説明

畜肉細断方法、細断畜肉、畜肉加工食品、及びミンチプレート

【課題】肉粒感、弾力、歯応え及びジューシー感に優れた畜肉加工食品、並びに、該畜肉加工食品に用いることのできる細断畜肉、畜肉細断方法及びミンチプレートの提供。
【解決手段】径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレートを備えたミンチ機を用いて、畜肉から、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得る畜肉細断方法;前記細断方法において、ミンチプレートは、径の小さい押出孔がミンチプレートの外側に配設されたものであることが好ましい;前記ミンチプレートは、少なくとも、直径2〜4mmの押出孔と、直径4〜10mmの押出孔とを有することが好ましい;前記畜肉細断方法を用いて製造される細断畜肉;前記細断畜肉を用いて製造される畜肉加工食品;径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉粒感、弾力、歯応え、及びジューシー感に優れた畜肉加工食品、並びに、該畜肉加工食品に用いることのできる細断畜肉、畜肉細断方法、及びミンチプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉加工食品は、通常、主原料である畜肉を細断した後、野菜、パン粉、調味料等の副原料と混和して練り、得られた混練生地を成型した後、鉄板、オーブン、フライヤー、蒸し器等で加熱することにより製造される。該畜肉加工食品の中でも、特にハンバーグやミートボールは、子供から大人まで多くの人々に好まれる食品であり、業務用の惣菜、特に冷凍食品として、工業的に量産されている。
工業生産における畜肉の細断は、一般に、ミンチ機(ミンサー、チョッパー)を用いて畜肉塊を細断することにより行われる。現在汎用されているミンチ機は、投入された畜肉が、ミンチプレートへ搬送され、回転刃が該ミンチプレートの片面に当接して摺回動することにより、ミンチプレートに穿設された複数の押出孔から細断された畜肉が排出されるものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年、共稼ぎ世帯や一人世帯の増加という生活スタイルの変化に伴い、家庭内での調理の手間を省略し、より簡便に喫食することが可能な半調理済み食材、惣菜、冷凍食品等が好まれ、広く流通するようになってきている。同時に、これら半調理済み食材、惣菜、冷凍食品等に対し、その味や質感に対する要求が高まってきている。例えば、ハンバーグに対しては、畜肉の存在感である肉粒感や弾力(歯応え)、畜肉を細断し、混練することにより生じるジューシー感や香味等が求められている。
【0004】
味や質感に優れた畜肉加工食品を製造する方法として、種々の方法が開示されている。
例えば、特許文献2には、1cm角以上の大きさの肉塊を混合し、成形して凍結した後、所望の大きさに切断して個々のハンバーグ類を製造することを特徴とするハンバーグ類の製造方法が開示されており、該製造方法によれば肉本来の味が損なわれず、また、歯応えのあるハンバーグ類が得られると記載されている。
特許文献3には、ブロック状の肉を裁断して収縮率が異なる少なくとも2以上の形状の肉塊とする肉塊裁断工程と、未加熱の該肉塊の形状を保持したままミキサーに投入する肉塊投入工程と、2以上の形状の肉塊を均一に混合するミキシング工程と、所定の形状に成形する成形工程とを具備する食肉加工品の製造方法が開示されている。該方法において、2以上の形状の肉塊としては、短冊状肉塊と、扁平状肉塊とが挙げられている。そして、該製造方法によれば、異種の肉塊をミキシングすることにより、長短の肉繊維が混在し、通常よりもふっくらした食肉加工品が得られると記載されている。
また、特許文献4には、9〜11mm目のチョッパー(ミンチ機)で処理したチラシ肉と、3〜5mm目のチョッパー(ミンチ機)で処理した挽肉とを配合した具材を用いる中華まんの製造方法が開示されており、該製造方法によれば、ジューシー感を呈する中華まんが得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−299198号公報
【特許文献2】特開昭59−21373号公報
【特許文献3】特開2001−238642号公報
【特許文献4】特許第3797602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示された方法では、1cm角以上と比較的大きな肉塊を用いることで歯応えは得られるものの、肉塊が大きいため、挽肉を用いた場合の肉の結着により得られる弾力や、細断した肉から生じるジューシー感が得られないという問題がある。また、特許文献1記載の方法では、比較的大きな肉塊と、調味料とをなじませるため、1〜2日間肉塊の調味料への浸漬を行った上、成形後さらに十数時間凍結させるなど、製造に多くの時間を必要とするため、工業上実用的でない。
また、上記特許文献3〜4に開示された方法では、短冊状肉塊と、扁平状肉塊とを得るため、又は、9〜11mm目のチラシ肉と3〜5mm目の挽肉とを得るため、異なる細断機またはミンチ機を用いて畜肉を細断する必要があり、製造効率が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、肉粒感、弾力、歯応え、及びジューシー感に優れた畜肉加工食品、並びに、該畜肉加工食品に用いることのできる細断畜肉、畜肉細断方法及びミンチプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレートを備えたミンチ機を用いて畜肉を細断することにより、肉粒感、弾力、歯応え、及びジューシー感に優れた畜肉加工食品を、効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有す畜肉加工食品の細断方法、細断畜肉、畜肉加工食品、及びミンチプレートを提供するものである。
(1)径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレートを備えたミンチ機を用いて、畜肉から、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得ることを特徴とする畜肉細断方法。
(2)前記ミンチプレートは、径の小さい押出孔がミンチプレートの外側に配設されたものである(1)の畜肉細断方法。
(3)前記ミンチプレートは、少なくとも、直径2〜4mmの押出孔と、直径4〜10mmの押出孔とを有する(1)又は(2)の畜肉細断方法。
(4)(1)〜(3)いずれかの畜肉細断方法を用いて製造される細断畜肉。
(5)(4)の細断畜肉を用いて製造される畜肉加工食品。
(6)径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレート。
(7)径の小さい押出孔がミンチプレートの外側に配設されたものである(6)のミンチプレート。
(8)少なくとも、直径2〜4mmの押出孔と、直径4〜10mmの押出孔とを有する(6)又は(7)のミンチプレート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の畜肉細断方法によれば、本発明に係るミンチプレートを用いることで、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得ることができ、効率的に細断処理を行うことができる。
また、得られた2種以上の径を有する細断畜肉を用いることにより、肉粒感、弾力、歯応え、及びジューシー感に優れた畜肉加工食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】直径3.2mmの押出孔と、直径4.7mmの押出孔とが、開口部面積比50:50で設けられたミンチプレートAの概略図である。
【図2】直径3.2mmの押出孔と、直径4.7mmの押出孔とが、開口部面積比40:60で設けられたミンチプレートBの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《畜肉細断方法》
本発明の畜肉細断方法では、径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレートを備えたミンチ機を用いて、畜肉から、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得る。
本発明において、畜肉としては、通常食用に用いられる畜肉であれば、特に限定されるものではなく、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉、山羊肉等のいずれであってもよい。なかでも、入手が容易であり、かつ嗜好性が高いことから、牛肉、豚肉、鶏肉であることが好ましい。また、畜肉は、複数種類をあわせて細断してもよい。例えば、得られる細断畜肉の用途がハンバーグである場合には、牛肉と豚肉とをミンチ機に投入し、合い挽きの細断畜肉とすることが好ましい。
畜肉は、予めミンチ機に投入可能な大きさに切断されていることが好ましい。また、畜肉を細断する際には、畜肉のみならず、植物性タンパク質、動物性タンパク質、調味料等のその他の副原料を畜肉と共にミンチ機に投入し、細断処理を行ってもよい。
【0013】
本発明において、ミンチプレートとは、畜肉をミンチ状に細断するミンチ機に備えられるものを意味する。ミンチプレートは、該ミンチプレートの有する押出孔を通って、該ミンチプレートの一方の面から他方の面へと畜肉が押出されることにより、畜肉を該押出孔の径に細断及び成形する機能を有するものである。
ミンチプレートの大きさ、形状は特に限定されるものではなく、該ミンチプレートを備えるミンチ機の規格にあわせて適宜決定することができる。
【0014】
本発明におけるミンチプレートは、径の異なる2種以上の押出孔を有する。
本発明では、ミンチプレートが径の異なる2種以上の押出孔を有することにより、一台のミンチ機を用いて一度の細断処理を行うのみで、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得ることができ、畜肉細断処理効率を向上することができる。そして、かかるミンチプレートを用いて得られた細断畜肉を用いれば、細断畜肉の径が2種以上存在することにより、大きな細断畜肉由来の肉粒感、弾力及び歯応えと、小さな細断畜肉由来のジューシー感、並びに小さな細断畜肉が密に結着することに由来する弾力とを有する畜肉加工食品を得ることができる。
さらに、上記のような構成とすることにより、二台以上のミンチ機を用いて2種以上の径を有する細断畜肉を別個に製造した場合とは異なり、得られた2種以上の径を有する細断畜肉を混ぜ合わせる手間を省くことができ、2種以上の径を有する細断畜肉をより均一に存在させることができる。
【0015】
押出孔の形状は、特に限定されるものではなく、目的とする細断畜肉の品質や質感、用いる畜肉の種類に応じて適宜決定することができる。形状として具体的には、円形、楕円形、正方形、長方形等が挙げられ、中でも一般的に用いられる円形であることが好ましい。また、2種以上の押出孔は、それぞれ異なる形状を有していてもよく、同一の形状を有していてもよい。
2種以上の押出孔の大きさは、該2種以上の押出孔の大きさが相違していれば、特に限定されるものではなく、目的とする細断畜肉の品質や質感、用いる畜肉の種類に応じて適宜決定することができる。具体的には、直径、長径又は長辺が2〜4mmの押出孔と直径、長径又は長辺が4〜10mmの押出孔との2種以上が存在することが好ましく、直径、長径又は長辺が3〜4mmの押出孔と直径、長径又は長辺が4〜6mmの押出孔とが存在することがより好ましい。また、例えば、牛肉と豚肉との合い挽き肉(牛:豚=約5〜8:約5〜2)を用いてハンバーグを製造する際には、直径、長径又は長辺が2〜4mmの押出孔と直径、長径又は長辺が4〜6mmの押出孔との2種以上が存在することが好ましく、直径、長径又は長辺が3〜4mmの押出孔と直径、長径又は長辺が4〜5mmの押出孔とが存在することがより好ましい。上記大きさの押出孔を用いることにより、該細断畜肉を用いた畜肉加工食品を、肉粒感、弾力、歯応え、及びジューシー感に特に優れるものとすることができる。
2種以上の押出孔の配設割合は、特に限定されるものではなく、目的とする細断畜肉の質感に応じて適宜決定することができる。例えば、肉粒感、弾力、歯応え、及びジューシー感のバランスのとれたハンバーグを製造する場合、直径、長径又は長辺が2〜4mmの押出孔と直径、長径又は長辺が4〜10mmの押出孔との2種を、押出孔の開口部の面積比が、2〜4mm:4〜10mm=30:70〜60:40となるように設けることが好ましく、2〜4mm:4〜10mm=35:65〜55:45となるように設けることがより好ましい。
【0016】
押出孔のミンチプレートにおける配置は、好適に畜肉が押出されるものであれば特に限定されるものではないが、通常、ミンチプレートは円形であるため、該円形のミンチプレート内に、半径を異にする複数の同心円に沿って押出孔が等間隔で配置されることが好ましい。
また、通常のミンチ機では、ミンチプレートの中心から外側へと放射線状に配置された回転刃が、ミンチプレートの片面に当接して摺回動することにより、ミンチプレートに設けられた複数の押出孔から細断された畜肉が排出される。そのため、該ミンチプレートにおいて、押出孔からの押出圧力は、ミンチプレートの中心部よりも外側が高くなる。そのため、2種以上の押出孔のうち、径の小さいもの、つまり、押出によりエネルギーを要するものをミンチプレートの外側に配設し、径の大きい押出孔をミンチプレートの中心側に配設することが好ましい。このような構成とすることにより、径の小さい押出孔からも好適に細断畜肉を押出させることができるため、2種以上の径を有する細断畜肉をより好適に得ることができる。
【0017】
本発明の畜肉細断方法で用いることのできるミンチプレートを、図面を用いてより具体的に示す。
図1は、直径3.2mmの押出孔と、直径4.7mmの押出孔とが、開口部面積比3.2mm:4.7mm=50:50で設けられた直径220mmのミンチプレート(以下、「ミンチプレートA」という。)の模式図である。
図2は、直径3.2mmの押出孔と、直径4.7mmの押出孔とが、開口部面積比3.2mm:4.7mm=40:60で設けられた直径220mmのミンチプレート(以下、「ミンチプレートB」という。)の模式図である。
図1〜2のミンチプレートA、Bは、回転刃等を挿通支持するために中心部に設けられた軸受孔と、細断畜肉とは別に骨や筋等の異物を排出するために該軸受孔の周囲に設けられた異物排出孔とを有する。
なお、本発明のミンチプレートは、図1、2のミンチプレートに限定されるものではない。
【0018】
本発明において、ミンチ機は上述したミンチプレートを備えるものであれば特に限定されるものではなく、通常畜肉のミンチ状細断に用いられるものを使用することができる。例えば、上記特許文献1に示されるような、回転駆動することにより、投入された畜肉塊をミンチプレートへと搬送するスクリューコンベアと、ミンチプレートの片面に当接して、スクリューコンベアと連動して摺回動する回転刃と、ミンチプレートとを有するものを用いることができる。
【0019】
《細断畜肉》
本発明の細断畜肉は、上記畜肉細断方法を用いて製造されるものであって、2種以上の径を有する細断畜肉が、均一に分散して存在し得るものである。このような細断畜肉を用いた場合、該細断畜肉(及びその他の野菜等の副原料)を混練する際に、2種以上の径を有する細断畜肉が均一に混和され、より均一且つ良好な風味を有する畜肉加工食品を得ることができる。
【0020】
《畜肉加工食品》
本発明において、畜肉加工食品とは、上記した細断畜肉を主原料とし、必要に応じて副原料と混和して練り、得られた混練生地を成型した後、加熱処理することによって得られる食品を意味する。該畜肉加工食品しては、例えば、ハンバーグ、肉団子、餃子や中華まんの餡等が挙げられる。
【0021】
副原料としては、たまねぎ、人参等の野菜類;卵、牛乳、チーズ等の乳製品;塩、胡椒、醤油等の調味料;ナツメグ、バジル等のハーブ類;パン粉、小麦粉等が挙げられる。
細断畜肉(及び副原料)を混和して混練生地を得る方法は、特に限定されるものではなく、通常、畜肉加工食品を製造する場合に行われる方法により行うことができる。例えば、畜肉原料と副原料とを混合槽に添加して、市販のニーダー等を用いて混練することにより行うことができる。また、原料の組成や配合、混練時間等は、目的とする畜肉加工食品の質感、品質等を考慮して適宜決定することができる。
上記のようにして得られた混練生地を、手作業又は機械により所望の形状に成形した後、加熱処理することにより、畜肉加工食品が得られる。
加熱処理の方法としては、鉄板やオーブン等を用いて焼成する方法、フライヤー等を用いて揚げる方法、スチーマー等を用いて蒸す方法、電子レンジ等を用いて加熱する方法等が挙げられる。これらの方法は、適宜組み合わせてもよい。例えば、畜肉加工食品が焼き目付きハンバーグの場合、まず、鉄板で焼成することにより、成型物の表面に焼き目を付けた後、オーブンで焼成し、さらにスチーマーで蒸して、成型物の中心温度が65℃以上、好ましくは70〜80℃程度の規定の温度となるように加熱することにより、焼き目付きハンバーグ製造することができる。
【0022】
上記のようにして製造された畜肉加工食品は、すぐに食卓に供されてもよく;冷凍又は冷蔵保存し、その後マイクロ波調理等の二次調理を施した後に食卓に供されてもよく;常温で保存された後に食卓に供されてもよい。
冷凍又は冷蔵の方法は特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば冷凍保存の場合、エアーブラスト式凍結法、セミエアーブラスト式凍結法、コンタクト式凍結法等の凍結法に基づくフリーザーを用いて畜肉加工食品を凍結した後に、−18℃以下で保存する方法や、液化窒素や液化炭酸を噴霧して畜肉加工食品を凍結した後に、−18℃以下で保存する方法を用いることができる。
【0023】
《ミンチプレート》
本発明のミンチプレートは、上記畜肉細断方法において説明したミンチプレートと同様である。本発明のミンチプレートによれば、従来のミンチ機に適用することで、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得ることができる。そのため、従来のように、2種以上の径を有する細断畜肉を得ることを目的として、ミンチ機を複数台併用する必要がなく、或いは、ミンチ機のミンチプレートを付け替えて細断処理を複数回する必要もなく、非常に効率的に畜肉細断作業を行うことが可能となる。
【実施例】
【0024】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
[実施例1〜2]
本発明のミンチプレートを用いた場合に、2種以上の径を有する細断畜肉が得られることを確認した。
牛肉27.2kgを、ミンチプレートを有するミンチ機(「Mince Maker G219」、テラモト・エンジニアリング社製)を用いて細断処理し、挽肉を製造した。ミンチプレートとして、実施例1では、前記ミンチプレートA(図1)を用い、実施例2では前記ミンチプレートB(図2)を用いた。得られた挽肉のうち、約2kgを径で分類し、その割合を調べた結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
上記の結果、本発明のミンチプレートを用いた場合、2種以上の径を有する細断畜肉が同時に得られることが確認できた。
【0028】
[実施例3・比較例1]
畜肉加工食品における細断畜肉径の影響について、冷凍ハンバーグを製造して検討した。
まず、表2に示す質量部の、解凍した後ブロックにカットされた牛肉及び豚肉を、ミンチプレートを有するミンチ機(「Mince Maker G219」、テラモト・エンジニアリング社製)を用いて細断処理し、合い挽き肉を得た。なお、実施例3では、前記ミンチプレートAを用い、比較例1では、直径3.2mmの押出孔のみを有するミンチプレートを用いた。
得られた合い挽き肉中の異物の有無を、金属探知機を用いて確認した後、合い挽き肉と表2に示す副原料とをニーダー(「2軸パドルミキサー、408−0500A、テーケーシー社製」)を用いて5〜10分間混合し、ハンバーグ生地を得た。該ハンバーグ生地を、成型機を用いて、1個あたり155〜170gの扁平楕円状に成型した。
その後、180〜220℃の鉄板上で、該成型物の扁平上下両面をそれぞれ約50秒間加熱し、焼き目をつけた後、230℃のオーブンにて3分20秒加熱し、その後、さらに98℃の蒸し器にて4分30秒間蒸すことにより、ハンバーグを得た。該ハンバーグを、−30〜−25℃に設定された急速凍結庫にて凍結し、真空パックを用いて包装した後、−18℃で冷凍保存して冷凍ハンバーグを得た。
4週間冷凍保存した冷凍ハンバーグを、100℃の沸騰水中で15分間加熱した後、官能試験を行った。実施例3の結果を表3に、比較例1の結果を表4に示す。
【0029】
なお、本実施例において、官能試験は、食品開発に携わる技術者7人が、5を良好、1を不良とする5段階で評価を行った。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
上記の結果から、本発明のミンチプレートを用いた実施例3のハンバーグは、肉粒感、弾力・歯応え、ジューシー感、香味及び総合評価の全てにおいて、比較例1のハンバーグよりも優れていた。
なかでも、実施例3において、肉粒感と弾力・歯応えの評価が向上しているのは、比較例1のハンバーグよりも大きな細断畜肉(φ4.7mm)が混合されたことに起因すると考えられる。また、実施例3のハンバーグの製造工程は、従来品である比較例1のハンバーグと全く同一であり、煩雑な作業等は生じなかった。
【0034】
[実施例4〜5・比較例2]
畜肉加工食品における細断畜肉径の影響、及び径の異なる細断畜肉の混合の影響について、冷凍ハンバーグを製造して検討した。
まず、上記表2に示す質量部の、解凍した後ブロックにカットされた牛肉及び豚肉、並びにゼラチンを、ミンチプレートを有するミンチ機(「Mince Maker G219」、テラモト・エンジニアリング社製)を用いて細断処理し、合い挽き肉を得た。なお、実施例4では、前記ミンチプレートAを用い、実施例5では前記ミンチプレートBを用いた。また、比較例2では、直径3.2mmの押出孔のみを有するミンチプレートを用いて細断処理された合い挽き肉と、直径4.7mmの押出孔のみを有するミンチプレートを用いて細断処理された合い挽き肉とを、等量で混ぜ合わせた合い挽き肉を用いた。
得られた合い挽き肉を用いて、上記実施例3と同様にして冷凍ハンバーグを得た。
4週間冷凍保存した冷凍ハンバーグを、100℃の沸騰水中で15分間加熱した後、上記実施例3と同様の評価基準で、5人のパネラーにより官能試験を行った。実施例4の結果を表5に、実施例5の結果を表6に、比較例2の結果を表7にそれぞれ示す。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
上記の結果から、本発明のミンチプレートを用いた実施例4〜5のハンバーグは、比較例2のハンバーグに比べて、肉粒感、弾力・歯応え、ジューシー感、香味及び総合評価において優れていた。
比較例2のハンバーグは、ミンチ機の最初の細断を行った後、ミンチプレートを変更して再度細断を行った上、それら細断畜肉を十分に混合するという煩雑な作業を行って、φ3.2mmの細断畜肉と、φ4.7mmの細断畜肉とが半量ずつ存在するように製造したが、結果として実施例4〜5に比べて劣る評価となった。この理由は定かではないが、比較例2において特に弾力・歯応え、及びジューシー感の評価が劣ることから、この結果は生地混練時の練り効率が悪いことに起因すると考えられる。実施例4〜5では、細断直後から2種の径の細断畜肉が混在しているが、比較例2では、細断後に2種の径の細断畜肉を混合するため、混練効率が低く、ハンバーグ内で肉組織が十分に結合せず、結果として内部に油分と水分とを保持できないため、弾力・歯応え、及びジューシー感に劣ったと推察される。
【0039】
また、実施例4と5とを比較すると、実施例5は大きい細断畜肉(φ4.7mm)の割合が高いため、肉粒感及び弾力・歯応えが向上するが、その一方で肉粒感が強すぎるため、総合評価に劣る上、ジューシー感も実施例4に比して低いものとなっている。これは、小さい細断畜肉(φ3.2mm)が一定量以上存在することで、混練時に小さい細断畜肉がより効果的に結着し、水分及び油分をハンバーグ内に留める働きをするためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の畜肉細断方法は、食品製造分野で好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレートを備えたミンチ機を用いて、畜肉から、2種以上の径を有する細断畜肉を同時に得ることを特徴とする畜肉細断方法。
【請求項2】
前記ミンチプレートは、径の小さい押出孔がミンチプレートの外側に配設されたものである請求項1に記載の畜肉細断方法。
【請求項3】
前記ミンチプレートは、少なくとも、直径2〜4mmの押出孔と、直径4〜10mmの押出孔とを有する請求項1又は2に記載の畜肉細断方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の畜肉細断方法を用いて製造される細断畜肉。
【請求項5】
請求項4に記載の細断畜肉を用いて製造される畜肉加工食品。
【請求項6】
径の異なる2種以上の押出孔を有するミンチプレート。
【請求項7】
径の小さい押出孔がミンチプレートの外側に配設されたものである請求項6に記載のミンチプレート。
【請求項8】
少なくとも、直径2〜4mmの押出孔と、直径4〜10mmの押出孔とを有する請求項6又は7に記載のミンチプレート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−90600(P2012−90600A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242415(P2010−242415)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000140650)テーブルマーク株式会社 (55)
【Fターム(参考)】