入力画像Wから、縦横方向に、1画素ずつずらして16個の画素を読み出し、その16個の画素の中央の4個の画素に対応する4個の領域の形成にかかる位相画像Qの画素(すなわち、対応画素)の輝度値が、一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVmとの内積で求められる。
【0059】
そしてその対応画素がいずれの位相画像Qの画素であるかまたその位相画像Q上の位置は、以下に示すように、適切に重なり領域が形成されるように決定される。
【0060】
例えば入力画像Wの1個の画素に注目し、その画素と、所定の位置関係にある画素の合計16個の画素が選択される。図12の例では、図中影が付されている画素に注目したとすると、その画素が第2行第2列目に位置する16個の画素(図中、枠で囲まれている16個の画素)が後述する逆応答画素として選択される。
【0061】
そして図13に示すように、入力画像Wの第2行第2列目、第2行第4列目等の列番号iwidと行番号iheiとが共に偶数となる画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素は、位相画像Q1の画素とされ、位相画像Q上の列番号xと行番号yが式(4)により決定される。ここで、関数floor(a)は、実数aを超えない最大の整数を与える。
【0062】
【数3】

【0063】
例えば入力画像Wの(列番号iwid=2,行番号ihei=2)の画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素の位相画像Q1上の列番号xと行番号yは、1(=floor(2/2))と1(=floor(2/2))となる。位相画像Q1の画素を、列番号xと行番号yを用いてP1(x, y)と表すこととすると、この対応画素は、P1(1, 1)となる。
【0064】
また図14に示すように、入力画像Wの第2行第3列目、第2行第5列目等の列番号iwidが奇数で行番号iheiが偶数となる画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素は、位相画像Q2の画素となる。
【0065】
そして例えば入力画像Wの(列番号iwid=3,行番号ihei=2)の画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素の位相画像Q2の列番号xと行番号yは、1(=floor(3/2))と1(=floor(2/2))となる。位相画像Q2の画素を、列番号xと行番号yを用いてP2(x, y)と表すこととすると、この対応画素は、P2(1, 1)となる。
【0066】
また図15に示すように、入力画像Wの第3行第3列目、第3行第5列目等の列番号iwidと行番号iheiとがともに奇数となる画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素は、位相画像Q3の画素となる。
【0067】
そして例えば入力画像Wの(列番号iwid=3,行番号ihei=3)の画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素の位相画像Q3の列番号xと行番号yは、1(=floor(3/2))と1(=floor(3/2))となる。位相画像Q3の画素を、列番号xと行番号yを用いてP3(x, y)と表すこととすると、この対応画素は、P3(1, 1)となる。
【0068】
また図16に示すように、入力画像Wの第3行第2列目、第3行第4列目等の列番号iwidが偶数で行番号iheiが奇数となる画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素は、位相画像Q4の画素となる。
【0069】
そして例えば入力画像Wの(列番号iwid=2,行番号ihei=3)の画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素の位相画像Q4の列番号xと行番号yは、1(=floor(2/2))と1(=floor(3/2))となる。位相画像Q4の画素を、列番号xと行番号yを用いてP4(x, y)と表すこととすると、この対応画素は、P4(1, 1)となる。
【0070】
このようにして画像処理部22では、各投影装置12により、それぞれ縦横方向に、位相画像の半画素分ずれて重なり合うように投影されることで入力画像Wと同等の解像度でかつ入力画像と同等の画質の投影像が映し出されるようになる位相画像Qが生成される。
【0071】
すなわち画像処理部22は、図5に示すように選択部22A、係数格納部22B、及び演算部22Cから構成され、選択部22Aは、入力部21から供給された入力画像Wから16個の画素を選択し、演算部22Cに供給する。
【0072】
演算部22Cは、選択部22Aから供給された16個の逆応答画素の輝度値と、係数格納部22Bに格納されている一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVmの要素の値(以下、適宜、逆応答係数という)との内積を演算する(以下、この演算を、適宜、逆応答演算と称する)ことにより、位相画像Qの対応画素の輝度値を求め、所定の位相画像Qの所定の位置に配置して、4個の位相画像Qを生成する。演算部22Cは、生成した4個の位相画像Qを、分配部23に供給する。
【0073】
次に、画像処理部22の動作を、図17のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
入力部21が、入力画像Wを入力し、画像処理部22に供給すると、ステップS21において、画像処理部22の選択部22Aは、例えばRGBなどの入力画像Wの色種類をカウントする変数ibandを0に初期化する。なお入力画像Wは、カラー画像を構成する、例えばRGB(Red Green Blue)等の色種類の色ごとの画像であるものとする。
【0075】
次にステップS22において、選択部22Aは、変数ibandに対応する色の入力画像Wの画素の行番号iheiをカウントする変数iheiを、定数marginに初期化する。
【0076】
注目する画素に対して図12に示したような位置関係にある16個の画素を逆対応画素として選択する場合、第1行目の画素を注目したとき、16個の画素を適切に選択することができなくなるので、定数margin=2とし、第2行目以降の画素が注目されるようにする。
【0077】
ステップS23において、選択部22Aは、注目する画素の列番号iwidをカウントする変数iwidを、定数marginに初期化する。
【0078】
変数iheiに対する定数marginと同様に、注目する画素に対して図12に示したような位置関係がある16個の画素を逆対応画素として選択する場合、第1列目の画素を注目したとき、16個の画素を適切に選択することができなくなるので、定数margin=2とし、第2列目以降の画素が注目されるようにする。
【0079】
ステップS24において、選択部22Aは、入力画像Wの第ihei行iwid列目の画素に注目したときの16個の画素(図13乃至図16)を、入力画像Wから選択して、演算部22Cに供給する。
【0080】
ステップS25において、演算部22Cは、選択部22Aから供給される16個の画素の画素値をγ補正することにより、その輝度値に変換する。
【0081】
画素値と輝度値の関係は、図18に示すように非線形であり、演算部22Cでは、逆応答演算前に画素値から輝度値に変換を行う必要がある。
【0082】
変換対象の画素の画素値をvとし、その画素の輝度値(投影面13での輝度値)をIとすると、一般に、輝度値Iは、画素値vを用いて、I=vγと表される。ここで、γは所定の定数である。この式を用いたγ補正することにより、画素値が輝度値に変換される。
【0083】
図17に戻りステップS26において、演算部22Cは、逆応答画素の輝度値と、係数格納部22Bに格納されている逆応答係数(すなわち一般化逆行列M-1の第13行の係数)とを用いた逆応答演算を行うことにより、対応画素の輝度値を求める。そして演算部22Cは、求めた対応画素の輝度値を逆γ補正することにより、その画素値に変換する。画素値vは、輝度値を用いて、v=I1/γと表され、この式を用いて逆γ補正することにより、輝度値が画素値に変換される。
【0084】
なおここで演算部22Cは、対応画素の画素値が0以下なら0に、256以上なら255に、それ以外ならそのままの値とするクリップ処理を行う。
【0085】
次にステップS27において、演算部22Cは、ステップS26で輝度値が求められた対応画素が構成する位相画像Qとその位置を、図13乃至図16を参照して説明したように決定する。
【0086】
すなわち変数iwidと変数iheiが共に偶数である場合、対応画素は、位相画像Q1の画素となり、変数iwidが奇数で変数iheiが偶数である場合、対応画素は、位相画像Q2の画素となり、変数iwidと変数iheiが共に奇数である場合、対応画素は、位相画像Q3の画素となり、変数iwidが偶数で変数iheiが奇数である場合、対応画素は、位相画像Q3の画素となる。
【0087】
また対応画素の位相画像Qの位置は、式(4)により決定される。
【0088】
次にステップS28において、選択部22Aは、変数iwidを1だけインクリメントし、インクリメント後の変数iwidが、入力画像Wの幅方向の画素数を示す定数widthから定数marginを減算した値より小さいかを判定する。
【0089】
ステップS28で、インクリメント後の変数iwidが定数widthから定数marginを減算した値より小さいと判定された場合、処理は、ステップS24に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0090】
一方、ステップS28で、インクリメント後の変数iwidが定数widthから定数marginを減算した値以上であると判定された場合、第ihei行の逆応答演算が終了し、処理は、ステップS29に進む。
【0091】
ステップS29において、選択部22Aは、変数iheiを1だけインクリメントし、インクリメント後の変数iheiが、入力画像Wの縦方向の画素数を示す定数heightから定数marginを減算した値より小さいかを判定する。
【0092】
ステップS29で、インクリメント後の変数iheiが、定数heightから定数marginを減算した値より小さいと判定された場合、処理は、ステップS23に戻り、以下、同様の処理が繰り返され、次の行についての逆応答演算が行われる
【0093】
一方、ステップS29で、インクリメント後の変数iheiが、定数heightから定数marginを減算した値以上であると判定された場合、変数ibandに対応する色の入力画像Wに対する逆応答演算が終了し、処理は、ステップS30に進む。
【0094】
ステップS30において、選択部22Aは、変数ibandを1だけインクリメントし、インクリメント後の変数ibandが入力画像Wの色種類の総数を示す定数nbandより小さいかを判定する。
【0095】
ステップS30で、インクリメント後の変数ibandが定数nbandより小さいと判定された場合、処理は、ステップS22に戻り、以下、同様の処理が繰り返され、次の色の入力画像Wについて逆応答演算が行われる。
【0096】
一方、ステップS30において、インクリメント後の変数ibandが定数nband以上であると判定された場合、すなわち、全色種類の色ごとの入力画像Wについての逆応答演算が終了し、全色種類についての複数の位相画像Qが生成されたとき、処理はステップS31に進む。
【0097】
ステップS31において、演算部22Cは、生成した(全色種類の)複数の位相画像Qを分配部23に供給し、分配部23は、画像処理部22から供給された位相画像Qを、対応する投影装置12に供給する。
【0098】
以上のような処理が入力画像Wが入力される度に繰り返し行われる。
【0099】
次に、図19に示す入力画像Wが入力された場合の図3の画像投影システム1による投影の試行例を、図20乃至図24を参照して説明する。
【0100】
この試行では、画像処理装置11において、図19に示す入力画像Wから、図20乃至図23に示す、入力画像Wの1/2の解像度の位相画像Q1乃至Q4が生成され、投影装置12A乃至12Dにより、位相画像Q1乃至Q4が、それらがそれぞれ縦横方向に位相画像Qの半画素分ずれて重なり合うように投影され、図24に示すような、入力画像Wと同等の解像度でかつ入力画像Wと同等の画質の投影像Zが投影面13に映し出された。
【0101】
以上のように、入力画像Wから生成された複数の位相画像Qが互いに所定のずらし量だけずれて重なり合うように、複数の位相画像Qを投影面13に投影する場合において、複数の位相画像Qのそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、入力画像Wの画素とを対応付け、対応する領域の輝度値と入力画像の画素の輝度値の差異が最小となる位相画像Qの各画素の輝度値を演算するようにしたので、図24の試行例のように、入力画像Wと同等の解像度でかつ入力画像Wと同等の画質の投影像Zを投影面13に映し出すことができる。
【0102】
なお以上においては、4個の位相画像Qを生成し、それらが重なり合うように投影するものとしたが、2個の位相画像Qが重なり合うように投影するようにしても、それにより投影像上に形成される領域を、入力画像Wの画素に対応付けることは可能であり、4個の位相画像Qの場合と同様の効果を得ることができる。2個の位相画像Qが重なり合うように投影する場合の例について説明する。
【0103】
この例の場合、図25に示すように、2個の位相画像Q1と位相画像Q2とが、縦横方向に位相画像Qの半画素分ずれて映し出されるように投影される。
【0104】
この例の場合における位相画像Qの生成処理について説明する。
【0105】
例えば、図26に示すように、解像度が所定の画像W'の1/2である2個の投影画像Q'1及びQ'2を、それぞれ縦横方向に投影画像Q'の半画素分ずれて重なり合うように投影すると、すなわち投影画像Q'に合わせて描かれている基準線が互いに合致するように投影すると、その結果得られる投影像Zには、2個の投影画像Q'のそれぞれの所定の画素Pが重なり合って形成される領域R1乃至領域R16が形成される。
【0106】
この投影像Zの領域R1乃至領域R16の輝度値vR1乃至vR16は、重なり合う2個の投影画像Q'の画素Pの輝度値vPにより決定される。
【0107】
例えば領域R1は、投影画像Q'1の画素Paおよび投影画像Q'2の画素Pdが重なり合って形成されるので、領域R1の輝度値vR1は、投影画像Q'1の画素Paの輝度値vPaおよび投影画像Q'2の画素Pdの輝度値vPdが加算された結果得られる値となる。
【0108】
領域R6は、投影画像Q'1の画素Pgおよび投影画像Q'2の画素Pdが重なり合って形成されるので、領域R6の輝度値vR6は、投影画像Q'1の画素Pgの輝度値vPgおよび投影画像Q'の画素Pdの輝度値vPdが加算された結果得られる値となる。
【0109】
また投影画像Q'がそれぞれ縦横方向に半画素分ずれて重なり合うように投影されていることから、この領域Rの大きさは、投影画像Q'の画素Pの1/4の大きさとなる。すなわち投影画像Q'の2倍の解像度を有する画像W'の画素Iの大きさとなる。
【0110】
従って以上のことから、各投影画像Q'の画素Pの輝度値vPを、領域R1乃至R16の輝度値vR1乃至vR16が、画像W'の画素I1乃至I16の輝度値vI1乃至vI16となるようにすれば、2個の投影画像Q'を、それぞれ縦横方向に投影画像Q'の半画素分ずれて重なり合うように投影することにより、4個の投影画像Q'を用いた場合と同様に、画像W'と同等の解像度でかつ画像W'と同等の画質の投影像Zを映し出すことができる。
【0111】
また図26の例において、領域Rの輝度値vRが、それぞれ所定の、投影画像Q'1の画素Pの輝度値vPおよび投影画像Q'2の画素Pの輝度値vPが加算された結果得られる値であるという、領域Rの輝度値vRと、投影画像Q'の画素Pの輝度値vPとの関係は、図27に示すように、領域Rの輝度値vRのベクトル、投影画像Q'の画素Pの輝度値vPのベクトル、および16行13列の所定の行列Mからなる関係式で表すことができる。
【0112】
例えば行列Mの第1行目に注目すると、領域R1の輝度値vR1=vPa+vPdとなり、上述した関係に一致する。
【0113】
そこで領域R1乃至R16のそれぞれを、画像W'の画素Iに対応付け、この関係式における領域R1乃至R16の輝度値vRを、図28に示すように、対応する画像W'の画素Iの輝度値vIにし、投影画像Q'1およびQ'2の画素Pの輝度値vPについて解けば、領域Rの輝度値vRが、画像W'の画素Iの輝度値vIとなるような投影画像Q'の画素Pの輝度値vPを得ることができる。
【0114】
この関係式から投影画像Q'の画素Pの輝度値vPを、4個の投影画像Q'の場合と同様に解くと、図29に示すように、投影画像Q'の輝度値vPのベクトルを、画像W'の画素Iの輝度値vIのベクトルで表す関係式を得ることができる。
【0115】
この関係式よれば、例えば、図26の例において画像W'の16個の画素I1乃至I16の中央の4個の画素I6,I7,I10,I11に対応する、投影像Zの領域R6,R7,R10,R11の形成にかかる投影画像Q'1の画素Pgの輝度値vPgは、画像W'の画素Iの輝度値vIのベクトルと、一般化逆行列M-1の第7行の行ベクトルVmm(その要素は、mm1,mm2,…,mm16)との内積となるので、式(5)で求めることができる。
【0116】
【数4】

【0117】
なお一般化逆行列M-1の第7行の行ベクトルVmmは、-0.0769,-0.0385,-0.0385,-0.0769,-0.0385,0.2308,0.2308,-0.0385,-0.0385,0.2308,0.2308,-0.0385,-0.0769, -0.0385, -0.0385, -0.0769となり、それらを、画像W'の各画素Iに対応付けて図示すると、図30に示すようになる。
【0118】
すなわちこの例の場合、入力画像Wから読み出した所定の16個の画素の輝度値と、一般化逆行列M-1の第7行の行ベクトルVmmとの内積を求めることにより、読み出した16個の画素(すなわち逆応答画素)の中央の4個の画素に対応する4個の領域の形成にかかる位相画像Qの画素(すなわち対応画素)の輝度値が求められる。
【0119】
なおこの例においても、計算を簡単にするために、一般化逆行列M-1の第7行の行ベクトルVmmのみを利用して対応画素の輝度値を求めるものとする。
【0120】
すなわち入力画像Wから、縦横方向に、1画素ずつずらして16個の画素(すなわち逆応答画素)を読み出し、その16個の画素の中央の4個の画素に対応する4個の領域の形成にかかる位相画像Qの画素(すなわち、対応画素)の輝度値が、一般化逆行列M-1の第7行の行ベクトルVmmとの内積で求められる。
【0121】
そして対応画素がいずれの位相画像Qの画素であるか、またその位相画像Q上の位置は、以下に示すように、適切に重なり領域が形成されるように決定される。
【0122】
例えば注目した入力画像Wの画素が、図12に示したように、第2行第2列目に位置する16個の画素が逆応答画素として選択される。
【0123】
そして図31に示すように、入力画像Wの第2行第2列目、第2行第4列目等の行番号iheiが偶数となる画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素は、位相画像Q1の画素とされ、位相画像Q1上の列番号xと行番号yが式(4)により決定される。
【0124】
例えば入力画像Wの(列番号iwid=2,行番号ihei=2)の画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素の位相画像Q1上の列番号xと行番号yは、1(=floor(2/2))と1(=floor(2/2))となる。位相画像Q1の画素を、列番号xと行番号yを用いてP1(x, y)と表すこととすると、この対応画素は、P1(1, 1)となる。
【0125】
図32に示すように、入力画像Wの第3行第3列目、第3行第5列目等の行番号iheiが奇数となる画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素は、位相画像Q2の画素となる。
【0126】
そして例えば入力画像Wの(列番号iwid=3,行番号ihei=3)の画素に注目した場合に選択された16個の逆応答画素から輝度値が算出される対応画素の位相画像Q2の列番号xと行番号yは、1(=floor(3/2))と1(=floor(3/2))となる。位相画像Q2の画素を、列番号xと行番号yを用いてP2(x, y)と表すこととすると、この対応画素は、P2(1, 1)となる。
【0127】
このようにして2個の位相画像Qが生成される。
【0128】
すなわちこのように2個の位相画像Qを利用する場合、図3の画像投影システム1における投影装置12A乃至12Dのうち、例えば投影装置12Aおよび12Cのみを用い、画像処理装置11は、上述したように生成した2個の位相画像Qを、投影装置12Aおよび投影装置12Cに供給する。
【0129】
なお、画像処理装置11の画像処理部22が、係数格納部22Bに、位相画像Qが4個の場合と2個の場合それぞれの逆応答係数を記憶しておき、いずれの方法でも投影処理を行うことができるようにしておくこともできる。
【0130】
以上において図3に示した画像投影システム1では、複数の投影装置12を用いて、複数の位相画像Qを、同時に、投影面13に映し出されるように投影するようにしたが、視覚の時間積分効果を利用して、1台の投影装置12が、複数の位相画像Qを、その効果が得られる時間間隔で順に投影するようにしても、複数の投影装置12を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0131】
図33は、1台の投影装置を利用する場合の画像投影システム100の構成例を示している。
【0132】
すなわち図3の4個の投影装置12に代えて、1個の投影装置101が設けられている。
【0133】
画像処理装置11には、投影装置101が投影する投影画像の2倍の解像度を有する入力画像Wが入力される。
【0134】
画像処理装置11は、図3における場合と同様に、例えば4個の位相画像を生成し、投影装置101に供給する。
【0135】
投影装置101は、画像処理装置11から供給された4個の位相画像を、図4に示したように、4個の位相画像Qがそれぞれ縦横方向に位相画像の半画素分互いにずれて(すなわち、画素ピッチをdとした場合の画素の縦横の大きさの半分のずらし量d/2だけずれて)重なり合うとともに、4個の位相画像Qが視覚の時間積分効果が得られる時間間隔で投影されるように、投影面13に順次投影する。
【0136】
すなわち、投影装置101は、入力画像Wから生成された4個の位相画像Qについて、位相画像Q1を投影し、その後、位相画像Q2を、位相画像Q1に対して右方向にずらし量d/2だけずれて映し出されるように投影し、その後、位相画像Q3を、位相画像Q2に対して上方向にずらし量d/2だけずれて映し出されるように投影し、その後、位相画像Q4を、位相画像Q3に対して左方向にずらし量d/2だけずれて映し出されるように投影する処理を、視覚の時間積分効果が得られる時間間隔で行う。
【0137】
このように画像処理装置11から供給された4個の位相画像Qを、視覚の時間積分効果が得られる時間間隔で投影することにより、図3に示した4個の投影装置12を利用した場合と同様に、入力画像Wと同等の解像度でかつ入力画像Wと同等の画質の投影像を映し出すことができる。
【0138】
図34は、投影装置101の構成例を示すブロック図である。
【0139】
図34において、投影装置101は、同期制御部111、光路駆動部112、及び投影部113から構成される。
【0140】
同期制御部111は、同期用のクロック信号を生成し、光路駆動部112及び投影部113に供給する。
【0141】
光路駆動部112は、同期制御部111から供給されるクロック信号に同期して、投影部113の投影光の光路を、位相画像がそれぞれ縦横方向に位相画像の半画素分ずれて映し出されるように駆動する。
【0142】
光路駆動部112は、例えば、投影部113の投影素子自体を駆動するもので構成されるが、その他、投影部113の投影光の光路上に設けた2軸のガルバノミラーを駆動するもので構成されるようにしてもよい。
【0143】
投影部113には、画像処理装置11から供給される位相画像Qが供給される。
【0144】
投影部113は、例えば、入力画像Wのフレームレートに位相画像Qの枚数を乗じたフレームレートで位相画像Qを投影する投影素子、例えば、応答周波数が200Hz程度と比較的高速なLCOS(Liquid crystal on silicon)を採用した反射型液晶プロジェクタ等で構成され、同期制御部111から供給されるクロック信号に同期して、画像処理部22から供給される位相画像Qを、位相画像Qが互いに所定のずらし量だけずれて重なり合っているように視覚される時間間隔で、順次投影する。
【0145】
以上のように、画像投影システム100は、入力画像から、入力画像より低解像度の複数の位相画像を生成し、視覚の時間積分効果により、複数の位相画像が互いに所定のずらし量だけずれて重なり合っているように認識される時間間隔で、複数の位相画像を順次投影面に投影する。そして、複数の位相画像の生成において、複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、入力画像の画素とを対応付け、対応する領域の表示と入力画像の画素の表示の差異が最小となる位相画像の各画素の輝度値を演算するようにしたので、画像投影システム100は、入力画像と同等の解像度でかつ入力画像と同等の画質の投影像を映し出すことができる。
【0146】
また、本実施の形態では、入力画像Wとして、より高解像度のものを用いるほど、投影像Zが高解像度になる程度を向上させることができる。
【0147】
本実施の形態では、位相画像は、入力画像の1/2の解像度としたが、その他、1/2以外の1/n(nは整数)の解像度であってもよい。その場合、投影像を、実効的にn倍の解像度にすることが可能となる。
【0148】
また、画像投影システム1または画像投影システム100では、入力画像の解像度よりも低解像度の投影画像を投影する投影装置を用いるので、システムの低コスト化が可能となる。
【0149】
画像投影システム1および画像投影システム100では、逆応答演算の信号処理として比較的簡単な線形予測の信号処理を行うようにしたので、DSP(Digital Signal Processor)等の比較的安価な既存の信号処理回路を用いることができ、さらに、その信号処理回路に大きな変更を加えずに画像投影システムを実現することが可能である。
【0150】
画像投影システム1および画像投影システム100では、複数の位相画像が重なり合うように投影するようにしたので、投影装置本来の階調解像度に対して、投影装置の台数または位相画像の個数を乗じた分だけ階調解像度を向上することができる。
【0151】
画像投影システム1または画像投影システム100では、高輝度なDLPやLCOS等の画素開口率が高く高輝度な投影素子を用いるほど、より高画質の投影像とすることが可能となる。
【0152】
画像処理装置11により生成された位相画像Qは、記録媒体に記録して投影装置12等の投影装置に提供されるようにしてもよい。
【0153】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0154】
図35は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0155】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0156】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部208、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部209、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211を駆動するドライブ210が接続されている。
【0157】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0158】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、ディジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0159】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0160】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0161】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】ウォビュレーションを説明する図である。
【図2】ディスプレイシステムによる表示例を示す図である。
【図3】画像投影システムの構成例を示す図である。
【図4】4個の位相画像を模式的に表す図である。
【図5】画像処理装置11の構成例を示す図である。
【図6】画像投影システム1による画像投影処理を説明するフローチャートである。
【図7】位相画像生成処理の原理を説明する図である。
【図8】領域Rの輝度値vRのベクトル、投影画像Q’の画素Pの輝度値vPのベクトル、および行列Mからなる関係式を示す図である。
【図9】領域R1乃至R16の輝度値vRを、対応する画像W’の画素Iの輝度値vIにした場合の関係式を示す図である。
【図10】投影画像Q’の輝度値vPのベクトルを、画像W’の画素Iの輝度値vIのベクトルで表す関係式を示す図である。
【図11】一般化逆行列M-1の第13行の行ベクトルVmを示す図である。
【図12】逆応答画素を示す図である。
【図13】対応画素が構成する位相画像を決定する様子を示す図である。
【図14】対応画素が構成する位相画像を決定する様子を示す図である。
【図15】対応画素が構成する位相画像を決定する様子を示す図である。
【図16】対応画素が構成する位相画像を決定する様子を示す図である。
【図17】画像処理部22の動作を説明するフローチャートである。
【図18】画素値と輝度値の関係を示す図である。
【図19】入力画像Wを示す図である。
【図20】位相画像Q1の一部を示す図である。
【図21】位相画像Q2の一部を示す図である。
【図22】位相画像Q3の一部を示す図である。
【図23】位相画像Q4の一部を示す図である。
【図24】投影像Zを示す図である。
【図25】2個の位相画像を模式的に示す図である。
【図26】位相画像生成処理の原理を説明する図である。
【図27】領域Rの輝度値vRのベクトル、投影画像Q’の画素Pの輝度値vPのベクトル、および行列Mからなる関係式を示す図である。
【図28】領域R1乃至R16の輝度値vRを、対応する画像W’の画素Iの輝度値vIにした場合の図8の関係式を示す図である。
【図29】投影画像Q’の輝度値vPのベクトルを、画像W’の画素Iの輝度値vIのベクトルで表す関係式を示す図である。
【図30】一般化逆行列M-1の第7行の行ベクトルの要素を示す図である。
【図31】対応画素が構成する位相画像を決定する様子を示す図である。
【図32】対応画素が構成する位相画像を決定する様子を示す図である。
【図33】画像投影システム100の構成例を示すブロック図である。
【図34】投影装置101の構成例を示すブロック図である。
【図35】本発明を適用したコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0163】
1 画像投影システム, 11 画像処理装置, 12,12A乃至12D 投影装置, 21 入力部, 22 画像処理部, 22A 選択部, 22B 係数格納部, 22C 演算部, 23 分配部, 100 画像投影システム, 101 投影装置, 111 同期制御部, 112 光路駆動部, 113 投影部, 201 CPU, 202 ROM, 203 RAM, 204 バス, 205 入出力インタフェース, 206 入力部, 207 出力部, 208 記憶部, 209 通信部, 210 ドライブ, 211 リムーバブルメディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成装置において、
前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算する
を備える画像生成装置。
【請求項2】
前記複数の位相画像を、前記投影面に投影する投影手段をさらに備える
請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
前記投影手段は、透過型液晶プロジェクタ、反射型液晶プロジェクタ、またはDLP(Digital Light Processing)プロジェクタである
請求項2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
前記投影手段が前記位相画像の数分だけ設けられ、
生成した前記複数の位相画像のそれぞれを、対応する所定の前記投影手段に供給し、
各前記投影手段は、供給された前記位相画像を、前記複数の位相画像が互いに所定のずらし量だけずれて重なり合うように、前記投影面に投影する
請求項2に記載の画像生成装置。
【請求項5】
前記投影手段が1個設けられ、
生成した前記複数の位相画像を、前記1個の投影手段に供給し、
前記投影手段は、視覚の時間積分効果により、前記複数の位相画像が互いに所定のずらし量だけずれて重なり合っているように視覚される時間間隔で、前記複数の位相画像を順に前記投影面に投影する
請求項2に記載の画像生成装置。
【請求項6】
入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成方法において、
前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算するステップ
を含む画像生成方法。
【請求項7】
入力画像から、前記入力画像より低解像度であり、投影面に投射される場合互いに所定のずらし量だけずれて重なり合う複数の位相画像を生成する画像生成処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記複数の位相画像が前記投影面に投影される場合に、前記複数の位相画像のそれぞれの所定の画素が重なり合って形成される領域と、前記入力画像の所定の画素とを対応付け、対応する前記領域の画素値と前記入力画像の画素の画素値との差異が最小となる前記位相画像の画素の画素値を演算するステップ
を含む画像生成処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項1の画像生成装置により生成された前記位相画像を記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−268557(P2008−268557A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111327(P2007−111327)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】