異形差筋アンカーとその製造法
【課題】
引張り力と剪断力の対抗強度に富む異形差筋アンカーを提供する。
【解決手段】
一定長さL1のコンクリート補強用異形棒鋼Bと、その異形棒鋼Bと同種の金属素材から、基端側を上記異形棒鋼Bへの差し込み口筒部13とし、先端側を拡開口筒部14として、その両口筒部13,14の内径d1,d2が相違する段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、拡開用割り溝17が付与された上記拡開口筒部14内へ、その拡開用コーン18を部分的に圧入セットした一定長さL2のアンカースリーブAとから成り、そのアンカースリーブAの差し込み口筒部13を上記異形棒鋼Bの先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向から1点づつの少なくとも合計2点を各別に抵抗溶接した。
引張り力と剪断力の対抗強度に富む異形差筋アンカーを提供する。
【解決手段】
一定長さL1のコンクリート補強用異形棒鋼Bと、その異形棒鋼Bと同種の金属素材から、基端側を上記異形棒鋼Bへの差し込み口筒部13とし、先端側を拡開口筒部14として、その両口筒部13,14の内径d1,d2が相違する段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、拡開用割り溝17が付与された上記拡開口筒部14内へ、その拡開用コーン18を部分的に圧入セットした一定長さL2のアンカースリーブAとから成り、そのアンカースリーブAの差し込み口筒部13を上記異形棒鋼Bの先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向から1点づつの少なくとも合計2点を各別に抵抗溶接した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートのブロック塀建造工事や間仕切り工事、鉄筋出し土木工事などに使用される異形差筋アンカーと、その製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種異形差筋アンカーとその製造法について、本出願人は既に特許第2841189号と特許第2911036号を提案した。
【0003】
前者の特許第2841189号発明では、アンカースリーブ(S)の差し込み口筒部(13)を異形鉄筋(I)の先端部へ差し込み套嵌させてかしめ付けることにより、その異形鉄筋(I)の両縦節(11)を結ぶ直径線(O−O)とほぼ平行な2辺面(a)(b)を備えた全体的な断面正偶数多角形に造形し、且つその断面正偶数多角形に造形した差し込み口筒部(13)の平行な2辺面(a)(b)を、上記異形鉄筋(I)における横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所での部分連続的にかしめ付けることにより、そのかしめ付け部分を上記横節(12)へ係止する滑り止めキー(24)(25)として機能させるようになっている。
【0004】
他方、後者の特許第2911036号発明ではアンカースリーブ(S)の基端部と異形鉄筋(I)の先端部とを摩擦圧接機(F)の使用により、その溶け出しバリ(23)の外径寸法(D3)がアンカースリーブ(S)の外径寸法(D2)以内にとどまるよう摩擦圧接している。
【特許文献1】特許第2841189号公報
【特許文献2】特許第2911036号公報
【特許文献3】特公平7−88660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許第2841189号発明はあくまでもアンカースリーブ(S)の差し込み口筒部(13)だけを、物理的に塑性変形させるかしめ付け方法であるため、その断面正偶数多角形の平行な2辺面(a)(b)を引き続き異形鉄筋(I)における横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所でのスポット的なかしめ付けにより、その横節(12)へ係止し得る滑り止めキー(24)(25)として機能させたとしても、横節(12)の高さが例えばD16の異形鉄筋(I)では、約0.7〜1.4mmであるに過ぎないことを考慮すると、その隣り合う相互間隙を上記スポット的なかしめ付けによって、隅々まで完全に埋め尽くし一体化することは困難であり、抜けないまでも、未だ軸線方向への相対的な滑り移動や径方向への振れ動き、その他のガタツキを生ずるおそれがある。
【0006】
又、異形差筋アンカーの製造法として、向かい合う一対のかしめ加工金型(20)(21)から張り出すかしめ凸子(22)(23)により、異形鉄筋(I)における横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所を決め押すようになっているが、異形鉄筋(I)の先端部をカットする位置如何によって、そのアンカースリーブ(S)内の境界段部(15)から横節(12)までの距離が区々相違し、その横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所を、アンカースリーブ(S)の外部から正確に見定めることはできないため、そのかしめ付け状態の安定した高品質な異形差筋アンカーを容易に製造することも不可能である。
【0007】
この点、特許第2911036号発明の場合上記のような特別のかしめ加工金型(20)(21)を用意する必要がなく、摩擦圧接機(F)を使用できる利点があると言えるが、あくまでもアンカースリーブ(S)の基端部と異形鉄筋(I)の先端部とを、突き合わせ状態のもとに摩擦圧接する方法であり、アンカースリーブ(S)を異形鉄筋(I)へ差し込み套嵌させていないため、引張り力や剪断力に弱く、異形差筋アンカーの使用状態に不安感を与える。
【0008】
又、アンカースリーブ(S)と異形鉄筋(I)との完全な固相接合状態を得るためには、未だ分単位の長時間を要し、これを短縮すべく、回転速度や加圧力を高めると、溶け出しバリ(23)が大きく張り出すことになる結果、その溶け出しバリ(23)の爾後的な除去作業や、アンカースリーブ(S)又は異形鉄筋(I)に対する特別の予備加工を行なう必要があり、未だ効率良く安価に量産することもできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では一定長さのコンクリート補強用異形棒鋼と、
【0010】
その異形棒鋼と同種の金属素材から、基端側を上記異形棒鋼への差し込み口筒部とし、先端側を拡開口筒部として、その両口筒部の内径が相違する段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、その拡開用コーンを部分的に圧入セットした一定長さのアンカースリーブとから成り、
【0011】
そのアンカースリーブの差し込み口筒部を上記異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向から1点づつの少なくとも合計2点を各別に抵抗溶接したことを特徴とする。
【0012】
請求項1に従属する請求項2では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向からの1点と、これと一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする。
【0013】
又、請求項1に従属する請求項3では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
【0014】
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置における同じ求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする。
【0015】
同じく請求項1に従属する請求項4では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
【0016】
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置にあって、しかも上記求心方向と一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする。
【0017】
更に、請求項1、2、3又は4に従属する請求項5では、少なくとも合計2点のうちの1点を、異形棒鋼のリブと対応合致する位置に抵抗溶接したことを特徴とする。
【0018】
同じく請求項1、2、3、4又は5に従属する請求項6では、少なくとも合計2点を異形棒鋼とその先端部へ差し込み口筒部が差し込み套嵌されたアンカースリーブとの同芯円に対して、全体的な放射対称分布型となる位置に抵抗溶接したことを特徴とする。
【0019】
他方、上記異形差筋アンカーの製造法として、請求項7では丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
【0020】
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の截頭円錐型上側電極治具と、これよりも広大な平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する上側電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その求心方向から各別な1点づつの少なくとも合計2点において溶着一体化することを特徴とする。
【0021】
更に、同じく製造法の請求項8では丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
【0022】
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の平盤型上側電極治具と、これと同じ平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する両電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その向かい合う一対づつの少なくとも合計2点において一挙同時に溶着一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の上記構成によれば、アンカースリーブが異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌された状態にあり、少なくとも合計2点において抵抗溶接されているため、冒頭に述べた両公知発明の諸問題を悉く解決することができ、そのアンカースリーブと異形棒鋼とが軸線方向へ相対的に滑り移動しないことは勿論、径方向への振れ動きやその他のガタツキを生ずるおそれもなく、引張り力と剪断力との対抗強度に優れた異形差筋アンカーを得られる効果がある。
【0024】
その場合、請求項2、3又は4に記載の構成を採用するならば、その抵抗溶接された少なくとも合計2点が、一定角度だけ交叉する指向性又は/及び軸線方向への一定距離だけ隔たる位置にある関係上、異形差筋アンカーとしての上記対抗強度がますます向上し、このような効果は請求項6の構成によっても達成され、太い製品において特に有効となる。
【0025】
又、請求項5の構成を採用するならば、異形棒鋼のリブはその基底円周面から突出する円弧状の節と異なり、軸線方向に沿い延在する言わば直線形態として、その頂部の実質的な平坦面をなしているため、抵抗溶接機における電極治具の加圧平面と安定裡に密着しやすく、その電極加圧力と溶接電流を効果的に集中させることができ、優れた引張強度と安定な溶接品質の異形差筋アンカーを得られる効果がある。
【0026】
他方、請求項7に記載の製造法では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、これを抵抗溶接機の截頭円錐型上側電極治具と、同じく平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、上記差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、そのプロジェクション部分へ集中する上側電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その求心方向から1点づつの少なくとも合計2点において、各別に溶着一体化するようになっているため、その被溶接物としての厚みに大差があり、溶接電流値(熱容量)のアンバランスな異形棒鋼とアンカースリーブから成るも、特別のプロジェクションを打ち出し加工する必要なく、その接合面を瞬時に安定良く溶着一体化することができ、優れた異形差筋アンカーを製造し得る効果がある。
【0027】
殊更、請求項8の製造法によれば、溶接電流値(熱容量)が互いにバランスする平盤型電極治具の上下一対を、抵抗溶接機へ取り付け使用して、上記アンカースリーブの差し込み口筒部と異形棒鋼の基底円周面との接合面をその両電極治具での同時1回打ちにより、向かい合う2点において一挙に溶着一体化することができ、その後異形差筋アンカーを一定角度だけ回動させるか、又は/及び軸線方向に沿い一定距離だけ移動させて、同様に向かい合う2点を一挙同時に溶着一体化することも可能であるため、その異形差筋アンカーの量産効果がますます向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基いて本発明を詳述すると、その異形差筋アンカーの第1実施形態を示した図1〜5において、(B)は一定長さ(L1)(例えば約427mm)にカットされたコンクリート補強用の異形棒鋼(例えばSD295A)であり、JSI規格の呼び名:D10のそれとして、約10mmの直径(D1)とその基底円周面(10)から約0.6mmの一定高さ(H1)だけ各々突出するリブ(11)並びに節(12)を具備している。
【0029】
この点、図例では軸線方向に沿って延在するリブ(11)の向かい合う一対と、その相互間に一定ピッチ(P)(約6.5mm)を保って交叉する多数の節(12)とが、所謂千鳥配列形態にある異形棒鋼(B)を示しているが、その千鳥配列形態に代る格子配列形態などとして交叉することもある。
【0030】
他方、(A)は一定長さ(L2)(例えば約40mm)と外径(D2)(例えば約14mm)を備えた円筒型のアンカースリーブであるが、その基端側の一定深さ(G1)(例えば約17mm)分は上記異形棒鋼(B)への比較的薄肉(例えば約1.7mmの厚み)な差し込み口筒部(13)として、又先端側の残余深さ分は比較的厚肉(例えば約2.88mmの厚み)な拡開口筒部(14)として、その両口筒(13)(14)の内径(d1)(d2)が相違する段付き穴形態(連通開口形態)に造形されている。
【0031】
つまり、上記差し込み口筒部(13)の内径(d1)(例えば約10.6mm)が拡開口筒部(14)の内径(d2)(例えば約8.25mm)よりも大きな寸法として、異形棒鋼(B)の先端部へ差し込み套嵌された時、その両口筒部(13)(14)内の境界段部(15)が図4のように、上記異形棒鋼(B)の先端面と係止し、ストッパーとして機能し得るようになっている。
【0032】
但し、その異形棒鋼(B)の先端面に係止するストッパーとなる限り、上記アンカースリーブ(A)を図1と対応する図6の変形実施形態から明白なように、その差し込み口筒部(13)と拡開口筒部(14)とが境界壁部(15a)を介して仕切り区分された盲形態に造形してもさしつかえない。その他の構成は図1のアンカースリーブ(A)と実質的に同じである。
【0033】
その場合、図1、6の何れのアンカースリーブ(A)にあっても、先に例示した数値から確認できるように、その差し込み口筒部(13)の一定深さ(G1)はこれを異形棒鋼(B)における節(12)の少なくとも2ピッチ分(図例では約2.6ピッチ分)として、その異形棒鋼(B)への可及的に深く差し込み套嵌できるように寸法化し、アンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)との相対的な振れ動きを防止することが好ましい。
【0034】
(16)は上記厚肉な拡開口筒部(14)における先端側の外周面に賦形された多数の波状又は鋸歯状凹周溝であり、異形差筋アンカーとしての使用時にコンクリート面(C)へ喰い付き、そのアンカー効果を昂める。
【0035】
又、(17)は同じくアンカースリーブ(A)の厚肉な拡開口筒部(14)へ、その先端側から一定深さ(G2)(例えば約19mm)だけ切り込まれた拡開用割り溝であり、図例のような十文字型や一文字型、その他の放射対称型に分布している。
【0036】
このようなアンカースリーブ(A)は上記異形棒鋼(B)と同種金属の丸鋼素材(例えばSWRCH8〜10)から、段階的な冷間鍛造やその他の塑性加工によって容易に量産することができ、その最終工程において上記拡開用割り溝(17)の切削加工を行なえば良い。
【0037】
更に、(18)は上記アンカースリーブ(A)と同じ鋼塊(SWRCH8〜10)から、一定長さ(L3)(例えば約23mm)の截頭円錐型をなす拡開用コーンであるが、その細い(例えば約7.5mmの直径)基端側は円柱状の圧入部(19)として、アンカースリーブ(A)の上記拡開口筒部(14)内へ脱落不能に圧入セットされている。その圧入部(19)の外周面には脱落防止のため、軸線方向への平行な凹凸条(図示省略)が賦形されてもいる。
【0038】
そして、その拡開用コーン(18)の残る太い(例えば約11mmの直径)先端側は、上記拡開口筒部(14)から一定長さ(L4)(例えば約14.6mm)だけ張り出すセット状態にあり、これを拡開口筒部(14)内へ強制的に没入させる如く、アンカースリーブ(A)を相対的に進出移動させた時、そのアンカースリーブ(A)の上記割り溝(17)を備えた拡開口筒部(14)が、拡開用コーン(18)の楔作用により先端側から拡開して、コンクリート面(C)へ強固に喰い付く結果となる。
【0039】
上記のようなアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とを組み合わせ使用して、本発明の異形差筋アンカーを製造するに当っては、異形棒鋼(B)の先端部へアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、その境界段部(15)又は境界壁部(15a)が異形棒鋼(B)の先端面と係止する規制状態に差し込み套嵌させた後、任意な求心方向(F1)(F2)(F3)から1点(S1)(S2)(S3)づつ各別に抵抗溶接することにより、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、少なくとも合計2点(S1)(S2)(S3)において溶着一体化するのである。(N1)(N2)(N3)はその接合面の少なくとも合計2個所へ、各別に形成された安定なナゲット(溶融金属の凝固跡)を示している。
【0040】
即ち、図7はそのための単相交流式抵抗溶接機(W)を例示しており、これに取り付けられた上側電極治具(20)と下側電極治具(21)との相互間へ、予じめ異形棒鋼(B)の先端部へ差し込み套嵌された準備状態にある上記アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、図8〜10のように挿入セットして、その両電極治具(20)(21)での挾める横架状態に位置決め保持する。
【0041】
そのためには、図8、9に示唆するような電気絶縁性の第1、2ワーク(被溶接物)受け治具(22)(23)を上記溶接機(W)と別個な据付け台(図示省略)上へ、両電極治具(20)(21)と干渉しない関係状態に搭載して、その第1ワーク受け治具(22)によりアンカースリーブ(A)又はその拡開用コーン(18)を受け止める一方、第2ワーク受け治具(23)に受け持たれた異形棒鋼(B)を楔(24)と圧縮コイルバネ(25)により、そのアンカースリーブ(A)に対する差し込み方向へ押圧付勢して、これらが軸線方向に沿って遊動したり、或いは空転したりしない位置決め固定状態に拘束する。
【0042】
尚、上記差し込み方向への押圧付勢力によって、その異形棒鋼(B)の先端面をアンカースリーブ(A)内の境界段部(15)又は境界壁部(15a)へ係止させ得る限り、上記楔(24)と圧縮コイルバネ(25)に代るエヤーシリンダーや電動シリンダーなどを用いて、その押圧付勢力を与えてもさしつかえない。
【0043】
上記両電極治具(20)(21)は導電性に富む銅や銅合金から成り、その対応的な上下一対の電極治具ホルダー(26)(27)へ着脱・交換自在に取り付け使用され、固定状態の下側電極治具(21)に対して上側電極治具(20)が、その加圧軸(28)と加圧シリンダー(エヤーシリンダー)(29)により昇降作動されることとなる。
【0044】
その場合、上側電極治具(20)が言わばスポット溶接用として、狭小な加圧平面(30)(好ましくは異形棒鋼(B)における節(12)の一定ピッチ(P)と同等以下の直径(D3))を備えた截頭円錐型に棒状化されているに比し、下側電極治具(21)は言わばプロジェクション溶接用として、上側電極治具(20)よりも広大な加圧平面(31)を有する平盤型に造形されており、その互いに溶接電流値(熱容量)の著しいアンバランスを生じる関係にある。
【0045】
そこで、図8〜10のように位置決め固定された挿入セット状態から、先ず上記加圧軸(28)と加圧シリンダー(29)により下降作動される上側電極治具(20)と、固定状態にある下側電極治具(21)との一対によって、上記異形棒鋼(B)の先端部に差し込み套嵌されているアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を挟み、強く加圧し乍ら瞬時に大電流を通すのである。
【0046】
そうすれば、上側電極治具(20)の狭小な加圧平面(30)がアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を加圧する接点には、溶接電流が集中するため、図11、12のように上記異形棒鋼(B)の基底円周面(10)と、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)との接合面が溶着一体化され、その差し込み口筒部(13)の外周面には上側電極治具(20)での求心方向(F1)から1回打ちされた凹状加圧痕跡が1点(S1)だけ表出する結果となる。
【0047】
つまり、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)よりも厚肉側をなす異形棒鋼(B)の基底円周面(10)自身が、部分的なプロジェクションとして機能し、そのプロジェクション部分に求心方向(F1)から上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流が集中するため、上記接合面の1個所に安定なナゲット(N1)が形成されるのである。
【0048】
これに反して、下側電極治具(21)の広大な加圧平面(31)がアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を加圧する接点には、溶接電流が効果的に集中せず、上記プロジェクション部分以外への分流・拡散を生じるため、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面には安定なナゲットが形成されず、異形差筋アンカーとしての使用に耐える強固な溶着状態を得ることができない。その差し込み口筒部(13)の外周面に下側電極治具(21)での凹状加圧痕跡が表出することもない。
【0049】
そのため、第1回目として任意な求心方向(F1)から上記1点(S1)が抵抗溶接された異形差筋アンカーを、引き続き図13、14のように一定角度(α)(図例では約120度)だけ一方向へ回動させ、同じくアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を上側電極治具(20)と下側電極治具(21)との一対によって挟み、第1回目での求心方向(F1)と交叉した別な求心方向(F2)から集中する上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流により、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を溶着一体化するのである。(N2)は茲に第2回目での各別な1個所として、その接合面に形成された安定なナゲット、(S2)は同じく差し込み口筒部(13)の外周面に表出した上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡を示している。
【0050】
第2回目として上記1点(S2)が抵抗溶接された異形差筋アンカーを、その後図15、16のように再び一定角度(α)(図例では約120度)だけ同じ一方向へ回動させて、やはりアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を上下一対の電極治具(20)(21)により挟み、第2回目での求心方向(F2)と交叉した更に別な求心方向(F3)から集中する上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流によって、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を溶着一体化する。(N3)は第3回目での更に各別な1個所として、その接合面に形成された安定なナゲット、(S3)は同じく差し込み口筒部(13)に表出した上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡である。
【0051】
このような第1〜3回の抵抗溶接により、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面が、その任意な求心方向(F1)(F2)(F3)から各別な1点(S1)(S2)(S3)づつの合計3点(S1)(S2)(S3)において溶着一体化された異形差筋アンカーを、本発明の第1実施形態として図3〜5に示している。
【0052】
その場合、抵抗溶接機(W)における両電極治具(20)(21)との相関々係上、異形棒鋼(B)のリブ(11)が如何なる方向性にあっても、又同じく節(12)が如何なる位置にあっても、上記接合面の溶着状態を支障なく達成できるが、図3、4に併せて示す如く、上記合計3点(S1)(S2)(S3)のうちの任意な1点(S1)は異形棒鋼(B)の基底円周面(10)から突出するリブ(11)上において、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と抵抗溶接することが好ましい。
【0053】
しかも、図5から明白なように、異形棒鋼(B)とその先端部へ差し込み口筒部(13)が差し込み套嵌されたアンカースリーブ(A)との実質的な同芯円に対して、上記合計3点(S1)(S2)(S3)を全体的な放射対称分布型となる位置へ抵抗溶接することが望ましい。
【0054】
そうすれば、上記異形棒鋼(B)の先端部にアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)が差し込み套嵌されているとしても、その異形棒鋼(B)におけるリブ(11)の配列形態は節(12)のそれと異なって、アンカースリーブ(A)の外部から一目瞭然に看取できるため、上記第1、2ワーク受け治具(22)(23)への挿入セット時、その両電極治具(20)(21)による挟み加圧位置を正確に決定し得ることとなり、これを位置決め基準として、上記一定角度(α)の回動作業も容易に正しく行なえるからである。
【0055】
又、異形棒鋼(B)のリブ(11)はその基底円周面(10)から突出する円弧状の節(12)と異なり、軸線方向に沿い延在する言わば直線形態として、その頂部の実質的な平坦面をなしているため、特に上側電極治具(20)の狭小な加圧平面(30)と安定裡に密着しやすく、その上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流を上記接合面へロスなく高密度に集中させることができ、その効果的な熱膨張作用により、全体的な放射対称分布型をなす合計3点(S1)(S2)(S3)での溶着状態とも相俟って、引張強度に優れた異形差筋アンカーを得られるからである。
【0056】
因みに、先に例示した数値のアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とから、その第1実施形態の異形差筋アンカーを製造するに当り、図7のような定格容量:75KVA、最大加圧力:1,000Kgf、30,000Aの単相交流式抵抗溶接機(W)を使用し、これに上記狭小な加圧平面(30)の截頭円錐型上側電極治具(20)と、広大な加圧平面(31)の平盤型下側電極治具(21)を取り付けて、エアー加圧力:3.5Kg/cm(約700Kgf)、通電時間:25サイクル、溶接電流:16,800Aのもとに、第1〜3回の抵抗溶接を行なった結果、引張強度が約4.8トンの異形差筋アンカーを得ることができた。
【0057】
次に、図17、18は図4、5に対応する本発明の第2実施形態として、上記第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)並びに異形棒鋼(B)から成る異形差筋アンカーを示しているが、これではそのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を第1、2回の抵抗溶接により、その向かい合う求心方向(F1)(F2)から各別な1点(S1)(S2)づつの合計2点(S1)(S2)において溶着一体化している。
【0058】
つまり、異形棒鋼(B)の先端部に差し込み套嵌されているアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、図19、20のようにやはり上側電極治具(20)と下側電極治具(21)によって挟み、その上側電極治具(20)の狭小な加圧平面(30)が上記差し込み口筒部(13)を加圧する接点に集中する溶接電流により、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を上側電極治具(20)での求心方向(F1)から1点(S1)だけ先行的に溶着一体化する。(N1)はその接合面の1個所に形成された安定なナゲットである。
【0059】
その場合、図19、20に併せて示す如く、下側電極治具(21)としてはアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と対応する円弧状の加圧凹曲面(31a)が切り欠かれた平盤型を使用することもでき、その加圧凹曲面(31a)はやはり上側電極治具(20)の加圧平面(30)に比し広大であって、溶接電流値(熱容量)のアンバランスを生じる相関々係上、これにより上記差し込み口筒部(13)を加圧する接点には、上記第1実施形態の製造法と同じく、溶接電流が効果的に集中せず、異形差筋アンカーとしての使用に耐え得る安定・強固なナゲットが形成されない。
【0060】
そこで、第1回目として上側電極治具(20)での求心方向(F1)から1点(S1)が抵抗溶接された異形差筋アンカーを、その後図21、22のように一定角度(β)(図例では約180度)だけ回動させて、同じくアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を上下一対の電極治具(20)(21)により挟み、第1回目での求心方向(F1)とは別な求心方向(F2)から集中する上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流によって、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を溶着一体化するのである。(N2)は第2回目での各別な1個所として、その接合面に形成された安定なナゲットを示しており、茲に第1、2回の抵抗溶接を行なった結果、上記差し込み口筒部(13)の外周面には上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡が、向かい合う2点(S1)(S2)として各別に表出する。
【0061】
第2実施形態に係る異形差筋アンカーの製造上、やはり図7の抵抗溶接機(W)に狭小な加圧平面(30)の上側電極治具(20)と、広大な加圧凹曲面(31a)が切り欠かれた平盤型の下側電極治具(21)を取り付け使用して、上記第1実施形態と同じエアー加圧力や通電時間、溶接電流などの溶接条件下において、特にその異形棒鋼(B)のリブ(11)と対応合致する向かい合う位置での合計2点(S1)(S2)を、その1点(S1)(S2)づつ各別に抵抗溶接した結果、引張強度が約4.5トンの異形差筋アンカーを得ることができた。
【0062】
図23〜25は図3〜5に対応する本発明の第3実施形態として、上記第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)並びに異形棒鋼(B)から成る異形差筋アンカーを示しており、これではアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)が異形棒鋼(B)の先端部へ、その異形棒鋼(B)における節(12)の約2.6ピッチ分だけ深く差し込み套嵌された状態にある。
【0063】
そして、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、先ず上側電極治具(20)での任意な求心方向(F1)から1点(S1)において溶着一体化した後、その異形差筋アンカーを一旦軸線方向に沿って一定距離(Y)だけ移動させ、引き続き同じ求心方向(F2)からの上側電極治具(20)により、先の1点(S1)から隔たる位置での別個な1点(S2)において溶着一体化している。そのため、第1、2回の各別に抵抗溶接された合計2点(S1)(S2)が、同じ軸線上での並列状態に分布する結果となっている。
【0064】
その場合、第1、2回の溶接順序は問わず、その軸線方向に沿う移動距離(Y)も節(12)のピッチと関係なく、任意の数値に選定でき、又上記求心方向(F1)(F2)についてもリブ(11)と無関係な任意の方向性として指定すれば足りるが、特に図23、24から示唆されるように、上記合計2点(S1)(S2)を何れも異形棒鋼(B)のリブ(11)と対応合致する位置として、各別に抵抗溶接すると共に、上記移動距離(Y)を節(12)の一定ピッチ(P)とほぼ等しい数値に設定することが望ましい。一層安定なナゲット(N1)(N2)の形成により、引張強度に優れた異形差筋アンカーを製造できるからである。
【0065】
又、図26〜29は同じく図3〜5に対応する本発明の第4実施形態を示しており、この異形差筋アンカーでもアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)が異形棒鋼(B)の先端部へ、その異形棒鋼(B)における節(12)の約2.6ピッチ分だけ、やはり深く差し込み套嵌されている。
【0066】
そして、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、上記第2実施形態の製造法に準じ、第1、2回目の抵抗溶接として、上側電極治具(20)による一定角度(β)(図例では約180度)だけ交叉した求心方向(F1)(F2)から、その向かい合う1点(S1)(S2)づつの合計2点(S1)(S2)において、順次各別に溶着一体化した後、その異形差筋アンカーを一旦軸線方向に沿って一定距離(Y)だけ移動させ、しかも一定角度(γ)(図例では約90度)づつ回動させることにより、第3、4回目の抵抗溶接として、上記第1、2回目での上側電極治具(20)による求心方向(F1)(F2)と交叉した求心方向(F3)(F4)から、やはりその向かい合う1点(S3)(S4)づつの合計2点(S3)(S4)を順次各別に溶着一体化している。
【0067】
これによれば、第1〜4回の各別な抵抗溶接を行なった結果、上記アンカースリーブ(A)における差し込み口筒部(13)の外周面には上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡が、向かい合う2点(S1)(S2)(S3)(S4)づつのほぼ直交する合計4点(S1)(S2)(S3)(S4)として表出すると共に、上記接合面の合計4個所にはこれらと対応位置する安定なナゲット(N1)(N2)(N3)(N4)が形成されることとなる。
【0068】
その際、図26、27から明白なように、第1、2回目での向かい合う合計2点(S1)(S2)を異形棒鋼(B)のリブ(11)上へ各別に抵抗溶接し、上記軸線方向に沿う移動距離(Y)を節(12)の一定ピッチ(P)とほぼ等しい数値に設定すると共に、第3、4回目での向かい合う合計2点(S3)(S4)をその節(12)同志の隣り合う相互間へ、各別に抵抗溶接することが好ましい。引張強度のますます向上した異形差筋アンカーを得られるからである。但し、上記第1〜4回の溶接順序は問わず、作業性を考慮して自由に決定することができる。
【0069】
更に、図30、31は図3、5に対応する本発明の第5実施形態として、やはり上記第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)並びに異形棒鋼(B)から成る異形差筋アンカーを示しているが、これでは上記第1〜4実施形態と異なり、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、両電極治具(20)(21)での向かい合う求心方向(F1)(F2)から合計2点(S1)(S2)において一挙同時に溶着一体化している。
【0070】
即ち、図7と対応する図32の単相交流式抵抗溶接機(W)から示唆されるように、その溶接機(W)における上下一対の電極治具ホルダー(プラテン)(26)(27)へ、言わばプロジェクション溶接用となる互いに同じ広大な加圧平面(30)(31)を備えた上下一対の平盤型電極治具(20)(21)を取り付け使用する。
【0071】
そして、やはり加圧軸(28)と加圧シリンダー(29)により下降作動される上側電極治具(20)と、固定状態にある下側電極治具(21)との一対によって、異形棒鋼(B)の先端部に差し込み套嵌されているアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、図33〜35のように挟んで強く加圧し乍ら、瞬時に大電流を通すのである。
【0072】
そうすれば、上下一対の電極治具(20)(21)が広大な加圧平面(30)(31)を備えた平盤型であるため、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)は図34、35のようなほぼ楕円形に塑性変形されることとなり、その外周面に両電極治具(20)(21)での凹状加圧痕跡が表出することはなく、その向かい合う合計2点(S1)(S2)でのフラット状態を呈するにとどまる。
【0073】
又、上記第1〜4実施形態の言わばスポット溶接用となる截頭円錐型に棒状化された上側電極治具(20)と比較した場合、その平盤型の両電極治具(20)(21)がアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を加圧する両接点には、溶接電流があまねく集中せず、或る程度分散することを否めないとしても、その溶接電流値(熱容量)は両電極治具(20)(21)の上下相互間においてバランスされるため、上記アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、その向かい合う求心方向(F1)(F2)からの合計2点(S1)(S2)において、一挙同時に支障なく溶着一体化することができる。(N1)(N2)はその両電極治具(20)(21)の1回打ちにより、上記接合面に形成された安定なナゲットを示している。
【0074】
このような第5実施形態の製造法でも、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)よりも厚肉側をなす異形棒鋼(B)の基底円周面(10)自身が、やはり部分的なプロジェクションとして機能し、そのプロジェクション部分へ向かい合う求心方向(F1)(F2)から両電極治具(20)(21)の加圧力と溶接電流がバランス良く集中するため、安定なナゲット(N1)(N2)を同時形成することができるのである。
【0075】
因みに、第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とから、その第5実施形態の異形差筋アンカーを製造するに当り、図32のような定格容量:75KVA、最大加圧力:1,000Kgf、30,000Aの単相交流式抵抗溶接機(W)を使用して、エアー加圧力:3,5Kg/cm(約700Kgf)、通電時間:25サイクル、溶接電流:16,800Aのもとで、特にその異形棒鋼(B)のリブ(11)と対応合致する向かい合う位置での合計2点(S1)(S2)を、両電極治具(20)(21)での同時1回打ちにより抵抗溶接した結果、引張強度が約4.1トンの充分使用に耐える異形差筋アンカーを得ることができた。
【0076】
尚、第2〜5実施形態におけるその他の構成は図1〜16の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図17〜35に図1〜16との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。第5実施形態でも向かい合う求心方向(F1)(F2)から2点(S1)(S2)を一挙同時に抵抗溶接後、上記第2実施形態の製造法に準じて、異形差筋アンカーを例えば約90度の一定角度だけ回動させ、第2回目に先の第1回目と交叉した向かい合う求心方向から2点を一挙同時に抵抗溶接して、その合計4点での溶着状態に保つことができる。
【0077】
上記第1〜5実施形態の何れにあっても、本発明の異形差筋アンカーを製造するために組み合わせ使用される異形棒鋼(B)とアンカースリーブ(A)とは、その厚みに大差があり、熱容量(溶接電流値)に著しいアンバランスを生じる関係上、従来からの常識によれば、これらを抵抗溶接する方法は到底考えられない。
【0078】
ところが、上記第1、2、5実施形態の試験結果によれば、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)とは実質上同芯円での嵌合状態にあって、その厚肉側をなす異形棒鋼(B)の基底円周面(10)自身が、部分的なプロジェクションとして機能し、この部分に集中する両電極治具(20)(21)の加圧力が、アンカースリーブ(A)における差し込み口筒部(13)との接触状態を高密度に保つほか、同じくプロジェクション部分に集中する溶接電流が、薄肉側をなすアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と効果的にバランスして、そのプロジェクション部分が通電時間の経過に連れて軟化・圧潰され、上記差し込み口筒部(13)との接合面に安定なナゲット(N1)(N2)(N3)(N4)を形成することになるため、そのアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とを支障なく抵抗溶接することができたものと考えられる。
【0079】
その意味では、茲に抵抗溶接をプロジェクション溶接と言ってもさしつかえないが、本発明の場合従来のプロジェクション溶接と異なり、厚肉側の被溶接物(厚板)から薄肉側の被溶接物(薄板)に向かってプロジェクションを特別に打ち出し加工する必要がなく、しかも第1〜4実施形態の場合アンカースリーブ(A)における差し込み口筒部(13)の外周面には、截頭円錐型の上側電極治具(20)による凹状加圧痕跡が表出することになるため、プロジェクション溶接と言うよりもむしろスポット溶接に該当する。但し、第5実施形態の場合に限っては、その凹状加圧痕跡が表出しないため、その意味からむしろプロジェクション溶接に近いと言える。
【0080】
更に言えば、異形棒鋼(B)とその先端部へ差し込み套嵌されたアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)とは、実質上同芯円をなすため、たとえ異形棒鋼(B)の直径(D1)が大小変化しても、その熱容量(溶接電流値)はアンバランスにならず、常時ほぼ一定のバランス状態に保たれる関係上、図7、32のような同じ抵抗溶接機(W)と電極治具(20)(21)を使用し、しかも同じエアー加圧力や通電時間、溶接電流などの溶接条件下において、その直径(D1)の相違変化した異形棒鋼(B)とアンカースリーブ(A)とから成る各種異形差筋アンカーを支障なく製造することができる。
【0081】
つまり、上記第1〜5実施形態では何れもJIS規格の呼び名:D10の異形棒鋼(B)と、これに対応する太さの円筒型アンカースリーブ(A)とから成る異形差筋アンカーを代表例に挙げて、その数値に基き説明したが、JIS規格の呼び名:D13やD16などの異形棒鋼(B)とこれに対応する太さのアンカースリーブ(A)とから成る異形差筋アンカーについても、本発明を適用実施できる意味である。
【0082】
尚、異形棒鋼(B)の先端部へ予じめアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を差し込み套嵌させておき、このような準備状態において抵抗溶接機(W)の第1、2ワーク受け治具(22)(23)へ挿入セット作業する旨を上記したが、その作業順序としてはアンカースリーブ(A)のみを先に第1、2ワーク受け治具(22)(23)へ挿入セットして、その位置決め固定状態に保ち、このようなアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)へその後、異形棒鋼(B)の先端部を人手や自動機械力により、差し込み套嵌させてもさしつかえない。
【0083】
上記のように製造された本発明の異形差筋アンカーは、例えばコンクリートブロック塀の建造工事において、コンクリート面(C)へ穿孔ドリルにより加工された埋込み穴(32)へ、そのアンカースリーブ(A)が図36のように埋没する状態として挿入使用される。
【0084】
そして、その後コンクリート面(C)から露出している異形棒鋼(B)を、ハンマーなどの叩打工具(33)によって打ち込むのであり、そうすれば上記埋込み穴(32)の底部に突っ張り制止される拡開用コーン(18)と相対して、その異形棒鋼(B)と一体をなすアンカースリーブ(A)が進出移動するため、そのアンカースリーブ(A)が図37のように先端側から拡開変形して、コンクリート面(C)へ離脱不能に喰い付き固定することとなり、上記コンクリートブロック塀の強固な骨格を形作る。
【0085】
その場合、上記アンカースリーブ(A)は異形棒鋼(B)の先端部へ差し込み套嵌されており、その差し込み口筒部(13)において異形棒鋼(B)と抵抗溶接されているため、上記作業過程での叩打力が異形棒鋼(B)の軸線方向に沿って正しく付加されなかったり、又コンクリートブロック塀などの補強骨格として使用中に、その径方向から繰り返し風圧などの剪断力を受けたりしても、上記アンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)との相対的な振れ動きを生ずるおそれがなく、まして軸線方向に沿って滑り移動したり、抜けたりするおそれは皆無である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る異形差筋アンカーの第1実施形態を示すアンカースリーブと異形棒鋼との分解側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の異形差筋アンカーを示す平面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図4の5−5線に沿う拡大断面図である。
【図6】アンカースリーブの変形実施形態を示す半欠截断面図である。
【図7】第1実施形態の製造に使用した抵抗溶接機を示す側面図である。
【図8】アンカースリーブと異形棒鋼との溶接準備状態を示す側面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】図8の10−10線に沿う拡大断面図である。
【図11】アンカースリーブと異形棒鋼との第1回溶接工程を示す側断面図である。
【図12】図11の12−12線に沿う拡大断面図である。
【図13】図12から異形差筋アンカーを一定角度だけ回動させた状態の断面図である。
【図14】第2回の溶接工程を示す断面図である。
【図15】図14から異形差筋アンカーを更に一定角度だけ回動させた状態の断面図である。
【図16】第3回の溶接工程を示す断面図である。
【図17】本発明に係る異形差筋アンカーの第2実施形態を示す側断面図である。
【図18】図17の18−18線に沿う拡大断面図である。
【図19】第2実施形態におけるアンカースリーブと異形棒鋼との溶接準備状態を示す断面図である。
【図20】その第1回溶接工程を示す断面図である。
【図21】図20から異形差筋アンカーを一定角度だけ回動させた状態の断面図である。
【図22】第2回の溶接工程を示す断面図である。
【図23】本発明に係る異形差筋アンカーの第3実施形態を示す平面図である。
【図24】図23の24−24線断面図である。
【図25】図24の25−25線に沿う拡大断面図である。
【図26】本発明に係る異形差筋アンカーの第4実施形態を示す平面図である。
【図27】図26の27−27線断面図である。
【図28】図27の28−28線に沿う拡大断面図である。
【図29】図27の29−29線に沿う拡大断面図である。
【図30】本発明に係る異形差筋アンカーの第5実施形態を示す平面図である。
【図31】図30の31−31線に沿う拡大断面図である。
【図32】第5実施形態の製造に使用した抵抗溶接機を示す側面図である。
【図33】第5実施形態におけるアンカースリーブと異形棒鋼との溶接準備状態を示す断面図である。
【図34】図33からの同時1回打ち溶接工程を示す側断面図である。
【図35】図34の35−35線に沿う拡大断面図である。
【図36】異形差筋アンカーの埋め込み使用過程を示す説明図である。
【図37】図36に続く埋め込み完了状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
(10)・基底円周面
(11)・リブ
(12)・節
(13)・差し込み口筒部
(14)・拡開口筒部
(15)・境界段部
(15a)・境界壁部
(17)・拡開用割り溝
(18)・拡開用コーン
(19)・圧入部
(20)(21)・電極治具
(22)・(23)・ワーク受け治具
(26)(27)・電極治具ホルダー(プラテン)
(28)・加圧軸
(29)・加圧シリンダー
(30)(31)(31a)・加圧平面
(A)・アンカースリーブ
(B)・異形棒鋼
(C)・コンクリート面
(W)・抵抗溶接機
(Y)・移動距離
(S1)(S2)(S3)(S4)・凹状加圧痕跡
(N1)(N2)(N3)(N4)・ナゲット
(α)(β)(γ)・回動角度
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートのブロック塀建造工事や間仕切り工事、鉄筋出し土木工事などに使用される異形差筋アンカーと、その製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種異形差筋アンカーとその製造法について、本出願人は既に特許第2841189号と特許第2911036号を提案した。
【0003】
前者の特許第2841189号発明では、アンカースリーブ(S)の差し込み口筒部(13)を異形鉄筋(I)の先端部へ差し込み套嵌させてかしめ付けることにより、その異形鉄筋(I)の両縦節(11)を結ぶ直径線(O−O)とほぼ平行な2辺面(a)(b)を備えた全体的な断面正偶数多角形に造形し、且つその断面正偶数多角形に造形した差し込み口筒部(13)の平行な2辺面(a)(b)を、上記異形鉄筋(I)における横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所での部分連続的にかしめ付けることにより、そのかしめ付け部分を上記横節(12)へ係止する滑り止めキー(24)(25)として機能させるようになっている。
【0004】
他方、後者の特許第2911036号発明ではアンカースリーブ(S)の基端部と異形鉄筋(I)の先端部とを摩擦圧接機(F)の使用により、その溶け出しバリ(23)の外径寸法(D3)がアンカースリーブ(S)の外径寸法(D2)以内にとどまるよう摩擦圧接している。
【特許文献1】特許第2841189号公報
【特許文献2】特許第2911036号公報
【特許文献3】特公平7−88660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許第2841189号発明はあくまでもアンカースリーブ(S)の差し込み口筒部(13)だけを、物理的に塑性変形させるかしめ付け方法であるため、その断面正偶数多角形の平行な2辺面(a)(b)を引き続き異形鉄筋(I)における横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所でのスポット的なかしめ付けにより、その横節(12)へ係止し得る滑り止めキー(24)(25)として機能させたとしても、横節(12)の高さが例えばD16の異形鉄筋(I)では、約0.7〜1.4mmであるに過ぎないことを考慮すると、その隣り合う相互間隙を上記スポット的なかしめ付けによって、隅々まで完全に埋め尽くし一体化することは困難であり、抜けないまでも、未だ軸線方向への相対的な滑り移動や径方向への振れ動き、その他のガタツキを生ずるおそれがある。
【0006】
又、異形差筋アンカーの製造法として、向かい合う一対のかしめ加工金型(20)(21)から張り出すかしめ凸子(22)(23)により、異形鉄筋(I)における横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所を決め押すようになっているが、異形鉄筋(I)の先端部をカットする位置如何によって、そのアンカースリーブ(S)内の境界段部(15)から横節(12)までの距離が区々相違し、その横節(12)の隣り合う相互間と対応位置する個所を、アンカースリーブ(S)の外部から正確に見定めることはできないため、そのかしめ付け状態の安定した高品質な異形差筋アンカーを容易に製造することも不可能である。
【0007】
この点、特許第2911036号発明の場合上記のような特別のかしめ加工金型(20)(21)を用意する必要がなく、摩擦圧接機(F)を使用できる利点があると言えるが、あくまでもアンカースリーブ(S)の基端部と異形鉄筋(I)の先端部とを、突き合わせ状態のもとに摩擦圧接する方法であり、アンカースリーブ(S)を異形鉄筋(I)へ差し込み套嵌させていないため、引張り力や剪断力に弱く、異形差筋アンカーの使用状態に不安感を与える。
【0008】
又、アンカースリーブ(S)と異形鉄筋(I)との完全な固相接合状態を得るためには、未だ分単位の長時間を要し、これを短縮すべく、回転速度や加圧力を高めると、溶け出しバリ(23)が大きく張り出すことになる結果、その溶け出しバリ(23)の爾後的な除去作業や、アンカースリーブ(S)又は異形鉄筋(I)に対する特別の予備加工を行なう必要があり、未だ効率良く安価に量産することもできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では一定長さのコンクリート補強用異形棒鋼と、
【0010】
その異形棒鋼と同種の金属素材から、基端側を上記異形棒鋼への差し込み口筒部とし、先端側を拡開口筒部として、その両口筒部の内径が相違する段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、その拡開用コーンを部分的に圧入セットした一定長さのアンカースリーブとから成り、
【0011】
そのアンカースリーブの差し込み口筒部を上記異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向から1点づつの少なくとも合計2点を各別に抵抗溶接したことを特徴とする。
【0012】
請求項1に従属する請求項2では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向からの1点と、これと一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする。
【0013】
又、請求項1に従属する請求項3では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
【0014】
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置における同じ求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする。
【0015】
同じく請求項1に従属する請求項4では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
【0016】
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置にあって、しかも上記求心方向と一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする。
【0017】
更に、請求項1、2、3又は4に従属する請求項5では、少なくとも合計2点のうちの1点を、異形棒鋼のリブと対応合致する位置に抵抗溶接したことを特徴とする。
【0018】
同じく請求項1、2、3、4又は5に従属する請求項6では、少なくとも合計2点を異形棒鋼とその先端部へ差し込み口筒部が差し込み套嵌されたアンカースリーブとの同芯円に対して、全体的な放射対称分布型となる位置に抵抗溶接したことを特徴とする。
【0019】
他方、上記異形差筋アンカーの製造法として、請求項7では丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
【0020】
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の截頭円錐型上側電極治具と、これよりも広大な平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する上側電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その求心方向から各別な1点づつの少なくとも合計2点において溶着一体化することを特徴とする。
【0021】
更に、同じく製造法の請求項8では丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
【0022】
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の平盤型上側電極治具と、これと同じ平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する両電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その向かい合う一対づつの少なくとも合計2点において一挙同時に溶着一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の上記構成によれば、アンカースリーブが異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌された状態にあり、少なくとも合計2点において抵抗溶接されているため、冒頭に述べた両公知発明の諸問題を悉く解決することができ、そのアンカースリーブと異形棒鋼とが軸線方向へ相対的に滑り移動しないことは勿論、径方向への振れ動きやその他のガタツキを生ずるおそれもなく、引張り力と剪断力との対抗強度に優れた異形差筋アンカーを得られる効果がある。
【0024】
その場合、請求項2、3又は4に記載の構成を採用するならば、その抵抗溶接された少なくとも合計2点が、一定角度だけ交叉する指向性又は/及び軸線方向への一定距離だけ隔たる位置にある関係上、異形差筋アンカーとしての上記対抗強度がますます向上し、このような効果は請求項6の構成によっても達成され、太い製品において特に有効となる。
【0025】
又、請求項5の構成を採用するならば、異形棒鋼のリブはその基底円周面から突出する円弧状の節と異なり、軸線方向に沿い延在する言わば直線形態として、その頂部の実質的な平坦面をなしているため、抵抗溶接機における電極治具の加圧平面と安定裡に密着しやすく、その電極加圧力と溶接電流を効果的に集中させることができ、優れた引張強度と安定な溶接品質の異形差筋アンカーを得られる効果がある。
【0026】
他方、請求項7に記載の製造法では、アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、これを抵抗溶接機の截頭円錐型上側電極治具と、同じく平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、上記差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、そのプロジェクション部分へ集中する上側電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その求心方向から1点づつの少なくとも合計2点において、各別に溶着一体化するようになっているため、その被溶接物としての厚みに大差があり、溶接電流値(熱容量)のアンバランスな異形棒鋼とアンカースリーブから成るも、特別のプロジェクションを打ち出し加工する必要なく、その接合面を瞬時に安定良く溶着一体化することができ、優れた異形差筋アンカーを製造し得る効果がある。
【0027】
殊更、請求項8の製造法によれば、溶接電流値(熱容量)が互いにバランスする平盤型電極治具の上下一対を、抵抗溶接機へ取り付け使用して、上記アンカースリーブの差し込み口筒部と異形棒鋼の基底円周面との接合面をその両電極治具での同時1回打ちにより、向かい合う2点において一挙に溶着一体化することができ、その後異形差筋アンカーを一定角度だけ回動させるか、又は/及び軸線方向に沿い一定距離だけ移動させて、同様に向かい合う2点を一挙同時に溶着一体化することも可能であるため、その異形差筋アンカーの量産効果がますます向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基いて本発明を詳述すると、その異形差筋アンカーの第1実施形態を示した図1〜5において、(B)は一定長さ(L1)(例えば約427mm)にカットされたコンクリート補強用の異形棒鋼(例えばSD295A)であり、JSI規格の呼び名:D10のそれとして、約10mmの直径(D1)とその基底円周面(10)から約0.6mmの一定高さ(H1)だけ各々突出するリブ(11)並びに節(12)を具備している。
【0029】
この点、図例では軸線方向に沿って延在するリブ(11)の向かい合う一対と、その相互間に一定ピッチ(P)(約6.5mm)を保って交叉する多数の節(12)とが、所謂千鳥配列形態にある異形棒鋼(B)を示しているが、その千鳥配列形態に代る格子配列形態などとして交叉することもある。
【0030】
他方、(A)は一定長さ(L2)(例えば約40mm)と外径(D2)(例えば約14mm)を備えた円筒型のアンカースリーブであるが、その基端側の一定深さ(G1)(例えば約17mm)分は上記異形棒鋼(B)への比較的薄肉(例えば約1.7mmの厚み)な差し込み口筒部(13)として、又先端側の残余深さ分は比較的厚肉(例えば約2.88mmの厚み)な拡開口筒部(14)として、その両口筒(13)(14)の内径(d1)(d2)が相違する段付き穴形態(連通開口形態)に造形されている。
【0031】
つまり、上記差し込み口筒部(13)の内径(d1)(例えば約10.6mm)が拡開口筒部(14)の内径(d2)(例えば約8.25mm)よりも大きな寸法として、異形棒鋼(B)の先端部へ差し込み套嵌された時、その両口筒部(13)(14)内の境界段部(15)が図4のように、上記異形棒鋼(B)の先端面と係止し、ストッパーとして機能し得るようになっている。
【0032】
但し、その異形棒鋼(B)の先端面に係止するストッパーとなる限り、上記アンカースリーブ(A)を図1と対応する図6の変形実施形態から明白なように、その差し込み口筒部(13)と拡開口筒部(14)とが境界壁部(15a)を介して仕切り区分された盲形態に造形してもさしつかえない。その他の構成は図1のアンカースリーブ(A)と実質的に同じである。
【0033】
その場合、図1、6の何れのアンカースリーブ(A)にあっても、先に例示した数値から確認できるように、その差し込み口筒部(13)の一定深さ(G1)はこれを異形棒鋼(B)における節(12)の少なくとも2ピッチ分(図例では約2.6ピッチ分)として、その異形棒鋼(B)への可及的に深く差し込み套嵌できるように寸法化し、アンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)との相対的な振れ動きを防止することが好ましい。
【0034】
(16)は上記厚肉な拡開口筒部(14)における先端側の外周面に賦形された多数の波状又は鋸歯状凹周溝であり、異形差筋アンカーとしての使用時にコンクリート面(C)へ喰い付き、そのアンカー効果を昂める。
【0035】
又、(17)は同じくアンカースリーブ(A)の厚肉な拡開口筒部(14)へ、その先端側から一定深さ(G2)(例えば約19mm)だけ切り込まれた拡開用割り溝であり、図例のような十文字型や一文字型、その他の放射対称型に分布している。
【0036】
このようなアンカースリーブ(A)は上記異形棒鋼(B)と同種金属の丸鋼素材(例えばSWRCH8〜10)から、段階的な冷間鍛造やその他の塑性加工によって容易に量産することができ、その最終工程において上記拡開用割り溝(17)の切削加工を行なえば良い。
【0037】
更に、(18)は上記アンカースリーブ(A)と同じ鋼塊(SWRCH8〜10)から、一定長さ(L3)(例えば約23mm)の截頭円錐型をなす拡開用コーンであるが、その細い(例えば約7.5mmの直径)基端側は円柱状の圧入部(19)として、アンカースリーブ(A)の上記拡開口筒部(14)内へ脱落不能に圧入セットされている。その圧入部(19)の外周面には脱落防止のため、軸線方向への平行な凹凸条(図示省略)が賦形されてもいる。
【0038】
そして、その拡開用コーン(18)の残る太い(例えば約11mmの直径)先端側は、上記拡開口筒部(14)から一定長さ(L4)(例えば約14.6mm)だけ張り出すセット状態にあり、これを拡開口筒部(14)内へ強制的に没入させる如く、アンカースリーブ(A)を相対的に進出移動させた時、そのアンカースリーブ(A)の上記割り溝(17)を備えた拡開口筒部(14)が、拡開用コーン(18)の楔作用により先端側から拡開して、コンクリート面(C)へ強固に喰い付く結果となる。
【0039】
上記のようなアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とを組み合わせ使用して、本発明の異形差筋アンカーを製造するに当っては、異形棒鋼(B)の先端部へアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、その境界段部(15)又は境界壁部(15a)が異形棒鋼(B)の先端面と係止する規制状態に差し込み套嵌させた後、任意な求心方向(F1)(F2)(F3)から1点(S1)(S2)(S3)づつ各別に抵抗溶接することにより、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、少なくとも合計2点(S1)(S2)(S3)において溶着一体化するのである。(N1)(N2)(N3)はその接合面の少なくとも合計2個所へ、各別に形成された安定なナゲット(溶融金属の凝固跡)を示している。
【0040】
即ち、図7はそのための単相交流式抵抗溶接機(W)を例示しており、これに取り付けられた上側電極治具(20)と下側電極治具(21)との相互間へ、予じめ異形棒鋼(B)の先端部へ差し込み套嵌された準備状態にある上記アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、図8〜10のように挿入セットして、その両電極治具(20)(21)での挾める横架状態に位置決め保持する。
【0041】
そのためには、図8、9に示唆するような電気絶縁性の第1、2ワーク(被溶接物)受け治具(22)(23)を上記溶接機(W)と別個な据付け台(図示省略)上へ、両電極治具(20)(21)と干渉しない関係状態に搭載して、その第1ワーク受け治具(22)によりアンカースリーブ(A)又はその拡開用コーン(18)を受け止める一方、第2ワーク受け治具(23)に受け持たれた異形棒鋼(B)を楔(24)と圧縮コイルバネ(25)により、そのアンカースリーブ(A)に対する差し込み方向へ押圧付勢して、これらが軸線方向に沿って遊動したり、或いは空転したりしない位置決め固定状態に拘束する。
【0042】
尚、上記差し込み方向への押圧付勢力によって、その異形棒鋼(B)の先端面をアンカースリーブ(A)内の境界段部(15)又は境界壁部(15a)へ係止させ得る限り、上記楔(24)と圧縮コイルバネ(25)に代るエヤーシリンダーや電動シリンダーなどを用いて、その押圧付勢力を与えてもさしつかえない。
【0043】
上記両電極治具(20)(21)は導電性に富む銅や銅合金から成り、その対応的な上下一対の電極治具ホルダー(26)(27)へ着脱・交換自在に取り付け使用され、固定状態の下側電極治具(21)に対して上側電極治具(20)が、その加圧軸(28)と加圧シリンダー(エヤーシリンダー)(29)により昇降作動されることとなる。
【0044】
その場合、上側電極治具(20)が言わばスポット溶接用として、狭小な加圧平面(30)(好ましくは異形棒鋼(B)における節(12)の一定ピッチ(P)と同等以下の直径(D3))を備えた截頭円錐型に棒状化されているに比し、下側電極治具(21)は言わばプロジェクション溶接用として、上側電極治具(20)よりも広大な加圧平面(31)を有する平盤型に造形されており、その互いに溶接電流値(熱容量)の著しいアンバランスを生じる関係にある。
【0045】
そこで、図8〜10のように位置決め固定された挿入セット状態から、先ず上記加圧軸(28)と加圧シリンダー(29)により下降作動される上側電極治具(20)と、固定状態にある下側電極治具(21)との一対によって、上記異形棒鋼(B)の先端部に差し込み套嵌されているアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を挟み、強く加圧し乍ら瞬時に大電流を通すのである。
【0046】
そうすれば、上側電極治具(20)の狭小な加圧平面(30)がアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を加圧する接点には、溶接電流が集中するため、図11、12のように上記異形棒鋼(B)の基底円周面(10)と、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)との接合面が溶着一体化され、その差し込み口筒部(13)の外周面には上側電極治具(20)での求心方向(F1)から1回打ちされた凹状加圧痕跡が1点(S1)だけ表出する結果となる。
【0047】
つまり、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)よりも厚肉側をなす異形棒鋼(B)の基底円周面(10)自身が、部分的なプロジェクションとして機能し、そのプロジェクション部分に求心方向(F1)から上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流が集中するため、上記接合面の1個所に安定なナゲット(N1)が形成されるのである。
【0048】
これに反して、下側電極治具(21)の広大な加圧平面(31)がアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を加圧する接点には、溶接電流が効果的に集中せず、上記プロジェクション部分以外への分流・拡散を生じるため、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面には安定なナゲットが形成されず、異形差筋アンカーとしての使用に耐える強固な溶着状態を得ることができない。その差し込み口筒部(13)の外周面に下側電極治具(21)での凹状加圧痕跡が表出することもない。
【0049】
そのため、第1回目として任意な求心方向(F1)から上記1点(S1)が抵抗溶接された異形差筋アンカーを、引き続き図13、14のように一定角度(α)(図例では約120度)だけ一方向へ回動させ、同じくアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を上側電極治具(20)と下側電極治具(21)との一対によって挟み、第1回目での求心方向(F1)と交叉した別な求心方向(F2)から集中する上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流により、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を溶着一体化するのである。(N2)は茲に第2回目での各別な1個所として、その接合面に形成された安定なナゲット、(S2)は同じく差し込み口筒部(13)の外周面に表出した上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡を示している。
【0050】
第2回目として上記1点(S2)が抵抗溶接された異形差筋アンカーを、その後図15、16のように再び一定角度(α)(図例では約120度)だけ同じ一方向へ回動させて、やはりアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を上下一対の電極治具(20)(21)により挟み、第2回目での求心方向(F2)と交叉した更に別な求心方向(F3)から集中する上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流によって、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を溶着一体化する。(N3)は第3回目での更に各別な1個所として、その接合面に形成された安定なナゲット、(S3)は同じく差し込み口筒部(13)に表出した上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡である。
【0051】
このような第1〜3回の抵抗溶接により、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面が、その任意な求心方向(F1)(F2)(F3)から各別な1点(S1)(S2)(S3)づつの合計3点(S1)(S2)(S3)において溶着一体化された異形差筋アンカーを、本発明の第1実施形態として図3〜5に示している。
【0052】
その場合、抵抗溶接機(W)における両電極治具(20)(21)との相関々係上、異形棒鋼(B)のリブ(11)が如何なる方向性にあっても、又同じく節(12)が如何なる位置にあっても、上記接合面の溶着状態を支障なく達成できるが、図3、4に併せて示す如く、上記合計3点(S1)(S2)(S3)のうちの任意な1点(S1)は異形棒鋼(B)の基底円周面(10)から突出するリブ(11)上において、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と抵抗溶接することが好ましい。
【0053】
しかも、図5から明白なように、異形棒鋼(B)とその先端部へ差し込み口筒部(13)が差し込み套嵌されたアンカースリーブ(A)との実質的な同芯円に対して、上記合計3点(S1)(S2)(S3)を全体的な放射対称分布型となる位置へ抵抗溶接することが望ましい。
【0054】
そうすれば、上記異形棒鋼(B)の先端部にアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)が差し込み套嵌されているとしても、その異形棒鋼(B)におけるリブ(11)の配列形態は節(12)のそれと異なって、アンカースリーブ(A)の外部から一目瞭然に看取できるため、上記第1、2ワーク受け治具(22)(23)への挿入セット時、その両電極治具(20)(21)による挟み加圧位置を正確に決定し得ることとなり、これを位置決め基準として、上記一定角度(α)の回動作業も容易に正しく行なえるからである。
【0055】
又、異形棒鋼(B)のリブ(11)はその基底円周面(10)から突出する円弧状の節(12)と異なり、軸線方向に沿い延在する言わば直線形態として、その頂部の実質的な平坦面をなしているため、特に上側電極治具(20)の狭小な加圧平面(30)と安定裡に密着しやすく、その上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流を上記接合面へロスなく高密度に集中させることができ、その効果的な熱膨張作用により、全体的な放射対称分布型をなす合計3点(S1)(S2)(S3)での溶着状態とも相俟って、引張強度に優れた異形差筋アンカーを得られるからである。
【0056】
因みに、先に例示した数値のアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とから、その第1実施形態の異形差筋アンカーを製造するに当り、図7のような定格容量:75KVA、最大加圧力:1,000Kgf、30,000Aの単相交流式抵抗溶接機(W)を使用し、これに上記狭小な加圧平面(30)の截頭円錐型上側電極治具(20)と、広大な加圧平面(31)の平盤型下側電極治具(21)を取り付けて、エアー加圧力:3.5Kg/cm(約700Kgf)、通電時間:25サイクル、溶接電流:16,800Aのもとに、第1〜3回の抵抗溶接を行なった結果、引張強度が約4.8トンの異形差筋アンカーを得ることができた。
【0057】
次に、図17、18は図4、5に対応する本発明の第2実施形態として、上記第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)並びに異形棒鋼(B)から成る異形差筋アンカーを示しているが、これではそのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を第1、2回の抵抗溶接により、その向かい合う求心方向(F1)(F2)から各別な1点(S1)(S2)づつの合計2点(S1)(S2)において溶着一体化している。
【0058】
つまり、異形棒鋼(B)の先端部に差し込み套嵌されているアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、図19、20のようにやはり上側電極治具(20)と下側電極治具(21)によって挟み、その上側電極治具(20)の狭小な加圧平面(30)が上記差し込み口筒部(13)を加圧する接点に集中する溶接電流により、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を上側電極治具(20)での求心方向(F1)から1点(S1)だけ先行的に溶着一体化する。(N1)はその接合面の1個所に形成された安定なナゲットである。
【0059】
その場合、図19、20に併せて示す如く、下側電極治具(21)としてはアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と対応する円弧状の加圧凹曲面(31a)が切り欠かれた平盤型を使用することもでき、その加圧凹曲面(31a)はやはり上側電極治具(20)の加圧平面(30)に比し広大であって、溶接電流値(熱容量)のアンバランスを生じる相関々係上、これにより上記差し込み口筒部(13)を加圧する接点には、上記第1実施形態の製造法と同じく、溶接電流が効果的に集中せず、異形差筋アンカーとしての使用に耐え得る安定・強固なナゲットが形成されない。
【0060】
そこで、第1回目として上側電極治具(20)での求心方向(F1)から1点(S1)が抵抗溶接された異形差筋アンカーを、その後図21、22のように一定角度(β)(図例では約180度)だけ回動させて、同じくアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を上下一対の電極治具(20)(21)により挟み、第1回目での求心方向(F1)とは別な求心方向(F2)から集中する上側電極治具(20)の加圧力と溶接電流によって、その異形棒鋼(B)における基底円周面(10)との接合面を溶着一体化するのである。(N2)は第2回目での各別な1個所として、その接合面に形成された安定なナゲットを示しており、茲に第1、2回の抵抗溶接を行なった結果、上記差し込み口筒部(13)の外周面には上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡が、向かい合う2点(S1)(S2)として各別に表出する。
【0061】
第2実施形態に係る異形差筋アンカーの製造上、やはり図7の抵抗溶接機(W)に狭小な加圧平面(30)の上側電極治具(20)と、広大な加圧凹曲面(31a)が切り欠かれた平盤型の下側電極治具(21)を取り付け使用して、上記第1実施形態と同じエアー加圧力や通電時間、溶接電流などの溶接条件下において、特にその異形棒鋼(B)のリブ(11)と対応合致する向かい合う位置での合計2点(S1)(S2)を、その1点(S1)(S2)づつ各別に抵抗溶接した結果、引張強度が約4.5トンの異形差筋アンカーを得ることができた。
【0062】
図23〜25は図3〜5に対応する本発明の第3実施形態として、上記第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)並びに異形棒鋼(B)から成る異形差筋アンカーを示しており、これではアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)が異形棒鋼(B)の先端部へ、その異形棒鋼(B)における節(12)の約2.6ピッチ分だけ深く差し込み套嵌された状態にある。
【0063】
そして、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、先ず上側電極治具(20)での任意な求心方向(F1)から1点(S1)において溶着一体化した後、その異形差筋アンカーを一旦軸線方向に沿って一定距離(Y)だけ移動させ、引き続き同じ求心方向(F2)からの上側電極治具(20)により、先の1点(S1)から隔たる位置での別個な1点(S2)において溶着一体化している。そのため、第1、2回の各別に抵抗溶接された合計2点(S1)(S2)が、同じ軸線上での並列状態に分布する結果となっている。
【0064】
その場合、第1、2回の溶接順序は問わず、その軸線方向に沿う移動距離(Y)も節(12)のピッチと関係なく、任意の数値に選定でき、又上記求心方向(F1)(F2)についてもリブ(11)と無関係な任意の方向性として指定すれば足りるが、特に図23、24から示唆されるように、上記合計2点(S1)(S2)を何れも異形棒鋼(B)のリブ(11)と対応合致する位置として、各別に抵抗溶接すると共に、上記移動距離(Y)を節(12)の一定ピッチ(P)とほぼ等しい数値に設定することが望ましい。一層安定なナゲット(N1)(N2)の形成により、引張強度に優れた異形差筋アンカーを製造できるからである。
【0065】
又、図26〜29は同じく図3〜5に対応する本発明の第4実施形態を示しており、この異形差筋アンカーでもアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)が異形棒鋼(B)の先端部へ、その異形棒鋼(B)における節(12)の約2.6ピッチ分だけ、やはり深く差し込み套嵌されている。
【0066】
そして、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、上記第2実施形態の製造法に準じ、第1、2回目の抵抗溶接として、上側電極治具(20)による一定角度(β)(図例では約180度)だけ交叉した求心方向(F1)(F2)から、その向かい合う1点(S1)(S2)づつの合計2点(S1)(S2)において、順次各別に溶着一体化した後、その異形差筋アンカーを一旦軸線方向に沿って一定距離(Y)だけ移動させ、しかも一定角度(γ)(図例では約90度)づつ回動させることにより、第3、4回目の抵抗溶接として、上記第1、2回目での上側電極治具(20)による求心方向(F1)(F2)と交叉した求心方向(F3)(F4)から、やはりその向かい合う1点(S3)(S4)づつの合計2点(S3)(S4)を順次各別に溶着一体化している。
【0067】
これによれば、第1〜4回の各別な抵抗溶接を行なった結果、上記アンカースリーブ(A)における差し込み口筒部(13)の外周面には上側電極治具(20)での凹状加圧痕跡が、向かい合う2点(S1)(S2)(S3)(S4)づつのほぼ直交する合計4点(S1)(S2)(S3)(S4)として表出すると共に、上記接合面の合計4個所にはこれらと対応位置する安定なナゲット(N1)(N2)(N3)(N4)が形成されることとなる。
【0068】
その際、図26、27から明白なように、第1、2回目での向かい合う合計2点(S1)(S2)を異形棒鋼(B)のリブ(11)上へ各別に抵抗溶接し、上記軸線方向に沿う移動距離(Y)を節(12)の一定ピッチ(P)とほぼ等しい数値に設定すると共に、第3、4回目での向かい合う合計2点(S3)(S4)をその節(12)同志の隣り合う相互間へ、各別に抵抗溶接することが好ましい。引張強度のますます向上した異形差筋アンカーを得られるからである。但し、上記第1〜4回の溶接順序は問わず、作業性を考慮して自由に決定することができる。
【0069】
更に、図30、31は図3、5に対応する本発明の第5実施形態として、やはり上記第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)並びに異形棒鋼(B)から成る異形差筋アンカーを示しているが、これでは上記第1〜4実施形態と異なり、そのアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、両電極治具(20)(21)での向かい合う求心方向(F1)(F2)から合計2点(S1)(S2)において一挙同時に溶着一体化している。
【0070】
即ち、図7と対応する図32の単相交流式抵抗溶接機(W)から示唆されるように、その溶接機(W)における上下一対の電極治具ホルダー(プラテン)(26)(27)へ、言わばプロジェクション溶接用となる互いに同じ広大な加圧平面(30)(31)を備えた上下一対の平盤型電極治具(20)(21)を取り付け使用する。
【0071】
そして、やはり加圧軸(28)と加圧シリンダー(29)により下降作動される上側電極治具(20)と、固定状態にある下側電極治具(21)との一対によって、異形棒鋼(B)の先端部に差し込み套嵌されているアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を、図33〜35のように挟んで強く加圧し乍ら、瞬時に大電流を通すのである。
【0072】
そうすれば、上下一対の電極治具(20)(21)が広大な加圧平面(30)(31)を備えた平盤型であるため、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)は図34、35のようなほぼ楕円形に塑性変形されることとなり、その外周面に両電極治具(20)(21)での凹状加圧痕跡が表出することはなく、その向かい合う合計2点(S1)(S2)でのフラット状態を呈するにとどまる。
【0073】
又、上記第1〜4実施形態の言わばスポット溶接用となる截頭円錐型に棒状化された上側電極治具(20)と比較した場合、その平盤型の両電極治具(20)(21)がアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を加圧する両接点には、溶接電流があまねく集中せず、或る程度分散することを否めないとしても、その溶接電流値(熱容量)は両電極治具(20)(21)の上下相互間においてバランスされるため、上記アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)の基底円周面(10)との接合面を、その向かい合う求心方向(F1)(F2)からの合計2点(S1)(S2)において、一挙同時に支障なく溶着一体化することができる。(N1)(N2)はその両電極治具(20)(21)の1回打ちにより、上記接合面に形成された安定なナゲットを示している。
【0074】
このような第5実施形態の製造法でも、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)よりも厚肉側をなす異形棒鋼(B)の基底円周面(10)自身が、やはり部分的なプロジェクションとして機能し、そのプロジェクション部分へ向かい合う求心方向(F1)(F2)から両電極治具(20)(21)の加圧力と溶接電流がバランス良く集中するため、安定なナゲット(N1)(N2)を同時形成することができるのである。
【0075】
因みに、第1実施形態と同じ数値のアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とから、その第5実施形態の異形差筋アンカーを製造するに当り、図32のような定格容量:75KVA、最大加圧力:1,000Kgf、30,000Aの単相交流式抵抗溶接機(W)を使用して、エアー加圧力:3,5Kg/cm(約700Kgf)、通電時間:25サイクル、溶接電流:16,800Aのもとで、特にその異形棒鋼(B)のリブ(11)と対応合致する向かい合う位置での合計2点(S1)(S2)を、両電極治具(20)(21)での同時1回打ちにより抵抗溶接した結果、引張強度が約4.1トンの充分使用に耐える異形差筋アンカーを得ることができた。
【0076】
尚、第2〜5実施形態におけるその他の構成は図1〜16の上記第1実施形態と実質的に同一であるため、その図17〜35に図1〜16との対応符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。第5実施形態でも向かい合う求心方向(F1)(F2)から2点(S1)(S2)を一挙同時に抵抗溶接後、上記第2実施形態の製造法に準じて、異形差筋アンカーを例えば約90度の一定角度だけ回動させ、第2回目に先の第1回目と交叉した向かい合う求心方向から2点を一挙同時に抵抗溶接して、その合計4点での溶着状態に保つことができる。
【0077】
上記第1〜5実施形態の何れにあっても、本発明の異形差筋アンカーを製造するために組み合わせ使用される異形棒鋼(B)とアンカースリーブ(A)とは、その厚みに大差があり、熱容量(溶接電流値)に著しいアンバランスを生じる関係上、従来からの常識によれば、これらを抵抗溶接する方法は到底考えられない。
【0078】
ところが、上記第1、2、5実施形態の試験結果によれば、アンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と異形棒鋼(B)とは実質上同芯円での嵌合状態にあって、その厚肉側をなす異形棒鋼(B)の基底円周面(10)自身が、部分的なプロジェクションとして機能し、この部分に集中する両電極治具(20)(21)の加圧力が、アンカースリーブ(A)における差し込み口筒部(13)との接触状態を高密度に保つほか、同じくプロジェクション部分に集中する溶接電流が、薄肉側をなすアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)と効果的にバランスして、そのプロジェクション部分が通電時間の経過に連れて軟化・圧潰され、上記差し込み口筒部(13)との接合面に安定なナゲット(N1)(N2)(N3)(N4)を形成することになるため、そのアンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)とを支障なく抵抗溶接することができたものと考えられる。
【0079】
その意味では、茲に抵抗溶接をプロジェクション溶接と言ってもさしつかえないが、本発明の場合従来のプロジェクション溶接と異なり、厚肉側の被溶接物(厚板)から薄肉側の被溶接物(薄板)に向かってプロジェクションを特別に打ち出し加工する必要がなく、しかも第1〜4実施形態の場合アンカースリーブ(A)における差し込み口筒部(13)の外周面には、截頭円錐型の上側電極治具(20)による凹状加圧痕跡が表出することになるため、プロジェクション溶接と言うよりもむしろスポット溶接に該当する。但し、第5実施形態の場合に限っては、その凹状加圧痕跡が表出しないため、その意味からむしろプロジェクション溶接に近いと言える。
【0080】
更に言えば、異形棒鋼(B)とその先端部へ差し込み套嵌されたアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)とは、実質上同芯円をなすため、たとえ異形棒鋼(B)の直径(D1)が大小変化しても、その熱容量(溶接電流値)はアンバランスにならず、常時ほぼ一定のバランス状態に保たれる関係上、図7、32のような同じ抵抗溶接機(W)と電極治具(20)(21)を使用し、しかも同じエアー加圧力や通電時間、溶接電流などの溶接条件下において、その直径(D1)の相違変化した異形棒鋼(B)とアンカースリーブ(A)とから成る各種異形差筋アンカーを支障なく製造することができる。
【0081】
つまり、上記第1〜5実施形態では何れもJIS規格の呼び名:D10の異形棒鋼(B)と、これに対応する太さの円筒型アンカースリーブ(A)とから成る異形差筋アンカーを代表例に挙げて、その数値に基き説明したが、JIS規格の呼び名:D13やD16などの異形棒鋼(B)とこれに対応する太さのアンカースリーブ(A)とから成る異形差筋アンカーについても、本発明を適用実施できる意味である。
【0082】
尚、異形棒鋼(B)の先端部へ予じめアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)を差し込み套嵌させておき、このような準備状態において抵抗溶接機(W)の第1、2ワーク受け治具(22)(23)へ挿入セット作業する旨を上記したが、その作業順序としてはアンカースリーブ(A)のみを先に第1、2ワーク受け治具(22)(23)へ挿入セットして、その位置決め固定状態に保ち、このようなアンカースリーブ(A)の差し込み口筒部(13)へその後、異形棒鋼(B)の先端部を人手や自動機械力により、差し込み套嵌させてもさしつかえない。
【0083】
上記のように製造された本発明の異形差筋アンカーは、例えばコンクリートブロック塀の建造工事において、コンクリート面(C)へ穿孔ドリルにより加工された埋込み穴(32)へ、そのアンカースリーブ(A)が図36のように埋没する状態として挿入使用される。
【0084】
そして、その後コンクリート面(C)から露出している異形棒鋼(B)を、ハンマーなどの叩打工具(33)によって打ち込むのであり、そうすれば上記埋込み穴(32)の底部に突っ張り制止される拡開用コーン(18)と相対して、その異形棒鋼(B)と一体をなすアンカースリーブ(A)が進出移動するため、そのアンカースリーブ(A)が図37のように先端側から拡開変形して、コンクリート面(C)へ離脱不能に喰い付き固定することとなり、上記コンクリートブロック塀の強固な骨格を形作る。
【0085】
その場合、上記アンカースリーブ(A)は異形棒鋼(B)の先端部へ差し込み套嵌されており、その差し込み口筒部(13)において異形棒鋼(B)と抵抗溶接されているため、上記作業過程での叩打力が異形棒鋼(B)の軸線方向に沿って正しく付加されなかったり、又コンクリートブロック塀などの補強骨格として使用中に、その径方向から繰り返し風圧などの剪断力を受けたりしても、上記アンカースリーブ(A)と異形棒鋼(B)との相対的な振れ動きを生ずるおそれがなく、まして軸線方向に沿って滑り移動したり、抜けたりするおそれは皆無である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る異形差筋アンカーの第1実施形態を示すアンカースリーブと異形棒鋼との分解側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の異形差筋アンカーを示す平面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図4の5−5線に沿う拡大断面図である。
【図6】アンカースリーブの変形実施形態を示す半欠截断面図である。
【図7】第1実施形態の製造に使用した抵抗溶接機を示す側面図である。
【図8】アンカースリーブと異形棒鋼との溶接準備状態を示す側面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】図8の10−10線に沿う拡大断面図である。
【図11】アンカースリーブと異形棒鋼との第1回溶接工程を示す側断面図である。
【図12】図11の12−12線に沿う拡大断面図である。
【図13】図12から異形差筋アンカーを一定角度だけ回動させた状態の断面図である。
【図14】第2回の溶接工程を示す断面図である。
【図15】図14から異形差筋アンカーを更に一定角度だけ回動させた状態の断面図である。
【図16】第3回の溶接工程を示す断面図である。
【図17】本発明に係る異形差筋アンカーの第2実施形態を示す側断面図である。
【図18】図17の18−18線に沿う拡大断面図である。
【図19】第2実施形態におけるアンカースリーブと異形棒鋼との溶接準備状態を示す断面図である。
【図20】その第1回溶接工程を示す断面図である。
【図21】図20から異形差筋アンカーを一定角度だけ回動させた状態の断面図である。
【図22】第2回の溶接工程を示す断面図である。
【図23】本発明に係る異形差筋アンカーの第3実施形態を示す平面図である。
【図24】図23の24−24線断面図である。
【図25】図24の25−25線に沿う拡大断面図である。
【図26】本発明に係る異形差筋アンカーの第4実施形態を示す平面図である。
【図27】図26の27−27線断面図である。
【図28】図27の28−28線に沿う拡大断面図である。
【図29】図27の29−29線に沿う拡大断面図である。
【図30】本発明に係る異形差筋アンカーの第5実施形態を示す平面図である。
【図31】図30の31−31線に沿う拡大断面図である。
【図32】第5実施形態の製造に使用した抵抗溶接機を示す側面図である。
【図33】第5実施形態におけるアンカースリーブと異形棒鋼との溶接準備状態を示す断面図である。
【図34】図33からの同時1回打ち溶接工程を示す側断面図である。
【図35】図34の35−35線に沿う拡大断面図である。
【図36】異形差筋アンカーの埋め込み使用過程を示す説明図である。
【図37】図36に続く埋め込み完了状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
(10)・基底円周面
(11)・リブ
(12)・節
(13)・差し込み口筒部
(14)・拡開口筒部
(15)・境界段部
(15a)・境界壁部
(17)・拡開用割り溝
(18)・拡開用コーン
(19)・圧入部
(20)(21)・電極治具
(22)・(23)・ワーク受け治具
(26)(27)・電極治具ホルダー(プラテン)
(28)・加圧軸
(29)・加圧シリンダー
(30)(31)(31a)・加圧平面
(A)・アンカースリーブ
(B)・異形棒鋼
(C)・コンクリート面
(W)・抵抗溶接機
(Y)・移動距離
(S1)(S2)(S3)(S4)・凹状加圧痕跡
(N1)(N2)(N3)(N4)・ナゲット
(α)(β)(γ)・回動角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定長さのコンクリート補強用異形棒鋼と、
その異形棒鋼と同種の金属素材から、基端側を上記異形棒鋼への差し込み口筒部とし、先端側を拡開口筒部として、その両口筒部の内径が相違する段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、その拡開用コーンを部分的に圧入セットした一定長さのアンカースリーブとから成り、
そのアンカースリーブの差し込み口筒部を上記異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向から1点づつの少なくとも合計2点を各別に抵抗溶接したことを特徴とする異形差筋アンカー。
【請求項2】
アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向からの1点と、これと一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする請求項1記載の異形差筋アンカー。
【請求項3】
アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置における同じ求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする請求項1記載の異形差筋アンカー。
【請求項4】
アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置にあって、しかも上記求心方向と一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする請求項1記載の異形差筋アンカー。
【請求項5】
少なくとも合計2点のうちの1点を、異形棒鋼のリブと対応合致する位置に抵抗溶接したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の異形差筋アンカー。
【請求項6】
少なくとも合計2点を、異形棒鋼とその先端部へ差し込み口筒部が差し込み套嵌されたアンカースリーブとの同芯円に対して、全体的な放射対称分布型となる位置に抵抗溶接したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の異形差筋アンカー。
【請求項7】
丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の截頭円錐型上側電極治具と、これよりも広大な平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する上側電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その求心方向から各別な1点づつの少なくとも合計2点において溶着一体化することを特徴とする異形差筋アンカーの製造法。
【請求項8】
丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の平盤型上側電極治具と、これと同じ平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する両電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その向かい合う一対づつの少なくとも合計2点において一挙同時に溶着一体化することを特徴とする異形差筋アンカーの製造法。
【請求項1】
一定長さのコンクリート補強用異形棒鋼と、
その異形棒鋼と同種の金属素材から、基端側を上記異形棒鋼への差し込み口筒部とし、先端側を拡開口筒部として、その両口筒部の内径が相違する段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、その拡開用コーンを部分的に圧入セットした一定長さのアンカースリーブとから成り、
そのアンカースリーブの差し込み口筒部を上記異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向から1点づつの少なくとも合計2点を各別に抵抗溶接したことを特徴とする異形差筋アンカー。
【請求項2】
アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた状態において、その任意な求心方向からの1点と、これと一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする請求項1記載の異形差筋アンカー。
【請求項3】
アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置における同じ求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする請求項1記載の異形差筋アンカー。
【請求項4】
アンカースリーブの差し込み口筒部を異形棒鋼の先端部へ、その異形棒鋼における節の少なくとも2ピッチ分だけ差し込み套嵌させると共に、
その任意な求心方向からの1点と、これから軸線方向へ一定距離だけ隔たる位置にあって、しかも上記求心方向と一定角度だけ交叉する別な求心方向からの少なくとも1点とを抵抗溶接したことを特徴とする請求項1記載の異形差筋アンカー。
【請求項5】
少なくとも合計2点のうちの1点を、異形棒鋼のリブと対応合致する位置に抵抗溶接したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の異形差筋アンカー。
【請求項6】
少なくとも合計2点を、異形棒鋼とその先端部へ差し込み口筒部が差し込み套嵌されたアンカースリーブとの同芯円に対して、全体的な放射対称分布型となる位置に抵抗溶接したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の異形差筋アンカー。
【請求項7】
丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の截頭円錐型上側電極治具と、これよりも広大な平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する上側電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その求心方向から各別な1点づつの少なくとも合計2点において溶着一体化することを特徴とする異形差筋アンカーの製造法。
【請求項8】
丸鋼素材からの塑性加工により、基端側の差し込み口筒部と先端側の拡開口筒部とがその内径の相違する一定長さの段付き穴形態又は仕切り盲形態に造形されると共に、その拡開用割り溝が付与された上記拡開口筒部内へ、楔作用する鋼塊の拡開用コーンがその先端側の部分的な張り出し状態に圧入セットされたアンカースリーブの上記差し込み口筒部を、コンクリート補強用異形棒鋼の先端部へ差し込み套嵌させた準備状態において、
上記アンカースリーブの差し込み口筒部を抵抗溶接機の平盤型上側電極治具と、これと同じ平盤型の下側電極治具によって挟み加圧し、その差し込み口筒部よりも厚肉な異形棒鋼の基底円周面自身をプロジェクションとして、ここへ部分的に集中する両電極治具の溶接電流により、上記差し込み口筒部と基底円周面との接合面を、その向かい合う一対づつの少なくとも合計2点において一挙同時に溶着一体化することを特徴とする異形差筋アンカーの製造法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2006−22550(P2006−22550A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201340(P2004−201340)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【出願人】(503256391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【出願人】(503256391)
【Fターム(参考)】
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