説明

画像誘導組織切除を改善するための装置および方法

凍結手術用キットおよび使用方法は、体内の標的組織領域に堆積される生物分解可能かつ画像化可能な薬物担体、ベクター、およびマイクロカプセルと該標的組織領域の調節冷却との組み合わせに関する。選択された組織領域に対して冷却手段を適用するための微小浸潤性治療法は、薬物担体(マイクロカプセル)を注射するための振動共鳴周波数送達装置を用いる。この装置は、温度制御、冷却温度にさらされる組織領域に治療薬および造影剤を含む薬物担体(マイクロカプセル)を注射し、マイクロカプセル堆積の逐次的リアルタイム画像化、およびその後の超音波撮像(持続的放出率の評価を提供し、再投与計画をたてる)によるマイクロカプセルの漸進的分解の検出をおこなう。温度感受性のマイクロカプセルは、望ましくはエチオドール、超音波および/またはX線撮像のための造影剤、および細胞毒性剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
米国特許法第120条にもとづき、米国特許出願第60/562,759号(2004年4月16日出願)の優先権を主張する。
(技術分野)
本発明は、凍結手術および腫瘍処置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
固形腫瘍の低侵襲性切除処置に対する最新の取り組みとして、小型器具の使用、ならびに熱切除および全身化学療法等の併用処置が挙げられる。
凍結手術は、少しだけ例を挙げると、前立腺、肺、肝臓、腎臓等、多数の固形腫瘍に対する効率的かつ熱切除可能な低侵襲性の方法として、認識されている。凍結手術は、即時性および遅延性の変化を伴う三通りの方法で、腫瘍組織生存度に影響を及ぼす。すなわち、腫瘍細胞の凍結、直接的な細胞の変化を介した腫瘍致死をもたらす脈管構造結果、および間接的な血管閉塞である。
最近の凍結熱変化に続く細胞致死の別の機構は、アポトーシス、プログラムされた遺伝子調節による細胞死であり、この細胞死は氷結温度および氷点下温度という凍結病巣(cryolesion)の辺縁部で支配的であることが示された細胞死である。微小脈管構造の変化は、現在、凍結法によって誘発される細胞壊死の主因であると考えられている。
【0003】
凍結切除(cryoablation)を達成するために、−40℃の範囲にある「致死」温度まで腫瘍全体を凍結せねばならず、凍結/解凍(F/T)の周期を繰り返さなければならず、また致死温度は、凍結手術手術の過程で、腫瘍辺縁部の外で、「保持時間(holding time)」と示される数分間保たなければならない。これらの標準の厳守にもかかわらず、前立腺または転移性肝癌の20ないし40%が処置後に再発がみられる。このような不具合が生ずる原因が疾患関連または技術関連であるかとうか、それが認識することは、凍結手術が、処置後の再発凍結手術が化学療法または放射線療法の形で補助的療法のサポートを必要とすることであり、それによって、処置後数日間にわたり細胞の運命が平衡状態にあることが知られている凍結病巣辺縁部で細胞死の率を増加させる。
TNF−等の炎症性タンパク質による腫瘍の前処理は、血管系媒介傷害によって微小血管系潅流組織での凍結病巣辺縁部が定まるという仮説に基づいて、微小血管系の炎症性前感作により、0℃に近く、かなり高い温度で生ずる凍結病巣を拡大させる(非特許文献1)。この前処理が切除完全性に関して、より良好であるにもかかわらず、腫瘍細胞、特に凍結病巣辺縁部を逃れる可能性があった細胞に対しては直接作用しない。
そのため、凍結領域内および該領域外の腫瘍細胞と同様に冷凍外科的致死を高め、その一方で正常細胞および組織構造に対して害を与えない薬剤、ネオアジュバントまたはアジュバントに対する明確な必要性がある。
【0004】
全身化学療法は、実験およびヒトの固形腫瘍に対する凍結手術の致死効果を高めるために、長く用いられているが、その結果は一貫性のないものであった。おそらく、ほんの少しの優れたパラメータのみを援用するために、薬物、投薬量、投与経路、および適用のタイミングを定める適切なプロトコルには基づいていなかったことが理由として挙げられる。ほとんどの一般的な化学療法剤は、癌細胞でアポトーシスを生じさせ、氷点下温度で同様の効果が観察されることを考えれば、腫瘍辺縁部での腫瘍細胞死を最適化する各々の方法のタイムリーな組み合わせが求められた。適度な生体外(in vitro)凍結温度に低用量化学療法を組み合わせることで、前立腺癌細胞および結腸直腸癌細胞の細胞死率が上昇した。しかし、これらの知見は生体内(in vivo)実験に移されなかった。全身化学療法による問題は、副作用を予防することができないこと、治療量に対する腫瘍暴露が断続的であること、および腫瘍浸透が予測不可能であることである。したがって、過剰な凍結による隣接正常組織に対する傷害の危険が存在する。さらに、特に薬物投与と凍結適用との正確なタイミングが考慮に入れられない場合、細胞毒性薬が腫瘍に浸透するのは困難であり、凍結誘導微小血管機能障害の始まりが不明確になると思われる。薬物特性もまたクリティカルであり、微小血管網構成要素と同様に腫瘍細胞に作用するそれらの能力に基づいて選択されなければならない。凍結適用の凍結および未凍結領域の両方で腫瘍細胞致死を高め、細胞および/または微小血管をより長期間にわたって有効濃度の薬物にさらす一方で全身的な副作用を予防する、より効果的な凍結化学療法の併用が必要とされている。
【0005】
化学療法剤の局所送達および該化学療法剤の副作用を減少させるために、異なる薬物と該薬物のベクターまたは担体とを用いた腫瘍内化学療法が提案されている。これらの新しい製剤、ミクロスフェア、リポソーム、マトリックス等は、膜を介した拡散および/または体温での漸進的分解/溶解によって、治療量の有効成分を徐々に放出する能力を持つ。そのような徐放によって、長期間にわたり高濃度の細胞毒性薬に細胞がさらされ、副作用を防ぎ、より良好な結果をもたらす。薬物担体を、唯一の処置として、ならびに/あるいは外科的切除に対するプレアジュバントまたはアジュバント治療として、放射線治療、5−FU封入、およびグリア芽細胞腫(特許文献1に教示)、またはマイクロ波高体温(特許文献2および特許文献3に教示)として、腫瘍の血管床に局所的または該血管症内に堆積させる。後者に関しては、標的器官が適当な高体温であることによって、ドククソルビシン(Thermodox)を含む固形マトリックス・ミクロフェアからの薬物放出が誘発される。同社は、組織温度が+41℃程度である高周波数病変辺縁部にThermodox(登録商標)を注入する肝臓悪性腫瘍の併用治療について臨床試験を開始した。これらの処置は、担体の正確かつ均質な堆積および分解に対して該処置が安全性および有効性を持つことに依存している。これらの担体を画像化することができないことから、空間的分布および投薬量に関してリアルタイムで最適送達を決定する方法がない。そのような評価は、開手術の際の直接的な視覚化と組織温度の関節測定とにのみ頼っている。
【0006】
凍結手術は、掻爬術と、通常は転移しない光線角化症(AK)前癌性病変を処置するための5−FUによる局所化学療法とに関係している。局所軟膏の1つであるCarac Creamは、0.5%フルオロウラシルを含み、その0.35%が、メチルメタクリレートから構成されるMicrosponge(登録商標)という特許を受けた多孔質ミクロスフェアに取り込まれる。しかし、処方された適用形態は、クリームが特定の幾何学的堆積(すなわち優先的に病変辺縁部)、または凍結切除と化学切除との間のタイミングでのクリームの堆積を必要としないことから、したがってより暖かい温度での冷凍致死を増加させたり、隣接する通常の皮膚を節約することが最適化されない。
細胞毒性薬を含む種々の薬物混合物および担体もまた、選択的または超選択的なカテーテル処置を介して、腫瘍の血管床に直接注入された。細胞毒性薬と塞栓形成薬との組み合わせを利用し、高薬物濃度および微小血管血栓症に続発する虚血に対して、腫瘍細胞をさらす。しかし、塞栓形成術は容易ではなく、特異的かつ高価な技術、さらに高度に専門化された部門を必要とし、薬物分布が必ずしも均質であるというわけではない。
【0007】
徐放薬物担体である送達用担体(ミクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ゲルフォーム粒子等)の主な欠点は、利用可能な臨床用結像システム(すなわち、超音波撮像、C−TによるX線撮影、またはX線透視検査)の大部分で、それらが持続的にリアルタイムで見られないことである。その結果、医師は所望の堆積標的部位に達したかどうか、また薬物担体が腫瘍または標的組織全体に正しく分布されたかどうかがわからない。この欠点を補うために、投与直前に、エチオードール(Ethiodol)(登録商標)担体等の不溶性造影剤の混合物またはエマルジョンを薬物溶液または担体と混合することがおこなわれている。しかし、組織内での担体または造影剤の拡散/分布は異なり、混合物のコントラストの撮像は、担体位置の正確な手がかりが数分間を超えて与えることはない。別の欠点は、腫瘍内への徐放性製剤のピンポイント配置は、送達先端が標的腫瘍領域に達するまで、特に深在性病巣にとって、処置の過程全体を通じて送達手段の正確な可視化を必要とする。
【0008】
多数の技術が種々の方法の過程で、送達針またはカテーテルのエコー反射性を高めることが記載されているが、それらの特性は、最も効果が望まれる深在性病巣での視覚化には役立たない。
生物分解可能な担体からの薬物放出の別の態様は、複数の方法で作用することができ、中核体温で自然発生的に、または自由に引き起こされる。徐放が目的とすることは、大量の薬物を即時放出および/または徐放することで薬物の効果を高めること、不必要な位置へ不本意に移動した担体が合併症(例えば、塞栓形成)を引き起こすのを防ぐこと、薬物に対する透過性を高めることで腫瘍細胞を感作する複合技術を可能にすることである。
【0009】
最後に、悪性腫瘍の細胞異質性は、初期効果性単一薬物化学療法を説明する主要な因子の一つであることから、この化学療法抵抗性に打ち勝つ薬剤の混合物をカプセル化することは、有利な条件である。現在利用可能な徐放システムはたった一つの薬物しか封入することができない。
求められていることは、以下のとおりである。
1.同時により長い期間の間腫瘍の周辺部を有効濃度の薬剤に、より長くさらす一方で、患者の免疫系を害することなく全身性副作用を防ぐ低侵襲性複合凍結切除方法。
2.正常細胞および組織構造に害を加えることなく腫瘍細胞を殺傷するとともに凍結手術的致死の安全性および有効性を高める最小アクセス・コンピュータ支援および画像誘導凍結手術のための薬物のマイクロカプセルまたは薬剤、ネオ・アジュバント、あるいはアジュバント。
3.標的位置で腫瘍内に制御放出および/または徐放可能である薬剤、マイクロカプセル、またはそれらの組み合わせからなる新規の製剤。超音波(US)撮像によって、特に深在性病巣に対して、送達手段、堆積、薬剤担体の分解が持続的にモニターされるように、そのような製剤を、造影剤ならびに細胞性および/または血管性細胞毒性薬を同時に、同時封入する。
4.凍結切除、画像化かつ生物分解可能な薬物担体、および画像化可能な送達手段の組み合わせによる選択的な腫瘍致死を最適化する方法。
5.薬物ベクターからの薬物放出と同様に薬物堆積がその堆積部位で時間を追ってモニターし得るように、薬物送達および薬物ベクター系をリアル・タイムで持続的に画像化する超音波誘導および最小アクセスを組み合わせた方法。
【特許文献1】米国特許第6,803,052号公報
【特許文献2】米国特許第6,788,977号公報
【特許文献3】米国特許第6,623,430号公報
【非特許文献1】Bo H. Chao, Xiaoming He and J.C.Bischof, Cryobiology 2004, 49, 10-27
【発明の開示】
【0010】
本発明の目的は、身体の免疫系を保ちながら、不必要な腫瘍組織を局所凍結切除する安全性および有効性を高める新規の材料および方法を教示することである。
本発明の別の目的は、腫瘍標的の凍結切除をおこなう手術時間を少なくし、有害な冷却から周囲の組織を保護する方法を教示することである。
本発明のさらに別の目的は、凍結熱エネルギーと治療剤およびその担体との組み合わせ送達を最適化する方法を教示することである。
本発明のさらに別の目的は、画像化可能 画像化可能な薬剤または該薬剤のマイクロカプセル担体による標的組織または腫瘍の反復攻撃または処置を用いて最初の併用処置を促進かつ完了させる方法を教示することである。
本発明のさらに別の目的は、腫瘍の凍結切除中に、超音波撮像の過程で持続的かつリアルタイムで視覚化することで、特定の温度感受性、生体分解性、および画像化可能な担体(例えば造影剤と複数の腫瘍抑制剤の組み合わせとを含有するマイクロカプセル)の正確な腫瘍内堆積に使用される任意の針、プローブ、およびカテーテルの正確な送達を確実にする。腫瘍細胞の相乗的致死効果は、標的辺縁部の一時的制御凍結/冷却の過程で、また腫瘍がその冷却前の正常温度に戻った後で、生ずる。
【0011】
(図面の簡単な説明)
図1は、凍結手術的切除と凍結領域辺縁部に堆積されたマイクロカプセル化化学療法との相乗効果を示す表である。
図2は、マイクロカプセル化された薬物の徐放を説明する図である。
図3は、プレゾ・クリスタル(prezo crystal)を持つ凍結用プローブの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明は、いくつかの特許の主題を取り込み、かつ改善する。これらの特許として、凍結手術を観察する米国特許第6,235,018号公報、共鳴周波数で送達手段を振動させる米国特許第5,425,370号公報、ならびに特定のマイクロカプセルを開示する米国特許第5,827,531号公報が挙げられる。これらの特許の全てを本明細書の一部を構成するものとして援用する。本発明の材料は、本発明の目的および利点を明瞭に理解するために、以下にまとめられている。
米国特許第6,235,018号公報に開示されたコンピュータ支援モニタリング法は、アイスボール致死域の範囲をリアルタイムに予測するもので、また単独で、または超音波(US)、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴(MR)等の従来の撮像技術との併用により、特定の画像化可能な薬物担体による補完的処置のための標的領域の正確な位置を可能にする。
【0013】
この発明の画像化可能な薬物単体は特定のマイクロカプセルである。新規マイクロカプセルは、(1)米国特許第5,827,531号で最初に見いだされ、薬物溶液とともに封入される種々の撮像様式に適応した1種類以上の密度コントラスト造影剤を用いてエコー反射性に、現在改変されたマイクロカプセル。(2)薬物/コントラストである98%ペイロードのマイクロバルーン型マイクロカプセル。(3)単一のマイクロカプセルに含まれる多数の薬物。(4)体内に堆積された後にマイクロカプセルがゆっくり溶解してそこに含まれる治療薬の徐放性バルク放出を可能にする外膜の選択温度感受性を持つマイクロカプセル。
画像化可能な薬物担体の正確な堆積は、米国特許第5,425,370号公報および米国特許第5,329,927号公報の振動送達手段により、表在性組織のみならず深在性組織で可能になる。この手段は、ピンポイント送達と、持続的かつ正確な低侵襲性留置診断針、治療用プローブ、およびカテーテルのリアルタイムでの可視化とを、共鳴周波数超音波を用いて、可能にするもので、直接的、低侵襲性、腔内、および/または血管内(動脈内または静脈内)アプローチを介して、標的装置内へのこれらの手段の介在的配置を可能にする。担体の空間的堆積は、腫瘍辺縁部内に、好ましくは該腫瘍辺縁部で生ずる。後者は、アイスボールの温熱辺縁部に一致しなければならず、適応した針、カテーテル、および/またはプローブによるスルーウオール拡散および/またはベクター分解による堆積の後に、薬物の制御放出がなされる。超音波撮像によって、リアルタイムの可視化と、超音波画像の消失に対応する担体による腫瘍組織の最も効果的なローディングおよび分解とが可能になる。
【0014】
画像化可能な担体の凍結切除と堆積との相対的なタイミングは、併用治療と最適標的切除との相乗効果を保証する。薬物担体の最初の堆積は、凍結熱傷害の直前またはその後に生ずる。その後の注射は、生体外(in vitro)での放出速度および細胞毒性研究ならびに生体内(in vivo)での腫瘍応答、さらに腫瘍および移植担体の反復US撮像に基づいている。したがって、超音波検査法(単純かつ容易に利用可能な技術)は、処置の完了および効果ならびに再投薬の随時必要性の観察を可能にする。我々が前臨床試験で示したことは、そのような併用療法(薬物担体注射前の腫瘍の部分凍結を含む)が腫瘍増殖に対して阻害効果を有し、ホルモン不応性前立腺癌および非小細胞肺癌に対して個々に用いられる各々の様式よりも優れていることである。
本発明は、腫瘍凍結切除の安全と有効性とを広げる。現在、アイスボールの周囲辺縁部は、腫瘍辺縁部と10分の数mm重ならなければならない。アイスボールの辺縁部で封入薬剤の正確な注射および送達が保証される振動超音波凍結用プローブと送達手段とを用いることで、我々は、数mmにわたってアイス正面に向けて致死域、すなわち凍結致死を広げる。壊死正面が可視のアイス正面に接近し、US、CT、またはMR撮像下でその画像に接近し、アイスボールおよび腫瘍辺縁部に位置した生存腫瘍細胞が今や致死的傷害を受けるという結果が得られるそのような壊死が現在、より暖かい温度で生じることから、アイスボールの近くで正常細胞が傷害を受ける危険性は少ない。超音波等の撮像技術による組織致死の範囲を予測することも、かなり容易である。なぜなら、高エコー反射性のアイス正面は、その後の壊死域に密接に対応する。US撮像と併用してインピーダンスに基づいたモニタリング法(米国特許第6,235,018号公報に記載)を我々が用いている場合、アイスボールの致死域の位置を容易に確認することができる。
【0015】
この発明は、最適濃度および的確な位置での薬物の堆積は、治療薬担体の画像化可能なマイクロカプセル担体と送達手段とによって保証されることから、全身化学療法よりも良好な結果を与える。
この方法の利点は、以下の例の説明で明らかである。複数のプローブによって作られるアイスボールが前立腺を包含するが、壊れやすい直腸組織構造および血管を傷つけることがないように、例えば、前立腺癌切除(すなわち、凍結前立腺切除術)の過程で、前立腺の後部を食塩水または他の保護剤で前直腸壁から分離しなければならない。この発明は、腺および嚢の周辺部に封入薬物を注射し、過剰に凍結することなく腺およびその嚢を限定的に凍結することを可能にする。生存もしくは凍結適用から逃れている癌細胞に対して細胞毒性薬を直接送達する処置様式と、ホルモン不応性癌細胞を殺すことができる持続的薬物濃度を送達する新たな製剤。
我々の併用方法は、手術時間を少なくする。なぜなら、我々は「保持時間」を持たない単回凍結および解凍の適用、さらにより暖かい組織温度が、致死増強を引き起こすのに十分であることが示されたことから、手術時間を少なくさせる。それによって患者の能力が改善され、合併症率、副作用(例えば、不能症または再発)の減少とともに、より早く回復する。凍結熱処置に関連する薬物担体送達のタイミングは、結果として生ずる微小血管抗腫瘍効果を決定する上でクリティカルである。凍結手術後の微小血管変化が適用後の最初の2時間以内に完了することから、相乗効果を引き出すための最高の時間帯は、凍結適用の直前または後である。前立腺および肺癌に対する我々の前臨床試験は、微小封入5−FU堆積が、腫瘍解凍の間またはその直後に、腫瘍周辺部に注射された場合に、著しい腫瘍阻害を示した。
【0016】
撮像用封入造影剤は、我々の処置法に対して独特の能力を与える。我々は、CTあるいは今や超音波(US)によって、マイクロカプセルを観察し、腫瘍組織の最も効果的なローディングおよびマイクロカプセルがいつ分解するかを判断および制御することができる。それらがもはや可視化されていない場合、別の投薬量が別の領域に投与されるように、たとえあったとしても、ごくわずかである。画像化可能なマイクロカプセルおよび振動送達手段の一意性は、それらを腫瘍内に均一に分散することを可能にする。送達手段のシャフト/チップの位置を持続的に知ることによって、我々は薬物担体を安全および正確に、体の至る所、例えば心腔および筋肉でも、腫瘍または組織の標的域に注射することができる。我々の処置の組み合わせの特徴は、調整された温度感受性を持つマイクロカプセルを同時かつ経時的に用いて、腫瘍を殺傷することにある。易熱性の高いマイクカプセルを、薬物放出(数時間に及ぶ)を速くするために、低体温および部分的凍結を受ける腫瘍組織の辺縁部に、好ましくは堆積させ、温度感受性が低いマイクロカプセルを、長時間(12ないし15日間)にわたって、残異腫瘍に対する薬物の持続的放出に使用する。したがって術中、処置直前および/または後に実施される超音波撮像は、マイクロカプセル配置の正確さ、有効性、およびより速く溶解する(より温度感受性がある)タイプのマイクロカプセルの消失に基づいた熱処理の完了を示す。
統制期間中、適切な位置での薬物の腫瘍内送達が最大の精度で可能になることから、目的は、適当な、すなわち治療薬物濃度を送達することである。異なる人腫瘍に対する処置投薬計画のカスタム設計を可能にするために、我々は、効果的薬物放出と腫瘍細胞阻害とを決定するための生体外(in vitro)細胞毒性アッセイを用い、次に併用治療の短期有効性を評価して再投薬計画のための科学的基礎を獲得するために、生体内(in vivo)生物発光腫瘍モデルを使用する。
【0017】
我々の方法は、凍結手術または他の科学的、熱的、もしくは放射線的処置に対して腫瘍を感知するための全身薬または局所薬を使用する方法とはかなり異なる。我々は、腫瘍変液部での組織凍結/低体温と封入化学療法/剤との相乗効果を最適化することに集中する。我々は、好ましくは周囲腫瘍域で、画像化可能な封入薬物の堆積を実行することを望んでいる。この周囲腫瘍域では、間質圧がより低く、微小血管密度がより高く、遊走性腫瘍細胞が腫瘍バルク(微小転移巣)をすでに流出している可能性があり、さらに腫瘍が凍結および低体温を受ける。適度の組織低体温によって、微小血管系で血管運動反射、鬱血、透過性増大が引き起こされ、組織虚血およびアポトーシスをもたらすことが知られている。
隣接正常組織の辺縁部(すなわち安全辺縁部)に沿った腫瘍の周囲辺縁部は、我々が正確に我々の薬物担体を注射している部位である。そのような方法は、最も代謝活性が高い標的細胞に薬物が容易に輸送され得る低間質圧力域にある出現微小血管系のより近くに活性薬物を放出する。ある種の細胞毒性薬(例えば、5−フルオロウラシル)は、内皮細胞、血管形成(抗血管形成効果)に作用し、腫瘍細胞アポトーシスとともに止血を増強する血管運動反射を誘因することが知られている。
【0018】
我々は、凍結用プローブ中心から低体温域(すなわち、0℃ないし+25℃)の半径が、外因性前立腺および肺腫瘍モデルでの実験中での凍結域の半径の2倍であることを計算した。我々は、+5℃ないし+12℃の温度範囲にさらされた腫瘍領域にマイクロカプセル5−FUを堆積した場合に細胞致死の増加を観察したことから、またマイクロカプセルが腫瘍変易部に堆積されていると考えれば、我々は容易に、常に0℃であるアイス正面境界の位置を、腫瘍辺縁部を参照することによって決定できる。超音波撮像は、腫瘍変塩部に近づく場合、前進するアイス正面の縁(高エコー反射端)のリアルタイム画像を示す。しかし、超音波検査法(アイス正面の後のシャドーイング)によってはアイスボールを画像化させることはできないことから、我々は破壊的アイス正面の位置を予測するために、我々のインピーダンスに基づいたモニタリング法による補助を伴って使用する。上記した本発明は、凍結用プローブ、画像化可能な振動送達手段、および画像化可能な薬物担体とともにUS誘導低侵襲性腫瘍組織切除を用いる。この凍結用プローブは、準致死域に囲まれた標的腫瘍にある致死凍結域の形成を誘導し、モニタリング・システムがそれを表現する。アイス正面の縁のUS撮像は、腫瘍辺縁部に対するその広がりを評価することを可能にする。画像化可能な造影剤とともに細胞毒性薬を含む小量の温度感受性マイクロカプセルの蒸着を、適応化された画像形成可能な送達手段によって経皮的に注射し、腫瘍の周囲に分布させる。好ましい実施形態では、このプロセスの主要なステップは、(1)固有の画像化可能な細胞毒性マイクロカプセル(_キャップ)の製造;(2)標的腫瘍の位置、大きさ、および形状を特徴づけるための超音波撮像;(3)手術計画通りに、選択された位置での振動凍結用プローブ・チップの腫瘍内への超音波誘導および正確な位置決め;(4)プローブ1個あたり1つの凍結セッション(複数のプローブが挿入されている場合)と最小温度では保持時間無しで、腫瘍の縁内でのアイスボールの成長と、腫瘍の周囲(および隣接組織)にある低温領域の同時生成とを観察するためのコンピュータ支援および画像誘導凍結切除;(5)アイスボールの致死域の周辺への細胞毒性マイクロカプセルの正確な送達および分布を確実にするために超音波視覚化を用いた、腫瘍および周辺組織の低体温領域へのマイクロカプセルの経皮注射;ならびに(6)マイクロカプセル堆積物の分解率を観察し、再投薬のための時間が正確に測定されるマイクロカプセル堆積物の経時的超音波撮像、である。
【0019】
多重膜マイクロカプセルの製造 − マイクロカプセルを、2種類以上の液体からなる低剪断強制流動、およびに界面コアセルベーションして作った後、0.9%生理食塩水中に集めて洗うことで、2%w/v5−フルオロウラシルおよび20%v/vの高密度エコー発生性コントラスト[エチオドール(Ethiodol)(登録商標)、ヨード化ケシ油]を含有し、上記マイクロカプセルの全量の訳3%未満を示す多高分子薄膜によって囲まれたマイクロカプセルを生産する。
これらの液体に満ちたマイクロバルーン・タイプのマイクロカプセルの特徴は、4ないし26℃で懸濁保存した場合に、薄い外膜がよりいっそう安定することである。しかし、これらのマイクロカプセルの外膜は、体温(37±2℃)でゆっくりと溶解する。標的組織に堆積した後の最初の48時間以内に、少なくとも10%のマイクロカプセルが崩壊して内容物を放出する。概して、これらのマイクロカプセルの溶解は、10ないし14日間にわたって続くので、薬物の内容物が徐放されるので、遊離型の薬液の注射または沈着物と比較して治療効果の改善がなされる。
【0020】
別の好ましい実施形態は、封入された液相内に複数の薬物を含む類似のマイクロカプセルを含む。本明細書中では、水相あるいは有機溶媒相または造形剤相(油)での溶解性を持つ異なる薬物を同一のマイクロカプセルに封入して送達させることができる。これらのマイクロカプセルに含まれる薬物の組み合わせは、細胞および組織に対する局所治療効果が、個々の薬物単独の効果と比較して、併用の付加的または潜在的効果によって、より大きくなるように、相補的になるように設計される。多剤の放出は、マイクロカプセル外膜を介して、または該膜の溶解とマイクロカプセル内に含まれる全内容物(薬物)のバルク放出とによって、達成される。別の実施形態は、異なるマイクロカプセルからなる混合物を含み、個々の薬物を含む懸濁液の使用であり、それによって、これらの異なるマイクロカプセル(薬物)の混合懸濁液の同時送達によって、封入薬物の同一の相補性および徐放が得られ、別々の送達法による個々の遊離型薬物の堆積と比較して、改善された治療効果が達成される。
平均的なマイクロカプセルの直径は、8〜16ミクロンであり、上記マイクロカプセルの80%が1〜30μmである粒度分布を有する。5−FUの薬物添加量は、概してマイクロカプセル懸濁液1μlあたり0.36ngである(65,200マイクロカプセル/μl)。
【0021】
超音波撮像 − 標的腫瘍の撮像は、12MHzで作動する携帯型変換器を具備した市販の医学用超音波システムを用いることで、達成される。腫瘍内での凍結用プローブ・チップ配置、アイスボールの成長、およびマイクロカプセルの局所堆積のUS視覚化は、USディスプレイを用いて、リアルタイムにおこなわれる。ゼノジニック・マウスで増殖するヒト前立腺および肺皮下腫瘍に対する試験は、携帯型白黒超音波装置(Hawk 2102 & Merlin 1101, BK Medical Systems, FL USA、8570型12MHzリニアアレー変換器を具備)を用いた。
【0022】
凍結切除および低体温処置: (図1、上右側の図参照)。全身麻酔下、直径3mmの凍結用プローブ(Critical Care Innovations, Inc., VA, USA)を、皮膚穿刺を通して垂直に腫瘍に挿入する。0.5mmビード・ワイヤ絶縁(PFA テフロン(Teflon)(登録商標)型T熱電対(Omega, CT, USA)をプローブ壁部から数mm離れて腫瘍内に垂直に置く。プローブ・チップ末端は、該チップ末端から5mmのところに位置した熱電対を有する。両方の熱伝対ともデータ・ロギング・モジュール(Super Logics, CP8218)に接続されて、さらに独自に開発した熱モニタリングおよびシミュレーション用ソフトウェアを走らせるラップトップ(HP Pabilion ze4145)に接続されている。凍結手術的処置中、このソフトウェアはプローブ温度を測定し、それを用いて、(1)腫瘍温度(±2℃)、(円筒状左右対称、熱拡散率の方程式を解くことによる)と、(2)アイスボール形成ならびにアイスボール越しの種々の距離での腫瘍および隣接組織の温度とを予測する。実験的前立腺(DU145)および肺(A549)の凍結切除は、皮膚表面から深在辺縁部に至る腫瘍の一部を凍結し、未凍結ではあるが低体温にさらされている周囲腫瘍の多くを除去することにあった。アイスボールが腫瘍域全体に決して重ならないように、プローブ・チップを故意に腫瘍に集中させなかった。したがって、腫瘍の凍結域は明らかに低体温域とは異なった。1回の凍結/解凍(F/T)サイクルを保持時間無しで用いた。5分以内に、アイスボールが室温で自発的に溶けた。アイスボール領域での低体温域の持続時間を、15ないし30分であると推定した。この時間は、従来の凍結切除中に腫瘍凍結温度にさらす許容された継続時間内である。穴は、シアノアクリル酸エステル接着剤でシールした。
【0023】
画像化可能な細胞障害性マイクロカプセルの経皮腫瘍内堆積:凍結サイクルの終わりに、25ゲージ短斜角針を挿入し、針先端を位置決めするためのUS視覚化とアイスボール辺縁部に対してまさしく周囲にある5−FU_キャップのエコー発生性堆積とを用いた。これは、リアルタイムで腫瘍内の適当な分布を確認し、即時または後での相補的注射を必要とする任意の量の腫瘍が存在するかどうかを評価し得る独特な技術である。総腫瘍容積に基づいて20mlないし最大で200mlのPBS懸濁液を含む各注射を、平列(parallel−row)技術または周囲遮断(field block)技術を用いて、腫瘍の多数の近縁部位に堆積させた。
各マイクロカプセル注射は、計算された全投与量が腫瘍1gあたり25.8ngの5−FUである1回の注射あたり7.21 5−FUの局所投与量を含む1.3x10マイクロカプセル/20mlを含んだ。併用処置した日以降で、標的腫瘍のUS撮像は、腫瘍辺縁部の評価を可能し、腫瘍は、処置および腫瘍収縮、同様にマイクロキャップ徐放性製剤(depots)視覚化、画像からのエコー反射性徐放性製剤の消失に対して持続的な腫瘍neeは、任意の所定の位置に残る残量1.8未満の純粋マイクロカプセルに関連がある。マイクロカプセルの容量−adj投与量の経皮腫瘍内再注射を、臨床パラメータ(腫瘍容積、壊死)、optical imag(ルミネセンス強度の減少に基づいて、またUS撮像によって明らかなようにマイクロカプセル分解率に基づいて、おこなう。
【0024】
この組み合わせ様式の結果は、この新規の凍結化学療法の様式が、個々の処置よりも腫瘍増殖に対して著し有効であることを示している(図2、3、および5)。阻害効果は、上記したように、5−FUの亜毒量で出現する。さらに、この効果は、細胞が低マイナス温度(すなわち、−20℃以下)、細胞内凍結、完全もしくは部分的過剰細胞凍結、または反復F/Tサイクルにさらされることを必要としない。我々は、マイクロカプセル堆積の部位にある腫瘍の温度が約12℃±4℃であると算出した。
凍結および反復F/Tサイクルが腫瘍増殖に対する阻害効果を引き出す上で必要とされないことから、上記方法の別の利点は手術時間を著しく短くすることである。
本発明の別の利点は、マイクロキャップ5−FUの添加によって、凍結壊死領域が増加し(表1)、我々の実験ではアイスボール辺駅部に近づく(b/t0.5ないし1.5mm)。したがって、この組み合わせ技術によって、US撮像は、致死辺縁部の将来の位置をリアルタイムで予測するための価値あるツールとなる。
【0025】
組合せのもう一つの態様は、正常組織の標的近傍、特に脆弱または危険な構造が、過剰な凍結または長期間の冷却によって害されることを免れることである。さらに、適度の冷却は、これらの同じ潜在的感受性構造が局所化学療法の作用に抵抗するのを助けることで、腫瘍内により効果的に作用するより大きな用量を可能にすると考えられる。したがって、併用療法は凍結手術の安全性および有効性を高める。
我々の発明の別の利点は、リアルタイムUS撮像(図#)によって、超音波機器によって可視化される振動送達装置による正確かつ標的化された位置でのマイクロカプセルの堆積が腫瘍内でのそれらの寿命の推定と同様に可能となるように、該マイクロカプセルを検出することができるということである(表2)。USは腫瘍およびアイスボール辺縁部のリアルタイム画像化を可能にすることから、事前に選択した部位、アイスボール辺縁部、および腫瘍内に、著しく正確にマイクロカプセルを任意の時間に堆積させることが可能である。
また、分解/薬物放出率に基づく再投薬を可能にするマイクロカプセルの局所分布の画像評価の独特の利点がある。すなわち、そのような再投薬は、同じ薬物のマイクロカプセルを使用している生体外(in vitro)細胞毒性分析に基づく腫瘍細胞に対する最大の効果が得られるように調節される。併用療法のさらなるラウンドは、腫瘍に合ったプロトコルの範囲内で難無く可能になる。
【0026】
上記議論が好ましい実施形態に対してなされている一方で、いくつかの状況下で有効である変形例が存在する。例えば、
1.我々の発明は、凍結手術的切除セッションの間の温度感受性マイクロカプセルの注射を説明する。それらは、毒量以下で熱応力から第1の強力な放出が起こると直ちに薬物が拡散するように、凍結適用の終わりおよび解凍期間中に堆積される。ヒト大腸直腸腫瘍での5Fu濃度が、3ないし5日間手術前に5−FUDR−600ないし1200mg/日の経口投与をおこなった後の5時間で、54ng/gであり、また6ないし9時間後では約33ng/g、さらに17時間後では29ng/gであった。この薬物は、腫瘍細胞および脈管構造を事前感作した冷却プロセスとの相乗効果で、それらに対して作用する。類似またはより良い阻害効果は、部分的または全体的な凍結細胞と組み合わせて作用する同一マイクロ封入薬物の高用量によって起こると思われる。
2.我々の方法は、最初に凍結処置、続いてマイクロカプセル化化学療法の局所注射という経時的併用を利用するが、同一および/または異なる薬物あるいは薬物併用、または腫瘍により、組み合わせの順序を切り替えることが可能である。例えば、別の種類の腫瘍は、マイクロカプセル化された化学療法剤の局所堆積とそれに続く腫瘍の冷却によって、より多く阻害されることを明らかにすることが可能である。
【0027】
2.遊離型の腫瘍阻害剤の局所堆積を凍結治療処置の直前におこなうこともでき、ここでは細胞毒性薬が凍結切除の有効性を高め、凍結処置に打ち勝つ腫瘍細胞を妨害し、かつ殺す凍結切除および腫瘍阻害マイクロカプセルの有効性を高める。我々のマイクロカプセルの温度感受性を自由に調整し得ることから、またより大きなマイクロカプセルが小さなものよりも温度感受性が高いと考えると、選択された引き金作用熱応力(低体温および/または高体温)の過程で、迅速に放出されるマイクロカプセル化を用いることが、我々の発明の別の利点である。したがって、熱応力の過程で腫瘍細胞に対して即時かつ相乗的に作用するために、大用量の薬物が放出される。術中または手術後数日に、腫瘍細胞に対して、ゆっくりとした放出がなされるタイプのマイクロカプセルは、長期間にわたり腫瘍細胞に作用する。マイクロ封入薬物の組合せは、腫瘍増殖阻害により良好な影響を及ぼすことができる。腫瘍細胞代謝を調整する多数の承認された細胞毒性薬および他の薬剤を充実性悪性腫瘍の治療のために使うことができる。光増感剤(フォトフリン(Photofrin)(登録商標)等)として作用する他の薬もまた、大きな関心がもたれる。同一の腫瘍に対して複数の処置様式を併用することを可能にする異なる薬物の封入または同時封入を可能にすることに、特に興味がもたれる。
【0028】
例えば、処置シナリオは、凍結適用と放射性感作物質でもある細胞毒性剤のマイクロカプセル化5−FUの注射とを併用することも考えられる。腫瘍照射(近接照射療法、外部光線療法)は、任意の残留病変に対する相補的処置と、凍結化学処置の完了後、その病変の周囲辺縁部を殺菌することも考えられる。
4.そのような方法は、併用された局所凍結および化学切除処置の種々の様式を可能にする。例えば、標的冷却を誘導するために単一の凍結用プローブを用いる代わりに、複数のプローブを用いる技術を、当業者に公知の凍結切除の他の様式のいずれかと同様に、実施する。中空の器官腫瘍の凍結切除プロセスは、当該分野で既に公知の方法および装置を用いる。例えば、二酸化炭素(CO)のガス/液体冷却剤スプレイは、表面(胃、直腸、膀胱癌)または前癌性病変であっても、広範囲な悪性病変を処置することを可能にする。腫瘍の血管媒介冷却もまた、腫瘍細胞に対して化学感作ストレスを引き起こすという同じ目的のために使われる。
5.我々の温度感受性マイクロカプセルの寒気暴露の期間が凍結手術手術の状況の中での特定露出時間に対して、決定されたにもかかわらず、類似またはより高い温度での短時間または長時間の露出が類似またはより良好な結果を与えることが可能である。露出の時間温度プロフィルを調整することで、我々は薬物の放出速度を、手元の病変に対する最適投与量に操作することができた。
【0029】
6.我々が単一の凍結プローブおよび単一のF/Tサイクルで、今までのところこの様式を用いたにもかかわらず、腫瘍増殖阻害に対する類似または良好な効果が、複数の凍結用プローブを組み合わせて使用することによって生ずると考えられ、または大きな腫瘍容積と均一ではない腫瘍形状とをカバーするために、複数の凍結(フリーズ)サイクルと組み合わせ使用することもできる。
7.我々の方法は、エネルギー欠乏に基づく熱ストレスを利用するにもかかわらず、マイクロカプセル間質注射の直前または後に、RF、HIFU、ILT、MWによるエネルギー堆積および病変加熱を単独で、または凍結手術と組み合わせて、使用することができる。そのような処置は、病変に対する等価またはさらにより良好な効果を結果として生ずると考えられるが、マイクロカプセル含有物の熱修飾放出を病変の性質および手術の目的に合わせることが可能であると思われる。
8.本発明の好ましい使用方法が凍結療法を用いるにもかかわらず、同じプロトコルを、壊死およびアポトーシスを引き起こす能力を有し、薬物に対する細胞透過性を高める能力を有する代替化学的、熱的、電気的、または放射方法に適用できる。熱堆積技術、例えば高周波波、高体温(RF、HIFU、MW、レーザー)、または電離放射線(近接照射療法、外部ビーム)、あるいは化学物質、例えば無水アルコール、酢酸と、マイクロカプセル化された画像化可能な化学療法との併用が、適用可能である。HIFUの抗腫瘍効果、組織高体温を誘発する周知の非浸潤性方法は、我々の局在エコー反射性マイクロカプセル化学療法の併用によって、急激に改善すると思われる。マイクロカプセルを処置のための特定の組織構造に位置づけ、HIFU治療変換器の焦点を決定することを可能にし、それによって投与されるエネルギーのレベルを減少し、造形剤が使用されていない場合は一般に必要とされ、HIFUエネルギーを抑制することで、ダメージから非標的組織を保護するものと考えられる。
【0030】
9.本発明の好ましい実施形態がマイクロカプセル化5‐フルオロウラシル(マイクロカプセル化5−FU)と併用される凍結療法を使用するにもかかわらず、同じ概念は、他の担体の実施形態(すなわち一つ以上の多剤を併用して含むマイクロカプセル)に適用できる。それらの薬物は、腫瘍細胞増殖、代謝的機能、新脈管形成を阻害するように設計され、遺伝子治療、免疫刺激薬、あるいは腫瘍細胞にとって有害である当業者に公知の他の薬剤のいずれかをを阻害するようになっている。
10.好ましい実施形態は、腫瘍に直接入れられた画像化可能な担体の堆積の使用((すなわち、共鳴振動終発を持つ介在的なカテーテルの持続的リアルタイム可視化による送達))を記載するにもかかわらず、必要に応じた選択的脈管カテーテル法によって、腫瘍を供給している血管床の範囲内で達成することもできる。脈管注射と間質性堆積との併用もまた、必要であると思われる際に、担体の良好な分布も可能にする。マイクロカプセルの大きさが血栓形成性を生ずると考えるならば、本薬剤の徐放は、塞栓形成の後、化学療法によりいっそう影響されるようになる腫瘍で起こり、さらに本剤はここで腫瘍にトラップされる。しかし、それが必要であると考えられる場合、しかしながら、それが必要であると考える場合、塞栓形成を従来法、例えば接着剤、スポンジフラグメント等で行うことができる。
11.好ましい実施形態が経皮アプローチを記載するにもかかわらず、既存の送達手段が手を伸ばすことができる体の至る所に、マイクロカプセルを送達させることができる。したがって、針、カテーテルを用いて、腫瘍組織内の適切な標的位置に薬物を送達することができるとともに、それらの共鳴周波数で振動するように設定することができる。我々の振動のシステムが最適US視覚化振動を任意の送達手段に対して調整することを可能にすることから、開いた手術で直接的に、または内視鏡、経皮、あるいは適当なカテーテル、針の助けを借りての腔内アプローチであるにせよ、腫瘍内部に薬物担体を入れることが容易である。
【0031】
12.好ましい実施形態が温度感受性の使用をマイクロカプセルからの薬物放出手段と説明しているが、機械的、音波、および/または化学的ストレスがマイクロカプセル壁の完全性に影響を及ぼし得る。具体的には、マイクロカプセルを、最小の副次的なダメージによって調整されたストレスにさらされる場合に、壊れるように設計することができる、例えば、HIFUの代わりに低輝度のUSに対して、変換器、分解性または潜在的に変異原性の遊離基を形成することを伴わないかなり安価で高度ではない処置方法を用いて、堆積担体をさらすことが可能である。
13.好ましい実施形態が、標的組織内に担体のみのその後の注射とともに、腫瘍冷却と画像形成可能な担体の間質性堆積との組み合わせの単一セッションを用いるが、多数の配列および経時的組み合わせ処置を、残余腫瘍細胞を回復させる際に有効な、またはより有効なものとする。処置のそれ以降の配列は、熱、機械的、または化学ストレスを担体堆積と組み合わせて使用することができる。
14.好ましい実施形態が、マイクロカプセル化化学療法のために熱ストレスを使用して細胞を感作するにもかかわらず、短強度の電気パルスから得られる電気的感作として知られている電気ストレスを用いることが可能である。生体内(in vivo)に電気パルスの送達を容易化にする多数の手段、経皮、腹腔鏡検査、およびカテーテル媒介される送達系(例えば、国際特許出願WO99/22809A1、WO99/0610A1、WO99/01157A1、WO99/0158)が存在し、ヒトの体の中の任意の標的をアクセスすることが可能である。
15.好ましい実施形態が担体の細胞溶解から即時薬物放出を誘発するために外部USを使用する可能性があるにもかかわらず、間質性US変換器を薬物担体の負荷の徐放のために使用することが可能である。画像化可能な送達手段は、針またはカテーテルが薬物担体堆積後の活性化に応じて使用される活性化された振動の送達に対して近接した担体による即時細胞溶解を誘発する。振動の周波数範囲を、低周波数から高周波数にかけて、そのような溶解が可能となるように適用される。送達手段をこの目的のために改変し、1種類または複数のUSドライバを用いて撮像および担体溶解の活性化に使用することができる。
【0032】
図3は、本明細書の一部として援用される米国特許第6,235,018号に記載された一体型検出電極を有する凍結用プローブの一実施形態を示す。プローブは、遠位端14が丸まっており、その近位端にハンドル16が設けられているステンレス鋼製のシャフト12を有する。インナーチューブ18は、凍結用液体を遠位端14に送達するもので、開口部20を通して出て、また蒸発して金属シャフト12を冷やす。絶縁スリーブ22は、シャフトを囲み、ハンドルから先端14近傍の位置に延びる。同軸ケーブル28内の中心リード26は、上記シャフトの近位端に結合する。プレゾ・クリスタル30は、超音波またはMRIを利用して波をピックアップし、先端14を位置決めする波長をピックアップする。
この発明が開示され、その詳細な実施形態について説明されたにもかかわらず、その形状および細部のさまざまな変化が請求された発明の精神および範囲から逸脱することなくなされる可能性があることは容易に理解されるものであり、当業者によって認められ、かつ理解され、その詳細は、クレームされた発明の精神および配列から逸脱することなく、おこなうことが可能である。
本発明のさらに別の目的は、腫瘍の凍結切除中に、超音波撮像の過程で持続的かつリアルタイムで視覚化することで、特定の温度感受性、生体分解性、および画像化可能な担体(例えば造影剤と複数の腫瘍抑制剤の組み合わせとを含有するマイクロカプセル)の正確な腫瘍内堆積に使用される任意の針、プローブ、およびカテーテルの正確な送達を確実にする。腫瘍細胞の相乗的致死効果は、標的辺縁部の一時的制御凍結/冷却の過程で、また腫瘍がその冷却前の正常温度に戻った後で、生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】凍結手術的切除と凍結領域辺縁部に堆積されたマイクロカプセル化化学療法との相乗効果を示す表である。
【図2−1】マイクロカプセル化された薬物の徐放を説明する図である。
【図2−2】マイクロカプセル化された薬物の徐放を説明する図である。
【図3】プレゾ・クリスタル(prezo crystal)を持つ凍結用プローブの断面図である。
【符号の説明】
【0034】
12 シャフト
14 遠位端(先端)
16 ハンドル
18 インナーチューブ
20 開口部
22 絶縁スリーブ
26 中心リード
28 同軸ケーブル
30 プレゾ・クリスタル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を処置するための医学的方法であって、凍結手術によって腫瘍の温度を減少させるステップと、細胞毒性、腫瘍阻害、および光感作性の薬物を含むマイクロカプセルを前記腫瘍に対して送達するステップとを有する、腫瘍を処置するための医学的方法。
【請求項2】
前記マイクロカプセルを持続的にリアルタイムで画像化することで、選択された部位で前記腫瘍での前記マイクロカプセルの正確な配置を容易にするステップを有する請求項1に記載の医学的方法。
【請求項3】
超音波装置を用いて、マイクロカプセルを振動させるステップを含む請求項2に記載の医学的方法。
【請求項4】
前記凍結手術と前記マイクロカプセルの前記送達とが同時に実行される請求項1に記載の医学的方法。
【請求項5】
前記凍結手術と前記マイクロカプセルの前記送達とが逐次実行される請求項1に記載の医学的方法。
【請求項6】
前記マイクロカプセルが、細胞毒性薬の併用(免疫賦活剤が後に続く細胞毒性薬)に使用される多剤ペイロード、または標的細胞増殖もしくは重要な代謝的機能を阻害するように設計された他の併用薬物戦略を含む請求項1に記載の医学的方法。
【請求項7】
前記マイクロカプセルが、細胞毒性薬と抗血管新生因子とを含む多剤ペイロードまたは腫瘍の長期残存を減らすように設計された遺伝子治療薬剤を含む請求項1に記載の医学的方法。
【請求項8】
腫瘍を処置するための医療用キットであって、腫瘍に対して近位に配置されるのに適した少なくとも1本の凍結手術用針を含む、前記腫瘍の温度を減少させるための凍結手術装置と、前記針を通り抜けるのに適した複数のマイクロカプセルとを有し、前記マイクロカプセルが細胞毒性薬を含む医療用キット。
【請求項9】
請求項8の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、前記マイクロカプセルが可視画像を作ることが可能な造影剤を含む医療用キット。
【請求項10】
請求項9の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、前記可視画像を生産するのに適した持続的リアルタイム画像化共鳴周波数装置を含み、それによって前記マイクロカプセルの配置を正確に送達かつ制御することができる医療用キット。
【請求項11】
請求項10の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、前記腫瘍組織に接した状態の前記針を振動させることによって、マイクロカプセル放出率を促進する撮像装置を有する医療用キット。
【請求項12】
請求項10の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、前記撮像装置が活性超音波変換器として作用し、前記超音波変換器が振動によって前記マイクロカプセルを活性化させ、前記活性化が前記超音波変換器の異なる周波数の変調によって得られる医療用キット。
【請求項13】
請求項12の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、前記撮像装置が2つ以上の変換器を有し、前記変換器のうちの1つが前記マイクロカプセルの画像化に適しており、他方が前記マイクロカプセルの活性化に適している医療用キット。
【請求項14】
請求項8の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、前記針またはカテーテルは、先端が腫瘍と直接接触した状態に適している医療用キット。
【請求項15】
請求項8の固形腫瘍を処置するための医療用キットであって、シリンジが前記針との接続に適しており、前記シリンジは前記マイクロカプセルの送達量および分布を正確に制御する医療用キット。
【請求項16】
腫瘍を処置するための医学的方法であって、腫瘍を冷却または部分的に凍結させるステップと、前記腫瘍の塊に、順次、マイクロカプセルを間質注射するステップとを有する医学的方法。
【請求項17】
請求項16に記載の腫瘍を処置するための医学的方法であって、前記腫瘍細胞を一時的に低温にさらし、さらに/または、化学的治療剤または他の治療薬を含むマイクロカプセルの局所経皮注射に先立って、またはその後に少なくとも1回、−20℃ないし+18℃の過剰細胞培地を部分的に凍結させる医学的方法。
【請求項18】
請求項16に記載の腫瘍を処置するための医学的方法であって、前記マイクロカプセル・ロードの前記放出率が、一時的に+4℃ないし+20℃の範囲内のサブゼロ温度にさらされることによって、高められる医学的方法。
【請求項19】
請求項16に記載の腫瘍を処置するための医学的方法であって、マイクロカプセルの引き起こされた放出または自然発生的放出、身体温度での前記マイクロカプセルの漸進的分解の必要性に依存した冷却用途の前および/または後に、前記マイクロカプセルが投与される医学的方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−535347(P2007−535347A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508375(P2007−508375)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/010799
【国際公開番号】WO2005/099367
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506344860)クリティカル ケア イノヴェイションズ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】