説明

画素表示装置

【課題】映像信号を異なるアスペクト比の表示素子に映す場合にアスペクト比の違いによる映像歪をなくし臨場感のある映像を提供する。
【解決手段】映像信号を復号する復号部101と、復号された映像信号を記憶する第一記憶部102と、アスペクト比を変換した映像信号を記憶する第二記憶部106と、所定の色調の映像データを記憶させて第二記憶部106を初期化させるとともに、表示画面の表示画素数に応じた所定分割数に基づいて、第一記憶部102に記憶された映像信号を所定分割数の領域に分割する制御部104とを備える。制御部104は、領域毎に異なる水平方向および垂直方向の少なくとも一方の拡大倍率が対応付けられた水平垂直方向拡大情報に基づいて、領域毎に第一記憶部102に記憶された映像信号を領域毎に拡大処理し、領域毎に拡大処理された映像信号を分割された領域毎に第二記憶部106の対応する領域毎に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素表示装置に関し、さらに詳しくは、表示画面、すなわち表示素子のアスペクト比の差が大きい場合に、表示素子に映す映像および画角の歪を細かい領域単位で独立して水平方向および垂直方向の拡大率を変更できるようにする画素表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画素表示装置に用いられる映像拡大回路は、入力の映像信号と映像を表示する表示素子とのアスペクト比が異なる場合、映像を表示する表示素子の表示可能領域全てに入力の映像信号が表示できるように、入力の映像信号を伸縮するものであった。
【0003】
ここで、上記従来の画素表示装置における映像の拡大表示の概念について、図10を用いて説明する。図10(a)は、表示素子の水平方向および垂直方向において均等に分割して映像を拡大表示する場合について、説明するための概念図である。一方、図10(b)は、表示素子の水平方向および垂直方向にそれぞれ異なる割合で分割して映像を拡大表示する場合について、説明するための概念図である。
【0004】
従来の画素表示装置では、表示素子に伸張された映像の歪を分かり難くするために、図10(a)、図10(b)に示すように、映像を水平方向に幾つかに分割している。そして、映像を水平方向に分割した各領域の水平拡大率は、水平方向に分割した領域毎に持つことができるような構成としていた。また同様に、映像を垂直方向にも幾つかに分割している。そして、映像を垂直方向に分割した各領域の垂直拡大率は、垂直方向に分割した領域毎に持つことができるような構成としていた。
【0005】
このような構成により、例えば、図10(b)では、水平方向に隣り合わせの領域は、垂直拡大率が同じとなり、垂直方向に隣り合わせの領域は、水平拡大率が同じとなる映像を表示していた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−073154号公報
【特許文献2】特開2002−064760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の構成では、例えば、表示素子のアスペクト比が16:9の場合のように、元映像に対しアスペクト比の差が小さい場合は、映像の歪を最小限とするため映像の違和感が生じ難い。しかし、例えば、表示素子のアスペクト比が30:9の場合のように、元映像に対しアスペクト比の差が大きい場合は、アスペクト比の差による水平方向と垂直方向の拡大率による違いから、映像歪が大きい部分が生じる。したがって、映像歪によって映像に違和感が生じてしまうという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するもので、表示素子のアスペクト比の差が大きい場合に、表示素子に映す映像の拡大率を細かい領域単位で水平方向と垂直方向に独立して変更できるようにしている。そして、表示素子に表示する映像の画角を一部の領域で他の領域より歪ませることにより、その歪の差異によって視聴者が映像に近づく感覚と、映像に包まれたような臨場感を感じる効果とを生むことが可能な画素表示装置を提供することを目的とする。人の眼は歪みに敏感で、映像の広い範囲をとらえようとするとその歪みの影響で、上記したような臨場感を感じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の画素表示装置は、映像信号のアスペクト比を変換して表示する画素表示装置であって、復号部と第一記憶部と第二記憶部と制御部とを備える。復号部は、映像信号を復号する。第一記憶部は、復号された映像信号を記憶する。第二記憶部は、アスペクト比が変換された映像信号を記憶する。制御部は、所定の色調の映像データを記憶させて第二記憶部を初期化させるとともに、表示画面の表示画素数に応じた所定分割数に基づいて、第一記憶部に記憶された映像信号を所定分割数の領域に分割する。そして、制御部は、領域毎に異なる水平方向および垂直方向の少なくとも一方の拡大倍率が対応付けられた水平垂直方向拡大情報に基づいて、第一記憶部に記憶された映像信号を領域毎に拡大処理する。また、制御部は、領域毎に拡大処理された映像信号を第二記憶部の対応する領域毎に記憶させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の画素表示装置によれば、元映像が映し出される画面を、元映像より大きな領域として切り出せるように、周辺の映像を、レンズを透した映像のように歪ませることにより、元映像より横への広がり感や映像中心部分の強調感を得ることができる。その結果、視聴者は、映像によって、立体的な奥行き感、すなわち元映像よりも映像に近づく感覚と映像に包まれたような臨場感とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における画素表示装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】同実施の形態における水平垂直方向拡大情報を説明するための概念図である。
【図3】同実施の形態において映像の拡大表示の一例を説明するための概念図である。
【図4】同実施の形態において映像の拡大表示の一例を説明するための概念図である。
【図5】本発明の実施の形態1における他の例の画素表示装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態1における他の例の画素表示装置に入力された立体視の可能な映像信号が信号処理される手順の一例を示した概念図である。
【図7】本発明の実施の形態1における他の例の画素表示装置に入力された立体視の可能な映像信号が信号処理される手順の他の一例を示した概念図である。
【図8】本発明の実施の形態2における画素表示装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図9】同実施の形態における映像信号のジャンル情報と映像表示の拡大方法の関係を説明するための図である。
【図10】従来の画素表示装置において映像の拡大表示を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における画素表示装置の構成を示す回路ブロック図である。本実施の形態における画素表示装置は、入力された映像信号のアスペクト比を変換して表示する画素表示装置であって、復号部101と第一記憶部102と入力信号検出回路103と制御部104と表示変換回路105と第二記憶部106と映像出力回路107と表示素子108とから構成される。
【0014】
復号部101は、A/D変換回路などから構成され、受信部(図示せず)から入力された映像信号を復号する。第一記憶部102は、フレームメモリから構成され、復号部101で復号された映像信号を記憶する。入力信号検出回路103は、受信部(図示せず)から入力された映像信号の水平同期信号と垂直同期信号から入力された映像信号のライン数を計測する。そして、入力信号検出回路103は、計測したライン数から入力された映像信号の種類を判断する。なお、映像信号の種類は、例えば、480i、1080i、720pなどである。
【0015】
制御部104は、入力信号検出回路103で検出した映像信号の種類から入力された映像信号の画素数を特定する。また、制御部104は、使用する表示素子108の表示画素数を特定する。そして、制御部104は、第一記憶部102に記憶された映像信号を、表示画面の表示画素数に応じた所定分割数の領域に分割する。また、これらの処理の後、制御部104は、特定した映像信号の画素数と特定した表示画素数とを用いて、分割した領域を所定の拡大倍率に応じて、表示変換回路105を制御する。
【0016】
図2は、本実施の形態における水平垂直方向拡大情報を説明するための概念図である。図2(a)は、第一記憶部102に記憶された映像信号を所定分割数の領域に分割した例を示す概念図である。図2(a)の各領域は、入力された映像信号を通常に表示した場合の表示画面の各領域に対応している。また、図2(a)に示した各枠内の数値は、各分割領域を示す番号である。図2(b)は、各分割領域に対応した水平垂直方向拡大情報を示しており、一例として、各分割領域に対応した水平方向拡大倍率および垂直方向拡大倍率を示している。図2(c)は、アスペクト比が変換されて第二記憶部106に記憶された映像信号を所定分割数の領域に分割した状況を示す概念図である。図2(c)の各領域は、分割された表示素子108の表示画面の各領域に対応している。また、図2(c)に示した各枠内の数値は、各分割領域を示す番号である。なお、図2(c)の枠内の数値が示す各領域は、図2(a)の枠内の同じ数値が示す各領域と対応している。なお、図2においては、所定分割数を20の領域に分割した例を示している。これは、説明を分かりやすくするために設定した値であって、所定分割数はこの数値に限るものではない。
【0017】
上記したように、制御部104の制御により、表示変換回路105は、例えば、図2(b)に示す入力された映像信号の領域毎に異なる水平方向および垂直方向の拡大倍率を示す水平垂直方向拡大情報に基づいて、第一記憶部102に記憶された映像信号を、領域毎に拡大処理する。そして、表示変換回路105は、領域毎に拡大処理された映像信号を、第二記憶部106の対応する領域毎に記憶させる。ここで、水平垂直方向拡大情報は、表示画面の表示画素数に応じた所定分割数に基づいて、第一記憶部102に記憶された映像信号を所定分割数の領域に分割した場合に、領域毎に異なる水平方向および垂直方向の少なくとも一方の拡大倍率を示すものである。なお、水平垂直方向拡大情報は、表示画面の表示画素数に応じた所定分割数に基づいて、領域毎に異なる拡大倍率を有するとしたが、必ずしも異なる拡大倍率を有していなくともよい。すなわち、隣り合う領域が同じ拡大率を有していてもよく、画面全体として拡大倍率が連続的に増加または減少するように設定されていればよい。上記については、後で詳細に説明する。
【0018】
制御部104の制御により、第二記憶部106は、水平垂直方向拡大情報に基づいて、表示変換回路105で領域毎に垂直方向に拡大処理され、アスペクト比が変換された映像信号を、第二記憶部106の対応する領域毎に記憶する。映像出力回路107は、1フレームの映像信号が垂直方向に拡大されて第二記憶部106に記憶された時点で、水平垂直方向拡大情報に基づいて、表示素子108の画面にあった映像信号に変換して出力する。表示素子108は、映像出力回路107の出力映像信号を、映像として表示する。
【0019】
このような構成によれば、画素表示装置は、表示素子108の表示画素数に応じた所定分割数に基づいて、第一記憶部102に記憶された映像信号を、制御部104の制御によって、所定分割数の領域に分割する。そして、画素表示装置は、分割した領域から映像を読み出し、第二記憶部106の指定された領域に拡大した映像を書き込むことにより、分割した領域の映像データを、表示素子108の所定位置に水平方向および垂直方向に拡大した映像を表示することができる。
【0020】
さらに、画素表示装置は、制御部104の制御によって、第一記憶部102の別の分割領域に記憶された映像を読み出し、読み出し領域に応じて拡大した映像を書き込む領域を指定し、第二記憶部106に拡大した映像の書き込みを行う。これを分割した全ての領域で行うことにより、表示素子108に、分割した領域毎に異なる拡大率の映像を表示することができる。また、領域毎に異なる拡大率の映像において、映像の開始位置を領域毎に指定ができる。したがって、領域毎の映像と映像の繋ぎ目を少しずつずらすことができる。
【0021】
分割した領域が異なれば、水平方向と垂直方向の拡大率が違うことにより、隣接の領域の拡大率を急激に変えると、領域の境界部分で拡大率の差が生じる。これによって、映像の接合部分の映像に大きなずれが生じる。その結果、全体の映像構成を大きく歪めてしまう。そこで、隣接領域の拡大率を少しずつ変化させることができるように、分割した領域を多く持たせるようにすることで、隣接領域との映像のずれを最小限に抑えることができる。
【0022】
図3は、本実施の形態において映像の拡大表示の一例を説明するための概念図である。図3に示すように、本実施の形態における画素表示装置は、制御部104の制御によって、入力された映像信号の各領域を第二記憶部106の対応する各領域に書き込みをする。この際、制御部104は、領域毎の拡大率を映像の中心から周辺映像の領域にかけて、拡大率を少しずつ小さく変化させる水平垂直方向拡大情報に基づいて、第二記憶部106に書き込みをする。
【0023】
上記した制御部104の制御について、図3を用いて、以下に詳細に説明する。図3には、本実施の形態における制御部104の制御を説明するために、一例として、破線で示す入力された映像信号に基づく映像とその映像信号を拡大処理して実線で示す映像とをイメージ300で概念的に示している。また、図3には、表示素子108の出力する拡大処理された映像330も示している。
【0024】
図3に示すように、入力された映像信号に基づき分割した領域の映像を破線304、305、306、307、308で示している。また、入力された映像信号の各領域を、水平垂直方向拡大情報に基づいて、第二記憶部106の対応する各領域に書き込むことにより得られる映像を実線314、315、316、317、318で示している。映像の中心における領域の映像は、破線304と実線314とで示している。その領域の外側の領域は、破線305と実線315と、破線306と実線316とでそれぞれ示している。さらにその領域の外側の領域は、破線307と実線317と、破線308と実線318とでそれぞれ示している。
【0025】
この例では、映像330の中心における領域ほど、水平垂直方向拡大情報の領域毎の拡大率が大きくなるように設定している。したがって、矢印320、矢印322、矢印324に示すように、視聴者402が表示素子108を見た場合、それぞれの領域の映像が近づいて見える距離は、映像330の中心ほど大きくなる。また、矢印d31、矢印d32、矢印d33に示すように、映像330の中心ほど映像330の対象物は近づいて見える。すなわち、水平垂直方向拡大情報は、入力された映像信号を凸レンズ形状に拡大させる情報である。その結果、入力された映像をその映像の中心から周辺の領域にかけて、領域毎の拡大率を少しずつ小さく変化させることにより、その映像の中心から、凸レンズを透して覗いたような映像330として、表示素子108に映し出すことができる。
【0026】
なお、制御部104の制御によって、表示変換回路105は、表示素子108が出力する映像330を拡大処理する前に、第二記憶部106に映像がない状態である黒映像データを記憶させて、第二記憶部106を初期化させる。このようにすることで、表示変換回路105は、拡大処理によって映像がない領域340を黒映像表示することができる。その結果、映像330において拡大表示された各領域の境界を目立ちにくくすることができる。
【0027】
次に、本実施の形態における制御部104の制御について、図4を用いて、他の一例を説明する。図4には、入力された映像信号に基づき破線で示す映像とその映像信号を拡大処理して実線で示す映像とをイメージ400で概念的に示している。また、図4には、表示素子108の出力する拡大処理された映像430も示している。
【0028】
図4に示すように、入力された映像信号に基づき分割した領域の映像を破線404、405、406、407、408で示している。また、入力された映像信号の各領域を、水平垂直方向拡大情報に基づいて、第二記憶部106の対応する各領域に書き込むことにより得られる映像を実線414、415、416、417、418で示している。映像の中心における領域の映像は、破線404と実線414とで示している。その領域の外側の領域は、破線405と実線415と、破線406と実線416とでそれぞれ示している。さらにその領域の外側の領域は、破線407と実線417と、破線408と実線418とでそれぞれ示している。
【0029】
この例では、映像430の中心における領域ほど、水平垂直方向拡大情報の領域毎の拡大率が小さくなるように設定している。したがって、矢印420、矢印422、矢印424に示すように、視聴者402が表示素子108を見た場合、それぞれの領域の映像が近づいて見える距離は、映像430の中心ほど小さくなる。また、矢印d41、矢印d42、矢印d43に示すように、映像430の中心ほど映像430の対象物は遠のいて見える。すなわち、水平垂直方向拡大情報は、入力された映像信号を凹レンズ形状に拡大させる情報である。その結果、入力された映像信号をその映像の中心から周辺の領域にかけて、領域毎の拡大率を少しずつ大きく変化させることにより、その映像の中心から凹レンズを透して覗いたような映像430として、表示素子108に映し出すことができる。
【0030】
なお、制御部104の制御によって、表示変換回路105は、表示素子108が出力する映像430を拡大処理する前に、第二記憶部106に映像がない状態である黒映像のデータを記憶させて、第二記憶部106を初期化させる。このようにすることで、表示変換回路105は、拡大処理によって映像がない領域440を黒映像表示することができる。その結果、映像430において拡大表示された各領域の境界を目立ちにくくすることができる。
【0031】
なお、入力された映像信号を異なるアスペクト比の表示素子108の画面に合わせるため、指定された領域の水平方向と垂直方向の拡大縮小率は同一ではなくてもよい。すなわち、水平方向と垂直方向の拡大率が異なるレンズを透して、映像を拡大したときのように、同一指定領域の拡大率を水平方向と垂直方向とで異なるように制御をし、水平方向と垂直方向の拡大率の相違による歪が生じた映像を表示素子108に表示してもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、映像の中心とレンズの中心を一致させたときのように、映像の中心から上下左右に映像を拡大または、縮小するように図示して説明をした。しかし、分割した映像の拡大と拡大した映像の位置をずらすこととにより、映像の中心からずれた箇所にレンズの中心を置いた場合のような映像を表示素子108に表示してもよい。
【0033】
また、本実施の形態において、映像分割の領域を垂直方向の分割としたが、水平方向の分割としてもよい。
【0034】
さらにまた、本実施の形態において、映像分割の領域を垂直方向の分割としたが、水平方向と垂直方向とで任意の領域としてもよく、領域の最小単位を映像の画素と等価としてもよい。
【0035】
また、分割の領域を任意に多くした場合に、分割した隣り合わせの領域との水平拡大率と垂直拡大率とが同じになってもよい。
【0036】
また、分割の領域を任意に多くした場合に、連続する領域の拡大率の変化を小さくするために、拡大率の変化が大きく設定される領域群では、領域群の分割数を多くすることが望ましい。すなわち、所定分割数は、隣り合う領域の拡大率の変化量を所定値以下にする分割数に設定することが望ましい。例えば、隣り合う領域の拡大率の変化量の所定値は10%とすればよい。このようにすることにより、拡大表示された映像の連続性をより保つことができるとともに、必要な領域の分割数をできるだけ少なくすることができる。
【0037】
また、映像拡大方法の制御を行う前の初期化として、映像がない状態を黒映像で表示したが、他の所定の色調の映像データとしてもよい。なお、所定の色調は、映像に含まれる背景を構成する色調としてもよい。このようにすることにより、拡大された映像の各領域の境界を目立ちにくくすることができる。
【0038】
また、垂直方向拡大情報を凸レンズのように拡大する場合の例として、図2(b)を用いたが、図2(b)に示した拡大率を任意数値にしてもよいし、凹レンズになるような任意の数値にしてもよい。
【0039】
なお、本実施の形態における画素表示装置は、入力される映像信号として通常の映像信号を取り扱った。しかし、入力される映像信号は、立体視が可能な映像信号であってもよい。図5は、本発明の実施の形態1における他の例の画素表示装置の構成を示す回路ブロック図である。この他の例の画素表示装置は、シャッターメガネ部150をさらに備えている点が本実施の形態における先の画素表示装置と異なる。また、映像信号は、立体視が可能な映像信号であって、左目用映像と右目用映像とを有している。以下の説明では、本実施の形態ですでに説明した画素表示装置の動作については、省略する場合がある。
【0040】
入力信号検出回路152は、上記した映像信号を入力して、左目用映像と右目用映像との切り替えタイミングを示す切り替え信号を制御部154に出力する。
【0041】
制御部154は、上記した切り替え信号に基づいて、シャッターメガネ部150を制御する。
【0042】
シャッターメガネ部150は、制御部154と有線、または無線により接続されている。そして、制御部154は、左目用映像と右目用映像との切り替えに同期してシャッターメガネ部150を制御している。すなわち、視聴者402は左目で左目用映像のみを見るとともに、右目で右目用映像のみを見るように、制御部154がシャッターメガネ部150を制御して、左目用映像と右目用映像とを切り替えている。そのためにシャッターメガネ部150は、左目用のシャッターと右目用のシャッターとを備えている。これらのシャッターは、左目用映像と右目用映像との切り替えに同期して、制御部154の制御により、切り替えられる。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態1における他の例の画素表示装置に入力された立体視の可能な映像信号が信号処理される手順の一例を示した概念図である。図6に示すように、画素表示装置の復号部101に入力される立体視の可能な映像信号は、左目用映像600と右目用映像602とである。これらの左目用映像600と右目用映像602とは、例えば、フィールドシケンシャル方式で送信されている。すなわち、左目用映像600と右目用映像602とは、同一の対象物を2台のカメラで、異なる位置から撮影された映像である。そして、これらの映像は、時間的に交互に送信されている。
【0044】
これらの左目用映像600と右目用映像602とを視聴者402がシャッターメガネ部150を透さずに見た場合、視聴者402は左目用映像600と右目用映像602とが重ね合わされたような映像604を認識することになる。
【0045】
一方、左目用映像600と右目用映像602とを視聴者402がシャッターメガネ部150を透して見た場合、例えば、円形の対象物608は左目用映像600と右目用映像602とにおいて、位置がずれているため、視聴者402には近づいて認識され、表示素子108の画面から飛び出しているように感じられる。また、円形の対象物610は対象物608よりさらに、左目用映像600と右目用映像602とにおいて、ずれが大きいため、視聴者402にはさらに近づいて認識される。円形の対象物612は、左目用映像600と右目用映像602とにおいて、ずれがないため、視覚的に変化は認識されない。このような映像の送信方法とシャッターメガネ部150とにより、映像の立体視化が可能となる。
【0046】
上記したような立体視が可能な映像信号を、本実施の形態における他の例の画素表示装置に入力すると、例えば、表示素子108には画面の中央部ほど拡大処理された映像606が出力される。この映像606の下段には、分割された各領域の拡大比率を一例として示している。この例では、映像の中心の領域620は、拡大比率が1.5倍である。その両側の領域622、624は、拡大比率が1.2倍である。また、映像の左右の端の領域626、628は、拡大比率が1.0倍である。
【0047】
このような条件においては、映像の中心の領域620の対象物616は、拡大比率が1.5倍と大きく拡大されている。その結果、対象物616は、上述した映像604における円形の対象物610よりも、さらに表示素子108の画面から飛び出しているように感じられる。
【0048】
一方、映像の端の領域626の対象物614は、拡大比率が1.0倍であって、拡大されていない。したがって、対象物614は、立体視されて表示素子108の画面から飛び出しているように感じられるものの、対象物616ほどには表示素子108の画面から飛び出しているように感じられない。
【0049】
また、映像の領域624の対象物618は、拡大比率が1.2倍と拡大されている。しかしながら、対象物618には、左目用映像600と右目用映像602とにおいて、ずれがないため、表示素子108の画面から飛び出しているようには感じられない。
【0050】
なお、制御部104の制御によって、表示変換回路105は、表示素子108が出力する映像を拡大処理する前に、第二記憶部106に映像がない状態である黒映像データを記憶させて、第二記憶部106を初期化させる。このようにすることで、表示変換回路105は、拡大処理によって映像がない領域630を黒映像表示することができる。その結果、映像606において拡大表示された各領域の境界を目立ちにくくすることができる。
【0051】
図7は、本発明の実施の形態1における他の例の画素表示装置に入力された立体視の可能な映像信号が信号処理される手順の他の一例を示した概念図である。図7に示すように、画素表示装置の復号部101に入力される立体視の可能な映像信号は、左目用映像700と右目用映像702とである。これらの左目用映像700と右目用映像702とは、例えば、フィールドシケンシャル方式で送信されている。これらの左目用映像700と右目用映像702とを視聴者402がシャッターメガネ部150を透さずに見た場合、視聴者402は左目用映像700と右目用映像702とが重ねあわされたような映像704を認識することになる。
【0052】
一方、左目用映像700と右目用映像702とを視聴者402がシャッターメガネ部150を透して見た場合、例えば、円形の対象物708は左目用映像700と右目用映像702とにおいて、位置がずれているため、視聴者402には近づいて認識され、表示素子108の画面から飛び出しているように感じられる。また、円形の対象物710は対象物708よりさらに、左目用映像700と右目用映像702とにおいて、ずれが大きいため、視聴者402にはさらに近づいて認識される。円形の対象物712は、左目用映像700と右目用映像702とにおいて、ずれがないため、視覚的に変化は認識されない。このような映像の送信方法とシャッターメガネ部150とにより、映像の立体視化が可能となる。
【0053】
上記したような立体視が可能な映像信号を、本実施の形態における他の例の画素表示装置に入力すると、例えば、表示素子108には画面の左右の端ほど、拡大処理された映像706が出力される。映像706の下段には、分割された各領域の拡大比率を一例として示している。この例では、映像の中心の領域720は、拡大比率が1.0倍である。その両側の領域722、724は、拡大比率が1.2倍である。また、映像の左右の端の領域726、728は、拡大比率が1.5倍である。
【0054】
このような条件においては、映像の端の領域726の対象物714は、拡大比率が1.5倍と拡大されている。その結果、対象物716は、上述した映像704における円形の対象物710よりも、さらに表示素子108の画面から飛び出しているように感じられる。
【0055】
また、映像の領域724の対象物718は、拡大比率が1.2倍と拡大されている。しかしながら、対象物718には、左目用映像700と右目用映像702とにおいて、ずれがないため、表示素子108の画面から飛び出しているようには感じられない。
【0056】
一方、映像の中心の領域720の対象物716は、拡大比率が1.0倍であって、拡大されていない。したがって、対象物714は、立体視されて表示素子108の画面から飛び出しているように感じられるものの、対象物714ほどには、表示素子108の画面から飛び出しているように感じられない。
【0057】
なお、制御部104の制御によって、表示変換回路105は、表示素子108が出力する映像を拡大処理する前に、第二記憶部106に映像がない状態である黒映像データを記憶させて、第二記憶部106を初期化させる。このようにすることで、表示変換回路105は、拡大処理によって映像がない領域730を黒映像表示することができる。その結果、映像706において拡大表示された各領域の境界を目立ちにくくすることができる。
【0058】
また、映像拡大方法の制御を行う前の初期化として、映像がない状態を黒映像で表示したが、他の所定の色調の映像データとしてもよい。なお、所定の色調は、映像に含まれる背景を構成する色調としてもよい。さらに、所定の色調は、特定の単一色としてもよい。このようにすることにより、拡大された映像の各領域の境界を目立ちにくくすることができる。
【0059】
上記したように、本実施の形態における他の例の画素表示装置は、立体視の可能な左目用映像と右目用映像とからなる映像信号を入力するとともに、制御部により、左目用映像と右目用映像との切り替えに同期して左目用のシャッターと右目用のシャッターとが制御されるシャッターメガネ部をさらに備えている。その結果、画素表示装置は、立体視の可能な映像信号に対して、さらに立体感を際立たせるとともに、臨場感のある映像を提供することができる。
【0060】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における画素表示装置の構成を示す回路ブロック図である。本実施の形態における画素表示装置は、復号部101と第一記憶部102と入力信号検出回路103と入力ジャンル判断部501と制御部502と表示変換回路105と第二記憶部106と映像出力回路107と、表示素子108とから構成される。本実施の形態における画素表示装置が、実施の形態1と異なる点は、入力ジャンル判断部501を備えていることである。図8において、実施の形態1における画素表示装置の構成を示す図1と同じ構成要素については、同じ符号を用い、説明を省略する。
【0061】
入力ジャンル判断部501は、入力された映像信号の視聴番組のジャンルを判断する。放送または通信により、入力ジャンル判断部501は、入力された映像信号のジャンル情報を取得する。そして、取得したジャンル情報に基づいて、ジャンルを判断する処理を実行する。そして、入力ジャンル判断部501は、判断したジャンル情報を制御部502に伝達する。そして、制御部502は、入力ジャンル判断部501の出力信号に応じて、映像信号に対応する水平垂直方向拡大情報を決定する。なお、ジャンル情報とは、例えば、音楽、映画、ニュースなどのジャンルの種別を示す情報である。
【0062】
制御部502は、実施の形態1で詳述した制御部104の機能に加え、映像信号のジャンル情報に応じた映像表示の拡大方法を対応付ける機能を有する。この機能は、例えば、図9に示すように、制御部502は、映像信号のジャンルに応じて、映像表示の拡大方法を対応付ける。そして、制御部502は、この対応関係に基づいて、水平垂直方向拡大情報を決定する。
【0063】
このような構成によれば、入力ジャンル判断部501は、TV放送の視聴映像のジャンルを判断する場合に、放送または通信によって取得した、例えば、電子番組表データ(EPG(Electronic Program Guide))の視聴番組情報から、映像信号のジャンルを判断する。
【0064】
そして、制御部502は、入力ジャンル判断部501の視聴映像のジャンルに応じて、例えば、映像信号のジャンルが音楽の場合は、図3で示したように、凸レンズを透して見た映像のような映像表示となるように、表示変換回路105の制御を行う。何故なら、映像信号のジャンルが音楽の場合は、楽器演奏シーンが多いので、演奏者を映像の中心とした映像が多く、視聴者402は、演奏者がより近くに感じることが好みであると想定される。したがって、制御部502は、表示映像を映像の中心が拡大するように、表示変換回路105を制御することが望ましい。
【0065】
また、例えば、映像信号のジャンルがニュースの場合も、凸レンズを透して見た映像のような映像表示となるように、表示変換回路105の制御を行ってもよい。
【0066】
一方、例えば、映像信号のジャンルが映画の場合は、制御部502は、図4で示したように、凹レンズを透した映像となるように、表示変換回路105の制御を行う。何故なら、映像信号のジャンルが映画の場合は、視聴者402が映像を体験するように感じることが好みであると想定される。したがって、制御部502は、表示映像に包まれるように感じる映像になるように、映像の周辺が拡大するように、表示変換回路105を制御することが望ましい。
【0067】
このように、制御部502は、入力ジャンル判断部501での判断結果に基づいて、視聴映像のジャンルに応じて的確な映像表示が行えるように、映像の表示方法を切り替えることができる。
【0068】
なお、映像表示の拡大方法として、映像信号のジャンルが音楽の場合は、図3に示したように、凸レンズを透して見た映像のように映像表示し、ジャンルが映画の場合は、図4に示したように、凹レンズを透して見た映像のように映像表示するとした。しかしながら、視聴者402の選択により、映像信号のジャンルが音楽の場合は、凹レンズを透して見た映像のように映像表示するようにし、ジャンルが映画の場合は、凸レンズを透して見た映像のように映像表示してもよい。さらに、視聴者402の選択により、映像のジャンルによって、拡大表示画面の種類を任意のものに関連付けしてもよい。なお、視聴者402の選択は、例えば、リモコン(図示せず)により、容易に行うことができる。
【0069】
また、TV以外の映像ジャンルの種類を判断する方法として、映像の画素情報から、映像の上下に黒帯がある映像で、所定の規定以上の映像領域となるような横長の映像を、映画のジャンルと判断してもよい。ここで、所定の規定は、例えば、アスペクト比で16:9でもよい。また、映像の画素情報から、映像周辺部分と中央部分の輝度を比較して、規定の輝度差がある場合は、映像の中央部分のスポットライトがあると判断し、音楽のジャンルと判断するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明による画素表示装置は、表示する映像と表示素子とのアスペクト比が異なる場合において、表示素子の映像を歪ませることにより、映像歪によって映像に近づく感覚と、映像に包まれたような臨場感を得る映像を提供することが可能になるので、通常のTV放送とは異なるアスペクト比を持つ表示素子のディスプレイ表示装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0071】
101 復号部
102 第一記憶部
103 入力信号検出回路
104 制御部
105 表示変換回路
106 第二記憶部
107 映像出力回路
108 表示素子
150 シャッターメガネ部
152 入力信号検出回路
154 制御部
501 入力ジャンル判断部
502 制御部
600 左目用映像
602 右目用映像
700 左目用映像
702 右目用映像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号のアスペクト比を変換して表示する画素表示装置であって、
前記映像信号を復号する復号部と、
復号された前記映像信号を記憶する第一記憶部と、
アスペクト比が変換された前記映像信号を記憶する第二記憶部と、
所定の色調の映像データを記憶させて前記第二記憶部を初期化させるとともに、
表示画面の表示画素数に応じた所定分割数に基づいて、前記第一記憶部に記憶された前記映像信号を所定分割数の領域に分割し
前記領域毎に異なる水平方向および垂直方向の少なくとも一方の拡大倍率が対応付けられた水平垂直方向拡大情報に基づいて、前記第一記憶部に記憶された前記映像信号を前記領域毎に拡大処理し
前記領域毎に拡大処理された前記映像信号を、前記第二記憶部の対応する領域毎に記憶させる
制御部と、
を備える画素表示装置。
【請求項2】
前記映像信号のジャンルを判断する入力ジャンル判断部をさらに備え、
前記制御部は、前記入力ジャンル判断部の出力信号に応じて、前記映像信号に対応する前記水平垂直方向拡大情報を決定する
請求項1に記載の画素表示装置。
【請求項3】
前記映像信号は、立体視の可能な映像信号であって、左目用映像と右目用映像とを有し、
前記制御部により、右目用映像と右目用映像との切り替えに同期して制御されるシャッターメガネ部をさらに備える
請求項1に記載の画素表示装置。
【請求項4】
前記水平垂直方向拡大情報は、前記映像信号を凸レンズ形状または凹レンズ形状に拡大させる情報である請求項1に記載の画素表示装置。
【請求項5】
前記所定の色調の映像データは、特定の単一色の映像データである請求項1に記載の画素表示装置。
【請求項6】
前記所定分割数は、隣り合う領域の拡大率の変化量を所定値以下にする分割数に設定する請求項1に記載の画素表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−157989(P2010−157989A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216641(P2009−216641)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】