説明

画像監視装置

【課題】記録した画像を通信網を介して監視センタへ送信する画像監視装置において、異常の通報時と、その後の確認時とで利用目的の差異に応じた画像の伝送を行う。
【解決手段】監視カメラ装置2は、異常通報の際に、異常事象の検出時に対して予め設定されている通報時注目期間内に取得された画像の全フレームを監視センタ6へ送信する。一方、通報後に監視センタ6から記憶部22の蓄積画像の送信要求を受けた場合には、監視カメラ装置2は、公衆通信網4の伝送速度に応じてフレームを間引いて送信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定周期で撮影された記録画像を通信網を介して監視センタへ伝送する画像監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視領域を監視センタから監視する遠隔画像監視システムは、監視領域側に監視カメラを備えた画像監視装置を設置し、監視領域を撮影した記録画像や現在の画像を画像監視装置から公衆通信網を介して監視センタに伝送し、異常発生時の監視領域の状況を監視センタにて確認可能とする。
【0003】
監視の目的からは監視領域の状況を迅速かつ正確に把握することが求められ、そのために監視センタにおいて、記録画像に基づいて実時間と同様の速度、つまり、撮影時の時間経過と同様の速度での動画表示(実時間再生)が求められる。しかし、インターネット網などの通信速度が保証されていない公衆通信網を利用して画像伝送を行う場合、伝送経路での通信混雑などに起因して伝送遅延が生じ、監視センタでの画像の受信間隔が監視カメラでの実際の撮影間隔より長くなり得る。このため、監視センタでの実時間再生ができず、監視員の迅速かつ正確な状況把握に支障を来す可能性がある。
【0004】
この対応策として、画像の伝送時間に応じて送信側で画像をフレーム単位で間引いて送信し、受信側で間引き画像による実時間再生を行うシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−336484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像監視装置は、監視センタの監視員からの要求に応じて、監視領域の記録画像や現在の画像及び音声を監視センタへ伝送する。また、異常事象の検知時には、その際の画像を発報画像として、異常通報と共に画像監視装置から監視センタへ送信する。
【0007】
画像監視装置から伝送された画像等の情報の利用目的には、監視領域の状況や事象の推移の把握や、異常発生の要因特定などが存在する。例えば、監視領域の状況や事象の推移の把握には画像を上述した実時間再生とすることが好適である。
【0008】
一方、異常発生の要因特定を目的とする場合に、実時間再生とすると、間引かれて送信されなかった画像に監視上の重要な像や動きが記録されている可能性がある。そのため、常に実時間再生とすると、却って、監視員の正確な状況把握に支障を来す場合があるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、監視センタでの利用目的に応じて画像等の伝送を好適な態様で行うことができる画像監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像監視装置は、監視区域に発生した所定の異常事象を検出し、通信網を介して接続された監視センタへ異常通報を行うものであって、所定周期で前記監視区域を撮影した画像を取得する画像取得部と、時系列に従って複数フレームの前記画像を記憶する記憶部と、前記監視センタへ前記異常通報及び前記画像の送信を行う通信部と、を有し、前記通信部は、前記異常通報の際に、前記異常事象の検出時に対して予め設定されている通報時注目期間に取得された前記画像の全フレームを前記監視センタへ送信する通報時送信動作と、前記通報時送信動作以外で前記記憶部に記憶された蓄積画像を前記監視センタへ送信する際に、前記通信網の伝送速度に応じてフレームレートを変化させて前記蓄積画像を送信する非通報時送信動作と、を行う。例えば、異常通報を受けて、監視センタの監視員は送信対象撮影期間を指定して蓄積画像の伝送を画像監視装置に要求することができ、画像監視装置は当該要求に対して非通報時送信動作を行う。
【0011】
本発明に係る画像監視装置は、さらに、前記記憶部に記憶された前記蓄積画像を古いものから順に、新たに取得される前記画像で上書き記録する更新処理を継続し、前記異常事象が検出されると、その時点から前記蓄積画像の一部が更新される所定時間経過後に前記更新処理を停止することで、前記異常事象の検出前後にわたる所定の蓄積対象期間に取得された前記画像を記録する制御部をさらに有し、前記通報時注目期間は、前記蓄積対象期間の一部であって前記異常事象の検出前後にわたって設定される。例えば、通報時注目期間は、異常事象の発生から検出までのタイムラグや、検出の要因の特定が可能であることなどを考慮して定めることができる。通報時注目期間は、検出目的の異常事象に応じて異なるが、基本的には比較的短い時間に設定される。
【0012】
他の本発明に係る画像監視装置は、前記監視区域の音声を取得する音声取得部をさらに有し、前記通信部が、前記画像の送信動作の間、当該送信動作中に連続して取得される前記音声を固定の送信レートで前記監視センタへ送信するものである。
【0013】
別の本発明に係る画像監視装置は、監視区域に発生した所定の異常事象を検出し、通信網を介して接続された監視センタへ異常通報を行うものであって、所定周期で前記監視区域を撮影した画像を取得する画像取得部と、時系列に従って複数フレームの前記画像を記憶する記憶部と、前記監視区域の音声を取得する音声取得部と、前記監視センタへ前記異常通報並びに、前記画像及び前記音声の送信を行う通信部と、を有し、前記通信部は、前記異常通報の際に、現在取得されている前記音声を前記監視センタへ送信しつつ、前記異常事象の検出時に対して予め設定されている通報時注目期間に取得された前記画像の全フレームを前記監視センタへ送信する通報時送信動作と、前記通報時送信動作で前記記憶部に記憶された蓄積画像を前記監視センタへ送信する際に、現在取得されている前記音声を前記監視センタへ送信しつつ前記蓄積画像を送信する動作であって、前記通信網の伝送速度が所定の閾値未満のときには前記蓄積画像の送信を中断して前記音声のみ送信する非通報時送信動作と、を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異常通報の際は、異常発生要因が撮影される可能性が高い異常検出時に対応した通報時注目期間内の全画像を前記監視センタへ送信するので、監視員は異常発生時の状況把握が容易となる。一方、異常通報時以外においては、監視センタでの実時間再生が実現されるように画像が伝送され、監視領域の状況や事象の推移の把握が容易となる。また、画像と併せて伝送される監視領域の音声は、通信網の伝送速度にかかわらず、間欠・中断されずに再生され、監視領域の状況や事象の推移についての音声による把握が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る監視システムの概略の構成を示す模式図である。
【図2】監視カメラ装置における画像蓄積動作を説明する概略のフロー図である。
【図3】記憶部への画像の蓄積の仕方を説明する模式図である。
【図4】監視カメラ装置の通報時送信動作を説明する概略のフロー図である。
【図5】監視カメラ装置が監視センタから蓄積画像要求を受けた場合の非通報時送信動作を説明する概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、実施形態に係る監視システムの概略の構成を示す模式図である。当該監視システムは本発明に係る画像監視装置である監視カメラ装置2を有する。監視カメラ装置2は、監視領域が設けられる建物に配置される。本監視システムは当該監視カメラ装置2と、これと公衆通信網4を介して通信可能な監視センタ6とからなる。監視カメラ装置2は、監視カメラ10、集音マイク12、侵入センサ14及び監視主装置16を備える。
【0018】
本監視システムは、監視カメラ10で監視領域を撮影し、監視領域への人の侵入や危険などの異常の発生を監視する。監視カメラ10で撮影された画像は、公衆通信網4を介して監視センタ6へ伝送される。撮影された画像は、リアルタイムで監視センタ6へ伝送することもできるし、監視主装置16にて記録・蓄積し、監視センタ6からの要求に応じて蓄積画像を伝送することもできる。監視センタ6では、監視員が監視カメラ装置2からの異常通報や画像等に基づいて監視領域を遠隔監視する。
【0019】
監視カメラ10は、監視領域を撮影可能な位置に設置され、所定周期で監視領域を撮影し画像を取得する。例えば、監視カメラ10は、1秒当たり5フレーム(5fps)の画像を撮影する。
【0020】
集音マイク12は、監視領域の音声を検出する。
【0021】
侵入センサ14は、監視領域への人の侵入を自動検知する。例えば、侵入センサ14は、建物の窓や扉が開けられたことを検知して検知信号を発報する開閉センサや、監視領域内の人体が発する赤外線を検知して検知信号を発報する空間センサなどである。
【0022】
監視カメラ装置2は、警戒セットモードと警戒解除モードという2つの監視モードを有する。警戒セットモードは、監視領域が設定される部屋や建物から利用者が退出し無人となる状態にて選択・設定される。警戒セットモードでは、侵入センサ14の出力に基づいた侵入者の自動検知が行われる。一方、警戒解除モードは、監視領域に利用者が存在し得る状態にて選択・設定され、当該モードでは侵入センサ14は停止され、又はその侵入検知信号が無効とされる。
【0023】
監視主装置16は、制御部20、記憶部22、画像信号入力部24、音声信号入力部26、検知信号入力部28、モード設定部30及び通信部32を含む。
【0024】
制御部20は、マイクロプロセッサ(MPU)等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて、監視カメラ装置2の各部の動作を制御する。例えば、制御部20は、異常判定手段34、記録制御手段36、通信制御手段38として機能する。
【0025】
異常判定手段34は、侵入センサ14からの検知信号に基づいて、監視対象とする異常事象の発生を判定する。監視カメラ装置2が警戒セットモードに設定されている場合には、異常判定手段34は、侵入センサ14から侵入検知信号が入力されると異常発生と判定する。
【0026】
記録制御手段36は、記憶部22に記憶されている画像を古いものから順に、新たに取得される画像で上書きする更新処理(以下、FIFO方式の更新処理と称する。)を行い、異常判定手段34が異常を検知すると当該更新処理を停止する。
【0027】
通信制御手段38は、異常判定手段34が異常発生と判定した場合に、通信部32を制御して監視センタ6へ異常通報信号を送信する。また、異常通報信号に続けて、異常検知前後の画像(発報画像)も送信する。通信制御手段38は、監視センタ6から蓄積画像の伝送要求を受けると、記憶部22に蓄積された画像のうち、伝送要求にて指定された期間のものを、公衆通信網4の伝送速度に応じてフレームレートを変化させて監視センタ6へ送信する。通信制御手段38及び通信部32が本発明の通信部に相当する。
【0028】
記憶部22はメモリからなり、監視カメラ10が撮影した画像を記憶・蓄積する。記憶部22への蓄積は監視動作中、上述のように制御部20によりFIFO方式で継続されるため、記憶部22に用いられる記録媒体には、長時間の使用や頻繁なアクセスに耐えることが求められる。この点、メモリは例えば、ハードディスクなどと比べると耐久性・信頼性が高く、当該要求を満たす。一方、メモリは、ハードディスクと比べると高価であるため、監視カメラ装置2に記憶部22として搭載されるメモリの容量は一般的にはそれほど大きくは設定されない。例えば、記憶部22は、500フレームの画像を記憶できるように設計されている。
【0029】
画像信号入力部24は、監視カメラ10から撮影画像の画像信号を監視主装置16に取り込むインターフェース回路であり、監視カメラ10と有線又は無線で接続される。例えば、画像信号入力部24はフレームメモリを備え、監視カメラ10から入力された画像信号を、制御部20による処理が行われるまで保持することができる。画像信号入力部24が本発明の画像取得部に相当する。なお、監視カメラ10を含めて本発明の画像取得部としてもよい。
【0030】
音声信号入力部26は、集音マイク12が出力する音声信号を監視主装置16に取り込むインターフェース回路であり、集音マイク12と有線又は無線で接続される。音声信号入力部26は集音マイク12からの音声信号をA/D変換し、またADPCM(Adaptive Differential Pulse Code Modulation:適応的差分パルス符号変調)方式で32kbpsに圧縮する。音声信号入力部26が本発明の音声取得部に相当する。なお、集音マイク12を含めて本発明の音声取得部としてもよい。
【0031】
検知信号入力部28は、侵入センサ14が出力する検知信号を監視主装置16に取り込むインターフェース回路であり、侵入センサ14と有線又は無線で接続される。
【0032】
モード設定部30は、上述の2つの監視モードを選択的に制御部20に設定する手段であり、利用者が監視モードを選択する操作手段を含む。例えば、利用者はスイッチやボタンなどの操作、キーやICカードによる操作、暗証番号の入力などによって監視モードを選択し、モード設定部30は選択された監視モードを示す信号を制御部20へ出力する。
【0033】
通信部32は監視センタ6との通信インターフェースである。
【0034】
監視センタ6は、制御部40、センタ通信部42、表示部44及び操作部46を有する。
【0035】
制御部40はMPU等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて監視センタ6の各部の動作を制御する。
【0036】
センタ通信部42は監視カメラ装置2との通信インターフェースである。
【0037】
表示部44は液晶ディスプレイ等の画像表示手段であり、監視カメラ装置2から伝送された画像や後述する遅延予測情報を表示する。表示部44の表示は、監視員が異常発生を確認するために利用される。
【0038】
操作部46は、監視員が各種の設定、情報、指示等を制御部40に入力する手段であり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ボタンなどである。
【0039】
次に、監視カメラ装置2における画像蓄積動作について説明する。図2は監視主装置16の動作を説明する概略のフロー図である。制御部20は、異常検知されない間は、侵入センサ14の出力に基づいて異常発生の有無を監視する処理(S5)と、監視カメラ10から画像信号入力部24を介して入力される画像信号の有無を監視する処理(S10)とを継続する。例えば、制御部20は、警戒セットモードにおいて、侵入センサ14が発報する侵入検知信号の受信を監視する(処理S5)。そして、侵入検知信号が受信されず異常が検知されない場合には(S5における「No」の場合)、次フレームの画像が監視カメラ10から入力されているかを判定する(S10)。監視カメラ10からまだ次フレームの画像信号が得られていない場合には(S10における「No」の場合)、処理S5に戻る。このように制御部20は処理S5,S10からなるループを繰り返して、侵入検知信号の受信(S5における「Yes」の場合)と次の画像の入力(S10における「Yes」の場合)とを待つ。
【0040】
監視カメラ10から次フレームの画像信号が得られた場合には(S10における「Yes」の場合)、その画像信号を記憶部22に格納する(S15)。画像の格納後は処理S5に戻る。
【0041】
記憶部22は上述のように500フレームの画像を記憶する領域を有している。図3は、記憶部22への画像の蓄積の仕方を説明する模式図である。同図は、当該領域を識別する記憶フレーム番号“n”(nは1〜500の自然数)と、当該領域に格納される画像の撮影時刻Tとの対応関係を表しており、或る時点にて異常検知されたことに伴って画像蓄積が停止された状態の例を示している。制御部20は、新たな画像に記憶フレーム番号順で記憶領域を割り当てる。記憶フレーム番号が一巡した後は、記憶部22に記憶される画像はFIFO方式で更新される。つまり、記憶フレーム番号nを用い、500フレームの記憶領域をリングバッファ方式で利用し、撮影時刻が最も古い画像が記憶された記憶領域を最新の画像で順次上書き記憶していき、常時直近500フレーム分の画像を蓄積しておく。例えば、直前の画像を記憶フレーム番号n=kの領域に格納した場合、次に格納する画像には、n=k+1の領域が割り当てられ、直近画像をn=500の領域に格納した場合には、次の画像に割り当てられる領域はn=1の領域に戻る。
【0042】
図3において時刻Tは、監視カメラ10が撮影した画像のフレーム数で表しており、時刻Tが1ずつ増加する毎に記憶領域が割り当てられることを示している。すなわち、監視カメラ10が撮影する各フレームが順次、記憶部22に格納される。
【0043】
検知信号の受信により異常検知した場合には(S5における「Yes」の場合)、制御部20は、通信部32を介して監視センタ6へ異常を通報する(S20)。また、異常検知後も所定数の画像を蓄積する(S25〜S35)。例えば、制御部20は、異常検知後、100フレームの画像を記憶部22に蓄積する。具体的には、制御部20は、次フレームの画像が監視カメラ10から入力されたかを監視し(S25)、入力されていれば、その画像を記憶部22に記録する(S30)。この画像入力監視(S25)及び画像の記録(S30)は異常検知後、100フレームの画像を蓄積するまで繰り返され(S35における「No」)、100フレーム蓄積すると(S35における「Yes」)記憶部22への画像の記録を停止し(S40)、異常検知前後の画像を記憶部22に保持させる。ちなみに、図3は、時刻T=tの画像の記録後、異常検知がなされ画像蓄積が停止された状態を示している。この図が示すように、異常検知前の画像としてT=t−399からT=tまでの400フレームの各画像が記憶部22に蓄積され、異常検知後の画像としてT=t+1からT=t+100まで100フレームの各画像が記憶部22に蓄積される。すなわち、検知前80秒間及び検知後20秒間の画像が5fpsで記憶部22に蓄積される。
【0044】
次に、監視カメラ装置2が異常検知を監視センタ6へ通報する際の送信処理(通報時送信動作)を説明する。図4は、当該動作を説明する概略のフロー図である。
【0045】
監視カメラ装置2において、制御部20は、侵入センサ14からの検知信号を受信すると異常判定手段34により異常を検知し、通信制御手段38により通信部32を制御して、監視センタ6へ異常通報信号を送信して異常を通報する(S50)と共に、現音声の送信を開始する(S55)。また、侵入センサ14からの異常検知の発報前後の記録画像(蓄積画像)を発報画像として送信する(S60,S65)。
【0046】
発報画像に対応する撮影期間(通報時注目期間)は、侵入検知に対して予め設定されている固定の期間である。当該期間は、侵入の発生から侵入センサ14が検出するまでの時間や侵入センサ14の検出から侵入者が監視カメラ10の撮影範囲に現れるまでの時間などを考慮して、侵入として検知された要因となる事象が画像に好適に捉えられるように設定することができる。また、監視センタ6では、発報画像に基づいて、発報の原因となった事象が真に侵入であるか否かを判定する。例えば、監視センタ6では、監視員が発報画像をコマ送りさせたり、発報画像に含まれるフレームを逐一選択しながら、画像を確認して発報原因を調べる。これらの観点から、通報時注目期間は、監視員が迅速かつ正確に発報原因の特定を行うことができるように設定される。特に、侵入センサ14の検出範囲を監視カメラ10の画角が包含している場合は、異常検知時及びその直前や直後に侵入センサ14の検出対象が写されているはずである。よって、監視員は、異常検知前後の短時間の画像を詳細に確認することが望まれる。本実施形態では、異常検知の2秒前から異常検知の1秒後までに設定され、T=t−10からT=t+5までの16フレームの画像が発報画像とされる。
【0047】
発報画像の送信は古いものから1フレームずつ順番に行われ(S60)、通報時注目期間内に取得された16フレームの送信が完了するまで継続される(S65)。この発報画像の送信は、公衆通信網4の伝送速度(送信ビットレート)が低下した状態となっても、間引かずに全フレームを送信する。以上が本来の通報時送信動作であり、当該動作は監視センタ6からの要求によってではなく、監視カメラ装置2が異常を検知すると自動的に実行する。この発報画像により、監視センタ6は、異常発生要因の特定のための詳細な情報を得ることができる。
【0048】
本実施形態では監視カメラ装置2は、上述の本来の通報時送信動作の完了に引き続いて、監視カメラ10から入力される現画像の送信動作(S70〜S80)を開始する。当該動作では、現在送信している画像の送信が完了すると(S80における「Yes」の場合)、その時点で画像信号入力部24に入力されている画像を次の送信対象とする(S70)。ここで、通信部32は、公衆通信網4を介し監視センタ6との通信速度を随時監視しており、公衆通信網4が伝送可能な速度に応じて送出するビットレートを調節し、ロスパケットの発生を抑制している。その結果、伝送速度が低下すると、1フレームの現画像の伝送時間τrが長くなる。つまり、現画像の送信動作では、伝送速度によって送信フレームレートは上下し、伝送速度が低下するほど多くのフレームが間引かれた画像が監視センタ6に送られる。
【0049】
現画像の送信動作は送信停止要求がなされるまで継続される(S75)。送信停止要求は例えば、監視センタ6から公衆通信網4を介して監視カメラ装置2へ送られる。通信制御手段38は、現画像の送信中において(S80における「No」の場合)、送信停止要求の有無を監視する(S75)。そして、送信停止要求があった場合(S75における「Yes」の場合)、現画像の送信を停止すると共に、発報画像の送信と共に開始された現音声の送信処理(S55)も停止する(S85)。
【0050】
以上の動作において、監視センタ6では、センタ通信部42が監視カメラ装置2からの異常通報信号、現音声、及び発報画像又は現画像を受信すると、制御部40はそれらを表示部44に表示する。発報画像の各フレームは、例えば、表示部44の画面に設定される表示領域(ウィンドウ)にて、監視員が選択可能に表示され、監視員はそれらの任意のフレームを選択して異常発生の要因を精査できる。また、現画像は別の表示領域に、新たなフレームが受信される毎に更新して表示され、監視領域のリアルタイムの動画が表示される。監視員は、表示部44に表示された異常通報、発報画像、現画像から監視領域での異常発生及び状況を把握することができる。
【0051】
監視員は、より正確な状況判断等のために、記憶部22の蓄積画像を観察したい場合には、その伝送を求める操作を行うことができる。制御部40は、蓄積画像の撮影期間のうち伝送対象とする期間を指定可能とする。監視員は操作部46を操作して、伝送を求める期間(送信対象撮影期間)の始点及び終点、又は始点のみを設定し、設定された送信対象撮影期間の情報は蓄積画像要求に指定され、監視カメラ装置2へ送信される。蓄積画像の要求時に送信対象撮影期間の始点のみ指定した場合には、蓄積画像の記録停止時点が終点となる。なお、監視員は、蓄積画像の送信中の任意のタイミングにて送信停止要求を行って送信対象撮影期間の終点を指定できる。
【0052】
例えば、このように監視センタ6からの要求を受けた場合など、監視カメラ装置2は、異常検知の通報時の動作以外の期間にも、随時、現画像や蓄積画像を送信する動作(非通報時送信動作)を行うことができる。図5は、監視カメラ装置2の非通報時送信動作を説明する概略のフロー図であり、監視センタ6から蓄積画像要求を受けた場合を表している。この非通報時送信動作では、送信対象撮影期間の蓄積画像を送信する際に、公衆通信網4の伝送速度と蓄積画像のフレームレートとの関係に応じて間引き処理を行ってフレームレートを変化させる。
【0053】
監視カメラ装置2において、制御部20は、監視センタ6からの蓄積画像要求を受けると(S100)、現音声の送信を開始する(S105)と共に、送信対象撮影期間にて記録された画像の送信を開始する(S110)。
【0054】
通信制御手段38は、例えば、送信対象撮影期間の最初の画像を送信すると共に(S110)、その伝送時間τrを計測し、蓄積画像の記録間隔(ここでは0.2秒)と比較して伝送遅延の有無を判定する(S115)。伝送遅延がなければ(S115において「No」の場合)、間引き処理は行われず、先行送信画像の次の撮影時刻に取得された画像を送信する(S120)。伝送遅延がある場合は(S115において「Yes」の場合)、間引き処理により伝送時間τrだけ後に取得された画像を次の送信画像として選択し(S125)、当該選択画像を送信する(S130)。
【0055】
処理S120,S130の画像送信においても伝送時間τrが計測される。そして、送信を停止させる要求を監視センタ6から受けておらず(S135における「No」の場合)、かつまだ送信対象撮影期間内である場合(S140において「No」の場合)、処理S115からの処理が繰り返される。
【0056】
一方、送信対象撮影期間が終了した場合(S140において「Yes」の場合)や、当該期間の途中であっても監視センタ6から蓄積画像の送信停止要求や現画像の送信要求を受けた場合(S135において「Yes」の場合)には、記録画像及び現音声の送信処理を停止する(S145)。
【0057】
上述のように非通報時送信動作では、通信制御手段38は、監視センタ6にて撮影時と同様の一様な時間経過の動画再生が可能なように、伝送遅延を考慮して蓄積画像を間引き処理しながら順次、監視センタ6へ送信する。具体的には、通信制御手段38は、先行する画像の送信時に計測した伝送時間τrを蓄積画像の撮影間隔τsと比較して、τr≦τsの場合は伝送遅延はないとして、直近に送信した蓄積画像(先行送信画像)の次に撮影された蓄積画像を送信する。これに対して、τr>τsの場合は伝送遅延があったことになる。この場合は、先行送信画像と次に送信される画像(後続送信画像)との撮影時刻の間隔が先行送信画像の伝送時間に応じた値となるように、先行送信画像と後続送信画像との間の送信間隔を空けて、その間のフレームを間引いて画像を送信する。これにより、監視員は蓄積画像に現れる事象を撮影時と同様の速度で観察することができ、当該事象の把握が容易となる。
【0058】
なお、監視員は間引き処理された蓄積画像の観察から、詳細確認が必要な時間帯を特定することができ、監視カメラ装置2は監視センタ6からの要求に応じて当該時間帯の蓄積画像を間引き処理せず送信するように構成することができる。
【0059】
通報時送信動作及び非通報時送信動作では、画像の送信と並行して現音声を監視センタ6へ送信している。この現音声は、公衆通信網4の伝送速度にかかわらず、間欠・中断されずに送信レートを固定して送信される。すなわち、例えば、蓄積画像の送信が間引かれて行われる場合でも、監視センタ6では現音声を連続してモニタすることができ、音声により監視領域の現在の状況把握が可能となる。監視カメラ装置2は、公衆通信網4の伝送速度が低下すると、送信する蓄積画像のフレーム間隔を拡大させるが、伝送速度が予め設定した閾値未満となると、蓄積画像の送信を中断し、現音声の送信を優先させる。これにより、伝送速度が極めて低下した場合であっても、少なくとも音声にて現場のリアルタイムな状況確認を行える。
【0060】
上述の実施形態では、監視カメラ10にて0.2秒毎に画像を撮影し、その画像信号を監視主装置16に送信する構成としたが、監視カメラ10からは例えばNTSC方式(29.97fps)の映像信号を出力させ、画像信号入力部24にて0.2秒毎に画像を切り出してフレームメモリに格納し、また当該フレームメモリに格納した画像を記憶部22に記録する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
2 監視カメラ装置、4 公衆通信網、6 監視センタ、10 監視カメラ、12 集音マイク、14 侵入センサ、16 監視主装置、20 制御部、22 記憶部、24 画像信号入力部、26 音声信号入力部、28 検知信号入力部、30 モード設定部、32 通信部、34 異常判定手段、36 記録制御手段、38 通信制御手段、40 制御部、42 センタ通信部、44 表示部、46 操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域に発生した所定の異常事象を検出し、通信網を介して接続された監視センタへ異常通報を行う画像監視装置において、
所定周期で前記監視区域を撮影した画像を取得する画像取得部と、
時系列に従って複数フレームの前記画像を記憶する記憶部と、
前記監視センタへ前記異常通報及び前記画像の送信を行う通信部と、
を有し、
前記通信部は、
前記異常通報の際に、前記異常事象の検出時に対して予め設定されている通報時注目期間に取得された前記画像の全フレームを前記監視センタへ送信する通報時送信動作と、
前記通報時送信動作以外で前記記憶部に記憶された蓄積画像を前記監視センタへ送信する際に、前記通信網の伝送速度に応じてフレームレートを変化させて前記蓄積画像を送信する非通報時送信動作と、
を行うことを特徴とする画像監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像監視装置において、
前記記憶部に記憶された前記蓄積画像を古いものから順に、新たに取得される前記画像で上書き記録する更新処理を継続し、前記異常事象が検出されると、その時点から前記蓄積画像の一部が更新される所定時間経過後に前記更新処理を停止することで、前記異常事象の検出前後にわたる所定の蓄積対象期間に取得された前記画像を記録する制御部をさらに有し、
前記通報時注目期間は、前記蓄積対象期間の一部であって前記異常事象の検出前後にわたって設定されること、
を特徴とする画像監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像監視装置において、
前記監視区域の音声を取得する音声取得部をさらに有し、
前記通信部は、前記画像の送信動作の間、当該送信動作中に連続して取得される前記音声を固定の送信レートで前記監視センタへ送信すること、
を特徴とする画像監視装置。
【請求項4】
監視区域に発生した所定の異常事象を検出し、通信網を介して接続された監視センタへ異常通報を行う画像監視装置において、
所定周期で前記監視区域を撮影した画像を取得する画像取得部と、
時系列に従って複数フレームの前記画像を記憶する記憶部と、
前記監視区域の音声を取得する音声取得部と、
前記監視センタへ前記異常通報並びに、前記画像及び前記音声の送信を行う通信部と、
を有し、
前記通信部は、
前記異常通報の際に、現在取得されている前記音声を前記監視センタへ送信しつつ、前記異常事象の検出時に対して予め設定されている通報時注目期間に取得された前記画像の全フレームを前記監視センタへ送信する通報時送信動作と、
前記通報時送信動作以外で前記記憶部に記憶された蓄積画像を前記監視センタへ送信する際に、現在取得されている前記音声を前記監視センタへ送信しつつ前記蓄積画像を送信する動作であって、前記通信網の伝送速度が所定の閾値未満のときには前記蓄積画像の送信を中断して前記音声のみ送信する非通報時送信動作と、
を行うことを特徴とする画像監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−233145(P2010−233145A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80913(P2009−80913)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】