異方導電性樹脂組成物、異方導電性部材、及びその実装方法、並びに電子機器
【課題】接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、及びこれを用いた異方導電性部材を提供すること。
【解決手段】本発明に係る異方導電性樹脂組成物は、棒状、かつ中空の導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーとを含有し、光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率は、下記<数1>により算出した場合に7%以下のものとする。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
式中のdpは、活性光線照射後の光重合性組成物の密度、dMは、活性光線照射前の光重合性組成物の密度を示す。
【解決手段】本発明に係る異方導電性樹脂組成物は、棒状、かつ中空の導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーとを含有し、光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率は、下記<数1>により算出した場合に7%以下のものとする。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
式中のdpは、活性光線照射後の光重合性組成物の密度、dMは、活性光線照射前の光重合性組成物の密度を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性樹脂組成物に関する。また、異方導電性樹脂組成物により構成される異方導電性部材、及びその実装方法に関する。さらに、前記異方導電性部材を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化、高性能化等が進んでおり、各種微細回路接続に、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させた異方導電性フィルムが多用されるようになってきた。近時においては、電子部品の軽薄短小化や高性能化が急速に進む中で、ベアチップをガラス基板上に直接接続するCOG(Chip on Glass)技術、若しくはプリント基板上に直接接続するCOB(Chip on Boad)技術等を、異方導電性部材を用いて行おうとする動きが強まってきている。
【0003】
異方導電性フィルムは、導電性微粒子をバインダー樹脂中に所定量含有したものであり、相対峙させた電極間に挟持し、加熱圧着(例えば、170℃×5s、50−150MPa)することにより複数の電極を一括接続することが可能である。
【0004】
従来より、加熱圧着タイプの異方導電性フィルムの特性向上の検討が精力的になされてきた(例えば、特許文献1)。異方導電性部材に使用される導電性微粒子としては、従来から、金属微粉末、めっき等で金属被覆を行った有機系、無機系の粒子などが用いられている。異方導電性部材の特性向上を目的として、表面に磁性及び導電性が付与された繊維を、導電性微粒子として用いることが提案されている(特許文献2、3)。また、本発明者らのグループは、先般、バインダー樹脂中に含有する導電性微粒子として、配向制御しやすく、かつ、金属又は金属合金に由来する導電性と強度を維持したまま、軽量化を実現できる導電性磁性粉体を提案した(特許文献4−6)。なお、特許文献7については、後述する。
【特許文献1】特開2006−335926号公報
【特許文献2】特開2001−291431号公報
【特許文献3】特開2002−124318号公報
【特許文献4】特開2005−264214号公報
【特許文献5】特開2006−156196号公報
【特許文献6】特開2008−21513号公報
【特許文献7】WO2005/033061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細加工技術の著しい進展に伴って、接続ピッチの微細化や接続の細幅化が急速に進んできている。そのため、接続時の加熱により、各種材料の伸びのために接続部分にずれが生じたり、接続部分が細幅のため接続時の温度で周辺部材が熱的影響を受けたり、また、接続時の加熱により反りが発生したり、配線が断線したりするという問題等が生じてきた。近年においては、異方導電性部材を用いる用途、基材も多様化してきており、COF(Chip on Film)などフィルムに異方導電部材を用いる場合もある。このような場合には、接続時の加熱による反りの問題はより一層深刻となり、接続ピッチの微細化を実現することは困難である。このため、これらの問題を回避可能な技術が切望されている。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、及びこれを用いた異方導電性部材及び異方導電性部材の実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る異方導電性樹脂組成物は、棒状、かつ中空の導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーとを含有し、前記光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率は、下記<数1>により算出した場合に7%以下のものである。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
式中のdpは、水中置換法(JIS K7232−1982)による活性光線照射後の前記光重合性組成物の密度、dMは、比重瓶法(JIS K7112)による活性光線照射前の前記光重合性組成物の密度ものである。
【0008】
本発明に係る異方導電性樹脂組成物によれば、光重合性組成物を主成分としているので、活性光線照射により異方導電性部材を形成することが可能である。このため、従来の加熱硬化型の異方導電性樹脂組成物に比して、加熱により生ずる問題点を解決することができる。すなわち、接続時の加熱により、各種材料の伸びのために接続部分にずれが生じたり、接続部分が細幅のため接続時の温度で周辺部材が熱的影響を受けたり、また、接続時の加熱により反りが発生したり、配線が断線するという問題や、残存した応力歪による経時破断の問題等を解決することができる。また、光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率を上記のものとすることにより寸法安定性に優れる。さらに、上記導電性磁性粉体を用いることにより、配向性を高め、かつ、分散性を高めることが可能となる。これらの結果、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物を提供することができる。
【0009】
本発明の第1の態様に係る異方導電性部材の実装方法は、上記態様の異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、前記導電性磁性粉体が所定の方向に配向するように磁場を印加し、前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、前記塗膜に活性光線を照射するものである。
【0010】
本発明の第2の態様に係る異方導電性部材の実装方法は、導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーを含有する異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、前記導電性磁性粉体が、前記塗膜の面内方向に一軸配向するように磁場を印加し、前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、前記塗膜に活性光線を照射するものである。
【0011】
本発明の第2の態様に係る異方導電性部材の実装方法は、導電性磁性粉体が、相対峙される電極面に対して略水平であって、かつ一軸配向している異方導電性部材を得ることができる。これにより、従来とは異なるニーズや用途への応用展開が可能である。
【0012】
本発明の第1の態様に係る異方導電性部材は、上記態様の異方導電性樹脂組成物により構成される異方導電性部材であって、前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略垂直に、かつ、電極の長軸方向に配向しているものである。
【0013】
本発明の第2の態様に係る異方導電性部材は、上記態様の異方導電性樹脂組成物により構成される異方導電性部材であって、前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略水平に、かつ、電極の長軸方向に配向しているものである。
【0014】
本発明に係る電子機器は、上記態様の異方導電性部材を用いて、電子部品の接合が行われているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、及び異方導電性部材を提供することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。また、図中の各部材のサイズは、説明の便宜上のものであり実際とは異なる。
【0017】
本実施形態1に係る電子機器は、例えば、半導体装置、プリント回路基板、液晶表示パネル、プラズマ表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、又はフィールドエミッション表示パネルであり、本実施形態1に係る異方導電性部材を用いて電子部品の接合が行われているものである。本実施形態1においては、電子機器として液晶表示パネルを例として説明する。
【0018】
図1は、本実施形態1に係る液晶表示パネルの要部の模式的側面図である。液晶表示パネル100は、図1に示すように、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板1、対向基板2、偏光板3、シール材4、液晶5、ドライバIC6、異方導電性フィルム10等を備える。
【0019】
液晶表示パネル100は、図1に示すように、互いに対向配置されるTFTアレイ基板1及び対向基板2と、両基板を接着するシール材4とで囲まれる空間に、液晶5が封入されている。TFTアレイ基板1及び対向基板2としては、例えば、光透過性のあるガラス、ポリカーボネートなどの絶縁基板が用いられる。TFTアレイ基板1主面の端部近傍には、ドライバIC6が直接実装されている。ドライバIC6の近傍には、FPC(Flexible Printed Circuit)などの配線基板(不図示)が外部配線として配設される。
【0020】
ドライバIC6は、COG(Chip On Glass)技術により、TFTアレイ基板1上に異方導電性フィルム10を介して直接実装されている。異方導電性フィルム10は、TFTアレイ基板1とドライバIC6とを接着固定するとともに、TFTアレイ基板1に形成された複数の電極と、ドライバIC6に形成された複数の電極とを一括して電気的に接続する役割を担う。なお、COG技術に代えて、TCP(Tape Carrier Package)によりドライバIC6をTFTアレイ基板1に接続してもよい。この場合にも、異方導電性フィルムを用いて、TFTアレイ基板1とTCPとを接続固定することができる。外部からの各種信号は、外部配線を介してドライバIC6に供給され、ドライバIC6は、外部からの制御信号を異方導電性フィルム10を介してTFTアレイ基板1の走査信号線や表示信号線に供給する。
【0021】
図2に、本実施形態1に係る異方導電性フィルム10の模式的な斜視図を示す。異方導電性フィルム10は、導電性磁性粉体11と、光硬化性樹脂12を備える。導電性磁性粉体11は、異方導電性フィルム10を介して相対峙される電極同士を電気的に接続する役割を担う。一方、光硬化性樹脂12は、導電性磁性粉体11の配向性を維持し、かつ導電性磁性粉体11の異方的な導電性を発現させるための媒体としての役割を担う。また、相対峙する電極間の間隙を保持するスペーサとしての機能を果たす。
【0022】
導電性磁性粉体11は、図2に示すように棒状であって、導電性及び磁性を有するものを用いる。本実施形態1に係る導電性磁性粉体11は、異方導電性フィルム10の面に水平な方向に一軸配向している。この一軸配向の向きは、相対峙される電極(TFTアレイ基板1の電極と、ドライバIC6の電極)の長軸方向と一致するように配設する。これにより、異方的導電性を発現することができる。光硬化性樹脂12は、光重合性組成物に活性光線を照射することによって得られる。光硬化性樹脂の体積抵抗率は、109Ωcm以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、通常1020Ωcm以下であり、より一般的には1015Ωcm以下である。
【0023】
次に、本実施形態1に係る異方導電性フィルム10の製造方法について図3乃至図5の模式的な製造工程図を用いつつ説明する。まず、少なくとも光硬化性樹脂12の前駆体となる光重合性組成物を主成分とするバインダー、導電性磁性粉体11を含有する異方導電性樹脂組成物を用意する。光重合性組成物は、少なくとも、光重合性化合物と、光重合開始剤とを配合、又は混合することにより調製できる。光重合性化合物は、光重合性のモノマー、オリゴマー、又は/及びポリマーである。異方導電性樹脂組成物は、この光重合性組成物に、少なくとも導電性磁性粉体11を配合又は混合することにより調製できる。後述する希釈剤(特に、非反応性希釈剤を含む希釈剤)に溶解(または懸濁)させることにより異方導電性樹脂組成物を調製してもよい。配合方法(混合方法)は、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。
【0024】
異方導電性樹脂組成物の粘度は、用途、塗布方式に応じて変動し得るが、通常は、100〜10,000mPa・sとすることが好ましく、1000〜4000mPa・sとすることがより好ましい。粘度が100未満の場合には、導電性磁性粉体とバインダーが比重さにより分離する場合があり、10,000を超えると、磁場印加による導電性磁性粉体の配向が抑制される恐れがある。
【0025】
異方導電性組成物の塗膜形成を行う直前には、異方導電性樹脂組成物中に混入したゴミや、導電性磁性粉体11の凝集物を除去するために、フィルターを用いて濾過を行うことが好ましい。これにより、異方導電性フィルム10中に導電性磁性粉体11の凝集物が生じたり、ゴミ等が混入したりすることを防ぐことができる。
【0026】
濾過処理後、支持体21上に異方導電性樹脂組成物の塗膜20を支持体(基材)21上に形成する。支持体21としては、フィルム、シート、板状体等を用いることができる。ここでは、シート状の支持体21を用いる。塗工方法については、公知の方法を利用することができる。例えば、スピンコート法、ローラコート法、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法、フローコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法などが挙げられる。特に、バーコート法、ダイコート法、若しくはグラビアコート法のうちのマイクログラビア法を好適に用いることができる。マイクログラビア法は、ロールを搬送方向に回転する塗工方式であり、回転数に応じて、簡便に膜厚を調整でき、均一な膜厚が得やすいという特徴を有する。グラビアロール径としては、ロールの交換を簡便に実施する観点から、2〜5cm程度のものを好適に用いることができる。
【0027】
異方導電性樹脂の塗膜20を形成後、慣用の方法により乾燥処理を行ってもよく、必要に応じて加熱により乾燥させてもよい。乾燥における加熱温度は、重合開始剤や希釈剤(非反応性希釈剤)の種類などに応じて、適宜選択でき、通常、40〜250℃程度である。また、乾燥処理は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中または空気中において行ってもよく、常圧下または減圧下で行ってもよい。
【0028】
異方導電性樹脂の塗膜20の厚みは、特に限定されないが、1〜50μmとすることが好ましく、2〜25μmとすることがより好ましい。1μm未満とすると導電性磁性粉体の配向が抑制されたり、自己支持性の異方導電性フィルムが得られなかったりする恐れがある。一方、塗膜の膜厚が50μm以上であると、圧着による実装時に配向の乱れが生じる恐れがある。
【0029】
次いで、塗膜20が形成された支持体21を磁場中に搬送する。磁場の形成方法は、公知の方法を利用することができる。本実施形態1においては、第1の磁石22、第2の磁石23を近接位置に対向配置させることにより磁場を発生させた。本実施形態1においては、第1の磁石22のN極と、第2の磁石23のN極とが互いに対向配置するように設置した。無論、S極同士を対向配置させるようにしてもよい。第1の磁石22と第2の磁石23とは、同極同士を対向配置させているため、磁石の端部においては、磁石の対向面に対して略水平な方向の磁力線が、磁石の中央領域においては、磁石の対向面に対して略垂直な方向の磁力線が発生する。
【0030】
図4(a)に、塗膜20が形成された支持体21を磁場中に搬送した際の磁力線の方向を説明するための模式図を、図4(b)に、塗膜20中の導電性磁性粉体11の配向方向を説明するための模式図を示す。図4(a)中の符号24は、磁力線を示す。導電性磁性粉体11は、未硬化の光重合性組成物中に分散されているので磁場中に搬送されると、ランダムな配向状態から磁力線の方向と平行に導電性磁性粉体の長軸が配向した状態となる。
【0031】
第1の磁石22と第2の磁石23とは、磁石の端部においては、図4(a)に示すように磁石の対向面に対して略水平な方向の磁力線が、磁石の中央領域においては、磁石の対向面に対して略垂直な方向の磁力線が発生する。従って、図4(a)に示すように、点線A1で囲まれた図中の磁石左側端部領域と対向する塗膜20の導電性磁性粉体11は、図4(b)に示すように略水平方向に配列し、1点鎖線A2で囲まれた磁石中央領域と対向する塗膜20の導電性磁性粉体11は、磁石面に対して略垂直方向に配列する。さらに、2点鎖線A3で囲まれた図中の磁石右側端部領域と対向する塗膜20の導電性磁性粉体11は、再び略水平方向に配列する。
【0032】
第1の磁石22と第2の磁石23とを通過した直後の導電性磁性粉体11は、磁石端部の略水平方向の磁力線の影響を受けて、磁石面に対して略水平方向に、かつ搬送方向に配列する。この状態が保持されているタイミング(磁極間を通過中、若しくは通過後)にて活性光線を照射し(図3参照)、導電性磁性粉体11の配向性が保持されるように光重合性組成物を半硬化させる。これにより、異方導電性樹脂組成物からなる半硬化膜30が得られる。
【0033】
光照射源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、水素ランプ、重水素ランプ、蛍光灯、ハロゲンランプ、エキシマレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、ヘリウム−カドミウムレーザーが例示できる。光照射エネルギー量は、用途、塗膜の膜厚などによって異なるが、通常、0.1〜10000mJ/cm2程度、好ましくは0.5〜2000mJ/cm2程度である。光照射強度は、通常、1〜1000mW/cm2程度である。光照射の波長は、200〜1100nmの範囲であり、250〜400nmの紫外線を好ましく用いることができる。活性光線が400nmを超える可視光領域のものを用いる場合、光重合性組成物の半硬化プロセスや半硬化後の実装プロセスにおいて、暗室下で行う必要が生じる。光照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、又は空気中において行ってもよく、また、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
【0034】
導電性磁性粉体11の一軸配向を良好に得るためには、磁場の大きさ、支持体21の搬送速度、活性光線の照射タイミングが重要なファクターとなる。搬送速度が速すぎたり、活性光線の照射タイミングが遅すぎたりすると、導電性磁性粉体11の配向度の低下を招来する。活性光線の照射タイミングは、磁石間を通過後でなく、磁石間の通過中とすることもできる。なお、「光重合性組成物を半硬化させる」とは、導電性磁性粉体11の配向が保持でき、後述する支持体21の剥離が可能であって、かつ、後述する圧着工程において導電性磁性粉体11が半硬化膜30をつきやぶって露出することができるものであればよい。
【0035】
次いで、半硬化膜30が積層された支持体21を所望の大きさにカットする。そして、カットされた支持体21をTFTアレイ基板1の端部近傍のドライバIC6を実装する位置に、半硬化膜30がTFTアレイ基板1のTFT側電極31が形成されている面と接触するように載置する(図5(a)参照)。この際、TFT側電極31の電極の長軸方向と、半硬化膜30の導電性磁性粉体11の一軸配向方向が一致するように載置する。その後、支持体21を剥離する。なお、支持体21は、この剥離工程において、半硬化膜30から良好に剥離可能なものを選定する。例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂をコートした剥離性フィルム等を好適に用いることができる。
【0036】
、
支持体21を剥離後、半硬化膜30上にドライバIC6を実装する(図5(b)参照)。この際、ドライバIC6のドライバ側電極32と、TFT側電極31とが相対峙される位置に配置する。次いで、図5(c)に示すように、TFTアレイ基板1とドライバIC6との圧着を行う。これにより、半硬化膜30中に埋設されている導電性磁性粉体11が、半硬化膜30をつきやぶり、TFT側電極31若しくはドライバ側電極32と接触する。また、分散されていた導電性磁性粉体11を上下方向に圧縮させ、相互に接触せしめることができる。これにより、導電性磁性粉体11が膜厚方向に導電パスを形成する。そして、相対峙される複数のTFT側電極31と、ドライバ側電極32とを導電性磁性粉体11を介して一括して電気的に接続させることができる。導電性磁性粉体11は、TFT側電極31、ドライバ側電極32の長軸方向と一致させた方向に配向しているので、隣接する電極とは導通しない。
【0037】
圧縮工程により導電性磁性粉体11を介して相対峙される電極間が電気的に接続された状態にて、活性光線をTFTアレイ基板側1から照射する。これにより、半硬化膜30がさらに硬化せしめられる。これにより、TFTアレイ基板1上に形成されたTFT側電極31と、ドライバIC6上に形成されたドライバ側電極32とが電気的に接続されるとともに、TFTアレイ基板1とドライバIC6が異方導電性フィルム10を介して固設される。
【0038】
TFT側電極31は、ITO等の透明性導電膜とすることが好ましい。これにより、電極形成部位と、非電極形成部位とで差異なく光重合性組成物の硬化を進行せしめることができる。また、ITO等の透明性導電膜に代えてAl、Cu、Au等の金属膜を電極として用い、電極形成部位をデュアル硬化させてもよい。デュアル硬化とは、バインダー中に、光重合性組成物のみならず、熱重合開始剤、熱重合性組成物を予め添加しておき、光照射工程により発生する塗膜内の熱により熱重合を進行させる方法である。これにより、Al等の非透過性の電極を配設した場合においても、非透過部の光重合性組成物の硬化を進行せしめることができる。特に、電極ピッチが狭ピッチの場合により効果的に利用することができる。
【0039】
なお、異方導電性フィルム10中の光硬化性樹脂12は、すべての領域において十分に硬化することは必ずしも必要ではなく、Al等の非透過性の電極にマスクされた光重合性組成物は、半硬化の状態であってもよい。電極が配設されていない光透過領域において、光重合性組成物を十分に硬化せしめることにより、光透過領域がスペーサのように機能して機械的強度を維持することが可能である。
【0040】
次に、本実施形態1に好適に用いられる異方導電性樹脂組成物について説明する。本実施形態1に係る異方導電性樹脂組成物は、導電性磁性粉体11と、活性光線の照射により光硬化性樹脂12となる光重合性組成物を主成分とするバインダーを主要構成成分とする。
【0041】
導電性磁性粉体11は、棒状であって、磁性、及び導電性が付与されたものである。導電性磁性粉体11のバインダーに対する添加量は、用いる用途、求められる性能により変動し得るが、通常は、バインダー100重量部に対して、5〜40重量部とすることが好ましく、8〜30重量部とすることが更に好ましい。導電性磁性粉体11の添加量が5重量部未満の場合には、導電性磁性粉体が少ないことに起因して、接続電極間の接続不良が生ずる場合があり、40重量部を超える場合には、導電性磁性粉体が多いことに起因して、磁場による配向が起こりにくくなる場合がある。
【0042】
導電性磁性粉体11の主成分は、金属、金属合金又は金属酸化物とすることが好ましい。金属としては、特に限定されるものではないが、磁性を有する金属(ニッケル、コバルト、鉄等)が含まれるようにする。ニッケル、コバルト、鉄の他、金、銀、銅、アルミニウム、白金、鈴、鉛、亜鉛、チタン、クロム、マンガン、ジルコニウム、タングステン、インジウム等も好適な例として挙げることができる。上記金属の金属酸化物も好適な例として挙げることができる。上記金属、金属合金又は金属酸化物は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
導電性磁性粉体11の特に好ましい金属としては、加工性、導電性に優れ、磁化の保磁力が小さく、価格も安価なニッケルを挙げることができる。Ni化合物としては、Ni−P,Ni−B、Ni−Co,Ni−Fe,Ni−Al、Ni−Sn,Ni−Au等の各種Ni化合物を挙げることができる。中でも、Ni−Pは特に好ましい例として挙げることができる。Ni−Pを用いる場合、導電性磁性粉体中のリン含有量は2〜15重量%とすることが好ましい。
【0044】
導電性磁性粉体11は、中空形状とすることが好ましい。中空形状とすることにより、金属又は金属合金に由来する導電性と強度を維持したまま軽量化を実現できる。軽量化の実現により、導電性磁性粉体がフィルム内に沈降することを抑制し、分散性を高めることができる。また、配向制御しやすい異方導電材料を得ることができる。中空形状の導電性磁性粉体は、例えば、上記特許文献4〜6に記載の方法により製造することができる。
【0045】
導電性磁性粉体11の保磁力は、1〜500Oeの範囲とすることが好ましく、10〜300Oeとすることが更に好ましい。保磁力が1〜500Oeを超えた範囲においては、磁場を印加した際に、導電性磁性粉体の配向方向が不揃いとなる場合がある。導電性磁性粉体11の飽和磁化は、0.1〜55emu/gの範囲とすることが好ましく、5〜30emu/gとすることが更に好ましい。飽和磁化が0.1emu/g未満であると、磁場を印加しても導電性磁性粉体の配向を行うことができない場合がある。一方、55emu/gを超えると、導電性磁性粉体の磁化が大きくなりすぎて、配向した粉体間の距離が大きくなり、異方導電材料の性能を低下させる場合がある。また、導電性磁性粉体11の体積抵抗率は、10−6〜102Ω・cmとすることが好ましく、10-5〜101Ω・cmとすることがより好ましい。体積抵抗率が102Ω・cm未満であると、異方導電材料に電圧を印加すると抵抗加熱が起こる場合がある。
【0046】
導電性磁性粉体11の内径は、0.1〜1μmの範囲とすることが好ましい。また、導電性磁性粉体11の長さは、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることが更に好ましい。内径が0.1μm未満であると、中空形状として軽量化するという利点が得られにくくなり、一方、1μmを超えると、強度が低下し、異方導電材料作製時に中空形状を維持できなくなる場合がある。また、長さが0.5μm未満であると、電気的な接続にムラができる場合があり、20μmを超えると、配向のモーメントが大きくなるため、大きな印加磁場が必要となる。このため、導電性磁性粉体の配向制御を行うのに必要な電磁石の電力量が多くなり、コストが高くなる場合がある。
【0047】
導電性磁性粉体11のアスペクト比(導電性磁性粉体の長さ/導電性磁性粉体の外径)は、2〜100の範囲とすることが好ましく、5〜20とすることが更に好ましい。アスペクト比が2未満であると、球形に近くなり、配向制御が困難となる場合がある。一方、アスペクト比が100を超えると、配向のモーメントが大きくなり、エネルギー的に配向が困難となる場合がある。
【0048】
導電性磁性粉体11の肉厚は、10nm〜200nmの範囲とすることが好ましく、20nm〜150nmとすることが更に好ましい。肉厚が10nm未満であると、強度が低下する場合があり、一方、200nmを超えると、軽量化のメリットが得にくくなる場合がある。また、中空形状材料とするための鋳型除去が行えない場合がある。
【0049】
バインダーの主成分である光重合性組成物は、前述したように、活性光線の照射により硬化せしめられて光硬化性樹脂となる。光重合性組成物は、光重合性のモノマー、オリゴマー又は/及びポリマーを主成分とする。また、光重合性組成物には、光重合開始剤等の添加剤も含まれる。前述のデュアル重合を行う場合には、バインダー中に熱重合開始剤(熱ラジカル重合剤等)や熱重合性化合物を添加する。
【0050】
光重合性組成物としては、活性光線照射前後の収縮率が、下記<数1>により算出した場合に7%以下となるものを用いることが好ましい。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
式中のdpは、水中置換法(JIS K7232−1982)による活性光線照射後の光重合性組成物の密度、dMは、比重瓶法(JIS K7112)による活性光線照射前の光重合性組成物の密度を示す。なお、ここで言う「活性光線照射後の光重合性組成物」とは、活性光線の照射により、実際に電子機器等において使用可能な状態となった光硬化性樹脂のことである。
【0051】
光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率が7%以下のものを用いることにより、光硬化後に生ずる応力歪を低下させることができる。収縮率は、小さいほど好ましいので特にその下限は限定されないが、入手容易性の観点からは、0.5%以上とすることが好ましい。より好ましい範囲は、1〜4%の範囲のものである。
【0052】
光重合性組成物は、フルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とするものを好適な例として挙げることができる。また、アダマンチル基を含有する光重合性化合物も好適な例として挙げることができる。とりわけ、フルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とする光重合性組成物は、導電性磁性粉体、特に前述した中空形状の導電性磁性粉体との分散性が良好であるので特に好ましい。これらの構造を採用することにより、光硬化前後の収縮率を低減させることができる。
【0053】
特に好ましいフルオレン構造を有する光重合性化合物としては、下記一般式(1)で表わされるフルオレン構造を含有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【化2】
式中、R1a、R1b、R2a及びR2bは置換基を示し、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R4a及びR4bは水素原子又はメチル基を示す。k1及びk2は0〜4の整数を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示し、n1及びn2は0又は1以上の整数を示し、p1及びp2は1〜4の整数を示す。但し、m1+p1及びm2+p2は、1〜5の整数である。上記一般式(1)の化合物は、上記特許文献7に従って製造することができる。
【0054】
基R1a及びR1bで表される置換基としては、特に限定されないが、通常、アルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。基R1a及びR1bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、基R1a(又はR1b)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。なお、フルオレン骨格を構成するベンゼン環に対する基R1a(又はR1b)の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数k1及びk2は、0又は1、特に、0である。なお、置換数k1及びk2は、異なっていてもよいが、通常、同一である。
【0055】
置換基R2a及びR2bとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など);ヒドロキシル基;ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルキレンオキシ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
【0056】
なお、前記ヒドロキシル基又はヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基は、後述する多官能性(メタ)アクリレートの製造方法において、原料となる多価アルコールの残基((メタ)アクリル酸又はその誘導体と反応しなかった基)である場合が多い。
【0057】
好ましい置換基R2a(又はR2b)は、アルキル基(C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(C5−8シクロアルキル基)、アリール基(C6−10アリール基)、アラルキル基(C6−8アリール−C1−2アルキル基)、ヒドロキシル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルキレンオキシ基)である。これらのうち、特に、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−8アリール基が好ましい。置換基R2a(又はR2b)は、単独で又は2種以上組み合わせてベンゼン環に置換していてもよい。また、基R2a及びR2bは互いに同一又は異なっていてもよいが、通常、同一である。また、基R2a(又はR2b)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0058】
また、置換基R2a(又はR2b)の置換位置は、特に限定されず、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基と総称する場合がある)の置換位置に応じて、フェニル基の2〜6位(例えば、2位、5位、2,5−位など)に置換できる。
【0059】
好ましい置換数m1及びm2は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基の置換数にもよるが、0〜2、さらに好ましくは0〜1(特に0)である。なお、置換数m1及びm2は、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。
【0060】
R3a及びR3bで表されるアルキレン基としては、限定されないが、例えば、C2−4アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)などが例示でき、特に、C2−3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。なお、R3a及びR3bは互いに同一の又は異なるアルキレン基であってもよいが、通常、同一のアルキレン基である。
【0061】
アルコキシ基の置換数(付加数)n1及びn2は、同一又は異なって、0〜15程度の範囲から選択でき、例えば、0〜12(例えば、1〜12)、好ましくは0〜8(例えば、1〜8)、さらに好ましくは0〜6(例えば、1〜6)、特に0〜4(例えば、1〜4)程度であってもよい。また、n1とn2の和(n1+n2)は、0〜30程度の範囲から選択でき、例えば、0〜24(例えば、2〜24)、好ましくは0〜16(例えば、2〜12)、さらに好ましくは0〜12(例えば、2〜10)、特に0〜8(例えば、2〜8)程度であってもよい。なお、n1(又はn2)が2以上の場合、ポリアルコキシ(ポリアルキレンオキシ)基は、同一のアルコキシ基で構成されていてもよく、異種のアルコキシ基(例えば、エトキシ基とプロピレンオキシ基)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のアルコキシ基で構成されている場合が多い。
【0062】
(メタ)アクリロイルオキシ基含有基の置換数p1及びp2は、1〜2が好ましく、特に1が好ましい。また、p1とp2との和(p1+p2)は、例えば、2〜8、好ましくは2〜4程度(特に2)であってもよい。なお、置換数p1及びp2は、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。(メタ)アクリロイルオキシ基含有基の置換位置は、特に限定されず、p1(又はp2)の数に応じて、フルオレンの9位に置換するフェニル基の2〜6位から選択でき、p1(又はp2)が2の場合、例えば、3,4−位、3,5−位などであってもよい。1つの(メタ)アクリロイルオキシ基含有基が、通常、4位に置換していてもよい。
【0063】
なお、同一のベンゼン環に置換する複数の(メタ)アクリロイルオキシ基含有基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基含有基が、(i)n1=0(n2=0)である(メタ)アクリロイルオキシ基単独で構成されていてもよく、(ii)n1=0(n2=0)である(メタ)アクリロイルオキシ基とn1≠0(n2≠0)である(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基など)とで構成されていてもよく、(iii)n1≠0(n2≠0)である同一の(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基単独で構成されていてもよく、(iv)n1≠0(n2≠0)である異なる(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基[例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基と2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ基]で構成されていてもよい。
【0064】
前記式(1)で表される代表的な多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類、これらに対応する多価アルコール[9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類]のアルキレンオキシド(C2−4アルキレンオキシド)付加体の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0065】
9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,5−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ6−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ3,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス
(ジC1−4アルキル−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルコキシ−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−5−メトキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルコキシ−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリール−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]など}などが含まれる。
【0066】
9,9−ビス(トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類には、上記9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(2,4,6−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4,5−トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4,5−トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなどが含まれる。
【0067】
9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートには、例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン(n1=n2=1)、9,9−ビス{3,4−ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン}(n1=n2=2)などが含まれる。
【0068】
9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートには、例えば、9,9−ビス[3,4,5−トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン(n1=n2=1)、9,9−ビス{3,4,5−トリ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{トリ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン}(n1=n2=2)などが含まれる。
【0069】
これらの多官能性(メタ)アクリレートのうち、特に、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2−4アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート{例えば、9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)C2−3アルコキシ]フェニル}フルオレンなど}、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2−4アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート{例えば、9,9−ビス[トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{トリ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)C2−3アルコキシ]フェニル}フルオレンなど}などが好ましい。
【0070】
本発明の多官能性(メタ)アクリレートは、高反応性の(メタ)アクリロイルオキシ基含有基を多数有しているので、重合速度を向上できるとともに、硬化物の架橋密度を著しく大きくでき、高硬度の硬化物を効率よく得ることができる。
【0071】
光重合性組成物中に含まれる光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)などのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0073】
重合開始剤(及び光増感剤の総量)の使用量は、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、1〜30重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、5〜25重量部)、さらに好ましくは1.5〜10重量部程度であってもよい。光重合開始剤の使用量は、少なすぎると、組成物の重合性(又は光硬化性)が低下し、一方、多すぎると、光重合開始剤自身の吸収により、厚膜での光硬化性が低下する恐れがある。
【0074】
また、光増感剤の使用量は、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは20〜100重量部程度であってもよい。
【0075】
なお、前述したように、光重合開始剤に加えて熱重合開始剤を添加してもよい。熱重合開始剤としては、公知のものを利用することができる。例えば、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイドなど)など]を挙げることができる。
【0076】
反応性希釈剤(重合性希釈剤)としては、単官能性モノマー、多官能性モノマーなどが挙げられる。単官能性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−8シクロアルキル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸ジ乃至テトラシクロアルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシアルキルなど]、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、アミノアルキル(メタ)アクリレート(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーなどが例示できる。
【0077】
多官能性モノマーには、二官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート、エポキシ基含有化合物(グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのポリグリシジルエーテル類など)のポリ(例えば、ジ乃至ペンタ)(メタ)アクリレート、メラミンアクリレートなどが含まれる。
【0078】
二官能性(メタ)アクリレートとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノールA(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどのトリオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどのテトラオールのジ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0079】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)の三官能又は多官能性(メタ)アクリレート、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどのトリオールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0080】
反応性希釈剤は、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。反応性希釈剤の使用量は、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して、0〜100重量部の範囲から選択でき、例えば、1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜30重量部程度であってもよい。
【0081】
希釈剤には、非反応性希釈剤も含まれる。非反応性希釈剤を使用すると、重合性組成物の塗布性などを改善できる。非反応性希釈剤(又は溶剤)としては、有機溶剤、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;カルボン酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
アセテートなどの酢酸エステル、乳酸ブチルなど)、炭酸エステル(炭酸プロピレンなど)などのエステル類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などが例示できる。非反応性希釈剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
非反応性希釈剤の使用量(添加量)は、塗布方法などにより異なるが、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、通常、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
【0083】
異方導電性樹脂組成物には、バインダー中において導電性磁性粉体の分散性を向上させる観点から、シリカ粒子を添加することができる。シリカ粒子は、バインダー100重量部に対して、5部以上、30部以下とすることが好ましい。5重量部未満の場合には、分散性向上に効果を示さない場合があり、一方、30重量部を超えると、導電性磁性粉体の磁場による配向を阻害することがある。シリカ粒子の粒子径は、50nm〜2μmの範囲のものを好適に用いることができる。粒子径が50nm未満の場合には、分散性に効果を示さない場合がある。一方、粒子径が2μmを超えると、導電性磁性粉体の磁場による配向を阻害する場合がある。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0084】
また、異方導電性部材の接着性を向上させるために、接着性向上剤を添加することができる。例えば、有機ケイ素化合物、有機酸アリルエステル、エポキシ開環触媒、又は有機チタン化合物からなるもの等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0085】
さらに、異方導電性樹脂組成物には、必要に応じて、本来の特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤(有機リン化合物、無機リン化合物などのリン含有化合物、ハロゲン含有難燃剤、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物など)、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0086】
添加剤(難燃剤など)の割合は、添加剤の種類に応じて適宜選択でき、例えば、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.5〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度であってもよい。
【0087】
本実施形態1によれば、異方導電性部材(異方導電性フィルム10)の製造プロセスに、加熱工程を含まず、光照射によりバインダーを硬化せしめているので、従来の熱圧着により生じていた問題を解決することができる。すなわち、接続時の加熱により、各種材料の伸びのために接続部分にずれが生じたり、接続部分が細幅のため接続時の温度で周辺部材が熱的影響を受けたり、接続時の加熱により反りが発生したり、配線が断線したりするという問題等を解決することができる。また、加熱圧着時に、導電性磁性粉体の配向性が崩れるという問題もない。また、光硬化時に低収縮率なポリマーを用いることにより、寸法安定性の高い異方導電性樹脂組成物を提供することができる。これらの結果、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、異方導電性部材を提供することができる。
【0088】
また、中空形状の導電性磁性粉体を用いることにより、軽量化を実現できる。その結果、異方導電性樹脂組成物中の分散性を高め、かつ、磁場中に異方導電性樹脂組成物の塗膜を搬送した際の配向時間を短縮化することができる。
【0089】
なお、本発明は、加熱工程を行わずに光照射工程により異方導電性部材を提供し得るものであるが、異方導電性フィルムを電子部品に固設する際に一切の加熱工程を排除するものではなく、用途や求められる性能等に応じては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において最小限の加熱工程を行ってもよい。
【0090】
また、本発明に係る異方導電性部材とは、電極間に挟持して圧着し、硬化工程を経たものに限定されず、圧着工程を行う前の、導電性磁性粉体が所定の方向に配向し、かつその配向が保持される程度に半硬化された状態の半硬化膜も含むものとする。また、本実施形態1においては、導電性磁性粉体が塗膜の面内方向に一軸配向した例について説明したが、これに限定されるものではなく、所定の方向に導電性磁性粉体が一軸配向しているものも含む。
【0091】
また、本実施形態1においては、異方導電性部材としてフィルムとした例について説明したが、シート、塗料、接着材、粘着材、ペースト、インク等の種々の形態としての利用が可能である。また、異方導電性部材を液晶表示パネルの電子部品の接合に利用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、電子機器をはじめとした種々の電子部品の接合に利用することができる。
【0092】
[実施形態2]
次に、上記実施形態1とは異なる構造の異方導電性フィルムの一例について説明する。なお、以降の説明において、上記実施形態と同一の要素部材は同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。本実施形態2に係る異方導電性フィルムは、下記に説明する点を除く基本的な構成、及び製造方法は上記実施形態1と同様である。
【0093】
図6に、本実施形態2に係る異方導電性フィルム10aの模式的な斜視図を示す。異方導電性フィルム10aは、導電性磁性粉体11aと、光硬化性樹脂12を備える。本実施形態2に係る導電性磁性粉体11aは、異方導電性フィルム10aの面に垂直な方向に配向している。これにより、異方的導電性を発現することができる。
【0094】
次に、本実施形態2に係る異方導電性フィルム10aの製造方法について、図7及び図8を用いつつ説明する。まず、上記実施形態1と同様に異方導電性樹脂組成物を用意する。そして、異方導電性樹脂組成物を濾過処理した後、支持体21上に例えばバーコート法により異方導電性樹脂組成物を塗布して、塗膜20aを得る(図7参照)。次いで、塗膜20aが形成された支持体21を磁場中に搬送する。
【0095】
本実施形態2においては、第1の磁石22のN極と、第2の磁石23のS極とが互いに対向配置するように設置した。そして、第1の磁石22と第2の磁石23とを、金属製容器25の中に設置した。これにより、横方向の磁力線の染出しを無くし、塗膜20aの法線方向に一致する磁力線を得ることができる。支持体21の搬送は、連続的に行っても、搬送を断続的に行うステップ搬送方式により行ってもよい。ステップ搬送方式によれば、磁場を小さくしても一軸配向性を得ることができる。
【0096】
金属製容器25を通過した直後の導電性磁性粉体11aは、磁石面に対して略垂直方向に配列する。この状態が保持されているタイミングにて活性光線を照射し(図7参照)、導電性磁性粉体11の配向性が保持されるように光重合性組成物を半硬化させる。これにより、異方導電性樹脂組成物からなる半硬化膜30aが得られる。
【0097】
次いで、半硬化膜30aが積層された支持体21を所望の大きさにカットする。そして、カットされた支持体21をTFTアレイ基板1の端部近傍のドライバIC6を実装する位置に、半硬化膜30aがTFTアレイ基板1のTFT側電極31が形成されている面と接触するように載置する。その後、支持体21を剥離する。
【0098】
支持体21を剥離後、半硬化膜30上にドライバIC6を実装する。この際、ドライバIC6のドライバ側電極32と、TFT側電極31とが相対峙される位置に配置する。次いで、TFTアレイ基板1とドライバIC6との圧着を行う。これにより、半硬化膜30中に埋設されている導電性磁性粉体11が、半硬化膜30をつきやぶり、TFT側電極31若しくはドライバ側電極32と接触する。また、分散されていた導電性磁性粉体11を上下方向に圧縮させ、相互に接触せしめることができる。これにより、導電性磁性粉体11が膜面方向に対して垂直方向に導電パスを形成し、相対峙される複数のTFT側電極31と、ドライバ側電極32とを導電性磁性粉体11を介して一括して電気的に接続させることができる(図8参照)。
【0099】
圧縮工程により導電性磁性粉体11を介して相対峙される電極間が電気的に接続された状態にて、活性光線をTFTアレイ基板側1から照射する。これにより、半硬化膜30aがさらに硬化せしめられる。これにより、TFTアレイ基板1上に形成されたTFT側電極31と、ドライバIC6上に形成されたドライバ側電極32とが電気的に接続されるとともに、TFTアレイ基板1とドライバIC6が異方導電性フィルム10を介して固設される。
【0100】
本実施形態2に係る異方導電性樹脂組成物は、導電性磁性粉体11と、活性光線の照射により光硬化性樹脂12となる光重合性組成物を主成分とするバインダーを主要構成成分とする。導電性磁性粉体11は、棒状かつ中空であって、磁性、及び導電性が付与されたものである。導電性磁性粉体11の好ましい添加量や特性は、上記実施形態1で説明したとおりである。バインダーの主成分である光重合性組成物は、上記<数1>により算出した場合に7%以下となるものを用いる。これにより、寸法安定性を実現することができる。光重合性組成物は、上記実施形態1と同様にフルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とするものを好適な例として挙げることができる。好ましい例は、上記実施形態1で説明したとおりである。
【0101】
異方導電性樹脂組成物は、希釈剤(反応性希釈剤、非反応性希釈剤)を含んでいてもよい。具体例や、好ましい使用量は、上記実施形態1と同様である。また、バインダー中において導電性磁性粉体の分散性を向上させる観点から、シリカ粒子を添加することができる。また、異方導電性部材の接着性を向上させるために、接着性向上剤を添加することができる。さらに、本実施形態2に係る異方導電性樹脂組成物においても、本来の特性を損なわない範囲で、上記実施形態1と同様に慣用の添加剤を加えることができる。
【0102】
本実施形態2によれば、異方導電性フィルム10aの製造プロセスに、加熱工程を含まず、光照射によりバインダーを硬化せしめているので、従来の熱圧着により生じていた問題を解決し、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0103】
<実施例>
以下、本発明を具体的実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
光重合性組成物500mg(100部)にトルエン60mg(12部)を加え、試験管ミキサーを用いて2800rpmの条件下で1分間撹拌した。この溶液に導電性磁性粉体50mg(10部、9.1wt%)を加え、2800rpmの条件下で5分間混合撹拌することにより異方導電性樹脂組成物を得た。光重合性組成物としては、フルオレン骨格を有するアクリレートを主成分とするオグソールEA-F5010(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた。導電性磁性粉体としては、中空形状のNi−Pマイクロロッドを用いた。導電性磁性粉体の長さは、2.6μm、幅は0.35μmのものを用いた。
【0105】
導電性磁性粉体の製造方法については、上記特許文献4および特許文献6に記載の方法により調製した。本実施例1においては、導電性磁性粉体として、保磁力160kOe,質量飽和磁化13emu/g、内径0.15μm、肉厚0.1μm、導電性磁性粉体自体の体積抵抗率が101Ωcmのものを用いた。
【0106】
異方導電性樹脂組成物を調製後、目開き20μmのフィルター濾過を行った。その後、9μmの溝深さを有するバーコータにより、剥離性フィルム上に異方導電性樹脂組成物の塗膜を形成した。この塗膜付き剥離性フィルムを、磁場0.3Tのサマコバ磁石間を2.4cm/sの速度で搬送させることにより、導電性磁性粉体を配向させた。磁石配置は、図3で説明したように、第1の磁石22と第2の磁石23とが、互いに同極(N極)が対向配置されるように配置した。
【0107】
対向配置させた磁石間を通過した直後の塗膜を、2.4cm/sの速度で搬送させつつUV照射(水銀−キセノンランプ(San-ei Super Cure 203S)、40mW/cm2@365nm)を行い、塗膜中の光重合性化合物を半硬化させた。これにより、導電性磁性粉体が、塗膜の面内方向、かつ搬送方向に一軸配向した半硬化膜を得た。図9(a)に、搬送方向に切断した半硬化膜の切断面のSEM写真を、図9(b)に、搬送方向に直交する方向に切断した半硬化膜の切断面のSEM写真を示す。同図に示すように、導電性磁性粉体11は、搬送方向に一軸配向していることがわかる。
【0108】
その後、異方導電性フィルムを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚7.6μm)付基板を作製した。
【0109】
(実施例2)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例1と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚7.6μm)付基板を作製した。
【0110】
(実施例3)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例1と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚1.9μm)付基板を作製した。
【0111】
(実施例4)
上記実施例1と同様の異方導電性樹脂組成物を用い、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成した。この塗膜付き剥離性フィルムを、磁場0.3Tのヨーク付キューブ磁石間に搬送し、50s保持した。その後、再び、2.4cm/sの速度で搬送させ、磁石間を通過した直後の塗膜を、2.4cm/sの速度で搬送させつつUV照射((San-ei Super Cure 203S)、40mW/cm2@365nm)を行い、塗膜中の光重合性化合物を半硬化させた。その後、異方導電性フィルムを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0112】
(実施例5)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例4と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚11.4μm)付基板を作製した。
【0113】
(実施例6)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例4と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0114】
(実施例7)
光重合性組成物500mg(100部)にトルエン60mg(12部)、粒径250nmの球形シリカ粒子55.5mg(11.1部)を加え、試験管ミキサーを用いて2800rpmの条件下で1分間撹拌した以外は、上記実施例1と同様に異方導電性樹脂組成物を調製した。そして、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成させ、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、異方導電シートを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚6.7μm)付基板を作製した。
【0115】
(実施例8)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例7と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚8.6μm)付基板を作製した。
【0116】
(実施例9)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例7と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0117】
(実施例10)
導電性磁性粉体134mg(26.8部)を用いる以外は、上記実施例1と同様に異方導電性樹脂組成物を調製し、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成させ、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、異方導電シートを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚10.5μm)付基板を作製した。
【0118】
(実施例11)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例10と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚11.4μm)付基板を作製した。
【0119】
(実施例12)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例10と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚6.7μm)付基板を作製した。
【0120】
(実施例13)
上記実施例7と同様にシリカ粒子を含有させた光重合性組成物を調製し、導電性磁性粉体134mg(26.8部)を用いる以外は、上記実施例1と同様に異方導電性樹脂組成物を調製し、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成させ、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、異方導電シートを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚10.5μm)付基板を作製した。
【0121】
(実施例14)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例13と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚12.4μm)付基板を作製した。
【0122】
(実施例15)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例13と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0123】
(比較例1)
導電性磁性粉体を含有させない以外は、上記実施例1と同様に樹脂組成物を得た。上記実施例1と同様に塗膜を形成させて、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、半硬化させたシートを剥離性フィルムから剥離し、アルミ平板に付着させた。そして、活性光線を照射して、オグソールEA-F5010の光硬化フィルム(膜厚20μm)を作製した。この硬化膜の体積抵抗率を、(株)ダイアインスツルメンツ社製のロレスタGPにより測定した。
【0124】
(比較例2)
磁場0.3Tのサマコバ磁石を用いない以外は、実施例1と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させることにより、磁場により導電性磁性粉体を配向させていない無配向フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。また、別途、半硬化させたシートを剥離性フィルムから剥離し、アルミ平板に付着させて、活性光線を照射して、無配向フィルムを作製し、株式会社ダイアインスツルメンツ社製のロレスタGPによりこの硬化フィルムの体積抵抗率を測定した。
【0125】
(比較例3)
磁場0.3Tのサマコバ磁石を用いない以外は、実施例10と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させることにより、磁場により導電性磁性粉体を配向させていない無配向フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。また、別途、半硬化させたシートを剥離性フィルムから剥離し、アルミ平板に付着させて、活性光線を照射して、無配向フィルムを作製し、(株)ダイアインスツルメンツ社製のロレスタGPによりこの硬化フィルムの体積抵抗率を測定した。
【0126】
[物性評価]
実施例1〜15及び比較例1〜3の異方導電フィルムの膜厚方向の抵抗、膜面方向の抵抗、膜厚方向の体積抵抗率、膜面方向の体積抵抗率、異方性比を求めた結果を図10に示す。実施例1〜15のいずれにおいても、ITOパターン電極において異方導電性を発現することを確認した。膜厚方向の体積抵抗率は、101〜104Ωcmの範囲であり、膜面方向の体積抵抗率は1011Ωcmであり、異方性比は106〜109であった。バインダー樹脂として熱硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂を用いた場合においても、良好な導電性が発現することを確認した。また、配線ピッチ20μmという狭ピッチな電極間においても、異方導電性を発現することができた。
【0127】
図11(a)に実施例1、図11(b)に実施例2、図11(c)に実施例3の異方導電シート付基板の光学顕微鏡像を示す。また、図12(a)に実施例4、図12(b)に実施例5、図12(c)に実施例6の異方導電シート付基板の光学顕微鏡像を示す。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】実施形態1に係る液晶表示パネルの構造を説明するための模式図。
【図2】実施形態1に係る異方導電性フィルムの模式的斜視図。
【図3】実施形態1に係る異方導電性フィルムの製造工程を説明するための模式図。
【図4】(a)は、実施形態1に係る磁場の磁力線を説明するための図であり、(b)は、導電性磁性粉体の配向性を説明するための図。
【図5】(a)〜(c)は、実施形態1に係る異方導電性フィルムの製造工程を説明するための模式的な切断部断面図。
【図6】実施形態2に係る異方導電性フィルムの模式的斜視図。
【図7】実施形態2に係る異方導電性フィルムの製造工程を説明するための模式図。
【図8】実施形態2に係る異方導電性フィルムの切断部断面図。
【図9】(a)及び(b)は、実施例1に係る半硬化膜(異方導電性フィルム)のSEM写真。
【図10】実施例1〜15、比較例1〜3に係る異方導電性フィルムの製造条件、物性測定値を示す表。
【図11】(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3に係る異方導電性フィルムとITO基板との光学顕微鏡画像。
【図12】(a)は実施例4、(b)は実施例5、(c)は実施例6に係る異方導電性フィルムとITO基板との光学顕微鏡画像。
【符号の説明】
【0129】
1 TFTアレイ基板
2 対向基板
3 偏光板
4 シール材
5 液晶
6 ドライバIC
10 異方導電性フィルム
11 導電性磁性粉体
12 バインダー
20 塗膜
21 支持体
22 第1の磁石
23 第2の磁石
30 半硬化膜
31 TFT側電極
32 ドライバ側電極
100 液晶表示パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性樹脂組成物に関する。また、異方導電性樹脂組成物により構成される異方導電性部材、及びその実装方法に関する。さらに、前記異方導電性部材を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化、高性能化等が進んでおり、各種微細回路接続に、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させた異方導電性フィルムが多用されるようになってきた。近時においては、電子部品の軽薄短小化や高性能化が急速に進む中で、ベアチップをガラス基板上に直接接続するCOG(Chip on Glass)技術、若しくはプリント基板上に直接接続するCOB(Chip on Boad)技術等を、異方導電性部材を用いて行おうとする動きが強まってきている。
【0003】
異方導電性フィルムは、導電性微粒子をバインダー樹脂中に所定量含有したものであり、相対峙させた電極間に挟持し、加熱圧着(例えば、170℃×5s、50−150MPa)することにより複数の電極を一括接続することが可能である。
【0004】
従来より、加熱圧着タイプの異方導電性フィルムの特性向上の検討が精力的になされてきた(例えば、特許文献1)。異方導電性部材に使用される導電性微粒子としては、従来から、金属微粉末、めっき等で金属被覆を行った有機系、無機系の粒子などが用いられている。異方導電性部材の特性向上を目的として、表面に磁性及び導電性が付与された繊維を、導電性微粒子として用いることが提案されている(特許文献2、3)。また、本発明者らのグループは、先般、バインダー樹脂中に含有する導電性微粒子として、配向制御しやすく、かつ、金属又は金属合金に由来する導電性と強度を維持したまま、軽量化を実現できる導電性磁性粉体を提案した(特許文献4−6)。なお、特許文献7については、後述する。
【特許文献1】特開2006−335926号公報
【特許文献2】特開2001−291431号公報
【特許文献3】特開2002−124318号公報
【特許文献4】特開2005−264214号公報
【特許文献5】特開2006−156196号公報
【特許文献6】特開2008−21513号公報
【特許文献7】WO2005/033061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細加工技術の著しい進展に伴って、接続ピッチの微細化や接続の細幅化が急速に進んできている。そのため、接続時の加熱により、各種材料の伸びのために接続部分にずれが生じたり、接続部分が細幅のため接続時の温度で周辺部材が熱的影響を受けたり、また、接続時の加熱により反りが発生したり、配線が断線したりするという問題等が生じてきた。近年においては、異方導電性部材を用いる用途、基材も多様化してきており、COF(Chip on Film)などフィルムに異方導電部材を用いる場合もある。このような場合には、接続時の加熱による反りの問題はより一層深刻となり、接続ピッチの微細化を実現することは困難である。このため、これらの問題を回避可能な技術が切望されている。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、及びこれを用いた異方導電性部材及び異方導電性部材の実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る異方導電性樹脂組成物は、棒状、かつ中空の導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーとを含有し、前記光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率は、下記<数1>により算出した場合に7%以下のものである。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
式中のdpは、水中置換法(JIS K7232−1982)による活性光線照射後の前記光重合性組成物の密度、dMは、比重瓶法(JIS K7112)による活性光線照射前の前記光重合性組成物の密度ものである。
【0008】
本発明に係る異方導電性樹脂組成物によれば、光重合性組成物を主成分としているので、活性光線照射により異方導電性部材を形成することが可能である。このため、従来の加熱硬化型の異方導電性樹脂組成物に比して、加熱により生ずる問題点を解決することができる。すなわち、接続時の加熱により、各種材料の伸びのために接続部分にずれが生じたり、接続部分が細幅のため接続時の温度で周辺部材が熱的影響を受けたり、また、接続時の加熱により反りが発生したり、配線が断線するという問題や、残存した応力歪による経時破断の問題等を解決することができる。また、光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率を上記のものとすることにより寸法安定性に優れる。さらに、上記導電性磁性粉体を用いることにより、配向性を高め、かつ、分散性を高めることが可能となる。これらの結果、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物を提供することができる。
【0009】
本発明の第1の態様に係る異方導電性部材の実装方法は、上記態様の異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、前記導電性磁性粉体が所定の方向に配向するように磁場を印加し、前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、前記塗膜に活性光線を照射するものである。
【0010】
本発明の第2の態様に係る異方導電性部材の実装方法は、導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーを含有する異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、前記導電性磁性粉体が、前記塗膜の面内方向に一軸配向するように磁場を印加し、前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、前記塗膜に活性光線を照射するものである。
【0011】
本発明の第2の態様に係る異方導電性部材の実装方法は、導電性磁性粉体が、相対峙される電極面に対して略水平であって、かつ一軸配向している異方導電性部材を得ることができる。これにより、従来とは異なるニーズや用途への応用展開が可能である。
【0012】
本発明の第1の態様に係る異方導電性部材は、上記態様の異方導電性樹脂組成物により構成される異方導電性部材であって、前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略垂直に、かつ、電極の長軸方向に配向しているものである。
【0013】
本発明の第2の態様に係る異方導電性部材は、上記態様の異方導電性樹脂組成物により構成される異方導電性部材であって、前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略水平に、かつ、電極の長軸方向に配向しているものである。
【0014】
本発明に係る電子機器は、上記態様の異方導電性部材を用いて、電子部品の接合が行われているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、及び異方導電性部材を提供することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。また、図中の各部材のサイズは、説明の便宜上のものであり実際とは異なる。
【0017】
本実施形態1に係る電子機器は、例えば、半導体装置、プリント回路基板、液晶表示パネル、プラズマ表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、又はフィールドエミッション表示パネルであり、本実施形態1に係る異方導電性部材を用いて電子部品の接合が行われているものである。本実施形態1においては、電子機器として液晶表示パネルを例として説明する。
【0018】
図1は、本実施形態1に係る液晶表示パネルの要部の模式的側面図である。液晶表示パネル100は、図1に示すように、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板1、対向基板2、偏光板3、シール材4、液晶5、ドライバIC6、異方導電性フィルム10等を備える。
【0019】
液晶表示パネル100は、図1に示すように、互いに対向配置されるTFTアレイ基板1及び対向基板2と、両基板を接着するシール材4とで囲まれる空間に、液晶5が封入されている。TFTアレイ基板1及び対向基板2としては、例えば、光透過性のあるガラス、ポリカーボネートなどの絶縁基板が用いられる。TFTアレイ基板1主面の端部近傍には、ドライバIC6が直接実装されている。ドライバIC6の近傍には、FPC(Flexible Printed Circuit)などの配線基板(不図示)が外部配線として配設される。
【0020】
ドライバIC6は、COG(Chip On Glass)技術により、TFTアレイ基板1上に異方導電性フィルム10を介して直接実装されている。異方導電性フィルム10は、TFTアレイ基板1とドライバIC6とを接着固定するとともに、TFTアレイ基板1に形成された複数の電極と、ドライバIC6に形成された複数の電極とを一括して電気的に接続する役割を担う。なお、COG技術に代えて、TCP(Tape Carrier Package)によりドライバIC6をTFTアレイ基板1に接続してもよい。この場合にも、異方導電性フィルムを用いて、TFTアレイ基板1とTCPとを接続固定することができる。外部からの各種信号は、外部配線を介してドライバIC6に供給され、ドライバIC6は、外部からの制御信号を異方導電性フィルム10を介してTFTアレイ基板1の走査信号線や表示信号線に供給する。
【0021】
図2に、本実施形態1に係る異方導電性フィルム10の模式的な斜視図を示す。異方導電性フィルム10は、導電性磁性粉体11と、光硬化性樹脂12を備える。導電性磁性粉体11は、異方導電性フィルム10を介して相対峙される電極同士を電気的に接続する役割を担う。一方、光硬化性樹脂12は、導電性磁性粉体11の配向性を維持し、かつ導電性磁性粉体11の異方的な導電性を発現させるための媒体としての役割を担う。また、相対峙する電極間の間隙を保持するスペーサとしての機能を果たす。
【0022】
導電性磁性粉体11は、図2に示すように棒状であって、導電性及び磁性を有するものを用いる。本実施形態1に係る導電性磁性粉体11は、異方導電性フィルム10の面に水平な方向に一軸配向している。この一軸配向の向きは、相対峙される電極(TFTアレイ基板1の電極と、ドライバIC6の電極)の長軸方向と一致するように配設する。これにより、異方的導電性を発現することができる。光硬化性樹脂12は、光重合性組成物に活性光線を照射することによって得られる。光硬化性樹脂の体積抵抗率は、109Ωcm以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、通常1020Ωcm以下であり、より一般的には1015Ωcm以下である。
【0023】
次に、本実施形態1に係る異方導電性フィルム10の製造方法について図3乃至図5の模式的な製造工程図を用いつつ説明する。まず、少なくとも光硬化性樹脂12の前駆体となる光重合性組成物を主成分とするバインダー、導電性磁性粉体11を含有する異方導電性樹脂組成物を用意する。光重合性組成物は、少なくとも、光重合性化合物と、光重合開始剤とを配合、又は混合することにより調製できる。光重合性化合物は、光重合性のモノマー、オリゴマー、又は/及びポリマーである。異方導電性樹脂組成物は、この光重合性組成物に、少なくとも導電性磁性粉体11を配合又は混合することにより調製できる。後述する希釈剤(特に、非反応性希釈剤を含む希釈剤)に溶解(または懸濁)させることにより異方導電性樹脂組成物を調製してもよい。配合方法(混合方法)は、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。
【0024】
異方導電性樹脂組成物の粘度は、用途、塗布方式に応じて変動し得るが、通常は、100〜10,000mPa・sとすることが好ましく、1000〜4000mPa・sとすることがより好ましい。粘度が100未満の場合には、導電性磁性粉体とバインダーが比重さにより分離する場合があり、10,000を超えると、磁場印加による導電性磁性粉体の配向が抑制される恐れがある。
【0025】
異方導電性組成物の塗膜形成を行う直前には、異方導電性樹脂組成物中に混入したゴミや、導電性磁性粉体11の凝集物を除去するために、フィルターを用いて濾過を行うことが好ましい。これにより、異方導電性フィルム10中に導電性磁性粉体11の凝集物が生じたり、ゴミ等が混入したりすることを防ぐことができる。
【0026】
濾過処理後、支持体21上に異方導電性樹脂組成物の塗膜20を支持体(基材)21上に形成する。支持体21としては、フィルム、シート、板状体等を用いることができる。ここでは、シート状の支持体21を用いる。塗工方法については、公知の方法を利用することができる。例えば、スピンコート法、ローラコート法、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法、フローコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法などが挙げられる。特に、バーコート法、ダイコート法、若しくはグラビアコート法のうちのマイクログラビア法を好適に用いることができる。マイクログラビア法は、ロールを搬送方向に回転する塗工方式であり、回転数に応じて、簡便に膜厚を調整でき、均一な膜厚が得やすいという特徴を有する。グラビアロール径としては、ロールの交換を簡便に実施する観点から、2〜5cm程度のものを好適に用いることができる。
【0027】
異方導電性樹脂の塗膜20を形成後、慣用の方法により乾燥処理を行ってもよく、必要に応じて加熱により乾燥させてもよい。乾燥における加熱温度は、重合開始剤や希釈剤(非反応性希釈剤)の種類などに応じて、適宜選択でき、通常、40〜250℃程度である。また、乾燥処理は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中または空気中において行ってもよく、常圧下または減圧下で行ってもよい。
【0028】
異方導電性樹脂の塗膜20の厚みは、特に限定されないが、1〜50μmとすることが好ましく、2〜25μmとすることがより好ましい。1μm未満とすると導電性磁性粉体の配向が抑制されたり、自己支持性の異方導電性フィルムが得られなかったりする恐れがある。一方、塗膜の膜厚が50μm以上であると、圧着による実装時に配向の乱れが生じる恐れがある。
【0029】
次いで、塗膜20が形成された支持体21を磁場中に搬送する。磁場の形成方法は、公知の方法を利用することができる。本実施形態1においては、第1の磁石22、第2の磁石23を近接位置に対向配置させることにより磁場を発生させた。本実施形態1においては、第1の磁石22のN極と、第2の磁石23のN極とが互いに対向配置するように設置した。無論、S極同士を対向配置させるようにしてもよい。第1の磁石22と第2の磁石23とは、同極同士を対向配置させているため、磁石の端部においては、磁石の対向面に対して略水平な方向の磁力線が、磁石の中央領域においては、磁石の対向面に対して略垂直な方向の磁力線が発生する。
【0030】
図4(a)に、塗膜20が形成された支持体21を磁場中に搬送した際の磁力線の方向を説明するための模式図を、図4(b)に、塗膜20中の導電性磁性粉体11の配向方向を説明するための模式図を示す。図4(a)中の符号24は、磁力線を示す。導電性磁性粉体11は、未硬化の光重合性組成物中に分散されているので磁場中に搬送されると、ランダムな配向状態から磁力線の方向と平行に導電性磁性粉体の長軸が配向した状態となる。
【0031】
第1の磁石22と第2の磁石23とは、磁石の端部においては、図4(a)に示すように磁石の対向面に対して略水平な方向の磁力線が、磁石の中央領域においては、磁石の対向面に対して略垂直な方向の磁力線が発生する。従って、図4(a)に示すように、点線A1で囲まれた図中の磁石左側端部領域と対向する塗膜20の導電性磁性粉体11は、図4(b)に示すように略水平方向に配列し、1点鎖線A2で囲まれた磁石中央領域と対向する塗膜20の導電性磁性粉体11は、磁石面に対して略垂直方向に配列する。さらに、2点鎖線A3で囲まれた図中の磁石右側端部領域と対向する塗膜20の導電性磁性粉体11は、再び略水平方向に配列する。
【0032】
第1の磁石22と第2の磁石23とを通過した直後の導電性磁性粉体11は、磁石端部の略水平方向の磁力線の影響を受けて、磁石面に対して略水平方向に、かつ搬送方向に配列する。この状態が保持されているタイミング(磁極間を通過中、若しくは通過後)にて活性光線を照射し(図3参照)、導電性磁性粉体11の配向性が保持されるように光重合性組成物を半硬化させる。これにより、異方導電性樹脂組成物からなる半硬化膜30が得られる。
【0033】
光照射源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、水素ランプ、重水素ランプ、蛍光灯、ハロゲンランプ、エキシマレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、ヘリウム−カドミウムレーザーが例示できる。光照射エネルギー量は、用途、塗膜の膜厚などによって異なるが、通常、0.1〜10000mJ/cm2程度、好ましくは0.5〜2000mJ/cm2程度である。光照射強度は、通常、1〜1000mW/cm2程度である。光照射の波長は、200〜1100nmの範囲であり、250〜400nmの紫外線を好ましく用いることができる。活性光線が400nmを超える可視光領域のものを用いる場合、光重合性組成物の半硬化プロセスや半硬化後の実装プロセスにおいて、暗室下で行う必要が生じる。光照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中、又は空気中において行ってもよく、また、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
【0034】
導電性磁性粉体11の一軸配向を良好に得るためには、磁場の大きさ、支持体21の搬送速度、活性光線の照射タイミングが重要なファクターとなる。搬送速度が速すぎたり、活性光線の照射タイミングが遅すぎたりすると、導電性磁性粉体11の配向度の低下を招来する。活性光線の照射タイミングは、磁石間を通過後でなく、磁石間の通過中とすることもできる。なお、「光重合性組成物を半硬化させる」とは、導電性磁性粉体11の配向が保持でき、後述する支持体21の剥離が可能であって、かつ、後述する圧着工程において導電性磁性粉体11が半硬化膜30をつきやぶって露出することができるものであればよい。
【0035】
次いで、半硬化膜30が積層された支持体21を所望の大きさにカットする。そして、カットされた支持体21をTFTアレイ基板1の端部近傍のドライバIC6を実装する位置に、半硬化膜30がTFTアレイ基板1のTFT側電極31が形成されている面と接触するように載置する(図5(a)参照)。この際、TFT側電極31の電極の長軸方向と、半硬化膜30の導電性磁性粉体11の一軸配向方向が一致するように載置する。その後、支持体21を剥離する。なお、支持体21は、この剥離工程において、半硬化膜30から良好に剥離可能なものを選定する。例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂をコートした剥離性フィルム等を好適に用いることができる。
【0036】
、
支持体21を剥離後、半硬化膜30上にドライバIC6を実装する(図5(b)参照)。この際、ドライバIC6のドライバ側電極32と、TFT側電極31とが相対峙される位置に配置する。次いで、図5(c)に示すように、TFTアレイ基板1とドライバIC6との圧着を行う。これにより、半硬化膜30中に埋設されている導電性磁性粉体11が、半硬化膜30をつきやぶり、TFT側電極31若しくはドライバ側電極32と接触する。また、分散されていた導電性磁性粉体11を上下方向に圧縮させ、相互に接触せしめることができる。これにより、導電性磁性粉体11が膜厚方向に導電パスを形成する。そして、相対峙される複数のTFT側電極31と、ドライバ側電極32とを導電性磁性粉体11を介して一括して電気的に接続させることができる。導電性磁性粉体11は、TFT側電極31、ドライバ側電極32の長軸方向と一致させた方向に配向しているので、隣接する電極とは導通しない。
【0037】
圧縮工程により導電性磁性粉体11を介して相対峙される電極間が電気的に接続された状態にて、活性光線をTFTアレイ基板側1から照射する。これにより、半硬化膜30がさらに硬化せしめられる。これにより、TFTアレイ基板1上に形成されたTFT側電極31と、ドライバIC6上に形成されたドライバ側電極32とが電気的に接続されるとともに、TFTアレイ基板1とドライバIC6が異方導電性フィルム10を介して固設される。
【0038】
TFT側電極31は、ITO等の透明性導電膜とすることが好ましい。これにより、電極形成部位と、非電極形成部位とで差異なく光重合性組成物の硬化を進行せしめることができる。また、ITO等の透明性導電膜に代えてAl、Cu、Au等の金属膜を電極として用い、電極形成部位をデュアル硬化させてもよい。デュアル硬化とは、バインダー中に、光重合性組成物のみならず、熱重合開始剤、熱重合性組成物を予め添加しておき、光照射工程により発生する塗膜内の熱により熱重合を進行させる方法である。これにより、Al等の非透過性の電極を配設した場合においても、非透過部の光重合性組成物の硬化を進行せしめることができる。特に、電極ピッチが狭ピッチの場合により効果的に利用することができる。
【0039】
なお、異方導電性フィルム10中の光硬化性樹脂12は、すべての領域において十分に硬化することは必ずしも必要ではなく、Al等の非透過性の電極にマスクされた光重合性組成物は、半硬化の状態であってもよい。電極が配設されていない光透過領域において、光重合性組成物を十分に硬化せしめることにより、光透過領域がスペーサのように機能して機械的強度を維持することが可能である。
【0040】
次に、本実施形態1に好適に用いられる異方導電性樹脂組成物について説明する。本実施形態1に係る異方導電性樹脂組成物は、導電性磁性粉体11と、活性光線の照射により光硬化性樹脂12となる光重合性組成物を主成分とするバインダーを主要構成成分とする。
【0041】
導電性磁性粉体11は、棒状であって、磁性、及び導電性が付与されたものである。導電性磁性粉体11のバインダーに対する添加量は、用いる用途、求められる性能により変動し得るが、通常は、バインダー100重量部に対して、5〜40重量部とすることが好ましく、8〜30重量部とすることが更に好ましい。導電性磁性粉体11の添加量が5重量部未満の場合には、導電性磁性粉体が少ないことに起因して、接続電極間の接続不良が生ずる場合があり、40重量部を超える場合には、導電性磁性粉体が多いことに起因して、磁場による配向が起こりにくくなる場合がある。
【0042】
導電性磁性粉体11の主成分は、金属、金属合金又は金属酸化物とすることが好ましい。金属としては、特に限定されるものではないが、磁性を有する金属(ニッケル、コバルト、鉄等)が含まれるようにする。ニッケル、コバルト、鉄の他、金、銀、銅、アルミニウム、白金、鈴、鉛、亜鉛、チタン、クロム、マンガン、ジルコニウム、タングステン、インジウム等も好適な例として挙げることができる。上記金属の金属酸化物も好適な例として挙げることができる。上記金属、金属合金又は金属酸化物は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
導電性磁性粉体11の特に好ましい金属としては、加工性、導電性に優れ、磁化の保磁力が小さく、価格も安価なニッケルを挙げることができる。Ni化合物としては、Ni−P,Ni−B、Ni−Co,Ni−Fe,Ni−Al、Ni−Sn,Ni−Au等の各種Ni化合物を挙げることができる。中でも、Ni−Pは特に好ましい例として挙げることができる。Ni−Pを用いる場合、導電性磁性粉体中のリン含有量は2〜15重量%とすることが好ましい。
【0044】
導電性磁性粉体11は、中空形状とすることが好ましい。中空形状とすることにより、金属又は金属合金に由来する導電性と強度を維持したまま軽量化を実現できる。軽量化の実現により、導電性磁性粉体がフィルム内に沈降することを抑制し、分散性を高めることができる。また、配向制御しやすい異方導電材料を得ることができる。中空形状の導電性磁性粉体は、例えば、上記特許文献4〜6に記載の方法により製造することができる。
【0045】
導電性磁性粉体11の保磁力は、1〜500Oeの範囲とすることが好ましく、10〜300Oeとすることが更に好ましい。保磁力が1〜500Oeを超えた範囲においては、磁場を印加した際に、導電性磁性粉体の配向方向が不揃いとなる場合がある。導電性磁性粉体11の飽和磁化は、0.1〜55emu/gの範囲とすることが好ましく、5〜30emu/gとすることが更に好ましい。飽和磁化が0.1emu/g未満であると、磁場を印加しても導電性磁性粉体の配向を行うことができない場合がある。一方、55emu/gを超えると、導電性磁性粉体の磁化が大きくなりすぎて、配向した粉体間の距離が大きくなり、異方導電材料の性能を低下させる場合がある。また、導電性磁性粉体11の体積抵抗率は、10−6〜102Ω・cmとすることが好ましく、10-5〜101Ω・cmとすることがより好ましい。体積抵抗率が102Ω・cm未満であると、異方導電材料に電圧を印加すると抵抗加熱が起こる場合がある。
【0046】
導電性磁性粉体11の内径は、0.1〜1μmの範囲とすることが好ましい。また、導電性磁性粉体11の長さは、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることが更に好ましい。内径が0.1μm未満であると、中空形状として軽量化するという利点が得られにくくなり、一方、1μmを超えると、強度が低下し、異方導電材料作製時に中空形状を維持できなくなる場合がある。また、長さが0.5μm未満であると、電気的な接続にムラができる場合があり、20μmを超えると、配向のモーメントが大きくなるため、大きな印加磁場が必要となる。このため、導電性磁性粉体の配向制御を行うのに必要な電磁石の電力量が多くなり、コストが高くなる場合がある。
【0047】
導電性磁性粉体11のアスペクト比(導電性磁性粉体の長さ/導電性磁性粉体の外径)は、2〜100の範囲とすることが好ましく、5〜20とすることが更に好ましい。アスペクト比が2未満であると、球形に近くなり、配向制御が困難となる場合がある。一方、アスペクト比が100を超えると、配向のモーメントが大きくなり、エネルギー的に配向が困難となる場合がある。
【0048】
導電性磁性粉体11の肉厚は、10nm〜200nmの範囲とすることが好ましく、20nm〜150nmとすることが更に好ましい。肉厚が10nm未満であると、強度が低下する場合があり、一方、200nmを超えると、軽量化のメリットが得にくくなる場合がある。また、中空形状材料とするための鋳型除去が行えない場合がある。
【0049】
バインダーの主成分である光重合性組成物は、前述したように、活性光線の照射により硬化せしめられて光硬化性樹脂となる。光重合性組成物は、光重合性のモノマー、オリゴマー又は/及びポリマーを主成分とする。また、光重合性組成物には、光重合開始剤等の添加剤も含まれる。前述のデュアル重合を行う場合には、バインダー中に熱重合開始剤(熱ラジカル重合剤等)や熱重合性化合物を添加する。
【0050】
光重合性組成物としては、活性光線照射前後の収縮率が、下記<数1>により算出した場合に7%以下となるものを用いることが好ましい。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
式中のdpは、水中置換法(JIS K7232−1982)による活性光線照射後の光重合性組成物の密度、dMは、比重瓶法(JIS K7112)による活性光線照射前の光重合性組成物の密度を示す。なお、ここで言う「活性光線照射後の光重合性組成物」とは、活性光線の照射により、実際に電子機器等において使用可能な状態となった光硬化性樹脂のことである。
【0051】
光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率が7%以下のものを用いることにより、光硬化後に生ずる応力歪を低下させることができる。収縮率は、小さいほど好ましいので特にその下限は限定されないが、入手容易性の観点からは、0.5%以上とすることが好ましい。より好ましい範囲は、1〜4%の範囲のものである。
【0052】
光重合性組成物は、フルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とするものを好適な例として挙げることができる。また、アダマンチル基を含有する光重合性化合物も好適な例として挙げることができる。とりわけ、フルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とする光重合性組成物は、導電性磁性粉体、特に前述した中空形状の導電性磁性粉体との分散性が良好であるので特に好ましい。これらの構造を採用することにより、光硬化前後の収縮率を低減させることができる。
【0053】
特に好ましいフルオレン構造を有する光重合性化合物としては、下記一般式(1)で表わされるフルオレン構造を含有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【化2】
式中、R1a、R1b、R2a及びR2bは置換基を示し、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R4a及びR4bは水素原子又はメチル基を示す。k1及びk2は0〜4の整数を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示し、n1及びn2は0又は1以上の整数を示し、p1及びp2は1〜4の整数を示す。但し、m1+p1及びm2+p2は、1〜5の整数である。上記一般式(1)の化合物は、上記特許文献7に従って製造することができる。
【0054】
基R1a及びR1bで表される置換基としては、特に限定されないが、通常、アルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。基R1a及びR1bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、基R1a(又はR1b)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。なお、フルオレン骨格を構成するベンゼン環に対する基R1a(又はR1b)の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数k1及びk2は、0又は1、特に、0である。なお、置換数k1及びk2は、異なっていてもよいが、通常、同一である。
【0055】
置換基R2a及びR2bとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などのC1−4アルコキシ基など);ヒドロキシル基;ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルキレンオキシ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
【0056】
なお、前記ヒドロキシル基又はヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基は、後述する多官能性(メタ)アクリレートの製造方法において、原料となる多価アルコールの残基((メタ)アクリル酸又はその誘導体と反応しなかった基)である場合が多い。
【0057】
好ましい置換基R2a(又はR2b)は、アルキル基(C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(C5−8シクロアルキル基)、アリール基(C6−10アリール基)、アラルキル基(C6−8アリール−C1−2アルキル基)、ヒドロキシル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルキレンオキシ基)である。これらのうち、特に、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、C6−8アリール基が好ましい。置換基R2a(又はR2b)は、単独で又は2種以上組み合わせてベンゼン環に置換していてもよい。また、基R2a及びR2bは互いに同一又は異なっていてもよいが、通常、同一である。また、基R2a(又はR2b)は、同一のベンゼン環において、異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0058】
また、置換基R2a(又はR2b)の置換位置は、特に限定されず、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基と総称する場合がある)の置換位置に応じて、フェニル基の2〜6位(例えば、2位、5位、2,5−位など)に置換できる。
【0059】
好ましい置換数m1及びm2は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基の置換数にもよるが、0〜2、さらに好ましくは0〜1(特に0)である。なお、置換数m1及びm2は、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。
【0060】
R3a及びR3bで表されるアルキレン基としては、限定されないが、例えば、C2−4アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基など)などが例示でき、特に、C2−3アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基)が好ましい。なお、R3a及びR3bは互いに同一の又は異なるアルキレン基であってもよいが、通常、同一のアルキレン基である。
【0061】
アルコキシ基の置換数(付加数)n1及びn2は、同一又は異なって、0〜15程度の範囲から選択でき、例えば、0〜12(例えば、1〜12)、好ましくは0〜8(例えば、1〜8)、さらに好ましくは0〜6(例えば、1〜6)、特に0〜4(例えば、1〜4)程度であってもよい。また、n1とn2の和(n1+n2)は、0〜30程度の範囲から選択でき、例えば、0〜24(例えば、2〜24)、好ましくは0〜16(例えば、2〜12)、さらに好ましくは0〜12(例えば、2〜10)、特に0〜8(例えば、2〜8)程度であってもよい。なお、n1(又はn2)が2以上の場合、ポリアルコキシ(ポリアルキレンオキシ)基は、同一のアルコキシ基で構成されていてもよく、異種のアルコキシ基(例えば、エトキシ基とプロピレンオキシ基)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のアルコキシ基で構成されている場合が多い。
【0062】
(メタ)アクリロイルオキシ基含有基の置換数p1及びp2は、1〜2が好ましく、特に1が好ましい。また、p1とp2との和(p1+p2)は、例えば、2〜8、好ましくは2〜4程度(特に2)であってもよい。なお、置換数p1及びp2は、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。(メタ)アクリロイルオキシ基含有基の置換位置は、特に限定されず、p1(又はp2)の数に応じて、フルオレンの9位に置換するフェニル基の2〜6位から選択でき、p1(又はp2)が2の場合、例えば、3,4−位、3,5−位などであってもよい。1つの(メタ)アクリロイルオキシ基含有基が、通常、4位に置換していてもよい。
【0063】
なお、同一のベンゼン環に置換する複数の(メタ)アクリロイルオキシ基含有基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基含有基が、(i)n1=0(n2=0)である(メタ)アクリロイルオキシ基単独で構成されていてもよく、(ii)n1=0(n2=0)である(メタ)アクリロイルオキシ基とn1≠0(n2≠0)である(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基など)とで構成されていてもよく、(iii)n1≠0(n2≠0)である同一の(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基単独で構成されていてもよく、(iv)n1≠0(n2≠0)である異なる(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ基[例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基と2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ基]で構成されていてもよい。
【0064】
前記式(1)で表される代表的な多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類、これらに対応する多価アルコール[9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン類]のアルキレンオキシド(C2−4アルキレンオキシド)付加体の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0065】
9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,5−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(アルキル−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ6−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ3,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス
(ジC1−4アルキル−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルコキシ−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−5−メトキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルコキシ−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−5−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−8アリール−ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]など}などが含まれる。
【0066】
9,9−ビス(トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類には、上記9,9−ビス(ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類に対応するフルオレン類、例えば、9,9−ビス(2,4,6−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4,5−トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4,5−トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(トリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなどが含まれる。
【0067】
9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートには、例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン(n1=n2=1)、9,9−ビス{3,4−ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン}(n1=n2=2)などが含まれる。
【0068】
9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートには、例えば、9,9−ビス[3,4,5−トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン(n1=n2=1)、9,9−ビス{3,4,5−トリ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス{トリ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシフェニル]フルオレン}(n1=n2=2)などが含まれる。
【0069】
これらの多官能性(メタ)アクリレートのうち、特に、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2−4アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート{例えば、9,9−ビス[ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{ジ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)C2−3アルコキシ]フェニル}フルオレンなど}、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類のC2−4アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート{例えば、9,9−ビス[トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{トリ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−3アルコキシ)C2−3アルコキシ]フェニル}フルオレンなど}などが好ましい。
【0070】
本発明の多官能性(メタ)アクリレートは、高反応性の(メタ)アクリロイルオキシ基含有基を多数有しているので、重合速度を向上できるとともに、硬化物の架橋密度を著しく大きくでき、高硬度の硬化物を効率よく得ることができる。
【0071】
光重合性組成物中に含まれる光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)などのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0073】
重合開始剤(及び光増感剤の総量)の使用量は、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、1〜30重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、5〜25重量部)、さらに好ましくは1.5〜10重量部程度であってもよい。光重合開始剤の使用量は、少なすぎると、組成物の重合性(又は光硬化性)が低下し、一方、多すぎると、光重合開始剤自身の吸収により、厚膜での光硬化性が低下する恐れがある。
【0074】
また、光増感剤の使用量は、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは20〜100重量部程度であってもよい。
【0075】
なお、前述したように、光重合開始剤に加えて熱重合開始剤を添加してもよい。熱重合開始剤としては、公知のものを利用することができる。例えば、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイドなど)など]を挙げることができる。
【0076】
反応性希釈剤(重合性希釈剤)としては、単官能性モノマー、多官能性モノマーなどが挙げられる。単官能性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−8シクロアルキル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸ジ乃至テトラシクロアルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシアルキルなど]、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、アミノアルキル(メタ)アクリレート(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーなどが例示できる。
【0077】
多官能性モノマーには、二官能性(メタ)アクリレート、多官能性(メタ)アクリレート、エポキシ基含有化合物(グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのポリグリシジルエーテル類など)のポリ(例えば、ジ乃至ペンタ)(メタ)アクリレート、メラミンアクリレートなどが含まれる。
【0078】
二官能性(メタ)アクリレートとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノールA(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどのトリオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどのテトラオールのジ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0079】
多官能性(メタ)アクリレートとしては、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)の三官能又は多官能性(メタ)アクリレート、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどのトリオールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0080】
反応性希釈剤は、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。反応性希釈剤の使用量は、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して、0〜100重量部の範囲から選択でき、例えば、1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜30重量部程度であってもよい。
【0081】
希釈剤には、非反応性希釈剤も含まれる。非反応性希釈剤を使用すると、重合性組成物の塗布性などを改善できる。非反応性希釈剤(又は溶剤)としては、有機溶剤、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;カルボン酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
アセテートなどの酢酸エステル、乳酸ブチルなど)、炭酸エステル(炭酸プロピレンなど)などのエステル類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などが例示できる。非反応性希釈剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
非反応性希釈剤の使用量(添加量)は、塗布方法などにより異なるが、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して、0〜500重量部の範囲から選択でき、通常、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
【0083】
異方導電性樹脂組成物には、バインダー中において導電性磁性粉体の分散性を向上させる観点から、シリカ粒子を添加することができる。シリカ粒子は、バインダー100重量部に対して、5部以上、30部以下とすることが好ましい。5重量部未満の場合には、分散性向上に効果を示さない場合があり、一方、30重量部を超えると、導電性磁性粉体の磁場による配向を阻害することがある。シリカ粒子の粒子径は、50nm〜2μmの範囲のものを好適に用いることができる。粒子径が50nm未満の場合には、分散性に効果を示さない場合がある。一方、粒子径が2μmを超えると、導電性磁性粉体の磁場による配向を阻害する場合がある。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0084】
また、異方導電性部材の接着性を向上させるために、接着性向上剤を添加することができる。例えば、有機ケイ素化合物、有機酸アリルエステル、エポキシ開環触媒、又は有機チタン化合物からなるもの等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0085】
さらに、異方導電性樹脂組成物には、必要に応じて、本来の特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤(有機リン化合物、無機リン化合物などのリン含有化合物、ハロゲン含有難燃剤、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物など)、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0086】
添加剤(難燃剤など)の割合は、添加剤の種類に応じて適宜選択でき、例えば、多官能性(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.5〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度であってもよい。
【0087】
本実施形態1によれば、異方導電性部材(異方導電性フィルム10)の製造プロセスに、加熱工程を含まず、光照射によりバインダーを硬化せしめているので、従来の熱圧着により生じていた問題を解決することができる。すなわち、接続時の加熱により、各種材料の伸びのために接続部分にずれが生じたり、接続部分が細幅のため接続時の温度で周辺部材が熱的影響を受けたり、接続時の加熱により反りが発生したり、配線が断線したりするという問題等を解決することができる。また、加熱圧着時に、導電性磁性粉体の配向性が崩れるという問題もない。また、光硬化時に低収縮率なポリマーを用いることにより、寸法安定性の高い異方導電性樹脂組成物を提供することができる。これらの結果、接続ピッチの微細化に対応可能な異方導電性樹脂組成物、異方導電性部材を提供することができる。
【0088】
また、中空形状の導電性磁性粉体を用いることにより、軽量化を実現できる。その結果、異方導電性樹脂組成物中の分散性を高め、かつ、磁場中に異方導電性樹脂組成物の塗膜を搬送した際の配向時間を短縮化することができる。
【0089】
なお、本発明は、加熱工程を行わずに光照射工程により異方導電性部材を提供し得るものであるが、異方導電性フィルムを電子部品に固設する際に一切の加熱工程を排除するものではなく、用途や求められる性能等に応じては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において最小限の加熱工程を行ってもよい。
【0090】
また、本発明に係る異方導電性部材とは、電極間に挟持して圧着し、硬化工程を経たものに限定されず、圧着工程を行う前の、導電性磁性粉体が所定の方向に配向し、かつその配向が保持される程度に半硬化された状態の半硬化膜も含むものとする。また、本実施形態1においては、導電性磁性粉体が塗膜の面内方向に一軸配向した例について説明したが、これに限定されるものではなく、所定の方向に導電性磁性粉体が一軸配向しているものも含む。
【0091】
また、本実施形態1においては、異方導電性部材としてフィルムとした例について説明したが、シート、塗料、接着材、粘着材、ペースト、インク等の種々の形態としての利用が可能である。また、異方導電性部材を液晶表示パネルの電子部品の接合に利用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、電子機器をはじめとした種々の電子部品の接合に利用することができる。
【0092】
[実施形態2]
次に、上記実施形態1とは異なる構造の異方導電性フィルムの一例について説明する。なお、以降の説明において、上記実施形態と同一の要素部材は同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。本実施形態2に係る異方導電性フィルムは、下記に説明する点を除く基本的な構成、及び製造方法は上記実施形態1と同様である。
【0093】
図6に、本実施形態2に係る異方導電性フィルム10aの模式的な斜視図を示す。異方導電性フィルム10aは、導電性磁性粉体11aと、光硬化性樹脂12を備える。本実施形態2に係る導電性磁性粉体11aは、異方導電性フィルム10aの面に垂直な方向に配向している。これにより、異方的導電性を発現することができる。
【0094】
次に、本実施形態2に係る異方導電性フィルム10aの製造方法について、図7及び図8を用いつつ説明する。まず、上記実施形態1と同様に異方導電性樹脂組成物を用意する。そして、異方導電性樹脂組成物を濾過処理した後、支持体21上に例えばバーコート法により異方導電性樹脂組成物を塗布して、塗膜20aを得る(図7参照)。次いで、塗膜20aが形成された支持体21を磁場中に搬送する。
【0095】
本実施形態2においては、第1の磁石22のN極と、第2の磁石23のS極とが互いに対向配置するように設置した。そして、第1の磁石22と第2の磁石23とを、金属製容器25の中に設置した。これにより、横方向の磁力線の染出しを無くし、塗膜20aの法線方向に一致する磁力線を得ることができる。支持体21の搬送は、連続的に行っても、搬送を断続的に行うステップ搬送方式により行ってもよい。ステップ搬送方式によれば、磁場を小さくしても一軸配向性を得ることができる。
【0096】
金属製容器25を通過した直後の導電性磁性粉体11aは、磁石面に対して略垂直方向に配列する。この状態が保持されているタイミングにて活性光線を照射し(図7参照)、導電性磁性粉体11の配向性が保持されるように光重合性組成物を半硬化させる。これにより、異方導電性樹脂組成物からなる半硬化膜30aが得られる。
【0097】
次いで、半硬化膜30aが積層された支持体21を所望の大きさにカットする。そして、カットされた支持体21をTFTアレイ基板1の端部近傍のドライバIC6を実装する位置に、半硬化膜30aがTFTアレイ基板1のTFT側電極31が形成されている面と接触するように載置する。その後、支持体21を剥離する。
【0098】
支持体21を剥離後、半硬化膜30上にドライバIC6を実装する。この際、ドライバIC6のドライバ側電極32と、TFT側電極31とが相対峙される位置に配置する。次いで、TFTアレイ基板1とドライバIC6との圧着を行う。これにより、半硬化膜30中に埋設されている導電性磁性粉体11が、半硬化膜30をつきやぶり、TFT側電極31若しくはドライバ側電極32と接触する。また、分散されていた導電性磁性粉体11を上下方向に圧縮させ、相互に接触せしめることができる。これにより、導電性磁性粉体11が膜面方向に対して垂直方向に導電パスを形成し、相対峙される複数のTFT側電極31と、ドライバ側電極32とを導電性磁性粉体11を介して一括して電気的に接続させることができる(図8参照)。
【0099】
圧縮工程により導電性磁性粉体11を介して相対峙される電極間が電気的に接続された状態にて、活性光線をTFTアレイ基板側1から照射する。これにより、半硬化膜30aがさらに硬化せしめられる。これにより、TFTアレイ基板1上に形成されたTFT側電極31と、ドライバIC6上に形成されたドライバ側電極32とが電気的に接続されるとともに、TFTアレイ基板1とドライバIC6が異方導電性フィルム10を介して固設される。
【0100】
本実施形態2に係る異方導電性樹脂組成物は、導電性磁性粉体11と、活性光線の照射により光硬化性樹脂12となる光重合性組成物を主成分とするバインダーを主要構成成分とする。導電性磁性粉体11は、棒状かつ中空であって、磁性、及び導電性が付与されたものである。導電性磁性粉体11の好ましい添加量や特性は、上記実施形態1で説明したとおりである。バインダーの主成分である光重合性組成物は、上記<数1>により算出した場合に7%以下となるものを用いる。これにより、寸法安定性を実現することができる。光重合性組成物は、上記実施形態1と同様にフルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とするものを好適な例として挙げることができる。好ましい例は、上記実施形態1で説明したとおりである。
【0101】
異方導電性樹脂組成物は、希釈剤(反応性希釈剤、非反応性希釈剤)を含んでいてもよい。具体例や、好ましい使用量は、上記実施形態1と同様である。また、バインダー中において導電性磁性粉体の分散性を向上させる観点から、シリカ粒子を添加することができる。また、異方導電性部材の接着性を向上させるために、接着性向上剤を添加することができる。さらに、本実施形態2に係る異方導電性樹脂組成物においても、本来の特性を損なわない範囲で、上記実施形態1と同様に慣用の添加剤を加えることができる。
【0102】
本実施形態2によれば、異方導電性フィルム10aの製造プロセスに、加熱工程を含まず、光照射によりバインダーを硬化せしめているので、従来の熱圧着により生じていた問題を解決し、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0103】
<実施例>
以下、本発明を具体的実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
光重合性組成物500mg(100部)にトルエン60mg(12部)を加え、試験管ミキサーを用いて2800rpmの条件下で1分間撹拌した。この溶液に導電性磁性粉体50mg(10部、9.1wt%)を加え、2800rpmの条件下で5分間混合撹拌することにより異方導電性樹脂組成物を得た。光重合性組成物としては、フルオレン骨格を有するアクリレートを主成分とするオグソールEA-F5010(大阪ガスケミカル株式会社製)を用いた。導電性磁性粉体としては、中空形状のNi−Pマイクロロッドを用いた。導電性磁性粉体の長さは、2.6μm、幅は0.35μmのものを用いた。
【0105】
導電性磁性粉体の製造方法については、上記特許文献4および特許文献6に記載の方法により調製した。本実施例1においては、導電性磁性粉体として、保磁力160kOe,質量飽和磁化13emu/g、内径0.15μm、肉厚0.1μm、導電性磁性粉体自体の体積抵抗率が101Ωcmのものを用いた。
【0106】
異方導電性樹脂組成物を調製後、目開き20μmのフィルター濾過を行った。その後、9μmの溝深さを有するバーコータにより、剥離性フィルム上に異方導電性樹脂組成物の塗膜を形成した。この塗膜付き剥離性フィルムを、磁場0.3Tのサマコバ磁石間を2.4cm/sの速度で搬送させることにより、導電性磁性粉体を配向させた。磁石配置は、図3で説明したように、第1の磁石22と第2の磁石23とが、互いに同極(N極)が対向配置されるように配置した。
【0107】
対向配置させた磁石間を通過した直後の塗膜を、2.4cm/sの速度で搬送させつつUV照射(水銀−キセノンランプ(San-ei Super Cure 203S)、40mW/cm2@365nm)を行い、塗膜中の光重合性化合物を半硬化させた。これにより、導電性磁性粉体が、塗膜の面内方向、かつ搬送方向に一軸配向した半硬化膜を得た。図9(a)に、搬送方向に切断した半硬化膜の切断面のSEM写真を、図9(b)に、搬送方向に直交する方向に切断した半硬化膜の切断面のSEM写真を示す。同図に示すように、導電性磁性粉体11は、搬送方向に一軸配向していることがわかる。
【0108】
その後、異方導電性フィルムを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚7.6μm)付基板を作製した。
【0109】
(実施例2)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例1と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚7.6μm)付基板を作製した。
【0110】
(実施例3)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例1と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚1.9μm)付基板を作製した。
【0111】
(実施例4)
上記実施例1と同様の異方導電性樹脂組成物を用い、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成した。この塗膜付き剥離性フィルムを、磁場0.3Tのヨーク付キューブ磁石間に搬送し、50s保持した。その後、再び、2.4cm/sの速度で搬送させ、磁石間を通過した直後の塗膜を、2.4cm/sの速度で搬送させつつUV照射((San-ei Super Cure 203S)、40mW/cm2@365nm)を行い、塗膜中の光重合性化合物を半硬化させた。その後、異方導電性フィルムを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0112】
(実施例5)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例4と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚11.4μm)付基板を作製した。
【0113】
(実施例6)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例4と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0114】
(実施例7)
光重合性組成物500mg(100部)にトルエン60mg(12部)、粒径250nmの球形シリカ粒子55.5mg(11.1部)を加え、試験管ミキサーを用いて2800rpmの条件下で1分間撹拌した以外は、上記実施例1と同様に異方導電性樹脂組成物を調製した。そして、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成させ、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、異方導電シートを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚6.7μm)付基板を作製した。
【0115】
(実施例8)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例7と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚8.6μm)付基板を作製した。
【0116】
(実施例9)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例7と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0117】
(実施例10)
導電性磁性粉体134mg(26.8部)を用いる以外は、上記実施例1と同様に異方導電性樹脂組成物を調製し、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成させ、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、異方導電シートを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚10.5μm)付基板を作製した。
【0118】
(実施例11)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例10と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚11.4μm)付基板を作製した。
【0119】
(実施例12)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例10と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚6.7μm)付基板を作製した。
【0120】
(実施例13)
上記実施例7と同様にシリカ粒子を含有させた光重合性組成物を調製し、導電性磁性粉体134mg(26.8部)を用いる以外は、上記実施例1と同様に異方導電性樹脂組成物を調製し、上記実施例1と同様の方法にて塗膜を形成させ、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、異方導電シートを剥離性フィルムから剥離し、配線ピッチが100μm(配線幅50μm、配線間隔50μm)のITOパターン電極付基板に挟持した。そして、基板の上下方向から圧着した後に、活性光線を照射した。これにより、異方導電性フィルム(膜厚10.5μm)付基板を作製した。
【0121】
(実施例14)
配線ピッチを40μm(配線幅20μm、配線間隔20μm)とした以外は、上記実施例13と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚12.4μm)付基板を作製した。
【0122】
(実施例15)
配線ピッチを20μm(配線幅10μm、配線間隔10μm)とした以外は、上記実施例13と同様の方法により異方導電性フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。
【0123】
(比較例1)
導電性磁性粉体を含有させない以外は、上記実施例1と同様に樹脂組成物を得た。上記実施例1と同様に塗膜を形成させて、上記実施例4と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させた。その後、半硬化させたシートを剥離性フィルムから剥離し、アルミ平板に付着させた。そして、活性光線を照射して、オグソールEA-F5010の光硬化フィルム(膜厚20μm)を作製した。この硬化膜の体積抵抗率を、(株)ダイアインスツルメンツ社製のロレスタGPにより測定した。
【0124】
(比較例2)
磁場0.3Tのサマコバ磁石を用いない以外は、実施例1と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させることにより、磁場により導電性磁性粉体を配向させていない無配向フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。また、別途、半硬化させたシートを剥離性フィルムから剥離し、アルミ平板に付着させて、活性光線を照射して、無配向フィルムを作製し、株式会社ダイアインスツルメンツ社製のロレスタGPによりこの硬化フィルムの体積抵抗率を測定した。
【0125】
(比較例3)
磁場0.3Tのサマコバ磁石を用いない以外は、実施例10と同様に塗膜中の光硬化性化合物を半硬化させることにより、磁場により導電性磁性粉体を配向させていない無配向フィルム(膜厚9.5μm)付基板を作製した。また、別途、半硬化させたシートを剥離性フィルムから剥離し、アルミ平板に付着させて、活性光線を照射して、無配向フィルムを作製し、(株)ダイアインスツルメンツ社製のロレスタGPによりこの硬化フィルムの体積抵抗率を測定した。
【0126】
[物性評価]
実施例1〜15及び比較例1〜3の異方導電フィルムの膜厚方向の抵抗、膜面方向の抵抗、膜厚方向の体積抵抗率、膜面方向の体積抵抗率、異方性比を求めた結果を図10に示す。実施例1〜15のいずれにおいても、ITOパターン電極において異方導電性を発現することを確認した。膜厚方向の体積抵抗率は、101〜104Ωcmの範囲であり、膜面方向の体積抵抗率は1011Ωcmであり、異方性比は106〜109であった。バインダー樹脂として熱硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂を用いた場合においても、良好な導電性が発現することを確認した。また、配線ピッチ20μmという狭ピッチな電極間においても、異方導電性を発現することができた。
【0127】
図11(a)に実施例1、図11(b)に実施例2、図11(c)に実施例3の異方導電シート付基板の光学顕微鏡像を示す。また、図12(a)に実施例4、図12(b)に実施例5、図12(c)に実施例6の異方導電シート付基板の光学顕微鏡像を示す。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】実施形態1に係る液晶表示パネルの構造を説明するための模式図。
【図2】実施形態1に係る異方導電性フィルムの模式的斜視図。
【図3】実施形態1に係る異方導電性フィルムの製造工程を説明するための模式図。
【図4】(a)は、実施形態1に係る磁場の磁力線を説明するための図であり、(b)は、導電性磁性粉体の配向性を説明するための図。
【図5】(a)〜(c)は、実施形態1に係る異方導電性フィルムの製造工程を説明するための模式的な切断部断面図。
【図6】実施形態2に係る異方導電性フィルムの模式的斜視図。
【図7】実施形態2に係る異方導電性フィルムの製造工程を説明するための模式図。
【図8】実施形態2に係る異方導電性フィルムの切断部断面図。
【図9】(a)及び(b)は、実施例1に係る半硬化膜(異方導電性フィルム)のSEM写真。
【図10】実施例1〜15、比較例1〜3に係る異方導電性フィルムの製造条件、物性測定値を示す表。
【図11】(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3に係る異方導電性フィルムとITO基板との光学顕微鏡画像。
【図12】(a)は実施例4、(b)は実施例5、(c)は実施例6に係る異方導電性フィルムとITO基板との光学顕微鏡画像。
【符号の説明】
【0129】
1 TFTアレイ基板
2 対向基板
3 偏光板
4 シール材
5 液晶
6 ドライバIC
10 異方導電性フィルム
11 導電性磁性粉体
12 バインダー
20 塗膜
21 支持体
22 第1の磁石
23 第2の磁石
30 半硬化膜
31 TFT側電極
32 ドライバ側電極
100 液晶表示パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状、かつ中空の導電性磁性粉体と、
光重合性組成物を主成分とするバインダーとを含有し、
前記光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率は、下記<数1>により算出した場合に7%以下である異方導電性樹脂組成物。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
(式中のdpは、水中置換法(JIS K7232−1982)による活性光線照射後の前記光重合性組成物の密度、dMは、比重瓶法(JIS K7112)による活性光線照射前の前記光重合性組成物の密度)
【請求項2】
前記光重合性組成物は、フルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記フルオレン構造を含有する光重合性化合物は、下記式(1)で表わされるフルオレン構造を含有する(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項2に記載の異方導電性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1a、R1b、R2a及びR2bは置換基を示し、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R4a及びR4bは水素原子又はメチル基を示す。k1及びk2は0〜4の整数を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示し、n1及びn2は0又は1以上の整数を示し、p1及びp2は1〜4の整数を示す。但し、m1+p1及びm2+p2は、1〜5の整数である)
【請求項4】
前記導電性磁性粉体は、Niを主成分とすることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、
前記導電性磁性粉体が所定の方向に配向するように磁場を印加し、
前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、
前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、
前記塗膜に活性光線を照射する異方導電性部材の実装方法。
【請求項6】
導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーを含有する異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、
前記導電性磁性粉体が、前記塗膜の面内方向に一軸配向するように磁場を印加し、
前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、
前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、
前記塗膜に活性光線を照射する異方導電性部材の実装方法。
【請求項7】
前記導電性磁性粉体が、前記塗膜の面内方向に一軸配向するように、反発磁極を間隙を持って対向配置させ、
当該磁極間に前記塗膜を搬送し、
前記磁極間を通過中若しくは通過後に、前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように前記光重合性組成物の活性光線を照射することを特徴とする請求項6に記載の異方導電性部材の実装方法。
【請求項8】
請求項6、7に記載の異方導電性部材の実装方法において、
前記異方導電性樹脂組成物として、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物を用いることを特徴とする異方導電性部材の実装方法。
【請求項9】
前記異方導電性樹脂組成物の塗膜を、前記支持体に連続的にコーティングすることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の異方導電性部材の実装方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物より構成される異方導電性部材であって、
前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略垂直に配向している異方導電性部材。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物より構成される異方導電性部材であって、
前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略水平に、かつ、電極の長軸方向に配向している異方導電性部材。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の異方導電性部材を用いて、電子部品の接合が行われている電子機器。
【請求項13】
前記電子部品が半導体素子、半導体装置、プリント回路基板、液晶表示パネル、プラズマ表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル又はフィールドエミッション表示パネルのいずれかである請求項12に記載の電子機器。
【請求項1】
棒状、かつ中空の導電性磁性粉体と、
光重合性組成物を主成分とするバインダーとを含有し、
前記光重合性組成物の活性光線照射前後の収縮率は、下記<数1>により算出した場合に7%以下である異方導電性樹脂組成物。
<数1> 収縮率(%)=100×(dp−dM)/dp
(式中のdpは、水中置換法(JIS K7232−1982)による活性光線照射後の前記光重合性組成物の密度、dMは、比重瓶法(JIS K7112)による活性光線照射前の前記光重合性組成物の密度)
【請求項2】
前記光重合性組成物は、フルオレン構造を含有する光重合性化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記フルオレン構造を含有する光重合性化合物は、下記式(1)で表わされるフルオレン構造を含有する(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項2に記載の異方導電性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1a、R1b、R2a及びR2bは置換基を示し、R3a及びR3bはアルキレン基を示し、R4a及びR4bは水素原子又はメチル基を示す。k1及びk2は0〜4の整数を示し、m1及びm2は0〜4の整数を示し、n1及びn2は0又は1以上の整数を示し、p1及びp2は1〜4の整数を示す。但し、m1+p1及びm2+p2は、1〜5の整数である)
【請求項4】
前記導電性磁性粉体は、Niを主成分とすることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の異方導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、
前記導電性磁性粉体が所定の方向に配向するように磁場を印加し、
前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、
前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、
前記塗膜に活性光線を照射する異方導電性部材の実装方法。
【請求項6】
導電性磁性粉体と、光重合性組成物を主成分とするバインダーを含有する異方導電性樹脂組成物の塗膜を支持体上に形成させ、
前記導電性磁性粉体が、前記塗膜の面内方向に一軸配向するように磁場を印加し、
前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように、活性光線を照射して前記塗膜を半硬化させ、
前記半硬化させた塗膜を前記支持体から剥離して、電極間に挟持させて圧着し、
前記塗膜に活性光線を照射する異方導電性部材の実装方法。
【請求項7】
前記導電性磁性粉体が、前記塗膜の面内方向に一軸配向するように、反発磁極を間隙を持って対向配置させ、
当該磁極間に前記塗膜を搬送し、
前記磁極間を通過中若しくは通過後に、前記導電性磁性粉体の配向状態を保持するように前記光重合性組成物の活性光線を照射することを特徴とする請求項6に記載の異方導電性部材の実装方法。
【請求項8】
請求項6、7に記載の異方導電性部材の実装方法において、
前記異方導電性樹脂組成物として、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物を用いることを特徴とする異方導電性部材の実装方法。
【請求項9】
前記異方導電性樹脂組成物の塗膜を、前記支持体に連続的にコーティングすることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の異方導電性部材の実装方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物より構成される異方導電性部材であって、
前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略垂直に配向している異方導電性部材。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方導電性樹脂組成物より構成される異方導電性部材であって、
前記導電性磁性粉体は、相対峙される電極面に対して略水平に、かつ、電極の長軸方向に配向している異方導電性部材。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の異方導電性部材を用いて、電子部品の接合が行われている電子機器。
【請求項13】
前記電子部品が半導体素子、半導体装置、プリント回路基板、液晶表示パネル、プラズマ表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル又はフィールドエミッション表示パネルのいずれかである請求項12に記載の電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−221360(P2009−221360A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67718(P2008−67718)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(595038198)株式会社ラボ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(595038198)株式会社ラボ (1)
【Fターム(参考)】
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