説明

画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取プログラム

【課題】読取手段の読取面及び基準板を清掃しても、読取手段の読取面及び基準板の少なくとも一方に汚れが存在することが報知され続ける煩わしさを解消する。
【解決手段】開閉扉51A閉動後及び両面ジョブ実行後に紙粉検知処理を実行する。紙粉検知処理では、裏面画像読取部28で基準板46を読み取ることにより出力された読取データと基準データとを比較して、ラインセンサ28Aの読取面及び基準板46の少なくとも一方に紙粉等の汚れが存在するか否か検知するための検知値Dを算出し、閾値Dth1及びDth2と比較する。D<Dth1の場合には、紙粉等の汚れも存在せず、異常も生じていないと判定し、Dth1以上かつDth2以下の場合には、ラインセンサ28A及び基準板46の少なくとも一方に紙粉等の汚れが存在していると判定して、その旨通知し、D>Dth2の場合には、次の両面ジョブ実行前に異常を解消するための初期化処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取部が取得したバックプレートからの反射光に基づく基準データから画像処理部がシェーディングデータを生成し、第1制御部が、シェーディングデータから、画像読取部が取得する白基準データに含まれる各画素値が汚れを含むか否かを判断するための閾値データを算出し、閾値データと白基準データとを比較して各画素値が汚れを含むか否かを判断し、所定領域内の汚れを1つの汚れとし、各汚れを予め設定してある警告回数検出した場合にスピーカから警告メッセージを音声出力する画像読取装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−253964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、読取手段の読取面及び基準板を清掃しても、読取手段の読取面及び基準板の少なくとも一方に汚れが存在することが報知され続けるという煩わしさを解消することができる画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の画像読取装置は、読取位置に対向して固定配置され、該読取位置に搬送された原稿、及び該読取位置に配置された基準板を読み取って、読取情報を出力する読取手段と、前記読取手段で基準板を読み取って出力された読取情報と、予め取得された基準情報とに基づいて、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れが存在するか否かを検知するための検知値を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された検知値が、前記汚れが存在するか否かを判定するための第1閾値以上、かつ前記検知値が異常か否かを判定するための前記第1閾値より大きい第2閾値以下の範囲内の値であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記検知値が前記範囲内の値であると判定された場合に、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れが存在することを報知する報知手段と、を含んで構成されている。
【0006】
また、前記判定手段は、さらに前記検知値が前記第2閾値を超える値であるか否かを判定し、前記判定手段により前記検知値が前記第2閾値を超える値であると判定された場合に、前記検知値の異常を解消するための初期化処理が実行されるように制御する制御手段を含んで構成することができる。
【0007】
また、前記制御手段は、前記判定手段により前記検知値が前記第2閾値を超える値であると判定された場合に、前記初期化処理が実行されるまで、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行わないように制御することができる。
【0008】
また、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方の清掃が行われたと認識された場合に、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行うようにすることができる。
【0009】
また、前記読取手段により前記原稿を読み取った後に、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行うようにすることができる。
【0010】
また、前記読取手段は、前記原稿の両面読取を実行する際に用いられる裏面読取用の読取手段とすることができる。
【0011】
また、前記読取手段により前記原稿の両面読取における裏面読取を実行した後に、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行うようにすることができる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記原稿の両面読取を実行する前に、前記初期化処理を実行するようにすることができる。
【0013】
また、前記報知手段は、前記判定手段により前記検知値が前記第2閾値を超える値であると判定された場合に、異常を報知することができる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、上記の画像読取装置と、前記読取手段により原稿を読み取って出力された読取情報に基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、を含んで構成することができる。
【0015】
また、本発明の画像読取プログラムは、コンピュータを、読取位置に対向して固定配置され、該読取位置に搬送された原稿、及び該読取位置に配置された基準板を読み取って、読取情報を出力する読取手段で基準板を読み取って出力された読取情報と、予め取得された基準情報とに基づいて、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れが存在するか否かを検知するための検知値を算出する算出手段、前記算出手段により算出された検知値が、前記汚れが存在するか否かを判定するための第1閾値以上、かつ前記検知値が異常か否かを判定するための前記第1閾値より大きい第2閾値以下の範囲内の値であるか否かを判定する判定手段、及び前記判定手段により、前記検知値が前記範囲内の値であると判定された場合に、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れ存在することを、報知手段により報知するように制御する報知制御手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、10及び11の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、読取手段の読取面及び基準板を清掃しても、読取手段の読取面及び基準板の少なくとも一方に汚れが存在することが報知され続けるという煩わしさを解消することができる、という効果が得られる。
【0017】
請求項2の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、速やかに異常を解消することができる、という効果が得られる。
【0018】
請求項3の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、検知値が第2閾値を超え続けるという無駄な処理を削減することができる、という効果が得られる。
【0019】
請求項4の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、読取手段の読取面及び基準板の清掃により紙粉等の汚れが除去されたか否かを即座に検知することができる、という効果が得られる。
【0020】
請求項5の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、読取手段の使用後即座に、読取手段の読取面及び基準板の少なくとも一方に紙粉等の汚れが付着したか否かを検知することができる、という効果が得られる。
【0021】
請求項6の発明によれば、原稿の両面読取を行う画像読取装置において、特に紙粉等の汚れの影響を受けやすい裏面読取用の読取手段に本発明を適用して、読取手段の読取面及び基準板を清掃しても、読取手段の読取面及び基準板の少なくとも一方に汚れが存在することが報知され続けるという煩わしさを解消することができる、という効果が得られる。
【0022】
請求項7の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、両面読取の実行により読取手段の読取面及び基準板の少なくとも一方に紙粉等の汚れが付着した場合には、即座にその存在を検知することができる、という効果が得られる。
【0023】
請求項8の発明によれば、異常が解消された状態で両面読取を実行することができる、という効果が得られる。
【0024】
請求項9の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、速やかに異常の有無を把握することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る画像読取装置の全体構成を示す図である。
【図2】画像読取装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】裏面画像読取制御部の詳細を示す図である。
【図4】基準データに対応する曲線と読取データに対応する曲線とを示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係る画像読取装置における画像読取処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係る画像形成装置の概略を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、第1の実施の形態に係る画像読取装置10の全体構成を説明する。
【0028】
同図に示すように、画像読取装置10は、裏面画像読取部28を含む原稿搬送部12(DADF:Dual Auto Document Feeder)と表面画像読取部14とを備えている。
【0029】
原稿搬送部12は、画像が記録された原稿18が置かれる原稿台20と、原稿台20に置かれた原稿18を一枚ずつ取り出す取り出しロール22と、複数の搬送ロール対26を備えた搬送路24と、裏面画像読取部28と、裏面画像読取部28に対向配置された基準板46と、読取処理が終了した原稿が排出される排紙部30とを含んで構成されている。
【0030】
裏面画像読取部28は、原稿18及び基準板46に対して照明光を照射する主走査方向に沿って配列された複数の発光素子を備えた光源28Bと、光源28Bにより照明された原稿18及び基準板46を複数の画素に分割して測光し、画素毎に測光した画素値に応じた読取データを出力するラインセンサ28Aとを含んで構成された固定密着型のイメージセンサである。基準板46は、シェーディング補正や後述する紙粉検知の際にラインセンサ28Aにより読み取られる基準板で、例えば、白色の樹脂板または白色に塗装された金属板等を用いることができる。
【0031】
また、原稿搬送部12全体を覆うカバーの裏面画像読取部28に対応する位置には、開閉扉51Aが設けられている。ユーザが、この開閉扉51Aを開いて、裏面画像読取部28の清掃を行うことができる。また、開閉扉51A近傍には、開閉扉51Aの開閉を検出するための開閉センサ51Bが設けられている。
【0032】
一方、表面画像読取部14は、上面に原稿18を置くことが可能とされている透明なプラテンガラス32を備えており、上記表面読取位置はプラテンガラス32の上面に位置している。表面読取位置におけるプラテンガラス32の下側には、原稿18の表面に向けて照明光を照射する光源34と、原稿18の表面で反射した反射光を受ける第1反射ミラー36、第1反射ミラー36で受けた反射光の進行方向を90°曲げるための第2反射ミラー38、第2反射ミラー38で受けた反射光の進行方向をさらに90°曲げるための第3反射ミラー40とが備えられている。また、表面画像読取部14は、レンズ42と、複数の画素を備えた光電変換部44とを備えており、表面画像読取部14は、第3反射ミラー40で反射された反射光を、レンズ42によって光電変換部44に結像させることで、原稿18の表面を読み取る。
【0033】
このように構成された第1の実施の形態の画像読取装置10によれば、原稿台20に置かれた原稿18は、一枚ずつ取り出しロール22で取り出され、搬送路24へ送られる。搬送路24へ送られた原稿18は、搬送ロール対26によって表面画像読取部14による表面読取位置まで搬送され、表面を表面画像読取部14で読み取られる。その後、原稿18は、表面読取位置よりも搬送方向下流側に設置されている裏面画像読取部28に搬送され、裏面を裏面画像読取部28で読み取られた後、排紙部30に排紙される。
【0034】
なお、第1の実施の形態に係る画像読取装置10は、光源34として蛍光ランプを適用するが、これに限らず、原稿18の搬送方向と交差する方向に沿って配列された複数のLED(Light Emitting Diode)等、他の光源を適用しても良い。
【0035】
また、第1の実施の形態に係る画像読取装置10では、光電変換部44として複数のCCD(Charge Coupled Device)で構成されるCCDラインセンサを適用するが、これに限らず、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子を適用しても良い。
【0036】
また、第1の実施の形態に係る画像読取装置10は、光源34、第1反射ミラー36、第2反射ミラー38、及び第3反射ミラー40が図1の矢印A方向に移動可能とされている。これにより、原稿搬送部12が表面画像読取部14の上方へ開けられ、プラテンガラス32の上面に原稿18が置かれた場合に、光源34から照明光を原稿18に向けて照射しつつ、矢印A方向へ光源34、第1反射ミラー36、第2反射ミラー38、及び第3反射ミラー40を移動させることで、上記原稿18に記録された画像を読み取ることが可能とされている。
【0037】
次に、図2を用いて画像読取装置10のハードウェア構成について説明する。画像読取装置10は、主にコントローラ50、画像読取制御部52、DADF制御部54、裏面画像読取制御部56、及びUI(User Interface)60を含んで構成されている。
【0038】
このうち、コントローラ50は、画像読取装置10全体の制御を行う。また、コントローラ50は、画像読取制御部52及び裏面画像読取制御部56各々から読取データを受信する。また、コントローラ50は、UI60から入力されたユーザの指示等を示す信号を受信する。
【0039】
画像読取制御部52は、この画像読取装置10における画像の読取処理全体を制御するもので、具体的にはDADF制御部54、裏面画像読取制御部56、表面画像読取部14、走査制御部72、及び照明制御部76等の制御を行う。また、画像読取制御部52は、表面ROM(Read Only Memory)68、及び表面NVM(Non Volatile Memory)70にアクセス可能となっている。表面ROM68及び表面NVM70には、原稿の表面を読み取るための各種プログラムやそのときに用いられる各種情報等が記憶されている。
【0040】
なお、走査制御部72は、原稿を読み取る際の走査に関する制御を行うものであり、モーター74の制御も行う。このモーター74は、図1で説明した光源34と各種ミラーを一体的に移動させるモーターである。また、照明制御部76は、光源34を制御するものである。
【0041】
DADF制御部54は、DADFを制御するものであり、上述した取り出しロール22や搬送ロール対26を回転させるための各モーター66を制御する各ローラ制御部64、及び各センサ62からの情報を受信する。この各センサ62として、例えば原稿搬送部12が表面画像読取部14の上方へ開いていないか否か等を検出するセンサや、上述の開閉センサ51Bが挙げられる。
【0042】
裏面画像読取制御部56は、裏面画像読取部28を制御するものである。また、裏面画像読取制御部56は、裏面ROM82、裏面RAM(Random Access Memory)84、裏面NVM86、及び裏面EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)88にアクセス可能となっている。
【0043】
また、裏面ROM82及び裏面NVM86には、には、裏面画像読取制御部56を動作させるためのプログラムや、そのときに用いられる各種情報等が記憶されている。裏面RAM84は、裏面画像読取制御部56が動作する際に使用するメモリである。裏面EEPROM88には、汚れが存在しないラインセンサ28Aにより汚れが存在しない基準板(基準板46とは異なる専用の清浄な白基準板)を測光することで得られた基準データが記憶されている。ここで、「汚れ」とは、紙粉やトナー粉など、ラインセンサ28Aや基準板46に付着することが想定されるあらゆる汚れを含む。なお、ここでは、清浄な白基準板から得られる基準データを用いる場合について説明するが、基準データは、後述の処理において基準板46を読み取って出力される読取データとの比較により、ラインセンサ28A及び基準板46の少なくとも一方に汚れが存在するか否かを判定することができるデータであればよい。
【0044】
また、裏面画像読取制御部56は、図3に示すように、ラインセンサ28Aの読取面及び基準板46に紙粉等の汚れが存在するか否か検知する紙粉検知処理を実行するための検知値算出部96と、判定部98とを含んだ構成で表すことができる。詳細には、検知値算出部96で、裏面画像読取部28で基準板46を読み取ることにより出力された読取データを取得する。また、裏面EEPROM88に記憶された基準データを取得する。これらの読取データと基準データとを比較して、ラインセンサ28Aの読取面及び基準板46に紙粉等の汚れが存在するか否か検知するための検知値Dを算出する。
【0045】
検知値Dは、基準板46を読み取った読取データが、基準データからどの程度ずれているかを示す値である。ここで、検知値Dについて一例を挙げて説明する。図4に、基準データに対応する曲線Q、及び基準板46を読み取った読取データに対応する曲線Rを示す。同図において、横軸は主走査方向の画素の位置を示し、縦軸は画素値(または読取データ及び基準データの画素値に所定の係数を乗算した値)を示す。また、読取データには、紙粉等の汚れの影響を受けた画素値が2つ示されている。この基準データ(曲線Q)及び読取データ(曲線R)各々において、主走査方向の画素位置が同じ画素値の値をそれぞれα、βとし、それらの比β/αを検知値Dとする。
【0046】
読取データが紙粉等の汚れによる影響を受けていない場合には、曲線Qと曲線Rとがほぼ相似していることから、検知値Dは予め定められた範囲内となる。一方、読取データが紙粉等の汚れによる影響を受けた場合には、検知値Dは予め定められた範囲外の値となる可能性が高い。具体的には、読取データが紙粉等の汚れによる影響を受けていない場合には、検知値Dはある値(例えば、1.0)の近傍に分布するが、読取データが紙粉等の汚れによる影響を受けた場合には、検知値Dは、1.0と比較して大きく異なる可能性が高い。このように、検知値Dを用いて紙粉等の汚れの有無を判定することができる。
【0047】
検知値Dを上記のβ/αとした場合の具体的な算出方法について説明する。例えば、ラインメモリに裏面画像読取部28から取得した読取データの画素毎の画素情報(画素値)を記憶する。また、裏面EEPROM88から取得した基準データを、基準データ展開領域に画素毎に展開する。これらの画素毎の読取データ及び基準データ各々に所定の係数を乗算する。所定の係数は、読取データが紙粉等の汚れによる影響を受けていない場合に、β/αの値が1.0となるような係数とする。そして、係数乗算後の読取データと基準データとの比を検知値Dとして算出する。
【0048】
なお、検出値Dの算出方法は上記の方法に限定されず、読取データと基準データとの差、読取データの平均と基準データの平均との比または差、読取データの標準偏差と基準データの標準偏差との比または差などで算出してもよい。
【0049】
判定部98では、検知値算出部96で算出された検知値Dと、閾値Dth1及び閾値Dth2とを比較することにより、紙粉検知の検知結果を出力する。閾値Dth1は、ラインセンサ28Aの読取面及び基準板46の少なくとも一方に紙粉等の汚れが存在するか否かを判定するための閾値である。また、閾値Dth2は、装置の故障や接触不良等の異常により、検知値算出部96で算出された検知値Dが異常な値となっているか否かを判定するための閾値である。異常時の検知値Dは閾値Dth1とは明らかに異なる大きな値をとる。そこで、通常の紙粉等の汚れを検知するための閾値Dth1と、検知値Dが異常により閾値Dth1を超えていることを判定するための閾値であって、閾値Dth1より大きな値である閾値Dth2とを設定しておく。すなわち、検知値Dが閾値Dth1未満であれば、汚れも存在せず、異常も生じていないことを示す。また、検知値Dが閾値Dth1以上、かつ閾値Dth2以下の範囲内の値であれば、通常の紙粉等の汚れが検知されたことを示す。また、検知値Dが閾値Dth2を超えていれば、装置の故障や接触不良等の異常が生じていることを示す。
【0050】
次に、第1の実施の形態の画像読取装置10の作用について説明する。画像読取装置10の電源がオンされることにより、コントローラ50により、図5に示す画像読取処理ルーチンが実行される。
【0051】
ステップ100で、初期化処理を実行する。初期化処理とは、例えば、オートオフセットコントロール(AOC)処理、オートゲインコントロール(AGC)処理、シェーディング(SHD)補正データ採取処理等の処理である。
【0052】
AOC処理では、白基準板を読み取ったときの光電変換部44及びラインセンサ28Aの出力に基づいて、光電変換部44及びラインセンサ28A各々の暗出力のばらつきを調整するためのオフセット調整値(AO値)を演算して、演算したAO値を所定のレジスタに設定する。AGC処理では、白基準板を読み取ったときの光電変換部44及びラインセンサ28Aの出力に基づいて、光電変換部44及びラインセンサ28A各々の出力レベルを調整するためのゲイン調整値(AG値)を演算して、演算したAG値を所定のレジスタに設定する。SHD補正データ採取処理では、白基準板を読み取ったときの光電変換部44及びラインセンサ28Aの出力にオートゲインコントロール及びオートオフセットコントロールを行って、A/D変換したデジタル画像データに基づいて、光電変換部44及びラインセンサ28Aの画素感度の不均一や光量分布の不均一を補正するための1ライン分のシェーディング(SHD)補正値を演算し、演算したSHD補正値を所定の記憶領域に記憶する。
【0053】
次に、ステップ102で、開閉センサ51Bで検出された情報を取得して、裏面画像読取部28に対応した位置の開閉扉51Aが閉動したか否かを判定する。開閉扉51Aが閉動したと判定された場合には、ユーザにより裏面画像読取部28の清掃が行われたとみなして、ステップ104へ移行する。開閉扉51Aの閉動が検出されなかった場合には、ステップ116へ移行する。
【0054】
ステップ104では、初期化処理が完了済みか否かを判定する。後述の処理において初期化処理未完了フラグが立てられている場合には、否定判定されてステップ116へ移行し、初期化処理未完了フラグが立てられていない場合には、肯定判定されてステップ106へ移行する。
【0055】
ステップ106では、紙粉検知処理を実行する。具体的には、裏面画像読取部28で基準板46を読み取ることにより出力された読取データ、及び裏面EEPROM88に記憶された基準データを取得する。そして、これらの読取データと基準データとを比較して、ラインセンサ28Aの読取面及び基準板46に紙粉等の汚れが存在するか否か検知するための検知値Dを算出する。
【0056】
次に、ステップ108で、上記ステップ106で算出した検知値Dが閾値Dth1より小さいか否かを判定する。D<Dth1の場合には、紙粉等の汚れも存在せず、異常も生じていないと判定することができるため、そのままステップ116へ移行する。一方、D≧Dth1の場合には、ステップ110へ移行して、検知値Dが閾値Dth2以下か否かを判定する。D≦Dth2の場合、すなわち検知値Dが閾値Dth1以上、かつ閾値Dth2以下の範囲内の場合には、ラインセンサ28A及び基準板46の少なくとも一方に紙粉等の汚れが存在すると判定して、ステップ112へ移行する。ステップ112では、紙粉等の汚れが検知されたことを通知する。例えば、UI60に、紙粉等の汚れが検知されたため、裏面画像読取部28の清掃を促す旨のメッセージを表示する。一方、D>Dth2の場合には、ステップ114へ移行し、初期化処理が未完了である旨のフラグを立てる。検知値Dが閾値Dth2を超える値であるということは、装置の故障や接触不良等が生じている可能性があることを示しており、このような異常を解消するために後のステップで初期化処理を実行するための処理である。
【0057】
次に、ステップ116では、原稿画像の読み取り(ジョブ)の開始を指示するためのジョブ開始信号を受信したか否かを判定することにより、実行すべきジョブが存在するか否かを判定する。実行すべきジョブが存在する場合には、ステップ118へ移行し、存在しない場合には、ステップ102へ戻る。
【0058】
ステップ118では、上記ステップ116で受信したジョブ開始信号が示すジョブが、原稿の片面(表面)を読み取る片面ジョブか、原稿の両面を読み取る両面ジョブかを判定する。片面ジョブの場合には、ステップ120へ移行して、片面ジョブを実行する。具体的には、原稿を表面画像読取部14による表面読取位置まで搬送し、表面を表面画像読取部14で読み取り、読み取ったデータに対して、設定されたAO値に基づくオートオフセットコントロール、設定されたAG値に基づくオートゲインコントロール、及び記憶されたSHD補正値に基づくシェーディング補正を行う。これらの各処理を行ったデータを読取データとして出力する。そして、原稿を排紙部30に排紙する。片面ジョブが終了すると、ステップ102へ戻る。
【0059】
一方、上記ステップ118で受信したジョブ開始信号が示すジョブが両面ジョブであると判定された場合には、ステップ122へ移行し、初期化処理が完了済みか否かを判定する。初期化処理未完了フラグが立てられていない場合には、肯定判定されてステップ126へ移行する。一方、初期化処理未完了フラグが立てられている場合には、上記ステップ106で算出された検知値Dが閾値Dth2を超えていることを示しており、装置の故障や接触不良等の異常が生じている可能性があるため、ステップ124へ移行し、これらの異常を解消するために初期化処理を実行する。初期化処理が完了したら、初期化処理未完了フラグを消去して、ステップ126へ移行する。
【0060】
ステップ126では、両面ジョブを実行する。具体的には、原稿を表面画像読取部14による表面読取位置まで搬送し、表面を表面画像読取部14で読み取り、読み取ったデータに対して、オートオフセットコントロール、オートゲインコントロール、及びシェーディング補正の各処理を行った表面の読取データを出力する。そして、原稿を裏面画像読取部28による裏面読取位置まで搬送し、裏面を裏面画像読取部28で読み取り、読み取ったデータに対して、上記の各処理を行った裏面の読取データを出力する。そして、原稿を排紙部30に排紙する。
【0061】
次に、ステップ128で、上記ステップ106と同様に、紙粉検知処理を実行し、検知値Dを算出する。次に、ステップ130で、上記ステップ128で算出した検知値Dが閾値Dth1より小さいか否かを判定し、D<Dth1の場合には、そのままステップ102へ戻る。一方、D≧Dth1の場合には、ステップ132へ移行して、検知値Dが閾値Dth2以下か否かを判定する。D≦Dth2の場合には、ステップ134へ移行して、紙粉等の汚れが検知されたことを通知して、ステップ102へ戻る。一方、D>Dth2の場合には、ステップ136へ移行し、初期化処理が未完了である旨のフラグを立てて、ステップ102へ戻る。
【0062】
なお、上記ステップ116で、所定時間以上経過してもジョブ開始指示信号を受信しなかったと判定された場合には、電源オフや省エネモードの処理へ移行するようにしてもよい。
【0063】
また、上記ステップ114及び136では、検知値Dが閾値Dth2を超えたことに基づいて、装置の故障や接触不良等の異常が生じている旨のメッセージを、UI60に表示するようにしてもよい。
【0064】
また、上記ステップ102では、開閉扉51Aの閉動により、裏面画像読取部28が清掃されたとみなす場合について説明したが、裏面画像読取部28の清掃が完了した際にユーザにより選択押下されるボタンをUI60に表示し、このボタンが選択された際に、裏面画像読取部28が清掃されたと判定するようにしてもよい。また、裏面画像読取部28を自動で清掃する機構を設けた場合には、この機構による清掃終了の信号を受信することにより、裏面画像読取部28が清掃されたと判定するようにしてもよい。
【0065】
なお、以上説明した各フローチャートの処理の流れは一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で処理順序を入れ替えたり、新たなステップを追加したり、不要なステップを削除したりすることができる。
【0066】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態の画像読取装置10を備えた画像形成装置11である。
【0067】
図6に示すように、第2の実施の形態の画像形成装置11は、画像読取装置10と、画像形成部80と、用紙給紙部82と、印刷物排紙部84とを含んで構成されている。画像読取装置10の構成は、第1の実施の形態の画像読取装置10の構成と同様である。
【0068】
画像形成部80は、電子写真方式によって原稿画像を用紙に印刷するものであり、無端状の中間転写ベルトと、中間転写ベルトに各色(Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラック)のトナー画像を転写する画像形成ユニットと、画像情報に基づいて変調されたレーザ光で画像形成ユニットの感光体ドラム(後述)を露光することにより感光体ドラム上に静電潜像を形成する光学部とを備えている。
【0069】
画像形成ユニットは、感光体ドラムと、感光体ドラムの表面を一様に帯電する帯電器と、感光体ドラムの表面に光学部によって形成された静電潜像を各色のトナーで現像したトナー画像を形成する現像部と、中間転写ベルトを感光体ドラムに押し付ける転写ローラとを有している。中間転写ベルトは、モータに連結された駆動ローラによって駆動される。
【0070】
また、画像形成部80は、中間転写ベルト上に形成されたトナー画像を用紙給紙部82から給紙された用紙に転写する転写部と、用紙に転写されたトナー画像を用紙上に定着させる定着部と、定着部を通過した用紙を印刷物排紙部84に排出する排出ローラとを備えている。
【0071】
用紙給紙部82は、向き、大きさ、紙質等の異なる用紙をそれぞれ収容する複数の用紙カセットと、各用紙カセットから用紙を取り出し、画像形成部80の転写部へ搬送するための複数のローラとを備える。
【0072】
このように構成された第2の実施の形態の画像形成装置11によれば、画像読取装置10で原稿を読み取って出力された読取データに基づいて、画像形成部80において、用紙給紙部58から給紙された用紙に画像が形成される。
【0073】
なお、第2の実施の形態では、電子写真方式の画像形成部を採用した画像形成装置について説明したが、インクジェット方式の画像形成装置にも、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 画像読取装置
11 画像形成装置
14 表面画像読取部
28 裏面画像読取部
28A ラインセンサ
28B 光源
46 基準板
50 コントローラ
51A 開閉扉
51B 開閉センサ
52 画像読取制御部
56 裏面画像読取制御部
80 画像形成部
96 検知値算出部
98 判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取位置に対向して固定配置され、該読取位置に搬送された原稿、及び該読取位置に配置された基準板を読み取って、読取情報を出力する読取手段と、
前記読取手段で基準板を読み取って出力された読取情報と、予め取得された基準情報とに基づいて、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れが存在するか否かを検知するための検知値を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された検知値が、前記汚れが存在するか否かを判定するための第1閾値以上、かつ前記検知値が異常か否かを判定するための前記第1閾値より大きい第2閾値以下の範囲内の値であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記検知値が前記範囲内の値であると判定された場合に、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れが存在することを報知する報知手段と、
を含む画像読取装置。
【請求項2】
前記判定手段は、さらに前記検知値が前記第2閾値を超える値であるか否かを判定し、
前記判定手段により前記検知値が前記第2閾値を超える値であると判定された場合に、前記検知値の異常を解消するための初期化処理が実行されるように制御する制御手段
を含む請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段により前記検知値が前記第2閾値を超える値であると判定された場合に、前記初期化処理が実行されるまで、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行わないように制御する請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方の清掃が行われたと認識された場合に、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行う請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記読取手段により前記原稿を読み取った後に、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行う請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記読取手段は、前記原稿の両面読取を実行する際に用いられる裏面読取用の読取手段である請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記読取手段により前記原稿の両面読取における裏面読取を実行した後に、前記算出手段による検知値の算出、及び前記判定手段による判定を行う請求項6記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記原稿の両面読取を実行する前に、前記初期化処理を実行する請求項6または請求項7記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記報知手段は、前記判定手段により前記検知値が前記第2閾値を超える値であると判定された場合に、異常を報知する請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の画像読取装置と、
前記読取手段により原稿を読み取って出力された読取情報に基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を含む画像形成装置。
【請求項11】
コンピュータを、
読取位置に対向して固定配置され、該読取位置に搬送された原稿、及び該読取位置に配置された基準板を読み取って、読取情報を出力する読取手段で基準板を読み取って出力された読取情報と、予め取得された基準情報とに基づいて、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れが存在するか否かを検知するための検知値を算出する算出手段、
前記算出手段により算出された検知値が、前記汚れが存在するか否かを判定するための第1閾値以上、かつ前記検知値が異常か否かを判定するための前記第1閾値より大きい第2閾値以下の範囲内の値であるか否かを判定する判定手段、及び
前記判定手段により、前記検知値が前記範囲内の値であると判定された場合に、前記読取手段の読取面及び前記基準板の少なくとも一方に汚れ存在することを、報知手段により報知するように制御する報知制御手段
として機能させるための画像読取プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−70162(P2013−70162A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206118(P2011−206118)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】