画像読取り装置
【課題】ホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できるようにした画像読取り装置を提供する。
【解決手段】ホログラムフィルムの下の印刷部を観察するにあたって、本発明に係る画像読取り装置では、ライン状の照明手段5,6の前方に配置した第1の偏光板20と、照明手段5,6とライン型の撮像素子10との間に配置した第2の偏光板30とが利用されている。この場合、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略垂直方向に延在する第1の偏光透過軸を有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸を有すると、撮像時にホログラムを消失させることができ、これによって、印刷部の印刷文字や印刷画像パターンなどの確認を確実に行うことができる。
【解決手段】ホログラムフィルムの下の印刷部を観察するにあたって、本発明に係る画像読取り装置では、ライン状の照明手段5,6の前方に配置した第1の偏光板20と、照明手段5,6とライン型の撮像素子10との間に配置した第2の偏光板30とが利用されている。この場合、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略垂直方向に延在する第1の偏光透過軸を有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸を有すると、撮像時にホログラムを消失させることができ、これによって、印刷部の印刷文字や印刷画像パターンなどの確認を確実に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、商品券、証明書などで、印刷部上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体の印刷部の確認に利用される画像読取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的に利用されているこの種の画像読取り装置として、特開2005−33589号公報がある。この公報に記載された画像読取り装置は、筐体内で直線的に配列されたLEDからの光を紙幣などの媒体に照射し、媒体で反射した光をCCDによって撮像する。このような装置は、紙幣などの真偽判別に利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−33589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、セキュリティーを目的として、印画や印字上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体が出現しており、このような媒体を単に撮像するたけでは、ホログラムが画像に写り込み、ホログラムを確認することはできるが、ホログラムの下にある印画又は印字部分を撮像することが極めて困難であった。
【0005】
本発明は、ホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できるようにした画像読取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像読取り装置は、印刷部上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体を撮像するためのライン型撮像素子と、媒体上を通る撮像ラインと平行にライン状に配置された照明手段と、照明手段の前方に配置され、照明手段から出射された光を偏光する第1の偏光板と、照明手段とライン型撮像素子との間に配置され、媒体で反射した光を偏光する第2の偏光板とを備え、第1の偏光板は、撮像ラインに対して略垂直する第1の偏光透過軸を有し、第2の偏光板は、撮像ラインに対して略平行な第2の偏光透過軸を有することを特徴とする。
【0007】
ホログラムフィルムの下の印刷部を観察するにあたって、本発明に係る画像読取り装置では、ライン状の照明手段の前方に配置した第1の偏光板と、照明手段とライン型の撮像素子との間に配置した第2の偏光板とが利用されている。この場合、第1の偏光板の第1の偏光透過軸の方向及び第2の偏光板の第2の偏光透過軸の方向を、それぞれ特定することで、極めて鮮明にホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できることが実験により確かめられている。実験の結果、第1の偏光板が、撮像ラインに対して略垂直方向に延在する第1の偏光透過軸を有し、第2の偏光板が、撮像ラインに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸を有すると、撮像時にホログラムを消失させることができ、これによって、印刷部の文字や画像パターンなどの確認を確実に行うことができる。
【0008】
また、第1の偏光透過軸に対して第2の偏光透過軸は85°〜95°の範囲内であると好適である。第1の偏光透過軸に対して第2の偏光透過軸を厳密に直交させる必要はなく、この範囲内で交わるようにしても初期の目的を達成することができる。
【0009】
また、照明手段の入射角は、撮像ラインを通る撮像光軸線に対して25°〜35°であると好適である。この角度は、照明が撮像素子に写り込み難い角度である。
【0010】
また、ホログラムフィルムは、360度の方向すなわちどの方向からでもホログラムの観察可能であり、印刷部はカラー印刷であり、照明手段は、基板上に直線的に配列された白色LEDであると好適である。ホログラムフィルム及び印刷部がこのような条件下にある場合、白色のLEDを利用すると、印画部を最も鮮明に写し出すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る画像読取り装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、媒体(例えば、紙幣、商品券、証明書、パスポートなど)A上には、セキュリティー部分Gが設けられ、このこのセキュリティー部分Gには、印字や印画された印刷部S上に透過性のホログラムフィルムHが貼られている。そして、この画像読取り装置1は、前述した構成をもったセキュリティー部分Gの印刷部Sにおける文字や画像パターンの確認のために利用される。なお、透過性のホログラムフィルムHは、見る角度によってホログラムの色が変化したり透明になったりすると共に、360度の方向すなわちどの方向からでもホログラムの観察可能であり、印刷部Sは、カラー印刷された画像パターンや文字である。
【0014】
図2及び図3に示すように、この画像読取り装置1は、並設された搬送ローラ3列の下方に配置され、搬送ローラ列3の下方が、狭い空間ゆえに筐体2は扁平に形成されている。この筐体2には、搬送方向Bに対して直交する方向に延在する矩形の撮像窓4が形成され、この撮像窓4には、防塵ガラス9が嵌め込まれている。そして、この撮像窓4は、ライン型のCCD(撮像素子)10の撮像可能部分に対応して延在する撮像ラインL(図4参照)の全長を確保するのに十分な長さを有している。なお、この撮像ラインLは、媒体Aの表面上を通って延在する直線的な仮想ラインであり、撮像素子10は、CMOSであってもよい。
【0015】
さらに、筐体2内には、撮像窓4と平行すなわち撮像ラインLと平行に延在する一対の第1及び第2の照明手段5,6が配置されている。各照明手段5,6の実装基板5a,6aは、筐体2に固定され、撮像ラインLと平行に延在する。各実装基板5a,6aの表面には、撮像ラインL対して平行に一列に配置された複数個の白色LED5b,6bが固定され、各LED5b,6bは、撮像窓4に向けて光を出射する。
【0016】
一方の照明手段5と他方の照明手段6とは、搬送方向Bに対して直交し且つ撮像ラインLを通って延在する平面状の撮像光軸線P1に対し鏡面対称関係にあり、照明手段5,6のLED5b,6bの入射角αは、撮像光軸線P1に対して25°〜35°に設定されている。このように、媒体Aに対して斜め方向から光を照射することにより、CCD10による照明光の映り込みが適切に防止される。また、2列の照明手段5,6を用いることで、光量アップも図られている。
【0017】
各照明手段5,6の実装基板5a,6a間には、撮像光軸線P1の通過を可能にする程度の細長い隙間が形成されている。媒体Aで反射した光は、筐体2の底壁2aに固定された第1の反射ミラー7によって筐体2の側壁2bに向けて反射し、この反射光は、筐体2の側壁2bに固定された第2の反射ミラー8によってCCD10に向けて反射する。このCCD10と第2の反射ミラー8とを筐体2内で対面させることにより、光路の延長化と筐体2の扁平化を可能にしている。なお、CCD10の前方には、第2の反射ミラー8で反射した光をライン型CCD10に適切に入射させるための結像レンズ群12が配置されている。
【0018】
さらに、図2〜図4に示すように、媒体A上に設けられたセキュリティー部分Gの印刷部Sのみの確認をライン型のCCD10によって達成するために、照明手段5,6から出射された光を偏光するための第1の偏光板20が、各照明手段5,6の前方に配置されている。具体的には、各照明手段5,6のLED5b,6bの光出射面を覆うように、第1の偏光板20が各LED5b,6bに貼り付けられている。さらに、照明手段5,6とライン型CCD10との間において第2の偏光板30が配置されている。具体的に、この第2の偏光板30は、結像レンズ群12とCCD10との間でCCD10の前面に貼り付けられている。また、結像レンズ群12の前に第2の偏光板30を配置することも可能である。
【0019】
さらに、図5に示すように、第1の偏光板20は、撮像ラインLに対して略垂直して延在する第1の偏光透過軸20aを有し、図6に示すように、第2の偏光板30は、撮像ラインLに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸30aを有している。この場合、第1の偏光透過軸20aに対して第2の偏光透過軸は、必ずしも直交する必要はなく、85°〜95°の範囲内であれば、初期の目的を達成することができる。
【0020】
次に、画像読取り装置1の動作を簡単に説明する。
図4に示すように、LED5b,6bから出射した白色光は、第1の偏光板20を通過して媒体Aのセキュリティー部分Gに照射される。このとき、第1の偏光板20によってP波がカットされ、S波の光のみがセキュリティー部分Gに照射される。セキュリティー部分Gに光が照射されると、セキュリティー部分GでS波の光(回折光及び正反射光)及び拡散反射光が発生する。この光は、第1及び第2の反射ミラー7,8を介して結像レンズ群12に入射する。
【0021】
そして、結像レンズ群12から出射した光は、第2の偏光板30を通過してライン型CCD10に入射される。このとき、第2の偏光板30によって、S波の光がカットされ、P波の光のみがCCD10に入射して、セキュリティー部分Gの撮像が行われる。なお、セキュリティー部分Gは、搬送ローラ列3により媒体Aを所定の速度で送りながら撮像される。
【0022】
前述した構成の画像読取り装置1では、ホログラムフィルムHの下のカラー印刷部Sを観察するにあたって、ライン状の照明手段5,6の前方に配置した第1の偏光板20と、照明手段5,6とライン型のCCD10との間に配置した第2の偏光板30とが利用されている。この場合、第1の偏光板20の第1の偏光透過軸20aの方向及び第2の偏光板30の第2の偏光透過軸30aの方向を、それぞれ特定することで、極めて鮮明にホログラムフィルムHの下の印刷部Sを鮮明に撮像できることが実験により確かめられている。実験の結果として、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略垂直に延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸30aを有することで、撮像時にホログラムを消失させることができ、これにより、モニター画面上で印刷部Sの印刷文字や印刷画像パターンなどの確認を確実に行うことができる。
【0023】
画像読取り装置1の実験結果について以下説明する。
【0024】
[比較例1]
図7及び図8に示すように、第1の偏光板20及び第2の偏光板30に関しては、本発明と異なり、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略平行に延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略直交して延在する第2の偏光透過軸30aを有している。このような状況下でセキュリティー部分Gをライン型CCD10によって撮像すると、図7に示すように、モニター画面上において、ホログラムフィルムHのホログラムの部分が透けることなく、印刷部Sが、ホログラムの影響により極めて観察し難くなる。そのことは、「NIPPON 1000」の「N」の文字を拡大して示す図13(a)からも明らかである。また、図8に示すように、撮像結果において、ホログラムフィルムHの周辺の平均濃度が114.8LSBであるのに対し、ホログラムフィルムHの場所での濃度が220LSBであることが分かる。このように、グラフ上でも濃度差が見られ、セキュリティー部分Gの撮像時に、ホログラムの影響が残存していることが分かる。
【0025】
[比較例2]
図9及び図10に示すように、第1の偏光板20及び第2の偏光板30に関しては、本発明と異なり、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略直交して延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して45°の角度をもって延在する第2の偏光透過軸30aを有している。このような状況下でセキュリティー部分Gをライン型CCD10によって撮像すると、図9に示すように、モニター画面上において、ホログラムフィルムHのホログラムの部分が僅かに透けているが、印刷部Sが、ホログラムの影響により観察し難くなる。そのことは、「NIPPON 1000」の「N」の文字を拡大して示す図13(b)からも明らかである。また、図10に示すように、撮像結果において、ホログラムフィルムHの周辺の平均濃度が95.4LSBであるのに対し、ホログラムフィルムHの場所での濃度が175LSBであることが分かる。このように、グラフ上でも濃度差が見られ、セキュリティー部分Gの撮像時に、ホログラムの影響が残存していることが分かる。
【0026】
[実施例]
図11及び図12に示すように、第1の偏光板20及び第2の偏光板30に関しては、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略直交して延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略平行に延在する偏光透過軸30aを有している。このような状況下でセキュリティー部分Gをライン型CCD10によって撮像すると、図11に示すように、ホログラムフィルムHのホログラムの部分が完全に透けており、印刷部Sは、ホログラムの影響を受けることなく観察でき、モニター画面上で印刷部Sの印刷文字や印刷画像パターンなどを確実に見付け出すことができる。そのことは、「NIPPON 1000」の「N」の文字を拡大して示す図13(c)からも明らかである。また、図12に示すように、撮像結果において、グラフ上、ホログラムフィルムHの周辺の平均濃度が119.7LSBであり、ホログラムフィルムHの場所での濃度も周辺濃度と同じであるので、セキュリティー部分Gの撮像時に、ホログラムの影響が無くなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】撮像媒体を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る画像読取り装置を示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明に係る画像読取り装置を模式的に示す斜視図である。
【図5】第1の偏光透過軸の向きを示す斜視図である。
【図6】第2の偏光透過軸の向きを示す斜視図である。
【図7】比較例1に係わる画像を示す平面図である。
【図8】比較例1における濃度分布を示すグラフである。
【図9】比較例2に係わる画像を示す平面図である。
【図10】比較例2における濃度分布を示すグラフである。
【図11】本発明に係わる画像読取り装置で撮像した画像を示す平面図である。
【図12】実施形態における濃度分布を示すグラフである。
【図13】実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…画像読取り装置、5,6…照明手段、5a,6a…基板、5b,6b…LED、10…CCD(撮像素子)、20…第1の偏光板、20a…第1の偏光透過軸、30…第2の偏光板、30a…第2の偏光透過軸、A…媒体、S…印刷部、H…ホログラムフィルム、P1…撮像光軸線、L…撮像ライン、α…入射角。
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣、商品券、証明書などで、印刷部上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体の印刷部の確認に利用される画像読取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的に利用されているこの種の画像読取り装置として、特開2005−33589号公報がある。この公報に記載された画像読取り装置は、筐体内で直線的に配列されたLEDからの光を紙幣などの媒体に照射し、媒体で反射した光をCCDによって撮像する。このような装置は、紙幣などの真偽判別に利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−33589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、セキュリティーを目的として、印画や印字上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体が出現しており、このような媒体を単に撮像するたけでは、ホログラムが画像に写り込み、ホログラムを確認することはできるが、ホログラムの下にある印画又は印字部分を撮像することが極めて困難であった。
【0005】
本発明は、ホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できるようにした画像読取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像読取り装置は、印刷部上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体を撮像するためのライン型撮像素子と、媒体上を通る撮像ラインと平行にライン状に配置された照明手段と、照明手段の前方に配置され、照明手段から出射された光を偏光する第1の偏光板と、照明手段とライン型撮像素子との間に配置され、媒体で反射した光を偏光する第2の偏光板とを備え、第1の偏光板は、撮像ラインに対して略垂直する第1の偏光透過軸を有し、第2の偏光板は、撮像ラインに対して略平行な第2の偏光透過軸を有することを特徴とする。
【0007】
ホログラムフィルムの下の印刷部を観察するにあたって、本発明に係る画像読取り装置では、ライン状の照明手段の前方に配置した第1の偏光板と、照明手段とライン型の撮像素子との間に配置した第2の偏光板とが利用されている。この場合、第1の偏光板の第1の偏光透過軸の方向及び第2の偏光板の第2の偏光透過軸の方向を、それぞれ特定することで、極めて鮮明にホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できることが実験により確かめられている。実験の結果、第1の偏光板が、撮像ラインに対して略垂直方向に延在する第1の偏光透過軸を有し、第2の偏光板が、撮像ラインに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸を有すると、撮像時にホログラムを消失させることができ、これによって、印刷部の文字や画像パターンなどの確認を確実に行うことができる。
【0008】
また、第1の偏光透過軸に対して第2の偏光透過軸は85°〜95°の範囲内であると好適である。第1の偏光透過軸に対して第2の偏光透過軸を厳密に直交させる必要はなく、この範囲内で交わるようにしても初期の目的を達成することができる。
【0009】
また、照明手段の入射角は、撮像ラインを通る撮像光軸線に対して25°〜35°であると好適である。この角度は、照明が撮像素子に写り込み難い角度である。
【0010】
また、ホログラムフィルムは、360度の方向すなわちどの方向からでもホログラムの観察可能であり、印刷部はカラー印刷であり、照明手段は、基板上に直線的に配列された白色LEDであると好適である。ホログラムフィルム及び印刷部がこのような条件下にある場合、白色のLEDを利用すると、印画部を最も鮮明に写し出すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホログラムフィルムの下の印刷部を鮮明に撮像できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る画像読取り装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、媒体(例えば、紙幣、商品券、証明書、パスポートなど)A上には、セキュリティー部分Gが設けられ、このこのセキュリティー部分Gには、印字や印画された印刷部S上に透過性のホログラムフィルムHが貼られている。そして、この画像読取り装置1は、前述した構成をもったセキュリティー部分Gの印刷部Sにおける文字や画像パターンの確認のために利用される。なお、透過性のホログラムフィルムHは、見る角度によってホログラムの色が変化したり透明になったりすると共に、360度の方向すなわちどの方向からでもホログラムの観察可能であり、印刷部Sは、カラー印刷された画像パターンや文字である。
【0014】
図2及び図3に示すように、この画像読取り装置1は、並設された搬送ローラ3列の下方に配置され、搬送ローラ列3の下方が、狭い空間ゆえに筐体2は扁平に形成されている。この筐体2には、搬送方向Bに対して直交する方向に延在する矩形の撮像窓4が形成され、この撮像窓4には、防塵ガラス9が嵌め込まれている。そして、この撮像窓4は、ライン型のCCD(撮像素子)10の撮像可能部分に対応して延在する撮像ラインL(図4参照)の全長を確保するのに十分な長さを有している。なお、この撮像ラインLは、媒体Aの表面上を通って延在する直線的な仮想ラインであり、撮像素子10は、CMOSであってもよい。
【0015】
さらに、筐体2内には、撮像窓4と平行すなわち撮像ラインLと平行に延在する一対の第1及び第2の照明手段5,6が配置されている。各照明手段5,6の実装基板5a,6aは、筐体2に固定され、撮像ラインLと平行に延在する。各実装基板5a,6aの表面には、撮像ラインL対して平行に一列に配置された複数個の白色LED5b,6bが固定され、各LED5b,6bは、撮像窓4に向けて光を出射する。
【0016】
一方の照明手段5と他方の照明手段6とは、搬送方向Bに対して直交し且つ撮像ラインLを通って延在する平面状の撮像光軸線P1に対し鏡面対称関係にあり、照明手段5,6のLED5b,6bの入射角αは、撮像光軸線P1に対して25°〜35°に設定されている。このように、媒体Aに対して斜め方向から光を照射することにより、CCD10による照明光の映り込みが適切に防止される。また、2列の照明手段5,6を用いることで、光量アップも図られている。
【0017】
各照明手段5,6の実装基板5a,6a間には、撮像光軸線P1の通過を可能にする程度の細長い隙間が形成されている。媒体Aで反射した光は、筐体2の底壁2aに固定された第1の反射ミラー7によって筐体2の側壁2bに向けて反射し、この反射光は、筐体2の側壁2bに固定された第2の反射ミラー8によってCCD10に向けて反射する。このCCD10と第2の反射ミラー8とを筐体2内で対面させることにより、光路の延長化と筐体2の扁平化を可能にしている。なお、CCD10の前方には、第2の反射ミラー8で反射した光をライン型CCD10に適切に入射させるための結像レンズ群12が配置されている。
【0018】
さらに、図2〜図4に示すように、媒体A上に設けられたセキュリティー部分Gの印刷部Sのみの確認をライン型のCCD10によって達成するために、照明手段5,6から出射された光を偏光するための第1の偏光板20が、各照明手段5,6の前方に配置されている。具体的には、各照明手段5,6のLED5b,6bの光出射面を覆うように、第1の偏光板20が各LED5b,6bに貼り付けられている。さらに、照明手段5,6とライン型CCD10との間において第2の偏光板30が配置されている。具体的に、この第2の偏光板30は、結像レンズ群12とCCD10との間でCCD10の前面に貼り付けられている。また、結像レンズ群12の前に第2の偏光板30を配置することも可能である。
【0019】
さらに、図5に示すように、第1の偏光板20は、撮像ラインLに対して略垂直して延在する第1の偏光透過軸20aを有し、図6に示すように、第2の偏光板30は、撮像ラインLに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸30aを有している。この場合、第1の偏光透過軸20aに対して第2の偏光透過軸は、必ずしも直交する必要はなく、85°〜95°の範囲内であれば、初期の目的を達成することができる。
【0020】
次に、画像読取り装置1の動作を簡単に説明する。
図4に示すように、LED5b,6bから出射した白色光は、第1の偏光板20を通過して媒体Aのセキュリティー部分Gに照射される。このとき、第1の偏光板20によってP波がカットされ、S波の光のみがセキュリティー部分Gに照射される。セキュリティー部分Gに光が照射されると、セキュリティー部分GでS波の光(回折光及び正反射光)及び拡散反射光が発生する。この光は、第1及び第2の反射ミラー7,8を介して結像レンズ群12に入射する。
【0021】
そして、結像レンズ群12から出射した光は、第2の偏光板30を通過してライン型CCD10に入射される。このとき、第2の偏光板30によって、S波の光がカットされ、P波の光のみがCCD10に入射して、セキュリティー部分Gの撮像が行われる。なお、セキュリティー部分Gは、搬送ローラ列3により媒体Aを所定の速度で送りながら撮像される。
【0022】
前述した構成の画像読取り装置1では、ホログラムフィルムHの下のカラー印刷部Sを観察するにあたって、ライン状の照明手段5,6の前方に配置した第1の偏光板20と、照明手段5,6とライン型のCCD10との間に配置した第2の偏光板30とが利用されている。この場合、第1の偏光板20の第1の偏光透過軸20aの方向及び第2の偏光板30の第2の偏光透過軸30aの方向を、それぞれ特定することで、極めて鮮明にホログラムフィルムHの下の印刷部Sを鮮明に撮像できることが実験により確かめられている。実験の結果として、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略垂直に延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略平行に延在する第2の偏光透過軸30aを有することで、撮像時にホログラムを消失させることができ、これにより、モニター画面上で印刷部Sの印刷文字や印刷画像パターンなどの確認を確実に行うことができる。
【0023】
画像読取り装置1の実験結果について以下説明する。
【0024】
[比較例1]
図7及び図8に示すように、第1の偏光板20及び第2の偏光板30に関しては、本発明と異なり、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略平行に延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略直交して延在する第2の偏光透過軸30aを有している。このような状況下でセキュリティー部分Gをライン型CCD10によって撮像すると、図7に示すように、モニター画面上において、ホログラムフィルムHのホログラムの部分が透けることなく、印刷部Sが、ホログラムの影響により極めて観察し難くなる。そのことは、「NIPPON 1000」の「N」の文字を拡大して示す図13(a)からも明らかである。また、図8に示すように、撮像結果において、ホログラムフィルムHの周辺の平均濃度が114.8LSBであるのに対し、ホログラムフィルムHの場所での濃度が220LSBであることが分かる。このように、グラフ上でも濃度差が見られ、セキュリティー部分Gの撮像時に、ホログラムの影響が残存していることが分かる。
【0025】
[比較例2]
図9及び図10に示すように、第1の偏光板20及び第2の偏光板30に関しては、本発明と異なり、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略直交して延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して45°の角度をもって延在する第2の偏光透過軸30aを有している。このような状況下でセキュリティー部分Gをライン型CCD10によって撮像すると、図9に示すように、モニター画面上において、ホログラムフィルムHのホログラムの部分が僅かに透けているが、印刷部Sが、ホログラムの影響により観察し難くなる。そのことは、「NIPPON 1000」の「N」の文字を拡大して示す図13(b)からも明らかである。また、図10に示すように、撮像結果において、ホログラムフィルムHの周辺の平均濃度が95.4LSBであるのに対し、ホログラムフィルムHの場所での濃度が175LSBであることが分かる。このように、グラフ上でも濃度差が見られ、セキュリティー部分Gの撮像時に、ホログラムの影響が残存していることが分かる。
【0026】
[実施例]
図11及び図12に示すように、第1の偏光板20及び第2の偏光板30に関しては、第1の偏光板20が、撮像ラインLに対して略直交して延在する第1の偏光透過軸20aを有し、第2の偏光板30が、撮像ラインLに対して略平行に延在する偏光透過軸30aを有している。このような状況下でセキュリティー部分Gをライン型CCD10によって撮像すると、図11に示すように、ホログラムフィルムHのホログラムの部分が完全に透けており、印刷部Sは、ホログラムの影響を受けることなく観察でき、モニター画面上で印刷部Sの印刷文字や印刷画像パターンなどを確実に見付け出すことができる。そのことは、「NIPPON 1000」の「N」の文字を拡大して示す図13(c)からも明らかである。また、図12に示すように、撮像結果において、グラフ上、ホログラムフィルムHの周辺の平均濃度が119.7LSBであり、ホログラムフィルムHの場所での濃度も周辺濃度と同じであるので、セキュリティー部分Gの撮像時に、ホログラムの影響が無くなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】撮像媒体を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る画像読取り装置を示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明に係る画像読取り装置を模式的に示す斜視図である。
【図5】第1の偏光透過軸の向きを示す斜視図である。
【図6】第2の偏光透過軸の向きを示す斜視図である。
【図7】比較例1に係わる画像を示す平面図である。
【図8】比較例1における濃度分布を示すグラフである。
【図9】比較例2に係わる画像を示す平面図である。
【図10】比較例2における濃度分布を示すグラフである。
【図11】本発明に係わる画像読取り装置で撮像した画像を示す平面図である。
【図12】実施形態における濃度分布を示すグラフである。
【図13】実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…画像読取り装置、5,6…照明手段、5a,6a…基板、5b,6b…LED、10…CCD(撮像素子)、20…第1の偏光板、20a…第1の偏光透過軸、30…第2の偏光板、30a…第2の偏光透過軸、A…媒体、S…印刷部、H…ホログラムフィルム、P1…撮像光軸線、L…撮像ライン、α…入射角。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体を撮像するためのライン型撮像素子と、
前記媒体上を通る撮像ラインと平行にライン状に配置された照明手段と、
前記照明手段の前方に配置され、前記照明手段から出射された光を偏光する第1の偏光板と、
前記照明手段と前記ライン型撮像素子との間に配置され、前記媒体で反射した光を偏光する第2の偏光板とを備え、
前記第1の偏光板は、前記撮像ラインに対して略垂直する第1の偏光透過軸を有し、前記第2の偏光板は、前記撮像ラインに対して略平行な第2の偏光透過軸を有することを特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
前記第1の偏光透過軸に対して前記第2の偏光透過軸は85°〜95°の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の画像読取り装置。
【請求項3】
前記照明手段の入射角は、前記撮像ラインを通る撮像光軸線に対して25°〜35°であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像読取り装置。
【請求項4】
前記ホログラムフィルムは、360度の方向からホログラムの観察可能であり、前記印刷部はカラー印刷であり、前記照明手段は、基板上に直線的に配列された白色LEDであることを特徴とする請求項1記載の画像読取り装置。
【請求項1】
印刷部上に透過性のホログラムフィルムが貼られた媒体を撮像するためのライン型撮像素子と、
前記媒体上を通る撮像ラインと平行にライン状に配置された照明手段と、
前記照明手段の前方に配置され、前記照明手段から出射された光を偏光する第1の偏光板と、
前記照明手段と前記ライン型撮像素子との間に配置され、前記媒体で反射した光を偏光する第2の偏光板とを備え、
前記第1の偏光板は、前記撮像ラインに対して略垂直する第1の偏光透過軸を有し、前記第2の偏光板は、前記撮像ラインに対して略平行な第2の偏光透過軸を有することを特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
前記第1の偏光透過軸に対して前記第2の偏光透過軸は85°〜95°の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の画像読取り装置。
【請求項3】
前記照明手段の入射角は、前記撮像ラインを通る撮像光軸線に対して25°〜35°であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像読取り装置。
【請求項4】
前記ホログラムフィルムは、360度の方向からホログラムの観察可能であり、前記印刷部はカラー印刷であり、前記照明手段は、基板上に直線的に配列された白色LEDであることを特徴とする請求項1記載の画像読取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−15835(P2008−15835A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187024(P2006−187024)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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