説明

画像読取装置

【課題】加熱すると無色化する塗料で描画された部分を含む原稿の読み取りとその塗料で描画された部分の消去とを一連の連続動作で行うことのできる画像読取装置を提供する。
【解決手段】原稿台21にセットされた原稿を読み取り位置Fを経由する搬送経路24で排紙トレイ23へ搬送する自動原稿搬送装置20と、搬送される原稿を読み取り位置Fで光学的に読み取って画像情報を取得する読取部12と、読取部12で原稿を読み取って得た画像情報を記憶する記憶部と、搬送される原稿を読み取り位置Fの下流で、前記塗料が無色化する温度に加熱するための加熱器25とを有し、原稿の読み取りに連動させて加熱器25での加熱消去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を光学的に読み取る画像読取装置に係り、特に、加熱されると無色化する塗料で描画された部分を含む原稿の読み取りに適した画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙資源の有効利用・再利用等の観点から、60℃以上などの高温に加熱されると無色化するインクを使用した筆記具がある。また、加熱されると無色化するインクを使用した記録部および該記録部の手前に配置されてインクを無色化する加熱部を備えたインクジェットプリンタがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−302954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンケート用紙等に記載してもらった個人情報をスキャナで読み取って電子化し、データベース等に保存して管理する場合、電子化後の用紙を適切に処分して個人情報の漏洩を防止することが要請される。かかる場合に、前述した加熱により無色化するインクを使用した筆記具で記入してもらえば、読み取り電子化後の用紙を加熱することで記入部分を消去して個人情報の漏洩を防止することができる。さらに、記入部分のみ消去されれば、未記入のアンケート用紙として再利用することもできる。
【0005】
しかしながら、スキャナで読み取って電子化した後、別の装置で用紙を加熱して消去するようなワークフローでは、読み取り電子化後に消去作業が確実に行われる保証はない。また、読み取って電子化してから消去作業が行われるまでの放置期間が長くなれば、それだけ情報漏洩の可能性が高くなる。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、加熱されると無色化する塗料で描画された部分を含む原稿を読み取って電子化した後、その塗料で描画された部分を速やかに消去することのできる画像読取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]原稿台にセットされた加熱されると無色化する塗料で描画された部分を含む原稿を、所定の読み取り位置を経由する搬送経路で排紙箇所へ搬送する自動原稿搬送装置と、
前記自動原稿搬送装置によって搬送される前記原稿を前記読み取り位置で光学的に読み取って画像情報を取得する読取部と、
前記読取部で前記原稿を読み取って得た画像情報を記憶する記憶部と、
前記搬送経路を通る前記原稿を前記読み取り位置の下流で前記塗料が無色化する温度に加熱するための加熱器と、
を有する
ことを特徴とする画像読取装置。
【0009】
上記発明では、自動原稿搬送装置が原稿を搬送する搬送経路の途中に設けられた読み取り位置より下流に、加熱により無色化する塗料が無色化するように原稿を加熱する加熱器を配置している。これにより、原稿の読み取りと、読み取り直後に前記塗料を無色化させる加熱消去処理とを連動させことができる。
【0010】
[2]前記読取部で前記原稿を読み取る動作に連動させて、前記塗料が無色化するように前記原稿を前記加熱器で加熱する加熱消去処理を行わせる制御部をさらに有する
ことを特徴とする[1]に記載の画像読取装置。
【0011】
上記発明では、原稿の読み取り動作に連動して、加熱により塗料を無色化させる加熱消去処理が行われる。
【0012】
[3]前記加熱消去処理を行わずに原稿の読み取り動作を行う通常読み取りモードと、原稿の読み取り動作に連動させて前記加熱消去処理を行わせる読み取り消去モードの選択を受ける選択部を備え、
前記制御部は、前記選択部を通じて前記読み取り消去モードの選択を受けている場合は、前記自動原稿搬送装置によって搬送される原稿を前記読取部で読み取る動作に連動させて前記加熱消去処理を行わせ、前記選択部を通じて前記通常読み取りモードの選択を受けている場合は、前記自動原稿搬送装置によって搬送される原稿を前記読取部で読み取る動作が行われる際に前記加熱消去処理を停止させる
ことを特徴とする特徴とする[2]に記載の画像読取装置。
【0013】
上記発明では、ユーザは、原稿の読み取り動作に連動させて加熱消去処理を行わせるか否かを選択することができる。
【0014】
[4]前記自動原稿搬送装置は、前記読み取り位置を通過した原稿をその表裏を反転させて前記読み取り位置の上流へ送り込むスイッチバック経路を備え、
前記制御部は、原稿の両面読み取りが行われる場合は、前記原稿の表面の読み取り後に前記スイッチバック経路を経て原稿の裏面の読み取りを行い、かつ裏面読み取り後の原稿に対して前記加熱消去処理を行わせる
ことを特徴とする[2]または[3]に記載の画像読取装置。
【0015】
上記発明では、原稿の両面読み取りを行う場合は、表面および裏面の読み取り後の原稿に対して加熱消去処理を行う。
【0016】
[5]前記搬送経路を通る原稿に接触する紙面接触位置と前記原稿から離隔した紙面非接触位置とに前記加熱器を変位させる変位部を備える
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像読取装置。
【0017】
上記発明では、加熱消去処理が不要な場合は、加熱器を紙面に接触しない紙面非接触位置に退避させることができる。これにより、加熱器の加熱面と紙面との接触による加熱面の劣化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る画像読取装置によれば、加熱されると無色化する塗料で描画された部分を含む原稿を読み取って電子化した後、その塗料で描画された部分を速やかに消去することができ、読み取って電子化してから消去作業が行われるまでの間の放置による情報漏洩が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置としての機能を含む画像形成装置10の構成を示している。画像形成装置10は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得し、その画像データを保存したり外部端末へ送信したりするスキャン機能、原稿を読み取り、かつその読み取りで得た画像データに基づいて原稿の複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、外部端末から受信した印刷データをラスタライズして得た画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能などを備えた、所謂、複合機として構成されている。
【0021】
また、画像形成装置10は、加熱されると無色化する塗料(以後、無色化塗料と呼ぶ。)で描画された部分を含む原稿を読み取る動作に連動させて、読み取り後の原稿を加熱して無色化塗料を無色化させる機能を備えている。
【0022】
画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を統括制御する制御部11に、自動原稿搬送装置20と、読取部12と、通信部13と、画像記憶部14と、操作表示部15と、プリンタ部16とを接続して構成される。制御部11は、図示省略のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリなどを主要部として構成されている。ROMには各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPUが処理を実行することにより画像形成装置10としての各機能が実現される。RAMはCPUがプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリとして使用される。不揮発メモリには、電源がオフしても保存しておくべきユーザ情報や各種の設定情報が記憶される。
【0023】
自動原稿搬送装置20は、原稿台にセットされた原稿を、1枚ずつ分離して繰り出し、所定の読み取り位置を経由する搬送経路を通じて排紙箇所へ搬送する機能を果たす。自動原稿搬送装置20の詳細は後述する。
【0024】
読取部12は、自動原稿搬送装置20によって搬送される原稿を前記読み取り位置で光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。読取部12は、原稿に光を照射し、その反射光を受光することで原稿をその搬送方向(副走査方向)と直行する主走査方向に1ライン分読み取る密着型のラインイメージセンサを備えて構成されており、自動原稿搬送装置20によって原稿を搬送方向(副走査方向)に移動させながら主走査方向へのライン単位の読取動作を繰り返すことで原稿を2次元画像として読み取るようになっている。読取部12は、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換して出力するようになっている。
【0025】
通信部13は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークと接続してネットワーク上の各種装置と通信する機能を果たす。たとえば、読取部12で読み取って得た画像データを外部端末へ送信する場合や外部端末から印刷データを受信する場合に使用される。
【0026】
画像記憶部14は、読取部12で読み取って得た画像データの保存などに使用される不揮発の大容量記憶装置である。ここでは、画像記憶部14は、ハードディスク装置とそのコントローラで構成される。
【0027】
操作表示部15は、各種の操作画面や設定画面、選択画面、案内画面などを表示する機能、およびユーザから各種の操作を受ける機能を果たす。ここでは、表示機能を担う液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)と、該液晶ディスプレイの表面に形成され、押下された座標位置を検出するタッチパネルや、テンキー、スタートボタン、各種操作スイッチなどで構成される。
【0028】
プリンタ部16は、入力される画像データに応じた画像を記録紙に印刷して出力する機能を果たす。プリンタ部16は、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。他の画像形成方式のプリンタであっても構わない。
【0029】
図2は、自動原稿搬送装置20および読取部12を示している。自動原稿搬送装置20は、複数枚の原稿Mを載置可能な原稿台21と、原稿台21に載置された原稿Mを最上のものから1枚ずつ分離して送り出す送り出しローラ22と、送り出しローラ22によって送り出された原稿Mを、読み取り位置Fを経由して排紙トレイ23へ搬送するための通常搬送経路24(図中、破線(小)で示す搬送経路)と、通常搬送経路24を通る原稿を読み取り位置Fの下流の所定位置において無色化塗料が無色化する温度に加熱するための加熱器25とを備えている。
【0030】
通常搬送経路24は、通常搬送経路24に沿って設けられた図示省略の案内壁と、適所に配置されて原稿をその表裏面から挟持する複数組の対をなす搬送ローラ24aと、読み取り位置Fに密着するように原稿をその背面から押圧する密着ローラ24bと、搬送ローラ24aや密着ローラ24bを回転駆動する図示省略の搬送モータなどで構成されている。通常搬送経路24は、原稿台21からその下方の排紙トレイ23へ至る横向きU字状の経路をなしており、読み取り位置FはU字の屈曲部よりやや下流側にあり、読み取り位置Fの部分における通常搬送経路24の案内壁にはスリット24cが設けられている。読取部12は、このスリット24cを通して原稿を読み取る。
【0031】
加熱器25は、通電により発熱する電気式ヒータで構成されている。加熱器25は変位部26に保持され、変位部26は自動原稿搬送装置20の図示省略したベースに固定されている。変位部26は、加熱器25を、その加熱面が通常搬送経路24を通る原稿に接触(ここでは、密着するように押圧)する紙面接触位置(図中の実線で示す位置)と、原稿から加熱面が離隔した紙面非接触位置(図中の一点破線で示す位置)とに加熱器25を変位させる。たとえば、変位部26は、加熱器25を紙面非接触位置へ付勢するバネと、該バネに抗して通電時には加熱器25を紙面接触位置へ変位させるソレノイドなどで構成される。
【0032】
また、自動原稿搬送装置20は、読み取り位置Fを通過した原稿をその表裏を反転させて読み取り位置Fの上流側へ再度送り込むためのスイッチバック経路28(図中の破線(大)で示す経路)を備えている。スイッチバック経路28は、原稿の通路を形成する案内壁と、原稿の進路を切り替えるための切替爪29を備えている。切替爪29は、常時は先端がやや上向きの通常位置(図中、実線で示す位置)となるようにバネで付勢されており、該バネに抗して通電時にはソレノイドにより先端がやや下向きの反転位置(図中、破線で示す位置)にされる。
【0033】
スイッチバック経路28によって原稿の表裏を反転させて読み取り位置Fの上流へ再び送り込む場合には、以下のような制御が制御部11によって行われる。原稿の終端が排紙トレイ23に最も近い搬送ローラ24aであるスイッチバック制御ローラSBを通過する直前のタイミングで切替爪29を反転位置に変位させ、かつスイッチバック制御ローラSBの回転方向を反転させる。これにより、反転したスイッチバック制御ローラSBによって逆向きに搬送される原稿は、反転位置に変位している切替爪29に案内されてスイッチバック経路28を進み、読み取り位置Fより上流の合流位置Gで通常搬送経路24へ再び進入する。このとき原稿の表裏は反転している。その後、スイッチバック経路28を進む原稿の終端が切替爪29を通過し終えたら、切替爪29の向きおよびスイッチバック制御ローラSBの回転方向を通常に戻す制御を行う。
【0034】
なお、原稿台21には、原稿の有無、および載置されている原稿のサイズを検出する原稿センサが設けてある。また、通常搬送経路24やスイッチバック経路28の各所には原稿の有無を検出するセンサが設けてあり、原稿がそのセンサ位置を通過したタイミングの検出や紙つまりを検出するようになっている。たとえば、スイッチバック制御ローラSBの上流近傍に上記センサが設けてあり、このセンサが原稿の終端を検出したタイミングでスイッチバック制御ローラSBを反転させる制御や、スイッチバック制御ローラSBを元の方向の回転に戻す制御、切替爪29の向きを切り替える制御などが行われる。
【0035】
次に、画像形成装置10による原稿の読取動作を説明する。
【0036】
図3は、画像形成装置10の操作表示部15に表示される読取設定画面40の一例を示している。操作表示部15への表示内容は制御部11によって制御される。読取設定画面40には、原稿の表面(おもて面)のみを読み取る片面モードを選択するための片面ボタン41、原稿の表裏両面を読み取る両面モードを選択するための両面ボタン42、無色化塗料の加熱消去処理を行わずに原稿を読み取る通常読み取りモードを選択するための通常読込ボタン43、原稿の読み取りに連動させて無色化塗料の加熱消去処理を行う読み取り消去モードを選択するための読込消去ボタン44などが表示される。
【0037】
このほか、読取設定画面40には、読み取った原稿に対する拡大縮小に関する設定を行うための操作ボタンや、読み取った原稿をコピー機能によって印刷出力する際の記録紙のサイズを選択するための操作ボタンなどが配置されて表示されている。
【0038】
ユーザは、原稿の片面読み取りを行わせる場合は片面ボタン41を、両面原稿の表裏両面を読み取らせる場合には両面ボタン42を選択操作する。また無色化塗料の加熱消去処理を行わずに原稿の読み取りを行わせる場合には通常読込ボタン43を選択し、原稿の読み取りに連動させて無色化塗料の加熱消去処理を行わせたい場合は読込消去ボタン44を選択する。
【0039】
図4は、画像形成装置10が行う原稿読込動作の流れを示している。ユーザが読取設定画面40にて読み取りに関する各種設定操作を行った後、原稿を原稿台21へセットし、図示省略のスタートボタンが操作されると、制御部11は図4に示す原稿読込動作を実行する。
【0040】
制御部11は、読み取りに関する設定操作において、片面モードが選択されているか否かを調べ(ステップS101)、片面モードが選択されている場合は(ステップS101;Yes)、原稿台21にセットされている原稿1枚の表面の読み取りを行う(ステップS102)。詳細には、原稿台21に載置されている1または複数枚の原稿のうちの最上の1枚を送り出しローラ22で繰り出し、通常搬送経路24を通じて排紙トレイ23へ排出する動作を行うと共に、その原稿が読み取り位置Fを通過する際に読取部12にてライン単位の読み取り動作を繰り返し行って2次元画像の画像データを取得し、これを画像記憶部14に保存することを行う。
【0041】
さらに、制御部11は読み取り消去モードと通常読み取りモードのいずれが選択されているかを調べ(ステップS103)、読み取り消去モードが選択されている場合は(ステップS103;Yes)、加熱器25による加熱消去処理を実施する(ステップS104)。加熱消去処理では、加熱器25をその加熱面に接触した原稿が、無色化塗料が無色化する温度に加熱されるように加熱し、原稿に描かれている無色化塗料の部分を無色化(消去)することを行う。
【0042】
加熱器25の加熱時の温度は、消去対象の無色化塗料が無色化する温度と、通常搬送経路24による原稿の搬送速度(原稿上の局所領域が加熱器25の加熱面に接触する時間)とに基づいて設定される。具体的には、搬送されている原稿上の無色化塗料が加熱器25の加熱面を通過する間に確実に無色化される温度に設定される。
【0043】
なお、片面モードでは加熱器25は予め紙面接触位置に移動されている。また、加熱消去処理による消去は、自動原稿搬送装置20によって搬送されている原稿が、読み取り位置Fで読み取られた後にその下流に配置されている加熱器25の加熱面を接触しながら通過する際に行われ、無色化塗料の消去された原稿は排紙トレイ23に排出される。
【0044】
通常読み取りモードが選択されている場合は(ステップS103;No)、加熱消去処理は行わない。すなわち、加熱器25は非加熱の状態に維持され、読み取り位置Fで読み取られた原稿は加熱されずに加熱器を通過して排紙トレイ23へ排出される。なお、通常読み取りモードでは加熱器25を紙面非接触位置に移動するように制御されてもよい。
【0045】
排紙トレイ23への原稿の排出が完了する(もしくは完了直前になる)と、制御部11は原稿台21に設けてある原稿センサの検出結果に基づいて原稿台21に次の原稿が存在するか否かを判別し、次の原稿が存在する場合は(ステップS105;Yes)、ステップS102に戻って処理を継続する。次の原稿が存在しない場合は(ステップS105;N)、処理を終了する。
【0046】
両面モードが選択されている場合は(ステップS101;Yes)、加熱器25を紙面非接触位置に移動させた(図5:ステップS111)後、原稿台21にセットされている原稿1枚の表面(おもて面)の読み取りを行う(ステップS112)。詳細には、制御部11の制御により、原稿台21に載置されている1または複数枚の原稿のうちの最上の1枚意送り出しローラ22で繰り出し、通常搬送経路24を通じてこの原稿を排紙トレイ23に向けて搬送すると共に、その原稿が読み取り位置Fを通過する際に読取部12にてライン単位の読み取り動作を繰り返し行って2次元画像の画像データを取得し、これを画像記憶部14に保存することを行う。
【0047】
そして、該原稿の終端が切替爪29を過ぎてスイッチバック制御ローラSBの直前に到達したら、切替爪29を反転位置に変位させ、かつスイッチバック制御ローラSBの回転方向を反転させ、該原稿をスイッチバック経路28を通じて通常搬送経路24へ、表裏反転された状態で、送り込む。その後、該原稿が通常搬送経路24を通じて排紙トレイ23へ排出される途中でその裏面の画像を読み取り位置Fで読取部12によって読み取り、該読み取りで取得した裏面の画像データを画像記憶部14に保存することを行う。
【0048】
さらに、制御部11は読み取り消去モードと通常読み取りモードのいずれが選択されているかを調べ(ステップS114)、読み取り消去モードが選択されている場合は(ステップS114;Yes)、変位部26によって加熱器25の加熱面を紙面接触位置へ変位させて(ステップS115)加熱器25による加熱消去処理を実施する(ステップS116)。該加熱消去処理による消去は、スイッチバック経路28を経て表裏反転された原稿が読み取り位置Fで読み取られた後、その下流に配置されている加熱器25の加熱面を接触しながら通過する際に行われ、無色化塗料の消去された原稿は排紙トレイ23に排出される。
【0049】
尚、両面モードが選択されている場合において、おもて面の読み取り後に加熱消去処理を行わないのは、読み取り前の裏面に無色化塗料で描画された部分を消去してしまう事を防止するためである。裏面の読み取り後に無色化処理を実施することで、おもて面・裏面の両面に描画された無色化塗料を消去することが可能となっている。
【0050】
通常読み取りモードが選択されている場合は(ステップS114;No)、加熱器25は紙面非接触位置に保持されると共に、加熱消去処理は行われず、読み取り位置Fで裏面を読み取られた原稿はそのまま搬送され、加熱されずに加熱器を通過して排紙トレイ23に排出される。
【0051】
排紙トレイ23への原稿の排出が完了する(もしくは完了直前になる)と、制御部11は原稿台21に設けてある原稿センサの検出結果に基づいて原稿台21に次の原稿が存在するか否かを判別し、次の原稿が存在する場合は(ステップS117;Yes)、ステップS111に戻って処理を継続する。次の原稿が存在しない場合は(ステップS117;N)、処理を終了する。
【0052】
上記の原稿読取処理では、片面、両面いずれにおいても、その原稿に対する最後の読み取りを行って排出する際に、読み取り位置Fの下流に配置されている加熱器25で原稿を加熱する加熱消去処理が行われるようになっている。なお、画像記憶部14に保存された画像データは、通信部13を通じた外部端末への出力や、プリンタ部16での印刷出力に供される。
【0053】
このように、画像形成装置10では、通常搬送経路24における読み取り位置Fの下流に加熱器25を配置備えているので、原稿の読み取りと無色化塗料の加熱消去処理とを一連の連続動作として実行することができる。これにより、無色化塗料で描画された部分を、原稿を読み取って電子化した後、速やかに消去することができ、読み取って電子化されてから加熱消去されるまで長く放置されて情報漏洩の可能性が高まるといったことがなく、高いセキュリティ性を確保することができる。
【0054】
また、原稿の読み取りと加熱消去処理とを一連の連続動作で行うので、スキャナでの読み取り電子化と、加熱消去処理とを別々の装置で行う場合に比べて、ユーザの作業負担や操作負担が少なく利便性が向上すると共に、消去忘れによる情報漏洩も防止される。また、自動原稿搬送装置20により原稿台21から原稿を1枚ずつ順次送り出して自動的に処理するので、大量の原稿を処理する場合でもユーザの作業負担が少なく、かつまた処理時間の短縮を図ることができる。
【0055】
さらに、たとえば、予め作成されたフォーマット用紙に無色化塗料を用いた筆記具により各種情報が記述された原稿を読み取り消去モードにて画像形成装置10で読み取れば、原稿画像を電子化して保存すると同時に無色化塗料による追記内容を消去してその原稿を再利用可能な状態(未記入)のフォーマット用紙に戻すことができ、用紙の再利用を促進することができる。
【0056】
また、加熱消去処理が不要な場合には、加熱器25を紙面非接触位置に退避させるので、加熱面と紙面との接触による加熱面の劣化を抑えることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0058】
たとえば、自動原稿搬送装置20は、スイッチバック経路28や切替爪29を備えず、片面読み取りのみ可能な装置として構成されてもよい。この場合、変位部26を設けず、加熱器25は紙面接触位置に固定的に取り付けられてもよい。
【0059】
実施の形態ではプリンタ部を備えた画像形成装置10を例示したが、本発明は、自動原稿搬送装置20を備え、読取部12による原稿の読み取り動作と加熱器25による加熱消去処理を一連の連続動作として実行可能な画像読取装置としての機能を具備すればよく、プリンタ機能などは必須ではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が有する自動原稿搬送装置の構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の操作表示部に表示される読取設定画面の一例を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像形成装置が行う原稿読込動作を示す流れ図である。
【図5】図4の続きの原稿読込動作を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0061】
10…画像形成装置
11…制御部
12…読取部
13…通信部
14…画像記憶部
15…操作表示部
16…プリンタ部
20…自動原稿搬送装置
21…原稿台
22…送り出しローラ
23…排紙トレイ
24…通常搬送経路
24a…搬送ローラ
24bと…密着ローラ
24c…スリット
25…加熱器
26…変位部
28…スイッチバック経路
29…切替爪
40…読取設定画面
41…片面ボタン
42…両面ボタン
43…通常読込ボタン
44…読込消去ボタン
F…読み取り位置
G…合流位置
M…原稿
SB…スイッチバック制御ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿台にセットされた加熱されると無色化する塗料で描画された部分を含む原稿を、所定の読み取り位置を経由する搬送経路で排紙箇所へ搬送する自動原稿搬送装置と、
前記自動原稿搬送装置によって搬送される前記原稿を前記読み取り位置で光学的に読み取って画像情報を取得する読取部と、
前記読取部で前記原稿を読み取って得た画像情報を記憶する記憶部と、
前記搬送経路を通る前記原稿を前記読み取り位置の下流で前記塗料が無色化する温度に加熱するための加熱器と、
を有する
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記読取部で前記原稿を読み取る動作に連動させて、前記塗料が無色化するように前記原稿を前記加熱器で加熱する加熱消去処理を行わせる制御部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記加熱消去処理を行わずに原稿の読み取り動作を行う通常読み取りモードと、原稿の読み取り動作に連動させて前記加熱消去処理を行わせる読み取り消去モードの選択を受ける選択部を備え、
前記制御部は、前記選択部を通じて前記読み取り消去モードの選択を受けている場合は、前記自動原稿搬送装置によって搬送される原稿を前記読取部で読み取る動作に連動させて前記加熱消去処理を行わせ、前記選択部を通じて前記通常読み取りモードの選択を受けている場合は、前記自動原稿搬送装置によって搬送される原稿を前記読取部で読み取る動作が行われる際に前記加熱消去処理を停止させる
ことを特徴とする特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記自動原稿搬送装置は、前記読み取り位置を通過した原稿をその表裏を反転させて前記読み取り位置の上流へ送り込むスイッチバック経路を備え、
前記制御部は、原稿の両面読み取りが行われる場合は、前記原稿の表面の読み取り後に前記スイッチバック経路を経て原稿の裏面の読み取りを行い、かつ裏面読み取り後の原稿に対して前記加熱消去処理を行わせる
ことを特徴とする請求項2または3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記搬送経路を通る原稿に接触する紙面接触位置と前記原稿から離隔した紙面非接触位置とに前記加熱器を変位させる変位部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−124441(P2010−124441A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298716(P2008−298716)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】