説明

画像記録装置及び画像記録方法

【課題】記録素子の吐出性能のばらつきに起因する記録画像の濃度ムラを効果的に低減させることができる画像記録装置及び画像記録方法を提供する。
【解決手段】記録濃度を示す出力濃度データから記録素子毎の記録情報(G)が求められ、この記録情報(G)と適正時の特性情報(G)との比較結果に応じて、記録制御に対する補正値が記録素子毎に算出される。そして、記録情報が特性情報に対して所定の条件を満たす(例えば記録情報の出力濃度が臨界濃度Dを超えない)と判断される記録素子(II)の記録濃度を補うように(IV)、周辺記録素子(I及びIII)の記録制御に対する補正値が修正される(V及びVI)。そして、このように算出され修正された補正値に基づき、記録媒体に出力される画像データが記録素子毎に補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は画像記録装置及び画像記録方法に係り、特に複数の記録素子を備えた記録ヘッドを用いて記録媒体上に画像を記録するときに、記録素子の特性のばらつきに起因する濃度ムラを補正する画像記録装置及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルを備えるインクジェット記録装置等の画像記録装置では、時間の経過と共に、ノズル開口部におけるインクの乾燥等のためにノズル間の吐出特性にばらつきが生じてしまい、インクの吐出に弊害を伴う劣化ノズルやインクを全く吐出することができない不吐出ノズルを含むようになる。このような劣化ノズルや不吐出ノズルの存在は、白スジ等の恒久的な記録画像の乱れに繋がるため好ましくはない。そのため特許文献1では、ノズルの吐出性能の衰退に起因する記録画像の乱れを防ぐ技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数のノズルからインクを吐出して記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置では、記録ヘッドの記録特性を測定するためのパターン(シェーディングパターン及び不吐出検出パターン)が出力され、当該パターンの濃度が測定されて、その測定結果に基づき不吐出の状態にある不吐出ノズルの特定が行われる。また、各ノズルに対応する濃度分布が求められ、この濃度分布に対して、VTF(Visual Transfer Function)又はPSF(Point Spread Function)を利用したコンボリューション積分が行われる。そして、求められた濃度分布のうち不吐出ノズルに対応する部分の結果と予め定められている基準設定値とが比較され、この比較結果に基づいて不吐出ノズルが吐出するインクの色とは異なる色のインクによって補完を行うための補完テーブルがノズル毎に決定される。不吐出ノズルに対応する画像データは、このようにして決定される補完テーブルに基づいて、他のノズルから吐出される異色のインク吐出情報に変換されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−136764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1に開示の技術では、記録パターンに基づいて不吐出情報が取得され、対象ノズルが不吐出ノズルの場合には異色インクによる補完処理が行われる一方で、対象ノズルが不吐出ノズルではない場合には当該対象ノズルから吐出されるインク量を調整することで濃度ムラを補正するシェーディング補正処理が行われるようになっている。このような特許文献1に開示の技術では、不吐出情報に基づき、不吐出補完処理によって対応するかシェーディング補正処理によって対応するかが判断されることになる。
【0006】
しかしながら、ノズルの吐出性能の劣化による濃度ムラの程度の幅は広く、本来のインク濃度(インク量)を吐出する能力を失っている劣化ノズルに対して、通常のシェーディング補正処理のみで濃度ムラに対応することは実際には非常に難しい場合がある。
【0007】
特に特許文献1に開示されるような技術では、対象ノズルが、不吐出ノズルとしては検出されないがシェーディング補正処理によっても十分な濃度のインクを吐出することができないノズル(以下「異常濃度ノズル」とも呼ぶ)の場合であっても、通常のシェーディング補正処理が施されることになる。しかしながら、このような異常濃度ノズルの存在に基づく濃度ムラは、異常濃度ノズルからのインク吐出量を増大させる高濃度化の濃度処理(シェーディング補正処理)によっても適正には改善されないため、結果として画像品質の乱れを十分に防ぐことができない。
【0008】
更に、特許文献1に開示される技術では、異色インクによって不吐出ノズルの補完処理が行われるため、補完処理に用いられる異色インクの種類や数によって補完能は大きく左右される。しかしながら、通常のインクジェット記録装置では、使用インクの種類や数に一定の限定があるため、不吐出ノズルの補完処理を十分に遂行することができない場合もある。なお、特許文献1の技術では、同色用のシェーディングデータに関しては不吐出ノズル部分についても演算されるが、不吐出であるため実際には出力されず、結果的には異色インクによって不吐出補完が行われることになる。
【0009】
本願発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、記録素子の吐出性能のばらつきに起因する記録画像の濃度ムラを効果的に低減させることができる画像記録装置及び画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は画像記録装置に係り、この画像記録装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッド及び記録媒体のうち少なくとも一方を搬送して前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対移動させる搬送手段と、前記記録素子毎の記録濃度を示す出力濃度データを取得する濃度情報取得手段と、前記濃度情報取得手段が取得した前記出力濃度データから前記記録素子毎の記録情報を求める特性演算手段と、予め定められる前記複数の記録素子の適正時の特性情報を記憶する特性記憶手段と、前記記録情報のうち前記記録媒体に対して記録可能な記録素子の前記記録情報と前記特性記憶手段が記憶する前記特性情報とを前記記録素子毎に比較する比較手段と、前記比較手段による前記記録情報と前記特性情報との比較結果に応じて、記録制御に対する補正値を前記記録素子毎に算出する濃度補正値算出手段と、前記複数の記録素子のうち、前記比較結果から前記記録情報が前記特性情報に対して所定の条件を満たすと判断される検出記録素子による前記記録媒体上の記録位置の周辺に対して記録を行う周辺記録素子の記録制御に対する前記補正値を、前記検出記録素子の前記記録濃度を補うように、前記検出記録素子の前記記録情報及び前記特性情報に基づいて修正する濃度補正値修正手段と、前記濃度補正値算出手段が算出した前記補正値及び前記濃度補正値修正手段が修正した前記補正値に基づき、前記複数の記録素子によって前記記録媒体に出力される画像のデータを、前記記録素子毎に補正する画像補正手段とを備える。
【0011】
本態様によれば、記録素子の記録濃度を示す記録情報と適正時の特性情報との比較結果に基づいて記録素子毎に補正値が算出される。そして、この比較結果から記録情報が特性情報に対して所定の条件を満たす記録素子(検出記録素子)が存在する場合には、その検出記録素子の周辺に存在する周辺記録素子の補正値を修正して、検出記録素子の記録制御に対する補正値が補われるようになっている。これにより、検出記録素子に起因する記録媒体上の記録ムラを、周辺記録素子の補正値の修正によって解消することが可能である。
【0012】
なお、「記録素子」とは、記録媒体に対して記録を行うユニット全般を指し、インクジェット記録装置の場合には、インクを発射可能なノズルやこのインク発射の推進力をもたらすアクチュエータ(例えば圧電素子や発熱体等)が記録素子を構成する。また、「適正時の特性情報」とは、記録素子が適正に作動している時の特性情報を指し、実験等によってこの適正時の特性情報を求めることも可能である。また、「記録媒体に対して記録可能な記録素子」とは、低濃度であっても、記録媒体に対して記録することが可能な記録素子を指し、インクを全く吐出することができなくなったノズル(不吐出ノズル)は、この「記録可能な記録素子」には含まれない。また、「周辺記録素子」は、記録媒体における記録位置に基づいており、必ずしも記録ヘッドにおいて「周辺」に配設されている必要はない。したがって、インクドット記録装置の場合、記録媒体上で、検出記録素子が形成したインクドットに対して周辺(例えば隣りに)配置されるインクドットを形成するノズルは周辺記録素子(隣接記録素子)に含まれる。また「検出記録素子」は、周辺記録素子の記録制御によって記録濃度が補われる対象となる記録素子を指し、例えば、著しく低濃度の記録しか行えず通常の濃度補正を施しても適正量のインクを吐出することができない異常濃度ノズルを含みうる概念である。
【0013】
また、前記記録情報及び前記特性情報は、前記複数の記録素子に入力される入力濃度データと、前記複数の記録素子の前記出力濃度データとに基づき、前記比較手段は、前記入力濃度データに対する前記記録情報の前記出力濃度データと前記特性情報の前記出力濃度データとを前記記録素子毎に比較することが望ましい。
【0014】
この場合、記録情報の出力濃度データと適正時の特性情報の出力濃度データとが比較されるので、入力濃度データに対する記録性能(出力濃度)のバラツキを明確にすることができる。
【0015】
また、前記所定の条件を満たすと判断される場合は、前記記録情報に基づいて、前記記録制御に対する補正を行っても前記特性情報から導かれる適正な記録濃度を出力することができないと判断される場合であることが望ましい。
【0016】
これにより、補正を行っても適正な記録濃度を出力することができない検出記録素子が記録ヘッドに含まれていても、周辺記録素子の記録制御の補正値を修正することでこの検出記録素子の記録媒体に対する記録を補って、濃度ムラを効果的に低減することが可能である。
【0017】
また、前記所定の条件を満たすと判断される場合は、前記検出記録素子の前記記録情報の前記出力濃度データが、当該検出記録素子の前記特性情報に基づいて定められる所定の臨界濃度値を超えない場合であることが望ましい。
【0018】
このように、臨界濃度値を使用することによって、対象記録素子が検出記録素子か否かを簡便に判断することが可能である。
【0019】
また、前記濃度補正値算出手段は、前記特性情報の前記出力濃度データが示す前記記録濃度と、前記記録情報の前記出力濃度データが示す前記記録濃度との差分に基づいて、前記補正値を前記記録素子毎に算出することが望ましい。
【0020】
このように、適正時の出力濃度と実際の記録における出力濃度との差分を算出することによって、記録素子の出力濃度を適正時の出力濃度に補正することが可能となり、記録素子間の吐出性能のバラツキに適切に対応することが可能である。
【0021】
また、前記濃度補正値修正手段は、前記濃度補正値算出手段によって算出された前記補正値に基づく補正が行われた後の前記検出記録素子の前記出力濃度データと、当該検出記録素子の前記特性情報の前記出力濃度データとの差分に基づいて、前記周辺記録素子の記録制御に対する前記補正値を修正することが望ましい。
【0022】
このように、補正後の検出記録素子の出力濃度データと、この検出記録素子の適正時の出力濃度データとの差分を算出することによって、検出記録素子の出力濃度の不足分に対応する記録濃度を周辺記録素子により補うことが可能である。
【0023】
また、前記周辺記録素子は、前記記録媒体において、前記検出記録素子による記録の位置を挟む対向位置に前記画像を記録することが望ましい。
【0024】
このような周辺記録素子を使用することにより、記録媒体において、検出記録素子による記録ムラを挟み込むようにして、周辺記録素子による補正記録を行うことができる。
【0025】
前記複数の記録素子は、前記記録ヘッドにおいて、前記記録媒体の記録範囲の全幅に対応する範囲に配置されていてもよい。
【0026】
このように記録ヘッドが所謂ラインヘッド構造を有する場合には、上記の検出記録素子に起因する記録ムラが顕在化しやすい傾向があるので、本発明の上記の各態様はより有効にその効果を発揮することができ、記録濃度ムラを効果的に低減することが可能である。
【0027】
前記記録ヘッドは、一回の前記相対移動によって、前記記録媒体の所定の記録範囲に対して画像を記録してもよい。
【0028】
このように記録ヘッドが所謂シングルパス方式を採用する場合には、記録素子間の吐出性能のバラツキに起因する記録ムラが顕在化しやすい傾向があるので、本発明の上記の各態様はより有効にその効果を発揮することができ、記録濃度ムラを効果的に低減することが可能である。
【0029】
本発明の他の態様は画像記録方法に係り、この画像記録方法は、複数の記録素子を制御して画像を記録する画像記録方法であって、記録素子毎の記録濃度を示す出力濃度データを取得する濃度情報取得ステップと、前記出力濃度データから前記記録素子毎の記録情報を求める特性演算ステップと、前記記録情報のうち前記記録媒体に対して記録可能な記録素子の前記記録情報と、予め定められる前記複数の記録素子の適正時の特性情報とを前記記録素子毎に比較する比較ステップと、前記記録情報と前記特性情報との前記比較の結果に応じて記録制御に対する補正値を前記記録素子毎に算出する濃度補正値算出ステップと、前記複数の記録素子のうち、前記比較の結果から前記記録情報が前記特性情報に対して所定の条件を満たすと判断される検出記録素子による前記記録媒体上の記録位置の周辺に対して記録を行う周辺記録素子の記録制御に対する前記補正値を、前記検出記録素子の前記記録濃度を補うように、前記検出記録素子の前記記録情報及び前記特性情報に基づいて修正する濃度補正値修正ステップと、前記濃度補正値算出ステップで算出された前記補正値及び前記濃度補正値修正ステップで修正された前記補正値に基づき、前記複数の記録素子によって前記記録媒体に出力される画像のデータを、前記記録素子毎に補正する画像補正ステップとを備える。
【発明の効果】
【0030】
本願発明によれば、記録情報と特性情報との比較結果に応じて記録制御に対する補正値が一旦算出されるが、所定の条件を満たす記録素子(検出記録素子)が存在する場合には、この検出記録素子の記録濃度を補うように、周辺記録素子の記録制御に対する補正値が修正される。これにより、記録情報と特性情報との比較結果に応じた補正値では十分に対応することができないような記録素子(検出記録素子)が存在する場合であっても、この検出記録素子による出力は周辺記録素子によって補われる。したがって、このような検出記録素子に起因する記録画像の濃度ムラを低減して、記録画像の乱れを有効に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ノズルからインクを吐出させるために入力される入力画像データ(入力濃度データ)と、記録媒体に形成されるインクドットの出力濃度(出力濃度データ)との関係を示す。
【図2】ノズルの吐出性能の補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】記録媒体に記録されたテストチャートの一例を示す図である。
【図4】ノズルの特性曲線を示すグラフである。
【図5】補正処理の概要を説明する図である。
【図6】対象ノズルの補正値の算出プロセスを示すフローチャートである。
【図7】補正値の算出過程を説明する図である。
【図8】シェーディング補正処理の一例を示す説明図である。
【図9】ハーフトーン処理を伴う画像出力処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】ハーフトーン処理を伴う画像出力処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】不吐出補正処理の一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。
【図13】図15に示したインクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の要部平面図である。
【図14】図14(a)はヘッドの構造例を示す平面透視図であり、図14(b)は図14(a)の要部拡大図であり、図14(c)はフルライン型ヘッドの他の構造例を示す平面透視図である。
【図15】図14(a)及び図14(b)の15−15線に沿う断面図である。
【図16】図17(a)に示したヘッドのノズル配列を示す拡大図である。
【図17】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図18】補正処理に関連する制御構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0033】
まず、複数のノズルを備えるインクジェット記録装置の画像記録時のインク吐出補正について説明し、その後、インクジェット記録装置の構成について説明する。なお、以下の実施形態では、複数のノズルを有する記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に所望の画像を形成するインクジェット記録装置に本発明が適用される場合を例示するが、本発明はインクジェット記録装置に限定されるものではない。
【0034】
(ノズルの吐出性能)
図1は、ノズルからインクを吐出させるために入力される入力画像データ(入力濃度データ)と、記録媒体に形成されるインクドットの出力濃度(出力濃度データ)との関係を示す。図1において、横軸は、階調値に基づく入力画像データを示し、縦軸は、ノズルから吐出されるインクにより記録媒体上に実際に形成されるインクドットの出力濃度を示す。
【0035】
ここでいう該当ノズルから吐出されたインクドットの出力濃度とは、該当ノズルから一回に吐出されるインクドットの濃度のみならず、複数回で吐出されたインクドット郡、例えば、該当ノズルから吐出された記録媒体との相対移動方向に並ぶインクドット列、が現す平均濃度であってもよい。すなわち、ハーフトーン処理などを用い、連続的な濃度変化をインクドットの濃度及び個数によって表現する手法も含まれる。
【0036】
インクを吐出する各ノズルは、その吐出性能に応じて「正常ノズル」と「異常濃度ノズル」とに分けられる。
【0037】
ここでいう「正常ノズル」は、入力画像データに対して正常量(適正量)のインクを吐出することが可能なノズル(図1の「G」参照)と、入力画像データに対して正常量のインクを吐出させることはできないがシェーディング補正処理(吐出補正処理)によって正常量のインクを吐出させることが可能なノズル(図1の「G」参照)とを含む概念である。
【0038】
一方、「異常濃度ノズル」は、吐出濃度(吐出量)を増大させるシェーディング補正処理(吐出補正処理)によっても正常量のインクを吐出させることが不可能なノズル(図1の「G」参照)を指し、具体的には後述の低濃度ノズルが異常濃度ノズルに含まれる。
【0039】
なお、以下の実施形態では、インクを全く吐出することができなくなったノズル(不吐出ノズル)のみを検出することは行われていないが、そのような不吐出ノズルは「異常濃度ノズル」として検出され処理されることとなる。
【0040】
シェーディング補正処理(吐出補正処理)の具体的な内容については後述するが、シェーディング補正処理は、対象ノズルから吐出させるインク濃度(インク量)を調整して本来の吐出量より多量のインクが吐出されるように、駆動制御信号の波形や大きさを補正する処理が含まれ、対象ノズルからインクを吐出させる制御が伴う。通常は、吐出性能の衰退によりインク吐出量が低減するため、このようなシェーディング補正処理はインク吐出量を増大させる処理となるが、対象ノズルから過剰量のインクが吐出される場合のシェーディング補正処理はインク吐出量を低減させる処理となる。
【0041】
ただし、実際の一般的な吐出装置では一つのノズルからの吐出インク量を連続的に変化させることが難しいため、より多く実施される手法として、ノズル毎のハーフトーンパラメータの変更や入力画像データ値の補正などによって吐出インク濃度を増減する。
【0042】
上述の従来技術では、正常ノズル(G、G)に対しては通常のシェーディング補正処理によって対応可能であったが、シェーディング補正処理(吐出補正処理)によって正常量のインクを吐出させることが不可能な異常濃度ノズル(G)に対しては適切に対応することができず、そのような異常濃度ノズルによる記録画像の乱れを防ぐことができなかった。
【0043】
以下の実施形態は、従来技術では対応することができなかったそのような異常濃度ノズルの記録濃度を補足するように、その異常濃度ノズルの周辺の一又は複数のノズルから、通常より高濃度のインクを吐出することで、画像品質を向上させるものである。なお、以下の一連の補正処理は、主としてインクジェット記録装置の制御部において行われる。
【0044】
(補正データ算出の概要)
図2は、ノズルの吐出性能の補正処理の一例を示すフローチャートである。
【0045】
本実施形態では、テストチャート(記録濃度パターン)が用いられて、対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判断が行われる。すなわち、階調濃度を変化させたパッチ(テストチャート)用の入力画像データに基づく駆動制御信号がノズルの各々に対応する駆動素子(例えば後述の共通電極156、個別電極157及びアクチュエータ158からなる圧電駆動素子)に入力され(図2のS10)、この入力画像データに基づいて各ノズルからインクが吐出されて記録媒体にテストチャートが出力記録される(S12)。
【0046】
図3は、記録媒体116に記録されたテストチャートの一例を示す図である。図3では、記録ヘッドが所謂ラインヘッドである場合のテストチャートが示されており、記録媒体116の略全幅にわたって設けられる記録ヘッドのノズルの各々からインクが吐出されてテストチャートが形成される例が示されている。図3には、記録ヘッドの複数のノズルによって形成されるノズル列の方向(ノズル列方向)とノズル列の幅(ノズル列幅)とが示されており、図3の上方から下方に向かって段階的に濃度階調値が大きくなるようにインクドットが連続的に記録されることで複数段のテストチャートが形成されており、ノズル列方向の濃度は略一定となっている。
【0047】
記録媒体にこのようなテストチャートが記録されると、このテストチャートに基づいて各ノズルの出力濃度が取得される(図2のS14)。具体的な取得プロセスについては後述するが、テストチャート(スキャン画像)の各位置におけるOD(Optical Density)値が求められ、このテストチャートのOD値から各位置に対応する記録素子(ノズル等)毎の出力記録濃度を示す出力濃度データが取得される。なおテストチャートは、後述の印字検出部によって読み取られて取得されるようになっている。
【0048】
そして、このようにして求められる出力濃度データと入力画像データとに基づいて、ノズル毎の特性曲線(テスト特性曲線)が求められる(S16)。
【0049】
図4は、ノズルの特性曲線を示すグラフであり、縦軸は出力濃度データを示し、横軸は入力画像データを示し、原点0から縦方向に離れるに従って出力濃度が濃くなり(出力量が増大し)、横方向に離れるに従って入力画像データの濃度階調が大きくなる。図4に示すように、テストチャートから求められるノズルの特性曲線(テスト特性曲線)Gは、外乱等のために、入力画像データに対して正常量(適正量)のインクをノズルから吐出する場合に得られる特性曲線(適正特性曲線)Gから多少ずれた曲線を描くのが通常であり、図4の矢印で示されるようにノズル間で出力濃度値のばらつきが見られる。
【0050】
このように、テスト特性曲線G及び適正特性曲線Gは、いずれも記録素子(インク吐出アクチュエータ)に入力される入力濃度データと記録素子の出力濃度データとに基づいており、テスト特性曲線Gは記録素子の記録情報を表し、適正特性曲線Gは記録素子の適正時(正常時)の特性情報を表す。
【0051】
そして、テスト特性曲線Gの出力濃度データと適正特性曲線Gの出力濃度データとがノズル毎(記録素子毎)に比較され、その比較結果に応じて吐出制御(記録制御)に対する補正値を記録素子毎に算出する。本例では、後述するように適正特性曲線Gに基づいて定められる臨界濃度値と対象ノズルのテスト特性曲線Gの出力濃度データとが比較され、テスト特性曲線Gの出力濃度データが臨界濃度値を超える場合には対象ノズルは正常ノズルと判断され、テスト特性曲線Gの出力濃度データが臨界濃度値以下の場合には対象ノズルは異常濃度ノズルと判断される(図2のS18)。
【0052】
この比較結果から対象ノズルが正常ノズルであると判断される場合(S18のYES)、適正濃度のインクをこの対象ノズルから吐出させるのに必要なシェーディング補正処理のための補正値が算出される(S20)。詳細については後述するが、対象ノズルのテスト特性曲線Gの出力濃度データが示す出力濃度(記録濃度)と、適正特性曲線Gの出力濃度データが示す出力濃度(記録濃度)との差分量を当該対象ノズルから更に吐出することで適正な出力濃度のインクがこの対象ノズルから吐出されるような補正値(補正データ)が算出される。
【0053】
一方、対象ノズルが正常ノズルではなく異常濃度ノズルであると判断される場合(S18のNO)、対象ノズルの周辺に配置される周辺ノズルの吐出制御(記録制御)に対する補正値が、対象ノズルの吐出を補うように、テスト特性曲線Gと適正特性曲線Gとに基づいて修正される(S22)。本例では、異常濃度ノズルである対象ノズル及びその対応駆動素子(記録素子)の吐出制御(記録制御)に対する補正値は、通常のシェーディング補正処理と同様に決定される。一方、周辺ノズル及びその対応駆動素子の吐出制御に対する補正値は、対象ノズルに対する入力画像データが上記補正値に基づき補正された後に当該対象ノズルから吐出されることとなる出力濃度データと、適正特性曲線Gの出力濃度データとの差分に基づいて修正される。
【0054】
このようにして、正常ノズル及び異常濃度ノズルの吐出制御に対する補正値がノズル毎に求められ、当該補正値に基づいて所望の画像の入力画像データが補正され、補正後の入力画像データに基づいて記録媒体上に画像が形成される。
【0055】
(補正処理の概要)
図5は、補正処理の概要を説明する図である。図5には、あるノズルが異常濃度ノズル151aであって、この異常濃度ノズル151aに隣接するノズルが正常ノズル151nである場合が例示されている。
【0056】
図5の(I)には一般的なシェーディング補正処理に基づく入力画像データ及び出力濃度データの関係が示され、図5の(II)には本実施形態のシェーディング補正処理に基づく入力画像データ及び出力濃度データの関係が示される。なお、図5において、縦軸及び横軸は図1と同様にそれぞれ出力濃度データ及び入力画像データを示し、「G」は補正後にノズルから吐出される出力濃度データと入力画像データとの関係を示す。
【0057】
図5の(I)に示される補正処理では、テストチャートから求められる各ノズルの出力濃度データ(テスト特性曲線G)と適正時に出力される各ノズルの出力濃度データ(適正特性曲線G)とが一致するように、入力画像データ値に差分量(補正値)を加えることで、各ノズルから適正量のインクを吐出させて、補正後の出力濃度データが適正特性曲線Gの出力濃度データに近づくような補正が行われる。
【0058】
しかしながら、この図5の(I)の補正処理は、正常ノズルに対しては有効であるが、異常濃度ノズルに対しては必ずしも有効であるとはいえない。すなわち、著しく低濃度のインク量しか吐出しない異常濃度ノズルは、一般的なシェーディング補正処理によっても適正なインク濃度の出力ができず(図5(I)の「異常濃度ノズル」の「G」参照)出力濃度データは適正量(G参照)に達することができない。このため、一般のシェーディング補正処理は、このような異常濃度ノズルによる画像濃度ムラに対して必ずしも適切に対応しているとは言えない。
【0059】
一方、図5の(II)に示される本実施形態に係る補正処理は、各ノズル(記録素子)に対する補正値を算出する際に、テストチャートから求められる出力濃度データと適正出力時の出力濃度データとが一致するように入力画像データ値に差分値を加える点は上記図5の(I)に示す補正処理と共通する(図5の矢印「A」参照)。しかしながらが、図5の(II)の補正処理では、異常濃度ノズルの補正後の出力濃度(G参照)と適正時の出力濃度データ(G参照)との差分に相当する濃度のインクが隣接ノズルから更に吐出されるような補正が行われる(図5の矢印「B」参照)。これにより、異常濃度ノズルから吐出されるインク出力濃度の不足分が、隣接ノズルから吐出されるインク出力濃度によって補われる。
【0060】
なお、隣接ノズルだけに限らず、異常濃度ノズルの周辺の他のノズル(周辺ノズル)から吐出されるインク出力濃度によって異常濃度ノズルのインク出力濃度の不足分を補ってもよい。このような隣接ノズルを含む周辺ノズルとしては、記録媒体において、異常濃度ノズルによるインクドット記録位置を挟んで対向する位置(例えば、異常濃度ノズルを中心として180度の角度を形成する位置)にインクドット(画像)を記録するノズルが選択されることが好ましい。この場合、異常濃度ノズルからの低濃度インクドットを挟み込むようにして周辺記録素子が記録補正するため、異常濃度ノズルに起因する濃度ムラを効果的に低減することができる。
【0061】
次に、図6〜図8を参照して、各ノズル(各記録素子)の補正処理の詳細について説明する。
【0062】
図6は、対象ノズルの補正値の算出プロセスを示すフローチャートである。まず、対象ノズルのテスト特性曲線の出力濃度データと適正特性曲線の出力濃度データとが入力画像データを基準にして比較され(S28)、対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判定が行われる(S30)。具体的には、テスト特性曲線の出力濃度データが、適正特性曲線の出力濃度データから予め求められる臨界濃度値Dを超えるか否かに基づいて上記判定が行われる。テスト特性曲線の出力濃度データが臨界濃度値Dを超える場合には対象ノズルが正常ノズルと判定され(S30のNO)、テスト特性曲線の出力濃度データが臨界濃度値D以下の場合には対象ノズルが異常濃度ノズルと判定される(S30のYES)。
【0063】
対象ノズルが異常濃度ノズルと判定される場合(S30のYES)、該ノズルのテスト特性曲線と適正特性曲線を一致させるような入力画像データ値の変更ができないことがある。この場合は、該ノズルに対しては入力画像データ値の変更を行わない、すなわち、補正値をゼロ(0)として、異常濃度ノズル及びその対応駆動素子の吐出制御に対しては実質的に補正を加えない(S32)。
【0064】
一方、この補正値に基づく補正後に対象ノズルから出力されることとなる出力濃度データと適正特性曲線の出力濃度データとの差分が算出され(図7の「Δ」参照)(S34)、後述するようにこの差分が周辺ノズルの補正値に反映される(S36)。
【0065】
一方、対象ノズルが正常ノズルと判定される場合(S30のNO)、一旦、対象ノズルの適正特性曲線に示される適正出力濃度が出力されるように、適正特性曲線の適正出力濃度データとテスト特性曲線の出力濃度データとが一致するような入力画像データ値の差分が対象ノズルの補正値として算出される(S38)。そして、周辺の他のノズルが異常濃度ノズルであるために補正値に対して更なる修正が必要か否かが判定され(S40)、更なる修正が必要な場合(S40のYES)、隣接する異常濃度ノズルから補正後に出力されることとなる出力濃度データと適正特性曲線の出力濃度データとが一致するような入力画像データ値の差分に基づいて補正値が修正される(S42)。一方、周辺に異常濃度ノズルが存在せずに更なる修正が不要な場合(S40のNO)、対象ノズルの補正値は修正されず、適正出力濃度が対象ノズルから出力されるような補正値となる。
【0066】
図7は、対象ノズルが異常濃度ノズルと判定され、この対象ノズルの左右両隣のノズルが正常ノズルと判定された場合の補正値の算出過程を説明する図である。図7において、縦軸及び横軸は図1と同様にそれぞれ出力濃度データ及び入力画像データを示す。
【0067】
上述のようにテスト特性曲線の出力濃度データ(G)が臨界濃度値Dを超えないために異常濃度ノズルと判定された対象ノズル(図7の(II)参照)から上記補正後に出力されることとなるインクの出力濃度データ(G)と、適正特性曲線の出力濃度データ(G)との差分Δが算出される(図7の(IV)参照)。この差分Δは、対象ノズルに隣接するノズル(図7の(I)及び(III)参照)の適正特性曲線の出力濃度データに分配される。本例では、この差分Δの1/2に相当する値が両隣のノズルに対して更に割り当てられる(図7の(V)及び(VI)参照)。すなわち、正常ノズルと判定された隣接ノズルの補正値は、異常濃度ノズルが隣接する場合には、上記差分Δの1/2に相当する値が反映され付加された適正量(正常量)の出力濃度が出力されるように入力画像データ値を修正する値となる(図7の(I)及び(III)参照)。
【0068】
このように、対象ノズル(異常濃度ノズル)から出力することができない出力濃度分に相当するインク量が、左右の隣接ノズルから付加的に出力され、画像品質の劣化が防がれている。
【0069】
なお、本例における「隣接ノズル」又は「周辺ノズル」は、記録媒体上に形成されるインクドットに関し、対象ノズルによって記録されるインクドットに対して記録媒体上で隣接するインクドット又は周辺に存在するインクドットを形成するノズルである。したがって、記録ヘッド(ラインヘッド)においてノズル列が一列に形成される場合には、記録ヘッドにおいて対象ノズルに対し隣接して又は周辺に配置されるノズルが隣接ノズル又は周辺ノズルであることが一般的である。また、複数のノズルが記録ヘッドにおいて後述のマトリクス配置されているような変則的な配置を有する場合や変則的な記録方式を採用する場合、記録ヘッドにおいて対象ノズルに対し隣接して又は周辺に配置されるノズルは、必ずしも、対象ノズルに対する隣接ノズル又は周辺ノズルには該当しない。
【0070】
上述のようにして算出され修正された補正値は、記録ヘッドの記録素子(ノズル及びその対応駆動素子)毎に算出され、シェーディング情報として記憶デバイスに保持されて、所望画像の入力画像データがホストコンピュータ等から入力された際に参照されて、この入力画像データに対して適切な補正処理が実施される。
【0071】
なお上述したように、対象ノズルが異常濃度ノズルと判定された場合、当該対象ノズルの入力画像データ値の補正値は決定できないことがあるので、この補正値を「0.0」として実質的に吐出制御の補正をしないこともできる。この場合、補正後に異常濃度ノズルから出力される出力濃度は、テスト特性曲線の出力濃度データと同じになり、図7の(II)に示される特性曲線G及びGは一致する。
【0072】
また、臨界濃度値Dは、適正特性曲線Gの特性情報に基づいて予め定められる値であり、例えば適正特性曲線Gの出力濃度データを基準にして視覚上における画像品質を損なわない境界値に基づく値を臨界濃度値Dとして採用することもできる。また、臨界濃度値Dを入力画像データに応じて変えてもよい。入力画像データに応じて変動するこのような臨界濃度値Dの値を、例えば適正特性曲線Gの特性情報の出力濃度値と臨界濃度値Dとの差が全ての入力画像データにおいて一定となるように定めることもできる。このように、適正特性曲線Gaの特性情報に基づく所定範囲にテストチャートから得られるテスト特性曲線の出力濃度データが含まれているか否かに応じて、対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかを判断することもできる。なお、このような所定範囲を定める際に、上限の臨界濃度値及び下限の臨界濃度値を適正特性曲線Gの特性情報に基づいて定めてもよい。
【0073】
(シェーディング補正処理)
次に、シェーディング補正処理について図8を参照して説明する。図8は、シェーディング補正処理の一例を示す説明図である。
【0074】
図8のS200に示されるように、スキャナの画素位置(濃度測定位置)とノズル位置との対応関係を示す解像度変換曲線が予め測定されると共に記憶されており、この解像度曲線に従って、テストチャートのスキャン画像における各濃度測定位置(例えば400dpiの解像度)が、記録ヘッドにおける対応ノズルの位置(例えば1200dpiの解像度)に変換される。
【0075】
このようにして求められるノズル位置と、当該ノズル位置に対応するテストチャートにおける濃度測定値(出力濃度値)D1とが図8のS202に示されるように対応づけられ、予め定められ記憶されている目標濃度値D0と濃度測定値(出力濃度値)D1との差分が算出される。ここで用いられる目標濃度値D0は、対象ノズルから吐出させるインク濃度の目標値であり、必要に応じて適宜決定することが可能である。例えば、予め定められたノズル範囲から吐出されるインクの平均濃度を算出して目標濃度値D0として記憶しておいてもよい。
【0076】
そして図8のS204に示されるように、予め実験的に求められた画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、濃度測定値(出力濃度値)D1及び目標濃度値D0(S204の「濃度値」)に対応する出力画素値(S204の「画素値」)P0、P1が求められる。そして、この出力画素値の差分量(P0−P1)は、ノズル位置毎の濃度補正値として記憶され(シェーディング情報)(図8のS206)、補正処理実行時に参照される。
【0077】
図8の例では、対象ノズルからの打滴数(画素値)を増減させる補正処理が示されているが、対象ノズルから吐出されるインク滴サイズを増減させる処理を用いてもよい。
【0078】
(補正処理と画像出力)
上記のようにして算出され修正されたノズル毎の補正値に関する情報(シェーディング情報)に基づく補正処理が、ノズル毎に、所望画像形成用の入力画像データに対して施されることで、濃度ムラを効果的に解消した高品質の画像を記録媒体に形成することができる。上記の補正処理は、ハーフトーン処理を伴う画像出力時にも有効である。
【0079】
図9及び図10は、ハーフトーン処理を伴う画像出力処理の一例を示すフローチャートである。
【0080】
図9及び図10に示される各例では、所望の画像を形成するための入力画像データが入力され、その入力画像データに基づいてハーフトーン処理が行われて、ハーフトーン処理後のデータに基づいて画像出力が行われる点で共通している(図9のS50、S54及びS56、図10のS60、S62及びS66)。しかしながら、上記の補正処理の実施されるタイミングがハーフトーン処理の前か後かの点で、図9及び図10の各々に示される例は異なる。すなわち、上記の補正処理は、図9に示すようにハーフトーン処理前に行われてもよいし、図10に示すようにハーフトーン処理後に行われてもよい。なお、ハーフトーン処理の演算の煩雑さを考慮すれば、図10に示すようにハーフトーン処理後に上記の補正処理を実施したほうが、演算処理が簡単になり、処理時間を短縮することが可能である。
【0081】
上記の補正値の算出及び修正の実行タイミングは任意であり、例えば画像出力毎に記録媒体の余白部にテストチャートを出力して上記の補正値の算出及び修正を行ったり、定期メンテナンスやユーザーからの指示があったときに上記の補正値の算出及び修正を行ってもよい。
【0082】
また、正常ノズル及び異常濃度ノズルの検出はテストチャートの出力毎に行ってもよい。また、異常濃度ノズルとして検出されたノズルの情報を記憶デバイスに保持しておき、それ以降の検出時にはこの情報を参照して過去に異常濃度ノズルとして検出されたノズルについては異常濃度ノズルとして扱うことで、正常ノズルか異常濃度ノズルかの検出処理を省略することも可能である。但し、一旦異常濃度ノズルと判定されたノズルであってもヘッドクリーニングや画像記録等により吐出性能を回復することもあるので、テストチャートの出力毎に正常ノズルか異常濃度ノズルかの検出処理を行ったほうが、的確な補正処理を行うことができる。
【0083】
(補正処理の効果)
本実施形態では、上記のように算出され修正される補正値に基づく補正処理が記録素子(ノズル、駆動アクチュエータ等)毎に行われるため、記録素子の吐出性能のばらつきに起因する記録画像の濃度ムラを効果的に低減することができる。特にインクを吐出することはできるが非常に低濃度のインクしか出力することができずシェーディング補正処理によっても十分な濃度のインクを吐出することができない異常濃度ノズル及びその対応駆動素子の記録制御(吐出制御)に対しても、周辺ノズルからのインク出力によって的確な補正が行われる。したがって、本実施形態のインクジェット記録装置は、従来では対応が難しかったこのような異常濃度ノズルによる濃度ムラを適切な補正処理によって低減することができ、記録画像の乱れを効果的に防ぐことができる。
【0084】
なお、上記の例では、インクを全く吐出することができないノズル(不吐出ノズル)は、異常濃度ノズルとして検出される。すなわち、図7の(II)のグラフにおいて、テストチャートから求められる不吐出ノズルのテスト特性曲線Gの出力濃度データは、入力画像データにかかわらずゼロ(0)となり、吐出制御に対する補正の補正値もゼロ(0)となり、周辺ノズル(隣接ノズル)の補正値が修正されて、この不吐出ノズルの記録がカバーされるようになっている。
【0085】
図11は、不吐出ノズルの吐出制御に対する補正処理の一例を示す図であり、対象ノズルが不吐出ノズルの場合に図3のノズル列方向に関して左右両隣のノズル(図11の「不吐出左隣ノズル」及び「不吐出右隣ノズル」)からのインク吐出濃度を補正する例が示されている。図11において、横軸はノズル列方向に並設される複数のノズルの各々を表し、縦軸はノズルから吐出されるインク出力濃度(インク量)を表す。
【0086】
本例の補正処理は、図11に示すように、対象ノズルが不吐出ノズルであるため(すなわち対象ノズルの出力濃度が「0.0」であるため)、対象ノズルの隣接ノズルから本来の吐出量より多くのインク量を吐出して当該隣接ノズルの出力濃度が増大するように、当該隣接ノズルの吐出制御に対する補正値が修正される。なお、この時に隣接ノズルから吐出されるインク色は、対象ノズルから吐出されるインク色と同色である。
【0087】
図11に示す補正処理では、修正処理が行われる前の左右両隣のノズルから吐出されるインク出力濃度が1.0で表され、修正処理後に左右両隣のノズルから吐出されるインク出力濃度が「修正濃度」と表示されており、不吐出補正処理によって増大した対象ノズルの隣接ノズルのインク出力濃度が「修正量」(例えば「1.5」の修正比率)と表示されている。
【0088】
なお図11では、隣接ノズルに対する補正値の修正量は隣接ノズル間で均等であるが、対象ノズルに隣接するノズル及びそれらの駆動素子に対する補正値の修正量は必要に応じて適宜決定可能である。例えば、修正処理後に左右両隣のノズルから吐出されるインク出力濃度の比率を1.0〜2.0の範囲で適宜選定することも可能である。
【0089】
また、対象ノズルに隣接するノズル以外のノズル(周辺ノズル)を用いて修正処理を行ってもよい。対象ノズルを挟んだ両側における、好ましくは対象ノズルを中心として180度の角度位置におけるノズルを隣接ノズル(周辺ノズル)として用いた補正処理を行うことで、対象ノズルの記録を両側から補うことができる。
【0090】
また、ノズルから出力されるインクドットの着弾位置に関して幅方向(ノズル列方向)に誤差があるような場合には、この打滴位置誤差(着弾位置誤差)を加味して修正比率(修正量)を算出してもよい。例えば、隣接ノズルから吐出されるインクの記録媒体上における着弾位置が、このような打滴位置誤差のために、対象ノズルから吐出されるインクの本来の着弾位置(適正吐出時の着弾位置)から離れてしまう場合には通常時より修正比率を増加させてもよい。また逆に、隣接ノズルから吐出されるインクの記録媒体上における着弾位置が、打滴位置誤差のために対象ノズルから吐出されるインクの本来の着弾位置に近づいてしまう場合には修正比率(修正量)を通常時より低減させてもよい。
【0091】
このように算出及び修正された補正値に基づく隣接ノズルの吐出制御に対する補正は、記録媒体に対する打滴数(ドット数)を増減させるように画像データを変更する処理、若しくは、隣接ノズルから吐出されるインク滴サイズを増減させる処理によって行われる。
【0092】
なお、対象ノズルがインクを全く吐出することができない不吐出ノズルか否かの検出を、上記の修正処理とは別個に付加的に適宜実施することも可能である。
【0093】
(インクジェット記録装置の構成)
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成について説明する。なお、上記の説明と重複する内容については、以下省略する。
【0094】
図12は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する記録ヘッド112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙(記録媒体)116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、記録ヘッド112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、記録ヘッド112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0095】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0096】
図13では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0097】
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0098】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0099】
ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0100】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0101】
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図12に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
【0102】
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図17の符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図12上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図12の左から右へと搬送される。
【0103】
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0104】
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0105】
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において記録ヘッド112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0106】
記録ヘッド112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図13参照)。
【0107】
したがって、複数のノズル151によって形成されるノズル列は、記録ヘッド112において、記録媒体116の記録範囲の全幅に対応する範囲に配置されている。そして、記録ヘッド112は、記録媒体116との一回の相対移動によって、記録媒体116の記録範囲の全域に対して所望の画像を記録することができるシングルパス方式を採用している。
【0108】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0109】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0110】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と記録ヘッド112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0111】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0112】
図12に示した印字検出部124は、記録ヘッド112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストチャート又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0113】
なお、本実施形態の印字検出部124は、上述のテストチャート(図3参照)を読み取るようになっている。
【0114】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0115】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0116】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0117】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図12には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0118】
(ヘッドの構造)
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
【0119】
図14(a)は、ヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図14(b)は、図14(a)の一部の拡大図である。また、図14(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図であり、図15は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の構成を示す断面図(図14(a)の15−15線に沿う断面図)である。
【0120】
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図14(a)及び図14(b)に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0121】
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図14(a)の構成に代えて、図14(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0122】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図14(a)及び図14(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0123】
図15に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0124】
圧力室152の一部の面(図15において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0125】
なお本実施形態の各記録素子は、共通電極156、個別電極157、アクチュエータ158及びノズル151を含んで構成される。
【0126】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図16に示すように主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0127】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が一例で1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0128】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0129】
特に、図16に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151−11、151−12、151−13、151−14、151−15、151−16を1つのブロックとし(他にはノズル151−21、…、151−26を1つのブロック、ノズル151−31、…、151−36を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151−11、151−12、…、151−16を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
【0130】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0131】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(あるいは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0132】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0133】
(制御系の説明)
図17は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。
【0134】
図17に示すように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、記憶デバイス175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0135】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0136】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0137】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及び記憶デバイス175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する駆動制御信号を生成する。
【0138】
記憶デバイス175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(不吐出検出用テストチャート及び濃度測定用テストチャートのデータを含む)などが格納されている。記憶デバイス175は、ROMのような書き換え不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段であってもよい。
【0139】
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0140】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
【0141】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0142】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図17において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174や記憶デバイス175と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0143】
プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0144】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動制御信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0145】
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動制御信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0146】
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動制御信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0147】
印字検出部124は、図12で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。
【0148】
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
(補正処理に関する制御系)
次に、補正処理に関連する制御構成について、図18を参照して説明する。図18は、補正処理に関連する制御構成を示す機能ブロック図である。
【0149】
図18に示す補正処理制御部100は、上述の補正処理を制御するユニットであり、図17のシステムコントローラ172、プリント制御部180、画像メモリ174、記憶デバイス175、画像バッファメモリ182、及び他の機器類によって構成されている。補正処理制御部100に含まれる下記の各部は、機能的な構成によって捉えられており、これらのハード機器類が単独で又は複数組み合わされて実現される。
【0150】
補正処理制御部100は、出力データ読取部30、ノズル判別部36、補正演算部40、スキャナ制御部56及びヘッドドライバ184を含んで構成されている。出力データ読取部30はノズル位置特定部32及び測定濃度計測部34を含み、補正演算部40は補正値算出部42及び補正値修正部44を含み、データ出力部50は補正用画像出力部52及び印刷用画像出力部54を含む。
【0151】
印字検出部124は、記録素子毎に形成される記録濃度を示すテストチャート(図3参照)をスキャンすることによって各記録素子の出力濃度データ(画像読み取りデータ)を取得する濃度情報取得手段として機能する。この印字検出部124は、取得したテストチャートの画像読み取りデータを出力データ読取部30に送信する。
【0152】
出力データ読取部30は、印字検出部124から送られてくるテストチャートの画像読み取りデータに基づいて、記録素子毎の記録濃度を示す出力濃度データを取得する濃度情報取得手段として機能する。この出力データ読取部30は、テストチャートにおける測定位置から対応ノズルの位置を求めるノズル位置特定部32と、テストチャートにおける測定位置のインク出力濃度を検出する測定濃度計測部34とを含む。
【0153】
ノズル判別部36は、テストチャートに基づいて出力データ読取部30が取得した出力濃度データから記録素子毎の吐出情報(記録情報)を求める特性演算手段として機能する。具体的には、出力データ読取部30から送られてくる記録素子毎の出力濃度データと、データ出力部50から送られてくるテストチャート出力用の入力画像データとに基づいて、ノズル判別部36はノズル毎の吐出情報(テスト特性曲線G)を求める。
【0154】
またノズル判別部36は、予め定められる記録素子の正常時の特性情報(適正特性曲線G)を記憶する特性記憶手段として機能するとともに、(記録媒体に対して記録可能な記録素子を含む)記録素子の吐出情報の出力濃度データと記憶する特性情報の出力濃度データとを、記録素子毎に比較する比較手段として機能する。ノズル判別部36は、この比較結果に応じて、対象記録素子が正常ノズルか異常濃度ノズルかを判別し、例えば図7に示すように、吐出情報の出力濃度データ(G)と、特性情報に基づく所定の臨界濃度データDとの比較結果に応じて正常ノズルか異常濃度ノズルかを判別することができる。すなわちノズル判別部36は、吐出情報の出力濃度データが、特性情報に基づく所定の範囲に含まれているか否かに応じて、正常ノズルか異常ノズルかを判別する。
【0155】
補正演算部40の補正値算出部42は、ノズル判別部36における吐出情報(記録情報)と特性情報との比較結果に基づいて、記録制御に対する補正値を記録素子毎に算出する濃度補正値算出手段として機能する。
【0156】
具体的には、補正値算出部42は、特性情報(適正特性曲線G)の出力濃度データが示す記録濃度データと、記録情報(テスト特性曲線G)の出力濃度データが示す記録濃度データとが一致するような入力画像データ値の差分として、上記補正値を算出するようになっている。また補正演算部40の補正値修正部44は、ノズル判別部36における上記比較結果から吐出情報が特性情報に対して所定の条件を満たすと判断される検出記録素子(異常濃度ノズル及びその対応駆動素子)が存在する場合に、この周辺記録素子の記録制御の補正値を修正する濃度補正値修正手段として機能する。このとき、周辺記録素値の補正値の修正は、検出記録素子の記録濃度を補うように、この検出記録素子の吐出情報(記録情報)及び特性情報に基づいて行われる。周辺記録素子は、検出記録素子による記録媒体上のインクドット記録位置の周辺に対してインクドットを記録する記録素子(ノズル等)であり、検出記録素子と周辺記録素子とは記録ヘッドにおいて必ずしも隣接に配設されるとは限らない。なお、吐出情報及び特性情報は、ノズル判別部36から補正演算部40に送られてくる。
【0157】
ここでいう「所定の条件を満たすと判断される場合」は、例えば記録情報(テスト特性曲線G)に基づいて、記録制御に対する補正(シェーディング補正処理)を行っても特性情報(適正特性曲線G)から導かれる適正な記録濃度を出力することができないと判断される場合である。例えば、上記図7の(II)に示すように、異常濃度ノズル(検出記録素子)の記録情報(テスト特性曲線G)の出力濃度データが、当該異常濃度ノズルの特性情報(適正特性曲線G)に基づいて定められる所定の臨界濃度値Dを超えない場合、「所定の条件を満たすと判断される場合」に含まれうる。
【0158】
また、補正値修正部44において行われる補正値の修正は、補正値算出部42によって算出された補正値に基づく補正が行われた後の異常濃度ノズル(検出記録素子)の出力濃度データ(G)と、異常濃度ノズルに関する特性情報(適正特性曲線G)の出力濃度データとの差分(Δ)に基づいて、周辺記録素子の記録制御に対する補正値を修正する。上記実施形態では、修正値がΔ/2である場合について説明したが、この修正値は、周辺ノズルと対象ノズル(異常濃度ノズル)との配置関係や、ノズルの吐出能力等に基づいて適宜決定されうる。
【0159】
データ出力部50は、補正演算部40の補正値算出部42が算出した補正値及び補正値修正部44が修正した補正値に基づき、複数の記録素子によって記録媒体に出力される画像のデータを、記録素子毎に補正する画像補正手段として機能する。このデータ出力部50の補正用画像出力部52は、記録媒体にテストチャートを形成するための入力画像データを出力する。またデータ出力部50の印刷用画像出力部54は、所望の画像を記録媒体に形成するための入力画像データを出力する。
【0160】
補正用画像出力部52は、所望画像の印刷毎に、或いはホストコンピュータ186を介したユーザーからの指示に基づいて、テストチャート形成用の入力画像データをヘッドドライバ184に発信する。なお、テストチャートを記録する際には、印字検出部124を制御するスキャナ制御部56に対してデータ出力部50からテストチャートの記録が行われることが通知され、スキャナ制御部56は、この通知に基づいて、記録されるテストチャートのスキャン画像が取得されるように印字検出部124を制御してもよい。またテストチャート形成用の入力画像データは、ノズル判別部36に通知され、ノズル判別部36における対象ノズルが正常ノズルか異常濃度ノズルかの判定に用いられる。
【0161】
印刷用画像出力部54は、ホストコンピュータ186から送られてくる所望画像の記録に関する入力画像データに対して、補正演算部40から送られてくる補正情報に基づく上記補正処理をノズル毎に行って、そのような補正が施された入力画像データをヘッドドライバ184に出力する。
【0162】
ヘッドドライバ184は、データ出力部50から送られてくる入力画像データに基づく駆動制御信号をヘッド150(アクチュエータ158等)及びヘッド150の駆動に関係する各種機器類に送り、データ出力部50から送られてくる入力画像データに基づく画像を記録媒体に形成する。このようにして、補正判定用のテストチャートやユーザーが所望する印刷画像が記録媒体に記録されることとなる。
【0163】
なお、本実施形態ではインクジェット記録装置110内に印字検出部(スキャナ)124を設けたが、テストチャート読み取り用の印字検出部をインクジェット記録装置110とは別に設けるようにしてもよい。
【0164】
また、入力濃度データの処理は、インクジェット記録装置110とは別体の画像処理装置により行うようにしてもよい。
【0165】
また、上記の実施形態では、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。即ち、本発明は、インクジェット記録装置以外の形式の画像記録装置、例えば、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタについても適用可能である。
【符号の説明】
【0166】
30…出力データ読取部、32…ノズル位置特定部、34…測定濃度計測部、36…ノズル判別部、40…補正演算部、42…補正値算出部、44…補正値修正部、50…データ出力部、52…補正用画像出力部、54…印刷用画像出力部、56…スキャナ制御部、100…補正処理制御部、110…インクジェット記録装置、112…記録ヘッド、114…インク貯蔵/装填部、116…記録媒体、118…給紙部、120…デカール処理部、122…ベルト搬送部、124…印字検出部、126…排紙部、126A…排出部、128…カッター、130…加熱ドラム、131…ローラ、133…ベルト、134…吸着チャンバ、135…ファン、136…ベルト清掃部、140…加熱ファン、142…後乾燥部、144…加圧部、145…加圧ローラ、150…ヘッド、151…ノズル、152…圧力室、153…インク室ユニット、154…供給口、155…共通流路、156…共通電極、157…個別電極、158…アクチュエータ、170…通信インターフェース、172…システムコントローラ、174…画像メモリ、175…記憶デバイス、176…モータドライバ、178…ヒータドライバ、180…プリント制御部、182…画像バッファメモリ、184…ヘッドドライバ、186…ホストコンピュータ、188…モータ、189…ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッド及び記録媒体のうち少なくとも一方を搬送して前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対移動させる搬送手段と、
前記記録素子毎の記録濃度を示す出力濃度データを取得する濃度情報取得手段と、
前記濃度情報取得手段が取得した前記出力濃度データから前記記録素子毎の記録情報を求める特性演算手段と、
予め定められる前記複数の記録素子の適正時の特性情報を記憶する特性記憶手段と、
前記記録情報のうち前記記録媒体に対して記録可能な記録素子の前記記録情報と前記特性記憶手段が記憶する前記特性情報とを前記記録素子毎に比較する比較手段と、
前記比較手段による前記記録情報と前記特性情報との比較結果に応じて、記録制御に対する補正値を前記記録素子毎に算出する濃度補正値算出手段と、
前記複数の記録素子のうち、前記比較結果から前記記録情報が前記特性情報に対して所定の条件を満たすと判断される検出記録素子による前記記録媒体上の記録位置の周辺に対して記録を行う周辺記録素子の記録制御に対する前記補正値を、前記検出記録素子の前記記録濃度を補うように、前記検出記録素子の前記記録情報及び前記特性情報に基づいて修正する濃度補正値修正手段と、
前記濃度補正値算出手段が算出した前記補正値及び前記濃度補正値修正手段が修正した前記補正値に基づき、前記複数の記録素子によって前記記録媒体に出力される画像のデータを、前記記録素子毎に補正する画像補正手段と
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記記録情報及び前記特性情報は、前記複数の記録素子に入力される入力濃度データと、前記複数の記録素子の前記出力濃度データとに基づき、
前記比較手段は、前記入力濃度データに対する前記記録情報の前記出力濃度データと前記特性情報の前記出力濃度データとを前記記録素子毎に比較することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記所定の条件を満たすと判断される場合は、前記記録情報に基づいて、前記記録制御に対する補正を行っても前記特性情報から導かれる適正な記録濃度を出力することができないと判断される場合であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記所定の条件を満たすと判断される場合は、前記検出記録素子の前記記録情報の前記出力濃度データが、当該検出記録素子の前記特性情報に基づいて定められる所定の臨界濃度値を超えない場合であることを特徴とする請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記濃度補正値算出手段は、前記特性情報の前記出力濃度データが示す前記記録濃度と、前記記録情報の前記出力濃度データが示す前記記録濃度との差分に基づいて、前記補正値を前記記録素子毎に算出することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記濃度補正値修正手段は、前記濃度補正値算出手段によって算出された前記補正値に基づく補正が行われた後の前記検出記録素子の前記出力濃度データと、当該検出記録素子の前記特性情報の前記出力濃度データとの差分に基づいて、前記周辺記録素子の記録制御に対する前記補正値を修正することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記周辺記録素子は、前記記録媒体において、前記検出記録素子による記録の位置を挟む対向位置に前記画像を記録することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記複数の記録素子は、前記記録ヘッドにおいて、前記記録媒体の記録範囲の全幅に対応する範囲に配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドは、一回の前記相対移動によって、前記記録媒体の所定の記録範囲に対して前記画像を記録することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項10】
複数の記録素子を制御して画像を記録する画像記録方法であって、
記録素子毎の記録濃度を示す出力濃度データを取得する濃度情報取得ステップと、
前記出力濃度データから前記記録素子毎の記録情報を求める特性演算ステップと、
前記記録情報のうち前記記録媒体に対して記録可能な記録素子の前記記録情報と、予め定められる前記複数の記録素子の適正時の特性情報とを前記記録素子毎に比較する比較ステップと、
前記記録情報と前記特性情報との前記比較の結果に応じて記録制御に対する補正値を前記記録素子毎に算出する濃度補正値算出ステップと、
前記複数の記録素子のうち、前記比較の結果から前記記録情報が前記特性情報に対して所定の条件を満たすと判断される検出記録素子による前記記録媒体上の記録位置の周辺に対して記録を行う周辺記録素子の記録制御に対する前記補正値を、前記検出記録素子の前記記録濃度を補うように、前記検出記録素子の前記記録情報及び前記特性情報に基づいて修正する濃度補正値修正ステップと、
前記濃度補正値算出ステップで算出された前記補正値及び前記濃度補正値修正ステップで修正された前記補正値に基づき、前記複数の記録素子によって前記記録媒体に出力される画像のデータを、前記記録素子毎に補正する画像補正ステップと
を有することを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−73286(P2011−73286A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227223(P2009−227223)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】