説明

画像表示方法および画像表示装置

【課題】比較読影の対象となる同一被写体についての2以上の画像について、従来よりも比較読影性能を向上させるように表示させる。
【解決手段】経時サブトラクション処理手段15により、比較読影の対象となる原画像間でサブトラクション処理を施し、位置合わせ手段13により、サブトラクション処理により得られた2以上のサブトラクションを解剖学的特徴部分について位置合わせし、表示フォーマット設定手段12により、これら2以上の位置合わせされたサブトラクション画像を画像表示面11に並べて表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示方法および画像表示装置に関し、詳細には、同一被写体についての複数の画像間処理画像の表示の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、同一被写体についての複数の画像を比較読影して、画像間の差異を調べ、その差異に基づいて被写体の検査などを行うことが、種々の分野において行われている。
【0003】
例えば工業製品の製造分野においては、ある製品について新品の状態の時に撮影された画像と、当該製品の耐久試験後に撮影された画像とを比較読影して、両者の差異の大きな部位に注目することにより、製品の耐久性を向上させるべき部位を検討することなどが行われており、また医療分野においては、ある患者の疾患部位について時系列的に撮影された複数枚の放射線画像を医師が比較読影することにより、当該疾患の進行状況や治癒状況を把握して治療方針を検討することが行われている。
【0004】
このように複数の画像を比較読影することが日常的に各種の分野で行われているが、その比較読影のために、これら複数の画像を画像表示装置等に表示させる場合がある。すなわち画像を濃度信号や輝度信号に変換したうえで、画像表示装置等に表示するのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで比較読影の対象となる複数の画像を表示する場合、それらの画像を単に並べて表示するのが一般的であるが、比較読影を行なう場合に読影者にとって最も関心があるのはこれらの画像間の差異である。しかし、上述したように例えば複数の画像を単に並べて表示させてこの差異を発見するのは、その差異が小さい程困難であり、比較読影の性能向上が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、比較読影の対象となる同一被写体についての複数の画像について、従来よりも比較読影性能を向上させて表示させることができる画像表示方法および画像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示方法および画像表示装置は、3以上の画像から得られた2以上の差分画像や位置合わせがなされた後の画像のように画像間処理が施された画像(画像間処理画像)を並べてまたは順次切り換えて表示することにより、これらの画像間の差異を際だたせて差異を視認しやくすし、比較読影性能を向上させたものである。
【0008】
すなわち本発明の画像表示方法は、比較読影の対象となる、同一被写体についての3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像に基づいて画像間処理を施すことにより作成された2以上の画像間処理画像を、並べてまたは順次切り換えて表示することを特徴とするものである。
【0009】
ここで被写体には、人体等の他、動植物、工業製品、地形、天体、風景等あらゆるものが含まれる。
【0010】
3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像とは、比較読影の対象となる画像が3以上存在し、これら3以上の画像のうち任意の2つの画像を1組の対画像としてこの対画像を2組以上設定した場合に、各対画像をそれぞれ構成する2つの画像を意味するものであり、これらの各対画像を構成する2つの画像間で画像間処理を施すことにより得られた差異が際だった画像を1つまたは2つ得ることができる。すなわち、画像間処理として例えば両画像の差を求める差分処理を適用した場合は、1組の対画像から「1つ」の差分画像を得ることができる。また画像間処理として例えば両画像の位置合わせを行なう位置合わせ処理を適用した場合は、1組の対画像から「2つ」の位置合わせ処理済画像を得ることができる。したがって、1組の対画像から画像間処理画像が1つしか得られない差分処理のような画像間処理の場合には、2組以上の対画像から得られた2つ以上の画像間処理画像を並べまたは切り換えて表示し、1組の対画像から画像間処理画像が2つ得られる位置合わせ処理のような画像間処理の場合には、その1組以上の対画像から得られた2つ以上の画像間処理画像を並べまたは切り換えて表示することを意味する。
【0011】
なお、このように画像間処理画像を並べて表示する場合には、表示しようとする2以上の画像に共通する構造的特徴部分の表示位置を揃えて並べることにより、視線の移動が水平または鉛直となるため比較読影しやすく、読影性能を一層向上させることができるため、好ましい。ここで、表示位置を揃えて並べるとは、高さ方向の位置を揃え左右方向の異なる位置に左右方向に並べて表示するか、または左右方向の位置を揃え高さ方向の異なる位置に高さ方向に並べて表示するか、のいずれかを意味する。
【0012】
一方、画像間処理画像を順次切り換えて表示する場合には、表示しようとする2以上の画像に共通する構造的特徴部分の表示位置を一致させることにより、表示切換えの都度、視線が構造的特徴部分を追って定まらなくなるということが防止されるため比較読影しやすく、読影性能を一層向上させることができ、好ましい。ここで、表示位置を一致させるとは、左右方向および高さ方向の位置を一致させて表示させることを意味する。
【0013】
なお、構造的特徴部分とは、外観的な構造物だけでなく、例えば解剖学的な構造物(例えば肺野、胸骨、頸部等)の特徴部分(上下端縁部、左右端縁部、中心部等)を意味する。特に比較読影上、最も関心のある部分を適用するのが好ましいが、当該関心のある部分の存在位置を把握するのに適切な基準となる部分を適用するのも好ましい。
【0014】
なお比較読影の対象となる同一被写体についての複数の画像としては、それぞれ医療用放射線画像を適用することもでき、また時系列的に順次取得された画像を適用するのも、被写体の経時変化を読影することができる点で好ましい。
【0015】
画像間処理としては前述したように差分処理、すなわち画素を対応させた減算処理、各構造要素の位置を合わせる位置合わせ処理、またはこの位置合わせ処理を行なった上でさらに上記減算処理を適用するのが、画像間の差異を読影する上で好ましい。差分処理によって得られるサブトラクション画像としては、時系列的に略同時に撮影して得られたエネルギー分布の互いに異なる2つの原画像(=オリジナルの画像;高圧画像(通常の放射線画像)、低圧画像(高圧抑制画像))に基づいて(単純減算または荷重減算)得られるエネルギサブトラクション画像、時系列的に異なる時期に撮影して得られた2つの原画像に基づいて得られる経時サブトラクション画像、造影剤の注入前後にそれぞれ撮影して得られる血管の2つの原画像に基づいて得られるDSA(デジタルサブトラクション・アンギオグラフィ)画像等を適用することができる。
【0016】
なお、2以上の画像間処理画像のそれぞれ基になる各2つの画像のうち1つが、全ての画像間処理画像において共通となるように選択されたものとすれば、当該選択された1つの画像を基準とした、画像間の差分の変化の様子を観察することができ、特に医療用放射線画像のように、病変部の経時的変化に関心がある場合には、当該病変部の経時変化を最もよく観察することができ好ましい。さらに、もとの3以上の画像が時系列的に順次取得された画像である場合には、当該選択された基準となる1つの画像としては、時系列的に最も新しい画像または最も古い画像を適用するのが好ましい。
【0017】
一方、各画像間処理画像が、それぞれ時系列的に隣接した2つの画像に基づいた前記画像間処理により作成されるものとするのも好ましい。この場合、画像間の差異が変化するスピードの変わり具合を観察することができ、病変部への治療の効果の変化などを把握することができる。
【0018】
なお上述した本発明の画像表示方法においては、画像の取得の順に基づいて並べまたは切り換えて表示するようにするのが望ましい。
【0019】
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の画像表示方法を実施するための装置であって、画像を表示する画像表示手段を備えた画像表示装置において、
比較読影の対象となる、同一被写体についての3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像に基づいて画像間処理を施す画像間処理手段と、この画像間処理手段により処理して得られた2以上の画像間処理画像を、前記画像表示手段に、並べてまたは順次切り換えて表示させる表示フォーマット設定手段とをさらに備えたことを特徴とするものである。
【0020】
なお前記2以上の各画像間処理画像における前記被写体の構造的特徴部分の表示位置を揃える位置合わせ手段、または前記2以上の各画像間処理画像における前記被写体の構造的特徴部分の表示位置を一致させる位置合わせ手段、をさらに備えたものとするのがより好ましい。
【0021】
画像間処理手段としては、画像間処理として、2つの画像間の、各画素を対応させた減算処理を適用したものであってもよいし、2つの画像間の、各構造要素の位置を合わせる位置合わせ処理を適用したものであってもよく、または2つの画像間の、各構造要素の位置を合わせる位置合わせ処理を行なった上での、各画素を対応させた減算処理を適用したものであってもよい。
【0022】
表示フォーマット設定手段としては、画像間処理画像のそれぞれ基になる画像の作成の順に基づいて、2以上の画像間処理画像を、並べてまたは順次切り換えて表示するものを適用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の画像表示方法および画像表示装置によれば、比較読影の対象となる、同一被写体についての複数の画像を、画像間処理したうえで、並べてまたは順次切り換えて表示することにより、画像間処理を行っていない元の画像を単に表示する場合に比較して、画像間の差異を際立たせまたは読影者に対して視認させやすくするため、比較読影性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の画像表示方法および画像表示装置の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0025】
図1は本発明の画像表示方法および画像表示装置の一実施形態である画像表示装置10を含む医療用画像ネットワーク100を示す図である。
【0026】
図示のネットワーク100には、例えばCT装置(コンピュータ断層像撮影装置)、MRI装置(磁気共鳴像撮影装置)、CR装置(コンピュータラジオグラフィ)50等の医療用画像生成装置と、これらの医療用画像生成装置により生成された各種の診断用医療画像を蓄積記憶するデータベース70と、データベース70に一旦記憶された画像や画像生成装置から直接送られた画像を表示する画像表示装置10などが接続されている。なおネットワーク100には、このネットワーク100上を流通する画像をフイルム等に出力するプリンター等も接続されているが、CT装置およびMRI装置を含めて本図においては図示を省略している。
【0027】
CR装置50は、被写体を透過した放射線を、輝尽性蛍光体層を有するシート状の蓄積性蛍光体シートに照射することにより、蓄積性蛍光体シートに被写体の透過放射線像を蓄積記録し、その後、当該蓄積性蛍光体シートにレーザ光を照射して、シートに蓄積記録されている放射線エネルギに応じた光量で発光する輝尽発光光を光電的に読み取ることにより、被写体の透過放射線像をデジタル画像として取得する装置であり、病院等の医療機関において広く使用されているものである。
【0028】
CR装置50とネットワーク100の間に介在しているQA−WS(画像品質チェック用ワークステーション)60は、上述したCR装置50等の画像生成装置により生成された診断用画像をチェックし、必要の場合は画像生成装置に対して画像の再取得を要求するなどの機能を備えたワークステーションである。本実施形態におけるこのQA−WS60は、CR装置50によって生成されたデジタル画像Pを、データベース70に蓄積記憶する前に表示して、画像濃度、コントラストなどの画質チェック、撮影範囲等のチェックを行うものとして設けられている。
【0029】
画像表示装置10は、ネットワーク100を介して入力された画像を単に可視像として表示するだけでなく、同一患者の同一患部について時系列的に撮影された複数の画像Pについてサブトラクション処理をも行う機能を有するものであり、このようなサブトラクション処理により得られた経時サブトラクション画像Suを作成する、画像間処理手段としての経時サブトラクション画像作成部15と、画像を表示する画像表示面(画像表示手段)11と、画像を一時的に記憶するメモリ16と、画像中の構造的特徴部分の一例である解剖学的特徴部分(例えば肺野の上端縁など)を検出する解剖学的特徴抽出手段14と、2以上のサブトラクション画像における解剖学的特徴部分の表示位置を一致させる位置合わせ手段13と、表示位置が一致されたこれら2つ以上の画像を順次切り換えて画像表示面11に表示させる表示フォーマット設定手段12とを備えた構成である。
【0030】
次に本実施形態の画像表示装置10の作用について説明する。
【0031】
予めCR装置50により、撮影時期を異にして、特定の患者の胸部放射線透過画像P1,P2,P3が撮影され、これらの画像P1,P2,P3はQA−WS60により画質等のチェックがされた後にネットワーク100を介してデータベース70に蓄積記憶されている。この蓄積記憶されている各画像P1,P2,P3には、撮影された患者に固有のID番号と、撮影部位(本実施形態においては胸部)・撮影体位(例えば正面向き)を表す記号と、撮影日等とがヘッダ情報として付帯している。
【0032】
まず画像表示装置10に、ネットワーク100を介してデータベース70から同一のID番号、同一の撮影部位記号および異なる撮影日のヘッダ情報が付帯している2つの画像P1,P2,P3が入力される。この3つの画像P1,P2,P3は互いに撮影日が異なる、同一患者の胸部正面画像であり、時系列的な比較を行おうとする画像である。なお第1の画像P1よりも第2の画像P2の方が撮影時期が新しく、第2の画像P2よりも第3の画像P3の方が撮影時期が新しい(図2(1),(2),(3))。
【0033】
ここで、入力された3つの時系列画像P1,P2,P3はそれぞれ経時サブトラクション画像作成部15に入力される。経時サブトラクション画像作成部15は、入力された3つの画像P1,P2,P3のうち最も撮影時期が新しい画像P3を基準として、第3の画像P3と第2の画像P2との間および第3の画像P3と第1の画像P1との間でそれぞれ画素を対応させて差分を算出するサブトラクション処理をなすが、撮影時期が異なる2つの画像間で被写体(患者の胸部)の配置位置や体型が全く同一であることは皆無と考えられる。したがって、これらを原画像のまま2つの画像間で画素を対応させてサブトラクション処理を行えば、骨部と軟部との間でサブトラクションが行われるなど、異なった組織間で処理がなされる可能性が高い。
【0034】
そこで経時サブトラクション画像作成部15は、図3に示す第1の画像P1および第3の画像P3のように、位置合わせ処理を行ったうえでサブトラクション処理を施す。以下、経時サブトラクション画像作成部15の処理内容について、第1の画像P1および第3の画像P3を例にして説明する。
【0035】
まず、第1の原画像P1と第3の原画像P3とのグローバルな位置合わせ処理(グローバルマッチング)を行う。これは、第3の原画像P3に第1の原画像P1を一致させるように、第1の原画像P1に対してアフィン変換(回転、平行シフト)を施す処理であり、この処理により第1の原画像P1は、図4に示すように第1の画像P1′に変換される。
【0036】
次に経時サブトラクション画像作成部15は、第3の原画像P3の全体を多数の関心領域(ROI)Tに区切り、各ROI(T)の中心画素をそれぞれx−y座標系(x,y)により表す(図5参照)。また経時サブトラクション画像作成部15は、第1の画像P1′に探索ROI(R)を設定する。この探索ROI(R)は、第3の原画像P3の各ROI(T)に対応して設定され、同一の中心座標(x,y)を有し、ROI(T)の4倍(縦横ともに2倍)の広さの領域である。
【0037】
経時サブトラクション画像作成部15は、第1の画像P1′に設定された各探索ROI(R)の中で、第3の原画像P3の対応するROI(T)を移動させて、各ROI(R)ごとに最も両画像P3,P1′のマッチング度合いが高くなる位置(ROIの中心位置(x′,y′))を求める(ローカルマッチングによるROIごとのシフト量算出)。マッチング度合いの高低を示す指標値としては例えば相互相関による指標値を用いることができる。
【0038】
このようにして求められた、各ROIの中心画素(x,y)ごとのシフト値(Δx,Δy)(ただし、Δx=x′−x,Δy=y′−y)は、各画像P3,P1′間において図6に示すようなものとなる。そして各中心画素(x,y)ごとの各シフト値(Δx,Δy)を用いて、第1の画像P1′の全ての画素に対するシフト値(Δx,Δy)を求めるために、2次元10次多項式による近似処理を行ない、得られた各画素ごとのシフト値(Δx,Δy)に基づいて、第1の画像P1′の各画素(x,y)をシフトさせる、非線形歪変換処理(ワーピング)を第1の画像P1′に対して施す。
【0039】
第1の画像P1′をワーピングして得られた第1の変換画像P1″は、第3の原画像P3との対応する画素における組織のマッチングが非常によい画像(図7参照)となり、第1の変換画像P1″から第3の原画像P3を、対応する画素同士間で減算処理を行うことにより、同図に示すような、組織間の境界線によるアーチファクトが極めて少ない第1の経時サブトラクション画像Su1が作成される。そしてこの経時サブトラクション画像Su1は、第1の原画像P1には存在せず、第3の原画像P3の、向かって左側の肺野に存在している病変部Kが浮き出たものとなる。
【0040】
以上と同様の作用により経時サブトラクション画像作成部15が、第3の画像P3と第2の画像P2との間で、第3の画像P3を基準とした位置合わせ処理およびサブトラクション処理を行なうことにより、第2の経時サブトラクション画像Su2が作成される。
【0041】
経時サブトラクション画像作成部15により生成された2つの経時サブトラクション画像Su1,Su2はそれぞれ解剖学的特徴部分抽出手段14に入力される。解剖学的特徴部分抽出手段14は入力された2つの経時サブトラクション画像P1,P2,Su1,Su2に共通の解剖学的特徴部分(例えば肺野の上端縁の位置)を検出し、この検出された解剖学的特徴部分の位置は位置合わせ手段13に入力される。
【0042】
位置合わせ手段13は入力された2つのサブトラクション画像Su1,Su2について、検出されたそれぞれの解剖学的特徴部分の高さ位置が一致して左右方向に並んで表示されるように、両サブトラクション画像Su1,Su2の位置合わせ位置を算出する。なお本実施形態においては、サブトラクション画像Su1,Su2はいずれも第3の画像P3を基準に位置合わせされて作成された画像であるため、両サブトラクション画像Su1,Su2は予め位置合わせされており、位置合わせのための解剖学的特徴部分の検出を行なうことなく上記位置合わせ位置の算出を行なうことも可能であるが、2つのサブトラクション画像Su1,Su2を、それぞれ異なる画像を位置合わせの基準として作成することもできるため、このように互いに異なる画像を位置合わせの基準として作成された2つ以上のサブトラクション画像については、上記解剖学的特徴部分抽出手段14により共通の解剖学的特徴部分を抽出したうえで、位置合わせ手段13により、この共通の解剖学的特徴部分の高さ位置が一致して左右方向に並んで表示されるように、両サブトラクション画像は位置合わせ位置の算出がなされる。
【0043】
以上の作用により位置合わせ処理された2つのサブトラクション画像Su1,Su2は、表示フォーマット設定手段12に入力される。表示フォーマット設定手段12に入力された2つのサブトラクション画像Su1,Su2は、このフォーマット設定手段12により、画像表示面11の所定の位置合わせ位置に並んで表示されるように表示フォーマットが設定されて、その位置に並んで表示される(図8)。
【0044】
このように位置合わせ処理されたうえで並べて表示された、経時サブトラクション処理により得られたサブトラクション画像は、位置合わせ処理や画素を対応させての減算処理(経時サブトラクション処理)がなされていないで表示された元の画像に比較して、画像間の差異が際立たされたものとなり、さらに読影者に対して視認させやすくなるため、比較読影性能が非常に向上したものとなる。
【0045】
なお本実施形態の画像表示装置10は、表示フォーマット設定手段12が、2つのサブトラクション画像を左右方向に並べて表示するフォーマットを採用した態様のものであるが、基準となる第3の画像P3をさらに追加して3つの画像(第3の画像並びに2つのサブトラクション画像Su1およびSu2)を並べて表示するのが、差異の基準を読影者に明確に認識させることができる点で好ましい。
【0046】
また本発明の画像表示方法および画像表示装置は、左右方向の位置を一致させて高さ方向に並べて表示する態様であってもよいし、左右方向および高さ方向の各位置を完全に一致させて両画像を1つずつ切り換えて順次表示するようにしてもよい。
【0047】
また本実施形態の画像表示装置10は、3つの原画像に基づいて、2つのサブトラクション画像を生成し、その2つのサブトラクションについて並べてまたは切り換えて表示するものであるが、本発明の画像表示方法および画像表示装置は、画像間処理として上述した経時サブトラクション処理を適用したものに限らず、複数の原画像間での表示位置合わせ行なう位置合わせ処理を、画像間処理として適用してもよい。この場合、経時サブトラクション画像作成部15を備える必要はなく、経時サブトラクション画像作成部15の機能のうち、図3に示した作用のうちワーピング処理までの機能を有する位置合わせ処理部15′を備えた構成を採用すればよい。
【0048】
さらに本実施形態の画像表示装置は2つの画像間処理画像のみを並べてまたは順次切り換えて表示するものとしたが、表示しようとする画像間処理画像は2つに限るものではなく、画像間処理の処理内容、取得されている画像の数などに応じて、3つ以上の画像を並べてまたは順次切り換えて表示するようにしてもよい。
【0049】
画像間処理画像を並べて表示する場合の並び順は、当該画像間処理画像が取得された時間順であってもよいし、画像間処理画像の基になる原画像の取得時間順であってもよい。
【0050】
位置合わせ処理やサブトラクション処理などの画像間処理は、共通の画像を基準とした複数の画像間処理画像を取得する画像間処理に限定するものではなく、例えば時系列的に順次取得された多数の原画像について、時系列的に隣接する原画像同士間での画像間処理を、基準となる原画像を順次変えて行なうことにより、複数の画像間処理画像を取得するものであってもよい。
【0051】
また、図9に示すように複数のサブトラクション画像Sui(i=1,2,…,n-1)を並べた画像と、非線形歪変換処理により位置合わせ処理された複数の画像Pi″(i=1,2,…,n)を並べた画像とを切り換えて画像表示面11に表示するようにしてもよい。この場合、サブトラクション画像Sui(i=1,2,…,n-1)を並べた画像には、必要に応じてサブトラクション処理の基準となる画像(例えばPn)を追加することもできる(図10参照)。
【0052】
このとき表示されるサブトラクション画像Su1,Su2,…,Su(n-1)は、常に最新の原画像Pnを基準として作成したもの(図11(1)参照)であってもよいし、または時系列的に隣接する2つの原画像Pi-1,Pi 間で作成されたもの(同図(2)参照)であってもよい。またこれらのサブトラクション画像を切り換えて表示する場合は、その表示の順序は、時系列的により新しい側の原画像P(n-1) を用いたサブトラクション処理によって得られたサブトラクション画像Su(n-1)から時系列的に古くなる順番で、Su(n-2),…,Su2,Su1としてもよいし、時系列的により古い側の原画像P1を用いたサブトラクション処理によって得られたサブトラクション画像Su1から時系列的に新しくなる順番で、Su1,Su2,…,Su(n-1)としてもよい。
【0053】
さらに本実施形態の画像表示装置においては、主として特開平7−37074号公報により開示されている処理により得られた経時サブトラクション画像を表示するものを例示したが、本発明の画像表示方法および画像表示装置はこのような画像に限るものではなく、時系列的に略同時に撮影して得られたエネルギー分布の互いに異なる2つの原画像(高圧画像、低圧画像)およびこれらに基づいて得られたエネルギサブトラクション画像や、造影剤の注入前後にそれぞれ撮影して得られる血管の2つの原画像およびこれらに基づいて得られたDSA画像等、比較読影の対象となる、同一被写体についての2以上の画像であれば、生体であるか否かに拘わらず、あらゆる画像を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の画像表示装置の一実施形態を示す図
【図2】図1に示した画像表示装置に表示される2つの原画像を表す図
【図3】経時サブトラクション処理の概要を示す図
【図4】グローバルマッチングを説明する図
【図5】ローカルマッチングを説明する図
【図6】非線形歪変換処理を説明する図
【図7】第1の変換画像P1″、第3の原画像P3およびサブトラクション画像Su1を表す図
【図8】画像表示面に表示された様子を示す図
【図9】他の画像表示態様を示す図(その1)
【図10】他の画像表示態様を示す図(その2)
【図11】サブトラクション画像の作成態様を示す図
【符号の説明】
【0055】
10 画像表示装置
11 画像表示面(画像表示手段)
12 表示フォーマット設定手段
13 位置合わせ手段
14 解剖学的特徴抽出手段
15 経時サブトラクション画像作成部
16 メモリ
50 CR装置
60 QA−WS
70 データベースサーバー
100 ネットワーク
P1,P2,P3 原画像
Su1,Su2 サブトラクション画像
K 病変部
R 探索ROI
T ROI

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較読影の対象となる、同一被写体について時系列的に順次取得された3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像に基づいて、各画素を対応させた減算処理である画像間処理を施すことにより作成された2以上の画像間処理画像を、並べて表示する画像表示方法であって、
該2以上の画像間処理画像のそれぞれ基になる各2つの画像のうち1つが、すべての画像間処理画像において共通となるように選択されたものであり、
前記2以上の画像間処理画像を表示する際に、各画像における前記被写体の構造的特徴部分の表示位置を揃えて並べることを特徴とする画像表示方法。
【請求項2】
比較読影の対象となる、同一被写体について時系列的に順次取得された3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像に基づいて、各画素を対応させた減算処理である画像間処理を施すことにより作成された2以上の画像間処理画像を、順次切り換えて表示する画像表示方法であって、
該2以上の画像間処理画像のそれぞれ基になる各2つの画像のうち1つが、すべての画像間処理画像において共通となるように選択されたものであり、
前記2以上の画像間処理画像を表示する際に、各画像における前記被写体の構造的特徴部分の表示位置を一致させて順次切り換えることを特徴とする画像表示方法。
【請求項3】
前記共通となるように選択された画像が、時系列的に最も新しい画像または最も古い画像であることを特徴とする請求項1または2記載の画像表示方法。
【請求項4】
前記画像間処理が、前記2つの画像間の、各構造要素の位置を合わせる位置合わせ処理を行なった上での、各画素を対応させた減算処理であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の画像表示方法。
【請求項5】
前記画像間処理画像のそれぞれ基になる前記画像の取得の順に基づいて、前記2以上の画像間処理画像を、並べてまたは順次切り換えて表示することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の画像表示方法。
【請求項6】
前記3以上の画像がそれぞれ医療用放射線画像であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の画像表示方法。
【請求項7】
画像を表示する画像表示手段と、
比較読影の対象となる、同一被写体について時系列的に順次取得された3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像に基づいて、各画素を対応させた減算処理である画像間処理を施す画像間処理手段と、
この画像間処理手段により処理して得られた2以上の画像間処理画像を、前記画像表示手段に、並べて表示させる表示フォーマット設定手段とを備えた画像表示装置であって、
前記選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像のうち1つがすべての画像間処理画像において共通となるように選択されたものであり、
前記2以上の各画像間処理画像を表示するために各画像における前記被写体の構造的特徴部分の表示位置を揃える位置合わせ手段をさらに備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
画像を表示する画像表示手段と、
比較読影の対象となる、同一被写体について時系列的に順次取得された3以上の画像の中から選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像に基づいて、各画素を対応させた減算処理である画像間処理を施す画像間処理手段と、
この画像間処理手段により処理して得られた2以上の画像間処理画像を、前記画像表示手段に、順次切り換えて表示させる表示フォーマット設定手段とを備えた画像表示装置であって、
前記選択された2以上の対画像をそれぞれ構成する2つの画像のうち1つがすべての画像間処理画像において共通となるように選択されたものであり、
前記2以上の各画像間処理画像を表示するために各画像における前記被写体の構造的特徴部分の表示位置を一致させる位置合わせ手段をさらに備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
前記3以上の画像が時系列的に順次取得された画像であり、前記共通となるように選択された画像が、時系列的に最も新しい画像または最も古い画像であることを特徴とする請求項7または8記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記画像間処理手段が、前記画像間処理として、前記2つの画像間の、各構造要素の位置を合わせる位置合わせ処理を行なった上での、各画素を対応させた減算処理を適用したものであることを特徴とする請求項7から9のうちいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記表示フォーマット設定手段が、前記画像間処理画像のそれぞれ基になる前記画像の取得の順に基づいて、前記2以上の画像間処理画像を、並べてまたは順次切り換えて表示するものであることを特徴とする請求項7から10のうちいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記3以上の画像がそれぞれ医療用放射線画像であることを特徴とする請求項7から11のうちいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−68099(P2008−68099A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253867(P2007−253867)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【分割の表示】特願平11−370202の分割
【原出願日】平成11年12月27日(1999.12.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】